ノギテカン塩酸塩(NGT)(ハイカムチン)とは、肺がんを代表とする多様な悪性新生物に対して顕著な効果を示す化学療法薬として知られています。
この抗腫瘍剤はがん細胞の分裂・増殖を強力に阻害して患者さんのQOL(生活の質)向上と症状緩和を実現することが主な目的です。
ハイカムチンは単独での使用に加えて放射線療法や免疫療法など他の治療法と併用されることで、より包括的かつ効果的な治療戦略の中核を担っています。
有効成分と作用機序、およびその治療効果
ノギテカン塩酸塩の化学構造と特徴
ノギテカン塩酸塩(NGT)は分子量533.99の白色〜淡黄色の結晶性粉末です。
この化合物はカンプトテシン誘導体に属していて水に溶けやすく、有機溶媒にも一定の溶解性を示します。
項目 | 特性 |
色調 | 白色〜淡黄色 |
形状 | 結晶性粉末 |
水溶性 | 高い |
有機溶媒溶解性 | 中程度 |
ノギテカンの化学構造は五環性の複雑な骨格を持っており、この独特な構造がその薬理作用に重要な役割を果たしているのです。
ノギテカン塩酸塩の作用機序
ノギテカン塩酸塩の主たる作用機序はトポイソメラーゼI阻害にあります。
トポイソメラーゼIはDNA複製や転写に必須の酵素でがん細胞の増殖に深く関与しています。
ノギテカンはこの酵素と結合し てその活性を抑制することで、がん細胞のDNA合成を妨げ 細胞分裂を停止させます。
具体的には以下のステップで作用します。
- トポイソメラーゼI-DNA複合体の安定化
- DNA一本鎖切断の誘発
- DNA複製フォークの進行阻害
作用段階 | 効果 |
酵素結合 | トポイソメラーゼI活性低下 |
DNA損傷 | 複製阻害 |
細胞周期 | G2/M期停止 |
この一連のプロセスによってがん細胞は増殖できなくなり最終的にアポトーシス(細胞死)へと導かれます。
ノギテカン塩酸塩の抗腫瘍効果
ノギテカン塩酸塩は広範囲のがん種に対して抗腫瘍活性を発揮します。
とりわけ小細胞肺がんや卵巣がんにおいて顕著な効果が認められています。
がん種 | 奏効率 |
小細胞肺がん | 20-30% |
卵巣がん | 15-25% |
子宮頸がん | 10-20% |
臨床試験では腫瘍縮小や症状改善だけでなく全生存期間の延長も確認されています。
さらにノギテカンは他の抗がん剤との相乗効果も報告されており、併用療法の重要な選択肢となっています。
ノギテカン塩酸塩の薬物動態学的特性
ノギテカン塩酸塩は経口投与や静脈内投与が可能で、その体内動態は以下の特徴を持ちます。
- 高い生体利用率(経口投与時)
- 広範な組織分布
- 主に肝臓で代謝
- 腎排泄が主要な消失経路
パラメータ | 値 |
半減期 | 2-3時間 |
蛋白結合率 | 約35% |
クリアランス | 30-40 L/h/m² |
これらの特性によりノギテカンは腫瘍組織に効率よく到達して持続的な抗腫瘍効果を発揮するのです。
適切な使用方法と留意すべき注意点
投与経路と用量設定
ノギテカン塩酸塩(NGT)は主に静脈内投与で使用しますが、経口剤も開発されています。
静脈内投与の標準的な用法は1日1回 を30分以上かけて点滴静注を5日間連続で行い、その後2〜3週間休薬するサイクルを繰り返します。
投与方法 | 用量 | 投与期間 |
静脈内点滴 | 1.5mg/m² | 5日間連続 |
経口投与 | 2.3mg/m² | 5日間連続 |
個々の患者さんの状態や他の併用薬剤により用量調整が必要となる場合もあります。
投与前の患者さん評価
NGTの投与を開始する前には患者さんの全身状態や臓器機能を綿密に評価することが重要です。
特に以下の項目について詳細な検査を行う必要があります。
- 骨髄機能(白血球数・血小板数・ヘモグロビン値)
- 肝機能(AST・ALT・ビリルビン値)
- 腎機能(クレアチニンクリアランス)
- 心機能(心電図・心エコー)
検査項目 | 基準値 |
好中球数 | 1500/μL以上 |
血小板数 | 100000/μL以上 |
クレアチニンクリアランス | 60mL/min以上 |
これらの検査結果に基づいて投与の可否や用量調整を慎重に判断します。
投与中のモニタリングと管理
NGT投与中は患者さんの状態を注意深く観察して定期的な血液検査や臓器機能評価を行うことが必須です。
骨髄抑制や消化器症状などの有害事象に対して迅速かつ適切な対応をとることが治療継続の鍵となります。
モニタリング項目 | 頻度 |
血液検査 | 週1-2回 |
肝機能検査 | 2-4週毎 |
腎機能検査 | 2-4週毎 |
自覚症状評価 | 毎日 |
患者さんの生活の質(QOL)維持に努めながら治療効果を最大限に引き出すことを目指します。
患者教育と支持療法
NGT治療を成功に導くには患者さん自身の理解と協力が必要不可欠であり、治療開始前に以下の点について 十分な説明と指導を行います。
- 予想される副作用とその対処法
- 食事や日常生活上の注意点
- 緊急時の連絡方法
ある医師の臨床経験ではある高齢の小細胞肺がん患者さんがNGT治療に不安を抱えていましたが、丁寧な説明と綿密な管理により副作用を最小限に抑えながら治療を完遂できました。
結果として腫瘍の著明な縮小が得られ患者さんのQOLも大幅に改善したことは印象深い成功例です。
このように医療者と患者さんの信頼関係構築と緊密なコミュニケーションがNGT治療の成功において重要な役割を果たします。
適応対象となる患者
小細胞肺がん患者における適応基準
ノギテカン塩酸塩(NGT)は小細胞肺がん患者さんの中でも特定の条件を満たす方々に対して有効性が認められています。
一次治療後に再発や進行が確認された症例や標準的な化学療法に抵抗性を示す患者さん群がNGTの主な適応対象となります。
適応基準 | 詳細 |
病期 | 進展型または再発 |
前治療歴 | 1レジメン以上 |
PS | 0-2 |
パフォーマンスステータス(PS)が良好で主要臓器機能が保たれている患者さんにおいてNGTの効果が期待できます。
卵巣がん患者に対するNGTの適応
卵巣がん治療においてNGTは再発例や難治性症例に対する選択肢の一つです。
プラチナ製剤を含む初回化学療法後に再発した患者さんやプラチナ抵抗性を示す症例がNGTの投与対象となる場合があります。
適応条件 | 基準 |
組織型 | 上皮性卵巣がん |
再発期間 | 6ヶ月未満 |
前治療効果 | SD以下 |
NGTの使用を検討する際には患者さんの全身状態や腫瘍の特性を総合的に評価することが重要です。
子宮頸がんにおけるNGTの適応患者
局所進行性または転移性の子宮頸がん患者さんに対してNGTの有効性が報告されています。
特に従来の標準治療に反応しない症例や再発を繰り返す難治例においてNGTが選択肢です。
以下の条件を満たす患者さんがNGT投与の候補となります。
- 病理学的に扁平上皮がんまたは腺がんと診断された症例
- 手術不能または放射線療法後の再発例
- 他の化学療法剤での治療歴がある患者さん
評価項目 | 基準値 |
骨髄機能 | 好中球≥1500/μL |
肝機能 | AST/ALT≤基準値上限の2.5倍 |
腎機能 | Ccr≥60mL/min |
これらの基準を満たす患者さんにおいてNGTによる治療効果が期待できます。
NGT適応の可能性がある他のがん種
NGTの抗腫瘍効果は上記以外のがん種においても研究が進められています。
例えば次のがん種においてNGTの臨床試験が行われており、将来的に適応拡大の可能性があります。
がん種 | 臨床試験フェーズ |
非小細胞肺がん | III |
膵臓がん | II |
胆道がん | II |
神経内分泌腫瘍 | I/II |
これらのがん種においても既存の治療に抵抗性を示す症例や再発例がNGTの潜在的な適応対象となる可能性があります。
NGT適応決定のためのバイオマーカー研究
NGTの治療効果を予測してより適切な患者さん選択を行うためのバイオマーカー研究が進行しています。
トポイソメラーゼI発現レベルやDNA修復遺伝子の変異状況など分子生物学的特徴に基づいた患者さん選択が今後の課題です。
バイオマーカー候補 | 評価方法 |
トポイソメラーゼI発現 | IHC |
BRCA1/2変異 | 遺伝子検査 |
miRNA発現プロファイル | マイクロアレイ |
これらのバイオマーカーを用いることで NGTの恩恵を受けられる患者さんをより正確に同定できる可能性があります。
治療期間の設定と管理
標準的な投与サイクルと期間
ノギテカン塩酸塩(NGT)の治療期間はがん種や患者さんの状態によって異なりますが、一般的に複数のサイクルを繰り返す形式で実施します。
典型的な投与スケジュールでは5日間連続投与後に16〜23日間の休薬期間を設け、これを1サイクルとして4〜6サイクル程度継続することが多いです。
サイクル | 投与日数 | 休薬期間 |
1 | 5日 | 16-23日 |
2 | 5日 | 16-23日 |
3 | 5日 | 16-23日 |
4 | 5日 | 16-23日 |
この投与パターンにより腫瘍細胞への持続的な攻撃と正常細胞の回復のバランスを取ることができるのです。
治療効果評価のタイミングと期間延長の判断
NGT治療の継続期間を決定する上で定期的な効果判定が重要です。
通常は2〜3サイクル終了後に画像診断や腫瘍マーカー検査を実施して腫瘍縮小効果や病勢進行の有無を評価します。
効果が認められ副作用が許容範囲内であれば治療を継続するという判断をします。
評価項目 | 判定基準 |
腫瘍縮小率 | RECIST基準 |
腫瘍マーカー | 50%以上低下 |
全身状態 | PS 0-2維持 |
これらの基準を満たす患者さんにおいてはさらに長期の治療継続が検討されます。
治療中断と再開のタイミング
NGT治療中に重篤な副作用や全身状態の悪化が見られた際には 一時的な治療中断を検討します。
休薬期間を設けることで患者さんの回復を待ち、再開のタイミングを慎重に見極めます。
以下の項目は再開の条件です。
- 骨髄機能の回復(好中球数≥1500/μL 血小板数≥100000/μL)
- 非血液毒性のGrade 1以下への改善
- 全身状態の回復(PS 0-2)
中断理由 | 再開条件 |
骨髄抑制 | 好中球≥1500/μL |
肝機能障害 | AST/ALT≤Grade 1 |
全身状態悪化 | PS 0-2に回復 |
これらの条件を満たした時点で減量や投与間隔の調整を行いつつ治療再開を検討します。
治療終了の判断基準
NGT治療の終了時期を決定することは非常に重要かつ難しい判断ですが次のような状況において治療終了を考慮します。
- 腫瘍の完全奏効(CR)が得られ一定期間維持された場合
- 病勢進行が確認された場合
- 許容できない副作用が出現し継続が困難となった場合
- 患者さんの希望や全身状態を考慮して継続のメリットが限定的と判断された場合
終了理由 | 判断基準 |
完全奏効 | CR維持6ヶ月以上 |
病勢進行 | PD確認 |
副作用 | Grade 3以上持続 |
治療終了後も定期的な経過観察を行って再発や晩期有害事象の早期発見に努めます。
ある医師の臨床経験では再発小細胞肺がんの患者さんにNGTを6サイクル投与して著明な腫瘍縮小を得た後、維持療法として3週毎の投与に変更した結果2年以の上病勢コントロールができた症例があります。
この経験からNGTの治療期間は画一的なものではなく個々の患者さんの状態や反応性に応じて柔軟に設定することが効果的だと実感しています。
NGTの副作用とデメリット
骨髄抑制に関連する副作用
ノギテカン塩酸塩(NGT)投与に伴う最も頻度の高い副作用は骨髄抑制です。
この副作用により白血球減少・好中球減少・血小板減少・貧血などが生じ、患者さんの免疫機能低下や出血傾向、倦怠感などを引き起こします。
血球種類 | 減少率 |
白血球 | 60-80% |
好中球 | 70-90% |
血小板 | 40-60% |
赤血球 | 30-50% |
骨髄抑制は投与開始後7-14日目頃に最も顕著となり、その後徐々に回復する傾向です。
しかし重度の骨髄抑制が持続する場合には投与スケジュールの変更や支持療法の導入が必要となります。
消化器系副作用の特徴と管理
NGT投与により様々な消化器症状が出現する恐れがあります。
主な症状としては以下の通りです。
副作用 | 発現率 |
悪心 | 60-80% |
嘔吐 | 40-60% |
下痢 | 30-50% |
口内炎 | 20-40% |
これらの症状は患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させ、栄養状態の悪化や脱水を引き起こす原因となります。
適切な制吐剤の使用や栄養サポート、口腔ケアなどの対策を講じることが重要です。
皮膚・粘膜への影響と対応策
NGTは皮膚や粘膜にも影響を及ぼし脱毛・皮膚炎・粘膜炎などを引き起こす可能性があります。
特に脱毛は患者さんの心理面に大きな影響を与えるデメリットの一つです。
副作用 | 発現時期 |
脱毛 | 投与2-3週間後 |
皮膚炎 | 投与1-2週間後 |
粘膜炎 | 投与5-10日後 |
これらの副作用に対しては事前の説明と心理的サポート、適切なスキンケア指導が必要となります。
脱毛に関しては一時的なものであり治療終了後に回復することを患者さんに伝えることが精神的な安心につながります。
肝機能・腎機能への影響
NGTは肝臓や腎臓にも影響を与え、肝機能障害や腎機能障害を引き起こす可能性があります。
これらの臓器障害は薬物の代謝や排泄に影響を与えるため慎重なモニタリングが必要です。
検査項目 | 異常値出現率 |
AST/ALT上昇 | 20-30% |
ビリルビン上昇 | 10-20% |
クレアチニン上昇 | 5-15% |
肝機能や腎機能の低下が認められた場合には用量調整や投与間隔の変更を検討します。重度の臓器障害が生じた際には投与中止を考慮する場合もあります。
長期投与に伴うリスクと対策
NGTを長期間投与する際には累積毒性や二次発がんのリスクに注意を払わなければいけません。
特にトポイソメラーゼ阻害剤の長期使用による二次性白血病の報告があり、慎重な経過観察が求められます。
リスク | 発生率 |
二次性白血病 | 0.5-1% |
心毒性 | 1-3% |
末梢神経障害 | 5-10% |
長期投与のデメリットを最小限に抑えるためには定期的な血液検査や心機能評価 神経学的診察などを実施して早期発見・早期対応に努めることが大切です。
ある医師の臨床経験ではある高齢の小細胞肺がん患者さんにNGTを投与した際、予防的な制吐剤の使用や栄養サポートチームとの連携により消化器症状を最小限に抑えながら治療を完遂できました。
結果として腫瘍の著明な縮小が得られて患者さんのQOLも維持できたことは副作用管理の重要性を再認識させられた印象深い症例でした。
このように NGTの副作用やデメリットを十分に理解し 適切な対策を講じることで より安全で効果的な治療を提供することが可能となります。
代替治療選択肢
白金製剤ベースの併用療法
ノギテカン塩酸塩(NGT)による治療効果が得られない患者さんに対してはシスプラチンやカルボプラチンなどの白金製剤を基軸とした併用療法を検討します。
これらの薬剤はDNAの架橋形成を引き起こし、がん細胞の増殖を抑制する作用を持ちます。
併用薬 | 適応がん種 |
シスプラチン+エトポシド | 小細胞肺がん |
カルボプラチン+パクリタキセル | 卵巣がん |
白金製剤ベースの治療はNGTとは異なる作用機序を持つため交差耐性の問題を回避できる利点があります。
イリノテカンへの切り替え
NGTと同じトポイソメラーゼI阻害薬であるイリノテカンはNGT耐性例においても効果を示す場合があります。
イリノテカンは体内で活性代謝物SN-38に変換されて強力な抗腫瘍効果を発揮します。
投与スケジュール | 用量 |
週1回投与 | 100-125 mg/m² |
2週間毎投与 | 300-350 mg/m² |
イリノテカンは特に結腸直腸がんや膵臓がんにおいて高い有効性が報告されており、NGT無効例での選択肢となります。
分子標的薬の導入
近年がん細胞の特定の分子を標的とする分子標的薬の開発が進みNGT無効例に対する新たな治療選択肢となっています。
例えば小細胞肺がんにおけるロバレニブ(DLL3標的)や卵巣がんにおけるオラパリブ(PARP阻害剤)などです。
分子標的薬 | 標的分子 |
ロバレニブ | DLL3 |
オラパリブ | PARP |
これらの薬剤は従来の細胞傷害性抗がん剤とは異なるメカニズムで作用するためNGT耐性腫瘍に対しても効果を示す可能性があります。
免疫チェックポイント阻害薬の活用
NGT治療後の進行例において免疫チェックポイント阻害薬の使用が新たな選択肢となっています。
PD-1/PD-L1阻害薬やCTLA-4阻害薬は腫瘍免疫応答を活性化させることで抗腫瘍効果を発揮します。
免疫チェックポイント阻害薬 | 標的分子 |
ニボルマブ | PD-1 |
アテゾリズマブ | PD-L1 |
これらの薬剤は特に腫瘍遺伝子変異量(TMB)が高い症例やマイクロサテライト不安定性(MSI-High)を示す腫瘍において高い有効性が期待できます。
新規抗体薬物複合体(ADC)の検討
抗体薬物複合体(ADC)は腫瘍特異的な抗体に強力な細胞傷害性物質を結合させた新しいタイプの薬剤です。
NGT無効例に対する新たな治療選択肢として注目を集めています。
以下は現在開発されているADCの例です。
- トラスツズマブ デルクステカン(HER2陽性腫瘍)
- エンホルツマブ ベドチン(尿路上皮がん)
ADC | 標的抗原 |
トラスツズマブ デルクステカン | HER2 |
エンホルツマブ ベドチン | Nectin-4 |
これらのADCは腫瘍細胞を選択的に攻撃する能力を持ち、NGT耐性例においても新たな治療機会を提供する可能性があります。
マルチキナーゼ阻害薬の選択
NGT治療後の進行例に対して複数のキナーゼを同時に阻害するマルチキナーゼ阻害薬の使用を検討します。
これらの薬剤は腫瘍の増殖・血管新生・転移などに関与する複数のシグナル経路を同時に抑制することで幅広い抗腫瘍効果を発揮します。
マルチキナーゼ阻害薬 | 主な標的 |
スニチニブ | VEGFR PDGFR c-Kit |
レンバチニブ | VEGFR FGFR RET |
マルチキナーゼ阻害薬は特に腎細胞がんや肝細胞がんなどの血管新生依存性の高い腫瘍に対して有効性が示されています。
ある医師の臨床経験ではNGTに抵抗性を示した再発小細胞肺がんの患者さんに対してアムルビシンへの切り替えを行ったところ著明な腫瘍縮小効果が得られた症例がありました。
この経験からNGT無効例であっても他の作用機序を持つ薬剤への変更によって良好な治療効果が得られる可能性があることを実感しました。
NGTが奏効しなかった際には個々の患者さんの状態や腫瘍の特性を考慮しつつ、これらの代替治療薬の中から最適な選択を行うことが重要です。
併用禁忌薬と注意すべき相互作用
生ワクチンとの併用リスク
ノギテカン塩酸塩(NGT)は強力な骨髄抑制作用を有するため生ワクチンとの併用は厳重に避けるべきです。
NGTによる免疫機能低下状態で生ワクチンを接種するとワクチン由来の感染症を引き起こす危険性が高まります。
生ワクチンの種類 | 潜在的リスク |
麻疹ワクチン | 麻疹脳炎 |
風疹ワクチン | 関節炎 |
水痘ワクチン | 播種性水痘 |
BCGワクチン | 全身性BCG感染 |
これらのワクチンはNGT治療終了後から十分な期間(通常3〜6ヶ月)をおいてから接種を検討します。
CYP3A4阻害剤との相互作用
NGTはCYP3A4により代謝されるため強力なCYP3A4阻害剤との併用は避けるべきです。
これらの薬剤との併用によりNGTの血中濃度が上昇して重篤な副作用が生じる危険性が生じます。
特に注意が必要なCYP3A4阻害剤としては以下が挙げられます。
- ケトコナゾール
- イトラコナゾール
- クラリスロマイシン
- リトナビル
CYP3A4阻害剤 | NGT血中濃度上昇率 |
ケトコナゾール | 2-3倍 |
イトラコナゾール | 1.5-2倍 |
クラリスロマイシン | 1.3-1.5倍 |
これらの薬剤との併用が避けられない状況ではNGTの減量や投与間隔の延長を慎重に検討する必要があります。
P糖タンパク質阻害剤との相互作用
NGTはP糖タンパク質の基質でもあるためP糖タンパク質阻害剤との併用にも注意が必要です。
これらの薬剤との併用によりNGTの腸管吸収が増加し血中濃度が上昇する可能性があります。
主なP糖タンパク質阻害剤としては以下が知られています。
- シクロスポリン
- ベラパミル
- キニジン
- タクロリムス
P糖タンパク質阻害剤 | 影響 |
シクロスポリン | NGT AUC 2倍上昇 |
ベラパミル | NGT Cmax 1.5倍上昇 |
これらの薬剤との併用時にはNGTの投与量調整や血中濃度モニタリングが重要です。
骨髄抑制を増強する薬剤との併用
NGTの主要な副作用である骨髄抑制を増強する可能性のある薬剤との併用には細心の注意を払わなければなりません。
特に以下の薬剤群との併用は重度の骨髄抑制を引き起こすリスクがあります。
- 他の細胞傷害性抗がん剤
- 放射線療法
- G-CSF製剤(投与タイミングに注意)
併用薬/療法 | 骨髄抑制増強リスク |
シスプラチン | 好中球減少症 2倍 |
放射線療法 | 血小板減少症 1.5倍 |
これらの治療法と併用する際には頻回の血球数モニタリングと適切な支持療法の導入が必須となります。
QT延長を引き起こす薬剤との相互作用
NGTはQT間隔延長のリスクがあるためQT延長を引き起こす可能性のある他の薬剤との併用には注意が必要です。
特に以下の薬剤との併用は致命的な不整脈を引き起こすリスクがあるため 避けるべきです。
- クラスIII抗不整脈薬(アミオダロン ソタロール)
- 一部の抗精神病薬(ハロペリドール リスペリドン)
- 特定の抗生物質(レボフロキサシン モキシフロキサシン)
QT延長薬 | 併用時のQTc延長 |
アミオダロン | 平均60ms延長 |
ハロペリドール | 平均35ms延長 |
これらの薬剤との併用が避けられない場合には厳重な心電図モニタリングと電解質管理が不可欠です。
NGTと他の薬剤を併用する際には個々の患者さんの状態や併用薬の特性を十分に考慮しながら慎重な判断が求められます。
特に以下の点に留意することが重要です。
- 患者さんの既往歴や合併症の把握
- 現在服用中の全ての薬剤のリストアップ
- 定期的な血液検査と臓器機能評価
- 薬物相互作用データベースの活用
ある医師の臨床経験ではNGT投与中の患者さんにCYP3A4阻害作用のあるアゾール系抗真菌薬の併用が必要となった際にNGTの投与量を50%に減量ました。
その後は厳重な副作用モニタリングを行うことで安全に治療を継続できた症例がありました。
このように併用禁忌や注意すべき相互作用を理解して適切な対策を講じることでNGT治療の安全性と有効性を最大限に引き出すことが可能となります。
ノギテカン塩酸塩(NGT)の薬価と治療費用
薬価
ノギテカン塩酸塩(NGT)の薬価は規格により異なります。
1.1mg製剤の薬価は6,325円です。
規格 | 薬価 |
1.1mg | 6,325円 |
小細胞肺癌に対する標準的な投与量である1.0mg/m²を体表面積1.6m²の患者さんに投与すると、1回あたり1.6mgとなって1.1mg製剤を2本使用することになります。
処方期間による総額
1週間の治療では5日間連続投与するため薬剤の総額は88,550円になります。
3ヶ月の治療になると、1クールが5日間連続投与し、その後16日間休薬するため、5×4=20回投与を行うと想定すれば薬代は253,000円となります。
期間 | 総額 |
1週間 | 88,550円 |
3ヶ月(4クール) | 253,000円 |
これらの金額は薬剤費のみであり入院費や検査費用は含まれていません。
ジェネリック医薬品との比較
現時点でNGTのジェネリック医薬品は販売されていません。
今後特許期間満了後にジェネリック医薬品が登場する可能性はありますが具体的な時期は未定です。
医薬品 | 薬価 |
先発品 | 16,325円 |
ジェネリック | 未発売 |
ジェネリック医薬品が登場すれば治療費用の大幅な削減が期待できるでしょう。
なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
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