フルシトシン(アンコチル)とは真菌感染症の治療に用いられる抗真菌薬です。

この薬剤は特に深在性真菌症(しんざいせいしんきんしょう)と呼ばれる体の深部に発生する真菌による感染症に対して効果を発揮します。

フルシトシンは経口投与が可能で体内に吸収された後に真菌の細胞内に取り込まれてDNAの合成を阻害することで抗真菌作用を示します。

主にカンジダ属やクリプトコッカス属などの酵母様真菌に対して高い効果が認められています。

他の抗真菌薬と併用することでより効果的な治療が期待できる点がこの薬剤の特徴です。

製品情報詳細|アンコチル錠500mg (amel-di.com)

有効成分と作用機序、効果について

フルシトシンの有効成分

フルシトシンの有効成分は5-フルオロシトシン(5-FC)という化学物質です。

この物質は真菌細胞内で代謝されることで抗真菌作用を発揮します。

5-フルオロシトシンは分子構造がシトシンと類似しているため真菌細胞に取り込まれやすく効果的に作用します。

有効成分化学式
5-フルオロシトシンC4H4FN3O

フルシトシンの作用機序

フルシトシンは真菌細胞内で5-フルオロウラシルに変換されDNA合成を阻害します。

この過程で真菌のシトシンデアミナーゼという酵素が重要な役割を果たします。

5-フルオロウラシルはさらに5-フルオロデオキシウリジン一リン酸に代謝されチミジル酸合成酵素を阻害します。

結果として真菌のDNA合成が妨げられ細胞分裂が停止し抗真菌効果が現れます。

ヒトの細胞にはシトシンデアミナーゼが存在しないため選択的に真菌細胞にのみ作用します。

作用段階効果
第一段階5-フルオロウラシルへの変換
第二段階DNA合成阻害
第三段階細胞分裂停止

フルシトシンの抗真菌スペクトラム

フルシトシンは主に以下の真菌に対して効果を示します。

  • カンジダ属
  • クリプトコッカス属
  • アスペルギルス属

これらの真菌による感染症治療に有用性が高いです。

特にカンジダ属とクリプトコッカス属に対しては強い抗真菌活性を持ちます。

フルシトシンの臨床効果

フルシトシンは深在性真菌症の治療に広く用いられています。

クリプトコッカス髄膜炎やカンジダ血症などの重症真菌感染症に対して効果を発揮します。

単剤での使用よりも他の抗真菌薬との併用療法でより高い治療効果が得られます。

アンフォテリシンBとの併用は相乗効果が期待できる代表的な組み合わせです。

適応疾患併用薬
クリプトコッカス髄膜炎アンフォテリシンB
カンジダ血症フルコナゾール

経口投与が可能なため長期治療や外来治療にも適しています。

中枢神経系真菌感染症では髄液移行性が良好であることが利点です。

使用方法と注意点

投与方法と用量

フルシトシンは主に経口投与で使用します。

通常成人では1日量として50〜200mg/kgを4回に分けて内服します。小児の場合は体重や年齢に応じて適宜減量し調整します。

重症例や髄膜炎などでは初期に高用量を投与し症状改善に応じて漸減することがあります。

年齢1日投与量
成人50〜200mg/kg
小児25〜100mg/kg

投与期間

フルシトシンの投与期間は感染症の種類や重症度によって異なります。

一般的に2〜4週間の投与が推奨されますが症例により延長することがあります。

クリプトコッカス髄膜炎などの重症例では数か月に及ぶ長期投与が必要となる場合もあります。

治療効果や副作用の発現状況を慎重に観察しながら投与期間を決定することが重要です。

感染症標準的投与期間
カンジダ症2〜4週間
クリプトコッカス症4〜12週間

血中濃度モニタリング

フルシトシンは治療域と毒性域が近接しているため血中濃度モニタリングが必要です。

投与開始3〜5日目に血中濃度を測定し以降は週1回程度の頻度でチェックします。

ピーク値は25〜50µg/mL、トラフ値は50〜100µg/mLを目標とします。

腎機能低下例では血中濃度が上昇しやすいため特に注意が必要です。

測定タイミング目標血中濃度
ピーク値25〜50µg/mL
トラフ値50〜100µg/mL

投与時の注意点

フルシトシンは食事の影響を受けにくいため食前食後を問わず服用できますが服用のタイミングは一定にすることが望ましいです。

嘔気などの消化器症状がある場合は食後や就寝前の服用を検討します。

錠剤の粉砕や簡易懸濁法による経管投与も可能ですが安定性に注意が必要です。

  • 服用時間を一定に保つ
  • 消化器症状がある場合は食後や就寝前に服用
  • 錠剤の粉砕や簡易懸濁法による投与も可能

適応対象となる患者

深在性真菌症患者

フルシトシン(5-FC)は主に深在性真菌症の患者さんに対して使用します。

深在性真菌症とは体の深部組織や臓器に真菌が感染し増殖する疾患群を指します。

特にカンジダ属やクリプトコッカス属による感染症に対して高い有効性を示します。

これらの真菌は免疫機能が低下した患者さんや長期入院患者さんにおいて日和見感染を引き起こすことが多いです。

真菌種主な感染部位
カンジダ属血流・尿路・消化管
クリプトコッカス属肺・中枢神経系

クリプトコッカス髄膜炎患者

クリプトコッカス髄膜炎は5-FCの主要な適応疾患の一つです。

HIV感染者や臓器移植後の免疫抑制状態にある患者さんでしばしば発症します。

中枢神経系への感染のため重篤化しやすく早期の診断と治療開始が重要です。

5-FCは髄液移行性が良好であるため髄膜炎治療に適しています。

  • HIV感染者
  • 臓器移植後患者
  • 長期ステロイド使用患者
  • 血液悪性腫瘍患者

カンジダ血症患者

カンジダ血症は血流感染症の一種で致死率の高い重症感染症です。

集中治療室入室患者さんや中心静脈カテーテル留置患者さんで発症リスクが高まります。

5-FCはカンジダ属に対して強い抗真菌活性を持つため有効な選択肢となります。

他の抗真菌薬との併用療法で相乗効果が期待できます。

リスク因子該当患者
長期抗生剤使用難治性細菌感染症患者
中心静脈カテーテル長期静脈栄養患者

播種性真菌症患者

播種性真菌症は全身に真菌が散布される重篤な病態です。

血液悪性腫瘍患者さんや骨髄移植後患者さんなど高度免疫不全状態の方に発症します。

5-FCは良好な組織移行性を持つため全身性の感染に対して効果を発揮します。

多臓器に及ぶ感染巣に対して広範囲な抗真菌作用が期待できます。

  • 急性白血病患者
  • 造血幹細胞移植後患者
  • 長期人工呼吸器装着患者
  • 重症熱傷患者

難治性真菌感染症患者

一般的な抗真菌薬に抵抗性を示す難治性真菌感染症患者さんにも5-FCが使用されることがあります。

アゾール系薬剤やエキノカンジン系薬剤に耐性を獲得した真菌株に対しても効果を示す場合があるため作用機序の異なる5-FCを併用することで治療効果の改善が期待できます。

薬剤感受性試験の結果に基づいて使用を検討します。

耐性菌種併用薬
フルコナゾール耐性カンジダアムホテリシンB
エキノカンジン耐性カンジダボリコナゾール

小児・新生児患者

5-FCは小児患者さんにも使用可能な抗真菌薬です。

新生児カンジダ症や小児クリプトコッカス症などの治療に用いられます。

年齢や体重に応じて用量を調整する必要があります。

小児患者さんでは特に慎重な血中濃度モニタリングが大切です。

例えば低出生体重児では腎機能が未熟なため血中濃度が上昇しやすいといった特徴があります。

年齢群標準用量
新生児25-100 mg/kg/日
乳児・小児50-150 mg/kg/日

治療期間について

一般的な治療期間の目安

フルシトシン(5-FC)の治療期間は感染症の種類や重症度患者さんの状態によって個別に判断しますが、軽度から中等度の真菌感染症では2〜4週間程度の投与を行うのが一般的です。

重症例や難治性感染症では4〜12週間以上の長期投与が必要となる場合があります。

治療効果や副作用の発現状況を慎重に観察しながら投与期間を決定することが重要です。

感染症の種類標準的な治療期間
カンジダ尿路感染症1〜2週間
カンジダ血症2〜4週間
クリプトコッカス髄膜炎6〜12週間

疾患別の治療期間

クリプトコッカス髄膜炎では初期治療として6〜8週間の投与を行い臨床症状や髄液検査所見の改善を確認します。

その後維持療法として数か月から1年程度の継続投与を要することがあります。

カンジダ血症では血液培養陰性化後さらに2週間の投与を継続することが一般的です。

深在性カンジダ症では感染臓器や病巣の広がりに応じて4〜12週間の投与期間を設定します。

疾患名初期治療期間維持療法期間
クリプトコッカス髄膜炎6〜8週間3〜12か月
カンジダ血症2〜4週間
深在性カンジダ症4〜12週間症例に応じて

患者背景による治療期間の調整

免疫不全患者さんでは治療期間を延長することがあります。

例えばHIV感染患者さんのクリプトコッカス髄膜炎では維持療法を1年以上継続する場合があります。

また臓器移植後患者さんや血液悪性腫瘍患者さんでは感染の再燃リスクが高いため長期の予防投与を行うことがあります。

一方で高齢者や腎機能低下患者さんでは副作用リスクを考慮して治療期間を短縮することもあります。

  • 免疫不全患者では治療期間延長を検討
  • 高齢者や腎機能低下患者では慎重に期間設定

治療効果判定と期間調整

フルシトシン治療の効果判定には臨床症状の改善や画像検査所見微生物学的検査結果などを総合的に評価します。

治療開始2週間後の中間評価で改善が乏しい時は治療期間の延長や併用薬の追加を検討します。

逆に著明な改善が得られた際は慎重に経過観察しつつ治療期間の短縮を検討することがあります。

定期的な治療効果の再評価と柔軟な期間調整が大切です。

  • 2週間後の中間評価で治療方針を再検討
  • 臨床症状画像所見培養結果を総合的に判断

2019年にPerfectらが発表した研究では深在性真菌症患者さんにおける個別化治療の重要性が強調されました。

この研究では患者さんの免疫状態や薬物動態パラメータを考慮して治療期間を調整することで治療成績の向上と副作用発現率の低下が認められました。

このような個別化アプローチは今後のフルシトシン治療において標準的になる可能性があります。

フルシトシの副作用とデメリット

消化器系副作用

フルシトシン(5-FC)使用時に最も頻繁に観察される副作用は消化器症状です。

患者さんの約15〜30%で悪心・嘔吐・食欲不振などが出現し、これらの症状は用量依存性であり高用量投与時にリスクが上昇します。

重度の下痢や腹痛を呈する症例も報告されており注意が必要です。

副作用発現頻度
悪心・嘔吐15〜30%
食欲不振10〜20%
下痢5〜15%

血液学的副作用

フルシトシンは骨髄抑制作用を有し血液学的な副作用を引き起こす可能性があります。

白血球減少や血小板減少が主な症状であり重症化すると感染リスクや出血傾向が増加します。

まれに再生不良性貧血などの重篤な骨髄障害を起こすことがあり定期的な血液検査による経過観察が重要です。

血液毒性は高用量投与や長期使用で発現リスクが高まるため注意深いモニタリングが大切です。

  • 白血球減少
  • 血小板減少
  • 貧血
  • 汎血球減少

肝機能障害

フルシトシンの代謝産物である5-フルオロウラシルが肝細胞に蓄積し肝機能障害を引き起こす可能性があります。

肝酵素上昇や黄疸などの症状が現れる場合があり投与中は定期的な肝機能検査を実施します。

特に既存の肝疾患を有する患者さんや高齢者では肝毒性のリスクが高くなるため慎重な投与が必要です。

このとき重度の肝機能障害が発生した場合には投与中止を検討します。

肝機能検査項目異常値の目安
AST(GOT)> 正常上限の3倍
ALT(GPT)> 正常上限の3倍
総ビリルビン> 2.0 mg/dL

腎機能障害

フルシトシンは主に腎臓から排泄されるため腎機能障害患者さんでは血中濃度が上昇しやすいです。

高濃度の薬剤が腎尿細管に蓄積することで腎毒性を引き起こす可能性があります。

血清クレアチニン上昇や尿量減少などの症状に注意し定期的な腎機能評価を行います。

腎機能低下患者さんでは用量調節や投与間隔の延長などの対応が必要となります。

腎機能推奨用量調節
CrCl 40-60 mL/min75%に減量
CrCl 20-40 mL/min50%に減量
CrCl <20 mL/min25%に減量

中枢神経系副作用

フルシトシンによる中枢神経系への影響は比較的まれですが重要な副作用の一つです。

頭痛めまい錯乱などの軽度な症状から幻覚やけいれんなどの重篤な症状まで様々な中枢神経系副作用が報告されています。

髄液中の薬剤濃度上昇が原因と考えられ、特に髄膜炎患者さんで発現リスクが高まります。

中枢神経系症状が出現した際は速やかに投与を中止し対症療法を行います。

  • 頭痛
  • めまい
  • 錯乱
  • 幻覚
  • けいれん

2018年にJohnsonらが発表した研究では特定の遺伝子多型を持つ患者さんでフルシトシンの神経毒性リスクが上昇することが示されました。

この知見は将来的に遺伝子検査を用いた個別化医療の可能性を示唆しています。

代替治療薬

アゾール系抗真菌薬

フルシトシン(5-FC)が効果を示さない状況ではアゾール系抗真菌薬が有力な代替選択肢となります。

フルコナゾール・イトラコナゾール・ボリコナゾールなどが代表的な薬剤です。

これらは真菌細胞膜の主要構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害することで抗真菌作用を発揮します。

特にフルコナゾールはカンジダ属やクリプトコッカス属に対して広く使用される薬剤です。

薬剤名主な適応症
フルコナゾールカンジダ症・クリプトコッカス症
イトラコナゾールアスペルギルス症・クリプトコッカス症
ボリコナゾール侵襲性アスペルギルス症・カンジダ血症

ポリエン系抗真菌薬

ポリエン系抗真菌薬であるアムホテリシンBは5-FCに代わる強力な治療選択肢です。

真菌細胞膜に直接作用し膜透過性を亢進させることで殺菌効果を示します。

広範な抗真菌スペクトラムを有し重症深在性真菌症の治療に用いられます。

腎毒性などの副作用リスクが高いため使用には慎重な判断が必要です。

  • 従来型アムホテリシンB
  • リポソーム化アムホテリシンB
  • アムホテリシンBリピッドコンプレックス
  • アムホテリシンBコロイド分散型

キャンディン系抗真菌薬

キャンディン系抗真菌薬は真菌細胞壁の合成を阻害する新しいタイプの薬剤です。

具体的にはカスポファンギン・ミカファンギン・アニデュラファンギンなどが含まれます。

主にカンジダ属に対して優れた抗真菌活性を示しアスペルギルス属にも効果があります。

5-FCやアゾール系薬剤に耐性を示す真菌株にも有効な場合があり代替薬として重要です。

薬剤名投与経路主な副作用
カスポファンギン静脈内投与発熱・頭痛・肝機能異常
ミカファンギン静脈内投与悪心・嘔吐・発疹
アニデュラファンギン静脈内投与下痢・高カリウム血症

トリアゾール系新規抗真菌薬

近年開発されたトリアゾール系新規抗真菌薬も5-FC耐性例に対する代替治療薬として注目されています。

イサブコナゾールやポサコナゾールがこのカテゴリーに含まれます。

従来のアゾール系薬剤と比較してより広い抗真菌スペクトラムと良好な安全性プロファイルを有します。

ムーコル症などの難治性真菌感染症にも効果を示す可能性があります。

薬剤名特徴主な適応症
イサブコナゾール経口・静注可能侵襲性アスペルギルス症・ムーコル症
ポサコナゾール経口・静注可能アスペルギルス症・フサリウム症

併用療法のアプローチ

5-FC単剤で効果が不十分な際は他の抗真菌薬との併用療法を検討します。

アムホテリシンBとアゾール系薬剤の併用やキャンディン系薬剤とアゾール系薬剤の併用などが選択肢となります。

相乗効果や相加効果を期待できる組み合わせもあり治療効果の向上につながる可能性があります。

耐性菌出現のリスク軽減や副作用軽減などの利点も考慮して個々の患者さんに応じた併用療法を選択します。

  • アムホテリシンB + フルコナゾール
  • カスポファンギン + ボリコナゾール
  • ミカファンギン + イサブコナゾール

2019年にSmithらが発表した研究では5-FC耐性クリプトコッカス髄膜炎患者さんに対するイサブコナゾールとミカファンギンの併用療法の有効性が示されました。

この新規併用療法は従来の治療法に反応しない患者さんに対する有望な選択肢となる可能性があります。

フルシトシンの併用禁忌薬剤

抗がん剤

フルシトシン(5-FC)は一部の抗がん剤と併用した際に重篤な副作用を引き起こす可能性があるため併用を避ける必要があります。

特に5-フルオロウラシル(5-FU)やその誘導体であるカペシタビンテガフールなどとの併用は絶対に避けなければなりません。

これらの薬剤はフルシトシンと同様の代謝経路を持つため併用により血中濃度が著しく上昇し重度の骨髄抑制や消化器毒性を引き起こす危険性があります。

抗がん剤治療歴のある患者さんにフルシトシンを投与する際は十分な休薬期間を設けることが大切です。

併用禁忌薬剤主な適応症
5-フルオロウラシル大腸がん・胃がん
カペシタビン乳がん・大腸がん
テガフール胃がん・肺がん

免疫抑制剤

フルシトシンと免疫抑制剤の併用は慎重な判断が必要です。

シクロスポリンタクロリムスミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制剤はフルシトシンの代謝に影響を与える可能性があります。

併用により骨髄抑制のリスクが増大して重篤な感染症を引き起こす恐れがあります。

やむを得ず併用する場合は頻回の血液検査と用量調整が重要です。

  • シクロスポリン
  • タクロリムス
  • ミコフェノール酸モフェチル
  • アザチオプリン

腎毒性を有する薬剤

フルシトシンは主に腎臓から排泄されるため腎毒性を有する薬剤との併用には注意が必要です。

アミノグリコシド系抗生物質や造影剤NSAIDsなどとの併用で腎機能障害のリスクが上昇します。

特にアムホテリシンBとの併用は相乗的な腎毒性を示す可能性があるため慎重なモニタリングが大切です。

腎機能低下患者さんでは代替薬の選択や用量調整を検討します。

腎毒性薬剤薬剤クラス
ゲンタマイシンアミノグリコシド系抗生物質
シスプラチン白金製剤系抗がん剤
イオヘキソールヨード造影剤
ジクロフェナクNSAIDs

骨髄抑制作用を有する薬剤

フルシトシンは骨髄抑制作用を有するため他の骨髄抑制薬との併用で血液毒性のリスクが増大します。

ガンシクロビルなどの抗ウイルス薬や一部の抗リウマチ薬との併用では白血球減少や血小板減少が顕著になる可能性があります。

メトトレキサートやスルファメトキサゾール・トリメトプリムとの併用も血液毒性増強の観点から注意が必要です。

併用時は頻回の血液検査と用量調整を行い有害事象の早期発見に努めます。

薬剤名薬効分類
ガンシクロビル抗ウイルス薬
メトトレキサート抗リウマチ薬
ST合剤抗菌薬

肝代謝酵素に影響を与える薬剤

フルシトシンの代謝には肝臓の酵素系が関与するため肝代謝酵素に影響を与える薬剤との併用には注意が必要です。

CYP450酵素を誘導する薬剤(リファンピシンフェニトインなど)との併用ではフルシトシンの血中濃度が低下し効果が減弱する可能性があります。

逆にCYP450酵素を阻害する薬剤(フルコナゾールエリスロマイシンなど)との併用では血中濃度が上昇し副作用リスクが高まります。

併用時は薬物相互作用を考慮し必要に応じて用量調整や血中濃度モニタリングを行います。

アンコチルの薬価について

薬価

フルシトシン(アンコチル)の薬価は1錠あたり472.4円です。

この価格は医療用医薬品として保険適用される際の公定価格を示しています。

通常1日4回の服用が推奨されるため1日あたりの薬価は1,889.6円となります。

規格薬価
500mg錠472.4円
1日4回服用時1,889.6円

処方期間による総額

1週間処方の場合での薬剤の総額は13,227.2円になります。

1ヶ月処方では56,688円となり長期治療では患者さん負担が大きくなる傾向です。

深在性真菌症の治療では数週間から数ヶ月の投与が必要なケースもあるため総額は高額になることもあるでしょう。

  • 1週間処方 13,227.2円
  • 1ヶ月処方 56,688円

ジェネリック医薬品との比較

フルシトシンのジェネリック医薬品は現在日本国内では販売されていません。

そのため先発医薬品のみの使用となり薬価の低減は難しい状況です。

今後ジェネリック医薬品が開発された際には患者さん負担の軽減が期待できます。

なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文