ドキソルビシン塩酸塩(DXR)(アドリアシン)とは、がん治療において重要な役割を果たす抗腫瘍薬の一つです。

この薬剤は主に乳癌や肺癌、骨肉腫などの固形腫瘍、そして白血病やリンパ腫といった血液がんの治療に用いられます。

ドキソルビシン塩酸塩はアントラサイクリン系と呼ばれる薬剤群に属し、がん細胞のDNAに作用することでその増殖を抑制します。

医療現場ではこの薬剤の特性を理解して患者さんの状態に応じて慎重に使用することが求められます。

アドリアシン注用50の添付文書 - 医薬情報QLifePro
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有効成分・作用機序・効果を深く理解する

ドキソルビシン塩酸塩の主成分

ドキソルビシン塩酸塩(アドリアシン)の有効成分は抗がん活性を持つアントラサイクリン系抗生物質です。

この化合物は放線菌の一種であるストレプトマイセス・ペウセティウス・バリエティウス・カエシウスから抽出され精製された赤色の結晶性粉末です。

化学構造はテトラサイクリン骨格を持ち、分子量は579.98となっています。

特性詳細
化学式C27H29NO11・HCl
分子量579.98
赤色
形状結晶性粉末

ドキソルビシンの作用機序

ドキソルビシン塩酸塩は複数の機序でがん細胞に対して抗腫瘍効果を発揮します。

主な作用としてDNAへのインターカレーションがあり、細胞のDNA複製や転写を阻害します。

さらにトポイソメラーゼIIという酵素の働きを妨げてDNA二重鎖切断を引き起こし、アポトーシスを誘導します。

加えて活性酸素種の産生を促進することでがん細胞にダメージを与えます。

これらの複合的な作用により強力な抗腫瘍効果を示すのがドキソルビシン塩酸塩の特徴です。

作用機序効果
DNAインターカレーションDNA複製・転写阻害
トポイソメラーゼII阻害DNA二重鎖切断誘発
活性酸素種産生細胞障害作用

ドキソルビシンの抗がん効果

ドキソルビシン塩酸塩は幅広い種類のがんに対して効果を発揮します。

特に乳がんや骨軟部肉腫などの固形がん、白血病やリンパ腫といった血液がんの治療に重要な役割を果たします。

固形がんにおいてはアントラサイクリン系薬剤を含む多剤併用療法が標準的な治療法として確立しています。

血液がんでは寛解導入療法や地固め療法の中核を担う薬剤として使用されます。

  • 乳がん
  • 骨軟部肉腫
  • 卵巣がん
  • 小細胞肺がん
  • 急性白血病
  • 悪性リンパ腫

投与方法と薬物動態

ドキソルビシン塩酸塩は通常点滴静注により投与されます。

体内に入ったドキソルビシンは速やかに組織へ分布し、特に肝臓や脾臓などに高濃度で蓄積します。

血中半減期は約30時間と比較的長く持続的な抗腫瘍効果が期待できます。

代謝は主に肝臓で行われ、グルクロン酸抱合体などに変換された後に胆汁中に排泄されます。

項目特徴
投与経路静脈内投与
分布肝臓・脾臓に高濃度
半減期約30時間
代謝肝臓でのグルクロン酸抱合

ドキソルビシンの臨床的意義

ドキソルビシン塩酸塩は40年以上にわたり臨床で使用されてきた実績ある抗がん剤です。

その強力な抗腫瘍効果と幅広い適応により現在も多くのがん治療プロトコルにおいて中心的な役割を果たしています。

ただ一方では副作用管理が必要なため慎重な投与計画と経過観察が求められます。

近年はリポソーム製剤や抗体薬物複合体など新しい製剤化技術を応用した改良型ドキソルビシンも開発されています。

これらの新規製剤は従来のドキソルビシンの欠点を補いつつ抗腫瘍効果を最大限に引き出すことを目指しています。

ドキソルビシン塩酸塩の長所
強力な抗腫瘍効果
幅広い適応
長年の使用実績

ドキソルビシン塩酸塩は現在も進化を続けるがん治療において欠かせない薬剤の一つとして今後も重要な位置を占めると考えられます。

使用方法と注意点

投与経路と用法用量

ドキソルビシン塩酸塩の主な投与経路は静脈内投与です。

通常成人に対しては1日量10〜60mg/m²(体表面積)を1〜2回に分けて静脈内投与します。

投与間隔は3〜4週間おきが一般的ですが、患者さんの状態や治療レジメンにより調整します。

投与経路用量投与間隔
静脈内10〜60mg/m²3〜4週間
  • 単剤投与
  • 他の抗がん剤との併用投与
  • 術前化学療法
  • 術後補助化学療法

投与前の評価と準備

ドキソルビシン塩酸塩投与前には患者さんの全身状態を十分に評価する必要があります。

特に心機能評価が重要で心エコー検査やMUGAスキャンによる左室駆出率の測定を行います。

さらに肝機能腎機能血液学的検査も実施して各臓器の予備能を確認します。

評価項目検査方法
心機能心エコーMUGAスキャン
肝機能血液生化学検査
腎機能血清クレアチニン
骨髄機能血球数算定

投与時の注意点

ドキソルビシン塩酸塩は血管外漏出すると重度の組織障害を引き起こす恐れがあるため末梢静脈からの投与よりも中心静脈ラインの使用が望ましいです。

投与中は頻回な血管確保部位の観察と患者さんの状態確認が大切です。

注意点対策
血管外漏出中心静脈ラインの使用
過敏反応前投薬の検討
心毒性総投与量の管理

患者指導と経過観察

ドキソルビシン塩酸塩投与中は定期的な心機能評価と血液検査が重要です。

患者さんには治療中の注意点や副作用の初期症状について十分に説明し早期発見早期対応につなげます。

長期的なフォローアップも必要で、特に小児期に投与を受けた患者さんでは晩期合併症に注意が必要です。

  • 発熱や感染症状の早期受診
  • 心不全症状の自己観察
  • 定期的な心機能検査の継続

ある医師の臨床経験では乳がん患者さんにドキソルビシン塩酸塩を含む術前化学療法を行い、著明な腫瘍縮小効果が得られたことで乳房温存手術が可能となったケースがありました。

患者さんの喜びと同時に私自身もこの薬剤の有効性を実感した印象深い経験でした。

ドキソルビシン塩酸塩の適応対象となる患者

固形腫瘍に対する適応

ドキソルビシン塩酸塩は幅広い固形腫瘍に対して効果を発揮する抗がん剤です。

特に乳がんや骨軟部肉腫の患者さんにおいて高い有効性を示しますし、卵巣がんや甲状腺がんなどの症例でも使用されることがあります。

がん種主な使用ステージ
乳がん術前・術後補助療法
骨軟部肉腫根治的治療
卵巣がん進行再発例
甲状腺がん放射性ヨード抵抗性

血液がんに対する適応

ドキソルビシン塩酸塩は多くの血液がんの治療においても重要な役割を果たします。

急性骨髄性白血病や悪性リンパ腫の患者さんに対する寛解導入療法や地固め療法で使用します。

また、多発性骨髄腫の治療レジメンに組み込まれることもあります。

血液がん使用目的
急性骨髄性白血病寛解導入
悪性リンパ腫多剤併用療法
多発性骨髄腫難治例
  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • ホジキンリンパ腫
  • バーキットリンパ腫
  • 末梢性T細胞リンパ腫

小児がんにおける適応

ドキソルビシン塩酸塩は小児がんの治療においても大切な薬剤で、神経芽腫や横紋筋肉腫などの小児固形腫瘍に対して使用します。

さらに小児急性リンパ性白血病の一部の症例でも使用することがあります。

小児がん特徴
神経芽腫高リスク群
横紋筋肉腫局所進行例
骨肉腫術前化学療法

進行再発がんにおける適応

ドキソルビシン塩酸塩は進行再発がんの患者さんに対しても使用を検討します。

他の治療法に抵抗性を示した症例や全身状態が良好な再発例が対象となります。

肝細胞がんや胃がんの進行例でも使用されることがあります。

がん種使用条件
肝細胞がん肝動注療法
胃がん他剤無効例
尿路上皮がん再発例
  • 性腺外胚細胞腫瘍
  • 軟部肉腫
  • 悪性中皮腫
  • 原発不明がん

適応外使用の可能性

ドキソルビシン塩酸塩は稀少がんや標準治療が確立していない症例においても使用を検討する可能性があります。

エビデンスは限られますが症例報告や小規模試験で効果が示唆されているがん種もあります。

このような場合は医師の判断と患者さんの同意のもとで慎重に使用を決定します。

がん種エビデンスレベル
副腎皮質がん症例報告
胸腺がん後方視的研究
脳腫瘍第II相試験

治療期間

投与サイクルと標準的な治療期間

ドキソルビシン塩酸塩の投与は通常3〜4週間ごとのサイクルで行います。

標準的な治療期間は4〜6サイクルですが、患者さんの状態や治療目的により変動します。

早期乳がんの術前化学療法では4サイクルが一般的です。

がん種標準的サイクル数
乳がん(術前)4サイクル
悪性リンパ腫6〜8サイクル
軟部肉腫4〜6サイクル
卵巣がん6サイクル

累積投与量による制限

ドキソルビシン塩酸塩は心毒性のリスクがあるため生涯累積投与量に制限があり、一般的に550mg/m²を超えないようにします。

心疾患のリスク因子がある患者さんでは400mg/m²以下に抑えることが推奨されます。

リスク因子推奨上限累積量
なし550mg/m²
高齢者450mg/m²
心疾患既往400mg/m²
胸部放射線治療歴400mg/m²
  • 冠動脈疾患
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 肥満

治療効果に基づく期間調整

ドキソルビシン塩酸塩による治療期間は腫瘍の反応性により調整します。

具体的には画像検査や腫瘍マーカーの推移を確認しながら継続の是非を判断します。

奏効例では予定サイクル数を完遂して効果が不十分な場合は早期に治療変更を検討します。

効果判定対応
完全奏効予定サイクル完遂
部分奏効継続検討
安定個別に判断
進行治療変更

維持療法としての使用

一部の血液がんではドキソルビシン塩酸塩を含む維持療法を行うことがあります。

例えば悪性リンパ腫の寛解例に対して低用量長期投与を行う場合があります。

維持療法投与間隔期間
標準量3ヶ月ごと2年間
低用量毎月1年間
  • 濾胞性リンパ腫
  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • マントル細胞リンパ腫
  • ホジキンリンパ腫

副作用による治療期間の変更

ドキソルビシン塩酸塩の副作用により治療期間の短縮や延長が必要になることがあります。

副作用の詳細は事項でお話ししますが、例えば骨髄抑制が強い場合は投与間隔を延長し心機能低下が見られれば投与を中止します。

反対に肝機能障害のある患者さんでは代謝遅延のため投与間隔を延長することがあります。

副作用対応
好中球減少投与延期
心機能低下中止検討
肝機能障害減量・延期

ある医師の臨床経験では進行乳がん患者さんにドキソルビシン塩酸塩を含む化学療法を6サイクル施行したところ著明な腫瘍縮小が得られ手術可能となりました。

その後10年以上無再発生存を維持している方もおり、ドキソルビシン塩酸塩の治療効果の高さを実感した印象深いケースでした。

ドキソルビシン塩酸塩の副作用とデメリット

心毒性

ドキソルビシン塩酸塩の最も重大な副作用は心毒性です。

急性心毒性と慢性心毒性があり、前者は投与直後に発生する不整脈や心筋炎などを指します。

後者は累積投与量に依存して発症するうっ血性心不全で生涯総投与量が550mg/m²を超えると発症リスクが急激に上昇します。

心毒性の種類特徴
急性心毒性投与直後に発生
慢性心毒性累積投与量依存性
  • 心電図異常
  • 左室駆出率低下
  • 心不全症状
  • 致死的不整脈

骨髄抑制

ドキソルビシン塩酸塩は強力な骨髄抑制作用を有します。

投与後7〜14日目頃に白血球数や血小板数が最も低下し感染症や出血のリスクが高まります。

高齢者や骨髄予備能の低下した患者さんでは特に注意が必要です。

血球種類Nadir時期
白血球投与後10-14日
血小板投与後7-10日
赤血球投与後21-28日

消化器症状

ドキソルビシン塩酸塩による消化器症状は患者さんのQOLに大きな影響を与えます。

悪心・嘔吐は投与直後から数日間持続することがあり、制吐剤の予防投与が標準的です。

口内炎や下痢も高頻度に発現して重症化すると脱水や栄養障害を引き起こす可能性があります。

消化器症状発現時期
悪心 嘔吐投与当日〜数日
口内炎投与後5-10日
下痢投与後3-7日

脱毛

ドキソルビシン塩酸塩による脱毛は高頻度に発現する副作用の一つで投与開始後2〜3週間で始まり完全脱毛に至ることも珍しくありません。

患者さんの精神的負担が大きいため事前の説明とケアが重要です。

脱毛の程度発現率
部分脱毛60-70%
完全脱毛30-40%
  • スカーフやウィッグの紹介
  • 脱毛ケア製品の案内
  • 心理的サポート
  • 脱毛予防法の説明

皮膚障害

ドキソルビシン塩酸塩は様々な皮膚障害を引き起こす可能性があります。

特に血管外漏出による組織壊死は重大な合併症の一つで投与時の十分な注意が必要です。

色素沈着や爪の変色も高頻度に発現して長期間持続することも珍しくありません。

皮膚障害特徴
血管外漏出組織壊死のリスク
色素沈着日光過敏を伴う
爪の変色数ヶ月持続

ある医師の臨床経験では乳がん患者さんにドキソルビシン塩酸塩を含む化学療法を行った際に重度の口内炎を発症したケースがありました。

徹底した口腔ケアと栄養サポートを行うことで治療を完遂でき最終的に寛解に至りました。

この経験から副作用管理の重要性と患者さんの頑張りを実感しました。

代替治療薬

アントラサイクリン系薬剤の代替オプション

ドキソルビシン塩酸塩が効果を示さない状況では同じアントラサイクリン系の薬剤を検討します。

エピルビシンはドキソルビシンの類似体で心毒性がやや軽減されているため代替薬として使用できます。

イダルビシンは主に白血病治療で用いられますが、固形がんへの使用も報告されています。

薬剤名特徴
エピルビシン心毒性軽減
イダルビシン経口投与可能

非アントラサイクリン系の細胞毒性薬

ドキソルビシン耐性例では作用機序の異なる細胞毒性薬への切り替えを考慮します。

タキサン系薬剤(パクリタキセル ドセタキセル)は多くのがん種で有効性が示されています。

また、プラチナ製剤(シスプラチン カルボプラチン)も広く使用される代替オプションです。

薬剤クラス代表的薬剤
タキサン系パクリタキセル
プラチナ系シスプラチン
トポイソメラーゼ阻害薬イリノテカン
代謝拮抗薬ゲムシタビン

分子標的薬への移行

ドキソルビシン治療後の進行例では分子標的薬への切り替えも選択肢となります。

例えばHER2陽性乳がんではトラスツズマブやペルツズマブなどの抗HER2薬を使用します。

EGFR変異陽性肺がんではゲフィチニブやオシメルチニブなどのチロシンキナーゼ阻害薬を考慮します。

がん種標的分子代表的薬剤
乳がんHER2トラスツズマブ
肺がんEGFRオシメルチニブ
大腸がんVEGFベバシズマブ
悪性リンパ腫CD20リツキシマブ
  • ALK阻害薬(アレクチニブ)
  • BRAF阻害薬(ベムラフェニブ)
  • CDK4/6阻害薬(パルボシクリブ)
  • PD-1/PD-L1阻害薬(ペムブロリズマブ)

ホルモン療法への切り替え

ホルモン受容体陽性乳がんや前立腺がんではホルモン療法への移行を検討します。

閉経後乳がんではアロマターゼ阻害薬(レトロゾール アナストロゾール)を使用します。

前立腺がんではLH-RHアゴニスト(リュープロレリン ゴセレリン)や抗アンドロゲン薬(ビカルタミド)を使用します。

がん種ホルモン療法
乳がんタモキシフェン
前立腺がんビカルタミド
子宮体がんメドロキシプロゲステロン

免疫チェックポイント阻害薬

ドキソルビシン耐性例で他の細胞毒性薬も無効な場合には免疫チェックポイント阻害薬を検討します。

ニボルマブやペムブロリズマブなどのPD-1阻害薬は多くのがん種で効果を示しています。

アテゾリズマブやデュルバルマブなどのPD-L1阻害薬も選択肢となります。

薬剤クラス代表的薬剤主な適応がん
抗PD-1抗体ニボルマブ悪性黒色腫 肺がん
抗PD-L1抗体アテゾリズマブ尿路上皮がん 肺がん
抗CTLA-4抗体イピリムマブ悪性黒色腫

ある医師の臨床経験では乳がん患者さんでドキソルビシン耐性を示した症例にパクリタキセルへ切り替えたところ著明な腫瘍縮小が得られました。

その後長期の無増悪生存が得られ、代替薬選択の重要性を実感した印象深いケースでした。

ドキソルビシン塩酸塩の併用禁忌薬

他のアントラサイクリン系薬剤との併用

ドキソルビシン塩酸塩は他のアントラサイクリン系薬剤との併用を避けるべきです。

エピルビシンやダウノルビシンなど同系統の薬剤を同時に使用すると心毒性のリスクが著しく上昇します。

これらの薬剤は累積投与量に応じて心機能障害を引き起こすため併用により許容投与量を超える危険性があるのです。

併用禁忌薬理由
エピルビシン心毒性増強
ダウノルビシン心毒性増強
イダルビシン心毒性増強

特定の分子標的薬との相互作用

ドキソルビシン塩酸塩はいくつかの分子標的薬との併用に注意が必要です。

例えばトラスツズマブ(ハーセプチン)との同時投与は心毒性のリスクを高めるため避けるべきです。

ラパチニブやペルツズマブなどHER2を標的とする薬剤も同様の理由で併用に慎重を期します。

分子標的薬相互作用
トラスツズマブ心毒性増強
ラパチニブ心毒性増強
ペルツズマブ心毒性増強
  • ソラフェニブ
  • スニチニブ
  • パゾパニブ
  • アキシチニブ

特定の抗生物質との相互作用

ドキソルビシン塩酸塩は一部の抗生物質との併用により毒性が増強する恐れがあります。

特にドキソルビシンの代謝に関与するCYP3A4を阻害する薬剤との併用には注意が必要です。

エリスロマイシンやクラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質はドキソルビシンの血中濃度を上昇させる可能性があります。

抗生物質影響
エリスロマイシン血中濃度上昇
クラリスロマイシン血中濃度上昇
ケトコナゾール代謝阻害

放射線療法との併用

ドキソルビシン塩酸塩投与中の放射線療法は組織障害のリスクを高めます。

特に胸部への放射線照射は心毒性を増強する可能性があるため避けるべきです。

肝臓への放射線照射もドキソルビシンの代謝に影響を与え毒性を増強する恐れがあります。

放射線部位リスク
胸部心毒性増強
肝臓代謝遅延
骨髄骨髄抑制増強
  • 縦隔照射
  • 全脳照射
  • 全身照射
  • 骨盤部照射

肝毒性のある薬剤との併用

ドキソルビシン塩酸塩は肝臓で代謝されるため肝毒性のある薬剤との併用に注意が必要です。

メトトレキサートやシクロフォスファミドなどの抗がん剤は肝機能障害を引き起こすリスクがあります。

アセトアミノフェンの大量投与もドキソルビシンの肝代謝に影響を与える可能性があるため注意が必要です。

薬剤影響
メトトレキサート肝毒性増強
シクロフォスファミド肝代謝競合
アセトアミノフェン肝機能低下

ドキソルビシン塩酸塩の薬価

薬価

ドキソルビシン塩酸塩の薬価は規格や製剤によって異なります。

10mg製剤の場合は1,989円、50mg製剤になると6,210円程度という金額です。

規格薬価
10mg1,989円
50mg6,210円

処方期間による総額

通常1回の投与量は50-60mg/m²で3-4週間ごとに投与します。

体表面積1.6m²の患者さんの場合では1回の投与で金額は12,177-14,612.4円ということになります。

多くは3週間ごとのサイクルとなるため、3ヶ月分の治療費となると4回分の投与量になるので、薬代は約48,708-58,449.6円程度です。

処方期間概算総額
1週間12,177-14,612.4円
1ヶ月48,708-58,449.6円

ジェネリック医薬品との比較

ドキソルビシン塩酸塩のジェネリック医薬品も複数存在していて先発品と比較すると50%程度安価になっています。

製剤50mg薬価
先発品6,210円
後発品2,817円
  • 製薬会社による価格差
  • 適応症の違い
  • 製剤の安定性
  • 副作用プロファイル

以上のような点を考慮して患者さんの状態に則した薬剤を選択することが大切です。

なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文