ニボルマブ(オプジーボ)とは人体の免疫システムを活性化させ、がん細胞と闘う力を高める画期的な薬剤です。

この薬はがん(ガン)細胞が免疫から逃れるために使う「チェックポイント」を阻害することで作用します。

具体的にはPD-1という分子の働きを抑えてT細胞ががん細胞を攻撃しやすくする環境を整えます。

従来の抗がん剤とは異なり直接がん細胞を攻撃するのではなく、体自身の防御機能を強化するアプローチを取ります。

主に進行した肺がんや悪性黒色腫などの治療に用いられ患者さんの生存期間延長に貢献しています。

オプジーボ | オプジーボ.jp
オプジーボ | オプジーボ.jp (opdivo.jp)
目次

有効成分、作用機序、効果

ニボルマブの有効成分

ニボルマブ(商品名オプジーボ)の有効成分はヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体という生物学的製剤です。

この抗体は遺伝子組み換え技術を用いて作られた人工タンパク質であり、免疫系の働きを調整する役割を持っています。

有効成分分類
ニボルマブ抗体医薬
一般名商品名
Nivolumabオプジーボ

抗体医薬品としてのニボルマブは高い特異性と親和性を持ち標的とするPD-1分子に結合することでその機能を阻害します。

ニボルマブの作用機序

ニボルマブの主な作用機序はPD-1/PD-L1経路の阻害にあります。

PD-1(Programmed cell death-1)はT細胞表面に発現するタンパク質で通常は過剰な免疫反応を抑制する役割を果たしています。

しかし、がん細胞はこのPD-1とその受容体であるPD-L1の相互作用を利用して免疫系から逃れようとします。

PD-1の役割がん細胞の戦略
免疫抑制免疫回避
T細胞の機能調整PD-L1の過剰発現

ニボルマブはPD-1に選択的に結合してがん細胞によるこの免疫回避メカニズムを阻止します。

これによりT細胞の活性が維持されてがん細胞に対する攻撃力が強化されます。

  • PD-1とPD-L1の結合を阻害
  • T細胞の疲弊を防止
  • 抗腫瘍免疫応答を増強

ニボルマブの免疫活性化メカニズム

ニボルマブによるPD-1阻害は単にT細胞の機能を回復させるだけでなく、より広範な免疫系の活性化をもたらします。

NK細胞やマクロファージなど他の免疫細胞の機能も間接的に増強され多角的な抗腫瘍効果が期待できます。

活性化される免疫細胞主な機能
T細胞直接的な細胞傷害
NK細胞自然免疫による攻撃
マクロファージ貪食と抗原提示

さらにニボルマブは腫瘍微小環境の改善にも寄与し、免疫抑制性の環境を免疫活性化に適した状態へと変化させます。

ニボルマブの臨床効果

ニボルマブの臨床効果は複数のがん種において確認されており、特に進行・再発の非小細胞肺がんや悪性黒色腫で顕著な成果を上げています。

従来の化学療法と比較して全生存期間の延長や無増悪生存期間の改善が報告されています。

がん種主な臨床効果
非小細胞肺がん生存期間延長
悪性黒色腫奏効率向上
腎細胞がん進行抑制

特筆すべきはニボルマブの持続的な効果です。

一部の患者さんでは長期間にわたる腫瘍制御が観察されており、これは免疫系を介した治療の大きな利点として注目されています。

  • 腫瘍縮小効果の持続
  • 免疫記憶の形成による再発抑制
  • 生活の質の維持

ニボルマブの効果は患者さん個々の免疫状態やがんの特性によって異なるため個別化医療の観点からのアプローチが必要です。

バイオマーカーを用いた効果予測や併用療法の開発など更なる治療の最適化に向けた研究が進められています。

使用方法と注意点

投与方法と用量

ニボルマブ(オプジーボ)の投与は通常点滴静注によって行います。

標準的な投与量は患者さんの体重に応じて決定し、2週間または4週間ごとに医療機関で実施するのが一般的です。

投与間隔標準的な投与量
2週間ごと240mg固定用量
4週間ごと480mg固定用量

投与時間は約30分から60分程度ですが患者さんの状態や医療機関の方針によって異なる場合があります。

医師は患者さんの体調や治療効果を考慮しながら投与スケジュールを個別に調整することがあります。

治療前の準備と評価

ニボルマブによる治療を開始する前に綿密な事前評価が必要です。

医師は患者さんの全身状態・がんの進行度・既往歴などを総合的に判断して治療の適応を慎重に検討します。

事前評価項目評価内容
血液検査免疫機能 肝機能 腎機能
画像検査がんの進行度 転移の有無
既往歴確認自己免疫疾患の有無

特に自己免疫疾患の既往がある患者さんでは治療によって症状が悪化する可能性があるため慎重な判断が求められます。

またPD-L1発現状況の検査を実施し治療効果の予測に役立てることも一般的です。

投与中のモニタリングと管理

ニボルマブ投与中は定期的な経過観察と副作用モニタリングが大切です。

医師は血液検査や画像検査を通じて治療効果と副作用の発現状況を継続的に評価します。

  • 定期的な血液検査(肝機能 腎機能 甲状腺機能など)
  • 画像検査による腫瘍サイズの変化確認
  • 自覚症状の聴取と身体診察

患者さん自身による体調変化の観察も重要で異常を感じた際は速やかに医療機関に連絡するよう指導します。

モニタリング項目頻度
血液検査2-4週間ごと
画像検査2-3ヶ月ごと
診察投与日ごと

免疫関連有害事象への対応

ニボルマブ治療において免疫関連有害事象(irAE)の管理は特に注意を要します。

これらの副作用は免疫系の活性化に伴って様々な臓器で生じる可能性があります。

主なirAE好発部位
皮膚障害発疹 掻痒
消化器障害下痢 大腸炎
内分泌障害甲状腺機能異常

irAEが発現した場合その重症度に応じて投与中断やステロイド治療などの適切な対応が必要になります。

重症化を防ぐためには早期発見と迅速な対応が鍵となるため患者さん教育と緊密な医療連携が求められます。

治療効果の評価と継続判断

ニボルマブの治療効果は従来の抗がん剤とは異なるパターンを示すことがあります。

腫瘍の一時的な増大(偽進行)後に縮小することもあるため慎重な効果判定が必要です。

効果判定基準特徴
RECIST腫瘍サイズの変化
irRECIST免疫反応を考慮

治療の継続や中止の判断は 画像所見だけでなく臨床症状や全身状態を総合的に評価して行います。

長期的な治療効果が期待できる患者さんでは継続投与による持続的な腫獰制御を目指します。

ある医師の臨床経験ではある肺がん患者さんが初回の画像評価で腫瘍増大を示したにもかかわらず全身状態が良好だったため治療を継続したところ、その後劇的な腫瘍縮小を達成しました。

このような経験から効果判定には慎重さと忍耐が必要だと実感しています。

  • 定期的な画像評価(CT MRIなど)
  • 腫瘍マーカーの推移確認
  • 患者さんの自覚症状や生活の質の変化を考慮

ニボルマブによるがん免疫療法は個々の患者さんに合わせたきめ細かな管理と長期的な視点での治療戦略立案が必要な治療法です。

医療チーム全体での情報共有と患者さんとの信頼関係構築が治療成功の可能性を高める重要な要素となります。

適応対象となる患者

非小細胞肺がん患者における適応条件

ニボルマブは非小細胞肺がんの患者さんに対して広く使用されています。

特に手術不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者さんが主な対象となります。

病期適応条件
III期化学放射線療法後の進行・再発
IV期一次治療後の進行・再発

PD-L1発現率が高い患者さんほど効果が期待できますが発現率にかかわらず投与を検討します。

EGFR遺伝子変異やALK転座陰性の患者さんでは、より高い効果が期待できる傾向にあります。

悪性黒色腫患者における適応基準

ニボルマブは悪性黒色腫患者さんに対しても有効性が認められています。

根治切除不能な進行期または転移性の悪性黒色腫が主な適応対象となります。

病態適応条件
初発ステージIII/IV
再発遠隔転移あり

BRAF遺伝子変異の有無にかかわらず投与を検討しますが、変異陽性例では分子標的薬との併用も選択肢に入ります。

術後補助療法としての使用も承認されており 再発リスクの高い患者さんに対して考慮します。

腎細胞がん患者に対する適応指針

進行性腎細胞がんの患者さんに対してもニボルマブは治療選択肢の一つとなっています。

特に血管新生阻害薬による前治療歴のある患者さんが対象となることが多いです。

リスク分類適応条件
中リスク一次治療として検討
高リスク一次治療として積極的に検討

組織型としては淡明細胞型が最も多く研究されていますが非淡明細胞型に対しても使用を検討します。

  • 転移巣の数と部位
  • 全身状態(ECOG Performance Status)
  • 腫瘍関連症状の有無

これらの要素を総合的に評価して個々の患者さんに最適な治療方針を決定します。

頭頸部がん患者における適応条件

再発または転移性の頭頸部扁平上皮がん患者さんもニボルマブの適応対象となります。

プラチナ製剤を含む化学療法後に病勢進行した症例が主な投与対象です。

前治療適応条件
化学療法プラチナ製剤抵抗性
放射線療法根治照射後の再発

HPV関連腫瘍とHPV非関連腫瘍のいずれにおいても使用を検討します。

腫瘍の局在(口腔 中咽頭 下咽頭 喉頭など)によって効果に差異が見られる可能性があるため個別の評価が重要です。

胃がん患者に対する適応基準

進行・再発胃がんまたは食道胃接合部がんの患者さんにもニボルマブが使用されます。

化学療法後に増悪した症例が主な対象となりますが、一次治療としての使用も検討されています。

組織型適応条件
腺がん化学療法後の進行例
扁平上皮がん化学療法後の進行例

HER2陽性例では分子標的薬との併用療法も選択肢となるため個別の検討が必要です。

  • 腹膜播種の有無
  • 腹水の程度
  • 経口摂取の可否

これらの要素を考慮して患者さんの全身状態と併せて総合的に判断します。

治療期間

標準的な投与スケジュール

ニボルマブの治療期間は個々の患者さんの状態や反応性によって大きく異なります。

一般的な投与スケジュールでは 2週間または4週間ごとに点滴静注を行います。

投与間隔標準用量
2週間ごと240mg
4週間ごと480mg

この投与サイクルを 病状の進行や重篤な副作用が現れるまで継続します。

多くの臨床試験では2年間の投与を目安としていますが、実臨床では個別化した判断が必要となります。

治療効果に基づく投与期間の調整

ニボルマブによる治療効果は従来の抗がん剤とは異なるパターンを示すことがあります。

腫瘍縮小効果が遅れて現れたり一時的な増大(偽進行)後に縮小したりすることがあるため慎重な効果判定が必要です。

効果判定投与継続の判断
完全奏効12週間継続後に中止を検討
部分奏効病勢進行まで継続
安定臨床的有益性がある限り継続

効果が持続している患者さんでは長期間の投与継続による持続的な腫瘍制御を目指します。

一方効果不十分な例では他の治療法への切り替えを早期に検討することが重要です。

長期投与における考慮事項

ニボルマブの長期投与に関してはまだ十分なエビデンスが蓄積されていない面があります。

しかし一部の患者さんでは数年にわたる投与継続によって持続的な効果が得られています。

長期投与のメリット考慮すべき点
持続的な腫瘍制御累積毒性のリスク
生存期間の延長医療経済的負担

長期投与中は定期的な効果判定と副作用モニタリングをより慎重に行う必要があります。

また 患者さんのQOL(生活の質)を考慮しながら投与間隔の延長や休薬期間の設定を検討することもあります。

投与中止後の経過観察

ニボルマブ投与中止後も一定期間効果が持続することがあります。

これは免疫記憶によって抗腫瘍効果が維持されるためと考えられています。

中止後の観察項目頻度
画像検査2-3ヶ月ごと
腫瘍マーカー1-2ヶ月ごと

投与中止後も定期的なフォローアップを継続して再発や転移の早期発見に努めます。

中止後に病勢進行が見られた際にはニボルマブの再投与や他の治療法への変更を検討します。

患者個別化による治療期間の最適化

ニボルマブの治療期間は画一的な基準ではなく患者さんごとに個別化して決定することが大切です。

がんの種類・病期・全身状態・併存疾患など多角的な視点から総合的に判断します。

  • 腫瘍の縮小率と速度
  • 免疫関連有害事象の発現状況
  • 患者さんの希望と社会的背景

これらの要素を総合的に評価して最適な治療期間を決定します。

ある医師の臨床経験では非小細胞肺がんの患者さんで2年間のニボルマブ投与後に完全奏効を維持していた症例がありました。

慎重に経過観察を続けながら投与を中止したところ、その後3年以上再発なく経過しています。

このような経験から個々の患者さんの反応性を注意深く観察して柔軟な治療期間設定の重要性を実感しています。

治療期間決定の要素評価ポイント
腫瘍縮小効果持続性と程度
副作用重症度と管理可能性
全身状態PS(Performance Status)

ニボルマブの治療期間は「効果が続く限り」という基本方針のもと個々の患者さんの状況に応じて柔軟に設定します。

副作用とデメリット

免疫関連有害事象(irAE)の特徴

ニボルマブによる治療では免疫系の活性化に伴う独特の副作用、いわゆる免疫関連有害事象(irAE)が生じる可能性があります。

これらの副作用は従来の抗がん剤とは異なる特徴を持ち全身のあらゆる臓器に影響を及ぼす可能性があります。

主なirAE症状
皮膚障害発疹 掻痒感
消化器障害下痢 大腸炎
肝機能障害トランスアミナーゼ上昇
内分泌障害甲状腺機能異常

irAEの発症時期は投与開始後数週間から数ヶ月と幅広く長期投与中に新たに出現することもあります。

そのため治療中は継続的な観察と迅速な対応が必要で患者さんの負担増加につながる可能性も考慮しなければなりません。

重篤な副作用のリスク

ニボルマブ治療に伴う副作用の中には生命を脅かす重篤なものも含まれます。

特に肺臓炎・重症筋無力症・心筋炎などは早期発見と適切な対応が極めて重要です。

重篤な副作用主な症状
肺臓炎呼吸困難 咳嗽
1型糖尿病口渇 多尿
心筋炎胸痛 動悸

これらの副作用は稀ではありますが、発症した際の影響は大きく時に不可逆的な障害を残すこともあります。

副作用管理による治療中断のデメリット

irAEの管理のためにニボルマブの投与を一時中断または永久中止しなければならない状況が生じることがあります。

このような治療の中断はがんの進行リスクを高める可能性があり、治療効果に悪影響を及ぼすデメリットとなります。

副作用グレード対応
グレード 2一時中断を検討
グレード 3以上原則中止

治療の中断期間が長引くと腫瘍が再増大するリスクが高まり治療再開後の効果にも影響を与える可能性があります。

また一度中止した後の再投与に関しては十分なエビデンスがなく、慎重な判断が必要となります。

経済的負担と長期投与の課題

ニボルマブは高額な薬剤であり長期投与に伴う経済的負担は無視できません。

患者さん個人の負担だけでなく医療経済的な観点からも課題となっています。

投与期間概算医療費
1年間1500-2000万円
2年間3000-4000万円

長期投与のベネフィットとコストのバランスを考慮して投与期間の最適化が求められます。

また高額療養費制度を利用してもなお患者さんの自己負担は大きく、経済的理由での治療断念を防ぐための支援体制構築が重要です。

効果予測の難しさ

ニボルマブの治療効果を事前に正確に予測することは難しく、この点も大きなデメリットの一つです。

バイオマーカーとしてPD-L1発現率などが用いられますが完全に信頼できる指標とは言えません。

PD-L1発現率奏効率の目安
50%以上40-50%
1-49%15-25%
1%未満10-15%

効果が得られない患者さんでは貴重な治療機会を逃す結果となり、他の治療法選択の遅れにつながる可能性があります。

また偽進行と呼ばれる一時的な腫瘍増大現象によって効果判定に迷うことも少なくありません。

ある医師の臨床経験では肺腺がんの患者さんでニボルマブ投与開始後に重度の大腸炎を発症し治療中断を余儀なくされたケースがありました。

幸いステロイド治療で症状は改善しましたが約1ヶ月の休薬期間中に原発巣が急速に増大して呼吸状態が悪化しました。

このような経験からirAEのリスクと治療中断によるデメリットのバランスを取ることの難しさを痛感しています。

  • 副作用の早期発見と適切な対応
  • 治療効果と副作用のバランス評価
  • 患者さんへの丁寧な説明と意思決定支援
  • 長期的な経過観察と支援体制の構築

ニボルマブによる治療は劇的な効果が期待できる半面このような副作用やデメリットを伴う両刃の剣と言えます。

代替治療薬

他の免疫チェックポイント阻害薬への切り替え

ニボルマブが効果を示さない状況ではまず他の免疫チェックポイント阻害薬への切り替えを検討します。

ペムブロリズマブ(キイトルーダ)は PD-1阻害薬としてニボルマブと同様の作用機序を持ちますが、患者さんによって反応性が異なることがあります。

薬剤名標的分子
ペムブロリズマブPD-1
アテゾリズマブPD-L1

アテゾリズマブ(テセントリク)はPD-L1を標的とする薬剤でニボルマブとは異なるアプローチで免疫反応を活性化します。

これらの薬剤はニボルマブと交叉耐性がない可能性があり、効果が期待できる選択肢となります。

分子標的薬への移行

特定の遺伝子変異を有するがん患者さんでは分子標的薬が有効な代替治療となりえます。

EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんではオシメルチニブ(タグリッソ)などのEGFR-TKIが高い効果を示します。

遺伝子変異推奨される分子標的薬
EGFR変異オシメルチニブ
ALK転座アレクチニブ
ROS1融合遺伝子エヌトレクチニブ

ALK転座陽性例ではアレクチニブ(アレセンサ) ROS1融合遺伝子陽性例ではエヌトレクチニブ(ロズリートレク)などが選択肢となります。

これらの薬剤は特定の遺伝子異常を標的とするため適応となる患者さんでは高い奏効率が期待できます。

従来型の細胞障害性抗がん剤

免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬が効果を示さない患者さんでは従来型の細胞障害性抗がん剤の使用を検討します。

プラチナ製剤を中心とした多剤併用療法は 広範ながん種に対して一定の効果を持つため代替治療として重要な位置を占めます。

がん種推奨レジメン
非小細胞肺がんカルボプラチン+パクリタキセル
胃がんS-1+シスプラチン

非小細胞肺がんではカルボプラチン+パクリタキセル併用療法、胃がんではS-1+シスプラチン併用療法などが標準的なレジメンとなります。

これらの薬剤は急速な腫瘍縮小効果が期待できる一方で骨髄抑制などの副作用管理に注意が必要です。

血管新生阻害薬の活用

腫瘍の血管新生を阻害する薬剤も代替治療の選択肢として考慮されます。

ベバシズマブ(アバスチン)はVEGFを標的とする抗体薬で様々ながん種で効果が示されています。

薬剤名主な適応がん
ベバシズマブ大腸がん 肺がん
ラムシルマブ胃がん 肺がん

ラムシルマブ(サイラムザ)はVEGFR2を標的とし、胃がんや非小細胞肺がんなどで使用されます。

これらの薬剤は他の抗がん剤との併用で相乗効果を発揮することが多く、複合的な治療戦略の一環として活用されます。

  • 単剤での使用
  • 細胞障害性抗がん剤との併用
  • 免疫チェックポイント阻害薬との併用

血管新生阻害薬は腫瘍の栄養供給を断つことで増殖を抑制し、同時に薬剤の腫瘍内への到達性を改善する効果も期待できます。

新規作用機序の薬剤

従来の治療法に反応しない患者さんに対しては新規作用機序を持つ薬剤の使用も検討されます。

PARP阻害薬はDNA修復機構を阻害することでがん細胞の死滅を誘導します。

薬剤名主な適応
オラパリブ卵巣がん 乳がん
ベリパリブ卵巣がん 前立腺がん

抗体薬物複合体(ADC)は 抗体の特異性と細胞毒性物質の強力な殺細胞効果を組み合わせた新しいタイプの薬剤です。

これらの薬剤は特定の遺伝子変異や発現タンパクを持つがんに対して高い効果を示すことがあります。

ある医師の臨床経験ではニボルマブ治療後に進行した非小細胞肺がんの患者さんに対しドセタキセルとラムシルマブの併用療法を行ったところ、予想以上の腫瘍縮小効果が得られました。

この症例から患者さん個々の特性に応じた柔軟な治療戦略の重要性を再認識しました。

  • がんゲノム検査による個別化医療の実践
  • 複数の作用機序を組み合わせた複合的アプローチ
  • 患者さんの全身状態とQOLを考慮した薬剤選択

個々の患者さんに最適な治療法を選択するため多職種によるカンファレンスでの検討や場合によっては臨床試験への参加も視野に入れた総合的な判断が大切です。

ニボルマブ(オプジーボ)の併用禁忌

他の免疫チェックポイント阻害薬との併用

ニボルマブと他の免疫チェックポイント阻害薬との併用については慎重な判断が必要です。

特に同じPD-1/PD-L1経路を標的とする薬剤との併用は効果の増強よりも副作用リスクの上昇が懸念されます。

薬剤名標的分子
ペムブロリズマブPD-1
アテゾリズマブPD-L1

これらの薬剤とニボルマブの併用は通常臨床では推奨されず臨床試験の枠組みでのみ検討されます。

過剰な免疫活性化による重篤な有害事象のリスクが高まるため一般診療での併用は避けるべきです。

強力な免疫抑制剤との併用

ニボルマブの作用機序を考慮すると 強力な免疫抑制剤との併用は避けるべきです。

高用量のステロイド剤やカルシニューリン阻害薬などの免疫抑制剤はニボルマブの抗腫瘍効果を減弱させる可能性があります。

免疫抑制剤主な使用目的
プレドニゾロン炎症性疾患
タクロリムス臓器移植後

これらの薬剤を使用中の患者さんではニボルマブ投与前に減量や中止を検討する必要があります。

ただし既存の自己免疫疾患管理のための少量ステロイド使用は個別に判断します。

生物学的製剤との併用

TNF-α阻害薬やIL-6阻害薬などの生物学的製剤とニボルマブの併用には特別な注意が必要です。

これらの薬剤は免疫系に直接作用するためニボルマブとの相互作用によって予期せぬ免疫関連有害事象を引き起こす可能性が考えられます。

生物学的製剤主な適応疾患
インフリキシマブ関節リウマチ
トシリズマブ関節リウマチ

リウマチ性疾患や炎症性腸疾患の治療で使用されるこれらの薬剤はニボルマブ投与前に中止または変更を検討します。

併用が避けられない場合は綿密なモニタリングと迅速な対応体制の構築が重要です。

特定の抗菌薬・抗真菌薬との相互作用

一部の抗菌薬や抗真菌薬はニボルマブの代謝に影響を与える危険性があります。

特にCYP3A4を強く阻害または誘導する薬剤との併用には注意が必要です。

薬剤名作用
イトラコナゾールCYP3A4阻害
リファンピシンCYP3A4誘導

これらの薬剤との併用時はニボルマブの血中濃度が変動し効果や副作用プロファイルに影響を与える可能性があります。

感染症治療が必要な場合は代替薬の選択や投与タイミングの調整を考慮します。

  • CYP3A4阻害薬使用時のニボルマブ血中濃度モニタリング
  • 併用時の副作用発現頻度の増加に注意
  • 感染症治療薬選択時の薬物相互作用チェック

放射線療法との併用タイミング

ニボルマブと放射線療法の併用は相乗効果が期待される一方で注意すべき点もあります。

特に広範囲の照射野を伴う放射線療法との同時併用は免疫関連有害事象のリスクを高める可能性が生じます。

放射線療法併用時の注意点
全脳照射脳浮腫リスク
胸部照射肺臓炎リスク

放射線療法直後のニボルマブ投与は 照射部位の炎症を増強させる可能性があるため タイミングの調整が必要になります。

一般的に放射線療法終了後2週間以上経過してからニボルマブ投与を開始することが推奨されます。

  • 照射部位と範囲の確認
  • 放射線療法終了からニボルマブ投与開始までの間隔設定
  • 併用時の有害事象モニタリング強化

ニボルマブの併用禁忌や注意を要する薬剤・治療法を理解して適切に対応することは治療の安全性と有効性を確保する上で大切です。

患者さんの既往歴・併存疾患・併用薬を詳細に評価して個々の状況に応じた慎重な判断が求められます。

ニボルマブ治療を行う医療チームは上記の併用禁忌や注意点を十分に把握して患者さんに適切な情報提供を行うとともに、綿密なモニタリングを継続することが重要です。

薬価と経済的影響

薬価

ニボルマブの薬価は非常に高額であり、患者さんの負担も大きくなります。

規格薬価
20mg 2mL 1瓶27,130円
100mg 10mL 1瓶131,811円
240mg 24mL 1瓶311,444円

標準的な投与量である240mgを2週間ごとに投与する場合、1回の治療費は311,444円にもなります。

処方期間による総額

毎月点滴を行うとなると、1か月に2回の投与が必要となるため月々の薬価額は約350万円に達します。

処方期間総額
2週間311,444円
1ヶ月622,888円

長期投与が必要な患者さんでは年間の医療費が数百万円~1千万円に上ることもあるでしょう。

ジェネリック医薬品との比較

ニボルマブは新薬であるため現時点でジェネリック医薬品は存在しません。

薬剤状況
ニボルマブ先発医薬品のみ
ジェネリック未発売

特許期間満了後もバイオ後続品の開発には時間を要するため当面は高額な薬価が続くと予想されます。

薬価の負担を軽減するためには次のようなことを積極的に活用してください。

  • 民間の医療保険の活用
  • 高額医療費制度

ある医師の臨床経験では高額な薬価のため治療を躊躇する患者さんも多く、経済的な理由で治療機会を逃すことが課題となっています。

なお、上記の価格は2024年8月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文

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