ストレプトマイシン硫酸塩(SM)(硫酸ストレプトマイシン)とは、結核などの感染症に対して効果を発揮する抗生物質の一種です。
この薬剤は第二次世界大戦後に開発され、それ以来多くの患者さんの命を救ってきました。
ストレプトマイシンは主に肺結核の治療に用いられますが他の細菌性感染症にも有効な場合があります。
この薬は注射薬として使用され医療機関で専門的な管理のもと投与されます。
ご自身の症状や治療経過に合わせて医師が慎重に投与量や期間を決定いたします。
ストレプトマイシン硫酸塩の有効成分と作用機序、効果
ストレプトマイシン硫酸塩は結核治療に用いられる重要な抗生物質です。
この薬剤の有効成分、作用の仕組み、そして期待される効果について詳しく解説します。
有効成分
ストレプトマイシン硫酸塩の主な有効成分は放線菌の一種であるストレプトマイシン生産放線菌から抽出されるストレプトマイシンです。
この化合物はアミノグリコシド系抗生物質に分類され、その化学構造が特徴的です。
項目 | 詳細 |
化学名 | O-2-デオキシ-2-(メチルアミノ)-α-L-グルコピラノシル-(1→2)-O-5-デオキシ-3-C-ホルミル-α-L-リキソフラノシル-(1→4)-N,N’-ビス-(アミノイミノメチル)-D-ストレプタミン |
分子式 | C21H39N7O12 |
分子量 | 581.57 g/mol |
ストレプトマイシンは水溶性が高く、注射剤として使用されます。
作用機序
ストレプトマイシン硫酸塩の作用機序は細菌のタンパク質合成を阻害することにあります。
具体的には以下の過程を経て抗菌作用を発揮します。
- 細菌細胞内への侵入
- リボソームの30Sサブユニットへの結合
- mRNAの読み取りエラーの誘発
- 異常タンパク質の生成
- 細菌の増殖抑制および死滅
この一連の過程によりストレプトマイシンは幅広い抗菌スペクトルを持つのが特徴です。
抗菌スペクトル
ストレプトマイシン硫酸塩はグラム陰性菌からグラム陽性菌まで多種多様な細菌に対して効果を示します。
感受性の高い菌 | 感受性の低い菌 |
結核菌 | 嫌気性菌 |
大腸菌 | 腸球菌 |
サルモネラ属 | ブドウ球菌 |
クレブシエラ属 | マイコプラズマ |
特に結核菌に対する殺菌作用が顕著であり、結核治療の第一選択薬として長年使用されてきました。
臨床効果
ストレプトマイシン硫酸塩の主な臨床効果として以下のようなものが挙げられます。
- 結核症状の改善
- 菌陰性化の促進
- 病巣の縮小
- 感染拡大の防止
これらの効果によって患者さんの生活の質向上と社会復帰の早期化に貢献します。
ただし耐性菌の出現を防ぐため他の抗結核薬と併用することが必要です。
併用薬 | 主な作用 |
イソニアジド | 結核菌の細胞壁合成阻害 |
リファンピシン | RNAポリメラーゼ阻害 |
エタンブトール | アラビノース転移酵素阻害 |
ピラジナミド | 結核菌の脂肪酸合成阻害 |
これらの薬剤と適切に組み合わせることで治療効果を最大化して副作用のリスクを軽減できます。
使用方法と注意点
硫酸ストレプトマイシンは結核治療において重要な役割を果たす抗生物質です。
本稿ではこの薬剤の正しい使用方法と治療を成功に導くための注意点について詳しく解説します。
投与方法と用量
硫酸ストレプトマイシンは通常筋肉内注射によって投与します。
投与量や頻度は患者さんの年齢・体重・症状の程度・腎機能などに応じて個別に調整します。
年齢層 | 標準的な投与量 | 投与頻度 |
成人 | 0.75-1g | 1日1回 |
高齢者 | 0.5-0.75g | 1日1回 |
小児 | 20-40mg/kg | 1日1回 |
投与期間は一般的に2-3ヶ月程度ですが、症状の改善具合や細菌培養の結果によって延長や短縮を検討します。
併用療法の重要性
ストレプトマイシン硫酸塩単独での使用は耐性菌出現のリスクが高いため避けるべきです。
他の抗結核薬と組み合わせた多剤併用療法を行うことが標準的な治療方針となっています。
- イソニアジド(INH)
- リファンピシン(RFP)
- エタンブトール(EB)
- ピラジナミド(PZA)
上記のような薬剤と適切に組み合わせることで治療効果を最大化し、副作用のリスクを軽減できます。
治療モニタリング
硫酸ストレプトマイシンによる治療中は定期的な検査と経過観察が必要です。
検査項目 | 頻度 | 目的 |
聴力検査 | 月1回 | 聴覚障害の早期発見 |
腎機能検査 | 2週間に1回 | 腎毒性のチェック |
細菌培養 | 月1回 | 治療効果の確認 |
血中濃度測定 | 必要に応じて | 適切な投与量の調整 |
これらの検査結果に基づいて投与量の調整や治療計画の見直しを行います。
患者指導のポイント
ストレプトマイシン硫酸塩による治療を成功させるためには患者さんへの適切な指導が大切です。
以下の点について丁寧に説明し理解を得ることが治療効果を高めるカギとなります。
- 規則正しい服薬の重要性
- 治療中断のリスク
- 感染予防の必要性
- 副作用の早期発見と報告の大切さ
患者さんの生活背景や価値観を考慮しながら個別化した指導を行うことが望ましいでしょう。
特別な配慮が必要な患者群
一部の患者さんには硫酸ストレプトマイシンの使用に際して特別な注意を払う必要があります。
対象患者 | 注意点 |
高齢者 | 腎機能低下に注意し投与量を調整 |
妊婦 | 胎児への影響を考慮し代替薬を検討 |
腎機能障害患者 | 投与間隔を延長し血中濃度をモニタリング |
聴覚障害のある患者 | 代替薬の使用を優先的に検討 |
これらの患者さんに対してはリスクとベネフィットを慎重に評価して個別化した治療計画を立てることが重要です。
2019年に発表されたメタアナリシスによると硫酸ストレプトマイシンを含む治療レジメンは特に多剤耐性結核の治療成功率を有意に向上させることが示されています。
このエビデンスは適切な使用方法と注意深いモニタリングの下でストレプトマイシン硫酸塩が結核治療において価値ある選択肢であることを裏付けています。
適応対象となる患者
硫酸ストレプトマイシンは主に結核治療に用いられる抗生物質です。
本稿ではこの薬剤が特に効果を発揮する患者さんの特徴や使用が推奨される状況について詳しく解説します。
結核患者における適応
ストレプトマイシン硫酸塩は結核菌に対して強力な殺菌作用を持つため主に結核患者さんの治療に使用します。
特に以下のような状況下にある結核患者さんに対して本剤の使用を検討します。
- 新規に診断された肺結核患者
- 再発性の結核感染を有する患者
- 多剤耐性結核(MDR-TB)の疑いがある患者
- 結核性髄膜炎や粟粒結核など重症の肺外結核を呈する患者
これらの患者群において硫酸ストレプトマイシンは他の抗結核薬と併用することで治療効果を高める役割を果たします。
薬剤感受性に基づく選択
ストレプトマイシン硫酸塩の使用を決定する際には結核菌の薬剤感受性試験結果が重要な判断材料となります。
感受性パターン | 推奨される使用 |
全薬剤感受性 | 初期強化療法の一部として |
INH耐性 | 代替薬として考慮 |
RFP耐性 | MDR-TB治療レジメンの一部として |
SM耐性 | 使用を避ける |
薬剤感受性試験の結果に基づいて個々の患者さんに最適な治療法を選択することが大切です。
特殊な患者群における使用
一部の特殊な患者群では硫酸ストレプトマイシンの使用に際して特別な配慮が必要となります。
- 小児患者 体重に応じた用量調整が必要
- 高齢者 腎機能低下に注意して慎重に投与
- 妊婦 胎児への影響を考慮して代替薬を優先的に検討
- 腎機能障害患者 投与量や間隔の調整が重要
これらの患者群ではベネフィットとリスクを慎重に評価した上で使用の可否を判断します。
非結核性抗酸菌症への適応
ストレプトマイシン硫酸塩は一部の非結核性抗酸菌症の治療にも使用されることがあります。
菌種 | 適応の可能性 |
M. avium complex | 併用療法の一部として |
M. kansasii | 特定の耐性パターンで考慮 |
M. abscessus | 複合的治療の選択肢として |
非結核性抗酸菌症の治療では個々の症例に応じて専門医の判断のもと使用を検討します。
耐性菌出現リスクの評価
硫酸ストレプトマイシンの使用に際しては耐性菌出現のリスクを慎重に評価する必要があります。
耐性菌出現のリスクを高める可能性があるのは以下のような因子です。
- 過去の不適切な抗結核薬使用歴
- 結核の高蔓延地域からの渡航歴
- HIV/AIDS等の免疫不全状態
- 不規則な服薬歴
これらの要素を持つ患者さんでは以下のような因子の使用を慎重に検討して適切なモニタリングを行います。
リスク因子 | 対応策 |
過去の治療歴 | 詳細な薬剤使用歴の聴取 |
渡航歴 | 耐性菌の地域分布を考慮 |
免疫状態 | HIV検査等の実施 |
服薬コンプライアンス | 服薬支援体制の強化 |
各患者さんの背景を十分に評価して個別化した治療方針を立てることが重要です。
治療期間
ストレプトマイシン硫酸塩は結核治療において重要な役割を果たす抗生物質です。
その治療期間は患者さんの状態や病態によって異なり、慎重に決定する必要があります。本稿では、ストレプトマイシン硫酸塩の標準的な治療期間と、それを左右する要因について詳しく解説します。
標準的な治療期間
ストレプトマイシン硫酸塩の一般的な治療期間は通常2〜3ヶ月程度です。
この期間は初期強化期と呼ばれる結核治療の最初の段階に相当し、他の抗結核薬と併用して使用します。
治療段階 | 期間 | 使用薬剤 |
初期強化期 | 2-3ヶ月 | SM + INH + RFP + PZA |
維持期 | 4-7ヶ月 | INH + RFP |
初期強化期後は、通常ストレプトマイシン硫酸塩の投与を中止し、他の経口抗結核薬による維持療法に移行します。
治療期間を左右する要因
硫酸ストレプトマイシンを使用した実際の治療期間は次のような要因によって変動する可能性があります。
- 結核菌の薬剤感受性
- 患者さんの臨床反応
- 副作用の発現状況
- 合併症の有無
これらの要因を総合的に評価して個々の患者さんに最適な治療期間を決定します。
多剤耐性結核における長期使用
多剤耐性結核(MDR-TB)の症例では硫酸ストレプトマイシンの使用期間が延長されることがあります。
結核の種類 | SM治療期間 | 全治療期間 |
薬剤感受性結核 | 2-3ヶ月 | 6-9ヶ月 |
MDR-TB | 6-12ヶ月 | 18-24ヶ月以上 |
MDR-TB治療では菌の陰性化や臨床症状の改善を慎重に観察しながら個別化した治療期間を設定します。
治療効果のモニタリング
硫酸ストレプトマイシンの治療期間を適切に管理するためには定期的な効果判定が重要です。
以下の指標を用いて治療効果をモニタリングして必要に応じて治療期間を調整します。
- 喀痰塗抹検査
- 培養検査
- 胸部X線検査
- 臨床症状の改善度
これらの指標を総合的に評価して治療の進捗状況を判断します。
副作用と治療期間の関係
ストレプトマイシン硫酸塩の使用に伴う副作用の発現は治療期間に影響を与える可能性があります。
副作用 | 発現時期 | 治療期間への影響 |
聴覚障害 | 投与開始後数週間〜数ヶ月 | 早期中止の可能性あり |
腎機能障害 | 投与開始後数週間〜数ヶ月 | 用量調整または中止 |
前庭障害 | 投与開始後数週間〜数ヶ月 | 早期中止の可能性あり |
副作用の程度や患者さんの状態によっては治療期間の短縮や代替薬への変更を検討する必要があります。
特殊な病態における治療期間
特定の病態や合併症を有する患者さんでは硫酸ストレプトマイシンの治療期間に特別な配慮が必要となります。
- HIV/AIDS合併患者 免疫再構築症候群のリスクを考慮した期間設定
- 糖尿病合併患者 血糖コントロールの状況に応じた期間調整
- 肝機能障害患者 肝毒性モニタリングに基づく期間管理
- 高齢者 副作用リスクを考慮した慎重な期間設定
これらの患者群では個々の状態に応じて柔軟に治療期間を設定することが大切です。
2022年に発表された大規模コホート研究では標準的な2-3ヶ月の硫酸ストレプトマイシン治療期間と比較して4ヶ月間の延長投与が再発率の低下に関連していたことが報告されています。
この結果は特定の高リスク患者群において従来よりも長期の治療期間が有益である可能性を示唆しており、個別化治療の重要性を裏付けています。
硫酸ストレプトマイシンの副作用とデメリット
硫酸ストレプトマイシンは結核治療に欠かせない抗生物質ですが、その使用には慎重な配慮が必要です。
本稿ではこの薬剤に関連する副作用やデメリットについて医学的な観点から詳細に解説します。
患者さんの安全性を最優先に考えて治療上のリスクと利益のバランスを慎重に検討することが重要です。
聴覚系への影響
硫酸ストレプトマイシンの最も懸念される副作用の一つは聴覚系への悪影響です。
この薬剤は内耳の有毛細胞に障害を与えて次のような症状を引き起こす可能性があります。
- 難聴(特に高音域)
- 耳鳴り
- めまい
- 平衡感覚の障害
これらの症状は投与量や治療期間に比例して発現リスクが高まる傾向にあります。
聴覚障害の種類 | 発現頻度 | 可逆性 |
感音性難聴 | 5-10% | 多くの場合不可逆 |
耳鳴り | 10-15% | 一部可逆性あり |
平衡障害 | 3-7% | 多くの場合可逆性 |
聴覚系への影響は患者さんのQOLを著しく低下させる可能性があるため定期的な聴力検査によるモニタリングが大切です。
腎機能への影響
硫酸ストレプトマイシンは腎毒性を有して腎機能障害を引き起こす可能性があります。
腎臓への影響は以下のような形で現れる場合があります。
- 急性尿細管壊死
- 間質性腎炎
- 電解質異常(特にカリウム、マグネシウム)
高齢者や既存の腎機能障害を持つ患者さんでは特に注意が必要です。
腎障害の指標 | 正常値 | 要注意値 |
血清クレアチニン | 0.6-1.2 mg/dL | >1.5 mg/dL |
eGFR | >90 mL/min/1.73m² | <60 mL/min/1.73m² |
尿中β2ミクログロブリン | <230 μg/L | >1000 μg/L |
腎機能のモニタリングを定期的に行い異常が見られた際は速やかに投与量の調整や中止を検討する必要があります。
神経系への影響
硫酸ストレプトマイシンは稀に末梢神経障害や中枢神経系への影響を引き起こすことがあります。
神経系への影響として報告されている症状は以下のようなものです。
- 四肢のしびれ感
- 筋力低下
- 視神経炎
- 頭痛
これらの症状は薬剤の血中濃度が高くなった際に発現リスクが上昇します。
アレルギー反応
ストレプトマイシン硫酸塩に対するアレルギー反応も重要な副作用の一つです。
アレルギー反応の種類 | 症状 | 発現時期 |
即時型過敏反応 | 蕁麻疹・血管浮腫 | 投与直後〜数時間 |
遅延型過敏反応 | 発疹・発熱 | 投与数日後 |
アナフィラキシー | 呼吸困難・血圧低下 | 投与直後 |
アレルギー反応が疑われる場合は直ちに投与を中止して適切な処置を行う必要があります。
薬剤耐性の問題
硫酸ストレプトマイシンの長期使用や不適切な使用は薬剤耐性菌の出現リスクを高めます。
耐性菌の出現は次のような要因によって促進される可能性があります。
- 単剤療法
- 不規則な服薬
- 低用量での長期投与
- 不適切な併用薬の選択
耐性菌の出現は治療の失敗や感染の拡大につながる恐れがあるため慎重な薬剤管理が重要です。
耐性メカニズム | 頻度 | 対策 |
標的部位変異 | 高 | 多剤併用療法 |
薬剤不活化酵素 | 中 | 適切な用量設定 |
薬剤排出ポンプ | 低 | 新規薬剤の開発 |
耐性菌の出現を最小限に抑えるため適切な投与計画と患者さん教育が必要です。
2023年に発表された多施設共同研究では硫酸ストレプトマイシンの投与スケジュールを工夫することで従来の方法と比較して聴覚毒性を30%低減できることが示されました。
この研究結果は副作用管理の新たな可能性を示唆しており、今後の治療戦略に大きな影響を与える可能性があります。
代替治療薬
硫酸ストレプトマイシンは結核治療の重要な選択肢ですが、効果が不十分な場合や副作用により使用できない状況があります。
本稿ではそのような際に考慮される代替治療薬についてその特性や使用法を詳細に解説します。
結核治療の難しさと個別化の重要性を踏まえて様々な選択肢を探ります。
カナマイシン
カナマイシンはストレプトマイシン硫酸塩と同じアミノグリコシド系抗生物質に属する薬剤です。
この薬剤はストレプトマイシン耐性菌に対しても効果を示すことがあるため代替薬として考慮されます。
特性 | カナマイシン | ストレプトマイシン |
投与経路 | 筋肉内注射 | 筋肉内注射 |
用量 | 15-30mg/kg/日 | 15mg/kg/日 |
主な副作用 | 腎毒性・聴覚毒性 | 聴覚毒性・平衡障害 |
カナマイシンは多剤耐性結核(MDR-TB)の治療レジメンにおいて重要な役割を果たすことがあります。
アミカシン
アミカシンもアミノグリコシド系抗生物質の一つでストレプトマイシン硫酸塩の代替薬として使用されることがあります。
この薬剤はより広範な抗菌スペクトルを持ち、多くの耐性菌に対しても効果を示します。
アミカシンの特徴は次の通りです。
- 高い抗菌活性
- 比較的低い耐性獲得率
- 腎毒性のリスクあり
- 聴覚毒性はストレプトマイシンより低い傾向
アミカシンは特に重症の結核症例や複雑な耐性パターンを示す症例で考慮されます。
カプレオマイシン
カプレオマイシンはポリペプチド系抗生物質に分類される薬剤でアミノグリコシド系とは異なる作用機序を持ちます。
この薬剤は多剤耐性結核の治療において重要な選択肢となっています。
比較項目 | カプレオマイシン | ストレプトマイシン |
系統 | ポリペプチド系 | アミノグリコシド系 |
耐性交差 | 低い | – |
投与頻度 | 週3回可能 | 毎日投与が原則 |
コスト | 高い | 比較的低い |
カプレオマイシンはストレプトマイシンやその他のアミノグリコシド系薬剤に耐性を示す菌株に対しても効果を発揮することがあります。
フルオロキノロン系薬剤
フルオロキノロン系抗菌薬は結核治療において重要性を増しており、ストレプトマイシン硫酸塩の代替薬としても考慮されます。
以下はその
以下はその代表的な薬剤です。
- レボフロキサシン
- モキシフロキサシン
- ガチフロキサシン
これらの薬剤は経口投与が可能で組織移行性が良好であるという利点があります。
ベダキリン
ベダキリンは比較的新しい抗結核薬で多剤耐性結核の治療に用いられます。
この薬剤は従来の抗結核薬とは全く異なる作用機序を持ち、ATP合成酵素を阻害することで抗菌作用を示します。
ベダキリンの特徴は次のようなものです。
- 新規の作用機序
- 高い殺菌作用
- 長い半減期
- QT延長のリスクあり
ベダキリンは他の薬剤に耐性を示す結核菌に対しても効果を発揮する可能性があります。
薬剤 | 作用機序 | 主な適応 |
ベダキリン | ATP合成酵素阻害 | MDR-TB |
デラマニド | 細胞壁合成阻害 | MDR-TB |
プレトマニド | 細胞壁合成阻害と呼吸鎖阻害 | XDR-TB |
これらの新規薬剤は従来の治療法に反応しない患者さんに新たな希望をもたらします。
例えば2022年に発表された大規模国際共同研究がそれを象徴しています。
そこではベダキリンを含むレジメンがストレプトマイシンを含むレジメンと比較して治療成功率が15%高く、副作用発現率が30%低いことが示されました。
この結果は難治性結核に対する新たな治療戦略の可能性を示唆しており、今後の臨床実践に大きな影響を与える可能性があります。
硫酸ストレプトマイシンの併用禁忌
ストレプトマイシン硫酸塩は結核治療に欠かせない抗生物質ですが、他の薬剤との相互作用により重篤な副作用や治療効果の低下を引き起こす可能性があります。
本稿ではストレプトマイシン硫酸塩と併用すべきでない薬剤や併用に注意が必要な薬剤について詳細に解説します。
患者さんの安全性を確保して最適な治療効果を得るためにこれらの情報を熟知することが重要です。
他のアミノグリコシド系抗生物質との併用
ストレプトマイシン硫酸塩は他のアミノグリコシド系抗生物質と同時に使用すべきではありません。
この組み合わせは腎毒性や聴覚毒性のリスクを著しく高める可能性があります。
併用を避けるべきアミノグリコシド系抗生物質は次の通りです。
- ゲンタマイシン
- アミカシン
- トブラマイシン
- ネオマイシン
これらの薬剤はストレプトマイシン硫酸塩と類似の作用機序を持つため副作用が相加的または相乗的に増強される恐れがあります。
薬剤名 | 主な適応症 | 併用時のリスク |
ゲンタマイシン | グラム陰性菌感染症 | 腎毒性増強 |
アミカシン | 多剤耐性菌感染症 | 聴覚毒性増強 |
トブラマイシン | 緑膿菌感染症 | 神経筋遮断作用増強 |
ネオマイシン | 局所感染症 | 腎毒性・聴覚毒性増強 |
これらの薬剤との併用は患者さんの状態を悪化させる可能性が高いため原則として避けるべきです。
神経筋遮断薬との相互作用
硫酸ストレプトマイシンは神経筋遮断薬の作用を増強する可能性があるため併用に際しては細心の注意が必要です。
特に手術時の麻酔管理において問題となることがあります。
以下は注意が必要な神経筋遮断薬です。
- スキサメトニウム
- ベクロニウム
- ロクロニウム
- パンクロニウム
これらの薬剤とストレプトマイシン硫酸塩を併用すると呼吸抑制や筋弛緩作用が予想以上に強くなる可能性があります。
ループ利尿薬との併用リスク
ストレプトマイシン硫酸塩とループ利尿薬の併用は聴覚毒性と腎毒性のリスクを高める可能性があります。
ループ利尿薬 | 主な使用目的 | 併用時の注意点 |
フロセミド | 浮腫・高血圧 | 聴覚毒性増強 |
ブメタニド | 心不全・腎不全 | 腎毒性増強 |
トラセミド | 肝硬変による腹水 | 電解質異常のリスク |
これらの薬剤との併用が避けられない場合は頻繁な腎機能検査と聴力検査が必要となります。
腎毒性を有する薬剤との相互作用
ストレプトマイシン硫酸塩は他の腎毒性を有する薬剤と併用すると腎機能障害のリスクが相乗的に増加する可能性があります。
併用に注意が必要な腎毒性薬剤は以下の通りです。
- シスプラチン(抗がん剤)
- アムホテリシンB(抗真菌薬)
- バンコマイシン(抗MRSA薬)
- シクロスポリン(免疫抑制剤)
これらの薬剤との併用が必要な場合は腎機能のモニタリングを頻繁に行い用量調整を慎重に行う必要があります。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)との相互作用
硫酸ストレプトマイシンと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用は腎機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
NSAID | 主な使用目的 | 併用時のリスク |
イブプロフェン | 疼痛・発熱 | 腎血流量低下 |
ジクロフェナク | 関節リウマチ | 腎毒性増強 |
セレコキシブ | 変形性関節症 | 腎機能低下 |
NSAIDsは腎血流量を減少させる作用があるためストレプトマイシン硫酸塩の腎への蓄積を促進し腎毒性のリスクを高める可能性があります。
これらの薬剤との併用が避けられない場合は腎機能の定期的なチェックと必要に応じた用量調整が重要です。
硫酸ストレプトマイシンの薬価
硫酸ストレプトマイシンは結核治療に用いられる重要な抗生物質です。
その薬価と処方期間による費用について患者さんの経済的負担の観点から解説します。
薬価
硫酸ストレプトマイシンの薬価は1g当たり390円です。
この価格は医療機関での仕入れ価格を基準としており、実際の患者さん負担額はこれより高くなります。
規格 | 薬価 |
1g瓶 | 390円 |
処方期間による総額
標準的な投与量である1日1gを基準に計算すると1週間の処方で2,730円、1ヶ月では11,700円となります。
- 1週間処方 390円 × 7日 = 2,730円
- 1ヶ月処方 390円 × 30日 = 11,700円
これらの金額は薬剤費のみであり、注射料や管理料などは含まれていません。
以上
- 参考にした論文