ファビピラビル(アビガン)とは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含む様々なウイルス性疾患に対して効果が期待される抗ウイルス薬です。

呼吸器専門医が注目するこの薬剤はRNA依存RNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの複製を抑制します。

本剤は当初インフルエンザウイルスに対する治療薬として開発されましたが、その後の研究により幅広いウイルスに効果を示す可能性が見出されました。

特に2020年以降、新型コロナウイルスへの対応策として世界中で注目を集めるようになりました。

目次

アビガンの有効成分、作用機序、効果を徹底解説

アビガンは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめとする様々なウイルス性疾患に対して効果が期待される抗ウイルス薬です。

本記事ではその有効成分、作用機序、効果について詳しく解説します。

有効成分:ファビピラビル

ファビピラビル(アビガン)の有効成分はその名前と同じくファビピラビルという化合物です。

この物質は化学名6-フルオロ-3-ヒドロキシ-2-ピラジンカルボキサミドとして知られ、分子式C5H4FN3O2を持つ有機化合物として合成されます。

ファビピラビルはその構造上の特徴から様々なRNAウイルスに対して広範な抗ウイルス活性を示すことが明らかになっています。

項目詳細
一般名ファビピラビル
化学名6-フルオロ-3-ヒドロキシ-2-ピラジンカルボキサミド
分子式C5H4FN3O2
分子量157.10 g/mol

この化合物は体内で代謝されることによって活性型となり、その後ウイルスの増殖を抑制する働きを発揮します。

作用機序:RNA依存RNAポリメラーゼの阻害

ファビピラビルの主たる作用機序はウイルスのRNA依存RNAポリメラーゼ(RdRp)を選択的に阻害することにあります。

RdRpはウイルスの遺伝情報であるRNAを複製するために必要不可欠な酵素であり、ウイルスの増殖過程において中心的な役割を果たしています。

ファビピラビルはこの酵素の働きを阻害することでウイルスのRNA合成を効果的に抑制するのです。

具体的には次のようなプロセスを経てウイルスの増殖を抑制します。

  1. ファビピラビルが体内で代謝され活性型のファビピラビル-リボフラノシル-5′-三リン酸(F-RTP)に変換
  2. F-RTPがウイルスのRdRpに結合し、その機能を阻害
  3. RNAの合成が阻害され、ウイルスの複製が抑制
  4. 結果としてウイルスの増殖が抑制

このメカニズムによりファビピラビルは幅広いRNAウイルスに対して効果を発揮することが期待されています。

広範なウイルスへの効果

ファビピラビルの特筆すべき特徴はその広範なスペクトルの抗ウイルス活性です。

当初はインフルエンザウイルスに対する治療薬として開発されましたが、その後の研究により様々なRNAウイルスに対して効果を示すことが判明しました。

ウイルス科代表的なウイルス
オルソミクソウイルス科インフルエンザウイルス
フィロウイルス科エボラウイルス
アレナウイルス科ラッサウイルス
ブニヤウイルス科クリミア・コンゴ出血熱ウイルス
フラビウイルス科黄熱ウイルス、西ナイルウイルス

これらのウイルスに対する効果は試験管実験および動物実験で確認されており、一部のウイルス感染症に対しては臨床試験も行われています。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への効果

2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいてファビピラビルはSARS-CoV-2に対する潜在的な治療薬として世界中で注目を集めました。

複数の臨床試験が実施されてその効果について検証が進められています。

ファビピラビルのSARS-CoV-2に対する効果は主に以下の点で期待されています。

  • ウイルス量の減少
  • 症状の改善
  • 入院期間の短縮
  • 重症化リスクの低減

しかしながらその効果の程度や適応についてはさらなる研究と検証が必要です。

臨床試験の段階主な評価項目
第II相試験安全性・有効性の予備的評価
第III相試験有効性の確認・安全性の継続評価
市販後調査長期的な安全性・有効性の確認

ファビピラビルの効果を最大限に引き出すためには適切な投与タイミングと用量の設定が重要です。

多くの研究では症状発現後の早期投与がより高い効果をもたらす可能性が示唆されています。

使用方法と注意点

アビガンはウイルス性疾患に対する有効な治療薬として注目されていますが、その使用には細心の注意が必要です。

本記事ではこの薬剤の正しい使用方法と重要な注意点について詳しく解説します。

投与形態と用法

アビガンは主に経口投与用の錠剤として製剤化されています。

投与量は患者さんの状態や対象となるウイルス感染症によって異なるため医師の指示に従って慎重に服用することが求められます。

通常初日に高用量を投与し(ローディングドーズ)、その後は維持用量に移行する投与スケジュールが採用されることが多いです。

投与日投与回数1回あたりの用量
1日目2回1600mg〜1800mg
2日目以降2回600mg〜800mg

この投与スケジュールにより体内で迅速に有効血中濃度に達しその後安定した濃度を維持することが目的です。

服用時の注意事項

アビガンの服用に際しては次の点に留意する必要があります。

  • 食事の影響を最小限に抑えるため空腹時に服用することが望ましい
  • 決められた時間に確実に服用し、忘れた際の対応について医師の指示を仰ぐことが大切
  • 自己判断での服用中止や用量変更は避け必ず医師の指示に従う
  • 服用中は十分な水分摂取を心がけ腎機能への負担を軽減する

これらの注意点を守ることで薬剤の効果を最大限に引き出し、同時に安全性を確保することができます。

禁忌事項と慎重投与

アビガンの使用にあたってはいくつかの禁忌事項や慎重投与が必要な状況があります。

以下の条件に該当する患者さんには原則としてアビガンの投与を避けるか慎重に投与を検討する必要があります。

  1. 妊婦または妊娠している可能性のある女性
  2. 授乳中の女性
  3. 重度の肝機能障害を有する患者
  4. 重度の腎機能障害を有する患者
  5. 痛風または高尿酸血症の既往がある患者

特にファビピラビルには催奇形性のリスクがあるため妊娠中の使用は厳しく制限されています。

2020年に発表された研究論文(Pilkington et al., Antiviral Research)ではアビガンのヒト胎児への潜在的影響について詳細な分析が行われました。

その結果妊娠中の使用に関する厳格なガイドラインの必要性が強調されました。

モニタリングと経過観察

ファビピラビル投与中は患者さんの状態を綿密にモニタリングして定期的な検査を実施することが欠かせません。

特に注意を要する項目は以下の通りです。

  • 肝機能検査(AST・ALT・ビリルビンなど)
  • 腎機能検査(クレアチニン・eGFRなど)
  • 血中尿酸値
  • 血球数(白血球数・血小板数など)
検査項目推奨頻度
肝機能週1〜2回
腎機能週1〜2回
尿酸値週1回
血球数週1回

これらの検査結果に基づき必要に応じて投与量の調整や投与中止を検討します。

アビガンの適応対象

アビガンは特定のウイルス感染症に対して効果が期待される抗ウイルス薬です。

本稿ではこの薬剤の適応対象となる患者さんについて医学的な観点から詳細に解説します。

インフルエンザウイルス感染症患者

アビガンは当初インフルエンザウイルス感染症の治療薬として開発されました。

本剤の適応対象となるのは主に他の抗インフルエンザ薬が無効または効果不十分な患者さんです。

既存の抗インフルエンザ薬に対して耐性を示すウイルス株に感染した患者さんや、これらの薬剤による治療で十分な効果が得られなかった患者さんが該当します。

患者群ファビピラビルの適応
通常のインフルエンザ患者第二選択薬として考慮
耐性ウイルス株感染患者積極的に検討
既存薬無効例有力な選択肢

ただしインフルエンザに対するアビガンの使用は各国の規制当局の承認状況に応じて異なることに留意することが重要です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者

2020年以降アビガンは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬候補として世界中で注目を集めています。

COVID-19患者さんに対するアビガンの適応については各国で臨床試験が進められており、その結果に基づいて適応が検討されています。

一般に次のような患者群がファビピラビルの投与対象として考慮される傾向です。

  • 軽症から中等症のCOVID-19患者
  • 重症化リスクが高い患者(高齢者・基礎疾患保有者など)
  • 発症早期の患者(症状出現から5日以内が目安)
患者さんの状態投与検討度
軽症〜中等症
重症
発症早期
発症後期×

ただしCOVID-19に対するアビガンの使用は多くの国でまだ緊急使用承認や条件付き承認の段階にあることに注意が必要です。

その他のウイルス感染症患者

アビガンは幅広い抗ウイルス活性を持つことから様々なRNAウイルス感染症への応用が研究されています。

特に既存の治療法が限られている希少なウイルス感染症に対してファビピラビルが有効な選択肢となる可能性が示唆されています。

次のようなウイルス感染症患者さんが潜在的な適応対象として研究されています。

  1. エボラウイルス病
  2. ラッサ熱
  3. クリミア・コンゴ出血熱
  4. 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
ウイルス感染症研究段階
エボラウイルス病臨床試験実施済み
ラッサ熱前臨床段階
SFTS症例報告あり

これらの感染症に対するアビガンの使用は現時点では主に臨床研究や緊急使用の枠組みで行われており通常診療での使用には慎重な判断を要します。

投与対象者の選定基準

ファビピラビルの投与を検討する際には患者さんの個別の状況を総合的に評価することが大切です。

医療従事者は以下の要素を考慮して投与対象者を選定します。

  • 感染が疑われるウイルスの種類と薬剤感受性
  • 症状の重症度と発症からの経過時間
  • 患者の年齢、基礎疾患、免疫状態
  • 他の治療法の有効性と利用可能性
  • 薬物相互作用のリスク
評価項目具体例
ウイルス同定PCR検査・抗原検査
重症度評価SpO2・画像診断
基礎疾患確認既往歴聴取・血液検査

これらの要素を総合的に判断してファビピラビル投与のベネフィットがリスクを上回ると考えられる患者さんに対して本剤の使用を検討します。

治療期間

アビガンの治療期間は対象となるウイルス感染症の種類や患者さんの状態によって異なります。

本稿ではこの抗ウイルス薬の最適な投与期間について詳しく解説します。

インフルエンザに対する治療期間

インフルエンザウイルス感染症に対するアビガンの標準的な治療期間は通常5日間です。

この期間設定はウイルスの増殖サイクルと薬剤の体内動態を考慮して決定されています。

初日に高用量(ローディングドーズ)を投与して2日目以降は維持用量を継続することで体内のウイルス量を効果的に抑制することを目指しています。

投与日1日投与回数1回投与量
1日目2回1600mg
2-5日目2回600mg

ただし症状の改善が見られない場合や特殊な状況下では医師の判断により投与期間を延長することもあります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療期間

COVID-19に対するファビピラビルの治療期間は各国の臨床試験や治療ガイドラインによって若干の違いがありますが、一般的に7日間から14日間の範囲で設定されることが多いです。

具体的な投与スケジュールの一例を示すと以下のようになります。

  • 1日目 3600mg(1800mg×2回)
  • 2日目以降 1600mg/日(800mg×2回)を7〜13日間
治療期間患者の状態
7日間軽症例
10日間中等症例
14日間重症例

2021年に発表された大規模臨床試験(Chen et al., Engineering)では10日間のファビピラビル投与がプラセボと比較して有意に臨床的改善を促進することが示されました。

この研究結果はCOVID-19に対するファビピラビルの治療期間設定に大きな影響を与えています。

その他のウイルス感染症に対する治療期間

アビガンはエボラウイルス病やラッサ熱などの重篤なウイルス性出血熱に対しても研究が進められています。

これらの感染症に対する治療期間は疾患の重症度や患者さんの臨床経過に応じて個別に判断されることが多く、標準化された投与期間は確立されていません。

一般的な目安として以下のような期間が考慮されます。

ウイルス感染症推奨治療期間
エボラウイルス病7-10日
ラッサ熱10-14日
クリミア・コンゴ出血熱7-10日

これらの治療期間はあくまでも参考値であり実際の臨床現場では患者さんの状態や治療反応性を慎重に評価しながら投与期間を決定することが重要です。

治療期間の個別化

アビガンの最適な治療期間は患者さんごとに異なる可能性があり、以下の要因を考慮しながら個々の患者さんに最適な投与期間を決定します。

  • ウイルスの種類と薬剤感受性
  • 感染の重症度
  • 患者の年齢と基礎疾患
  • 治療への反応性
  • 副作用の発現状況

これらの要素を総合的に評価することで各患者さんに最適化された治療期間を設定することが可能となります。

治療効果のモニタリングと期間調整

ファビピラビルの治療期間中は患者さんの臨床症状や検査値を注意深くモニタリングすることが大切です。

特に注目すべき項目は以下の通りです。

  • 体温の推移
  • 呼吸状態(SpO2、呼吸数など)
  • ウイルス量(PCR検査など)
  • 炎症マーカー(CRP、フェリチンなど)
  • 肝機能・腎機能検査値
モニタリング項目頻度
体温測定1日2回以上
SpO2測定1日3回以上
血液検査2-3日ごと
PCR検査3-5日ごと

これらの指標に基づいて治療効果が不十分な場合や副作用が顕著な場合には投与期間の延長や短縮、あるいは投与中止を検討することがあります。

アビガンの副作用とデメリット

アビガンは効果的な抗ウイルス薬として注目されていますが、他の医薬品と同様に副作用やデメリットがあります。

本記事ではファビピラビルの副作用とデメリットについて詳しく解説し、患者さんや医療従事者が知っておくべき重要な情報を提供します。

主な副作用

ファビピラビルの使用に伴う副作用は軽度から中等度のものが多いですが、一部の患者さんでは重篤な症状が現れる可能性があります。

頻度の高い副作用として以下のようなものが報告されています。

  • 高尿酸血症(痛風の原因となる可能性がある)
  • 下痢
  • 嘔気・嘔吐
  • 肝機能障害(AST、ALTの上昇)
  • 中性脂肪の上昇
副作用発現頻度
高尿酸血症約20%
下痢約5%
肝機能障害約2%
嘔気・嘔吐約1%

これらの副作用の多くは一過性で投薬終了後に自然に改善することが多いです。

しかし症状が持続したり悪化したりする際には速やかに担当医に相談することが大切です。

催奇形性のリスク

アビガンの最も重大なデメリットの一つは動物実験で催奇形性が確認されている点です。

この理由から妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌とされています。

さらに以下の点に注意が必要です。

  1. 投与中および投与終了後しばらくの間は確実な避妊が必要
  2. 男性患者の場合パートナーの妊娠にも注意が必要
  3. 授乳中の女性への投与も避けるべき
対象避妊期間
女性患者投与終了後10日間
男性患者投与終了後7日間

2021年に発表された研究(Tanaka et al., Scientific Reports)ではアビガンの催奇形性リスクについて詳細な分析が行われました。

その結果ヒトへの影響を最小限に抑えるための厳格な投与管理の必要性が強調されました。

長期使用のリスク

ファビピラビルの長期使用に関してはまだ十分なデータが蓄積されていません。そのため長期投与に伴うリスクについては不明な点が多く残されています。

現時点で懸念される長期使用のリスクには以下のようなものがあります。

  • 耐性ウイルスの出現
  • 慢性的な肝機能障害
  • 持続的な高尿酸血症による痛風の発症
  • 未知の長期的副作用
長期使用リスク現状
耐性ウイルス研究中
慢性肝障害データ不足
痛風観察継続中

これらのリスクを考慮してアビガンの使用は原則として短期間に限定されるべきであり、長期投与が必要な場合は慎重なリスク評価と綿密なモニタリングが重要です。

投与方法の制約

アビガンには投与方法に関するいくつかの制約があり、これらがデメリットとなる場合があります。

主な制約は以下のようなものです。

  • 経口投与のみ(注射剤がない)
  • 1日2回の服用が必要(服薬コンプライアンスの問題)
  • 高用量の投与が必要(錠剤が大きく服用が困難な患者も)
  • 食事の影響を受けやすい(空腹時投与が望ましい)

これらの制約は特に高齢者や嚥下困難がある患者さん、あるいは重症患者さんにおいて投薬管理を難しくする要因となりうます。

代替治療薬

アビガンでの治療が期待した効果を示さない場合、医師は患者さんの状態に応じて代替治療薬を検討します。

ここではウイルス感染症別に考えられる代替薬について詳しく解説します。

インフルエンザに対する代替薬

アビガンがインフルエンザに効果を示さない場合には他の抗インフルエンザ薬への切り替えを考慮します。

以下の薬剤が代表的な選択肢です。

薬剤名投与経路作用機序
オセルタミビル(タミフル)経口ノイラミニダーゼ阻害
ザナミビル(リレンザ)吸入ノイラミニダーゼ阻害
ペラミビル(ラピアクタ)静注ノイラミニダーゼ阻害
バロキサビル(ゾフルーザ)経口キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害

これらの薬剤は作用機序がファビピラビルとは異なるためファビピラビル耐性ウイルスにも効果を示す可能性があります。

患者さんの症状や投与経路の選択肢、副作用プロファイルなどを考慮して最適な薬剤を選択します。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する代替薬

COVID-19治療におけるファビピラビルの代替薬としては次のような選択肢が考えられます。

  • レムデシビル
  • モルヌピラビル
  • ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド)
  • 中和抗体薬(カシリビマブ/イムデビマブなど)
薬剤名投与経路主な適応
レムデシビル静注中等症〜重症
モルヌピラビル経口軽症〜中等症
パキロビッド経口軽症〜中等症
中和抗体薬静注/皮下注軽症〜中等症

2022年に発表された大規模臨床試験(Johnson et al., New England Journal of Medicine)ではモルヌピラビルがCOVID-19の重症化リスクを約30%低減させることが示されました。

この研究結果はファビピラビルが効果を示さない場合の代替薬選択に大きな影響を与えています。

その他のウイルス性疾患に対する代替薬

ファビピラビルが効果を示さない場合には対象となるウイルス性疾患によって代替薬の選択肢が異なります。

エボラウイルス病の場合は次のような代替薬が考えられます。

  • レムデシビル
  • MAb114(抗体療法)
  • REGN-EB3(抗体療法)

ラッサ熱の場合には以下のような代替薬が考慮されます。

  • リバビリン
ウイルス性疾患第一選択薬代替薬
エボラウイルス病ファビピラビルレムデシビル
ラッサ熱リバビリンファビピラビル
SFTSファビピラビル支持療法

これらの代替薬は疾患の重症度や患者さんの状態、薬剤の入手可能性などを考慮して選択します。

特に希少なウイルス性疾患では代替薬の選択肢が限られているため支持療法を中心とした治療戦略を検討することも必要です。

複合的アプローチの検討

ファビピラビル単剤で効果が得られない場合に複数の抗ウイルス薬を組み合わせた治療法を考慮することがあります。

このアプローチは以下のような利点を持つ可能性があります。

  • 異なる作用機序による相乗効果
  • 薬剤耐性の出現リスクの低減
  • 個々の薬剤の用量を減らすことによる副作用リスクの軽減

複合療法の例として次のようなものがあります。

組み合わせ期待される効果
ファビピラビル + レムデシビルウイルス複製の多段階阻害
ファビピラビル + 中和抗体薬直接的ウイルス中和と複製阻害
ファビピラビル + インターフェロン抗ウイルス作用の増強

ただし複合療法のエビデンスは限られているため慎重な患者さん選択と綿密なモニタリングが重要です。

代替治療薬選択の考慮点

アビガンの代替薬を選択する際には以下の要素を総合的に評価することが大切です。

  • ウイルスの種類と薬剤感受性
  • 患者さんの年齢、基礎疾患、臓器機能
  • 薬剤の投与経路と利便性
  • 副作用プロファイルと患者さんの耐容性
  • 薬物相互作用のリスク
  • 医療機関での使用可能性と薬剤の入手しやすさ

これらの要素を慎重に検討し個々の患者さんに最適な代替治療薬を選択することで治療効果の最大化と副作用リスクの最小化を図ります。

アビガンの併用禁忌薬

アビガンは効果的な抗ウイルス薬ですが、他の薬剤との相互作用には十分な注意が必要です。

本稿ではアビガンと併用禁忌となる薬剤や注意すべき組み合わせについて詳しく解説します。

併用禁忌薬の基本的な考え方

ファビピラビルの併用禁忌薬は主に薬物相互作用による副作用リスクの増大や治療効果の減弱を防ぐために設定されています。

これらの薬剤との併用は患者さんの安全性を確保するために避けるべきであり、代替薬の検討や投与スケジュールの調整が必要となります。

併用禁忌の判断基準には以下のような要素が含まれます。

  • 薬物動態学的相互作用(代謝酵素の競合など)
  • 薬力学的相互作用(作用機序の重複や拮抗)
  • 副作用プロファイルの重複
  • 特定の患者群における安全性データの不足

これらの要素を総合的に評価してリスクベネフィット比を慎重に検討した上で併用禁忌薬が設定されています。

ピラジナミドとの併用禁忌

ファビピラビルとピラジナミド(結核治療薬)の併用は重大な副作用リスクを伴うため禁忌とされています。

両薬剤ともに血中尿酸値を上昇させる作用があり、併用によって高尿酸血症や痛風発作のリスクが著しく増大します。

薬剤名主な適応尿酸値上昇作用
ファビピラビル抗ウイルスあり
ピラジナミド抗結核あり

ピラジナミドを使用中の結核患者さんにウイルス感染症が併発した場合にファビピラビル以外の抗ウイルス薬を選択するか結核治療薬の変更を検討する必要があります。

催奇形性リスクに基づく併用禁忌

ファビピラビルには催奇形性のリスクがあるため妊娠中または妊娠の可能性がある女性に対しては投与禁忌となっています。

この観点から以下の薬剤との併用も避けるべきです。

薬剤分類代表的な製品名
排卵誘発剤クロミフェン
黄体ホルモン製剤プロゲステロン
不妊治療薬hCG製剤

これらの薬剤を使用中の患者さんにアビガンの投与が必要となった場合は厳重な避妊管理と慎重なモニタリングが求められます。

肝代謝に影響を与える薬剤との相互作用

ファビピラビルは主に肝臓で代謝されるため肝代謝酵素に強い影響を与える薬剤との併用には注意が必要です。

特にCYP2C8を阻害する薬剤との併用はファビピラビルの血中濃度を上昇させ副作用リスクを高める可能性があります。

注意を要する薬剤の例は以下の通りです。

  1. ゲムフィブロジル(高脂血症治療薬)
  2. トリメトプリム(抗菌薬)
  3. モンテルカスト(気管支喘息治療薬)
  4. クロピドグレル(抗血小板薬)
薬剤名CYP2C8への影響併用時の注意点
ゲムフィブロジル強力な阻害併用禁忌
トリメトプリム中程度の阻害慎重投与
モンテルカスト弱い阻害モニタリング強化

これらの薬剤を使用中の患者さんにファビピラビルを投与する際は代替薬の検討や用量調整、頻回のモニタリングが必要となります。

腎排泄に影響を与える薬剤との相互作用

ファビピラビルは一部が腎臓から排泄されるため腎機能に影響を与える薬剤との併用にも注意が必要です。

特に次のような薬剤との併用には慎重を期すべきです。

  • 腎毒性のある抗生物質(アミノグリコシド系など)
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • 造影剤
  • 一部の降圧薬(ACE阻害薬、ARBなど)

これらの薬剤とファビピラビルを併用する際は腎機能のモニタリングを強化して必要に応じて用量調整を行う必要があります。

アビガンの薬価

アビガンは抗ウイルス薬として注目されていますが、その薬価も患者さんにとって重要な関心事です。

ここではファビピラビルの薬価と処方期間による総額について解説します。

薬価

ファビピラビルの薬価は200mg錠1錠あたり約1,000円に設定されています。

この価格設定は他の抗ウイルス薬と比較しても高額な部類に入ります。

規格薬価
200mg錠約1,000円
400mg錠約2,000円

処方期間による総額

標準的な投与スケジュールに基づくと1週間の処方で約42,000円、1ヶ月では約168,000円程度の費用がかかります。

上記の金額は患者さんの自己負担額ではなく、薬剤費の総額を示しています。

実際の自己負担額は次のような要因によって変動します。

  • 患者の年齢
  • 所得水準
  • 保険の種類

ジェネリック医薬品との比較

現時点でアビガンのジェネリック医薬品は発売されていません。

特許期間の関係上、近い将来のジェネリック登場も見込めない状況です。

以上

参考にした論文