沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン (プレベナー13)とは肺炎球菌による感染症を予防するために開発された重要な医薬品です。
この製剤は13種類の肺炎球菌の莢膜抗原を含有しており、幅広い株に対する免疫力を獲得することが期待できます。
特に小児や高齢者、基礎疾患をお持ちの方々にとって深刻な合併症のリスクを軽減する有効な手段となります。
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンの有効成分・作用機序・効果
有効成分の特徴
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンは13種類の血清型肺炎球菌由来の莢膜(きょうまく)多糖体抗原を含有しています。
これらの抗原は無毒性変異ジフテリア毒素(CRM197)というタンパク質と結合しており強力な免疫反応を引き起起こす構造となっています。
血清型 | 抗原量(µg/0.5mL) |
1 | 2.2 |
3 | 2.2 |
4 | 2.2 |
5 | 2.2 |
各血清型の抗原量は慎重に調整されており体内で最適な免疫応答を生み出すよう設計されています。
作用機序の解説
このワクチンの作用機序は人体の免疫システムを活用した巧妙なものです。
接種された抗原は免疫細胞に認識され体内で抗体産生が促進されます。
- B細胞の活性化
- T細胞依存性免疫応答の誘導
これらのプロセスにより長期的な免疫記憶が形成されるのです。
免疫細胞 | 主な役割 |
B細胞 | 抗体産生 |
T細胞 | 免疫応答の調節 |
樹状細胞 | 抗原提示 |
マクロファージ | 異物貪食 |
結合型ワクチンの特徴としてT細胞依存性の免疫応答が誘導されることで乳幼児でも効果的な予防が可能となります。
期待される効果
本ワクチンの投与により肺炎球菌感染症に対する予防効果が得られます。
具体的には侵襲性肺炎球菌感染症(髄膜炎や菌血症など)の発症リスクを大幅に低減することが臨床試験で示されています。
- 肺炎の予防
- 中耳炎の減少
- 菌血症の抑制
加えて集団免疫効果により未接種者への間接的な保護も期待できます。
年齢層 | 予防効果(%) |
乳幼児 | 90-95 |
成人 | 75-85 |
高齢者 | 70-80 |
年齢や基礎疾患によって効果に差異が生じることもあるため個別の状況に応じた接種判断が必要です。
免疫応答の持続性
このワクチンがもたらす免疫応答は長期間持続することが研究により明らかになっています。
多くの場合は接種後数年にわたって有効な抗体価が維持されますが個人差も存在します。
接種後経過年数 | 抗体価維持率(%) |
1年目 | 95-100 |
3年目 | 85-95 |
5年目 | 75-85 |
年齢や健康状態によっては追加接種(ブースター)が推奨されることもあるため定期的な抗体価チェックを行うことが大切です。
使用方法と注意点
接種方法とスケジュール
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)は筋肉内注射により投与します。
通常は上腕の三角筋または大腿外側部に接種しますが年齢や体格に応じて適切な部位を選択します。
年齢 | 接種回数 | 接種間隔 |
2〜6か月 | 4回 | 4〜8週間隔 |
7〜11か月 | 3回 | 4週間隔 |
12〜23か月 | 2回 | 8週間隔 |
2歳以上 | 1回 | 単回 |
接種スケジュールは個人の状況や過去の接種歴によって調整が必要となるため医師との綿密な相談が重要です。
接種前の注意事項
ワクチン接種前には以下の点に留意する必要があります。
- 発熱や急性疾患がある際は接種を延期
- 過去のワクチン接種歴や副反応の有無を確認
- 現在服用中の薬剤や既往歴を詳細に聴取
特に免疫機能に影響を与える薬剤を使用中の患者さんでは効果が減弱する可能性があるため慎重な判断が求められます。
確認項目 | 具体例 |
アレルギー歴 | 薬剤・食物・ラテックスなど |
基礎疾患 | 心疾患・呼吸器疾患・免疫不全など |
最近の体調変化 | 発熱・倦怠感・食欲不振など |
妊娠の可能性 | 授乳中を含む |
これらの情報を総合的に評価し 接種の可否を判断します。
接種後の経過観察
ワクチン接種後は15〜30分程度の経過観察期間を設けることが大切です。
まれにアナフィラキシーなどの重篤な副反応が生じる可能性があるため速やかな対応ができるよう準備しておきます。
- 接種部位の状態確認
- 全身状態の観察
- 異常時の緊急対応手順の確認
接種後数日間は体調の変化に注意を払い必要に応じて医療機関への連絡を心がけるよう指導します。
観察項目 | 注意すべき症状 |
局所反応 | 発赤・腫脹・疼痛 |
全身症状 | 発熱・倦怠感・頭痛 |
アレルギー | 蕁麻疹・呼吸困難・血圧低下 |
神経症状 | めまい・しびれ・意識障害 |
これらの症状が顕著な場合や持続する際には速やかに受診するよう伝えます。
特殊な状況における接種
論文における使用経験報告によると造血幹細胞移植後の患者さんに対するプレベナー13の接種では免疫再構築の時期を見極めることが極めて重要であることが示されています。
特殊状況 | 接種時の留意点 |
脾臓摘出後 | 早期の接種が望ましい |
HIV感染者 | CD4数に応じて判断 |
免疫抑制剤使用中 | 薬剤の種類や投与量を考慮 |
悪性腫瘍治療中 | 化学療法のサイクルに合わせる |
これらの患者群では個々の状態を慎重に評価し最適な接種タイミングを決定することが不可欠です。
他のワクチンとの同時接種
プレベナー13は他のワクチンと同時に接種することが可能ですが、接種部位を変えるなどの配慮が必要となります。
- インフルエンザワクチン
- B型肝炎ワクチン
- DPT-IPVワクチン
同時接種により患者さんの負担軽減や接種率向上につながる利点がありますが個々の状況に応じて判断することが重要です。
同時接種可能なワクチン | 接種部位 |
インフルエンザ | 対側の上腕 |
B型肝炎 | 同側大腿 |
DPT-IPV | 対側大腿 |
ロタウイルス | 経口接種のため問題なし |
接種間隔や部位の選択には十分な注意を払い安全かつ効果的な接種を心がけます。
適応対象となる患者
乳幼児への接種
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)は生後2ヶ月から接種を開始することができます。
乳幼児期は肺炎球菌感染症のリスクが高いため早期からの予防が重要となります。
年齢 | 標準的な接種回数 |
2-6ヶ月 | 4回 |
7-11ヶ月 | 3回 |
12-23ヶ月 | 2回 |
24-59ヶ月 | 1回 |
接種スケジュールは個々の状況に応じて調整する必要があるため医師との相談が大切です。
高齢者への接種
65歳以上の高齢者は肺炎球菌感染症のハイリスク群として位置づけられています。
加齢に伴う免疫機能の低下により感染リスクが上昇するため予防接種が推奨されます。
- 定期接種の対象年齢に達した方
- 過去に23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種した方
これらの方々は医師と相談のうえ接種を検討することが望ましいです。
年齢 | 接種回数 | 備考 |
65歳 | 1回 | 定期接種として公費補助あり |
66-100歳 | 1回 | 任意接種として自己負担 |
地域によっては独自の助成制度を設けているケースもあるため確認が必要です。
基礎疾患を有する患者
特定の基礎疾患を持つ患者さんは肺炎球菌感染症に対して脆弱性が高まるため積極的な予防が求められます。
これらの疾患には以下のようなものが含まれます。
- 慢性心疾患
- 慢性呼吸器疾患
- 糖尿病
- 慢性肝疾患
基礎疾患の種類や重症度によって接種のタイミングや方法を個別に判断します。
基礎疾患 | 接種の考慮時期 |
慢性心疾患 | 診断後速やかに |
COPD | 安定期に入ってから |
糖尿病 | 血糖コントロール良好時 |
慢性肝疾患 | 肝機能が比較的安定している時期 |
主治医と連携しながら最適な接種計画を立てることが重要です。
免疫不全患者
HIV感染症や悪性腫瘍治療中の患者さんなど免疫機能が低下している方々は特に注意が必要です。
これらの患者さんでは通常よりも感染リスクが高く重症化しやすいため予防の意義は大きいといえます。
免疫不全の状態 | 接種の考慮事項 |
HIV感染症 | CD4数に応じて判断 |
造血幹細胞移植後 | 移植後の免疫再構築を考慮 |
化学療法中 | 治療サイクルに合わせて計画 |
臓器移植後 | 免疫抑制剤の影響を考慮 |
個々の免疫状態を慎重に評価したうえで接種の是非やタイミングを決定します。
解剖学的または機能的無脾症患者
脾臓の摘出歴がある方や機能的無脾症の患者さんは莢膜細菌に対する感受性が著しく高まります。
このような状況下では肺炎球菌ワクチンの接種が特に重要となります。
- 外傷や疾患による脾臓摘出後の患者
- 先天性無脾症の方
- 鎌状赤血球症に伴う機能的無脾症の患者
これらの方々には早期からの予防接種を強く推奨します。
無脾症の状態 | 推奨される接種時期 |
待機的摘脾前 | 手術の2週間以上前 |
緊急摘脾後 | 全身状態安定後できるだけ早く |
先天性無脾症 | 診断後速やかに |
感染症予防の観点から生涯にわたる注意深い管理が必要となります。
髄液漏のある患者
頭蓋底の骨折や手術後の合併症として髄液漏を有する患者さんは中枢神経系の肺炎球菌感染症リスクが高まります。
このような状況では積極的な予防措置としてワクチン接種を考慮すべきです。
髄液漏の原因 | 接種のタイミング |
外傷性 | 全身状態安定後できるだけ早く |
術後性 | 創傷治癒確認後 |
特発性 | 診断確定後速やかに |
髄液漏の修復状況や全身状態を見極めながら最適な接種時期を決定します。
接種期間
初回接種スケジュール
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)の治療期間は年齢や接種開始時期によって異なります。
乳幼児期に開始する標準的な接種スケジュールでは複数回の接種を一定の間隔を空けて行います。
接種開始年齢 | 接種回数 | 接種間隔 |
2-6ヶ月 | 4回 | 1-2ヶ月おき その後追加 |
7-11ヶ月 | 3回 | 1-2ヶ月おき その後追加 |
12-23ヶ月 | 2回 | 2ヶ月以上空けて |
24ヶ月以上 | 1回 | 単回接種 |
接種間隔を守ることで十分な免疫効果を得られるためスケジュール管理が重要です。
追加接種の必要性
初回接種後の長期的な免疫維持のため追加接種が必要となる場合があります。
免疫機能が低下している患者さんや特定の基礎疾患を有する方々は定期的な追加接種を検討します。
- 5年ごとの追加接種を推奨される群
- 10年ごとの追加接種で十分な群
個々の患者さんの状態や感染リスクに応じて最適な追加接種間隔を決定します。
患者群 | 推奨追加接種間隔 | 考慮すべき因子 |
健常成人 | 不要 | 初回接種で十分な効果 |
65歳以上 | 5-10年 | 年齢による免疫低下 |
免疫不全患者 | 3-5年 | 免疫状態に応じて調整 |
慢性疾患患者 | 5年 | 疾患の重症度により判断 |
追加接種の時期は抗体価の推移や臨床的必要性を考慮して個別に判断します。
長期的な免疫効果の持続
プレベナー13による免疫効果は一般的に長期間持続すると考えられています。
健常者では初回接種後数年にわたって有効な抗体価が維持されるため頻繁な再接種は不要です。
年齢層 | 抗体持続期間の目安 | 備考 |
乳幼児 | 5-7年 | 成長に伴い変動 |
成人 | 7-10年以上 | 個人差あり |
高齢者 | 5-7年 | 免疫老化により短縮の傾向 |
ただし個々の免疫状態や環境因子により実際の持続期間には差異が生じます。
特殊な状況下での接種計画
免疫抑制状態にある患者さんや特定の基礎疾患を有する方々では通常と異なる接種計画が必要となります。
これらのケースではより頻繁な接種や追加接種を考慮して長期的な免疫維持を図ります。
- 造血幹細胞移植後の患者
- HIV感染症患者
- 化学療法中のがん患者
それぞれの状況に応じたきめ細かな接種計画を立てることが大切です。
特殊状況 | 初回接種回数 | 追加接種の考え方 |
造血幹細胞移植後 | 3-4回 | 移植後1年で再評価 |
HIV感染症 | 1-2回 | CD4数に応じて調整 |
化学療法中 | 1回+追加 | 治療終了後に再評価 |
個々の臨床経過を注意深く観察しながら最適な接種タイミングを見極めます。
集団免疫効果の持続期間
プレベナー13の広範な接種により集団レベルでの感染予防効果が期待できます。
この集団免疫効果は個人の免疫期間を超えて持続して接種を受けていない人々にも間接的な保護をもたらします。
接種率 | 集団免疫効果の持続期間 | 影響を受ける感染症型 |
70%以上 | 10年以上 | 侵襲性感染症・肺炎 |
50-70% | 5-10年 | 中耳炎・副鼻腔炎 |
30-50% | 3-5年 | 保菌率の低下 |
高い接種率を維持することで長期的な感染症予防効果が得られます。
経年的な効果モニタリング
論文における使用経験報告によるとプレベナー13の長期的効果を評価するため10年以上にわたる追跡調査が実施されています。
この研究では接種後の抗体価の推移や実際の感染症発症率を詳細に分析して個々の患者群における最適な再接種間隔の指標を提供しています。
- 定期的な抗体価測定
- 肺炎球菌感染症の発症率追跡
- ワクチン株と非ワクチン株の分布変化観察
これらのデータに基づき個別化された長期的接種計画を立案することが可能です。
モニタリング項目 | 評価頻度 | 判断基準 |
抗体価 | 1-2年ごと | 特定の閾値を下回る場合再接種 |
感染症発症率 | 毎年 | 地域平均と比較して上昇時検討 |
菌株分布 | 3-5年ごと | 非ワクチン株増加時再考 |
長期的な効果持続を目指して科学的根拠に基づいた接種スケジュールの最適化が重要です。
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンの副作用とデメリット
接種部位の局所反応
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)の接種後に最も一般的に見られる副反応は接種部位の局所反応です。
これらの症状は通常一過性であり数日以内に自然軽快することが多いですが、患者さんの不快感や日常生活への影響を考慮する必要があります。
局所反応 | 発生頻度 | 持続期間 |
疼痛 | 高頻度 | 1-3日 |
発赤 | 中頻度 | 2-4日 |
腫脹 | 中頻度 | 1-3日 |
硬結 | 低頻度 | 3-7日 |
これらの症状が強く出現した際は冷却や鎮痛剤の使用を検討します。
全身性の副反応
局所反応に加えて全身性の副反応が生じる可能性もあります。
これらの症状は接種後数日以内に出現して通常は短期間で消失しますが患者さんの体調や生活に一時的な影響を与える点に留意が必要です。
- 発熱
- 倦怠感
- 食欲不振
- 頭痛
特に乳幼児では発熱に伴う不機嫌やぐずりが見られることがあります。
全身症状 | 発生頻度 | 対処法 |
発熱 | 中頻度 | 解熱剤の使用考慮 |
倦怠感 | 中頻度 | 十分な休息 |
頭痛 | 低頻度 | 鎮痛剤の使用考慮 |
筋肉痛 | 低頻度 | 温罨法 |
これらの症状が遷延する際は医療機関への相談を推奨します。
アレルギー反応
まれではありますがプレベナー13接種後にアレルギー反応が生じる可能性があります。
特に重篤なアナフィラキシーショックは生命を脅かす危険があるため接種後の慎重な観察が重要です。
アレルギー症状 | 発生頻度 | 対応 |
蕁麻疹 | 非常に稀 | 抗ヒスタミン薬投与 |
呼吸困難 | 極めて稀 | 気道確保・酸素投与 |
血圧低下 | 極めて稀 | 輸液・昇圧剤使用 |
意識障害 | 極めて稀 | 全身管理・ICU対応 |
アレルギー既往のある患者さんでは接種前の詳細な問診と接種後の長時間観察が必要です。
非ワクチン型株への置換
プレベナー13の広範な使用に伴いワクチンに含まれない血清型(非ワクチン型)の肺炎球菌が増加する現象が観察されています。
この「血清型置換」は長期的な有効性に影響を与える可能性があるため継続的な監視と対策が求められます。
現象 | 影響 | 対策 |
血清型置換 | 非ワクチン型株の増加 | 新規ワクチン開発 |
耐性菌出現 | 治療困難化 | 抗菌薬適正使用の推進 |
生態系変化 | 他の病原体の増加 | 微生物叢の継続的モニタリング |
医療従事者はこの動向に注意を払い適切な感染対策を講じる必要があります。
経済的負担
プレベナー13の接種には一定の費用がかかるため経済的な負担が生じます。
特に任意接種の場合は全額自己負担となることから接種を躊躇する要因となりえます。
- 初回接種シリーズの総費用
- 追加接種に伴う継続的支出
これらの費用対効果を個々の状況に応じて慎重に検討する必要があります。
接種対象 | 費用負担 | 備考 |
定期接種 | 公費 | 対象年齢制限あり |
任意接種 | 自己負担 | 医療機関により価格差あり |
企業健診 | 企業負担 | 一部自己負担の場合も |
研究参加者 | 研究費 | 臨床試験等に限定 |
地域や医療機関によって接種費用に差異があるため事前の情報収集が重要です。
長期的な安全性データの不足
プレベナー13は比較的新しいワクチンであるため極めて長期にわたる安全性データが限られています。
特に生涯を通じた複数回接種の影響や超長期的な副作用については今後も継続的な観察と研究が必要です。
観察期間 | データの充実度 | 課題 |
5年以内 | 十分 | 短期的安全性は確立 |
5-10年 | 中程度 | 中期的影響の評価継続中 |
10年以上 | 不十分 | 長期的影響は未知 |
生涯 | データなし | 複数回接種の影響不明 |
他のワクチンとの相互作用
プレベナー13を他のワクチンと同時接種する際に稀に予期せぬ副反応や免疫応答の変化が生じる可能性があります。
特に複数の不活化ワクチンを同時に接種する際は慎重な経過観察が求められます。
併用ワクチン | 相互作用の可能性 | 注意点 |
インフルエンザ | 低い | 接種部位を分ける |
DPT-IPV | 中程度 | 発熱リスクやや上昇 |
ロタウイルス | 低い | 消化器症状に注意 |
BCG | 不明 | データ不足 慎重投与 |
同時接種によるベネフィットとリスクを個別に評価し最適な接種スケジュールを決定します。
論文における使用経験報告によるとプレベナー13と23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の連続接種において免疫応答の干渉が観察されたケースがあります。
両ワクチンの最適な接種間隔や順序については今後さらなる研究が期待されます。
代替治療薬
23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPSV23)
プレベナー13の効果が不十分であった際には23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPSV23)が代替選択肢として考慮されます。
PPSV23は13価ワクチンよりも多くの血清型をカバーしているためより広範な予防効果が期待できます。
特徴 | プレベナー13 | PPSV23 |
含有抗原数 | 13種類 | 23種類 |
免疫原性 | 高い | やや低い |
接種年齢 | 生後2ヶ月〜 | 2歳以上 |
追加接種 | 原則不要 | 5年ごと |
PPSV23は特に成人や高齢者において侵襲性肺炎球菌感染症の予防に有効です。
15価肺炎球菌結合型ワクチン
最近承認された15価肺炎球菌結合型ワクチンはプレベナー13の代替として注目されています。
このワクチンは13価ワクチンに含まれる血清型に加えて新たに2つの血清型を含有しています。
- 22F血清型
- 33F血清型
これらの追加血清型によって、より広範な予防効果が期待されるのです。
血清型 | プレベナー13 | 15価ワクチン |
1-13 | 含有 | 含有 |
22F | 非含有 | 含有 |
33F | 非含有 | 含有 |
15価ワクチンの使用によって従来カバーできなかった感染症の予防が可能となります。
20価肺炎球菌結合型ワクチン
さらなる選択肢として20価肺炎球菌結合型ワクチンが開発されています。
このワクチンはプレベナー13に含まれる13種類の血清型に加えて7つの追加血清型を含有しています。
追加血清型 | 特徴 |
8 | 侵襲性感染症の主要原因 |
10A | 小児の中耳炎に関与 |
11A | 高齢者の肺炎の原因として増加 |
12F | 重症例との関連が指摘 |
15B | 非侵襲性感染症で頻度が高い |
22F | 成人の侵襲性感染症で増加傾向 |
33F | 抗菌薬耐性と関連 |
20価ワクチンの導入によりさらに幅広い血清型に対する予防が可能となることが期待されています。
他の細菌性ワクチンとの併用
プレベナー13単独での効果が不十分な場合には他の細菌性ワクチンとの併用療法を検討します。
この方法によって複数の病原体に対する同時予防が可能となります。
併用ワクチン | 対象病原体 | 期待される効果 |
ヒブ(Hib) | インフルエンザ菌b型 | 細菌性髄膜炎予防 |
百日咳 | 百日咳菌 | 呼吸器感染症予防 |
髄膜炎菌 | 髄膜炎菌 | 侵襲性感染症予防 |
結核 | 結核菌 | 肺結核予防 |
これらのワクチンを適切に組み合わせることで総合的な感染症予防効果が高まります。
免疫グロブリン製剤
重度の免疫不全患者さんや特定の基礎疾患を有する患者さんではワクチン接種が困難な状況があります。
このような場合は免疫グロブリン製剤の投与が代替療法として考慮されます。
- 静注用人免疫グロブリン(IVIG)
- 皮下注用人免疫グロブリン(SCIG)
これらの製剤は受動免疫を付与して短期的な感染予防効果を発揮します。
投与経路 | 利点 | 欠点 |
静脈内 | 迅速な効果発現 | 医療機関での投与必要 |
皮下 | 自宅投与可能 | 効果発現にやや時間 |
筋肉内 | 簡便 | 大量投与困難 |
患者さんの状態や生活スタイルに応じて最適な投与経路を選択します。
論文における使用経験報告によるとプレベナー13と23価ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の連続接種が 単独接種よりも優れた免疫応答を誘導することが示されています。
特に65歳以上の高齢者や慢性疾患患者さんではこの組み合わせによる接種戦略が有効です。
抗菌薬の予防投与
ワクチン接種が困難な患者さんや即時の感染予防が必要な状況では抗菌薬の予防投与を考慮します。
この方法は一時的な感染リスク低減には有効ですが長期使用による耐性菌出現のリスクに注意が必要です。
抗菌薬 | 対象菌種 | 投与期間の目安 |
アモキシシリン | 肺炎球菌 H.インフルエンザ | 1-3ヶ月 |
アジスロマイシン | 非定型肺炎原因菌 | 3-6ヶ月 |
レボフロキサシン | 広域スペクトル | 短期(1-2週間) |
スルファメトキサゾール・トリメトプリム | ニューモシスチス | 長期(6ヶ月以上) |
予防投与の期間や薬剤選択は患者さんの感染リスクや基礎疾患に応じて個別に判断します。
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンの併用禁忌
絶対的禁忌薬剤
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)には厳密な意味での絶対的禁忌薬剤は存在しません。
しかし特定の状況下では併用を避けるべき薬剤や治療法があります。
薬剤/治療法 | 理由 |
生ワクチン | 免疫反応の干渉リスク |
免疫抑制剤 | ワクチン効果減弱の可能性 |
抗凝固薬 | 出血リスク増加 |
放射線療法 | 免疫応答低下の懸念 |
これらの薬剤や治療法を併用する際は 個々の患者さんの状態を慎重に評価し 接種のタイミングを調整する必要があります。
免疫抑制剤との相互作用
プレベナー13と免疫抑制剤の併用には特別な注意が必要です。
免疫抑制状態ではワクチンの効果が十分に得られない可能性があるため接種時期の調整が重要となります。
- 高用量ステロイド
- 生物学的製剤
- 化学療法薬
- 臓器移植後の免疫抑制療法
これらの治療を受けている患者さんではワクチン接種のタイミングを慎重に検討する必要があります。
免疫抑制剤 | 推奨される接種間隔 |
プレドニゾロン | 20mg/日以下に減量後2週間 |
リツキシマブ | 投与6ヶ月後以降 |
シクロホスファミド | 投与3ヶ月後以降 |
タクロリムス | 血中濃度安定後 |
個々の患者さんの免疫状態を考慮して最適な接種時期を決定することが大切です。
抗凝固薬との併用注意
プレベナー13は筋肉内注射で投与するため抗凝固療法中の患者さんでは注意が必要です。
出血リスクを最小限に抑えるために特に以下の点に留意します。
抗凝固薬 | 注意事項 |
ワルファリン | INR値確認後に接種 |
DOAC | 服用前のタイミングで接種 |
ヘパリン | 投与直前または直後を避ける |
抗血小板薬 | 慎重に接種部位を選択 |
沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)の薬価
薬価
プレベナー13の薬価は決まっていません。卸より原価で各医療機関が仕入れ、そこに人件費や施設費など加味して、それぞれの医療機関が独自に設定します。
そのため、この価格は医療機関によって変動がある点に留意が必要です。
現在、だいたい11,000円〜13,200円程度(税込)の幅に設定している医療機関が多いようです。
処方期間による総額
プレベナー13は通常1回の接種で完了するワクチンのため1週間や1ヶ月といった処方期間での総額計算は適用されません。
仮に1回接種12,100の医療機関で接種した場合は下記の通りとなります。
- 乳幼児・小児 4回接種の場合 48,400円
- 成人 1回接種の場合 12,100円
年齢や接種回数に応じて総額が決まります。
接種スケジュール | 総額 |
初回3回+追加1回 | 48,400円 |
1回のみ | 12,100円 |
医療機関によっては料金が全額込みの場合と、接種料や初診料などが別途必要となる事があるため、個々に医療機関に問い合わせください。
なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
- 参考にした論文