シタフロキサシン水和物(グレースビット)とは、呼吸器感染症の治療に使用される抗菌薬です。
この薬剤には、細菌の増殖を抑える効果があり、肺炎(はいえん)や気管支炎などの呼吸器系の感染症に対して高い効果を示します。
シタフロキサシン水和物の有効成分と作用機序 効果について
シタフロキサシン水和物の有効成分
シタフロキサシン水和物(グレースビット)の有効成分は文字通りシタフロキサシン水和物です。
ニューキノロン系抗菌薬に分類されるこの化合物は、細菌のDNA複製を阻害する働きを持ちます。
呼吸器感染症の治療に広く用いられるこの薬剤は、その効果的な抗菌作用により多くの患者さんの症状改善に一役買っています。
作用機序の詳細
シタフロキサシン水和物は、細菌のDNAジャイレースとトポイソメラーゼIVという二つの酵素を標的とします。
これらの酵素は、細菌のDNA複製や修復において要となる役割を担っています。
シタフロキサシン水和物がこれら酵素の働きを阻むことで、細菌のDNA合成が妨げられ、結果として細菌の増殖を抑制します。
この独特の作用機序により、シタフロキサシン水和物は多種多様な細菌に対して効果を発揮するのです。
以下の表に、シタフロキサシン水和物が作用する主な酵素をまとめました。
標的酵素 | 役割 |
DNA ジャイレース | DNA の二重らせん構造の巻き戻しと再結合 |
トポイソメラーゼ IV | DNA の分離と解きほぐし |
抗菌スペクトルの広さ
シタフロキサシン水和物は、幅広い種類の細菌に対して抗菌活性を示します。
特筆すべきは、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に効果があるという特性です。
加えて、嫌気性菌に対しても優れた抗菌作用を持つことが、様々な臨床試験で明らかになっています。
この広範な抗菌スペクトルにより、多岐にわたる呼吸器感染症の原因菌に対して効果的に作用します。
- グラム陽性菌(肺炎球菌(肺の炎症を引き起こす球形の細菌)など)
- グラム陰性菌(インフルエンザ菌(インフルエンザの原因となる細菌)など)
- 嫌気性菌(ペプトストレプトコッカス属(酸素のない環境で生育する細菌)など)
臨床効果と適応症
シタフロキサシン水和物は、多様な呼吸器感染症に対して高い有効性を示しています。
主な適応症には、肺炎、気管支炎、副鼻腔炎などが挙げられます。
中でも、市中肺炎や慢性呼吸器疾患の急性増悪に対する効果が際立っています。
複数の臨床試験において、従来の抗菌薬と比較しても優れた治療効果が報告されており、重症度の高い感染症にも対応できます。
適応症 | 主な原因菌 |
肺炎 | 肺炎球菌 インフルエンザ菌 |
気管支炎 | モラクセラ・カタラーリス |
副鼻腔炎 | 黄色ブドウ球菌 |
シタフロキサシン水和物の投与により、多くの患者さんで症状の改善が見られます。
一般的に、発熱や咳などの症状が和らぎ、全身状態の回復が期待できます。
重症例においても、適切な用量設定により効果的な治療を行えます。
薬物動態学的特徴
シタフロキサシン水和物は、口から服用した後すぐに吸収され、高い生物学的利用能を示します。
血中濃度のピークは服用後約1〜2時間で達成され、その後ゆっくりと減少していきます。
組織への移行性も良好で、肺組織などの感染部位に効率よく到達します。
こうした特性により、1日2回の投与で十分な治療効果が得られるのです。
項目 | 数値 |
生物学的利用能 | 約89% |
最高血中濃度到達時間 | 1〜2時間 |
血漿蛋白結合率 | 約60% |
シタフロキサシン水和物の使用方法と注意点
投与方法と用量
シタフロキサシン水和物(グレースビット)は、成人患者さんに対して通常1回50mgを1日2回、経口で服用していただきます。
本剤は食事の影響を受けにくいものの、空腹時に飲むと吸収が良くなるため、食事の1時間前か食後2時間以降に服用するのが理想的です。
高齢の方や腎臓の働きが低下している患者さんには、体内での代謝や排泄に変化が生じるため、投与量を慎重に調整する必要があります。
対象 | 通常用量 | 備考 |
成人 | 1回50mg 1日2回 | 空腹時服用推奨 |
高齢者 | 個別に調整 | 腎機能に注意 |
腎機能障害患者 | 個別に調整 | クレアチニンクリアランスを考慮 |
治療期間
シタフロキサシン水和物による治療は、一般的に7日から14日間続けます。
感染症の程度や原因となる細菌の種類、そして患者さんの体調などを総合的に判断して、個々の状況に応じた期間を設定します。
症状が良くなったように感じても、医師の指示なしに服用を中断せず、処方された期間を最後まで完了することが極めて重要です。
2018年に公表された研究結果によると、適切な治療期間を守り抜くことで、感染症の再発率が顕著に低下したという報告があります。
相互作用に関する注意点
シタフロキサシン水和物は、他の薬剤と一緒に服用する際に注意を払う必要があります。
とりわけ、金属イオンを含む制酸剤や鉄剤、カルシウム製剤と併用すると、本剤の吸収が妨げられる可能性があるため要注意です。
これらの薬を使用する場合は、シタフロキサシン水和物の服用前後2時間は避けるよう、患者さんにしっかりと説明します。
また、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と一緒に使うと、中枢神経系の副作用リスクが高まる可能性があるため、経過を注意深く観察します。
併用注意薬 | 相互作用 | 対処法 |
制酸剤 | 吸収低下 | 2時間以上の間隔をあける |
鉄剤・カルシウム製剤 | 吸収低下 | 2時間以上の間隔をあける |
NSAIDs | 副作用リスク上昇 | 慎重に経過観察 |
服用時の注意事項
シタフロキサシン水和物を安全かつ効果的に使用するために、次の点に気をつけましょう。
- 決められた用法・用量を厳守し、規則正しく服用する
- 飲み忘れに気づいたらすぐに服用するが、次の服用時間が近ければその回は飛ばす
過剰な量を服用したり長期間使用し続けたりすると、耐性菌が出現するリスクが高まるため避けるべきです。
さらに、光線過敏症を起こす可能性があるため、直射日光や強い紫外線を浴びることは控えるよう指導します。
特殊な状況での使用
妊娠中の方や妊娠の可能性がある女性、授乳中の方にシタフロキサシン水和物を使用する際は、特別な配慮が求められます。
動物実験では胎児への悪影響は確認されていませんが、安全性が完全に立証されていないため、利益が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用します。
授乳中の女性には、薬剤が母乳に移行することが報告されているため、授乳を一時的に中止するなどの対応を検討する必要があります。
対象 | 使用の可否 | 注意点 |
妊婦 | 有益性>危険性の場合のみ | 安全性未確立 |
授乳婦 | 慎重投与 | 授乳中止を検討 |
小児 | 原則使用不可 | 安全性未確立 |
適応対象患者
呼吸器感染症患者
シタフロキサシン水和物(グレースビット)は、呼吸器感染症の治療に主として用いられる抗菌薬です。
肺炎、気管支炎、副鼻腔炎などの症状に悩む患者様に対して、特に効果を発揮します。
これらの疾患は細菌感染が原因で発症するため、シタフロキサシン水和物の持つ抗菌作用が大いに役立ちます。
適応疾患 | 主な症状 |
肺炎 | 発熱 咳 胸痛 |
気管支炎 | 咳 痰 呼吸困難 |
副鼻腔炎 | 鼻閉 頭痛 顔面痛 |
難治性感染症患者
シタフロキサシン水和物は、他の抗菌薬に対して耐性を持つ細菌による感染症にも効果を示します。
多剤耐性菌が原因で呼吸器感染症に苦しむ患者様にとって、本剤は心強い味方となります。
特筆すべきは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や多剤耐性緑膿菌による感染症に対しても、優れた抗菌活性を持つことです。
- MRSAによる肺炎
- 多剤耐性緑膿菌による気道感染症
慢性呼吸器疾患患者
COPDや気管支拡張症などの慢性呼吸器疾患を抱える患者様は、感染症を繰り返すリスクが高くなります。
このような患者様が急性増悪を起こした際、シタフロキサシン水和物が選択肢として考慮されます。
慢性疾患による気道の構造変化や粘液クリアランスの低下が感染を助長するため、強力な抗菌作用を持つ本剤が威力を発揮します。
基礎疾患 | 感染リスク因子 |
COPD | 気道過敏性 粘液分泌増加 |
気管支拡張症 | 気道拡張 粘液貯留 |
高齢者および免疫不全患者
高齢の方や免疫機能が低下している患者様は、呼吸器感染症にかかりやすく、症状が重くなるリスクも高まります。
こうした患者様に対しては、幅広い抗菌スペクトルを持つシタフロキサシン水和物が選ばれることが多いです。
ただし、高齢者や腎機能に障害のある患者様では、薬物の代謝や排泄に影響が出るため、投与量の調整が欠かせません。
入院患者および院内感染症患者
入院中の患者様、とりわけ長期入院や人工呼吸器管理下にある方は、院内感染のリスクが高くなります。
シタフロキサシン水和物は、院内感染の元凶となる多剤耐性菌にも効果を示すため、このような患者様への使用が検討されます。
人工呼吸器関連肺炎(VAP)などの重篤な院内感染症に対しても、本剤の使用が有効な選択肢となります。
院内感染リスク因子 | 介入 |
長期入院 | 早期離床 感染対策強化 |
人工呼吸器管理 | 口腔ケア 体位管理 |
外来患者および軽症~中等症患者
シタフロキサシン水和物は経口薬であるため、外来で診療を受ける患者様や軽症から中等症の呼吸器感染症患者様にも使用します。
市中肺炎や急性気管支炎など、比較的軽度の感染症であっても、原因菌が特定できていない場合や、広域スペクトルの抗菌薬が必要と判断されるケースでは、本剤が選択されます。
外来で治療可能な患者様に対して本剤を使用することで、入院を避けられる可能性が高まります。
- 市中肺炎
- 急性気管支炎
- 慢性気管支炎の急性増悪
特殊な病原体による感染症患者
シタフロキサシン水和物は、一般的な細菌だけでなく、非定型病原体や嫌気性菌にも効果を発揮します。
マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなどの非定型病原体が引き起こす肺炎の患者様にも使用されます。
これらの病原体は通常の抗菌薬では効果が限られることがあるため、本剤の広域スペクトルが大きな武器となります。
非定型病原体 | 特徴 |
マイコプラズマ | 細胞壁を持たない |
クラミジア | 細胞内寄生性 |
レジオネラ | 環境中に生息 |
シタフロキサシン水和物の治療期間
標準的な治療期間
シタフロキサシン水和物(グレースビット)を用いた治療は、通常7日から14日間続けます。
この期間の設定には、感染症の種類や重症度、患者さんの全身状態などを総合的に判断し、個々の状況に応じて決定します。
多くの呼吸器感染症では、10日間程度の投与で十分な効果が得られるケースが多いようです。
感染症の種類 | 標準的な治療期間 |
市中肺炎 | 7-10日 |
気管支炎 | 5-7日 |
副鼻腔炎 | 10-14日 |
短期治療の可能性
近年、抗菌薬の短期投与に関する研究が進展しており、シタフロキサシン水和物においても短期治療の有効性を示唆するデータが蓄積されつつあります。
2019年に公表された興味深い研究結果によると、軽症から中等症の市中肺炎患者さんに対して、5日間のシタフロキサシン水和物投与が従来の10日間投与と同等の効果を示したそうです。
短期治療には、患者さんの服薬コンプライアンス向上や副作用リスクの軽減、医療費削減などの利点が期待できます。
- 服薬回数の減少による患者さんの負担軽減
- 抗菌薬耐性菌出現リスクの低下
長期治療が必要なケース
一方で、重症感染症や難治性感染症の場合は、より長期の治療期間を要するケースもあります。
慢性気道感染症の急性増悪や膿胸(のうきょう)などの複雑性肺炎では、14日以上の投与が必要となることもしばしばです。
このような長期治療を行う際には、定期的な臨床評価や検査を実施し、治療効果と副作用のモニタリングを慎重に行うことが欠かせません。
長期治療が必要な感染症 | 想定される治療期間 |
複雑性肺炎 | 14-21日 |
膿胸 | 21-28日以上 |
慢性気道感染症の急性増悪 | 14-21日 |
治療期間の個別化
シタフロキサシン水和物の治療期間は、画一的に決めるのではなく、患者さん一人一人の状態に合わせて個別化することが極めて重要です。
高齢の方や免疫機能が低下している患者さんでは、標準的な期間よりも長めの投与を検討する一方、若年層や軽症例では短期治療の可能性も探ります。
治療効果の判定には、臨床症状の改善だけでなく、炎症マーカーの推移や画像所見の変化なども含めて、総合的に評価を行います。
- 発熱や咳などの自覚症状の改善具合
- 白血球数やCRP(C反応性タンパク質)などの炎症マーカーの正常化傾向
治療期間の延長基準
初期治療で十分な効果が得られない場合、治療期間の延長を考慮に入れます。
72時間以内に解熱しない場合や、7日以内に臨床症状の明らかな改善が見られないときは、治療の再評価が必要となります。
このような状況下では、原因菌の薬剤感受性や合併症の有無を再度確認し、必要に応じて治療期間の延長を検討します。
延長を検討する基準 | 対応 |
72時間以内に解熱しない | 原因菌の再評価 |
7日以内に症状改善なし | 合併症の精査 |
炎症マーカーの改善不十分 | 治療期間の延長 |
治療終了の判断
シタフロキサシン水和物による治療を終了する際には、臨床症状の改善と炎症マーカーの正常化を十分に確認します。
多くのケースでは、解熱後48〜72時間の継続投与で治療を終了できますが、重症例や合併症を有する患者さんでは、より慎重な判断が求められます。
治療終了後も一定期間の経過観察を行い、再燃や再発の兆候がないことを確認することが大切です。
副作用・デメリット
消化器系の副作用
シタフロキサシン水和物(グレースビット)を服用すると、消化器系に不快な症状が現れることがあります。
最も多く見られるのは、悪心や嘔吐、下痢などのお腹の調子を崩す症状です。
これらの不調は大抵の場合、軽くて一時的なものですが、ときとして治療を中断せざるを得ないほど深刻になることもあるでしょう。
副作用 | 発現頻度 | 対処法 |
悪心・嘔吐 | 5-10% | 制吐剤の併用 |
下痢 | 3-8% | 整腸剤の使用 |
腹痛 | 2-5% | 経過観察 |
中枢神経系への影響
シタフロキサシン水和物は、脳や神経系に作用して様々な症状を引き起こします。
めまいや頭痛、眠れないといった比較的軽い症状から、まれに痙攣や意識が薄れるなどの重篤な副作用まで、幅広い影響が報告されています。
特に高齢の方や腎臓の働きが低下している患者さんでは、これらの副作用が出やすいため、慎重に経過を見守る必要があります。
- めまい・ふらつき
- 頭痛・不眠
- けいれん(極めてまれ)
皮膚症状と光線過敏症
シタフロキサシン水和物を服用中は、お肌に関連する副作用に気をつけましょう。
発疹や痒みといった軽い皮膚の症状から、まれに重症な薬疹まで、様々な皮膚トラブルが生じる可能性があります。
また、この薬の特徴的な副作用として光線過敏症があり、日光を浴びることで皮膚の炎症や水ぶくれができることがあります。
皮膚症状 | 特徴 | 予防・対策 |
発疹 | 全身に出現 | 抗ヒスタミン薬 |
掻痒感 | 皮疹を伴わないこともある | 保湿剤の使用 |
光線過敏症 | 日光暴露部位に限局 | 日光遮蔽 |
耐性菌の出現
シタフロキサシン水和物を長期間使用したり、不適切に使用したりすると、耐性菌が現れる可能性があります。
耐性菌が増えると、将来的な治療の選択肢が限られ、感染症の治療が難しくなるリスクがあります。
2020年に発表された研究によると、シタフロキサシン水和物を含むニューキノロン系抗菌薬の使用量と耐性菌の出現率に正の相関が見られたそうです。
薬物相互作用
シタフロキサシン水和物は、他の薬と一緒に使うときに注意が必要です。
特に、胃酸を中和する薬や金属イオンを含む薬(鉄剤、カルシウム剤など)と一緒に飲むと、体内への吸収が妨げられて効果が弱まることがあります。
また、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と併用すると、脳や神経系の副作用が起こりやすくなる可能性があります。
併用注意薬 | 相互作用 | 対策 |
制酸剤 | 吸収低下 | 服用時間をずらす |
NSAIDs | けいれんリスク上昇 | 慎重に併用 |
ワルファリン | 抗凝固作用増強 | 凝固能モニタリング |
特殊な患者群における使用制限
シタフロキサシン水和物は、特定の患者さんにおいて使用が制限される場合があります。
妊娠中の方や赤ちゃんに母乳をあげている方では、安全性が十分に確認されていないため、原則として使用を避けます。
また、お子さんに対しても、成長期の関節や骨への影響が心配されるため、使用するかどうかを慎重に検討する必要があります。
- 妊婦・授乳婦への投与制限
- 小児への使用制限(原則18歳未満は禁忌)
経済的な側面
シタフロキサシン水和物は、比較的新しい抗菌薬であるため、従来の抗菌薬と比べて値段が高めです。
このことは、患者さんの経済的な負担や医療費全体の増加につながります。
長期間の使用が必要な慢性感染症の患者さんや、何度も感染を繰り返す患者さんでは、特に経済面での影響を考える必要があります。
シタフロキサシン水和物が効かなかった場合の代替治療薬
他のフルオロキノロン系抗菌薬
シタフロキサシン水和物(グレースビット)の効果が芳しくない場合、同じフルオロキノロン系に属する別の抗菌薬を選択肢に入れます。
レボフロキサシンやモキシフロキサシンといった薬剤が代替薬として浮上してきます。
これらの薬はシタフロキサシン水和物と似た作用の仕組みを持っていますが、耐性のパターンが異なる可能性があるため、新たな効果が期待できるのです。
代替薬 | 商品名 | 特徴 |
レボフロキサシン | クラビット | 幅広い抗菌スペクトル |
モキシフロキサシン | アベロックス | 嫌気性菌にも有効 |
β-ラクタム系抗菌薬
フルオロキノロン系に抵抗を示す細菌に対しては、β-ラクタム系抗菌薬が有力な選択肢となり得ます。
この系統にはペニシリン系やセフェム系、カルバペネム系などが含まれ、感染症の重さや原因となる菌に応じて使い分けます。
特に肺炎球菌(肺に炎症を起こす球形の細菌)による感染症では、β-ラクタム系抗菌薬が真っ先に選ばれることが多いのです。
- アモキシシリン/クラブラン酸(オーグメンチン)
- セフトリアキソン(ロセフィン)
- メロペネム(メロペン)
マクロライド系抗菌薬
非定型病原体(マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなど、通常の細菌とは異なる特殊な病原体)による感染症が疑われる際、マクロライド系抗菌薬が代替治療として俎上に上がります。
クラリスロマイシンやアジスロマイシンなどが代表格です。
これらは細胞の中に潜む菌にも効果を発揮するため、シタフロキサシン水和物が効かない場合の強力な切り札となります。
代替薬 | 商品名 | 主な適応 |
クラリスロマイシン | クラリス | マイコプラズマ肺炎 |
アジスロマイシン | ジスロマック | 市中肺炎 |
テトラサイクリン系抗菌薬
マイコプラズマやクラミジアが引き起こす感染症に対しては、テトラサイクリン系抗菌薬も効果的な代替薬となります。
ミノサイクリンやドキシサイクリンなどがこの系統に属します。
これらの薬剤は非定型病原体に対して秀でた効果を示すだけでなく、一部の手ごわい多剤耐性菌にも効くことが知られているのです。
- ミノサイクリン(ミノマイシン)
- ドキシサイクリン(ビブラマイシン)
抗MRSA薬
シタフロキサシン水和物が効かず、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症の疑いが濃厚な場合、抗MRSA薬を選びます。
バンコマイシンやリネゾリドなどが代表的な薬剤として挙げられます。
これらは重症感染症や院内感染対策において、極めて重要な役割を担っています。
代替薬 | 商品名 | 投与経路 |
バンコマイシン | バンコマイシン | 点滴静注 |
リネゾリド | ザイボックス | 経口/点滴静注 |
併用療法
一つの薬だけでは十分な効果が得られない場合、複数の抗菌薬を組み合わせた併用療法を検討します。
例えば、β-ラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の組み合わせは、市中肺炎の重症例でよく用いられる手法です。
2019年に公表された研究成果によると、β-ラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬を併用した療法が、単独で使用した場合と比べて、重症の市中肺炎患者さんの死亡率を大幅に低下させたそうです。
抗菌薬以外の治療法
抗菌薬による治療が思わしくない場合、感染症以外の病気の可能性も視野に入れ、診断をゼロから見直します。
ウイルスが原因の病気や、感染とは関係のない炎症性疾患が新たに浮上してくることもあります。
このような状況下では、抗ウイルス薬や副腎皮質ステロイド薬などの使用を考慮する必要が出てきます。
- オセルタミビル(タミフル)インフルエンザの治療に
- プレドニゾロン 非感染性の炎症性疾患に対して
併用禁忌
金属カチオンを含む製剤との相互作用
シタフロキサシン水和物(グレースビット)を金属カチオンを含む薬と一緒に飲むと、体内での吸収が大幅に落ちてしまいます。
アルミニウムやマグネシウムが入っている胃薬、鉄剤、カルシウムのサプリメントなどが該当するのです。
これらの薬とシタフロキサシン水和物を使う際は、最低でも2時間以上の間を空けて服用するようにしましょう。
併用禁忌薬 | 含有成分 | 影響 |
制酸剤 | アルミニウム マグネシウム | 吸収低下 |
鉄剤 | 鉄 | 吸収低下 |
カルシウム製剤 | カルシウム | 吸収低下 |
QT延長を起こす薬剤との併用
シタフロキサシン水和物には、QT間隔(心電図で見られる心臓の電気的活動の一部)を延ばす作用があるため、同じようにQTを延長させる他の薬との併用には気をつけなければなりません。
不整脈の薬や、ある種の精神科の薬、うつ病の薬などがこれに当てはまります。
こういった薬と一緒に使うと、重い不整脈(トルサード・ド・ポアントという特殊な型の不整脈)を起こすリスクが高まってしまうのです。
- クラスIA抗不整脈薬(キニジン プロカインアミドなど)
- クラスIII抗不整脈薬(アミオダロン ソタロールなど)
テオフィリンとの相互作用
シタフロキサシン水和物とテオフィリン(喘息の治療に使う薬)を同時に使うと、テオフィリンの血液中の濃度が上がってしまう可能性があります。
テオフィリンは効果が出る濃度の幅が狭い薬なので、血中濃度が上がると副作用が出やすくなってしまいます。
一緒に使う場合は、テオフィリンの血中濃度を頻繁にチェックし、必要に応じて量を調整する必要があるでしょう。
併用注意薬 | 相互作用 | 対策 |
テオフィリン | 血中濃度上昇 | 血中濃度モニタリング |
アミノフィリン | 血中濃度上昇 | 用量調整 |
NSAIDsとの併用リスク
シタフロキサシン水和物と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を一緒に使うと、脳や神経系に関する副作用のリスクが高まってしまいます。
特に、けいれんを起こしやすくなり、発作が起きる可能性が増加するのです。
お年寄りや腎臓の働きが悪い患者さんでは、このリスクがさらに高くなるため、特に注意を払う必要があります。
- イブプロフェン
- ジクロフェナク
ワルファリンとの相互作用
シタフロキサシン水和物は、血液をサラサラにする薬であるワルファリンの効果を強めてしまう可能性があります。
両方の薬を使う際は、血液の固まりやすさを頻繁にチェックし、ワルファリンの量を慎重に調整しなければなりません。
出血のリスクが高まることを患者さんにしっかり説明し、経過を注意深く見守ることが大切です。
併用注意薬 | 相互作用 | モニタリング項目 |
ワルファリン | 抗凝固作用増強 | PT-INR |
その他の経口抗凝固薬 | 出血リスク上昇 | 出血症状 |
プロベネシドとの併用
シタフロキサシン水和物と、プロベネシド(痛風の治療に使う薬)を一緒に使うと、シタフロキサシン水和物の血液中の濃度が上がってしまいます。
これは、プロベネシドが腎臓の尿細管でシタフロキサシン水和物が排出されるのを邪魔してしまうからです。
血中濃度が上がると副作用が出やすくなる可能性があるので、患者さんの状態を注意深く観察する必要があるでしょう。
薬価
シタフロキサシン水和物(グレースビット)という抗菌薬は、50mg1錠あたり98.3円で販売されています。
規格 | 薬価(円) |
50mg1錠 | 98.3 |
細粒10% | 335.1 |
処方期間による総額
医師から1週間分の処方を受けた場合(1日2回50mgを服用)、お財布からの出費は1,376.2円になります。
一方、1ヶ月分まとめて処方されると、5,898円という金額になってしまいます。
- 1日の服用量 100mg(50mg×2回)
- 1週間の服用量 700mg(100mg×7日)
ジェネリック医薬品との比較
シタフロキサシン水和物のジェネリック医薬品は、本邦でも販売されています。
しかし、薬価はわずかに安い程度であり、医療費削減効果はあまり望めません。
比較項目 | 先発品 | ジェネリック |
薬価 | 98.3円/錠 | 92.6円/錠 |
なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
- 参考にした論文