ST合剤(バクタ)とは細菌感染症に対して広く効果を発揮する抗菌薬です。

この薬は2種類の抗生物質を組み合わせた合剤で呼吸器系の感染症治療に頻繁に用いられます。

特に肺炎や気管支炎などの呼吸器疾患に対して高い有効性を示すことが知られています。

ST合剤の「ST」はスルファメトキサゾールとトリメトプリムという2つの成分の頭文字を取ったものです。

これらの成分が相乗効果を発揮して様々な病原菌の増殖を抑制する働きがあります。

有効成分と作用機序 効果について

ST合剤の2つの有効成分

ST合剤(バクタ)はスルファメトキサゾール(SMX)とトリメトプリム(TMP)という2種類の抗菌薬を組み合わせた製剤です。

この2つの成分は細菌の葉酸合成経路を異なる段階で阻害することで相乗的な抗菌作用を発揮します。

SMXはパラアミノ安息香酸と競合してジヒドロプテロイン酸合成酵素を阻害します。

一方でTMPはジヒドロ葉酸還元酵素を阻害してテトラヒドロ葉酸の生成を妨げます。

有効成分標的酵素
SMXジヒドロプテロイン酸合成酵素
TMPジヒドロ葉酸還元酵素

作用機序の詳細

細菌の増殖には葉酸が必須です。

ST合剤は細菌の葉酸合成を2段階で阻害することで強力な抗菌効果を発揮します。

SMXはパラアミノ安息香酸のアナログとして作用してジヒドロプテロイン酸合成酵素と結合します。

これにより ジヒドロプテロイン酸の合成が阻害されます。

TMPはジヒドロ葉酸還元酵素に高い親和性を示しテトラヒドロ葉酸への変換を妨げます。

この2段階の阻害によって細菌の葉酸合成が効果的に抑制されるのです。

ST合剤の抗菌スペクトル

ST合剤は広域スペクトルの抗菌薬として知られています。

グラム陽性菌やグラム陰性菌に対して優れた抗菌活性を示します。

  • 肺炎球菌
  • インフルエンザ菌
  • 大腸菌
  • クレブシエラ属

これらの病原菌に対して効果的に作用します。

細菌の種類代表的な菌
グラム陽性菌肺炎球菌・黄色ブドウ球菌
グラム陰性菌大腸菌・クレブシエラ属

ST合剤の主な適応症

ST合剤は様々な感染症の治療に用いられます。

特に呼吸器感染症や尿路感染症に対して高い有効性を示し具体的には次のような疾患に使用されます。

  • 気管支炎
  • 肺炎
  • 中耳炎
  • 膀胱炎
  • 腎盂腎炎

これらの感染症においてST合剤は第一選択薬として使用されることがあります。

適応症感染部位
気管支炎・肺炎下気道
中耳炎
膀胱炎・腎盂腎炎尿路

ST合剤の特徴と利点

ST合剤は2つの抗菌薬を組み合わせることでいくつかの利点があります。

まず単剤使用と比較して耐性菌の出現を抑制できます。

次に相乗効果により低用量で高い抗菌活性を得られます。

さらに経口投与で高い生体内利用率を示すため外来診療での使用に適しています。

これらの特徴によりST合剤は臨床現場で重宝される抗菌薬の1つとなっているのです。

使用方法と注意点

ST合剤の投与方法

ST合剤(バクタ)は通常経口投与で使用します。

成人の標準的な用量は1回1〜2錠を1日2回服用することが多いです。

ただし患者さんの年齢・体重・感染症の種類や重症度によって投与量を調整することがあります。

年齢層標準用量
成人1回1〜2錠 1日2回
小児体重に応じて調整

医師の指示に従って正確に服用することが大切です。

規定の用法・用量を守らないと十分な治療効果が得られないだけでなく耐性菌の出現リスクも高まります。

服用時の注意事項

ST合剤は食後に服用することをお勧めします。これは空腹時に服用すると胃腸障害のリスクが高まる可能性があるためです。

十分な水分と一緒に服用して錠剤を噛まずに飲み込むようにしましょう。

服用を忘れた際は気づいたときにすぐに服用してください。

ただし次の服用時間が近い場合は忘れた分を飛ばして通常のスケジュールに戻ります。決して2回分を同時に服用してはいけません。

服用のタイミング推奨事項
通常時食後に服用
飲み忘れ時気づいたらすぐに服用

治療期間と経過観察

ST合剤による治療期間は感染症の種類や重症度によって異なります。

一般的に症状が改善してからさらに数日間は服用を続けることが重要です。これは感染の再燃を防ぎ耐性菌の出現を抑制するためです。

治療中は定期的に医師の診察を受けて症状の改善状況や副作用の有無をチェックする必要があります。

Journal of Antimicrobial Chemotherapyに掲載された研究によるとST合剤の適切な治療期間を遵守することで 再発率が50%以上減少したという報告があります。

このことからも医師の指示通りに服薬を完遂することの重要性が分かります。

特殊な患者群での使用

ST合剤は腎機能障害のある患者さんでは慎重に使用する必要があります。

腎臓から排泄される薬剤のため腎機能が低下している場合は血中濃度が上昇しやすくなります。

このような患者さんでは用量調整や投与間隔の延長が必要になることがあります。

また高齢者・妊婦・授乳婦での使用についても個別に検討が求められます。

患者群使用上の注意点
腎機能障害用量調整が必要
高齢者副作用に注意

適応対象となる患者

呼吸器感染症患者

ST合剤(バクタ)は呼吸器感染症の治療に広く用いられる抗菌薬です。

特に市中肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪時に罹患した細菌性肺炎の患者さんに処方されることが多いです。

これらの疾患では肺炎球菌やインフルエンザ菌などの病原体が関与していることが多くST合剤の抗菌スペクトルと合致します。

疾患名主な起因菌
市中肺炎肺炎球菌・マイコプラズマ
COPD急性増悪インフルエンザ菌・肺炎球菌

気管支炎や副鼻腔炎といった上気道感染症の患者さんにも有効性が認められています。

これらの患者さんでは ST合剤が第一選択薬として使用されることがあります。

尿路感染症患者

ST合剤は尿路感染症の治療にも頻繁に使用されます。

膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症患者さんに対して高い有効性を示し、特に大腸菌やクレブシエラ属菌による感染症に効果的です。

尿路感染症の再発を繰り返す患者さんでは予防的な長期低用量投与が検討されることもあります。

尿路感染症の種類好発年齢層
急性膀胱炎成人女性
腎盂腎炎全年齢

皮膚軟部組織感染症患者

ST合剤は皮膚軟部組織感染症の患者さんにも使用されます。

治療期間

一般的な治療期間の目安

ST合剤(バクタ)による治療期間は感染症の種類や重症度によって異なります。

多くの場合では7日から14日程度の投与で十分な効果が得られます。

しかし感染部位や起因菌、患者さんの全身状態などによってはさらに長期の投与が必要となることもあります。

感染症一般的な治療期間
急性膀胱炎3〜5日
市中肺炎7〜10日

短期治療と長期治療の比較

感染症の種類によっては短期間の治療で十分な効果が得られることがあります。

例えば単純性膀胱炎では3日間の短期治療でも良好な治療成績が報告されています。

一方複雑性尿路感染症や重症肺炎では10日から14日以上の長期治療が推奨されます。

治療期間メリットデメリット
短期治療副作用リスク低下・耐性菌出現抑制再発リスク上昇
長期治療再発予防・難治性感染症に有効副作用リスク増加・耐性菌出現の懸念

治療期間の決定には 効果と副作用のバランスを慎重に考慮することが重要です。

症状改善後の継続投与

多くの感染症では症状が改善した後も数日間の継続投与が推奨されます。

これは感染の再燃を防ぎ完全な除菌を達成するために大切な手順です。

一般的に症状消失後さらに48〜72時間の投与継続が望ましいとされています。

The New England Journal of Medicineに掲載された研究では肺炎患者さんにおいて症状改善後も抗菌薬を3日間継続投与することで再発率が有意に低下したと報告されています。

このエビデンスからも症状改善後の継続投与の重要性が裏付けられています。

特殊な感染症における長期投与

一部の慢性感染症や難治性感染症では通常よりも長期の投与が必要となります。

次のような疾患では数週間から数か月に及ぶ長期投与が行われることがあります。

  • ノカルジア症(3〜6か月)
  • 骨髄炎(4〜6週間)

これらの長期投与では定期的な経過観察と副作用モニタリングが必要不可欠です。

感染症推奨治療期間備考
ノカルジア症3〜6か月免疫不全患者さんでは延長
骨髄炎4〜6週間手術併用で短縮可能

予防投与における治療期間

ST合剤は特定の患者さん群において感染予防目的で長期投与されることがあります。

主な対象は以下の通りです。

  • HIV感染症患者(ニューモシスチス肺炎予防)
  • 臓器移植後患者(日和見感染予防)

これらの予防投与では患者さんの免疫状態に応じて数か月から数年にわたる継続投与が行われます。

予防投与中は定期的に医師の診察を受けて副作用の有無や予防効果を評価することが大切です。

ST合剤(バクタ)の副作用とデメリット

消化器系副作用

ST合剤(バクタ)の使用に伴い最も頻繁に報告される副作用は消化器系の症状です。

多くの患者さんが軽度から中等度の胃腸障害を経験します。

具体的には以下のような症状が現れることがあります。

  • 悪心・嘔吐
  • 腹痛
  • 下痢

これらの症状は通常一過性で 薬剤の中止や対症療法で改善します。

副作用発現頻度対処法
悪心・嘔吐5-10%制吐剤投与・食後服用
下痢2-5%整腸剤投与・水分補給

消化器症状が重度の場合や持続する場合は医師に相談し投薬の中止や変更を検討する必要があります。

皮膚症状

ST合剤使用に関連する皮膚症状は比較的高頻度で発現します。

多くは軽度の発疹や掻痒感ですが、まれに重篤な皮膚反応を引き起こすことがあります。

注意すべき皮膚症状は次のようなものです。

  • 蕁麻疹
  • 光線過敏症
  • スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)

特にSJSは生命を脅かす可能性のある重篤な副作用です。

皮膚症状重症度対応
軽度発疹軽症経過観察 抗ヒスタミン薬
SJS重症即時中止 入院加療

皮膚症状が出現した際は速やかに医療機関を受診し適切な評価と対応を受けることが重要です。

血液学的副作用

ST合剤は血液細胞に影響を与えて様々な血液学的異常を引き起こす可能性があります。

主な血液学的副作用としては以下のようなものが知られています。

  • 好中球減少症
  • 血小板減少症
  • 貧血

これらの副作用は用量依存性で高用量や長期投与で発現リスクが上昇します。

血液学的副作用リスク因子モニタリング
好中球減少症高齢・腎機能低下定期的な血球数検査
血小板減少症高用量・長期投与出血傾向の観察

The New England Journal of Medicineに掲載された大規模コホート研究ではST合剤使用患者さんの約2%に臨床的に意味のある血液学的異常が発生したと報告されています。

このデータは血液学的副作用の重要性を示唆しており定期的な血液検査によるモニタリングの必要性を裏付けています。

肝機能障害

ST合剤は肝機能に影響を与えることがあり軽度の肝酵素上昇から重度の肝障害まで様々な程度の肝機能異常を引き起こす可能性があります。

肝機能障害のリスクは以下のような患者さんで高まります。

  • 高齢者
  • 既存の肝疾患を有する患者
  • アルコール多飲者

肝機能障害の早期発見と対応のため治療中は定期的な肝機能検査が大切です。

肝機能検査項目異常値の目安対応
AST/ALT基準値の3倍以上用量調整または中止
ビリルビン2.0 mg/dL以上即時中止・精査

薬剤耐性菌の出現

ST合剤の広範な使用は薬剤耐性菌の出現を促進するというデメリットがあります。

特に以下のような状況で耐性菌出現のリスクが高まります。

  • 不適切な使用(過少用量 治療期間の不足)
  • 長期予防投与
  • 地域での過剰使用

耐性菌の出現は個々の患者さんの治療失敗だけでなく公衆衛生上の問題にもなりかねません。

耐性菌主な問題点予防策
MRSA治療困難・院内感染適正使用・感染対策
耐性大腸菌尿路感染症難治化不要な予防投与回避

ST合剤の使用にあたっては有効性と副作用リスク、さらには耐性菌出現の可能性を慎重に秤にかけて個々の患者さんに最適な投与計画を立てることが重要です。

効果がなかった場合の代替治療薬

β-ラクタム系抗菌薬

ST合剤が効果を示さない時にはβ-ラクタム系抗菌薬が代替薬として考慮されます。

この系統の薬剤は細菌の細胞壁合成を阻害することで抗菌作用を発揮します。

呼吸器感染症や尿路感染症などST合剤と適応が重なる疾患に対して広く使用されています。

代表的な薬剤は以下のようなものです。

  • アモキシシリン
  • セフトリアキソン
  • ピペラシリン/タゾバクタム
薬剤名投与経路主な適応症
アモキシシリン経口市中肺炎・急性気管支炎
セフトリアキソン注射重症肺炎・複雑性尿路感染症

β-ラクタム系抗菌薬は広域スペクトルを持ち多くの一般細菌に有効です。

ニューキノロン系抗菌薬

ニューキノロン系抗菌薬はST合剤の代替薬として重要な位置を占めています。

これらの薬剤はDNAジャイレースを阻害することで殺菌作用を示します。

幅広い抗菌スペクトルを持ち呼吸器感染症や尿路感染症に対して高い有効性を示します。

主なニューキノロン系抗菌薬は次のようなものです。

  • レボフロキサシン
  • モキシフロキサシン
  • シプロフロキサシン
薬剤名特徴主な副作用
レボフロキサシン呼吸器感染症に強い腱障害・光線過敏症
シプロフロキサシン尿路感染症に有効消化器症状・中枢神経症状

ニューキノロン系抗菌薬は経口薬と注射薬の両方が使用可能で様々な臨床状況に対応できます。

マクロライド系抗菌薬

マクロライド系抗菌薬はST合剤が無効な非定型肺炎などの治療に用いられます。

これらの薬剤はリボソームに作用しタンパク質合成を阻害することで静菌作用を示します。

マイコプラズマやクラミジアなどの細胞内寄生菌に対して特に有効です。

代表的なマクロライド系抗菌薬は以下のものです。

  • アジスロマイシン
  • クラリスロマイシン
  • エリスロマイシン
薬剤名組織移行性服用回数
アジスロマイシン非常に良好1日1回
クラリスロマイシン良好1日2回

マクロライド系抗菌薬は抗菌作用に加えて抗炎症作用も有しており慢性呼吸器疾患の長期管理にも使用されます。

テトラサイクリン系抗菌薬

テトラサイクリン系抗菌薬はST合剤の代替薬として特に非定型病原体による感染症の治療に用いられます。

これらの薬剤はリボソームに結合してタンパク質合成を阻害し静菌作用を示します。

マイコプラズマ クラミジア リケッチアなどに対して高い効果を発揮します。

主なテトラサイクリン系抗菌薬には次のようなものがあります。

  • ドキシサイクリン
  • ミノサイクリン
  • テトラサイクリン
薬剤名半減期主な適応症
ドキシサイクリン長い市中肺炎・性感染症
ミノサイクリン中程度皮膚軟部組織感染症

テトラサイクリン系抗菌薬は歯や骨への沈着があるため小児や妊婦への使用は避けるべきです。

カルバペネム系抗菌薬

ST合剤が無効で重症感染症が疑われる際にはカルバペネム系抗菌薬が選択されることがあります。

これらの薬剤は最も強力なβ-ラクタム系抗菌薬で非常に広域なスペクトルを有します。

多剤耐性菌を含む多くの病原菌に対して殺菌的に働きます。

代表的なカルバペネム系抗菌薬は以下のものです。

  • メロペネム
  • イミペネム/シラスタチン
  • ドリペネム
薬剤名特徴使用上の注意点
メロペネム中枢神経系への移行性が良好耐性菌出現に注意
イミペネム/シラスタチン幅広い抗菌スペクトル痙攣のリスク

カルバペネム系抗菌薬は通常 入院患者さんの重症感染症に使用されます。

Journal of Antimicrobial Chemotherapyに掲載された多施設共同研究では ST合剤耐性大腸菌による複雑性尿路感染症に対してメロペネムが93%の臨床的有効性を示したと報告されています。

このデータはST合剤無効例に対するカルバペネム系抗菌薬の有用性を裏付けています。

代替薬の選択にあたっては感染部位・重症度・患者さん背景 薬・剤感受性などを総合的に判断して個々の症例に最適な薬剤を選定することが重要です。

ST合剤(バクタ)の併用禁忌薬剤

メトトレキサートとの併用

ST合剤とメトトレキサートの併用は重大な副作用のリスクがあるため厳重に禁忌とされています。

メトトレキサートは葉酸代謝拮抗薬であり、リウマチや特定の悪性腫瘍の治療に使用されます。

ST合剤もまた葉酸代謝に影響を与えるため両薬剤を同時に使用すると相乗的に葉酸代謝が阻害されます。

この相互作用によって骨髄抑制や肝機能障害などの重篤な副作用が発現する危険性が著しく上昇します。

薬剤名主な適応症併用時のリスク
メトトレキサート関節リウマチ・乾癬重度の骨髄抑制
ST合剤細菌感染症肝機能障害

ピリメタミンとの併用

ST合剤とピリメタミンの併用も避けるべき組み合わせです。

ピリメタミンはマラリアやトキソプラズマ症の治療に用いられる抗原虫薬です。

両薬剤とも葉酸代謝を阻害する作用を持つため併用によって重度の葉酸欠乏が引き起こされる可能性があります。

この相互作用は以下のような深刻な副作用をもたらす恐れがあります。

  • 巨赤芽球性貧血
  • 汎血球減少症
  • 血小板減少症
薬剤名作用機序併用リスク
ピリメタミン葉酸代謝阻害重度の造血障害
ST合剤葉酸代謝阻害免疫機能低下

これらの薬剤の併用が絶対に必要な状況では葉酸の補充や厳密な血液モニタリングが必要です。

アミオダロンとの併用

ST合剤とアミオダロンの併用は重篤な不整脈のリスクを高めるため避けるべきです。

アミオダロンは難治性の不整脈治療に用いられる抗不整脈薬です。

ST合剤との併用によりQT間隔の延長が増強されトルサード・ド・ポワントなどの致命的な不整脈を引き起こす可能性があります。

両薬剤の併用が避けられない状況では次の点に留意する必要があります。

  • 厳密な心電図モニタリング
  • 電解質バランスの維持
  • QT間隔延長の兆候に対する迅速な対応
薬剤名主な副作用併用時の注意点
アミオダロンQT延長・肺線維症心電図モニタリング
ST合剤皮疹・肝障害電解質バランス確認

特に高齢者や心疾患の既往がある患者さんではこの併用のリスクが一層高まるため細心の注意が求められます。

ワルファリンとの併用

ST合剤とワルファリンの併用は出血リスクを著しく増大させるため原則として避けるべきです。

ワルファリンは血液凝固を阻害する抗凝固薬で血栓症の予防や治療に広く使用されています。

ST合剤はワルファリンの代謝を阻害し血中濃度を上昇させることでその効果を増強します。

この相互作用により次のような重大な出血性合併症のリスクが高まります。

  • 消化管出血
  • 頭蓋内出血
  • 皮下出血
薬剤名作用機序併用時のリスク
ワルファリンビタミンK拮抗過度の抗凝固作用
ST合剤CYP2C9阻害出血傾向増強

両薬剤の併用が避けられない際はPT-INRの頻回測定や用量調整など慎重な管理が必要不可欠です。

フェニトインとの併用

ST合剤とフェニトインの併用は薬物動態学的相互作用を引き起こすため注意が必要です。

フェニトインはてんかんの治療に用いられる代表的な抗けいれん薬です。

ST合剤はフェニトインの代謝を阻害して血中濃度を上昇させる作用があります。

この相互作用によって以下のような問題が生じる可能性があります。

  • フェニトイン中毒症状(眼振・運動失調など)
  • ST合剤の血中濃度低下による効果減弱
薬剤名相互作用の機序臨床的影響
フェニトイン代謝阻害・誘導中毒症状・治療効果変動
ST合剤蛋白結合置換遊離型濃度上昇

これらの薬剤を併用する際は血中濃度モニタリングや臨床症状の注意深い観察が重要です。

ST合剤(バクタ)の薬価について

薬価

ST合剤(バクタ)の薬価は製剤の種類や含有量によって異なります。

一般的に使用される錠剤タイプの場合では1錠あたり約20円から30円程度です。

製剤薬価(1錠あたり)
錠剤20-30円
配合顆粒40-50円

処方期間による総額

1週間処方の場合は通常の用法・用量(1回2錠 1日2回)で計算すると約560円から840円になります。

1ヶ月処方では約2400円から3600円程度になると予想されます。

処方期間概算総額
1週間560-840円
1ヶ月2400-3600円

ジェネリック医薬品との比較

ST合剤のジェネリック医薬品は先発品と比較して20%から30%程度安価です。

  • 先発品(バクタ)1錠 約30円
  • ジェネリック品 1錠 約21円

長期服用が必要な時はジェネリック医薬品の使用で医療費の節約につながる可能性があります。

以上

参考にした論文