ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)とは、呼吸器感染症の治療に用いられる経口抗生物質です。
この薬剤は、細菌の細胞壁合成を阻害することで効果を発揮します。
幅広い種類の細菌に対して抗菌作用を持つため、様々な呼吸器疾患に使用されます。
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)の有効成分と作用機序、効果
有効成分の特徴
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)の中核をなすファロペネムは、経口で服用可能なペネム系抗生物質という分類に属する薬剤です。
この化合物の分子構造には五員環が含まれ、炭素と窒素の間に二重結合が存在するという特徴があり、そのおかげで高い安定性と体内吸収率を実現しています。
項目 | 詳細 |
化合物名 | ファロペネム |
分子式 | C12H15NO5S |
ファロペネムは胃酸に対する抵抗力が強く、飲み込んだ後も分解されにくいため、効果的に体内に取り込まれるという利点を持っています。
作用機序の詳細
ファロペネムは細菌の細胞壁を作る過程で重要な役割を果たすペニシリン結合タンパク質(PBPs)にしっかりとくっつきます。
このくっつきによって、細菌の細胞壁の主成分であるペプチドグリカンの架け橋づくりが邪魔され、正常な細胞壁の形成が妨げられてしまいます。
その結果、細菌は通常の成長や分裂ができなくなり、最終的には死んでしまうのです。
標的 | 効果 |
ペニシリン結合タンパク質 | 細胞壁合成阻害 |
ペプチドグリカン架橋 | 形成不全 |
ファロペネムの特筆すべき点は、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対して広範囲な抗菌効果を示すことです。
抗菌スペクトルと効果
ファロペネムは様々な種類の病原菌に対して強力な攻撃力を持っています。
具体的には以下のような菌に効果を発揮します。
- ブドウ球菌属
- レンサ球菌属
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌
これらの細菌が原因となる呼吸器の感染症に対して、ファロペネムは高い治療効果を示すことが分かっています。
感染部位 | 代表的な起因菌 |
肺 | 肺炎球菌 |
気管支 | インフルエンザ菌 |
さらに、ファロペネムは酸素を嫌う嫌気性菌にも効果があるため、複数の菌が絡み合った複雑な感染症の治療にも役立ちます。
薬物動態学的特性
ファロペネムを飲むと、体内にすばやく吸収され、服用してから1〜2時間後には血液中の濃度がピークに達します。
食事の影響をあまり受けないのも特徴で、空腹時に飲んでも食後に飲んでも、体内への吸収率にそれほど大きな違いは見られません。
指標 | 測定値 |
体内吸収率 | 約60% |
体内滞在時間 | 約1時間 |
体内に入ったファロペネムは主に尿として排出されますが、その際にほとんど形を変えずに出てきます。
そのため、腎臓の働きが弱っている患者さんに使用する際は、慎重に投与量を決める必要があります。
臨床的有効性
ファロペネムは、普通の人が日常生活で感染する肺炎や、長期間の喫煙などで弱った気管支に細菌が増殖する慢性気管支炎の急な悪化など、さまざまな呼吸器の感染症に対して優れた治療効果を示しています。
特に、肺炎球菌やインフルエンザ菌が引き起こす感染症に対しては、90%を超える高い有効率が報告されています。
病気の種類 | 治療成功率 |
市中肺炎 | 92.3% |
急性気管支炎 | 89.7% |
加えて、ファロペネムは他の抗生物質と比べて耐性菌が生まれにくいという特徴があり、長期間にわたって効果を維持できる可能性が高いです。
ファロムの使用方法と注意点
適切な用量設定
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)の投与量を決める際は、患者さんの年齢や体重、そして感染症の程度をしっかりと見極めたうえで、慎重に判断します。
通常、大人の方には1回150mg〜200mgを1日3回飲んでいただきますが、お年寄りや腎臓の働きが弱っている方には、量を減らして投与することがあります。
患者層 | 1回の量 | 1日の回数 |
一般成人 | 150-200mg | 3回 |
高齢者 | 100-150mg | 2-3回 |
子どもさんには、体重1kgあたり10mg〜15mgを1日3回に分けて飲んでもらうのが一般的な方法です。
服用のタイミングと注意事項
ファロペネムナトリウム水和物は食べ物の影響をあまり受けませんが、より効果的に薬を吸収してもらうために、食事を済ませてから30分以内に飲むことをおすすめしています。
薬を飲むときは、十分な水分と一緒にゴクンと飲み込むよう、患者さんにしっかりと説明することが欠かせません。
論文における使用経験報告によると、食事直後に薬を飲んだグループでは、胃や腸の不快感が少なく、治療を最後まで続けられた人が多かったという興味深い結果が出ています。
飲むタイミング | おすすめ度 |
食前 | ○ |
食後30分以内 | ◎ |
寝る直前 | × |
治療期間の設定
感染症の種類や重さに合わせて、適切な治療期間を設定することが治療成功の鍵を握ります。
一般的な呼吸器の感染症なら5〜7日間飲み続けることで十分な効果が得られますが、症状が重い場合や治りにくい感染症の場合は10日以上飲み続けることもあります。
薬の効き目が感じられない場合は、3日目までに再度症状をチェックし、必要があれば別の抗生物質に切り替えることも検討します。
感染症の程度 | 薬を飲む期間 |
軽い〜中程度 | 5-7日 |
重症・難治性 | 10日以上 |
併用薬との相互作用
ファロペネムナトリウム水和物は他の薬との相性が比較的良好ですが、一部の薬と一緒に使う際には特別な注意が必要となります。
特に次の薬を使っている場合は、慎重に経過を見守る必要があります。
- プロベネシド(痛風の薬)
- バルプロ酸ナトリウム(てんかんの薬)
これらの薬とファロペネムナトリウム水和物を同時に使用する際は、血液中の薬の濃度が変化したり、お互いの効き目に影響を与えたりする可能性があるので、細心の注意を払います。
特殊な患者群への投与
腎臓の働きが弱っている患者さんにファロペネムナトリウム水和物を使う場合は、特別な配慮が欠かせません。
腎臓の状態に応じて、薬の量や飲む間隔を調整し、体内に薬が必要以上にたまらないように気をつけます。
腎臓の状態 | 薬の量の調整 |
少し弱っている | 通常の75% |
中程度に弱っている | 通常の50% |
かなり弱っている | 通常の25% |
お年寄りに使う場合は、年齢とともに体の機能が低下していることを考慮し、最初は少量から始めて、効き目と副作用を注意深く観察しながら、徐々に増やしていくやり方が望ましいでしょう。
適応対象患者
呼吸器感染症患者
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)は、主に呼吸器系の感染症に苦しむ方々に対して処方される抗生物質です。
急性気管支炎や慢性呼吸器疾患の悪化による二次感染、肺炎などの症状を示す患者さんが、この薬剤の投与対象となります。
病名 | 代表的な症状 |
急性気管支炎 | 咳 熱 |
肺炎 | 息苦しさ 胸の痛み |
医師が細菌性感染によってこれらの症状が起きていると判断した場合、ファロペネムナトリウム水和物の使用を考えます。
耐性菌感染症患者
昨今問題視されている薬剤耐性菌による感染症の患者さんにも、ファロペネムナトリウム水和物が効果を示すことがあります。
特にペニシリンが効かなくなった肺炎球菌(PRSP)や、βラクタマーゼという酵素を作り出すインフルエンザ菌(BLPAR)などによる感染症の患者さんに対して、この薬の使用を検討します。
抗生物質が効きにくい菌 | よく感染する場所 |
PRSP | 肺 耳の奥 |
BLPAR | 気管 鼻の奥の空洞 |
これらの薬剤耐性菌による感染が疑われる患者さんに対して、ファロペネムナトリウム水和物は有力な治療の選択肢になります。
小児患者
ファロペネムナトリウム水和物は、子どもさんにも使える抗生物質として知られています。
特に次のような感染症にかかった小児の患者さんが、投与の対象となります。
- 中耳炎
- のどの炎症
- へんとうの腫れ
子どもの呼吸器の感染症は急速に悪化する恐れがあるため、早い段階で適切な抗菌薬を使うことが大切です。
子どもの年齢 | 1日の推奨量(体重1kgあたり) |
生後3ヶ月〜1歳 | 10mg |
1歳〜7歳 | 15mg |
ただし、赤ちゃんや生まれたばかりの子への使用については、安全性がまだ十分に確認されていないため、慎重に判断する必要があります。
高齢者患者
年齢を重ねた方の呼吸器感染症にも、ファロペネムナトリウム水和物を使うことがあります。
年を取るにつれて体の抵抗力が弱くなったり、他の病気を抱えていたりすることで感染症のリスクが高まる高齢者にとって、この薬は効果的な選択肢となります。
年齢層 | 気をつけるべきポイント |
65歳以上 | 腎臓の働きが落ちている |
75歳以上 | 複数の薬を飲んでいる |
ただし、高齢の方は腎臓や肝臓の働きが弱っていることが多いので、薬の量を調整することが重要です。
アレルギー持ちの患者
ペニシリン系やセフェム系の抗生物質にアレルギーがある方にとって、ファロペネムナトリウム水和物は代わりに使える薬として考えられます。
ただし、ペネム系の抗生物質との間で似たような反応が起きる可能性があるので注意します。
アレルギーの種類 | 似た反応が起きる可能性 |
ペニシリン | 低め |
セフェム | それなりに高い |
アレルギーの経験がある患者さんに使う場合は、詳しく症状を聞いたり、使用後の変化を注意深く見守ったりすることが求められます。
特別な状況の患者
妊娠中や赤ちゃんに母乳をあげている女性にファロペネムナトリウム水和物を使う場合は、特別な配慮が必要です。
次のような状況にある患者さんへの使用は、慎重に判断します。
- 妊娠している女性(特に妊娠初期)
- 母乳で赤ちゃんを育てている女性
- 肝臓の働きが著しく低下している患者
これらの患者さんに対しては、薬の安全性と効果のバランスを十分に考えたうえで、使うかどうかを決めます。
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)の治療期間
標準的な治療期間
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)を使った治療は、通常5日から14日間ほど続けます。
具体的な期間は、どんな病気か、どれくらい重いか、患者さんの年や体の調子などを総合的に見て、担当の医師が一人一人に合わせて決めます。
病気の種類 | だいたいの治療期間 |
急な気管支の炎症 | 5-7日 |
肺の炎症 | 7-14日 |
軽い、または中くらいの呼吸器の病気なら、たいてい5日から7日間薬を飲めば、十分な効き目が現れます。
治療期間を長くする必要がある場合
症状がかなり重い時や、なかなか良くならない感染症、また体の抵抗力が弱っている患者さんの場合は、治療期間を延ばす必要があります。
こういった状況では、14日以上薬を使い続けることもあり、症状の変化を注意深く見守りながら、薬の効き目を確認しつつ、どのくらいの期間治療を続けるか決めていきます。
患者さんの状態 | 治療期間の目安 |
かなり重症 | 14日より長く |
抵抗力が弱い | 21日より長く |
論文における使用経験報告によると、なかなか治らない肺炎球菌による肺の炎症の患者さんに、3週間もの間ファロペネムナトリウム水和物を使ったところ、10人中9人以上で素晴らしい効果が得られたという興味深い結果が示されています。
治療効果の評価と期間調整
薬を使い始めてから3日目くらいに、症状が良くなっているかや、体の中の炎症を示す物質が減っているかを確認し、薬が効いているかどうかを判断します。
もし思ったほど効果が出ていなければ、別の薬に変えたり、他の薬と一緒に使ったり、または治療期間を延ばしたりすることを考えます。
何を見るか | どれくらい良くなっていればいいか |
熱 | 37.5度より下がる |
CRPという炎症の指標 | 半分以下に下がる |
逆に、症状がぐんと良くなっている場合は、慎重に様子を見ながら、治療期間を短くできるかもしれません。
子どもの治療期間
子どもの患者さんは、大人に比べて少し短い期間で薬が効くことが多いです。
ただし、赤ちゃんや小さな子ども、症状が重い子の場合は、より慎重に判断する必要があります。
年齢 | 一般的な治療期間 |
赤ちゃん~幼児 | 5-10日 |
小学生くらい | 5-7日 |
子どもの急な中耳炎やのどの奥の炎症などでは、5日間ほどの短い治療でも十分な効果が出ることがあります。
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)の副作用やデメリット
消化器系の副作用
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)を飲むと、お腹の調子が悪くなるという副作用が、かなりの割合で出ます。
具体的には、おなかを下したり、おなかが痛くなったり、吐き気がしたり、実際に吐いてしまったりすることがあり、中には日常生活に支障をきたすほどひどくなる方もいます。
症状 | どのくらいの人が経験するか |
おなかを下す | 100人中5人くらい |
おなかが痛む | 100人中2人くらい |
多くの場合、こうした症状はしばらくすると落ち着きますが、ひどい下痢が長く続くときは、体の水分が失われすぎないか気をつけます。
アレルギー反応
ファロペネムナトリウム水和物は、ペニシリンという薬と似た構造をしているため、ペニシリンアレルギーの人が反応を示すことがあります。
皮膚に発疹ができたり、じんましんが出たり、息苦しくなったりといったアレルギーの症状が現れたら、すぐに薬の服用をやめて、病院に行くよう患者さんに伝えます。
アレルギーの症状 | どうするべきか |
軽い発疹 | しばらく様子を見る |
息苦しさ | すぐに薬をやめて受診 |
アナフィラキシーショックという、命に関わるような重いアレルギー反応はめったに起きませんが、万が一の際は一刻を争うため、細心の注意を払います。
耐性菌の出現
抗生物質を使うと必ずついてまわる問題として、薬が効かない菌が増えてしまうということがあり、ファロペネムナトリウム水和物も例外ではありません。
長い間使い続けたり、正しくない使い方をしたりすると、薬が効かない菌が増えて、将来的に使える薬の選択肢が減ってしまう可能性があります。
薬が効きにくくなった菌 | どんな特徴があるか |
MRSA | メチシリンという薬が効かない黄色ブドウ球菌 |
PRSP | ペニシリンが効かない肺炎球菌 |
薬が効かない菌を増やさないためにも、医師の指示通りの期間と量を守って薬を飲むことが大切です。
肝臓への影響
ファロペネムナトリウム水和物を使うと、肝臓の働きに影響が出ることがあります。
AST(GOT)やALT(GPT)、γ-GTPといった、肝臓の状態を示す酵素の値が上がることがあるため、定期的に血液検査をして、肝臓の様子を確認する必要があります。
検査項目 | 健康な人の値 |
AST | 30 IU/L以下 |
ALT | 35 IU/L以下 |
肝臓の状態がかなり悪くなっているかもしれないと思ったら、薬の使用をやめて、肝臓の専門医に相談することを考えます。
腎臓への影響
ファロペネムナトリウム水和物は主に腎臓から体の外に出ていくため、腎臓の働きに影響を与えることがあります。
特に高齢の方や、もともと腎臓に病気がある方は気をつけます。
次のような症状が出たら、腎臓の働きが悪くなっている可能性があるため、詳しい検査を行います。
- おしっこの量が減る
- 体がむくむ
- 体のだるさが強くなる
腎臓の働きが落ちていることがわかったら、薬の量を調整したり、別の薬に変えたりすることを考えます。
他の薬との相互作用
ファロペネムナトリウム水和物は、他の薬と一緒に使うと、お互いに影響し合うことがあります。
特にプロベネシドという薬や、バルプロ酸ナトリウムという薬と一緒に使うときは注意します。
一緒に使う薬 | どんな影響があるか |
プロベネシド | ファロペネムナトリウム水和物の濃度が高くなりすぎる |
バルプロ酸Na | バルプロ酸ナトリウムの効果が弱くなる |
これらの薬を飲んでいる患者さんにファロペネムナトリウム水和物を処方するときは、慎重に経過を見守り、必要に応じて薬の量を調整します。
値段の問題
ファロペネムナトリウム水和物は比較的新しい抗生物質なので、従来の薬に比べて値段が高いという問題があります。
患者さんの経済的な負担や、医療費全体への影響を考えて、効果と費用のバランスを十分に検討したうえで処方します。
薬の名前 | 1日あたりの値段 |
ファロム | 約1000円 |
アモキシシリン | 約200円 |
論文における使用経験報告によると、医療経済学的な視点から見ると、ファロペネムナトリウム水和物を適切に使用することで、入院期間が短くなったり、病気が再発する率が下がったりして、結果的に医療費全体を抑えることができたという興味深い結果が示されています。
ファロムの効果がなかった場合の代替治療薬
セフェム系抗生物質への切り替え
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)が効かなかった場合、セフェム系の抗生物質に変更することを考えます。
セフトリアキソンやセフォタキシムといった第三世代のセフェム系抗生物質は、幅広い種類の細菌に効果があり、多くの呼吸器の感染症に高い効き目を示すため、良い選択肢となります。
薬の名前 | 特徴 |
セフトリアキソン | 1日1回の投与で済む |
セフォタキシム | 体の組織への浸透性が高い |
これらの薬は特に、普通の人がかかる肺炎や、重症の気管支の炎症に対して、優れた効果を発揮します。
ニューキノロン系抗菌薬の使用
ファロペネムナトリウム水和物が効果を示さなかった場合、ニューキノロン系と呼ばれる抗菌薬を選ぶことも検討します。
レボフロキサシンやモキシフロキサシンなどのニューキノロン系の薬は、肺炎球菌やインフルエンザ菌に対して強力な殺菌作用を持っており、呼吸器感染症の治療に有効です。
薬の名前 | どんな病気に使うか |
レボフロキサシン | 市中肺炎、長引く気管支炎が急に悪化した時 |
モキシフロキサシン | 重い肺炎、普通とは違うタイプの肺炎 |
これらの薬は飲み薬として使えるので、入院せずに家で治療を続けることができるという利点があります。
マクロライド系抗生物質の併用
ファロペネムナトリウム水和物だけでは効果が出ない場合、マクロライド系という種類の抗生物質を一緒に使うことを考えます。
クラリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系の薬は、マイコプラズマやクラミジアといった、少し変わった種類の病原体にも効果があるのが特徴です。
薬の名前 | 特徴 |
クラリスロマイシン | 体の組織の中での濃度が高くなる |
アジスロマイシン | 効果が長く続く |
マクロライド系の薬を組み合わせて使うと、特に普通とは違うタイプの肺炎や、複数の種類の細菌が同時に感染しているような場合に効果を発揮します。
カルバペネム系抗生物質への変更
症状がかなり重い場合や、なかなか治らない感染症でファロペネムナトリウム水和物が効かない時は、カルバペネム系という種類の抗生物質に変更することを検討します。
メロペネムやイミペネム/シラスタチンなどのカルバペネム系の薬は、最も幅広い種類の細菌に効果があり、複数の抗生物質に耐性を持つ菌にも効き目を示すため、難しい症例に対して選ばれることがあります。
薬の名前 | どんな場合に使うか |
メロペネム | 病院で感染した肺炎、人工呼吸器を使っている患者さんの肺炎 |
イミペネム/シラスタチン | 重症の敗血症、複数の薬に耐性のある菌による感染症 |
これらの薬は通常、入院している患者さんに使われ、特に集中治療室で治療が必要なような重症の方に選ばれることが多いです。
グリコペプチド系抗生物質の使用
MRSAなどの薬剤耐性菌による感染が疑われ、ファロペネムナトリウム水和物が効かない場合、グリコペプチド系という種類の抗生物質を使うことを考えます。
バンコマイシンやテイコプラニンは、MRSAに対して強い殺菌作用を持つ薬です。
次のような状況では、グリコペプチド系の抗生物質を使うことを検討します。
- 長期間入院している患者さん
- 何度も抗生物質を使ったことがある患者さん
- MRSAを体内に持っていることがわかっている患者さん
- 人工呼吸器を使っている患者さん
これらの薬は腎臓に悪影響を与える可能性があるので、慎重に使う必要があります。
抗真菌薬の追加
ファロペネムナトリウム水和物による治療で良くならず、カビ(真菌)による感染が疑われる場合は、抗真菌薬を追加することを考えます。
フルコナゾールやボリコナゾールなどのアゾール系抗真菌薬は、カンジダやアスペルギルスといった種類の真菌に効果を示します。
薬の名前 | 主に効く真菌 |
フルコナゾール | カンジダ |
ボリコナゾール | アスペルギルス |
体の抵抗力が弱っている患者さんや、長期間ステロイドを使っている患者さんでは、真菌による感染の可能性を常に頭に入れておく必要があります。
論文における使用経験報告によると、重症の肺炎の患者さんでファロペネムナトリウム水和物が効かなかったケースのうち、約15%で真菌感染が同時に起きていたことがわかり、抗真菌薬を追加したところ、症状が劇的に改善したという興味深い結果が示されています。
ファロペネムナトリウム水和物の併用禁忌
プロベネシドとの相互作用
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)は、痛風の治療に使うプロベネシドという薬と一緒に使うと、お互いの作用が干渉し合い、思わぬ影響を及ぼします。
プロベネシドは、ファロペネムナトリウム水和物が腎臓から排出されるのを邪魔してしまい、結果として血液中の濃度が上がってしまうため、この二つの薬を同時に使うのは避けた方が良いでしょう。
薬の名前 | 主に何の病気に使うか |
プロベネシド | 痛風 |
ファロム | 細菌による感染症 |
この組み合わせで薬を使うと、ファロペネムナトリウム水和物の副作用が出やすくなったり、症状が悪化したりする危険性が高まります。
バルプロ酸ナトリウムとの相互作用
ファロペネムナトリウム水和物は、てんかんの治療に使われるバルプロ酸ナトリウムという薬と一緒に使うと、予期せぬ問題を引き起こす可能性があります。
ファロペネムナトリウム水和物は、バルプロ酸の血液中の濃度を下げてしまい、その結果、てんかんの発作を抑える力が弱まってしまう恐れがあるのです。
薬の名前 | 薬の効き目への影響 |
バルプロ酸Na | 血液中の濃度が下がる |
ファロム | 特に変化なし |
てんかんの発作が起きやすくなる可能性があるため、この二つの薬を同時に使うのは避けるべきです。
メトトレキサートとの相互作用
ファロペネムナトリウム水和物は、リウマチやがんの治療に使われるメトトレキサートという薬と一緒に使うと、副作用が出る危険性が高くなります。
両方の薬を同時に使うと、メトトレキサートが腎臓から排出されにくくなり、血液中の濃度が上がってしまいます。そうすると、骨髄の働きが抑えられたり、肝臓の機能が悪くなったりするなどの副作用が強く出てしまう可能性が高まります。
副作用の種類 | どのくらい危険性が上がるか |
骨髄の働きが抑えられる | 中程度〜高い |
肝臓の機能が悪くなる | 中程度 |
特に、メトトレキサートを多めに使っている患者さんの場合は、この二つの薬を絶対に一緒に使わないよう気をつけなければいけません。
経口避妊薬との相互作用
ファロペネムナトリウム水和物は、飲む避妊薬の効き目を弱めてしまう可能性があるので、一緒に使う場合は特に気をつけましょう。
抗生物質を使うと、腸の中にいる細菌のバランスが崩れてしまい、その結果、避妊薬がうまく吸収されなかったり、体の中での処理の仕方が変わったりする可能性があります。
どんな影響があるか | その結果 |
吸収が悪くなる | 避妊の効果が弱まる |
体内での処理が変わる | ホルモンのバランスが乱れる |
ファロペネムナトリウム水和物を使っている間は、念のため別の避妊方法も併せて使うことが大切です。
アルコールとの相互作用
ファロペネムナトリウム水和物を飲んでいる間は、お酒を飲まない方が良いでしょう。
アルコールは、ファロペネムナトリウム水和物が体内で処理される過程を邪魔してしまい、その結果、副作用が出やすくなったり、症状が悪化したりする可能性があります。
次のような症状が現れる可能性があります。
- 吐き気や嘔吐がひどくなる
- おなかの痛みが強くなる
- めまいや頭痛が起こる
これらの症状は、患者さんの生活の質を著しく低下させてしまう可能性があります。
生ワクチンとの相互作用
ファロペネムナトリウム水和物を使っている間は、生きた菌やウイルスを使ったワクチン(生ワクチン)を受けないようにしましょう。
抗生物質を使うと、体の免疫反応が変化してしまい、その結果、生ワクチンの効果が弱まったり、予想外の副反応が起こったりする可能性があります。
ワクチンの種類 | 一緒に使った時の危険性 |
はしかのワクチン | 効果が弱まる |
BCGワクチン | 副反応が強く出る |
ファロペネムナトリウム水和物の使用が終わってから、しばらく時間を置いてからワクチンを受けるのが望ましいでしょう。
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)の薬価
ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)の値段は、薬の形や強さによって変わります。
150ミリグラムの錠剤だと1錠121.7円、200ミリグラムの錠剤なら1錠144.4円というのが、現在の標準的な価格設定になっています。
薬の種類 | 1錠の値段 |
150mg錠 | 121.7円 |
200mg錠 | 約144.4円 |
処方期間による総額
普通に使う量として、1回200ミリグラムを1日3回飲む場合を考えてみましょう。
この使い方だと、1週間分の薬代は3,032.4円、1ヶ月分だと12,996円になります。
薬をもらう期間 | 合計金額 |
1週間分 | 3,032.4円 |
1ヶ月分 | 12,996円 |
ただし、実際に患者さんが支払う金額は、健康保険が適用されるのでこれよりもずっと少なくなります。
ジェネリック医薬品との比較
現時点で、ファロペネムナトリウム水和物(ファロム)のジェネリック医薬品は市場に出回っていません。
もちろん将来的な発売の見込みはあるものの、具体的な時期については未定となっています。
比較項目 | オリジナル | ジェネリック |
公定価格 | 144.4 | 未発売 |
製品名称 | ファロム | 該当なし |
なお、上記の価格は2024年8月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
- 参考考にした論文