ペメトレキセドナトリウム水和物(アリムタ)とは非小細胞肺がんをはじめとする特定のがん種に効果を発揮する抗がん剤です。
この薬剤は葉酸代謝拮抗剤として作用してがん細胞の増殖を抑制する働きがあります。
主に進行または転移性の非小細胞肺がん患者さんの治療に用いられますが悪性胸膜中皮腫(あくせいきょうまくちゅうひしゅ)などにも適応があります。
PEMは単剤での使用や他の抗がん剤と併用することで患者さんの状態に応じた治療の選択肢を広げる重要な薬剤となっています。
ペメトレキセドナトリウム水和物の有効成分と作用機序 効果
有効成分の特徴
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)は抗悪性腫瘍剤として用いられる薬剤でその主成分はペメトレキセドという化合物です。
この物質は葉酸代謝拮抗剤として機能し、がん細胞の増殖を抑制する働きを持っています。
PEMの分子構造は葉酸と類似しておりこれにより細胞内の葉酸代謝系酵素と結合する性質があります。
有効成分 | 化学名 |
ペメトレキセド | N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)エチル]ベンゾイル]-L-グルタミン酸 |
作用機序の詳細
PEMは細胞内に取り込まれた後に複数の葉酸代謝系酵素を阻害することでその効果を発揮します。
主な標的酵素は以下のようなものです。
- チミジル酸シンターゼ(TS)
- ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)
- グリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)
これらの酵素阻害によりDNAやRNAの合成に必要な核酸前駆体の産生が妨げられます。
標的酵素 | 阻害効果 |
TS | チミジル酸の合成阻害 |
DHFR | 葉酸の還元阻害 |
GARFT | プリン合成阻害 |
結果としてがん細胞の増殖サイクルが停止しアポトーシス(細胞死)が誘導されるのです。
細胞周期への影響
PEMの作用は特定の細胞周期段階に限定されずS期(DNA合成期)を中心に広範囲に影響を与えます。
このため急速に分裂増殖するがん細胞に対して効果的に作用することができるのです。
正常細胞と比較してがん細胞は代謝活性が高く核酸合成への依存度も大きいことからPEMの影響をより強く受けやすい特徴があります。
細胞周期段階 | PEMの影響 |
G1期 | 軽度の増殖抑制 |
S期 | 強力なDNA合成阻害 |
G2/M期 | 細胞分裂阻害 |
臨床効果と適応症
PEMは非小細胞肺癌(NSCLC)や悪性胸膜中皮腫などの治療に用いられ、腫瘍縮小効果や生存期間の延長などの臨床効果が確認されています。
NSCLCにおいては特に非扁平上皮癌のサブタイプに対して高い有効性を示すことが知られています。
これは葉酸代謝系酵素の発現パターンが組織型によって異なることが一因と考えられています。
がん種 | PEMの効果 |
非小細胞肺癌(非扁平上皮癌) | 高い奏効率 |
悪性胸膜中皮腫 | 生存期間延長 |
非小細胞肺癌(扁平上皮癌) | 限定的効果 |
PEMの効果は単剤投与だけでなく他の抗がん剤との併用療法においても認められています。
例えばシスプラチンとの併用療法は進行性NSCLCの一次治療として広く用いられています。
また維持療法としての使用も承認されており、初期治療後の長期的な疾患コントロールに寄与します。
使用方法と注意点
投与方法と用量設定
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)は通常点滴静注によって投与します。
標準的な投与量は体表面積あたり500mg/㎡で 3週間を1サイクルとして繰り返し投与します。
投与方法 | 投与量 | 投与間隔 |
点滴静注 | 500mg/㎡ | 3週間ごと |
投与時間は10分間で生理食塩液などで希釈した後に静脈内投与します。患者さんの状態や副作用の程度に応じて用量調整が必要な場合があります。
前投薬と支持療法
PEM投与前には副作用軽減のため 以下の前投薬を行います。
- 葉酸サプリメント経口投与(通常PEM投与開始の7日前から開始)
- ビタミンB12筋肉内注射(通常PEM初回投与の1週間前から開始)
- デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイド(PEM投与前日 当日 翌日に投与)
前投薬 | 投与開始時期 | 投与方法 |
葉酸 | PEM投与7日前 | 経口 |
ビタミンB12 | PEM初回投与1週間前 | 筋肉内注射 |
ステロイド | PEM投与前日から3日間 | 経口または注射 |
これらの前投薬はPEMによる骨髄抑制や粘膜炎などの副作用を軽減する効果があります。
投与前後の注意事項
PEM投与前には必ず血液検査を実施して骨髄機能や肝機能 腎機能を評価します。
特に好中球数や血小板数が基準値を下回る際は投与を延期するか減量を検討します。
検査項目 | 基準値 | 対応 |
好中球数 | 1500/μL以上 | 基準未満の場合は延期 |
血小板数 | 100,000/μL以上 | 基準未満の場合は延期 |
投与後は定期的な血液検査や画像検査を行い効果判定と副作用モニタリングを継続します。
患者さんには十分な水分摂取を指導して腎機能保護に努めます。
患者教育と生活指導
PEM治療を受ける患者さんには以下の点について十分な説明と指導を行います。
- 治療のスケジュールと必要な検査について
- 副作用の早期発見と対処法
- 日常生活での注意点(感染予防など)
- 緊急時の連絡方法
特に感染予防は重要で手洗いやマスク着用、人混みを避けるなどの指導を行います。
ある医師の臨床経験ではあるPEM治療中の患者さんが自ら感染予防に努め、治療を中断することなく完遂できた事例があります。
この患者さんは毎日の体温測定と体調記録を欠かさず行い少しでも変化があれば早めに連絡をくれました。
結果として重篤な副作用を回避して予定通りの治療完遂につながりました。
このような患者さんの主体的な取り組みは治療成功の鍵となります。
適応対象となる患者
非小細胞肺癌患者への適応
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)は主に非小細胞肺癌(NSCLC)の患者さんに対して使用します。
特に扁平上皮癌を除く組織型のNSCLCに対して高い有効性を示すことが知られています。
NSCLC組織型 | PEMの有効性 |
腺癌 | 高い |
大細胞癌 | 比較的高い |
扁平上皮癌 | 限定的 |
進行期または転移性のNSCLC患者さんが主な対象となり初回治療や維持療法として使用します。
また化学療法後の二次治療としても有効性が認められています。
悪性胸膜中皮腫患者への適応
PEMは悪性胸膜中皮腫の患者さんにも適応があります。
この疾患はアスベスト曝露との関連が強く治療選択肢が限られていることからPEMの登場は大きな意義があります。
悪性胸膜中皮腫の分類 | PEMの使用 |
上皮型 | 推奨 |
肉腫型 | 検討可能 |
二相型 | 個別判断 |
手術不能例や進行例が主な対象となりますが術前化学療法としての使用も検討されています。
患者選択の重要性
PEM治療の効果を最大限に引き出すためには適切な患者さん選択が重要です。
患者さんを選択する時に考慮するのは以下の点です。
- 組織型(非扁平上皮癌が望ましい)
- 全身状態(PSが良好であること)
- 主要臓器機能(骨髄 肝 腎機能が保たれていること)
選択基準 | 推奨条件 |
PS | 0-1 |
骨髄機能 | 好中球≥1500/μL 血小板≥100,000/μL |
腎機能 | クレアチニンクリアランス≥45mL/min |
これらの条件を満たす患者さんではPEM治療による良好な治療効果が期待できます。
遺伝子変異と治療効果
近年特定の遺伝子変異とPEMの治療効果との関連が注目されています。
例えばEGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子陽性のNSCLC患者さんではPEMの有効性が高いという報告があります。
遺伝子変異 | PEMの効果 |
EGFR変異陽性 | 良好 |
ALK融合遺伝子陽性 | 良好 |
KRAS変異陽性 | 一般的 |
一方KRAS変異陽性例ではPEMの効果が限定的であるという報告もあり、個別の遺伝子プロファイリングに基づく治療選択が注目されています。
高齢者への適応
高齢のNSCLC患者さんにおいてもPEMは有効な治療選択肢となり得ます。
ただし年齢に伴う臓器機能の低下や併存疾患の存在を考慮して慎重な投与が求められます。
高齢患者さんに対してPEM投与を検討するときに注意すべきは次の点です。
- 全身状態の十分な評価
- 臓器機能(特に腎機能)のチェック
- 併存疾患の管理状況確認
- 社会的サポート体制の確認
年齢層 | PEM投与の注意点 |
65-74歳 | 標準的投与量で開始可能 |
75歳以上 | 減量開始を検討 |
高齢者では副作用のリスクが高まることがあるため綿密なモニタリングと適切な支持療法が大切です。
治療期間
標準的な投与サイクル
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)の治療期間は患者さんの状態や疾患の進行度によって異なりますが、一般的には3週間を1サイクルとして投与を繰り返します。
多くの臨床試験では4〜6サイクルの投与を基本としていますが、患者さんの反応や副作用の程度に応じて柔軟に調整します。
投与スケジュール | 期間 |
1サイクル | 3週間 |
標準的な治療期間 | 4〜6サイクル(12〜18週間) |
初回治療では腫瘍の縮小効果や症状の改善を目指して効果が認められた場合は維持療法へ移行することがあります。
維持療法の期間
PEMによる維持療法は初回治療で効果が得られた患者さんに対して行われます。
この期間は病勢進行や許容できない副作用が出現するまで継続することが多く、数ヶ月から1年以上に及ぶといったケースも珍しくありません。
維持療法の種類 | 期間 |
継続維持療法 | 病勢進行まで |
スイッチ維持療法 | 他剤での初回治療後にPEMへ変更 |
維持療法中は定期的な効果判定と副作用モニタリングを行い継続の是非を慎重に判断します。
治療期間に影響を与える因子
PEMの治療期間を決定する際には以下のような要因を総合的に考慮します。
- 腫瘍の縮小効果や症状改善の程度
- 副作用の発現状況と重症度
- 患者さんの全身状態(PS)
- 患者さんの希望や生活の質(QOL)
因子 | 治療期間への影響 |
良好な腫瘍縮小効果 | 期間延長の可能性 |
重度の副作用出現 | 期間短縮や中断の可能性 |
これらの要因を踏まえて各患者さんに最適な治療期間を個別に設定します。
再投与の可能性
PEM治療後に一旦休薬して再度病勢が進行した際に再投与を検討することがあります。
この場合は前回治療時の効果や副作用の程度、休薬期間中の病勢進行速度などを考慮して判断します。
再投与の条件 | 評価項目 |
前回の治療効果 | PR以上が望ましい |
休薬期間 | 3ヶ月以上が理想的 |
再投与時は前回よりも慎重に経過観察を行い効果と副作用のバランスを見極めながら継続期間を決定します。
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)の副作用とデメリット
骨髄抑制
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)による最も一般的な副作用は骨髄抑制です。
この副作用により白血球・赤血球・血小板の減少が生じ、感染リスクの上昇 貧血 出血傾向などの問題が起こり得ます。
血球種類 | 減少時のリスク |
白血球 | 感染症 |
赤血球 | 貧血 |
血小板 | 出血傾向 |
骨髄抑制の程度は個人差が大きく、投与量や治療期間によっても変動します。
定期的な血液検査によるモニタリングと必要に応じた投与量調整や支持療法が重要です。
消化器症状
PEM投与後には様々な消化器症状が出現することがあります。
主な症状は次のようなものです。
- 悪心・嘔吐
- 食欲不振
- 下痢
- 口内炎
症状 | 発現頻度 |
悪心 | 高頻度 |
嘔吐 | 中等度 |
下痢 | 比較的低頻度 |
これらの症状は患者さんのQOLを大きく低下させる可能性があるため予防的な制吐剤の使用や適切な栄養管理が大切です。
皮膚症状
PEM治療中には様々な皮膚症状が現れることがあります。
代表的な症状としては以下とおりです。
- 発疹
- 皮膚乾燥
- 掻痒感
- 色素沈着
皮膚症状 | 対処法 |
発疹 | ステロイド外用薬 |
乾燥 | 保湿剤 |
これらの症状は患者さんの日常生活に支障をきたすだけでなく、時に治療の中断につながる可能性もあるため早期発見と適切な対応が求められます。
腎機能障害
PEMは主に腎臓から排泄されるため腎機能障害のリスクがあります。特に高齢者や既存の腎機能低下がある患者さんでは注意が必要です。
腎機能指標 | 正常値 |
クレアチニンクリアランス | ≥45 mL/min |
血清クレアチニン | ≤1.5 mg/dL |
腎機能障害の予防には十分な水分摂取と定期的な腎機能検査が重要となります。
間質性肺炎
PEM投与による重篤な副作用として間質性肺炎があります。
この副作用は致死的となる可能性があるため 早期発見と迅速な対応が極めて重要です。
初期症状 | 対応 |
乾性咳嗽 | 即時報告 |
呼吸困難 | 緊急受診 |
間質性肺炎の発症リスクは既存の肺疾患がある患者さんで高まるため投与前の慎重な評価と経過観察が求められます。
肝機能障害
PEM投与により肝機能異常が生じることがあります。
多くの場合は一過性ですが、重度の肝機能障害に進展する可能性もあるため注意深いモニタリングが必要です。
肝機能指標 | 異常値基準 |
AST/ALT | 基準値上限の3倍以上 |
総ビリルビン | 基準値上限の1.5倍以上 |
肝機能障害の予防には肝毒性のある薬剤との併用を避けアルコール摂取を控えるなどの生活指導も重要となります。
ある医師の臨床経験ではPEM投与中に重度の骨髄抑制を来した患者さんがいました。
この方は高齢で既存の腎機能低下もあり初回投与後に予想以上の白血球減少を認めました。
幸い迅速な対応により重篤な感染症は回避できましたが以後は慎重な減量投与を行いました。
この経験から個々の患者さんの状態を十分に考慮した投与設計と綿密なモニタリングの重要性を再認識しました。
代替治療薬
プラチナ製剤ベースの化学療法
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)による治療が効果を示さなかった際 にはプラチナ製剤を中心とした化学療法が代替選択肢となり得ます。
シスプラチンやカルボプラチンといったプラチナ製剤は非小細胞肺癌(NSCLC)治療の基幹薬として広く用いられています。
プラチナ製剤 | 特徴 |
シスプラチン | 高い抗腫瘍効果 腎毒性に注意 |
カルボプラチン | 腎毒性が比較的低い 骨髄抑制に注意 |
これらの薬剤は他の抗癌剤と併用することでより高い効果を発揮することがあります。
免疫チェックポイント阻害剤
近年免疫チェックポイント阻害剤が肺癌治療に大きな変革をもたらしています。
PEM治療後の選択肢としてニボルマブやペムブロリズマブといったPD-1阻害剤 アテゾリズマブなどのPD-L1阻害剤が考慮されます。
これらの薬剤は腫瘍細胞に対する免疫応答を活性化させることで抗腫瘍効果を発揮します。
免疫チェックポイント阻害剤 | 標的分子 |
ニボルマブ | PD-1 |
ペムブロリズマブ | PD-1 |
アテゾリズマブ | PD-L1 |
免疫チェックポイント阻害剤の効果は腫瘍のPD-L1発現状況によって異なるため投与前のバイオマーカー検査が重要です。
分子標的薬
特定の遺伝子変異を有する患者さんでは分子標的薬が有効な代替治療となる可能性があります。
例えばEGFR遺伝子変異陽性のNSCLC患者さんにはEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が選択肢です。
- EGFR-TKIの例
- ゲフィチニブ
- エルロチニブ
- オシメルチニブ
またALK融合遺伝子陽性例ではALK阻害剤が考慮されます。
遺伝子変異 | 対応する分子標的薬 |
EGFR変異 | EGFR-TKI |
ALK融合遺伝子 | ALK阻害剤 |
ROS1融合遺伝子 | ROS1阻害剤 |
これらの薬剤は特定の分子を標的とするため適切な遺伝子検査に基づく患者さん選択が大切です。
血管新生阻害剤
腫瘍の血管新生を阻害する薬剤もPEM治療後の選択肢となり得ます。
ベバシズマブやラムシルマブといったVEGF経路を標的とする薬剤は単独または他の抗癌剤との併用で使用されます。
これらの薬剤は腫瘍への栄養供給を遮断することで抗腫瘍効果を発揮します。
血管新生阻害剤 | 標的 |
ベバシズマブ | VEGF-A |
ラムシルマブ | VEGFR-2 |
ただし血管新生阻害剤は出血や血栓症のリスクがあるため患者さんの状態を慎重に評価する必要があります。
他の従来型抗癌剤
PEM以外の従来型抗癌剤も代替治療の選択肢として考慮されます。
ドセタキセルやパクリタキセルといったタキサン系薬剤、ゲムシタビンなどの代謝拮抗剤が用いられることがあります。
これらの薬剤は単独で使用されることもあればプラチナ製剤との併用療法として用いられることもあります。
薬剤 | 分類 |
ドセタキセル | タキサン系 |
パクリタキセル | タキサン系 |
ゲムシタビン | 代謝拮抗剤 |
使用する薬剤の選択には患者さんの年齢や全身状態、前治療歴などを総合的に判断します。
ある医師の臨床経験ではPEM治療後にニボルマブへ切り替えて劇的な効果を示した患者さんがいました。
この方はPEM治療中に徐々に病勢が進行していましたが、ニボルマブ投与後わずか2サイクルで腫瘍の著明な縮小を認めました。
PD-L1発現が高値だったことが良好な反応の一因と考えられますが、この経験から代替治療の選択肢を慎重に検討することの重要性を再認識しました。
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)の併用禁忌
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用には十分な注意が必要です。
NSAIDsはPEMの腎クリアランスを低下させて血中濃度を上昇させる可能性があります。
NSAIDs | 相互作用の程度 |
イブプロフェン | 強い |
ナプロキセン | 中等度 |
アスピリン(低用量) | 軽度 |
この相互作用によりPEMの副作用が増強される危険性があるため可能な限り併用を避けることが望ましいです。
腎毒性のある薬剤
PEMは主に腎臓から排泄されるため腎毒性のある薬剤との併用に注意が必要です。
特に以下のような薬剤との併用では腎機能障害のリスクが高まる可能性があります。
- アミノグリコシド系抗生物質
- 白金系抗癌剤(シスプラチンなど)
- 造影剤
腎毒性薬剤 | 併用時の注意点 |
アミノグリコシド | 腎機能モニタリング強化 |
シスプラチン | 投与間隔の調整 |
これらの薬剤とPEMを併用する際は腎機能の綿密なモニタリングと慎重な投与計画が重要です。
葉酸代謝に影響する薬剤
PEMは葉酸代謝拮抗剤であるため葉酸代謝に影響する他の薬剤との併用には注意が必要です。
例えばトリメトプリム/スルファメトキサゾール(ST合剤)などの葉酸代謝阻害作用を持つ薬剤との併用は骨髄抑制のリスクを高める恐れがあります。
葉酸代謝関連薬 | 相互作用 |
ST合剤 | 骨髄抑制リスク上昇 |
メトトレキサート | 毒性増強の可能性 |
これらの薬剤とPEMの併用が避けられない状況では血球数の頻回チェックと用量調整が必要となります。
プロトンポンプ阻害薬(PPIs)
プロトンポンプ阻害薬(PPIs)とPEMの併用には注意が必要です。
PPIsはPEMの吸収を低下させる可能性があり、結果として治療効果が減弱する恐れがあります。
PPI | 影響の程度 |
オメプラゾール | 中等度 |
エソメプラゾール | 中等度 |
PEMとPPIsの併用が必要な時は投与のタイミングを調整するなどの工夫が求められます。
生ワクチンとの併用
PEM投与中および投与後一定期間は生ワクチンの接種を避けるべきです。
PEMによる免疫抑制作用によりワクチンウイルスが増殖して重篤な感染症を引き起こす危険性があります。
生ワクチン | 接種可能時期 |
インフルエンザ(生) | PEM終了後3ヶ月以降 |
麻疹・風疹 | PEM終了後6ヶ月以降 |
不活化ワクチンは比較的安全ですが免疫応答が減弱している可能性があることに留意する必要があります。
PEM治療中に予防接種が必要となった際は個々の状況に応じて慎重に判断することが大切です。
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)の薬価
薬価
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)の薬価は規格によって異なります。
規格 | 薬価 |
100mg | 24,619円 |
500mg | 97,951円 |
一般的な投与量である500mg/m²を標準体格(1.5m²)の患者さんに投与する際は500mg製剤を2バイアル使用します。
処方期間による総額
PEMは通常3週間ごとに投与するため1週間の薬価は195,902円となります。
3ヶ月(4回投与)では約214,696円の薬剤費がかかります。
期間 | 概算薬価 |
1週間 | 195,902円 |
3ヶ月 | 783,608円 |
これらの金額は薬剤費のみで実際の治療費には診察料や検査料などが別途加算されます。
ジェネリック医薬品との比較
PEMのジェネリック医薬品も複数発売されています。
製品名 | 500mg薬価 |
先発品(アリムタ) | 97,951円 |
後発品A | 40,012円 |
ジェネリック医薬品を使用することで患者さん負担を大幅に軽減できる可能性があります。
なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
- 参考にした論文