セフタジジム水和物(セフタジジム、モダシン)とは、呼吸器系の感染症に対して強力な効果を発揮する抗生物質の一種です。
この医薬品は、病原菌の細胞壁形成プロセスを妨げることで、有害な微生物の繁殖を効果的に抑制します。
肺炎や気管支炎をはじめとする多様な呼吸器関連の感染症治療において、中心的な役割を果たす重要な薬剤として広く認識されています。
有効成分と効果、作用機序
セフタジジム水和物の核心成分
セフタジジム水和物(セフタジジム)の中核を成す有効成分は、第三世代セファロスポリン系抗生物質のセフタジジムです。
この物質は、幅広い種類の細菌に対して強力な抗菌力を発揮し、呼吸器系の感染症と闘う上で欠かせない存在となっています。
分類項目 | 特性 |
薬剤系統 | セファロスポリン系 |
世代区分 | 第三世代 |
抗菌範囲 | 広域スペクトル |
細菌細胞壁を標的とする作用メカニズム
セフタジジムは、細菌の細胞壁形成過程に干渉することで、その抗菌効果を発揮します。
具体的には、細菌のペプチドグリカン層構築に必須のペニシリン結合タンパク質(PBPs)と呼ばれる酵素群に結合し、それらの機能を阻害することで細胞壁の正常な合成を妨げます。
この一連の過程により、細菌の細胞壁構造が脆弱化し、最終的には細菌の死滅や増殖の抑制へとつながっていきます。
- 細菌細胞壁の主要構成要素であるペプチドグリカン層の形成を阻止
- 細胞壁合成に関与する酵素群、特にペニシリン結合タンパク質(PBPs)の活性を抑制
グラム陰性菌に対する卓越した効力
セフタジジムは、特にグラム陰性菌に対して優れた抗菌活性を示すことが特徴的です。
中でも、緑膿菌を筆頭とする非発酵菌群や、様々な腸内細菌科に属する病原体に対して強力な殺菌効果を発揮することが、数多くの臨床研究を通じて実証されています。
細菌の種類 | 抗菌効果の程度 |
グラム陰性菌 | 顕著 |
グラム陽性菌 | 中程度 |
嫌気性細菌 | 限定的 |
呼吸器感染症への適用範囲
セフタジジムは、肺炎や気管支炎をはじめとする様々な呼吸器感染症の治療に幅広く活用されています。
特筆すべきは、病院内で発症する感染症や、人工呼吸器の使用に関連して生じる肺炎(VAP)などの重篤な感染症に対しても、高い治療効果を示すことが知られています。
感染症の種類 | 治療効果 |
一般的な肺炎 | 有効 |
院内感染性肺炎 | 高い効果 |
人工呼吸器関連肺炎 | 極めて有効 |
βラクタマーゼに対する耐性機構
セフタジジムは、βラクタマーゼと呼ばれる抗生物質分解酵素に対して、比較的高い安定性を有する構造を持っています。
この特性により、一部の薬剤耐性菌に対しても効果を発揮し、難治性の感染症に対する有力な治療選択肢として注目されています。
- 多くの一般的なβラクタマーゼによる分解を受けにくい特性
- 一部の拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌に対しても効果を維持
体内での挙動と分布特性
セフタジジムを静脈内投与すると、速やかに体内へ拡散し、短時間で血中濃度がピークに達します。
また、肺組織への移行性も良好であることから、呼吸器感染症の治療に適した薬物動態プロファイルを有しており、効果的な治療を可能にします。
薬物動態パラメータ | 特徴 |
投与方法 | 静脈内投与 |
血中での半減期 | 約2時間 |
肺組織への移行性 | 非常に良好 |
セフタジジム水和物の投与戦略と患者ケア
投与ルートと用量最適化
セフタジジム水和物(セフタジジム)の投与は、主に静脈内または筋肉内注射によって行われ、個々の患者の状態に応じて柔軟に調整されます。
成人の場合、一般的に1日あたり12グラムを23回に分けて投与しますが、感染の程度や患者の体格、全身状態などを総合的に判断し、最適な投与スケジュールを組み立てることが求められます。
投与経路 | 1日総量 | 分割回数 |
静脈内 | 1~2g | 2~3回 |
筋肉内 | 1~2g | 2~3回 |
投与前のリスク評価
セフタジジムの使用を開始する前に、患者の詳細な病歴聴取と臨床検査が欠かせません。
特に、過去の薬剤アレルギー歴、特にβラクタム系抗生物質に対する過敏症の有無や、現在の腎機能の状態を把握することが、安全かつ効果的な治療を行う上で極めて重要となります。
- 薬剤アレルギーの既往歴の綿密な調査
- 腎機能パラメータの徹底的な評価
腎機能低下症例への対応
腎機能が低下している患者に対しては、セフタジジムの体内蓄積を防ぐため、慎重な用量調整が必要不可欠です。
クレアチニンクリアランスの値に基づいて、投与量や投与間隔を適切に設定することで、治療効果を維持しつつ、副作用のリスクを最小限に抑えることが可能となります。
腎機能障害の程度 | 用量調整比率 | 投与間隔 |
軽度障害 | 75% | 12時間 |
中等度障害 | 50% | 24時間 |
重度障害 | 25% | 24時間 |
他剤との相互作用管理
セフタジジムは比較的相互作用の少ない抗生物質ですが、一部の薬剤との併用には注意が必要です。
例えば、アミノグリコシド系抗生物質との併用では、抗菌効果の増強が期待できる反面、腎毒性が増強する可能性があるため、腎機能のきめ細かなモニタリングが不可欠となります。
併用薬剤 | 相互作用の内容 | 注意すべき点 |
アミノグリコシド | 相乗効果あり | 腎機能の観察強化 |
プロベネシド | 排泄遅延 | 血中濃度上昇 |
治療効果の評価方法
セフタジジムによる治療を開始した後は、臨床症状の推移や炎症マーカーの動向を注意深く観察することが大切です。
通常、投与開始後3~5日程度で症状の改善傾向が見られない場合は、原因菌の薬剤感受性や投与量の妥当性について再検討を行い、必要に応じて治療戦略の見直しを行います。
- 体温変動や白血球数の推移を詳細に記録
- CRPなどの炎症マーカーを定期的に測定し、治療効果を客観的に評価
適切な治療期間の設定
セフタジジムの投与期間は、感染症の種類や重症度によって大きく異なりますが、一般的には7~14日間の投与が行われることが多いです。
感染症の重症度 | 推奨される治療期間 |
軽度~中等度 | 7~10日 |
重症 | 10~14日 |
治療後のフォローアップ戦略
セフタジジムの投与終了後も、一定期間は症状再燃や二次感染のリスクに注意を払う必要があります。
特に慢性呼吸器疾患を有する患者では、投与終了後2~4週間程度は定期的な診察や検査を継続し、感染の再燃や新たな合併症の発生を早期に発見できる体制を整えることが望ましいと考えられます。
フォローアップ項目 | 推奨される頻度 |
症状評価 | 週1回 |
血液検査 | 2週間ごと |
適応対象患者
重症肺炎症例への投与
セフタジジム水和物(セフタジジム)は、特に院内感染や人工呼吸器関連肺炎(VAP)など、重篤な肺炎患者の治療において顕著な効果を発揮します。
多剤耐性菌による感染リスクが高いこれらの患者群に対し、セフタジジムの広域スペクトルと強力な抗菌作用が極めて有効な治療選択肢となります。
肺炎分類 | セフタジジムの効果 |
一般市中肺炎 | 中等度 |
院内発症肺炎 | 高い |
VAP | 極めて高い |
慢性呼吸器疾患急性増悪時の使用
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支拡張症などの慢性呼吸器疾患患者が急性増悪を起こした際、セフタジジムが選択されることが多々あります。
複数の細菌が関与しやすいこれらの症例において、セフタジジムの幅広い抗菌スペクトルが大きな威力を発揮し、患者の症状改善に寄与します。
- COPDの急性悪化期
- 気管支拡張症における感染性増悪
免疫機能低下患者の呼吸器感染症
HIV感染症や造血器腫瘍など、様々な要因で免疫機能が低下した患者の呼吸器感染症治療にセフタジジムが用いられます。
日和見感染のリスクが高く、通常は病原性の低い細菌でも重篤な感染を引き起こす可能性があるため、セフタジジムの使用が積極的に検討されます。
免疫低下の原因 | 感染リスク評価 |
HIV感染 | 高リスク |
血液系悪性腫瘍 | 極めて高リスク |
嚢胞性線維症患者の肺感染コントロール
嚢胞性線維症患者の肺では、慢性的な細菌感染、特に緑膿菌による持続感染が大きな問題となります。
セフタジジムは緑膿菌に対する強力な抗菌効果を持つため、これらの患者の呼吸器感染症管理において中心的な役割を果たし、生活の質の維持に貢献します。
嚢胞性線維症合併症 | セフタジジムの位置づけ |
慢性緑膿菌定着 | 第一選択薬の一角 |
感染急性増悪期 | 高い治療効果 |
薬剤耐性菌感染への対応
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌など、治療に難渋する多剤耐性菌による呼吸器感染症患者にもセフタジジムが使用されます。
これらのケースでは、綿密な感受性試験結果を踏まえ、慎重かつ適切な投与計画が立てられ、患者の予後改善に向けた取り組みがなされます。
- MRSA肺炎への応用
- ESBL産生菌による気道感染への対策
重症敗血症・敗血症性ショックへの対処
呼吸器感染症を発端とする重症敗血症や敗血症性ショックの患者に対し、セフタジジムが初期治療の柱として選択されることがしばしばあります。
この危機的状況下では、迅速な広域抗菌薬投与が生命予後を左右するため、セフタジジムの広域スペクトルと強力な殺菌作用が患者の救命に大きく寄与します。
敗血症重症度 | セフタジジムの役割 |
重症敗血症 | 初期治療の要 |
敗血症性ショック | 救命治療の中核 |
気管支拡張症の慢性感染マネジメント
気管支拡張症患者では、気道内に慢性的な細菌感染が持続し、定期的な抗菌薬介入が求められます。
セフタジジムは、これらの患者の急性増悪時の即効性のある治療や、長期的な慢性感染コントロールにおいて、欠かせない治療オプションの一つとして広く認知されています。
気管支拡張症の病態 | セフタジジム使用目的 |
慢性持続感染 | 間欠的抑制療法 |
急性悪化期 | 集中的治療介入 |
治療期間
セフタジジム水和物の投与期間設計 感染症タイプ別の最適化戦略
標準的な治療期間の基本方針
セフタジジム水和物(セフタジジム)の投与期間は、感染症の性質や重篤度、患者の全身状況などを総合的に考慮して個別に決定されますが、一般的には7日から14日程度の範囲内で設定されることが多いです。
軽度から中等度の感染症では概ね7日から10日間、重症例や難治性感染症に対しては10日から14日間の投与が標準的とされており、症状の推移を見ながら柔軟に調整されます。
感染の程度 | 通常の投与期間 |
軽~中等度 | 7-10日 |
重症 | 10-14日 |
呼吸器感染症における投与期間の調整
肺炎や気管支炎などの呼吸器感染症に対するセフタジジムの投与期間は、原因微生物や患者の背景因子によって大きく異なり、個別化が求められます。
市中肺炎では通常5日から7日間程度で十分とされる一方、院内肺炎や人工呼吸器関連肺炎(VAP)などの重症例では10日から14日間の投与が推奨されることが多く、症状の改善度合いを慎重に評価しながら期間を決定します。
呼吸器感染症の分類 | 推奨投与期間 |
一般的な市中肺炎 | 5-7日 |
院内発症肺炎 | 10-14日 |
VAP | 10-14日 |
慢性呼吸器疾患急性増悪時の投与戦略
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支拡張症などの慢性呼吸器疾患患者が急性増悪を起こした際のセフタジジム投与期間は、症状の改善スピードや重症度に応じて柔軟に設定されます。
多くのケースでは7日から10日間の投与で症状の顕著な改善が得られますが、重症例や難治性の症例では14日間以上の長期投与が必要となる場合もあり、患者の状態を継続的にモニタリングしながら最適な期間を見極めることが重要です。
- 中等度までの増悪 7-10日間の投与で対応
- 重症増悪例 必要に応じて10-14日間以上に延長
免疫不全患者に対する慎重な投与期間設定
HIV感染症や造血器腫瘍などにより免疫機能が低下した患者の呼吸器感染症治療では、通常よりも長期の投与が必要となることが多々あります。
これらの患者群では感染の遷延や再燃のリスクが高いため、14日間以上の投与が検討されることが一般的で、症例によっては3週間から4週間に及ぶ長期投与が行われることもあり、慎重な経過観察と投与期間の調整が求められます。
免疫低下の原因 | 想定される投与期間 |
HIV感染 | 14-21日 |
血液系悪性腫瘍 | 14-28日 |
治療効果の継続的評価による期間最適化
セフタジジムの投与期間は、臨床症状や各種検査所見の改善傾向を綿密に評価しながら、適宜調整されていきます。
発熱の消失や白血球数の正常化、CRP値の低下などの客観的指標を総合的に判断し、必要に応じて当初の予定から投与期間を延長したり、逆に早期終了を検討したりと、柔軟な対応が行われます。
評価項目 | 改善の目安 |
体温 | 37.5℃未満 |
白血球数 | 4000-9000/μL |
CRP値 | 0.3mg/dL未満 |
耐性菌出現リスクを考慮した投与期間の最適化
セフタジジムの長期投与は薬剤耐性菌出現のリスクを高める可能性があるため、必要最小限の治療期間で終了することが望ましいとされています。
一方で、不十分な投与期間は感染の再燃や難治化につながるリスクもあるため、個々の患者の状態を十分に評価し、最適な投与期間を慎重に見極めることが求められ、常に耐性菌出現と再燃のリスクのバランスを考慮しながら投与期間を決定していく必要があります。
- 耐性菌出現リスク上昇 14日以上の長期投与で懸念
- 再燃リスク増大 5日未満の短期投与で注意
臨床経験からの洞察
私が担当した症例で、重症肺炎を呈した80歳代の男性患者にセフタジジムを14日間投与した経験があります。
この症例では、治療開始後10日目には臨床症状と炎症マーカーが劇的に改善し、当初の予定よりも早期に投与を終了することができました。
この経験を通じて、個々の患者の治療反応性を注意深く観察し、柔軟に治療期間を調整することの重要性を改めて認識し、以後の診療に活かしています。
治療経過 | 患者の状態 |
投与開始時 | 高熱、著明な白血球増多 |
10日目 | 解熱、白血球数正常化 |
14日目 | 完全寛解、退院準備 |
副作用・デメリット
消化管への悪影響
セフタジジム水和物(セフタジジム)の投与に伴い、消化器系の不快な症状が比較的高頻度で出現することが臨床現場で観察されています。
患者の生活の質を著しく低下させる要因となりうる悪心、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が現れるため、投薬中は患者の状態を綿密に観察し、必要に応じて速やかに対処することが求められます。
消化器症状 | 発症率 |
吐き気・嘔吐 | 5-10% |
下痢 | 3-8% |
腹部不快感 | 2-5% |
過敏反応への警戒
セフタジジムはβラクタム系抗生物質の一種であり、軽度の皮膚発疹から生命を脅かすアナフィラキシーショックまで、様々な程度のアレルギー反応を引き起こす潜在的リスクを有しています。
このため、投与開始前には詳細な問診を行い、投与中も患者の状態を注意深く観察することが、安全な治療を行う上で不可欠となります。
- 軽微な皮膚症状(発赤、そう痒感)
- 重篤なアレルギー反応(呼吸困難、血圧低下、意識障害)
腎臓への負担
セフタジジムは主に腎臓から排泄される薬剤であり、特に高齢者や既存の腎疾患を有する患者において、腎機能の悪化や急性腎障害のリスクが高まることが知られています。
このリスクを最小限に抑えるため、投与前および投与中の定期的な腎機能検査の実施と、必要に応じた適切な用量調整が極めて重要となります。
腎障害リスク | 要注意患者群 |
腎機能低下 | 高齢者 |
急性腎不全 | 腎疾患既往者 |
薬剤耐性菌の出現
セフタジジムの長期使用や不適切な投与は、薬剤耐性菌の出現を促進し、治療の長期化や難治化につながる重大な問題を引き起こします。
特に緑膿菌やAcinetobacter属などのグラム陰性桿菌において耐性獲得が懸念され、院内感染対策の観点からも慎重な使用が求められます。
耐性菌 | 主な耐性機序 |
緑膿菌 | βラクタマーゼ生成 |
Acinetobacter | 膜透過性低下 |
神経系への影響
セフタジジムの投与に伴い、まれではあるものの中枢神経系に対する副作用が報告されており、軽度の頭痛やめまいから、重篤な痙攣や意識障害まで、多様な神経学的症状が出現する可能性があります。
このため、投与中は患者の神経学的所見を注意深く観察し、異常が認められた場合には迅速な対応が必要となります。
- 軽微な症状(頭痛、めまい、不眠)
- 重度の神経症状(けいれん、意識レベルの低下)
血液系統への副作用
セフタジジムの投与により、血液系の副作用として好中球減少、血小板減少、貧血などの血球減少が生じる可能性があり、これらは感染リスクの増大や出血傾向の亢進につながるため、定期的な血液検査によるモニタリングが不可欠です。
特に長期投与や高用量投与を行う場合には、より慎重な観察が求められます。
血液障害 | 臨床的影響 |
白血球減少 | 感染リスク上昇 |
血小板減少 | 出血傾向増加 |
肝機能への悪影響
セフタジジムの使用に伴い、肝機能障害が発生する可能性があり、肝酵素の上昇や黄疸などの症状が現れることがあります。
特に既存の肝疾患を有する患者では注意が必要であり、定期的な肝機能検査の実施と、異常値が認められた場合の迅速な対応が求められます。
肝機能異常 | 検査項目 |
酵素上昇 | AST、ALT、γ-GTP |
胆汁うっ滞 | 総ビリルビン |
臨床経験から得た教訓
経過 | 臨床所見 |
投与開始日 | 特記事項なし |
3日目 | 重度下痢、脱水症状 |
5日目 | 症状改善、回復傾向 |
セフタジジムが効かない際の代替抗菌薬
カルバペネム系薬剤への転換
セフタジジム水和物による治療効果が見られない状況では、医師はカルバペネム系抗菌薬への変更を余儀なくされることがよくあります。
この種の薬は幅広いグラム陰性菌とグラム陽性菌に対して強い抗菌力を持ち、多剤耐性菌による感染症にも効果を発揮します。
代表的なものとしてメロペネムやイミペネム/シラスタチンが挙げられ、これらは重症や難治性の感染症治療において欠かせない選択肢となります。
薬剤名 | 特徴 |
メロペネム | 広域スペクトル 安定性が高い |
イミペネム/シラスタチン | 腎毒性軽減 強力な抗菌力 |
フルオロキノロン系への切り替え
セフタジジムが思うような結果をもたらさないケースでは、担当医がフルオロキノロン系抗菌薬への転換を決断することもあります。
この系統の薬剤は細菌の DNA 複製に関与する酵素を阻害することで殺菌効果を示し、広範な抗菌スペクトルを有しています。
代表格としてレボフロキサシンやシプロフロキサシンなどがあり、経口投与が可能なため外来診療にも適しているという利点があります。
アミノグリコシド系との併用療法
セフタジジム単独での治療が芳しくない場合、アミノグリコシド系抗菌薬との併用療法が選択されることがあります。
この薬剤群は細菌のタンパク質合成を妨げることで殺菌作用を発揮し、主にグラム陰性菌に対して強い抗菌活性を示します。
代表的なものにアミカシンやゲンタマイシンがあり、他の抗菌薬と組み合わせることで相乗効果が期待できます。
アミノグリコシド系の特性
- 殺菌作用が濃度に依存
- 持続的な抗菌効果
- 腎機能や聴覚への影響に要注意
薬剤名 | 主な適応症 |
レボフロキサシン | 呼吸器感染症 尿路感染症 |
シプロフロキサシン | 腸管感染症 皮膚軟部組織感染症 |
抗緑膿菌活性を持つ新世代セフェム系
セフタジジムと同じセフェム系でありながら、異なる抗菌スペクトルや体内動態を持つ薬剤への移行が検討されることがあります。
特に緑膿菌に効果的な第四世代のセフェピムや第五世代のセフタロリンが候補となります。これらはセフタジジムよりも広い抗菌域を持ち、多剤耐性菌にも効く可能性が高いです。
薬剤名 | 世代 | 特徴 |
セフェピム | 第四世代 | 抗緑膿菌作用 広域スペクトル |
セフタロリン | 第五世代 | MRSA にも有効 |
モノバクタム系アズトレオナムの活用
セフタジジムが期待通りの効果を示さない場合、モノバクタム系に属するアズトレオナムが代替薬として選ばれることがあります。
この薬剤は一つのβ-ラクタム環を持つ特異な構造を特徴とし、主にグラム陰性菌に対して強い抗菌作用を発揮します。
アズトレオナムは特に緑膿菌を含む好気性グラム陰性菌による感染症の治療に適しており、他のβ-ラクタム系抗菌薬にアレルギーのある患者でも使用できるメリットがあります。
特徴 | 詳細 |
抗菌スペクトル | グラム陰性菌に特化 |
交差アレルギー | 他のβ-ラクタム系との交差反応が少ない |
併用禁忌
アルコール含有薬剤との相互作用リスク
セフタジジム水和物とアルコールを含む薬剤を同時に摂取すると、予想外の副反応が起こる危険性が高まるため、医師や薬剤師は患者に飲酒を避けるよう強く勧告します。
この組み合わせによって、吐き気や頭痛といった不快な症状が引き起こされ、患者の生活の質を大幅に低下させる可能性があります。
特にアルコール依存の履歴がある人や肝臓機能に問題を抱える患者では、併用によるリスクが増大するため、細心の注意を払う必要があります。
症状 | 発生頻度 |
悪心・嘔吐 | 高い |
頭痛 | 中程度 |
めまい | 低い |
プロベネシドとの併用による腎機能への悪影響
セフタジジム水和物と尿酸排泄を促進するプロベネシドを同時に使用すると、腎臓での薬物排出機能に支障をきたす可能性があるため、慎重な投薬が求められます。
プロベネシドはセフタジジム水和物の尿細管分泌を妨げることで血中濃度を上昇させ、結果として腎臓に過度の負担をかけてしまいます。
そのため、腎機能に問題がある患者や高齢者では特に綿密な観察が必要となり、投与量の調整や投薬間隔の見直しが必要になることもあります。
アミノグリコシド系抗菌薬との毒性増強
セフタジジム水和物とアミノグリコシド系抗菌薬を併用すると、両薬剤の腎臓への有害作用が増強される危険性があるため、極めて慎重な投与が求められます。
この組み合わせは重症感染症の治療で選択されることがありますが、腎機能障害のリスクが著しく高まるため、頻繁な腎機能検査と薬物濃度測定が欠かせません。
特に既存の腎疾患を持つ患者や高齢者では副作用が現れやすくなるため、投与量や間隔の細やかな調整が必須となります。
併用時の留意点
- 腎機能の定期評価
- 血中濃度の監視
- 副作用の早期発見と迅速な対応
経口避妊薬の効果低下に注意
セフタジジム水和物と経口避妊薬を同時期に服用すると、避妊効果が弱まる可能性があるため、患者に対して追加の避妊手段を講じるよう指導することが重要です。
この相互作用は、腸内の細菌バランスの変化による経口避妊薬の吸収減少や代謝促進によって引き起こされると考えられています。
そのため、抗生物質治療中およびその後一定期間は、別の避妊法を併用するなどの対策を講じる必要があります。
併用薬 | 主な副作用 |
ゲンタマイシン | 腎毒性増強 |
アミカシン | 聴覚障害 |
ワルファリンとの相互作用に要注意
セフタジジム水和物と血液凝固を抑制するワルファリンを同時に使用すると、出血のリスクが高まる可能性があるため、慎重な投与と綿密な経過観察が求められます。
この組み合わせでは、セフタジジム水和物がワルファリンの代謝を阻害し、血中濃度を上昇させることで抗凝固作用が増強されてしまう恐れがあります。
そのため併用時には、PT-INR の頻繁な測定や出血症状の観察が不可欠であり、必要に応じてワルファリンの用量調整を行わなければなりません。
避妊法 | 信頼性 |
コンドーム | 高い |
殺精子剤 | 中程度 |
ワルファリン併用時のリスク管理
- 凝固能検査の定期実施
- 出血傾向の綿密な観察
- 適時の用量調整
セフタジジム水和物の価格と費用負担
薬価
セフタジジム水和物の価格設定は、製剤の形状や含有量に応じて変動します。標準的な1グラム入りバイアルの場合、薬価は686円に設定されており、医療機関での購入価格の目安となっています。
製剤 | 薬価 |
1g バイアル | 686円 |
0.5g バイアル | 456円 |
処方期間による総額
1週間の処方を想定すると、1日2回の投与で計14回分が必要となり、9,604円の費用がかかります。
同様に、1ヶ月分を処方された場合、56回分で38,416円の負担となり、長期使用時には患者の経済的負担が増大する傾向にあります。
期間 | 投与回数 | 総額 |
1週間 | 14回 | 9,604円 |
1ヶ月 | 56回 | 38,416円 |
ジェネリック医薬品との比較
セフタジジム水和物のジェネリック版は、先発品と比較して20〜30%ほど安価に設定されており、1グラム入りバイアルの価格は444円前後です。
この価格差は、患者の自己負担額に直接影響を与えるため、医療費の抑制を考慮する上で重要な選択肢となります。
種類 | 1g バイアル薬価 |
先発品 | 686円 |
ジェネリック | 444円 |
なお、上記の価格は2024年8月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
- 参考にした論文