メシル酸ガレノキサシン水和物(ジェニナック)は、呼吸器感染症を治療するための抗菌薬です。
この薬は、体内で細菌が増えるのを抑え、それらを排除する効果があります。
主に急性気管支炎や肺炎など、気管や肺の感染症に効果的です。
メシル酸ガレノキサシン水和物の作用機序と効果
有効成分の特徴
メシル酸ガレノキサシン水和物は、新世代のキノロン系抗菌薬に分類される化合物で、呼吸器感染症治療に用いられます。
その構造は、フルオロキノロン骨格を基本としつつ、特徴的な側鎖を持つことで抗菌活性を高めています。
特性 | 詳細 |
分子量 | 約500 g/mol |
水溶性 | 高い |
吸収性 | 経口投与で良好 |
作用機序の解明
ガレノキサシンの主たる作用機序は、細菌のDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼIVを阻害することです。これらの酵素は細菌のDNA複製に不可欠であり、その機能を妨げることで細菌の増殖を抑えます。
具体的には、次のステップで抗菌作用を発揮します。
- DNAジャイレースの阻害によるDNA合成の停止
- トポイソメラーゼIVの阻害による染色体分配の阻害
- 細菌細胞の分裂抑制
この二重の阻害作用により、幅広い抗菌スペクトルと強力な殺菌効果を実現しているのです。
抗菌スペクトルの広さ
メシル酸ガレノキサシン水和物は、グラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広い細菌に対して効果を示します。とりわけ、呼吸器感染症の原因菌として重要な肺炎球菌やインフルエンザ菌に対して強い抗菌活性を持ちます。
細菌種 | 最小発育阻止濃度 (MIC) |
肺炎球菌 | 0.06-0.25 μg/mL |
インフルエンザ菌 | 0.015-0.06 μg/mL |
黄色ブドウ球菌 | 0.03-0.12 μg/mL |
臨床効果の実証
臨床試験において、メシル酸ガレノキサシン水和物は様々な呼吸器感染症に対して高い有効性を示しています。
急性気管支炎や肺炎などの下気道感染症で80%を超える臨床効果が報告されており、慢性呼吸器疾患の急性増悪に対しても良好な治療成績が得られています。
疾患 | 臨床効果率 |
急性気管支炎 | 85-90% |
市中肺炎 | 80-85% |
慢性気道感染症の急性増悪 | 75-80% |
薬物動態学的特性
メシル酸ガレノキサシン水和物は経口投与後、速やかに吸収され高い生物学的利用能を示します。
血中濃度のピークは投与後1-2時間で到達し、半減期は約10時間と比較的長いのが特徴です。1日1回の投与で十分な抗菌効果を維持できるのはこのためです。
組織移行性も良好で、肺組織や気道分泌物中に高濃度で分布します。こうした薬物動態学的特性により、効果的な抗菌作用と利便性の高い投与スケジュールを両立しているのです。
ジェニナックの使用方法と注意点
投与方法と用量
メシル酸ガレノキサシン水和物(ジェニナック)は、通常、成人に対して1回400mgを1日1回経口投与します。食事の影響を受けにくい特性があるため、食前でも食後でも服用できるという利点があります。
対象 | 用量 | 投与回数 |
成人 | 400mg | 1日1回 |
高齢者 | 400mg | 1日1回 |
ただし、患者の年齢や症状、感染症の種類によっては、医師の判断で用量を調整することもあるでしょう。
服用時の注意事項
本剤を服用する際は、十分量の水またはぬるま湯で飲み込むようにしてください。錠剤を噛み砕いたり、粉砕したりせずにそのまま服用することが大切です。
- 服用を忘れた際は、気づいたときにすぐに服用する
- ただし、次の服用時間が近い場合は、飛ばして次の定時に1回分を服用する
過量投与を避けるため、絶対に2回分を一度に服用しないよう注意します。
治療期間と効果判定
メシル酸ガレノキサシン水和物による治療期間は、一般的に5〜14日間です。感染症の種類や重症度、患者の反応により、医師が適切な治療期間を決定します。
感染症 | 一般的な治療期間 |
急性気管支炎 | 5-7日 |
肺炎 | 7-14日 |
慢性呼吸器疾患の急性増悪 | 10-14日 |
効果判定は、臨床症状の改善や細菌学的検査結果に基づいて行います。症状が改善しても、医師の指示なく途中で服用を中止すると、耐性菌の出現や再燃のリスクが高まります。
そのため、必ず指示された期間、服用を継続することが重要です。
相互作用に関する注意
メシル酸ガレノキサシン水和物は、他の薬剤との相互作用に注意します。特に、制酸剤やミネラルサプリメントとの併用は本剤の吸収を低下させる可能性があります。
- 制酸剤(水酸化アルミニウムマグネシウム含有製剤など)
- 鉄剤、カルシウム剤などのミネラルサプリメント
これらの薬剤を服用する場合、メシル酸ガレノキサシン水和物の服用前後2時間は避けることを推奨します。
併用注意薬 | 推奨される服用間隔 |
制酸剤 | 2時間以上 |
鉄剤 | 2時間以上 |
カルシウム剤 | 2時間以上 |
特殊な患者群における使用
高齢者や腎機能障害患者においては、薬物の体内動態が変化する可能性があるため、慎重に投与する必要があります。腎機能障害患者では、クレアチニンクリアランス(腎臓の機能を示す指標)に応じて用量調整を検討します。
2019年に発表された研究では、75歳以上の高齢者における本剤の有効性と安全性が確認されました。この研究結果から、高齢者においても、適切な観察のもとで標準用量での使用が可能であることが示唆されています。
ただし、個々の患者の状態を十分に評価し、必要に応じて用量調整や慎重な経過観察を行うことが望ましいでしょう。患者さんの年齢や併存疾患、腎機能などを総合的に判断し、最適な投与計画を立てることが大切です。
適応対象患者
呼吸器感染症患者
メシル酸ガレノキサシン水和物は、呼吸器感染症の治療に主として使用される抗菌薬です。急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器疾患の急性増悪などに悩まされる患者さんが、この薬剤の主な対象となります。
疾患 | 主な症状 |
急性気管支炎 | 咳、痰、発熱 |
肺炎 | 高熱、呼吸困難、胸痛 |
慢性呼吸器疾患の急性増悪 | 息切れの悪化、痰の増加 |
これらの症状を呈する患者さんに対し、医師が細菌感染症と診断した際に本剤の使用を検討します。感染の重症度や患者さんの全身状態を総合的に判断し、最適な治療方針を決定していきます。
耐性菌感染症患者
メシル酸ガレノキサシン水和物は、広域スペクトルを持つ新世代キノロン系抗菌薬として知られており、多剤耐性菌にも効果を示すことが特徴です。例えば、以下のような耐性菌に感染した患者さんも適応対象となります。
- ペニシリン耐性肺炎球菌(ペニシリンという抗生物質が効きにくい肺炎球菌)
- マクロライド耐性マイコプラズマ(マクロライド系抗生物質が効きにくいマイコプラズマ)
他の抗菌薬による治療が奏効しなかった患者さんに対しても、本剤が選択されることがしばしばあります。耐性菌の種類や患者さんの病状に応じて、慎重に投与を決定していきます。
高齢者および基礎疾患を有する患者
高齢者や慢性呼吸器疾患を持つ患者さんは、呼吸器感染症のリスクが高く、本剤の重要な適応対象となります。これらの患者さんは、感染症に対する抵抗力が低下している場合が多いため、特別な配慮が必要とされます。
患者群 | 考慮すべき点 |
高齢者 | 腎機能低下、薬物相互作用 |
COPD患者(慢性閉塞性肺疾患) | 急性増悪のリスク、呼吸機能低下 |
糖尿病患者 | 感染リスク上昇、免疫機能低下 |
これらの患者さんに対しては、慎重な用量調整と経過観察が必要となるため、医師の判断が極めて重要です。患者さんの状態を細やかにモニタリングしながら、最適な治療を提供していくことが求められます。
外来および入院患者
メシル酸ガレノキサシン水和物は経口薬であり、外来患者から入院患者まで幅広く使用できる特性を持っています。軽症から中等症の呼吸器感染症患者さんには、外来での処方が可能です。
一方、重症例や合併症リスクの高い患者さんでは、入院管理下での使用を検討します。
重症度 | 治療環境 |
軽症 | 外来 |
中等症 | 外来または入院 |
重症 | 入院 |
患者さんの全身状態や社会的背景も考慮し、適切な治療環境を選択することが大切です。外来治療か入院治療かの判断は、患者さんの安全性と治療の効果を最大限に高めるために行われます。
小児および妊婦授乳婦への適応
メシル酸ガレノキサシン水和物の小児および妊婦授乳婦への使用については、慎重な判断が求められます。現在、小児に対する安全性は確立されていないため、原則として使用を控えます。
妊婦または妊娠している可能性のある女性に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。
この判断は、母体と胎児の双方にとっての利益とリスクを慎重に比較衡量した上で行われます。
- 小児:使用は推奨されない(安全性が確立されていないため)
- 妊婦:治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ使用(母体と胎児の健康を考慮)
授乳中の女性に対しては、授乳を中止するか本剤の投与を避けるかを慎重に判断する必要があります。薬剤が母乳を通じて乳児に影響を与える可能性を考慮し、個々のケースに応じて最適な選択を行います。
メシル酸ガレノキサシン水和物(ジェニナック)の治療期間
一般的な治療期間
メシル酸ガレノキサシン水和物による治療期間は、感染症の種類や重症度に応じて変化します。標準的には5日から14日間の投与を行いますが、患者さんの状態によって柔軟に調整されます。
感染症 | 標準的な治療期間 |
急性気管支炎 | 5-7日 |
肺炎 | 7-14日 |
慢性呼吸器疾患の急性増悪 | 10-14日 |
担当医師は、患者さんの症状改善度や細菌学的検査結果を総合的に判断し、個々の症例に最適な治療期間を設定します。経過に応じて、この期間を延長したり短縮したりする柔軟性も持ち合わせています。
短期治療の可能性
近年、抗菌薬の短期治療に関する研究が活発に行われており、興味深い結果が報告されています。
2019年に発表された研究では、メシル酸ガレノキサシン水和物の5日間投与が、従来の7日間投与と同等の効果を示したことが明らかになりました。
この研究結果は、特に軽症から中等症の呼吸器感染症患者さんに対して、短期治療の可能性を示唆しています。短期治療には以下のような利点が考えられます。
- 患者さんの服薬負担軽減
- 副作用リスクの低減
ただし、短期治療の適用には慎重な評価が不可欠です。患者さんの状態や感染症の性質を十分に考慮した上で、個別に判断する必要があります。
治療期間延長が必要なケース
一方で、標準的な治療期間を超えて投与を継続する必要があるケースも存在します。以下のような状況では、治療期間の延長を考慮します。
- 重症感染症
- 免疫不全患者さん
- 難治性の耐性菌感染
状況 | 延長期間の目安 |
重症肺炎 | 14-21日 |
免疫不全患者の感染症 | 14-28日 |
多剤耐性菌感染 | 14-21日 |
これらのケースでは、患者さんの状態を注意深く観察しながら、個別化した治療期間の設定が求められます。感染症の改善度合いや全身状態の変化を詳細に評価し、最適な治療期間を見極めていきます。
治療効果の評価と期間調整
治療開始後48-72時間が経過した時点で初期評価を行い、臨床症状や検査所見の改善状況を確認します。
この時点で効果が不十分だと判断された場合、治療薬の変更や併用療法の追加を検討する可能性が出てきます。
一方、良好な反応が得られた場合でも、最低5日間の投与を行うことが一般的です。治療効果の判定には、以下のような指標を用います。
- 発熱の改善具合
- 呼吸困難の軽減度
- 炎症マーカーの低下傾向
これらの指標を総合的に評価しながら、治療期間の微調整を行っていきます。患者さんの回復速度に合わせて、柔軟に対応することが重要です。
治療終了の判断基準
メシル酸ガレノキサシン水和物による治療を終了する際の判断基準は、以下の通りです。これらの条件を満たし、かつ担当医師が総合的に判断して初めて、治療終了の決定を下します。
- 臨床症状の顕著な改善
- 体温の正常化が24-48時間以上継続
- 血液検査でのCRP値(炎症反応を示す指標)の正常化
項目 | 終了基準 |
体温 | 37.5℃未満が48時間以上持続 |
CRP値 | 0.3 mg/dL未満 |
白血球数 | 4000-9000 /μL |
これらの基準は目安であり、患者さんの全身状態や基礎疾患の有無、感染症の重症度などを考慮して、個別に判断されます。
治療終了後も、再燃や再感染のリスクに注意を払いながら、経過観察を継続することが大切です。
副作用・デメリット
消化器系への影響
メシル酸ガレノキサシン水和物は、他の抗菌薬と同様に消化器系への副作用が比較的多く報告されています。患者さんの中には、服用後に胃腸の不快感を訴える方もいらっしゃいます。
症状 | 発現頻度 |
下痢 | 5-10% |
悪心 | 2-5% |
腹痛 | 1-3% |
これらの症状は多くの場合、軽度で一時的なものですが、患者さんの日常生活に支障をきたすこともあります。特に高齢の方や消化器疾患の既往がある患者さんでは注意します。
アレルギー反応
キノロン系抗菌薬の一種であるメシル酸ガレノキサシン水和物は、アレルギー反応を起こす可能性があります。まれに、重篤な症状に発展することもあるため、慎重な経過観察が欠かせません。
- 皮疹(発疹やじんましんなど)
- 掻痒感(かゆみ)
- アナフィラキシー(重度のアレルギー反応で、呼吸困難や血圧低下を伴う)
これらの症状が現れた場合、直ちに服用を中止し、速やかに医療機関を受診するよう患者さんに指導します。過去にキノロン系抗菌薬でアレルギー反応を経験した方には、使用を控えるべきでしょう。
中枢神経系への影響
メシル酸ガレノキサシン水和物は、まれに中枢神経系に影響を与えます。患者さんによっては、日常生活に支障をきたす症状が現れることもあります。
症状 | 発現頻度 |
めまい | 1-3% |
頭痛 | 1-2% |
不眠 | <1% |
これらの症状は、高齢の方や中枢神経系疾患の既往がある患者さんでより顕著に現れることがあります。自動車の運転や機械操作に影響を与える可能性があるため、服用中は十分な注意を払うよう指導します。
光毒性反応
キノロン系抗菌薬の特徴的な副作用として、光毒性反応が知られています。メシル酸ガレノキサシン水和物も例外ではなく、日光暴露により皮膚に炎症や発疹が生じることがあります。
- 日焼けのような症状(皮膚の発赤や痛み)
- かゆみを伴う発疹
- 水疱形成(水ぶくれ)
治療中は、直射日光を避け、日焼け止めの使用や長袖の着用など、適切な日光対策を行うことが重要です。患者さんには、外出時の注意点を丁寧に説明し、症状が現れた場合は速やかに報告するよう伝えます。
腱障害のリスク
キノロン系抗菌薬全般に共通する重要な副作用として、腱障害のリスクが挙げられます。2018年に発表された大規模研究では、キノロン系抗菌薬使用者で腱断裂のリスクが約2倍に増加したと報告されています。
リスク因子 | 相対リスク |
60歳以上 | 3倍 |
ステロイド併用 | 4倍 |
特にアキレス腱への影響が懸念されるため、激しい運動や無理な動作は避けるよう患者さんに指導します。痛みや腫れなどの異常を感じた場合は、すぐに医療機関を受診するよう伝えることが大切です。
耐性菌の出現
メシル酸ガレノキサシン水和物の長期使用や不適切な使用は、耐性菌の出現を促進する可能性があります。これは個々の患者さんだけでなく、社会全体の問題にもつながりかねません。
- MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
- 多剤耐性緑膿菌
- キノロン耐性大腸菌
耐性菌の出現は、将来の感染症治療を困難にする恐れがあるため、慎重な使用が求められます。不必要な処方や長期投与を避け、適切な投与期間を守ることが極めて重要です。
メシル酸ガレノキサシン水和物(ジェニナック)の効果がなかった場合の代替治療薬
他のキノロン系抗菌薬
メシル酸ガレノキサシン水和物が思わしい効果を示さない場合、同じキノロン系抗菌薬の仲間から代替薬を選択することがあります。この選択は、患者さんの症状や感染の状況に応じて慎重に行われます。
薬剤名 | 特徴 |
レボフロキサシン | 呼吸器感染症に広く使用 |
モキシフロキサシン | 肺炎球菌に強い効果 |
シタフロキサシン | 耐性菌にも有効 |
これらの薬剤は、メシル酸ガレノキサシン水和物と似た作用機序を持ちますが、抗菌スペクトルに微妙な違いがあります。そのため、患者さんの状態や感染症の原因菌に応じて、最適な薬剤を選び出します。
マクロライド系抗菌薬
キノロン系抗菌薬が効果を発揮しない場合、マクロライド系抗菌薬への切り替えを検討することがあります。この系統の薬剤は、特定の感染症に対して高い効果を示すことが知られています。
- クラリスロマイシン
- アジスロマイシン
- エリスロマイシン
これらの薬剤は、非定型肺炎の原因菌であるマイコプラズマやクラミジアに対して特に優れた効果を発揮します。
興味深いことに、2019年に発表された研究では、マクロライド系抗菌薬の使用により、市中肺炎患者の入院期間が平均1.5日短縮したという結果が報告されました。
セフェム系抗菌薬
重症例や耐性菌が疑われる状況では、セフェム系抗菌薬への変更を真剣に考慮します。この系統の薬剤は、幅広い細菌に対して効果を示すことが特徴です。
世代 | 代表的な薬剤 |
第3世代 | セフトリアキソン |
第4世代 | セフェピム |
第5世代 | セフタロリン |
これらの薬剤は、広域スペクトルを持ち、重症感染症や複雑性感染症に対して強力な効果を発揮します。
特に第3世代以降のセフェム系抗菌薬は、グラム陰性菌に対する抗菌力が強く、メシル酸ガレノキサシン水和物が効かなかった場合の頼もしい選択肢となります。
βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬
耐性菌による感染が疑われる状況では、βラクタマーゼ阻害薬を配合したペニシリン系抗菌薬を使用することがあります。これらの薬剤は、通常の抗菌薬では対処が難しい耐性菌にも効果を示す可能性があります。
- アモキシシリン/クラブラン酸
- ピペラシリン/タゾバクタム
これらの薬剤は、βラクタマーゼ(抗菌薬を分解する酵素)を産生する耐性菌に対しても効果を示します。
特にピペラシリン/タゾバクタムは、重症肺炎や院内感染症に対して幅広く使用されており、困難な感染症に立ち向かう強力な武器となっています。
カルバペネム系抗菌薬
最重症例や多剤耐性菌感染症に直面した場合、カルバペネム系抗菌薬の使用を検討します。この系統の薬剤は、他の抗菌薬が効かない状況での最後の切り札として位置づけられています。
薬剤名 | 主な適応 |
メロペネム | 重症肺炎、敗血症 |
イミペネム | 院内感染症 |
ドリペネム | 複雑性尿路感染症 |
これらの薬剤は非常に広域なスペクトルを持ち、他の抗菌薬が無効な場合の最後の砦となります。
ただし、耐性菌出現のリスクが高いため、使用には慎重な判断が求められます。安易な使用は避け、本当に必要な場合にのみ選択すべきでしょう。
抗菌薬以外の治療法
抗菌薬の変更だけでなく、補助療法の追加や原因検索の再検討も重要な選択肢です。患者さんの全身状態や症状の推移に応じて、以下のような方法を組み合わせることがあります。
- 去痰薬や気管支拡張薬の併用
- ステロイド薬の短期使用
- 免疫グロブリン療法
また、ウイルス性感染症や非感染性疾患の可能性も考慮し、必要に応じて追加の検査を行います。抗菌薬の効果が見られない場合、原因を丁寧に再評価することが極めて大切です。
時には、当初の診断を見直し、新たな視点で治療方針を立て直すことも必要となるでしょう。
ジェニナックの併用禁忌
制酸剤との相互作用
メシル酸ガレノキサシン水和物は、制酸剤と一緒に服用すると吸収が阻害され、効果が弱まります。胃酸を中和する働きを持つ制酸剤は、抗菌薬の吸収を妨げる特性があるのです。
制酸剤の種類 | 影響 |
水酸化アルミニウム | 吸収低下 |
水酸化マグネシウム | 効果減弱 |
このため、これらの薬剤を服用する際は、メシル酸ガレノキサシン水和物の投与前後2時間以上の間隔をあけるよう推奨しています。
同時服用を避けることで、十分な血中濃度を維持し、期待通りの治療効果を得られる可能性が高まります。
金属イオン含有製剤との相互作用
メシル酸ガレノキサシン水和物は、金属イオンと結合してキレート(金属イオンを包み込む化合物)を形成します。この性質により、以下のような金属イオンを含む製剤との併用に注意します。
- 鉄剤(貧血治療に使用)
- カルシウム製剤(骨粗鬆症の予防や治療に使用)
- マグネシウム製剤(便秘や胃酸過多の治療に使用)
これらの薬剤との併用は、メシル酸ガレノキサシン水和物の吸収を著しく低下させ、期待する効果が得られない事態を招きかねません。
金属イオン | 影響 |
鉄 | 吸収低下 |
カルシウム | 効果減弱 |
マグネシウム | バイオアベイラビリティ低下 |
金属イオン含有製剤を使用する場合は、メシル酸ガレノキサシン水和物との服用間隔を十分にあけることが極めて重要です。適切な間隔を置くことで、両方の薬剤の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
QT延長を起こす薬剤との併用
メシル酸ガレノキサシン水和物は、心電図上のQT間隔を延長させる可能性があります。
QT間隔の延長は、重篤な不整脈を引き起こすリスクがあるため、QT延長作用を持つ他の薬剤との併用には細心の注意を払います。
- 抗不整脈薬(クラスIA、クラスIII)
- 抗精神病薬
- 三環系抗うつ薬
これらの薬剤との併用は、致命的な不整脈を起こすリスクを高めます。患者さんの安全を第一に考え、慎重に投薬を検討する必要があります。
薬剤クラス | 代表的な薬剤 |
抗不整脈薬 | アミオダロン |
抗精神病薬 | ハロペリドール |
抗うつ薬 | アミトリプチリン |
QT延長のリスクがある患者さんでは、特に慎重な経過観察が欠かせません。定期的な心電図検査や症状の観察を通じて、不整脈の早期発見に努めることが大切です。
ワルファリンとの相互作用
メシル酸ガレノキサシン水和物は、抗凝固薬であるワルファリンの効果を増強します。
ワルファリンは、血栓症の予防や治療に広く使用される重要な薬剤ですが、その効果が強まりすぎると出血のリスクが高まります。
ワルファリンを服用中の患者さんに本剤を投与する際は、プロトロンビン時間(PT)や国際標準比(INR)を慎重にモニタリングします。
これらの値は、血液の凝固能を示す指標であり、適切な範囲内に保つことが重要です。
相互作用 | 影響 |
PT延長 | 出血リスク増加 |
INR上昇 | 抗凝固作用増強 |
併用する際は、用量調整や頻回な凝固能検査が必須となります。患者さんの状態を細やかに観察し、出血傾向が見られた場合は速やかに対応することが求められます。
テオフィリンとの相互作用
メシル酸ガレノキサシン水和物は、テオフィリンの血中濃度を上昇させます。
テオフィリンは、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に用いられる重要な薬剤ですが、治療域が狭いという特徴があります。
血中濃度が上昇すると、様々な副作用が現れる可能性が高まります。
テオフィリンの血中濃度上昇に伴い、以下のような症状が出現する可能性があります。
- 悪心(吐き気)
- 嘔吐
- 頭痛
- 不整脈
併用する際は、テオフィリンの血中濃度を定期的に測定し、必要に応じて用量を調整することが欠かせません。
患者さんの症状を注意深く観察し、副作用の兆候が見られた場合は速やかに対応することが、安全な治療を行う上で極めて重要です。
薬価
メシル酸ガレノキサシン水和物の薬価は、1錠あたり142.6円と設定されています。この抗菌薬は、呼吸器感染症の治療に広く用いられる重要な薬剤です。
規格 | 薬価 |
200mg1錠 | 142.6円 |
上記の金額は保険適用時の公定価格を示しており、実際に患者さんが支払う自己負担額は、加入している保険の種類や負担割合によって変動します。
処方期間による総額
通常、感染症の治療期間に応じて処方されるメシル酸ガレノキサシン水和物ですが、1週間処方(7日分)の場合、薬剤費の総額は1,996.4円となります。一方、1ヶ月処方(30日分)では、8,556円に達します。
- 1週間処方:1,996.4円
- 1ヶ月処方:8,556円
ただし、これらの金額は薬剤費のみを表しており、診察料や処方箋料などの他の医療費は含まれていません。実際の医療費は、これらの付随する費用も合わせて計算されます。
患者さんの症状や治療計画によって、処方期間は異なりますので、医師の指示に従うことが大切です。
ジェネリック医薬品との比較
現時点で、メシル酸ガレノキサシン水和物のジェネリック医薬品(後発医薬品)は市場に登場していません。
なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
- 参考にした論文