ミカファンギンナトリウム(ファンガード)とは、真菌(かび)による感染症に対して効果を発揮する抗真菌薬です。

本剤は特にカンジダ属やアスペルギルス属などの病原性真菌に対して強力な抗菌作用を持ちます。

主に重篤な深在性真菌症の治療に用いられ免疫機能が低下した患者さんにとって重要な薬剤となっています。

ファンガードは点滴静注で投与され体内で効果的に作用します。

副作用は比較的少ないとされていますが、個々の患者さんの状態に応じて慎重に使用を検討します。

小児薬、大人用を転用――アステラス、抗真菌剤 | Chem-Station (ケムステ)
ファンガード点滴用50mgの添付文書 – 医薬情報QLifePro

有効成分と作用機序および効果

ミカファンギンナトリウムの有効成分

ミカファンギンナトリウム(MCFG)の有効成分は名称と同じくミカファンギンナトリウムです。

この化合物はキャンディン系抗真菌薬に分類され分子量は約1270の大型分子構造を持ちます。

ミカファンギンナトリウムは水溶性が高く体内での安定性に優れているため点滴静注による投与に適しています。

作用機序とその特徴

ミカファンギンナトリウムの作用機序は真菌細胞壁の合成阻害に基づきます。

具体的には β-1,3-D-グルカン合成酵素を選択的に阻害することで真菌細胞壁の主要構成成分であるβ-1,3-D-グルカンの合成を妨げます。

作用部位阻害対象
真菌細胞壁β-1,3-D-グルカン合成酵素

この作用により真菌細胞壁の構造が脆弱化して最終的に真菌細胞の破壊へとつながります。

哺乳類細胞には細胞壁が存在しないためミカファンギンナトリウムの選択毒性が高いことが特徴です。

抗真菌スペクトラムと臨床効果

ミカファンギンナトリウムは広範な抗真菌スペクトラムを有し、多くの病原性真菌に対して強力な抗菌活性を示します。

特にカンジダ属やアスペルギルス属に対する効果が顕著です。

  • カンジダ属(Candida albicans C. glabrata C. tropicalis など)
  • アスペルギルス属(Aspergillus fumigatus A. flavus A. niger など)

これらの真菌に起因する深在性真菌症の治療においてミカファンギンナトリウムは高い臨床効果を発揮します。

感受性の高い真菌主な感染症
カンジダ属カンジダ血症・食道カンジダ症
アスペルギルス属侵襲性肺アスペルギルス症

薬物動態学的特性

ミカファンギンナトリウムは経口吸収率が低いため静脈内投与により使用します。

血中濃度は投与量に比例して上昇し、蓄積性は低いとされています。

主に肝臓で代謝されて胆汁中に排泄されますが腎排泄は極めて少量です。

項目特性
投与経路静脈内投与
代謝部位主に肝臓
排泄経路主に胆汁中

このような薬物動態学的特性により肝機能障害患者さんでの使用には注意が必要ですが腎機能障害患者さんでは用量調節の必要性は低いとされています。

臨床的有効性と使用対象

ミカファンギンナトリウムは深在性真菌症の治療および予防に広く用いられています。

免疫機能が低下した患者さん、例えば造血幹細胞移植患者さんや化学療法を受けているがん患者さんなどにおいて真菌感染症の予防や治療に重要な役割を果たします。

カンジダ血症やアスペルギルス肺炎などの重篤な真菌感染症に対しても高い有効性を示すことが臨床試験で確認されています。

  • 深在性カンジダ症(カンジダ血症 腹腔内膿瘍など)
  • 侵襲性アスペルギルス症
  • 食道カンジダ症
  • 真菌感染症の予防(好中球減少患者さんなど)

ミカファンギンナトリウムの臨床的有効性は従来の抗真菌薬と比較しても遜色なく一部の症例ではより優れた効果を示すことがあります。

使用方法と注意点

投与方法と用量設定

MCFG(ファンガード)は点滴静注により投与します。

通常成人には1日1回50〜150mgを生理食塩液または5%ブドウ糖注射液に溶解し、60分以上かけて静脈内投与します。

患者さんの体重・感染症の種類・重症度に応じて適切な用量を選択します。

対象疾患通常用量最大用量
カンジダ血症100mg/日300mg/日
食道カンジダ症150mg/日300mg/日
深在性真菌症の予防50mg/日150mg/日

小児患者さんの場合は体重に応じて1mg/kg/日から開始し、必要に応じて増量することがあります。

特殊な患者群への投与

肝機能障害患者さんへの投与には注意が必要です。

重度の肝機能障害患者さんではMCFGの血中濃度が上昇する可能性があるため慎重な投与と経過観察が重要です。

患者群投与上の注意点
肝機能障害患者慎重投与・用量調整検討
腎機能障害患者通常用量で投与可能
妊婦・授乳婦有益性が危険性を上回る場合のみ

腎機能障害患者さんではMCFGは主に胆汁排泄であるため通常用量での投与が可能です。

妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与します。

治療効果のモニタリング

MCFGによる治療中は定期的な臨床症状の評価と真菌学的検査が必要です。

血液培養や画像診断を用いて感染巣の評価を行い治療効果を判定します。

  • 効果判定の指標
    • 臨床症状の改善(発熱の消失・全身状態の改善など)
    • 血液培養の陰性化(カンジダ血症の場合)
    • 画像所見の改善(肺アスペルギルス症など)

治療効果が不十分な場合は用量の増量や他の抗真菌薬への変更を検討します。

2019年にJournal of Antimicrobial Chemotherapyで掲載された研究ではMCFGの高用量投与(150mg/日以上)が難治性カンジダ血症に対して有効である可能性が示唆されています。

この知見は治療に反応が乏しい症例での用量調整の参考になります。

ミカファンギンナトリウムの適応対象患者

深在性真菌症患者

ミカファンギンナトリウム(ファンガード)は主に深在性真菌症に罹患した患者さんに使用します。

深在性真菌症とはカンジダ属やアスペルギルス属などの真菌が血液や内臓臓器に感染を引き起こす重篤な疾患群を指します。

これらの感染症は免疫機能が低下した状態や長期入院中の患者さんに発症するリスクが高く、早期診断と迅速な治療介入が重要です。

真菌種主な感染部位
カンジダ属血液・食道・腹腔内
アスペルギルス属肺・副鼻腔・中枢神経系

MCFGは特にカンジダ属による感染症に対して高い有効性を示し、カンジダ血症や侵襲性カンジダ症の第一選択薬の一つとなっています。

免疫不全患者

免疫機能が低下した患者さんはMCFGの主要な適応対象となります。

具体的には以下のような状態にある患者さんが該当します。

  • 造血幹細胞移植後の患者
  • 固形臓器移植後の患者
  • 化学療法を受けているがん患者
  • HIV/AIDS患者
  • 長期ステロイド療法中の患者

これらの患者さんでは通常の防御機構が働きにくいため日和見感染症としての真菌感染のリスクが高まります。

免疫不全の原因真菌感染リスク
造血幹細胞移植非常に高い
化学療法高い
長期ステロイド使用中等度〜高い

MCFGは予防投与としても使用され、高リスク患者さんにおける真菌感染症の発症を抑制する効果があります。

集中治療室(ICU)入室患者

集中治療室に長期入室している患者さんもMCFGの適応対象となる機会が多い群です。

人工呼吸器管理下にある患者さんや中心静脈カテーテルを長期留置している患者さんでは侵襲性カンジダ症のリスクが上昇します。

また重症敗血症や多臓器不全の患者さんにおいても二次的な真菌感染症の合併に注意が必要です。

ICU入室患者のリスク因子関連する真菌感染症
人工呼吸器管理肺アスペルギルス症
中心静脈カテーテル留置カンジダ血症
広域抗菌薬の長期使用カンジダ腹腔内感染

これらの患者さんでは細菌感染症と真菌感染症の鑑別が難しい事態があり、臨床症状や検査所見を総合的に判断してMCFGの使用を決定します。

小児・新生児患者

MCFGは小児患者さんや新生児にも使用可能な抗真菌薬です。

特に低出生体重児や先天性免疫不全症候群を持つ小児患者さんでは侵襲性真菌感染症のリスクが高く、MCFGの適応となる機会が多いです。

小児がん患者さんや小児臓器移植患者さんも化学療法や免疫抑制療法に伴う真菌感染症の予防や治療にMCFGを使用することがあります。

小児患者群MCFGの主な使用目的
低出生体重児カンジダ症の予防
小児がん患者侵襲性真菌症の治療
小児臓器移植患者真菌感染症の予防

小児患者さんでは体重に応じた用量調整が必要であり、慎重な投与量の設定と経過観察が大切です。

難治性真菌感染症患者

従来の抗真菌薬治療に抵抗性を示す難治性真菌感染症患者さんもMCFGの適応対象となります。

アゾール系抗真菌薬やポリエン系抗真菌薬に耐性を示すカンジダ株による感染症例ではMCFGが有効な選択肢となる場合があります。

またフルコナゾール耐性カンジダ属やアムホテリシンB耐性アスペルギルス属による感染症においてもMCFGの使用を検討します。

耐性菌種MCFGの位置づけ
フルコナゾール耐性カンジダ代替治療薬
アムホテリシンB耐性アスペルギルス救済療法

これらの症例では薬剤感受性試験の結果を参考にしつつ他の抗真菌薬との併用療法なども考慮しながらMCFGの使用を判断します。

治療期間

治療期間の基本原則

MCFG(ファンガード)での治療期間は感染症の種類・重症度・患者さんの臨床反応・そして基礎疾患に応じて個別に決定します。

一般的に深在性真菌症の治療では臨床症状の改善・画像所見の好転・真菌学的検査の陰性化を確認してからさらに一定期間の投与継続が推奨されます。

この追加投与期間は再発予防と完全な病巣の消失を目的としており、通常2週間程度の継続を考慮します。

感染症タイプ推奨治療期間
カンジダ血症症状改善後2週間以上
食道カンジダ症7〜14日間
侵襲性アスペルギルス症6〜12週間以上

治療期間の設定には個々の患者さんの免疫状態や感染の程度を総合的に評価する必要があります。

カンジダ血症の治療期間

カンジダ血症に対するMCFGの治療期間は通常血液培養陰性化後少なくとも2週間の継続投与を推奨します。

ただし深部臓器への播種や合併症がある際はより長期の投与が必要となる事態があります。

例えば眼内炎の合併や心内膜炎の併発時には 4〜6週間以上の延長投与を検討します。

カンジダ血症の状況推奨治療期間
非合併症例血培陰性化後2週間
眼内炎合併4〜6週間以上
心内膜炎合併6週間以上

治療効果判定には定期的な血液培養検査と全身評価が重要です。

侵襲性アスペルギルス症の治療期間

侵襲性アスペルギルス症に対するMCFGの治療期間は一般的に長期にわたります。

通常最低6〜12週間の投与を行い臨床症状・画像所見・血清学的マーカー(β-Dグルカンやガラクトマンナン抗原)の推移を慎重に観察しながら継続期間を決定します。

免疫抑制状態が遷延する患者さんではさらに長期の投与や二次予防投与が必要となる事態もあります。

  • 治療期間延長を検討する状況
    • 広範な肺浸潤影の残存
    • 免疫抑制状態の持続
    • 血清学的マーカーの高値持続
    • 中枢神経系病変の合併

これらの状況では 3〜6ヶ月以上の長期投与を要することがあります。

予防投与の期間設定

MCFGは高リスク患者さんにおける真菌感染症の予防目的でも使用します。

この予防投与の期間は患者さんのリスク因子の持続期間に応じて決定します。

対象患者予防投与期間
造血幹細胞移植患者好中球減少期間中
化学療法患者好中球減少期間中
臓器移植患者術後2〜4週間

造血幹細胞移植患者さんでは好中球数が500/μL以上に回復するまで、または移植後75日目まで(いずれか早い時期まで)の投与が一般的です。

化学療法患者さんにおける予防投与は通常好中球減少期間中(好中球数1000/μL未満)継続します。

小児患者の治療期間

小児患者さんにおけるMCFGの治療期間は基本的に成人と同様の原則に従いますが 、個々の症例に応じてより慎重な判断が必要です。

新生児カンジダ症では通常血液培養陰性化後2週間の投与を行いますが中枢神経系や尿路系への播種がある事態ではより長期の投与を要します。

  • 小児患者の治療期間延長因子
    • 持続する免疫不全状態
    • 播種性感染の存在
    • 難治性または再発性の真菌感染症

これらの因子がある症例では臨床経過を注意深く観察しながら個別に治療期間を設定します。

治療効果判定と期間調整

MCFGによる治療中は定期的な効果判定とそれに基づく治療期間の調整が重要です。

効果判定には臨床症状の改善・画像所見の変化・真菌学的検査結果・そして血清学的マーカーの推移を総合的に評価します。

評価項目判定基準
臨床症状発熱改善・全身状態改善
画像所見浸潤影縮小・空洞性病変改善
真菌学的検査培養陰性化・顕微鏡所見改善
血清マーカーβ-Dグルカン値低下

カンジダ血症患者さんにおいて血液培養陰性化後14日間のMCFG投与群と21日間投与群を比較した研究が2020年のLancet Infectious Diseasesに掲載されました。

その研究結果によると14日間投与群の非劣性が示されました。

この知見は不必要な長期投与を避けて適切な治療期間設定の一助となる可能性があります。

治療効果が不十分な事態は投与量の増量や他の抗真菌薬との併用、さらには治療期間の延長を考慮します。

一方で良好な治療反応が得られた症例では過剰な長期投与を避けるため慎重に投与終了時期を見極めることが大切です。

MCFGの副作用とデメリット

一般的な副作用プロファイル

ミカファンギンナトリウム(ファンガード)は他の抗真菌薬と比較して比較的安全性の高い薬剤ですが完全に副作用がないわけではありません。

MCFGの使用に伴い発現する可能性のある副作用には軽度のものから重篤なものまで幅広く存在します。

最も頻度の高い副作用として発熱・悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状、そして肝機能検査値の一過性上昇が挙げられます。

副作用発現頻度
発熱5-10%
悪心・嘔吐2-5%
肝機能検査値上昇2-8%
頭痛2-4%

これらの副作用の多くは軽度で一過性であり投与継続中に自然軽快することが多いです。

肝機能への影響

MCFGによる肝機能への影響は注意深くモニタリングが必要な副作用の一つです。

肝機能検査値の上昇は比較的高頻度に認められますが、その多くは軽度かつ一過性です。

しかしまれに重度の肝機能障害を引き起こす事態もあり特に既存の肝疾患を有する患者さんや他の肝毒性のある薬剤を併用している患者さんでは注意が必要です。

  • MCFGによる肝機能異常の特徴
    • 多くは投与開始後1-2週間以内に発現
    • AST・ALT・ALP・γ-GTPの上昇が主体
    • 投与中止後通常は速やかに改善

重度の肝機能障害や黄疸を認めた際にはMCFGの投与中止を検討する必要があります。

血液学的副作用

MCFGによる血液学的副作用は比較的まれですが、発現した場合には重篤化する可能性があるため注意深い観察が重要です。

報告されている血液学的副作用には貧血・白血球減少・血小板減少などがあります。

血液学的副作用発現頻度
貧血1-3%
白血球減少<1%
血小板減少<1%

これらの副作用は多くの場合で基礎疾患や併用薬の影響も考慮する必要がありMCFGとの因果関係の評価が難しいことがあります。

定期的な血液検査によるモニタリングを行い異常値を認めた際には速やかに対応することが大切です。

過敏症反応

MCFGによるアレルギー反応や過敏症反応はまれですが重篤化する可能性があるため 注意が必要です。

報告されている過敏症反応には発疹・掻痒感・蕁麻疹・顔面浮腫、そしてまれにアナフィラキシー反応などがあります。

特に初回投与時や投与速度が速い際に発現しやすい傾向です。

  • 過敏症反応のリスク因子
    • 他の薬剤でのアレルギー歴
    • アトピー素因
    • 初回投与
    • 急速静注

過敏症反応を疑う症状が出現した際には直ちに投与を中止して適切な処置を行う必要があります。

腎機能への影響

MCFGは主に肝臓で代謝され腎排泄は少量であるため一般的に腎機能への影響は軽微とされています。

しかしまれに腎機能障害や急性腎不全の報告もあるため特に腎機能低下患者さんや腎毒性のある薬剤を併用している患者さんでは注意深いモニタリングが必要です。

腎機能関連副作用発現頻度
血清クレアチニン上昇1-2%
急性腎不全<0.1%

腎機能障害を認めた際には他の原因の検索と共に MCFGの投与継続の是非を慎重に判断する必要があります。

代替治療薬

アゾール系抗真菌薬

MCFG(ファンガード)による治療が効果を示さない状況ではアゾール系抗真菌薬が有力な代替選択肢となります。

この薬剤群にはフルコナゾール・ボリコナゾール・イトラコナゾール・ポサコナゾールなどが含まれ、幅広い抗真菌スペクトラムを有しています。

特にボリコナゾールは侵襲性アスペルギルス症に対する第一選択薬としても位置付けられており、MCFGが無効な場合の強力な代替薬となります。

アゾール系薬剤主な適応症
フルコナゾールカンジダ症
ボリコナゾールアスペルギルス症
イトラコナゾールアスペルギルス症・慢性肺アスペルギルス症
ポサコナゾール難治性真菌感染症

これらの薬剤は経口剤と静注剤が使用可能であり、患者さんの状態に応じて投与経路を選択できる利点があります。

ポリエン系抗真菌薬

ポリエン系抗真菌薬、特にアムホテリシンBはMCFGが効果を示さない深在性真菌症に対する重要な代替薬となります。

アムホテリシンBは広域スペクトラムを有し難治性の真菌感染症や重症患者さんに対して有効性を発揮します。

ただし腎毒性などの副作用リスクが高いため使用には慎重な判断が必要です。

  • アムホテリシンB製剤の種類
    • 従来型アムホテリシンB
    • リポソーム化アムホテリシンB
    • アムホテリシンBリピッドコンプレックス

リポソーム化製剤は従来型と比較して副作用が軽減されてより安全に使用できる特徴があります。

他のキャンディン系抗真菌薬

MCFGと同じキャンディン系に属する他の抗真菌薬も代替治療薬として考慮されます。

カスポファンギンやアニデュラファンギンがこの分類に含まれMCFGと類似した作用機序を持ちますが、薬物動態や副作用プロファイルに若干の違いがあります。

キャンディン系薬剤特徴
カスポファンギン肝代謝・初回負荷投与必要
アニデュラファンギン非肝代謝・腎機能低下患者に安全

これらの薬剤はMCFGと交差耐性を示す可能性があるため使用には注意が必要です。

併用療法の検討

MCFGが単剤で効果を示さない事態では他の系統の抗真菌薬との併用療法を検討します。

特に重症または難治性の真菌感染症においては異なる作用機序を持つ薬剤の組み合わせにより相乗効果を期待できる場合があります。

  • 併用療法の例
    • MCFG + アムホテリシンB
    • MCFG + ボリコナゾール
    • アムホテリシンB + フルシトシン(5-FC)

併用療法を選択する際には薬物相互作用や副作用の増強に十分注意を払う必要があります。

新規抗真菌薬の考慮

MCFGを含む既存の抗真菌薬が効果を示さない難治性真菌感染症に対しては新規の抗真菌薬の使用を検討します。

イサブコナゾールは比較的新しいアゾール系抗真菌薬で侵襲性アスペルギルス症やムーコル症に対する効果が期待されています。

またフォスマンノゲン研究の進展により新たな作用機序を持つ抗真菌薬の開発も進んでいます。

新規抗真菌薬特徴
イサブコナゾール広域スペクトラム・良好な安全性
フォスマンノゲン真菌細胞壁合成阻害・開発中

これらの新規薬剤は従来の抗真菌薬に耐性を示す菌株に対しても効果を発揮する可能性があります。

2022年にNew England Journal of Medicineに掲載された研究ではMCFGを含む既存の抗真菌薬に耐性を示すCandida aurisに対し新規抗真菌薬イブルベシンに高い有効性が報告されました。

この知見は難治性真菌感染症に対する新たな治療選択肢の可能性を示唆しています。

非薬物療法の併用

薬物療法の効果が乏しい状況では外科的介入などの非薬物療法の併用も重要な選択肢となります。

例えば真菌性眼内炎や脳膿瘍では局所的なデブリードメントや膿瘍ドレナージが必要となる可能性があります。

また免疫能の改善を目指した基礎疾患の管理や栄養状態の改善も治療効果を高めるために大切です。

非薬物療法適応例
外科的デブリードメント真菌性眼内炎・骨髄炎
カテーテル抜去カテーテル関連真菌血症
免疫賦活療法好中球減少患者

ミカファンギンナトリウム(MCFG)の併用禁忌

併用禁忌の基本的な考え方

ミカファンギンナトリウム(ファンガード)は多くの薬剤と比較的安全に併用できる抗真菌薬として知られています。

しかし他の医薬品と同様に特定の薬剤との併用には注意が必要です。

併用禁忌とは薬剤の併用によって重大な副作用や治療効果の著しい低下が生じる可能性があるため原則として併用を避けるべき組み合わせを指します。

MCFGの場合厳密な意味での併用禁忌薬は現在のところ報告されていませんが慎重な併用が求められる薬剤がいくつか存在します。

免疫抑制剤との相互作用

MCFGと免疫抑制剤の併用には特に注意が必要です。

シクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬はMCFGとの併用により血中濃度が上昇する可能性があります。

免疫抑制剤相互作用の内容
シクロスポリン血中濃度上昇
タクロリムス血中濃度上昇

これらの薬剤を併用する際には頻回な血中濃度モニタリングと用量調整が重要です。

過度の免疫抑制状態は真菌感染症のリスクを高める事態につながるため慎重な管理が求められます。

抗凝固薬との相互作用

MCFGと抗凝固薬の併用にも注意が必要です。

特にワルファリンとの併用ではワルファリンの作用が増強される可能性があります。

  • ワルファリンとMCFGの併用時の注意点
    • 定期的なPT-INRモニタリング
    • 出症状の観察
    • 必要に応じたワルファリン用量の調整

これらの薬剤を同時に使用する際には患者さんの凝固能を慎重にモニタリングして必要に応じて用量調整を行うことが大切です。

他の抗真菌薬との併用

MCFGと他の抗真菌薬を併用する際には薬剤の選択と用量設定に十分な注意が必要です。

特に同じキャンディン系の抗真菌薬(カスポファンギン・アニデュラファンギンなど)との併用は通常推奨されません。

併用抗真菌薬注意点
アムホテリシンB腎機能モニタリング強化
アゾール系薬剤薬物相互作用に注意
キャンディン系薬剤原則併用回避

一方アムホテリシンBやアゾール系抗真菌薬との併用は重症または難治性真菌感染症において検討されることがありますが慎重な判断が必要です。

肝代謝酵素に影響を与える薬剤との相互作用

MCFGは主に肝臓で代謝されるため肝代謝酵素に影響を与える薬剤との併用には注意が必要です。

CYP3A4阻害薬や誘導薬はMCFGの血中濃度に影響を与える可能性があります。

  • CYP3A4阻害薬の例
    • リトナビル
    • クラリスロマイシン
    • ケトコナゾール
  • CYP3A4誘導薬の例
    • リファンピシン
    • カルバマゼピン
    • フェニトイン

これらの薬剤とMCFGを併用する際にはMCFGの血中濃度モニタリングや効果判定を慎重に行う必要があります。

腎毒性のある薬剤との併用

MCFGは主に肝臓で代謝されますが腎毒性のある薬剤との併用にも注意が必要です。

特にアミノグリコシド系抗生物質や造影剤などの腎毒性薬剤との併用時には腎機能のモニタリングを強化することが重要です。

腎毒性薬剤併用時の注意点
アミノグリコシド系抗生物質腎機能検査の頻回実施
ヨード造影剤水分負荷の考慮
シクロスポリン腎機能と血中濃度のモニタリング

これらの薬剤との併用が必要な事態では腎機能の変化に十分注意を払い適切な水分管理や用量調整を行うことが大切です。

妊婦・授乳婦への投与

MCFGの妊婦や授乳婦への投与については十分なデータがないため原則として避けるべきです。

妊娠中や授乳中の女性に対してMCFGを使用する際には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される状況に限定すべきです。

  • 妊婦・授乳婦への投与に関する注意点
    • 胎児への影響の可能性
    • 乳汁中への移行の可能性
    • 代替治療法の検討

ファンガードの薬価と費用

薬価

ファンガードの薬価は 2023年4月時点で50mg1瓶あたり2,976円、75mg1瓶あたり4,575円です。

この価格設定は他の抗真菌薬と比較してやや高額ですが重症真菌感染症に対する高い有効性を反映しています。

規格薬価
25mg1瓶1,907円
50mg1瓶2,976円
75mg1瓶4,575円

処方期間による総額

MCFGの通常用量は1日1回50〜150mgです。

1週間処方した場合では50mg/日で20,832円、150mg/日で62,496円となります。

1ヶ月処方では50mg/日で89,280円、150mg/日で267,840円に達します。

  • 1週間処方の費用
    • 50mg/日 20,832円
    • 150mg/日 62,496円
  • 1ヶ月処方の費用
    • 50mg/日 89,280円
    • 150mg/日 267,840円

なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文