ラシックス・オイテンシン(フロセミド)とは、呼吸器系の治療に用いられる重要な薬剤の一つです。

この薬は利尿剤に分類されて体内の余分な水分を尿として排出する働きがあります。

主に心不全や肺水腫(はいすいしゅ)などの症状を改善するために処方されます。

これらの状態では体内に過剰な水分が蓄積し、呼吸困難や浮腫(ふしゅ)を引き起こすことがあるためです。

フロセミドは腎臓に直接作用して尿量を増やして体内の水分バランスを整える効果があります。

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ラシックス錠20mg | 日医工株式会社 (nichiiko.co.jp)

有効成分と作用機序、効果について

フロセミドの有効成分

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)の有効成分は化学名フロセミド(Furosemide)であり、これは強力な利尿作用を持つループ利尿薬に分類される化合物です。

フロセミドの分子構造は以下の特徴を有しています。

特徴説明
分子式C12H11ClN2O5S
分子量330.74 g/mol
構造スルホンアミド基を含むフラン環

この化学構造によりフロセミドは腎臓の特定部位に作用し、強力な利尿効果を発揮することが可能となっています。

フロセミドの作用機序

フロセミドの主な作用機序はヘンレのループと呼ばれる腎臓の一部に位置するナトリウム-カリウム-2塩化物共輸送体(NKCC2)を阻害することです。

この阻害作用によって次のような一連の生理学的変化が引き起こされます。

  • ナトリウムの再吸収が抑制される
  • 水分の再吸収が減少する
  • カリウムの排泄が増加する

これらの作用によって体内の水分バランスが大きく変化し、強力な利尿効果がもたらされるのです。

フロセミドの効果

フロセミドの効果は主に体内の過剰な水分を除去することにあり、それによって様々な症状の改善が期待できます。

具体的には 以下のような効果が報告されています。

効果詳細
浮腫の軽減体内の余分な水分を排出し 浮腫を改善
血圧の低下循環血液量を減少させ 血圧を下げる
心臓の負担軽減心臓に戻る血液量を減らし 心臓の仕事量を軽減

これらの効果によってフロセミドは様々な循環器系および呼吸器系の疾患の治療に重要な役割を果たしています。

フロセミドの薬物動態学的特性

フロセミドの薬物動態学的特性はその効果の発現や持続時間に大きな影響を与えます。

特性
生物学的利用能約60-70%
最高血中濃度到達時間1-2時間
半減期1.5-2時間
蛋白結合率91-99%

これらの特性によってフロセミドは経口投与後比較的速やかに作用を発現し、短時間で強力な利尿効果を示すことが可能となっています。

フロセミドの臨床的応用

フロセミドの強力な利尿作用と速やかな効果発現は様々な臨床状況で有用性を発揮します。

特に以下のような状態の管理においてフロセミドは不可欠な薬剤として位置づけられています。

  • 急性および慢性心不全
  • 肺水腫
  • 高血圧
  • 肝硬変に伴う腹水

これらの状態では体内に過剰に蓄積した水分を速やかに排出することが症状の改善に繋がるためフロセミドの効果が極めて重要となります。

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)の使用方法と注意点

投与経路と剤形

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)は複数の投与経路と剤形が存在し、患者さんの状態や治療目的に応じて最適な方法が選択されます。

主な投与経路と剤形について以下の表にまとめました。

投与経路剤形
経口錠剤 液剤
静脈内注射液
筋肉内注射液

経口投与は一般的に外来患者や慢性的な症状管理に用いられる一方、注射剤は急性期や入院患者に対して使用されることが多いです。

投与量と投与間隔

フロセミドの投与量と投与間隔は患者さんの病態や症状の重症度、腎機能などに応じて個別に設定されます。

一般的な投与量の目安は以下の通りです。

  • 成人の経口投与
    • 通常量 20〜80mg/日
    • 重症例 最大600mg/日まで
  • 成人の注射投与
    • 通常量 20〜40mg/回
    • 重症例 最大1回100mgまで

投与間隔は通常1日1〜2回ですが、症状や尿量に応じて調整されることがあります。

投与時の注意事項

フロセミドを安全かつ効果的に使用するためにはいくつかの重要な注意事項があります。

以下の表は主な注意事項をまとめたものです。

注意事項詳細
服用時間朝または昼に服用し 夜間の頻尿を避ける
食事との関係空腹時の服用が望ましい
水分摂取過度の脱水を避けるため 十分な水分摂取が必要
定期的な検査電解質バランスと腎機能のモニタリングが不可欠

これらの注意事項を守ることで副作用のリスクを最小限に抑えつつ最大限の治療効果を得ることができます。

併用薬に関する注意

フロセミドは他の薬剤と相互作用を起こす可能性があるため併用薬の選択には慎重な配慮が求められます。

特に注意が必要な併用薬は以下の通りです。

併用薬注意すべき理由
ACE阻害薬急激な血圧低下のリスク
NSAIDsフロセミドの効果減弱
ジギタリス製剤低カリウム血症によるジギタリス中毒のリスク
アミノグリコシド系抗生物質腎毒性や聴覚毒性の増強

これらの薬剤との併用時には用量調整や頻回のモニタリングが必要となる場合があります。

特殊な状況における使用

フロセミドの使用に際しては患者さんの背景や合併症に応じた配慮が大切で、特に以下のような状況では 慎重な投与が必要です。

  • 高齢者
    • 脱水や電解質異常のリスクが高い
    • 腎機能低下に注意が必要
  • 糖尿病患者
    • 血糖コントロールに影響を与える可能性がある
    • 尿糖測定への影響に注意

これらの患者群では通常よりも低用量から開始し、段階的に増量するアプローチが推奨されます。

長期使用時の注意点

フロセミドの長期使用に際しては薬剤耐性の発現や代謝異常のリスクに注意を払わなければなりません。

長期使用時の主な注意点を以下の通りです。

注意点対応策
薬剤耐性定期的な休薬や他剤との併用を検討
電解質異常定期的な血液検査とミネラル補充
代謝性アルカローシス酸塩基平衡のモニタリングと補正
尿酸値上昇尿酸降下薬の併用を考慮

これらの点に留意しながら長期的な治療効果と安全性のバランスを取ることが重要です。

適応対象となる患者さん

心不全患者

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)は心不全患者の症状管理において重要な役割を果たします。

心不全では体内に過剰な水分が貯留して呼吸困難や浮腫などの症状を引き起こすことがありますが、フロセミドの強力な利尿作用はこれらの症状を緩和するのに効果的です。

以下の表は心不全患者におけるフロセミドの適応を示しています。

心不全の分類フロセミドの役割
急性心不全急速な体液量減少と症状改善
慢性心不全長期的な体液バランス維持

心不全の重症度や病態に応じて投与量や投与方法が調整されます。

高血圧患者

フロセミドは高血圧の管理においても使用されることがあり、特に以下のような状況で有用性が高いとされています。

  • 他の降圧薬で十分な効果が得られない場合
  • 腎機能障害を伴う高血圧患者
  • 体液貯留を伴う高血圧患者

フロセミドは循環血液量を減少させることで血圧を下げる効果があります。

高血圧の種類フロセミドの使用
本態性高血圧他剤との併用で使用
二次性高血圧原因に応じて選択的に使用

ただしフロセミド単独での高血圧治療は一般的ではなく 他の降圧薬と組み合わせて使用されることが多いです。

腎疾患患者

腎疾患患者さんにおいてフロセミドは体液量調節や浮腫の管理に用いられ、特に次のような腎疾患でその使用が考慮されます。

  • ネフローゼ症候群
  • 慢性腎臓病
  • 急性腎障害

これらの疾患では体内の水分バランスが崩れやすく、フロセミドによる調整が必要となる場合があります。

腎疾患の種類フロセミドの主な目的
ネフローゼ症候群浮腫の軽減
慢性腎臓病体液量の調整
急性腎障害尿量の維持

腎機能が低下している患者さんでは薬物の排泄が遅延する可能性があるため用量調整が不可欠です。

肝硬変患者

肝硬変患者ではしばしば腹水や下肢浮腫といった体液貯留症状が見られますが、フロセミドはこれらの症状を改善するために使用されることがあります。

以下は肝硬変患者さんにおけるフロセミドの使用目的例です。

  • 腹水の軽減
  • 全身浮腫の改善
  • 門脈圧の低下

ただし肝機能が低下している患者さんでは薬物代謝に影響が出る可能性があるため慎重な投与が求められます。

肝硬変の合併症フロセミドの効果
腹水体液貯留の軽減
肝性浮腫全身浮腫の改善
門脈圧亢進症門脈圧の軽度低下

肝硬変患者さんでは電解質異常や腎機能障害のリスクが高いため定期的なモニタリングが大切です。

肺水腫患者

急性肺水腫は生命を脅かす緊急事態で、フロセミドは初期治療の一環として肺うっ血を軽減して呼吸機能を改善する目的で使用されることがあります。

肺水腫の原因によってフロセミドの使用方法が異なる場合があります。

肺水腫の原因フロセミドの使用
心原性初期治療の中心薬剤
非心原性状況に応じて使用

肺水腫患者さんでは迅速な体液量の減少が必要とされるため、注射剤が選択されることが多いです。

治療期間と予後

急性期における治療期間

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)は急性期の症状管理において即効性のある薬剤として広く用いられています。

急性心不全や肺水腫などの緊急状態では数時間から数日間の短期使用が一般的で、この間患者さんの症状や体液バランスを綿密にモニタリングしながら投与量や頻度が調整されます。

以下の表は急性期におけるフロセミドの使用期間の目安です。

病態一般的な使用期間
急性心不全24〜72時間
肺水腫12〜48時間
高血圧緊急症6〜24時間

ただしこれらの期間はあくまで目安であり、個々の患者さんの反応や基礎疾患によって大きく異なるでしょう。

慢性疾患における長期使用

慢性心不全や腎疾患など長期的な体液管理が必要な病態ではフロセミドの継続使用が検討され、この場合は数週間から数か月、時には数年にわたる長期使用となることもあります。

長期使用時の主な目標は以下のとおりです。

  • 体液バランスの維持
  • 症状の安定化
  • QOLの向上

長期使用におけるフロセミドの投与スケジュールは患者さんの状態に応じて個別化されます。

投与スケジュール特徴
毎日投与安定した効果が得られる
間欠投与薬剤耐性を防ぐ可能性がある

長期使用時には定期的な腎機能や電解質のチェックが不可欠です。

治療効果のモニタリング

フロセミドの治療効果を評価するためには複数の指標を総合的に判断することが重要で、主な評価指標には以下のようなものがあります。

  • 体重変化
  • 尿量
  • 浮腫の程度
  • 呼吸困難感の改善
  • 血圧の変化

これらの指標を定期的に確認することで治療の有効性や継続の必要性を判断します。

評価指標望ましい変化
体重過剰な体液の減少
尿量適切な利尿効果
浮腫軽減または消失

モニタリングの頻度は病態の安定性によって異なりますが、通常は週1回から月1回程度で行われます。

予後への影響

フロセミドの使用が患者さんの長期予後に与える影響については疾患や使用状況によって異なります。

心不全患者さんにおける研究ではフロセミドの適切な使用が以下のような効果をもたらす可能性が示唆されています。

  • 症状の改善
  • 入院回数の減少
  • QOLの向上

一方で長期使用に伴うリスクも報告されているため注意が必要です。

長期使用のリスク予後への影響
電解質異常不整脈のリスク増加
腎機能低下腎不全進行の可能性

上記のようなリスクを最小限に抑えつつ治療効果を最大化することが予後改善の鍵となります。

治療中止後の経過

フロセミドの治療を中止する際には慎重な経過観察が必要です。

急激な中止は体液の再貯留や症状の悪化を招く可能性があるため、通常は段階的な減量が行われます。

中止後の経過観察では以下の点に特に注意が払わなければなりません。

  • 体重の変化
  • 浮腫の再発
  • 呼吸困難感の出現
  • 血圧の上昇
中止後の期間観察のポイント
1週間以内急激な症状悪化
1〜4週間緩徐な体液再貯留
1〜3か月長期的な病態安定性

中止後の経過が良好でも定期的なフォローアップは継続されるのが一般的です。

副作用やデメリット

電解質異常

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)の使用に伴う最も一般的な副作用の一つに電解質異常があります。

フロセミドは腎臓でのナトリウムとカリウムの再吸収を阻害するため血中の電解質バランスが崩れやすくなるのです。

特に注意すべき電解質異常とその症状は次の通りです。

電解質異常主な症状
低ナトリウム血症倦怠感 頭痛 吐き気
低カリウム血症筋力低下 不整脈 便秘
低マグネシウム血症振戦 痙攣 不整脈

これらの電解質異常は重度になると生命を脅かす状態に陥る可能性があるため、定期的なモニタリングが大切です。

腎機能への影響

フロセミドの長期使用は腎機能に影響を与える場合があり、特に高齢者や既存の腎疾患を持つ患者さんで顕著になる傾向です。

フロセミドが腎機能に与える影響には以下のようなものがあります。

  • 糸球体濾過量(GFR)の低下
  • 尿細管機能の変化
  • 腎血流量の減少
腎機能への影響リスク因子
急性腎障害脱水 低血圧
慢性腎臓病の進行長期使用 高用量

腎機能障害のリスクを最小限に抑えるためには用量調整や定期的な腎機能評価が重要です。

代謝異常

フロセミドの使用は様々な代謝異常を引き起こす可能性があります。

これらの代謝異常は患者さんのQOLに影響を与えるだけでなく、長期的な健康リスクにもつながる場合があります。

主な代謝異常とその特徴は以下のようなものです。

代謝異常特徴
高尿酸血症痛風発作のリスク増加
耐糖能異常血糖コントロールの悪化
脂質代謝異常コレステロール値の上昇

これらの代謝異常はフロセミドの直接的な作用だけでなく体液量減少に伴う代償機構によっても引き起こされる場合があります。

聴覚への影響

フロセミドはまれに聴覚に影響を与えることがあり、特に高用量の静脈内投与や腎機能障害のある患者さんで発生リスクが高くなります。

聴覚への影響は以下のようなものです。

  • 一時的な難聴
  • 耳鳴り
  • めまい
聴覚障害のリスク予防策
高用量投与段階的な増量
腎機能低下用量調整

聴覚障害の多くは可逆的ですが永続的な障害に至る例も報告されているため注意が必要です。

過敏反応

フロセミドに対するアレルギー反応や過敏反応が起こることがあります。

これらの反応は軽度なものから生命を脅かす重度のものまで 様々な程度で現れる可能性があります。

主な過敏反応とその症状は次の通りです。

  • 皮膚症状
    • 発疹
    • 蕁麻疹
    • 掻痒感
  • 全身症状
    • 発熱
    • 関節痛
    • アナフィラキシー
過敏反応の種類発症時期
即時型反応投与後数分〜数時間
遅延型反応投与後数日〜数週間

過敏反応の既往がある患者さんではフロセミドの使用を避けるか慎重な投与が求められます。

効果がなかった場合の代替治療薬

他のループ利尿薬

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)の効果が不十分であった際には同じループ利尿薬群に属する他の薬剤への変更が検討されることがあります。

これらの薬剤はフロセミドと類似した作用機序を持ちますが、薬物動態や効力に若干の違いがあります。

主なループ利尿薬の特徴は以下のようなものです。

薬剤名特徴
トラセミド作用時間が長く 生物学的利用能が高い
ブメタニドフロセミドより強力で 吸収が安定している

これらの薬剤はフロセミドに反応しない患者さんや副作用が問題となる患者さんに対する代替選択肢となり得ます。

チアジド系利尿薬

チアジド系利尿薬はループ利尿薬とは異なる作用部位を持つ利尿薬で、フロセミドの代替または併用薬として使用されることがあります。

チアジド系利尿薬の特徴は以下のような点です。

  • 遠位尿細管でのナトリウム再吸収を阻害
  • 比較的緩徐で持続的な利尿効果
  • 血圧低下作用を有する
薬剤名主な使用目的
ヒドロクロロチアジド軽度から中等度の浮腫 高血圧
インダパミド高血圧 特に糖尿病合併例

チアジド系利尿薬は単独使用よりもループ利尿薬との併用で相乗効果を発揮することが多いです。

カリウム保持性利尿薬

カリウム保持性利尿薬はフロセミドによる低カリウム血症のリスクを軽減しつつ追加の利尿効果を得るために使用されることがあります。

この薬剤群の主な特徴は以下の通りです。

  • 遠位尿細管でのカリウム排泄を抑制
  • 単独では弱い利尿効果
  • アルドステロン拮抗作用(一部の薬剤)
薬剤名主な作用
スピロノラクトンアルドステロン拮抗 抗アンドロゲン作用
エプレレノン選択的アルドステロン拮抗

これらの薬剤は特に心不全患者において予後改善効果が報告されています。

バゾプレシン受容体拮抗薬

フロセミドが効果不十分な場合、特に低ナトリウム血症を伴う心不全患者さんにおいてバゾプレシン受容体拮抗薬が選択肢となることがあります。

この薬剤群の特徴は以下のとおりです。

  • 抗利尿ホルモン(バゾプレシン)の作用を阻害
  • 水分排泄を促進しつつ 電解質排泄は最小限に抑える
  • 低ナトリウム血症の改善効果
薬剤名適応
トルバプタン心不全における体液貯留
モザバプタンSIADH(抗利尿ホルモン不適切分泌症候群)

これらの薬剤は従来の利尿薬とは異なるメカニズムで作用するため、新たな治療選択肢として注目されています。

炭酸脱水酵素阻害薬

炭酸脱水酵素阻害薬は主に緑内障治療薬として知られていますが、利尿作用もあるのでフロセミドの代替薬として使用されることがあります。

この薬剤群の特徴は次のような点です。

  • 近位尿細管での重炭酸イオンの再吸収を阻害
  • 軽度の利尿効果と代謝性アシドーシスを引き起こす
  • 脳脊髄液の産生を抑制する作用もある

以下は炭酸脱水酵素阻害薬の使用例です。

  • 高地順応障害の予防と治療
  • 特発性頭蓋内圧亢進症
  • 代謝性アルカローシスの是正
薬剤名主な使用目的
アセタゾラミド緑内障 高地順応障害
メタゾラミド緑内障 利尿補助

これらの薬剤は特殊な状況下でフロセミドの代替または補助薬として考慮されることがあります。

併用禁忌

エチニルエストラジオール含有製剤との併用

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)とエチニルエストラジオール含有製剤の併用は避けるべきとされています。

エチニルエストラジオールは主に経口避妊薬や更年期障害治療薬に含まれるホルモン成分です。

この併用によってフロセミドの利尿作用が減弱して治療効果が低下する可能性があります。

薬剤名主な使用目的
エチニルエストラジオール経口避妊 更年期障害治療
フロセミド利尿 浮腫改善

併用によるリスクを回避するため代替の避妊法や治療法の検討が必要となることがあるでしょう。

スルフォンアミド系薬剤との併用

フロセミドはスルフォンアミド系薬剤の一種であるため他のスルフォンアミド系薬剤との併用には注意が必要で、特に問題となるのは以下のような状況です。

  • クロスアレルギーの可能性
  • 腎毒性の増強
  • 血中濃度の上昇
スルフォンアミド系薬剤主な用途
スルファメトキサゾール抗菌薬
アセタゾラミド緑内障治療 高山病予防

これらの薬剤とフロセミドの併用には慎重な判断と綿密なモニタリングが重要です。

アミノグリコシド系抗生物質との併用

フロセミドとアミノグリコシド系抗生物質の併用は聴覚毒性のリスクを著しく増大させる可能性があります。

両薬剤とも単独でも聴覚に影響を与える可能性がありますが、併用することでそのリスクが相乗的に高まります。

特に注意が必要なアミノグリコシド系抗生物質は以下の通りです。

  • ゲンタマイシン
  • アミカシン
  • トブラマイシン
薬剤聴覚毒性リスク
フロセミド単独中程度
アミノグリコシド単独高度
併用時非常に高度

やむを得ず併用する際は聴力検査や薬物血中濃度モニタリングなどの厳重な管理が不可欠です。

リチウム製剤との併用

フロセミドとリチウム製剤の併用はリチウムの血中濃度を上昇させてリチウム中毒のリスクを高める可能性があります。

リチウムは主に双極性障害の治療に用いられる薬剤ですが、治療域と中毒域の差が小さいことで知られています。

フロセミドによる利尿作用は次のようなメカニズムでリチウムの血中濃度に影響を与えます。

  • 体内水分量の減少によるリチウムの相対的濃度上昇
  • 腎臓でのリチウム再吸収の増加
リチウム血中濃度臨床状態
0.6〜1.2 mEq/L治療域
1.5 mEq/L以上軽度中毒
2.0 mEq/L以上重度中毒

併用が避けられない場合はリチウムの血中濃度を頻回にモニタリングして用量調整を慎重に行う必要があります。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)との併用

フロセミドと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用は複数の問題を引き起こす可能性があります。

以下は主な懸念事項です。

  • フロセミドの利尿効果の減弱
  • 腎機能障害のリスク増大
  • 血圧上昇

NSAIDsの中でも特に注意が必要な薬剤は以下の通りです。

  • インドメタシン
  • イブプロフェン
  • ナプロキセン
併用の影響メカニズム
利尿効果減弱プロスタグランジン合成阻害
腎機能障害腎血流量減少

これらの薬剤の併用が必要な際は腎機能や血圧のモニタリングを慎重に行うことが大切です。

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)の薬価について

薬価

ラシックス・オイテンシン(フロセミド)の薬価は剤形や規格によって異なります。

錠剤の場合は20mg錠で9.8円、40mg錠で11.6円となっています。

注射液の場合だと20mg/2mLアンプルで62円、100mg/10mLアンプルで129円です。

剤形規格薬価
錠剤20mg9.8円
錠剤40mg11.6円
注射液20mg/2mL62円
注射液100mg/10mL129円

処方期間による総額

処方期間によって薬剤費の総額は変動します。

1週間での処方の場合では40mg錠を1日1回服用するとすれば 81.2円となります。1ヶ月間の処方になると348円程度ということになります。

処方期間服用量総額
1週間40mg/日81.2円
1ヶ月40mg/日348円

ジェネリック医薬品との比較

フロセミドにはジェネリック医薬品が存在します。

ジェネリック医薬品の40mg錠の薬価は6.4円程度で、先発品と比較すると価格が安いです。

1ヶ月処方した場合はジェネリック医薬品では192円となり、先発品と比べて156円の差額が生じます。

医薬品40mg錠薬価1ヶ月処方総額
先発品11.6円348円
ジェネリック6.4円192円

なお、上記の価格は2024年8月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文

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