セレキシパグ(ウプトラビ)とは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療に用いられる経口薬です。

この薬剤は血管拡張作用を持つプロスタサイクリン受容体作動薬の一種で、肺動脈の血管を広げて血流を改善する効果があります。

PAHは肺の血管が狭くなり血圧が上昇する深刻な疾患ですが、セレキシパグはその症状緩和に貢献します。

日々の服薬により息切れや疲労感などの自覚症状が軽減され患者さんのQOL(生活の質)向上が期待できます。

副作用や注意点もありますので処方を受ける際は担当医とよく相談することをお勧めします。

ウプトラビ に対する画像結果
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目次

有効成分と作用機序、そして効果

セレキシパグの有効成分

セレキシパグ(ウプトラビ)の主たる有効成分は化学名セレキシパグそのものであり、これは選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬として機能する新規の非プロスタノイド化合物です。

この薬剤は経口投与可能な形態で設計されており体内で活性代謝物ACT-333679に変換されることでその薬理作用を発揮します。

作用機序の詳細

セレキシパグおよびその活性代謝物はIP受容体に特異的に結合し、細胞内のサイクリックAMP(cAMP)濃度を上昇させることで血管平滑筋の弛緩と血小板凝集の抑制を引き起こします。

この作用により肺動脈の拡張と肺血管抵抗の低下が生じ、結果として肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者さんの症状改善につながります。

作用部位主要な効果
血管平滑筋弛緩
血小板凝集抑制

セレキシパグの薬理学的特徴

セレキシパグは従来のプロスタサイクリン製剤とは異なり非プロスタノイド構造を持つことが重要な特徴です。

この構造的特性により長時間作用型の薬剤としての性質を獲得し、1日2回の経口投与で効果を維持することが可能となりました。

また IP受容体に対する高い選択性を有することで 他のプロスタノイド受容体への作用を最小限に抑え 副作用のリスクを低減させています。

臨床効果と患者のQOL向上

セレキシパグの投与によりPH患者さんの運動耐容能の改善や症状の軽減が観察されています。

具体的には 6分間歩行距離の延長やWHO機能分類の改善、さらには臨床的増悪までの時間の延長などが報告されています。

これらの効果は患者さんの日常生活動作の向上につながり、生活の質の大幅な改善をもたらす可能性があります。

評価項目改善効果
6分間歩行距離延長
WHO機能分類改善
臨床的増悪までの時間延長

セレキシパグの長期的な治療効果

長期的な観点から見るとセレキシパグの継続的な使用はPAHの進行を抑制し、患者さんの予後を改善する可能性があります。

疾患の進行抑制は入院回数の減少や生存率の向上につながる可能性があり、患者さんのみならず医療経済的な観点からも有益であると考えられます。

以下はセレキシパグ投与による長期的な効果の例です。

  • 疾患進行の抑制
  • 入院回数の減少
  • 生存率の向上

セレキシパグと他の治療法の併用効果

セレキシパグは単独療法としての有効性が示されているだけでなく他のPAH治療薬との併用療法においても相乗効果を発揮する可能性があります。

例えばエンドセリン受容体拮抗薬やホスホジエステラーゼ5阻害薬との併用により、さらに包括的なPAH管理が実現できる場合があります。

このような多角的なアプローチは個々の患者さんの病態や重症度に応じた柔軟な治療戦略の立案を可能にします。

併用薬期待される効果
エンドセリン受容体拮抗薬血管拡張作用の増強
ホスホジエステラーゼ5阻害薬肺血管抵抗の更なる低下

セレキシパグの導入によってPAH治療の選択肢が拡大し、より個別化された治療アプローチが実現可能となりました。

このことはPAH患者さんの生命予後および生活の質の向上に大きく寄与する革新的な進歩であると言えるでしょう。

セレキシパグ(ウプトラビ)の使用方法と注意点

投与スケジュールと用量調整

セレキシパグ(ウプトラビ)の投与は通常1日2回の経口投与から開始します。

初期用量は0.2mgを1日2回とし、患者さんの状態を慎重に観察しながら1週間ごとに0.2mgずつ増量していきます。

最大投与量は1回1.6mgまでとされていますが、個々の患者さんの忍容性に応じて適切な維持用量を決定することが重要です。

投与段階1回用量1日投与回数
初期0.2mg2回
最大1.6mg2回

服用タイミングと食事の影響

セレキシパグは食事の影響を受けにくい薬剤ですが、一定の服用タイミングを維持することで安定した血中濃度を保つことができます。

朝晩の決まった時間に服用することが望ましく、食前または食後のどちらでも構いません。

服用を忘れた際は次の服用時間までの時間が短い場合は飛ばして次回の定時に服用するよう指導します。

併用薬との相互作用

セレキシパグは他の薬剤との相互作用に注意が必要です。

特に強力なCYP2C8阻害剤(ゲムフィブロジルなど)との併用は避けるべきで、CYP2C8誘導剤(リファンピシンなど)との併用時は用量調整が必要となることがあります。

併用注意薬影響
CYP2C8阻害剤血中濃度上昇
CYP2C8誘導剤血中濃度低下

患者モニタリングの重要性

セレキシパグ投与中は定期的な患者さんの状態評価が不可欠です。

血圧や心拍数のモニタリングはもちろん、6分間歩行試験や心エコー検査などを通じて治療効果と安全性を継続的に評価します。

肝機能検査も定期的に行い肝機能障害の早期発見に努めます。

以下のような症状が現れた際は直ちに報告するよう患者さんに説明します。

  • 息切れの悪化
  • 浮腫の増加
  • 失神

妊娠・授乳期の使用

妊娠中や授乳中の女性に対するセレキシパグの使用については十分なデータがありません。

そのため妊娠可能な女性には適切な避妊法の使用を推奨し、妊娠が判明した場合は直ちに担当医に相談するよう指導します。

患者状態対応
妊娠可能女性避妊法使用
妊娠判明時医師相談

長期使用時の注意点

セレキシパグの長期使用においては耐性の発現や効果の減弱に注意を払う必要があります。

定期的な効果の再評価を行い、必要に応じて用量調整や他剤との併用を検討します。

また長期的な副作用のモニタリングも重要で特に肝機能や心機能の変化には注意を払います。

服薬アドヒアランスの向上

セレキシパグの治療効果を最大限に引き出すには患者さんの服薬アドヒアランスが極めて重要です。

アドヒアランス向上を図るためには以下のような工夫が大切でしょう。

  • 服薬リマインダーアプリの活用
  • 服薬カレンダーの使用
  • 家族のサポート体制の構築

セレキシパグ(ウプトラビ)の適応対象となる患者

肺動脈性肺高血圧症(PAH)の診断基準

セレキシパグ(ウプトラビ)は主に肺動脈性肺高血圧症(PAH)と診断された患者さんに処方される薬剤です。

右心カテーテル検査が不可欠で平均肺動脈圧が25mmHg以上、肺動脈楔入圧が15mmHg以下、肺血管抵抗が3 Wood単位を超える場合にPAHと診断されます。

これらの基準を満たし、かつ他の肺高血圧症の原因が除外された患者さんがセレキシパグの主な適応対象となります。

診断項目基準値
平均肺動脈圧≥25mmHg
肺動脈楔入圧≤15mmHg
肺血管抵抗>3 Wood単位

AHの病因による分類と適応

PAHは様々な原因で発症しますがセレキシパグは以下のようなPAHのサブタイプに対して効果が期待できます。

  • 特発性PAH
  • 遺伝性PAH
  • 薬物誘発性PAH
  • 結合組織病に伴うPAH

特に特発性PAHや遺伝性PAHの患者さんではセレキシパグの効果が顕著に現れることが臨床試験で示されています。

WHOの機能分類と治療開始タイミング

世界保健機構(WHO)の機能分類はPAH患者さんの重症度を評価する重要な指標であり、セレキシパグの投与開始時期を決定する際の参考となります。

一般的にWHO機能分類IIまたはIIIの患者さんがセレキシパグの良い適応となりますが、個々の患者さんの状態や他の治療薬への反応性を考慮して判断することが大切です。

WHO機能分類日常生活の制限セレキシパグ適応
Iなし要検討
II軽度適応あり
III中等度適応あり
IV高度個別判断

併存疾患と投与対象の選定

PAH患者さんの中には様々な併存疾患を有する方がおり、これらの疾患の存在がセレキシパグの投与可否に影響を与える場合があります。

例えば重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)を有する患者さんではセレキシパグの使用が禁忌とされています。

また冠動脈疾患や不整脈などの心血管系疾患を併存する患者さんでは慎重な投与が求められます。

治療歴とセレキシパグの位置づけ

セレキシパグは単剤療法としても併用療法の一部としても使用可能ですが、患者さんの治療歴によってその位置づけが変わってきます。

エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)やホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)による初期治療で十分な効果が得られなかった患者さんに対してセレキシパグを追加することで症状の改善が期待できます。

初期治療効果不十分時の対応
ERA単剤セレキシパグ追加
PDE5i単剤セレキシパグ追加
ERA+PDE5iセレキシパグ追加

年齢と適応判断

セレキシパグの臨床試験では主に成人患者さんを対象としていましたが、高齢者や若年者においても安全性と有効性が確認されています。

ただし18歳未満の小児患者さんに対する使用経験は限られているため慎重な判断が求められます。

高齢患者さんの場合は腎機能や肝機能の低下、他の合併症の有無を考慮しつつ個別に適応を検討する必要があります。

年齢に応じた適応判断には以下の点に注意が必要です。

  • 若年者 成長への影響の可能性
  • 高齢者 薬物動態の変化と副作用リスク

妊娠可能年齢の女性患者さんへの配慮

妊娠可能年齢の女性PAH患者さんに対するセレキシパグの投与には特別な配慮が必要です。

妊娠中のセレキシパグ使用に関する安全性データは限られています。

そのため妊娠を希望する、または妊娠の可能性がある患者さんでは治療によるベネフィットとリスクを慎重に評価して適切な避妊法の使用を含めた総合的な判断が求められます。

患者状況対応
妊娠希望リスク評価
妊娠可能性あり避妊指導

治療期間と予後

長期治療の必要性

セレキシパグ(ウプトラビ)による肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療は基本的に長期にわたる継続的な投与が必要とされます。

PAHは慢性進行性の疾患であり薬物療法を中断することで症状が急速に悪化する可能性があるため、患者さんの状態が安定している場合でも治療の継続が不可欠です。

多くのケースでは生涯にわたる治療が想定されますが、個々の患者さんの病状や治療への反応性に応じて投与期間や用量を調整していくことになります。

治療段階期間主な目標
導入期数週間〜数ヶ月症状改善
維持期数年〜生涯病状安定化

治療効果の評価と投与期間の決定

セレキシパグの治療効果を評価するためには定期的なフォローアップが重要です。

通常治療開始後3〜6ヶ月ごとに 6分間歩行試験や心エコー検査 血液検査などを実施して病状の進行や改善の程度を確認します。

これらの評価結果に基づいて投与継続の判断や用量調整を行いますが、多くの患者さんでは長期的な治療継続が推奨されます。

評価項目評価頻度指標
6分間歩行試験3〜6ヶ月ごと歩行距離
心エコー検査6〜12ヶ月ごと右室機能
血液検査3〜6ヶ月ごとBNP/NT-proBNP

併用療法と治療期間への影響

セレキシパグは単剤療法としても使用されますが、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)やホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)との併用療法も広く行われています。

併用療法を行う際にはそれぞれの薬剤の相乗効果や相互作用を考慮しつつ長期的な治療戦略を立てることが大切です。

例えばERAとの併用では相乗的な血管拡張効果が期待できる一方で肝機能への影響に注意が必要となるため、より慎重な経過観察が求められます。

併用薬期待効果注意点
ERA相乗的血管拡張肝機能モニタリング
PDE5i肺血管抵抗低下血圧低下リスク

治療中断のリスクと再開時の注意点

セレキシパグの治療を中断するとPAHの症状が急速に悪化する危険性があります。

やむを得ず治療を中断せざるを得ない状況(手術や妊娠など)では慎重な管理と代替療法の検討が必要となります。

治療再開時には低用量から開始して段階的に増量していく方法が推奨されます。

以下のような状況では特に注意深い管理が求められるでしょう。

  • 手術前後の一時中断
  • 妊娠・出産に伴う中断
  • 副作用による一時中断

長期予後に影響を与える因子

セレキシパグによる治療を含むPAH管理の長期予後にはさまざまな因子が影響を与えます。

早期診断と早期治療開始が予後改善の鍵となりますが、患者さんの年齢・PAHの原因疾患・併存疾患の有無なども重要な予後規定因子となります。

また治療への反応性や合併症の発生状況なども長期的な予後に大きく関わってきます。

予後良好因子予後不良因子
早期診断・治療高齢
治療反応良好進行した病期
併存疾患なし重度の右心不全

生活の質(QOL)と長期治療

セレキシパグによる長期治療においては症状コントロールだけでなく、患者さんのQOL維持・向上も重要な目標です。

治療の継続によって日常生活動作の改善や社会活動への参加が可能となる場合も多く患者さんの生きがいや人生の質に大きな影響を与えます。

予後予測と治療目標の設定

PAH患者さんの長期予後を正確に予測することは困難ですが、いくつかの予後予測ツールが開発されています。

例えば REVEAL risk scoreやESC/ERSガイドラインのリスク評価表などを用いて定期的に予後評価を行い治療目標を設定することが推奨されます。

これらの評価に基づいてセレキシパグの用量調整や他の治療法の追加を検討し、より良好な長期予後を目指した治療戦略を立てていきます。

リスク層別化1年生存率治療目標
低リスク>95%現状維持
中リスク90-95%リスク低減
高リスク<90%積極的介入

副作用とデメリット

頻発する副作用とその対策

セレキシパグ(ウプトラビ)は肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療に有効な薬剤ですが、他の多くの薬剤と同様に様々な副作用が報告されています。

最も頻度が高い副作用としては頭痛・下痢・顎痛・悪心・筋肉痛などが挙げられます。

これらの症状は多くの場合で治療開始初期や増量時に現れやすく、時間の経過とともに軽減する傾向です。

副作用発現頻度対策
頭痛高頻度鎮痛剤使用
下痢高頻度整腸剤併用
顎痛中頻度用量調整
悪心中頻度制吐剤使用

重大な副作用と注意点

セレキシパグの使用に際して特に注意が必要な重大な副作用としては肝機能障害・間質性肺炎・心不全の悪化などがあります。

これらの副作用は頻度は低いものの発現した際の影響が大きいため、定期的な肝機能検査や胸部X線検査、心エコー検査などによるモニタリングが不可欠です。

特に肝機能障害については投与開始前および投与中の定期的な肝機能検査が推奨されており、異常が認められた場合には速やかに投与を中止する必要があります。

重大な副作用モニタリング方法対応
肝機能障害肝機能検査投与中止検討
間質性肺炎胸部X線・CT呼吸器専門医相談
心不全悪化心エコー検査用量調整・併用薬検討

長期使用に伴うリスクと管理

セレキシパグの長期使用に伴うリスクについてはまだ十分なデータが蓄積されていない面もあります。

しかし長期投与によって薬剤耐性が生じる可能性や予期せぬ副作用が出現するリスクは常に考慮しなければなりません。

また長期的な肝機能への影響や骨密度低下などの全身性の影響についても注意深い経過観察が重要となります。

長期使用に関連する懸念事項は次の通りです。

  • 薬剤耐性の発現
  • 予期せぬ副作用の出現
  • 臓器機能への長期的影響

薬物相互作用とデメリット

セレキシパグは他の薬剤との相互作用にも注意が必要です。

特にCYP2C8の強力な阻害剤(ゲムフィブロジルなど)との併用は禁忌とされており避けなければなりません。

また CYP2C8の誘導剤(リファンピシンなど)との併用ではセレキシパグの血中濃度が低下して効果が減弱する可能性があるため用量調整が必要となることがあります。

相互作用薬剤影響対応
CYP2C8阻害剤血中濃度上昇併用禁忌
CYP2C8誘導剤血中濃度低下用量調整

経済的負担とQOL影響

セレキシパグは高額な薬剤であるため長期にわたる治療は患者さんやその家族に大きな経済的負担をもたらす可能性が生じます。

また頻回の通院や検査、副作用への対応などが必要となることから患者さんの日常生活や就労に影響を与える場合もあります。

これらの要因は患者さんのQOLに直接的な影響を及ぼすデメリットとなり得ます。

負担の種類内容QOLへの影響
経済的負担高額医療費家計圧迫
時間的負担頻回通院就労制限

妊娠・授乳への影響と制限

セレキシパグの妊娠中や授乳中の使用については 十分なデータがなく安全性が確立されていません。

そのため 妊娠可能な女性患者さんに対しては適切な避妊法の使用が求められます。

この制限はお子さんを希望する患者さんにとっては大きなデメリットとなる可能性があり、治療選択に際して慎重な検討が必要です。

投与中止時のリバウンド現象

セレキシパグの投与を突然中止するとリバウンド現象によってPAHの症状が急激に悪化する危険性があります。

このため投与中止が必要な場合には段階的な減量や代替薬への切り替えなどの慎重な対応が求められます。

以下のような状況では 特に注意が必要です。

中止理由リスク対応策
手術前症状悪化代替療法検討
副作用リバウンド段階的減量

代替治療薬

プロスタサイクリン系薬剤

セレキシパグ(ウプトラビ)が効果を示さなかった場合には同じプロスタサイクリン経路を標的とする他の薬剤への切り替えを検討することが考えられます。

エポプロステノールやトレプロスチニルなどの注射剤あるいはイロプロストなどの吸入剤が代替選択肢として挙げられます。

これらの薬剤は投与経路が異なることから患者さんの状態や生活スタイルに応じて選択されます。

薬剤名投与経路特徴
エポプロステノール静脈内持続即効性高い
トレプロスチニル皮下/静脈内半減期長い
イロプロスト吸入局所作用強い

エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)

セレキシパグが効果不十分だった場合には作用機序の異なるエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)への変更も一つの選択肢となります。

ボセンタン・アンブリセンタン・マシテンタンなどのERA系薬剤は肺動脈の収縮や血管リモデリングを抑制する効果があります。

これらの薬剤は経口投与が可能であり、患者さんのアドヒアランスを維持しやすいというメリットがあります。

ERA薬剤選択性主な副作用
ボセンタン非選択的肝機能障害
アンブリセンタン選択的浮腫
マシテンタン組織選択的貧血

ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5阻害薬)

セレキシパグが期待通りの効果を示さなかった際にホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5阻害薬)への切り替えも考慮されます。

シルデナフィルやタダラフィルなどのPDE5阻害薬は肺血管の拡張作用を持ちPAHの症状改善に寄与します。

これらの薬剤は比較的副作用が少なく長期使用が可能であることから多くの患者さんに使用されています。

PDE5阻害薬の主な特徴は次の通りです。

  • 経口投与が可能
  • 肺血管選択性が高い
  • 他の PAH治療薬との併用が可能

可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬

セレキシパグによる治療が奏功しなかった場合には比較的新しい薬剤群である可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬の使用を検討することもあります。

リオシグアトなどのsGC刺激薬は一酸化窒素(NO)-sGC-cGMP経路を活性化して肺血管拡張作用を示します。

この薬剤はPAHだけでなく慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)にも効果があることが知られています。

薬剤名作用機序適応疾患
リオシグアトsGC刺激PAH CTEPH

併用療法への移行

セレキシパグ単剤での効果が不十分であった場合 異なる作用機序を持つ複数の薬剤を組み合わせた併用療法への移行を検討することがあります。

ERA・PDE5阻害薬・プロスタサイクリン系薬剤など異なるクラスの薬剤を組み合わせることで相乗的な効果が期待できます。

併用療法は単剤療法と比較してより強力な肺血管拡張作用と抗リモデリング効果を発揮し、臨床症状の改善や長期予後の向上につながる可能性があります。

併用パターン期待される効果
ERA + PDE5i相補的血管拡張
ERA + プロスタサイクリン抗リモデリング増強
3剤併用包括的な病態制御

非薬物療法の検討

薬物療法が十分な効果を示さない場合には非薬物療法への移行や併用を考慮することも重要です。

バルーン心房中隔裂開術(BAS)や肺移植などの外科的介入が重症例や薬物療法抵抗性の患者さんに対する選択肢となります。

これらの治療法は侵襲性が高くリスクも伴いますが、適切な症例選択と熟練した医療チームによる管理下で行われれば劇的な症状改善をもたらす可能性が広がります。

非薬物療法の主な選択肢は以下のようのなものです。

  • バルーン心房中隔裂開術(BAS)
  • 肺移植
  • 体外式膜型人工肺(ECMO)

新規治療薬への期待

セレキシパグを含む既存の治療薬が効果を示さない患者さんにとって現在開発中の新規治療薬は大きな希望となります。

現在様々な作用機序を持つ新薬の臨床試験が進行中であり、これらが実用化されれば PAH治療の選択肢がさらに広がることが期待されます。

新規治療薬の中には既存薬とは全く異なるアプローチを取るものもあり、従来の治療に抵抗性を示す患者さんにも効果が期待できる可能性があります。

開発段階薬剤タイプ期待される効果
第III相TKI阻害薬血管リモデリング抑制
第II相代謝改善薬右室機能改善

併用禁忌

CYP2C8阻害剤との相互作用

セレキシパグ(ウプトラビ)の代謝には主にCYP2C8酵素が関与しているため強力なCYP2C8阻害剤との併用は厳重に禁忌とされています。

特にゲムフィブロジルとの併用はセレキシパグの血中濃度を大幅に上昇させる危険性があり重篤な副作用を引き起こす危険性があります。

この相互作用によりセレキシパグの活性代謝物の曝露量が約11倍に増加することが報告されており、患者さんの安全性を著しく脅かす恐れがあります。

CYP2C8阻害剤相互作用の程度
ゲムフィブロジル強力(禁忌)
トリメトプリム中程度(注意)

プロスタグランジン I2 受容体作動薬との併用

セレキシパグは選択的プロスタサイクリン受容体作動薬であるため同じ作用機序を持つ他のプロスタグランジン・I2 受容体作動薬との併用は避けるべきです。

エポプロステノール・トレプロスチニル・イロプロストなどの薬剤との併用は効果の重複や相加的な副作用のリスクを高める危険性があります。

これらの薬剤を同時に使用することは過度の血管拡張や出血傾向の増加につながる恐れがあり慎重に回避する必要があります。

プロスタグランジン I2 受容体作動薬投与経路
エポプロステノール静脈内
トレプロスチニル皮下/静脈内/吸入
イロプロスト吸入

肝機能障害患者への投与制限

重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)を有する患者さんに対するセレキシパグの投与は禁忌とされています。

肝機能が著しく低下している状態ではセレキシパグの代謝が大幅に遅延し血中濃度が異常に上昇する危険性があります。

このような患者群では薬物動態が予測不可能となり重篤な副作用のリスクが高まるため 使用を避けることが不可欠です。

以下の症状や検査値異常が認められる場合セレキシパグの投与は控えるべきです。

  • 黄疸
  • 腹水
  • 肝性脳症

妊婦・授乳婦への投与制限

セレキシパグは妊婦または妊娠している可能性のある女性および授乳中の女性に対しては投与が禁忌とされています。

動物実験においてセレキシパグの胎児毒性や催奇形性が報告されており、ヒトにおいても胎児への悪影響が懸念されます。

また 母乳中への移行の可能性も否定できないため 授乳中の投与も避けるべきです。

対象患者投与可否理由
妊婦禁忌胎児毒性リスク
授乳婦禁忌乳児への影響不明

過敏症患者への投与制限

セレキシパグまたはその成分に対して過敏症の既往歴がある患者さんへの投与は厳重に禁忌とされています。

過敏反応は軽度のものから生命を脅かす重篤なアナフィラキシーまで幅広い症状を引き起こす危険性があります。

このため投与前の問診で過去の薬物アレルギー歴を十分に確認して慎重に評価することが重要です。

次のような過敏症状が過去に認められた患者さんではセレキシパグの使用を避けるべきです。

  • 皮疹
  • 呼吸困難
  • 血管浮腫

薬物相互作用の注意点

セレキシパグは様々な薬物との相互作用に注意が必要です。

特に強力なCYP2C8誘導薬との併用はセレキパグの血中濃度を低下させ治療効果を減弱させる可能性があるため避けるべきです。

一方で中程度のCYP2C8阻害薬との併用では慎重な用量調整と頻回なモニタリングが求められます。

相互作用薬剤影響対応
リファンピシン血中濃度低下併用回避
クロピドグレル血中濃度上昇用量調整

セレキシパグ(ウプトラビ)の薬価と経済的負担

薬価

セレキシパグ(ウプトラビ)の薬価は規格によって異なります。

0.2mg錠が1錠あたり1460.3円、0.4mg錠が2902.8円と設定されています。

これらの価格は薬価改定により変更される可能性があるため最新の情報を確認することが重要です。

規格薬価(1錠あたり)
0.2mg1460.3円
0.4mg2902.8円

処方期間による総額

セレキシパグの処方期間によって患者さんの経済的負担は大きく変動します。

1週間処方の場合で0.4mg錠を1日2回服用すると総額は40,639.2 円となります。一方 1ヶ月処になると同じ用量でも174,168円に達します。

これらの金額は患者さんの自己負担額ではなく保険適用前の総額であることに注意が必要です。

処方期間総額(0.4mg錠 1日2回)
1週間40,639.2円
1ヶ月174,168円

以上

参考にした論文

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