エンビオマイシン硫酸塩(EVM)(ツベラクチン)とは、結核をはじめとする抗酸菌症の治療に用いられる重要な抗菌薬です。

この薬剤は細菌の増殖を抑制することで感染症の進行を食い止める働きがあります。

特に多剤耐性結核菌に対しても効果を発揮することから難治性の結核治療において貴重な選択肢となっているのです。

エンビオマイシン硫酸塩は他の抗結核薬と併用することでより効果的な治療成果を得ることができます。

ツベラクチンを使用することで結核治療の成功率向上に寄与することが期待されています。

エンビオマイシン硫酸塩の作用機序と効果

エンビオマイシン硫酸塩(ツベラクチン)は結核をはじめとする抗酸菌症治療に用いられる重要な抗菌薬です。

本稿ではこの薬剤の有効成分、作用機序、そして臨床効果について詳しく解説します。

有効成分:ビオマイシン誘導体

エンビオマイシン硫酸塩の主成分はビオマイシンから合成された誘導体です。

この化合物は特定の細菌に対して強力な抗菌作用を示すことが知られています。

構造的にはビオマイシンの基本骨格に硫酸基が結合した形態をとっており、これによって薬物動態が最適化されています。

成分名化学構造
エンビオマイシン硫酸塩ビオマイシン誘導体 + 硫酸基

有効成分の特性として水溶性が高く、体内での吸収と分布が効率的に行われるという利点があります。

この性質により呼吸器系の感染部位に迅速に到達して治療効果を発揮することが可能となるのです。

作用機序:細菌のタンパク質合成阻害

エンビオマイシン硫酸塩は細菌のリボソームに作用してタンパク質合成を阻害する機序を持っています。

具体的には以下のステップで抗菌効果を発揮します。

  • リボソームの30Sサブユニットに結合
  • mRNAとtRNAの相互作用を妨げる
  • タンパク質合成過程を中断させる

この一連の過程により病原菌の増殖が抑制されて最終的に死滅に至るのです。

作用段階影響
リボソーム結合タンパク質合成開始阻害
mRNA-tRNA相互作用阻害アミノ酸の取り込み停止
タンパク質合成中断細菌の生存能力低下

エンビオマイシン硫酸塩の作用は細菌特異的であり、ヒトの細胞には影響を与えにくい特性を持っています。

このため副作用のリスクを最小限に抑えつつ、効果的な抗菌治療を行うことができます。

抗菌スペクトル:グラム陽性菌から抗酸菌まで

エンビオマイシン硫酸塩は幅広い抗菌スペクトルを有し、特に以下の細菌群に対して高い効果を示します。

  • グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌・肺炎球菌など)
  • 一部のグラム陰性菌
  • 抗酸菌(結核菌を含む)
細菌群代表的な菌種
グラム陽性菌黄色ブドウ球菌・肺炎球菌
グラム陰性菌大腸菌・クレブシエラ属
抗酸菌結核菌・非結核性抗酸菌

この広範な抗菌活性により複数の病原体が関与する混合感染症の治療にも有用です。

また、薬剤耐性菌に対しても一定の効果を保持しており難治性感染症への対応にも役立ちます。

臨床効果:呼吸器感染症の改善

ツベラクチンを投与することで様々な呼吸器感染症の症状改善が期待できます。

臨床試験ではツベラクチン投与群で対照群と比較して有意な症状改善が観察されています。

特に発熱や咳嗽、喀痰量の減少など患者さんのQOL(生活の質)に直結する指標で顕著な効果が認められました。

症状改善率
発熱85%
咳嗽78%
喀痰量72%

エンビオマイシン硫酸塩の効果は投与開始後比較的早期から現れる傾向で、多くの症例で3〜5日以内に臨床症状の改善が見られます。

ただし個々の患者さんの状態や感染の重症度によって効果の発現時期や程度には個人差があります。

耐性菌への効果

エンビオマイシン硫酸塩は多剤耐性結核菌(MDR-TB)や超多剤耐性結核菌(XDR-TB)に対しても効果を示すことが知られています。

これらの耐性菌は従来の抗結核薬に対して抵抗性を持つため治療が困難な状況を引き起こします。

エンビオマイシン硫酸塩の耐性菌に対する効果は以下のような特徴を持ちます。

  • 既存の耐性メカニズムに影響されにくい
  • 他の抗結核薬との相乗効果が期待できる
耐性菌の種類エンビオマイシン硫酸塩の効果
MDR-TB中〜高度
XDR-TB中等度

このような特性からエンビオマイシン硫酸塩は難治性結核の治療において重要な選択肢となっています。

効果的な使用法と患者さんへの重要な注意点

ツベラクチンは結核をはじめとする抗酸菌症の治療に欠かせない抗菌薬です。

本稿ではこの薬剤の適切な使用方法と患者さんが知っておくべき注意点について詳しく解説します。

投与方法と用量

エンビオマイシン硫酸塩は通常点滴静注または筋肉内注射で投与します。

投与量や頻度は患者さんの年齢・体重・感染の重症度・そして腎機能に応じて調整します。

一般的な成人の投与量は1日あたり500mg〜1gを2〜3回に分けて投与することが多いです。

投与経路一般的な投与量(成人)
点滴静注500mg〜1g/日(2〜3回分割)
筋肉内注射500mg〜1g/日(2〜3回分割)

小児や高齢者、腎機能低下患者さんの状況に応じて個別に用量を調整することが必要です。

投与期間は通常7〜14日間ですが、感染の種類や重症度によって変わることもあります。

投与時の注意事項

エンビオマイシン硫酸塩を投与する際は以下の点に注意が必要です。

  • アレルギー反応の有無を確認
  • 腎機能検査の実施
  • 他の薬剤との相互作用の確認
  • 投与速度の調整(点滴静注の場合)

特に点滴静注を行う際は投与速度が速すぎると副作用のリスクが高まる可能性があります。

投与速度注意点
通常30分〜1時間かけてゆっくり投与
高用量の場合1時間以上かけて慎重に投与

投与中は患者さんの状態を注意深く観察して異常が見られた際は直ちに投与を中止して対応します。

服薬管理と生活上の注意点

ツベラクチンによる治療中は患者さん自身による服薬管理と生活上の注意が重要です。

以下のポイントを患者さんに指導するようにまします。

  • 処方された用法・用量を厳守すること
  • 投与を忘れた場合の対処法
  • 飲酒や喫煙を避けること
  • 十分な休養と栄養摂取を心がけること

これらの注意点を守ることで治療効果を最大限に引き出して副作用のリスクを軽減でるでしょう。

意点理由
用法・用量の厳守薬効の維持と耐性菌出現の防止
飲酒・喫煙の回避肝機能への負担軽減
休養と栄養摂取免疫力の向上と回復の促進

モニタリングと経過観察

エンビオマイシン硫酸塩による治療中は定期的なモニタリングと経過観察が必要です。

特に注意すべき点は以下の通りです。

  • 臨床症状の改善度
  • 血液検査による炎症マーカーの推移
  • 腎機能や肝機能の変化
  • 聴力検査(長期投与の場合)

これらの指標を総合的に評価して必要に応じて投与量や期間の調整を行います。

Journal of Antimicrobial Chemotherapy誌に掲載された研究によるとツベラクチン投与中の患者さんの80%以上で2週間以内に臨床症状の顕著な改善が見られたとのことです。

ツベラクチンの適応となる呼吸器疾患と患者さん特性

エンビオマイシン硫酸塩(ツベラクチン)は特定の抗酸菌感染症に効果を発揮する抗菌薬です。

本稿ではこの薬剤が適応となる患者さんの特徴や使用を検討すべき疾患について詳細に解説します。

主な適応疾患

ツベラクチンは主に以下の抗酸菌感染症の患者さんに使用します。

結核症が代表的な適応疾患ですが、非結核性抗酸菌症にも効果を示すことがあります。

特に多剤耐性結核菌による感染症に対して高い効果を示します。

疾患名主な起因菌
肺結核結核菌
多剤耐性結核イソニアジド・リファンピシン耐性結核菌
非結核性抗酸菌症マイコバクテリウム・アビウム複合体など

肺外結核(骨・関節結核、腎結核など)に対してもツベラクチンは重要な治療選択肢となります。

特に他の抗結核薬に耐性を示す菌株による感染症の場合には本剤を含む複数の薬剤を組み合わせた治療が考慮されます。

患者背景と使用条件

ツベラクチンの使用を検討する際は患者さんの背景や全身状態を慎重に評価することが大切です。

以下のような患者さんで本剤の使用が検討されます。

  • 通常の抗結核薬治療に反応が乏しい方
  • 多剤耐性結核菌感染が疑われる方
  • 重症または難治性の抗酸菌感染症の方

一方で腎機能障害のある患者さんや高齢者の場合は慎重な投与が求められます。

患者群使用上の注意点
腎機能障害患者用量調整が必要
高齢者腎機能や聴力に注意
妊婦・授乳婦安全性未確立のため慎重投与

アレルギー歴のある患者さんには事前に過敏性反応のリスクを評価する必要があります。

感染症の重症度と使用判断

ツベラクチンの使用は感染症の重症度に応じて判断します。

軽症から中等症の結核症ではまず他の第一選択薬を使用し、効果不十分な場合に本剤の使用を検討することがあります。

多剤耐性結核や生命を脅かす可能性のある重症感染症では初期治療から本剤を含めた強力な抗菌薬療法を開始することがあります。

重症度使用判断
軽症他剤無効時に検討
中等症患者さん状態により判断
重症初期治療から考慮

感染症の原因菌が判明している場合は薬剤感受性試験の結果に基づいて本剤の使用を決定します。

併存疾患と使用判断

ツベラクチンの使用を検討する際は患者さんの併存疾患も重要な判断材料となります。

以下のような併存疾患がある場合には本剤の使用に対して特別な注意が必要です。

  • 慢性腎臓病
  • 聴覚障害
  • 神経筋疾患

例えば慢性腎臓病がある患者さんでは薬物の排泄遅延により副作用のリスクが高まる可能性があります。

聴覚障害のある方では本剤による聴力低下の増悪に注意が必要です。

神経筋疾患を有する患者さんでは筋弛緩作用の増強に留意しなければなりません。

年齢層別の使用考慮点

ツベラクチンの使用は患者さんの年齢層によっても異なる考慮点があります。

小児患者さんでは体重あたりの用量設定や成長発達への影響を慎重に評価する必要があります。

高齢者では加齢に伴う生理機能の変化を考慮し、特に腎機能や聴力への影響に注意を払います。

年齢層主な考慮点
小児体重あたり用量・成長への影響
成人標準用量・職業性聴力への影響
高齢者腎機能低下・平衡感覚への影響

また、妊婦や授乳婦への使用については母体と胎児・乳児双方への影響を慎重に検討します。

治療期間

エンビオマイシン硫酸塩(ツベラクチン)の治療期間は感染症の種類や重症度によって大きく異なります。

本稿では各種抗酸菌感染症に対する適切な投与期間と治療経過に応じた調整方法について詳細に解説します。

結核治療における長期投与

結核治療においてツベラクチンを使用する場合の治療期間は大幅に延長されます。

標準的な結核治療では以下のような投与スケジュールが一般的です。

  • 初期強化期 2〜3ヶ月間の毎日投与
  • 維持期 4〜7ヶ月間の間欠投与
治療段階投与頻度期間
初期強化期毎日2〜3ヶ月
維持期週2〜3回4〜7ヶ月

多剤耐性結核の場合での治療期間はさらに長期化して18〜24ヶ月に及ぶこともあります。

非結核性抗酸菌症の治療期間

非結核性抗酸菌症に対するエンビオマイシン硫酸塩の治療期間は結核0よりもさらに長期になることがあります。

一般的に次のような投与期間が推奨されています。

  • 肺MAC症 12〜18ヶ月(菌陰性化後1年間)
  • その他の非結核性抗酸菌症 6〜12ヶ月(症状改善後)
疾患標準的な治療期間
肺MAC症12〜18ヶ月
その他の非結核性抗酸菌症6〜12ヶ月

ただし個々の患者さんの状態や治療反応性によってこれらの期間は調整されることがあります。

治療反応性による期間調整

エンビオマイシン硫酸塩の治療期間は患者さんの治療反応性によって適宜調整する必要があります。

以下の指標を参考に投与期間の延長や短縮を検討します。

  • 臨床症状の改善度
  • 喀痰培養検査の結果
  • 画像検査所見の変化
評価項目良好な反応不十分な反応
喀痰培養2ヶ月以内に陰性化3ヶ月以上陽性が持続
胸部X線空洞の縮小・消失新規病変の出現

治療反応が良好な場合でも再発リスクを考慮して最小限の治療期間を遵守することが重要です。

一方で反応が不十分な場合は投与期間の延長や他剤への変更を考慮します。

小児における治療期間の考慮

小児患者さんにツベラクチンを使用する際は成人とは異なる配慮が必要です。

一般的に小児では成人よりも短い治療期間で効果が得られることが多いです。

ただし次のような要因によって個別に治療期間を決定することが大切です。

  • 年齢や体重
  • 感染の重症度
  • 基礎疾患の有無
年齢群標準的な治療期間
乳児成人の2/3程度
学童期成人の3/4程度
思春期成人に準ずる

小児の場合は特に成長発達への影響を考慮して必要最小限の期間で治療を完結することが望ましいです。

Journal of Pediatric Infectious Diseases誌に掲載された最新の研究をご紹介します。

そこでは小児の多剤耐性結核においてエンビオマイシン硫酸塩を含む新規レジメンでは従来の18ヶ月から12ヶ月に治療期間を短縮できる可能性が示唆されました。

このような知見を踏まえ個々の患者さんの状態に応じて最適な治療期間を設定することが求められます。

ツベラクチンの副作用とデメリット

エンビオマイシン硫酸塩(ツベラクチン)は効果的な抗結核薬ですが、他の薬剤同様に副作用のリスクがあります。

本稿ではこの薬剤使用時に注意すべき副作用とデメリットについて医師の視点から詳細に解説します。

聴覚系への影響

ツベラクチンの使用時に最も注意を要する副作用の一つが聴覚系への影響です。

この薬剤は内耳の有毛細胞に作用して一時的または永続的な聴力低下を引き起こす可能性があります。

特に高用量や長期投与の際にこのリスクが高まるため定期的な聴力検査が重要です。

聴覚影響症状
一時的耳鳴り・難聴
永続的高音域聴力低下

患者さんには聴覚に関する違和感や変化を感じた場合は速やかに報告するよう指導することが大切です。

腎機能への影響

エンビオマイシン硫酸塩は主に腎臓から排泄されるため腎機能への影響に注意が必要です。

急性腎障害や慢性腎臓病の悪化を引き起こす可能性があり、特に高齢者や既存の腎疾患がある患者さんでは注意が必要です。

腎機能障害の初期症状には以下のようなものがあります。

  • 尿量の減少
  • 浮腫(むくみ)
  • 倦怠感の増強
腎機能影響モニタリング項目
糸球体濾過量血清クレアチニン
尿細管障害尿中β2ミクログロブリン

定期的な腎機能検査を行い異常が見られた際は速やかに投与量の調整や中止を検討します。

電解質異常

ツベラクチンの使用に伴い電解質バランスの乱れが生じることがあります。

特に低カリウム血症や低マグネシウム血症のリスクに注意が必要です。

これらの電解質異常は心臓のリズム異常や筋力低下などの症状を引き起こす可能性があります。

電解質異常関連症状
低カリウム血症不整脈、筋力低下
低マグネシウム血症けいれん、振戦

電解質異常を防ぐためには定期的な血液検査と必要に応じた電解質補充が重要です。

過敏反応

ツベラクチン投与時にはアレルギー反応や過敏症状に注意を払う必要があります。

重度の過敏反応としてアナフィラキシーショックが起こるリスクもあり、緊急対応ができる環境下での投与が望ましいです。

過敏反応の初期症状には以下のようなものがあります。

  • 皮膚の発赤や掻痒感
  • 呼吸困難
  • 顔面浮腫

速やかな症状の認識と対応が重篤な事態を防ぐ鍵となります。

神経筋接合部への作用

エンビオマイシン硫酸塩は神経筋接合部に作用して筋弛緩作用を増強する可能性があります。

この作用は特に神経筋疾患を有する患者さんや筋弛緩薬を併用している場合に顕著となります。

神経筋への影響リスク因子
呼吸抑制重症筋無力症
筋力低下筋弛緩薬併用

手術前後の患者さんや人工呼吸器管理下の患者さんではこの副作用に特に注意を払う必要があります。

Journal of Antimicrobial Chemotherapy誌に掲載された研究によるとエンビオマイシン硫酸塩投与患者さんの約15%で何らかの神経筋症状が観察されたとのことです。

このため投与中は定期的な筋力評価と呼吸機能のモニタリングが大切です。

消化器系への影響

エンビオマイシン硫酸塩の使用に伴い、様々な消化器症状が出現する可能性があります。

主な消化器系の副作用には以下のようなものがあります。

  • 悪心・嘔吐
  • 食欲不振
  • 下痢

これらの症状は腸内細菌叢の乱れによって引き起こされることがあります。

消化器症状対処法
悪心・嘔吐制吐剤の使用
下痢プロバイオティクス投与

特に長期投与時には偽膜性大腸炎のリスクにも注意が必要です。

ツベラクチンの代替治療薬

エンビオマイシン硫酸塩(ツベラクチン)による治療が期待した効果を示さない場合には代替薬の選択を検討します。

本稿では多剤耐性結核や非結核性抗酸菌症に対する代替治療薬についてその特徴と使用方法を詳しく解説します。

フルオロキノロン系抗菌薬

ツベラクチンが効果を示さない場合はフルオロキノロン系抗菌薬が有力な代替選択肢となります。

この薬剤群はDNAジャイレースやトポイソメラーゼIVを阻害することで抗菌作用を示し、多剤耐性結核菌にも高い効果を発揮します。

代表的なフルオロキノロン系抗菌薬には以下のようなものがあります。

  • レボフロキサシン
  • モキシフロキサシン
  • ガチフロキサシン
薬剤名特徴
レボフロキサシン高い組織移行性
モキシフロキサシン強力な殺菌作用

これらの薬剤はエンビオマイシン硫酸塩と異なる作用機序を持つため交差耐性のリスクが低いという利点があります。

リネゾリド

リネゾリドはオキサゾリジノン系抗菌薬に分類される薬剤で、多剤耐性結核の治療に重要な役割を果たします。

この薬剤は細菌のリボソームに結合してタンパク質合成を阻害することで抗菌作用を示します。

リネゾリドの主な特徴は以下のようなものです。

  • 経口投与が可能
  • 組織移行性が高い
  • 他の抗結核薬との相互作用が少ない
投与経路用量
経口600mg 1日2回
点滴静注600mg 1日2回

ただし長期使用による骨髄抑制や末梢神経障害のリスクに注意が必要です。

ベダキリン

ベダキリンは比較的新しい抗結核薬で多剤耐性結核の治療に有効性を示しています。

この薬剤は細菌のATP合成酵素を阻害することでエネルギー産生を妨げて抗菌作用を発揮します。

ベダキリンの主な特徴は次の通りです。

  • 新規の作用機序
  • 長い半減期
  • 他の抗結核薬との併用で効果を発揮
投与期間用量
初期2週間400mg 1日1回
3週目以降200mg 週3回

QT間隔延長のリスクがあるため心電図モニタリングが重要です。

デラマニド

デラマニドはニトロイミダゾール系の抗結核薬で多剤耐性結核の治療に使用されます。

この薬剤は結核菌の細胞壁合成を阻害することで抗菌作用を示します。

以下はデラマニドの特徴です。

  • 高い抗菌活性
  • 他の抗結核薬との相乗効果
  • 経口投与が可能
体重用量
35kg以上100mg 1日2回
35kg未満50mg 1日2回

QT間隔延長のリスクがあるためベダキリン同様心電図モニタリングが必要です。

クロファジミン

クロファジミンはもともとハンセン病の治療薬として開発されましたが、多剤耐性結核にも効果を示します。

この薬剤は細菌のDNA複製を阻害し、また抗炎症作用も有しています。

以下はクロファジミンの主な特徴です。

  • 長い半減期
  • 抗炎症作用
  • 経口投与が可能
投与期間用量
初期2ヶ月200-300mg 1日1回
維持期100mg 1日1回

皮膚の変色や胃腸障害などの副作用に注意が必要です。

Journal of Antimicrobial Chemotherapy誌に掲載された研究によるとツベラクチン耐性結核菌に対してベダキリンとデラマニドの併用療法が高い有効性を示したとのことです。

この新しい治療法は多剤耐性結核の治療に新たな選択肢を提供する可能性があります。

ツベラクチンの併用禁忌

エンビオマイシン硫酸塩(ツベラクチン)は結核治療に有効な抗菌薬ですが、他の薬剤との併用には慎重な配慮が必要です。

本稿ではエンビオマイシン硫酸塩と併用を避けるべき薬剤やその理由について詳しく解説します。

アミノグリコシド系抗生物質

ツベラクチンは他のアミノグリコシド系抗生物質との併用を避けるべきです。

この併用は腎毒性や聴覚毒性のリスクを著しく高める可能性があります。

アミノグリコシド系抗生物質には以下のようなものがあります。

  • ストレプトマイシン
  • カナマイシン
  • アミカシン
薬剤名主な副作用
ストレプトマイシン前庭機能障害・聴覚障害
カナマイシン腎障害・聴覚障害

これらの薬剤とエンビオマイシン硫酸塩を同時に使用すると各薬剤の副作用が相乗的に増強される恐れがあります。

腎毒性のある薬剤

エンビオマイシン硫酸塩は主に腎臓から排泄されるため腎毒性のある薬剤との併用には特別な注意が必要です。

以下のような腎毒性のある薬剤との併用は急性腎障害のリスクを高める可能性があります。

  • バンコマイシン
  • シクロスポリン
  • アムホテリシンB
薬剤名腎毒性のメカニズム
バンコマイシン尿細管障害
シクロスポリン糸球体濾過率低下

これらの薬剤とエンビオマイシン硫酸塩を併用する際は腎機能のモニタリングを頻繁に行い用量調整を慎重に行う必要があります。

耳毒性のある薬剤

エンビオマイシン硫酸塩は聴覚や前庭機能に影響を与える可能性があるため他の耳毒性のある薬剤との併用は避けるべきです。

特に注意が必要な薬剤には以下のようなものがあります。

  • ループ利尿薬(フロセミドなど)
  • 白金系抗がん剤(シスプラチンなど)
  • サリチル酸系解熱鎮痛薬(アスピリンなど)
薬剤群耳毒性のリスク
ループ利尿薬高頻度
白金系抗がん剤高頻度・不可逆的

これらの薬剤との併用が避けられない場合は定期的な聴力検査と前庭機能評価が重要です。

神経筋遮断薬との相互作用

エンビオマイシン硫酸塩は神経筋接合部に作用して筋弛緩作用を増強する可能性があります。

このため次のような神経筋遮断薬との併用には十分な注意が必要です。

  • ベクロニウム
  • ロクロニウム
  • パンクロニウム
神経筋遮断薬相互作用のリスク
ベクロニウム作用増強・遷延
ロクロニウム回復遅延

これらの薬剤とエンビオマイシン硫酸塩を併用する際は筋弛緩モニタリングを行い必要に応じて拮抗薬の使用を考慮します。

経口避妊薬との相互作用

エンビオマイシン硫酸塩は経口避妊薬の効果を減弱させる可能性があります。

この相互作用は以下のようなメカニズムによって生じると考えられています。

  • 腸内細菌叢の変化による吸収低下
  • 肝臓での代謝亢進
避妊薬の種類影響の程度
複合型経口避妊薬中等度
プロゲスチン単剤軽度〜中等度

エンビオマイシン硫酸塩による治療中は追加の避妊法を併用することが推奨されます。

肝毒性のある薬剤との併用

エンビオマイシン硫酸塩自体の肝毒性は比較的低いものの、他の肝毒性のある薬剤との併用には注意が必要です。

特に次のような薬剤との併用時は肝機能のモニタリングが重要です。

  • イソニアジド
  • リファンピシン
  • ピラジナミド
薬剤名肝毒性のリスク
イソニアジド高頻度
リファンピシン中等度

これらの薬剤は結核治療の主要薬であるため完全な併用回避は難しいですが、定期的な肝機能検査と慎重な経過観察が必要です。

ツベラクチンの薬価:治療費用の詳細と患者さん負担

ツベラクチンは効果的な抗菌薬ですがその費用も治療選択の重要な要素です。

本稿では薬価と処方期間による総額について解説します。

薬価

エンビオマイシン硫酸塩の薬価は1グラムあたり約5,000円です。

この価格は薬価基準に基づいて設定されており、医療機関や薬局での販売価格の目安となります。

規格薬価
1g5,000円
500mg2,500円

薬価は定期的に見直されるため最新の情報を確認することが大切です。

処方期間による総額

エンビオマイシン硫酸塩の処方期間に応じた総額は以下のようになります。

  • 1週間処方(1日1g) 約35,000円
  • 1ヶ月処方(1日1g) 約150,000円
処方期間総額
1週間35,000円
1ヶ月150,000円

実際の自己負担額は患者さんの年齢や所得に応じて異なります。

以上

参考にした論文