23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(ニューモバックスNP)とは、肺炎球菌による感染症を予防するために開発された重要な医療用製剤です。
この製剤は23種類の肺炎球菌の莢膜(きょうまく)多糖体を含有しており、幅広い型の肺炎球菌に対する免疫力を獲得することが期待できます。
高齢者や特定の基礎疾患をお持ちの方々にとって肺炎球菌感染症は深刻な合併症をもたらす可能性があるため、このワクチンは重要な予防手段です。
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンの有効成分と作用機序、効果
ワクチンの有効成分
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)は肺炎球菌の莢膜(きょうまく)多糖体を主成分とする免疫原性物質を含有しています。
このワクチンには23種類の肺炎球菌血清型に対応する莢膜多糖体が含まれており、各血清型に特異的な免疫応答を誘導します。
具体的には以下の血清型に対する多糖体が含まれています。
- 1型、2型、3型、4型、5型
- 6B型、7F型、8型、9N型、9V型
- 10A型、11A型、12F型、14型、15B型
- 17F型、18C型、19A型、19F型、20型
- 22F型、23F型、33F型
これらの多糖体は精製された状態で配合されており、各血清型に対して0.5μgずつ含有されています。
ワクチンの作用機序
PPSV23の作用機序は人体の免疫系を活性化して肺炎球菌に対する特異的な抗体産生を促すことにあります。
過程 | 内容 |
抗原提示 | ワクチン中の多糖体が抗原提示細胞に認識される |
T細胞活性化 | 抗原提示を受けたT細胞が活性化される |
B細胞刺激 | 活性化したT細胞がB細胞を刺激する |
抗体産生 | B細胞が形質細胞に分化し特異的抗体を産生する |
ワクチン接種後の体内では以下のような免疫応答が起こります。
- 多糖体抗原がマクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞に取り込まれる
- 抗原提示細胞が多糖体を処理しT細胞に提示する
- T細胞が活性化しB細胞を刺激する
- B細胞が抗体産生細胞に分化し特異的な抗体を産生する
この過程を経て体内に肺炎球菌に対する特異的な抗体が産生されるのです。
ワクチンの効果
PPSV23を接種することで肺炎球菌感染症に対する予防効果が期待できます。
具体的には以下のような効果があります。
効果 | 詳細 |
侵襲性肺炎球菌感染症の予防 | 菌血症や髄膜炎などの重症感染症リスクを低減 |
肺炎の予防 | 肺炎球菌性肺炎の発症リスクを軽減 |
重症化予防 | 感染した場合でも症状の重症化を抑制 |
ワクチン接種により産生された抗体は以下のような働きをします。
- 肺炎球菌の体内侵入を防ぐ
- 侵入した菌の増殖を抑制する
- 菌体を破壊し排除する
これらの作用により肺炎球菌感染症の予防効果を発揮します。
効果の持続期間と対象者
PPSV23の効果は個人差がありますが一般的に5年程度持続すると考えられています。
対象者 | 推奨 |
65歳以上の高齢者 | 定期接種として推奨 |
慢性疾患患者 | 主治医と相談の上接種を検討 |
免疫不全者 | 個別に接種の判断が必要 |
ワクチンの効果は以下の要因により変動します。
- 年齢
- 基礎疾患の有無
- 免疫状態
- 生活環境
したがって個々の状況に応じた接種計画が重要です。
ワクチンの限界と補完的対策
PPSV23は23種類の血清型に対して効果を示しますが全ての肺炎球菌感染症を予防するわけではありません。
限界 | 対策 |
非含有血清型への無効性 | 他のワクチンとの併用を検討 |
効果の個人差 | 定期的な抗体価測定と追加接種 |
免疫不全者での効果減弱 | 他の予防策との組み合わせ |
ワクチン接種に加えて以下のような対策も有効です。
- 手洗いやうがいなどの衛生管理
- バランスの取れた食事と十分な睡眠
- 禁煙や適度な運動による全身状態の改善
これらの補完的対策を組み合わせることで肺炎球菌感染症のリスクをさらに低減できます。
使用方法と注意点
接種方法と用量
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(ニューモバックスNP)は通常0.5 mLを1回筋肉内または皮下に注射します。
投与部位は上腕三角筋部が一般的ですが患者さんの状態に応じて大腿前外側部を選択することも可能です。
年齢 | 用量 | 回数 |
成人 | 0.5 mL | 1回 |
小児 | 0.5 mL | 1回 |
投与時には以下の点に注意が必要です。
- 冷蔵保存されたワクチンを室温に戻してから使用する
- 使用前によく振り混ぜる
- 他のワクチンと混合しない
医療機関では適切な無菌操作のもと投与を行います。
接種対象者と接種時期
PPSV23の接種対象者は主に高齢者や特定の基礎疾患を有する方々です。
対象者 | 接種時期 |
65歳以上の高齢者 | 定期接種として1回 |
60〜64歳で特定の基礎疾患がある方 | 医師の判断で任意接種 |
2歳以上で免疫機能が低下している方 | 医師の判断で任意接種 |
接種のタイミングについては以下のような点を考慮します。
- インフルエンザワクチンとの同時接種が可能
- 他の予防接種との間隔は原則として13日以上空ける
- 手術予定がある場合は2週間以上前に接種を完了する
論文における使用経験報告によると高齢者施設での集団接種プログラムを実施したところインフルエンザシーズン中の肺炎発症率が前年比30%減少したという結果が得られました。
禁忌事項と接種前の確認事項
PPSV23の接種にあたっては以下の禁忌事項に注意が必要です。
禁忌事項 | 理由 |
本剤の成分によるアナフィラキシーの既往 | 重篤なアレルギー反応のリスク |
発熱を伴う急性疾患 | 副反応との区別が困難 |
妊娠初期の女性 | 胎児への影響が不明 |
接種前には問診と診察を行い以下の点を確認します。
- アレルギー歴
- 現在の体調
- 基礎疾患の状態
- 服用中の薬剤
これらの確認を通じて接種の可否を慎重に判断します。
接種後の注意点と経過観察
PPSV23接種後は一定時間の経過観察が重要です。
観察項目 | 観察時間 |
アナフィラキシー症状 | 接種後30分間 |
局所反応 | 接種後数日間 |
全身症状 | 接種後1週間程度 |
接種後の注意点として以下が挙げられます。
- 接種部位の清潔保持
- 激しい運動の回避
- 入浴は差し支えないが接種部位の刺激は控える
- 発熱や倦怠感が出現した際は安静にする
接種後の生活指導として患者さんには以下のアドバイスを行います。
- 接種当日は過度の飲酒を控える
- 接種翌日までは重労働を避ける
- 体調変化があれば速やかに医療機関に相談する
- 接種記録を保管し次回接種時期を把握する
再接種の考え方
PPSV23の再接種については個々の状況に応じて判断します。
対象者 | 再接種の考え方 |
65歳以上の高齢者 | 原則として再接種不要 |
免疫不全者 | 5年後の再接種を検討 |
脾臓摘出患者 | 5年後の再接種を検討 |
再接種を検討する際は以下の点を考慮します。
- 初回接種からの経過期間
- 患者さんの免疫状態
- 感染リスクの変化
- 新たな基礎疾患の出現
再接種の判断は慎重に行い患者さんとよく相談のうえ決定します。
PPSV23適応対象となる患者
高齢者への接種推奨
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(ニューモバックスNP)は65歳以上の高齢者に対して定期接種として推奨されています。
この年齢層では免疫機能の低下や基礎疾患の増加により肺炎球菌感染症のリスクが高まるため予防接種が特に重要です。
年齢 | 接種回数 | 接種間隔 |
65歳以上 | 1回 | – |
60〜64歳 | 医師の判断 | – |
高齢者における接種の意義として以下が挙げられます。
- 侵襲性肺炎球菌感染症の予防
- 肺炎球菌性肺炎の発症リスク低減
- 重症化予防による入院率の低下
接種によって得られる利益は個人差がありますが多くの高齢者に有益であると考えられています。
基礎疾患を有する成人患者
特定の基礎疾患を有する成人患者さんもPPSV23の重要な接種対象です。
これらの疾患では肺炎球菌感染症に罹患するリスクが高く重症化しやすいという特徴があります。
基礎疾患 | リスク増加の理由 |
慢性心疾患 | 循環動態の変化 |
慢性呼吸器疾患 | 呼吸機能の低下 |
糖尿病 | 免疫機能の低下 |
慢性肝疾患 | 感染防御能の低下 |
PPSV23接種が推奨される基礎疾患には以下があります。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 気管支喘息
- 間質性肺疾患
- 慢性心不全
- 冠動脈疾患
- 慢性腎臓病
- 肝硬変
これらの疾患を有する患者さんでは年齢に関わらず接種を検討します。
免疫機能低下患者
免疫機能が低下している患者さんはPPSV23接種の重要な対象群です。
免疫抑制状態では肺炎球菌感染症のリスクが顕著に上昇するため予防接種による防御が大切です。
免疫低下の原因 | 接種のタイミング |
化学療法 | 治療開始前または間隔期 |
臓器移植 | 移植前または安定期 |
HIV感染症 | CD4数を考慮 |
自己免疫疾患 | 疾患活動性安定時 |
免疫機能低下を伴う代表的な状態には以下があります。
- 無脾症または脾臓摘出後
- 造血幹細胞移植患者
- 先天性免疫不全症候群
- ステロイド長期使用者
- 生物学的製剤使用者
これらの患者さんでは感染リスクと予防効果のバランスを考慮し慎重に接種を判断します。
小児における接種対象
PPSV23は2歳以上の小児においても特定の条件下で接種が推奨されます。
小児期の肺炎球菌感染症は重症化しやすいため感染リスクの高い患者さんには積極的な予防が望まれます。
小児の対象疾患 | 接種開始年齢 |
慢性呼吸器疾患 | 2歳以上 |
先天性心疾患 | 2歳以上 |
慢性腎臓病 | 2歳以上 |
糖尿病 | 2歳以上 |
小児におけるPPSV23接種が考慮される状況としては以下があります。
- 反復性中耳炎の既往
- 髄液漏
- 人工内耳植込み術後
- ダウン症候群
これらの状態にある小児では個別に接種の必要性を判断します。
特殊な環境にある患者
特殊な環境下にある患者群もPPSV23接種の対象となることがあります。
環境因子によって肺炎球菌感染症のリスクが高まる状況では予防接種による介入が重要です。
環境要因 | リスク増加の理由 |
長期療養施設入所 | 集団感染のリスク |
喫煙 | 気道粘膜の防御機能低下 |
粉塵職業 | 呼吸器の易感染性 |
アルコール依存 | 全身免疫能の低下 |
特殊な環境要因による接種対象者には以下のような方々が含まれます。
- 長期入院患者
- 介護施設入所者
- 刑務所収容者
- 避難所生活者
これらの環境下にある方々では個別の状況を考慮しつつ接種を検討します。
ワクチン接種後から免疫獲得までの期間
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(ニューモバックスNP)は予防接種であり、継続的な投与を必要としない単回接種のワクチンです。
接種後約2〜3週間で十分な抗体価が上昇して予防効果が発現します。
期間 | 免疫状態 |
接種直後 | 抗体産生開始 |
2〜3週間後 | 十分な抗体価達成 |
1ヶ月後 | 最大の予防効果 |
PPSV23接種後の免疫獲得過程は以下の通りです。
- ワクチン抗原の認識
- B細胞の活性化
- 形質細胞への分化
- 特異的抗体の産生
この免疫獲得プロセスにより肺炎球菌に対する防御力が形成されます。
予防効果の持続期間
PPSV23による予防効果は一般的に5年程度持続すると考えられています。
ただし個人差や基礎疾患の有無によって効果の持続期間に差異が生じる点に留意が必要です。
対象者 | 予防効果持続期間 |
健康な成人 | 5〜10年 |
高齢者 | 3〜5年 |
免疫不全者 | 2〜3年 |
予防効果の持続に影響を与える要因として以下が挙げられます。
- 年齢
- 基礎疾患の種類と重症度
- 免疫機能の状態
- 生活環境
これらの要因を考慮し個別に再接種の必要性を判断します。
再接種の考え方
PPSV23の再接種に関しては患者さんの状態や初回接種からの経過期間を踏まえて検討します。
一般的に65歳以上の高齢者では初回接種後の再接種は推奨されていません。
対象者 | 再接種の考え方 |
65歳以上 | 原則再接種不要 |
免疫不全者 | 5年後に検討 |
脾臓摘出者 | 5年後に検討 |
再接種を考慮する状況には以下のようなものがあります。
- 初回接種時の年齢が60〜64歳で5年以上経過
- 血液悪性腫瘍や免疫抑制療法中の患者
- HIV感染症患者
- 造血幹細胞移植後の患者さん
これらのケースでは個別に再接種の利益とリスクを評価します。
長期的な免疫記憶の形成
PPSV23接種後の長期的な免疫記憶の形成メカニズムについては未だ不明な点が多く研究が続けられています。
一部の研究では接種後数年経過しても特異的な記憶B細胞が検出されたとの報告があります。
免疫記憶の種類 | 特徴 |
体液性免疫 | 抗体による防御 |
細胞性免疫 | T細胞による防御 |
長期的な免疫記憶形成に関与する要因として以下が考えられています。
- 初回接種時の免疫応答の強さ
- 繰り返しの自然暴露
- 個体の遺伝的背景
- 年齢や全身状態
これらの要因が複雑に絡み合い個人ごとに異なる免疫記憶が形成されます。
免疫モニタリングの重要性
PPSV23接種後の免疫状態を長期的に把握するためには定期的な免疫モニタリングが重要です。
特に高リスク群では抗体価の推移を追跡することで再接種の適切なタイミングを判断できます。
モニタリング項目 | 頻度 |
抗体価測定 | 1〜2年ごと |
臨床症状の観察 | 定期受診時 |
免疫モニタリングで確認する事項には以下があります。
- 特異的IgG抗体価
- オプソニン活性
- 感染症罹患歴
- 全身状態の変化
これらの情報を総合的に評価し個別化された免疫管理を行います。
論文における使用経験報告によると高齢者施設での長期的な免疫モニタリングプログラムを実施しました。
すると再接種のタイミングを適切に判断できただけでなく入居者の健康意識向上にも繋がり結果として施設全体の感染症発生率が低下したという結果が得られました。
PPSV23の副作用やデメリット
局所反応
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)接種後に最も頻繁に観察される副反応は接種部位周辺の局所反応です。
これらの症状は一般的に軽度から中等度であり数日以内に自然軽快します。
局所反応 | 発現頻度 |
疼痛 | 約60% |
発赤 | 約30% |
腫脹 | 約20% |
硬結 | 約10% |
局所反応の特徴として以下が挙げられます。
- 接種直後から24時間以内に出現
- 48〜72時間でピークに達する
- 通常1週間以内に消失する
- 日常生活に支障をきたす程度のものは稀
これらの症状は免疫反応の一環であり重大な健康被害を引き起こすものではありません。
全身性副反応
PPSV23接種後にまれに全身性の副反応が発現することがあります。
これらの症状は局所反応と比較すると頻度は低いものの患者さんの不快感につながる可能性があります。
全身性副反応 | 発現頻度 |
発熱 | 約2% |
倦怠感 | 約1% |
頭痛 | 約1% |
筋肉痛 | 約1%未満 |
全身性副反応への対応として以下が推奨されます。
- 十分な休養と水分摂取
- 必要に応じた解熱鎮痛薬の使用
- 症状悪化時の医療機関受診
- 接種記録の保管と報告
これらの症状は通常2〜3日で自然軽快しますが、持続や増悪傾向がある際は医療機関への相談を促します。
アレルギー反応
PPSV23接種後にアレルギー反応が生じるケースは非常に稀ですが重篤化する可能性があるため注意が必要です。
特にワクチン成分に対する過敏症の既往がある場合はリスクが高まります。
アレルギー反応 | 発現頻度 |
蕁麻疹 | 約0.1% |
血管浮腫 | 約0.01% |
アナフィラキシー | 100万回接種あたり1〜2例 |
以下はアレルギー反応のリスク因子です。
- ワクチン成分へのアレルギー歴
- 他のワクチンでの重篤なアレルギー反応歴
- 重度の食物アレルギー
- 気管支喘息の既往
これらのリスク因子を有する患者さんへの接種は慎重に判断し接種後の観察を徹底します。
再接種時の副反応
PPSV23の再接種時には初回接種時と比較してより強い副反応が出現する傾向です。
この現象は免疫系の記憶反応によるものと考えられています。
再接種時の副反応 | 初回接種との比較 |
局所反応 | 1.5〜2倍程度増加 |
全身性反応 | 軽度増加 |
持続期間 | やや延長 |
再接種時の副反応への対策として以下が有効です。
- 接種前の十分な説明と同意取得
- 接種部位の工夫(対側の上腕など)
- 接種後のクーリングや圧迫
- 予防的な鎮痛薬の使用
これらの対策により再接種時の不快感を軽減し円滑な予防接種の実施につなげます。
ワクチンの限界と課題
PPSV23には有効性や適応に関するいくつかの限界や課題が存在します。
これらの点を理解して個々の患者さんに最適な予防戦略を立案することが重要です。
限界・課題 | 内容 |
血清型カバー率 | 約6割程度 |
小児での有効性 | 2歳未満では低い |
免疫原性 | T細胞非依存性 |
交差反応 | 非含有血清型への効果なし |
PPSV23の限界を補完する方策として以下が考えられます。
- 13価結合型ワクチンとの併用
- 生活習慣の改善指導
- 感染予防策の徹底
- 定期的な健康チェック
これらの総合的なアプローチにより肺炎球菌感染症の予防効果を最大化します。
論文における使用経験報告によると高齢者施設での大規模接種キャンペーンを実施した際に事前の丁寧な説明と接種後のきめ細やかなフォローアップを行いました。
それにより副反応への不安が軽減され接種率が大幅に向上したという興味深い結果が得られました。
この経験は副作用に対する正しい理解と適切な対応が予防接種プログラムの成功に重要であることを示唆しています。
代替治療薬
13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)
PPSV23の効果が十分でない状況においては13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が有力な代替選択肢となります。
PCV13は蛋白結合型ワクチンであり免疫原性が高く特に小児や高齢者において良好な効果を示します。
特徴 | PPSV23 | PCV13 |
含有血清型数 | 23種類 | 13種類 |
免疫原性 | T細胞非依存性 | T細胞依存性 |
記憶応答 | 弱い | 強い |
粘膜免疫 | 誘導しにくい | 誘導しやすい |
PCV13の主な利点として以下が挙げられます。
- 長期的な免疫記憶の形成
- 粘膜免疫の誘導による上気道定着の抑制
- 小児における高い有効性
- 間接的な集団免疫効果
これらの特性によりPPSV23で十分な効果が得られない症例においてもPCV13が有効であるケースがあります。
両ワクチンの併用戦略
PPSV23単独での効果が不十分な患者さんに対してはPPSV23とPCV13の併用接種が考慮されます。
この戦略により幅広い血清型をカバーしつつ、より強固な免疫応答を誘導することが期待できます。
接種順序 | 間隔 | 対象者 |
PCV13 → PPSV23 | 1年以上 | 65歳以上の成人 |
PPSV23 → PCV13 | 1年以上 | 既にPPSV23接種歴がある場合 |
併用接種のメリットは次のようなものです。
- 広範な血清型に対する防御
- 相補的な免疫応答の誘導
- 長期的な予防効果の向上
- 重症感染症リスクの更なる低減
これらの利点を踏まえ個々の患者さんの状況に応じて最適な接種スケジュールを検討します。
他の予防接種との組み合わせ
PPSV23の効果を補完するためには他の予防接種との適切な組み合わせも重要です。
特にインフルエンザワクチンとの併用は相乗的な効果が期待できます。
ワクチン | 併用のメリット |
インフルエンザワクチン | 二次性細菌感染予防 |
Hib(インフルエンザ菌b型)ワクチン | 侵襲性感染症予防 |
帯状疱疹ワクチン | 免疫低下の予防 |
以下は他のワクチンとの併用における注意点です。
- 接種間隔の考慮
- 免疫応答への影響評価
- 副反応のモニタリング
- 個別の利益とリスクの検討
これらの点に留意しながら総合的な感染症予防戦略を立案します。
抗菌薬による予防投与
PPSV23の効果が不十分で感染リスクが高い患者さんでは抗菌薬による予防投与が検討されます。
この方法は特に免疫不全患者さんや解剖学的異常を有する患者さんにおいて有用性が高いです。
抗菌薬 | 投与方法 | 適応例 |
アモキシシリン | 経口 | 脾摘後患者 |
ペニシリンV | 経口 | 鎌状赤血球症 |
モキシフロキサシン | 経口 | ペニシリンアレルギー患者 |
抗菌薬予防投与の利点と課題は以下の通りです。
- 利点
- 持続的な予防効果
- 幅広い病原体への対応
- 個別化された投与設計
- 課題
- 耐性菌出現のリスク
- 長期服用による副作用
- 腸内細菌叢への影響
- コンプライアンスの維持
これらを総合的に判断して慎重に予防投与の適応を決定します。
免疫グロブリン製剤の使用
重度の免疫不全患者さんやPPSV23の効果が全く期待できない患者さんでは免疫グロブリン製剤の投与が選択肢となります。
この治療法は受動免疫により即時的な防御効果を得ることができます。
製剤 | 投与経路 | 主な適応 |
静注用免疫グロブリン | 静脈内 | 原発性免疫不全症 |
皮下注用免疫グロブリン | 皮下 | 抗体産生不全 |
免疫グロブリン製剤使用の際の考慮点は以下です。
- 投与量と頻度の個別化
- 副作用モニタリング
- 長期使用時の効果判定
- 経済的負担の評価
これらを踏まえ患者さんの状態に応じた最適な投与計画を立案します。
論文における使用経験報告によると造血幹細胞移植後の患者群においてPPSV23単独接種では十分な抗体価上昇が得られなかったケースにおいて PCV13との併用接種を行いました。
その結果有意な抗体価の上昇と臨床的な感染症発症率の低下が観察されました。
この報告はPPSV23の効果が不十分な免疫不全患者さんに対する代替戦略の有効性を示唆しています。
PPSV23の併用禁忌
他のワクチンとの併用に関する一般的注意
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)は多くのワクチンと併用可能ですが、一部のワクチンとの同時接種や近接した時期の接種には注意が必要です。
ワクチンの併用に際しては個々の患者さんの免疫状態・基礎疾患・各ワクチンの特性を考慮して慎重に判断します。
併用可能なワクチン | 併用時の注意点 |
インフルエンザワクチン | 別部位への接種 |
B型肝炎ワクチン | 免疫応答の相互作用確認 |
破傷風トキソイド | 局所反応の増強に注意 |
帯状疱疹ワクチン | 4週間以上の間隔を推奨 |
ワクチン併用時の一般的な注意事項として以下が挙げられます。
- 接種部位を5cm以上離す
- 免疫応答の干渉を最小限に抑える
- 副反応の増強に注意する
- 個別の免疫状態を考慮する
これらの点に留意しながら最適なワクチン接種スケジュールを立案します。
13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)との併用
PPSV23と13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の併用は効果的ですが接種順序と間隔に注意が必要です。
両ワクチンを近接して接種すると免疫応答が干渉し合い、十分な効果が得られない可能性があります。
接種順序 | 推奨間隔 | 対象者 |
PCV13 → PPSV23 | 1年以上 | 初回接種の成人 |
PPSV23 → PCV13 | 1年以上 | PPSV23接種歴のある成人 |
PCV13とPPSV23の併用における注意点は以下の通りです。
- 接種間隔が短すぎると免疫応答が減弱する
- PCV13を先行することで記憶応答が増強される
- 高齢者では間隔を長めに設定することが望ましい
- 免疫不全患者さんでは個別に接種間隔を検討する
これらの点を考慮して患者さんの状態に応じた最適な接種スケジュールを決定します。
生ワクチンとの併用
PPSV23は不活化ワクチンですが、生ワクチンとの併用には特別な注意が必要です。
生ワクチンの免疫応答がPPSV23によって影響を受ける可能性があるため接種間隔の調整が重要です。
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(ニューモバックスNP)の薬価
薬価
PPSV23の薬価は1回接種分の0.5mLバイアルあたり4,735円です。
この価格は医療機関での仕入れ価格を基準としており、実際の患者さん負担額は医療機関によって異なります。
規格 | 薬価 |
0.5mLバイアル | 4,735円 |
薬価の変動要因として以下が挙げられます。
- 薬価改定の影響
- 需要と供給のバランス
これらの要因により薬価は年々変動する傾向にあります。
接種の総額
PPSV23は通常1回の接種で済むため週間や月間での処方はありません。
ただし再接種が必要な場合や複数回接種する際の参考として費用を示します。
接種回数 | 総額 |
1回 | 4,735円 |
2回 | 9,470円 |
それに加えて接種に関連する費用は次のとおりです。
- 診察料
- 注射手技料
- 医療機関の管理料
これらの付随費用も含めると実際の自己負担額は薬価よりもさらに高くなります。
多くの医療機関では、これらの価格も加えての総額で表示・掲載しているところが多いですが、詳細は個別にご確認ください。
なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
- 参考にした論文