セフォゾプラン塩酸塩(ファーストシン)とは、呼吸器感染症に対して効果を発揮する抗生物質の一種です。
この薬剤は、細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌作用を示します。
特に緑膿菌をはじめとするグラム陰性桿菌に強い効果を持ち、肺炎や気管支炎などの呼吸器系の感染症に用いられます。
セフェム系抗生物質に属するこの薬は、その特性から重症または難治性の感染症にも使用されることがあります。
有効成分と効果、作用機序
有効成分の特徴
セフォゾプラン塩酸塩は、第4世代セファロスポリンに属する抗生物質で、その化学構造は他のセフェム系薬剤と一線を画す特殊な側鎖修飾を有しており、この独自の構造が幅広い抗菌スペクトルと強力な抗菌活性の源となっています。
分子量約545のこの化合物は、高い水溶性を持ち、体内での優れた薬物動態特性を示すことから、多様な感染症治療に適しています。
特性 | 詳細 |
分類 | 第4世代セファロスポリン |
化学構造 | 独自の側鎖修飾あり |
分子量 | 約 545 |
溶解性 | 水溶性が高い |
作用機序の詳細
本薬剤は、細菌の細胞壁合成過程に介入し、強力な殺菌効果を発揮します。
具体的には、ペプチドグリカン架橋酵素であるペニシリン結合タンパク質(PBPs)に極めて高い親和性で結合し、その機能を阻害することで、細菌の細胞壁形成を妨げ、最終的に浸透圧調整能力の喪失により細菌を死滅させます。
加えて、β-ラクタマーゼに対する優れた安定性を持つため、一部の耐性菌に対しても効果を維持し続けます。
- PBPsへの選択的結合
- 細胞壁形成阻害
- 浸透圧調整能力の破壊
- β-ラクタマーゼ耐性
抗菌スペクトルと効果
セフォゾプラン塩酸塩は、グラム陽性菌からグラム陰性菌まで広範囲の病原性細菌に対して卓越した抗菌活性を示し、特に緑膿菌やセラチア菌などの難治性グラム陰性桿菌に対して顕著な効果を発揮します。
このユニークな特性により、重症感染症や院内感染症の治療において中心的な役割を担っており、従来の抗生物質では対応が困難だった症例にも新たな治療の道を開いています。
対象菌 | 抗菌活性 |
グラム陽性菌 | 強力 |
グラム陰性菌 | 卓越 |
緑膿菌 | 極めて優れている |
セラチア菌 | 顕著 |
ある医師の臨床経験では、多剤耐性菌による重症肺炎患者にセフォゾプラン塩酸塩を使用したところ、驚くべき速さで症状が改善し、患者の生命を救うことができた事例があります。
薬物動態学的特徴
本薬剤は静脈内投与後、迅速に全身へ分布し、主に腎臓から未変化体として排泄されるため、効率的な治療効果と副作用の最小化を両立します。
約2時間の半減期を持つこの薬剤は、1日2回の投与で十分な血中濃度を維持でき、患者の負担を軽減しつつ効果的な治療を可能にします。
また、肺や胆汁への優れた移行性を示すことから、呼吸器感染症や胆道感染症に対しても高い治療効果を期待できます。
項目 | 特徴 |
半減期 | 約2時間 |
投与頻度 | 1日2回 |
組織移行性 | 優れている |
主排泄経路 | 腎臓 |
臨床応用と治療効果
セフォゾプラン塩酸塩は、中等症から重症の多様な感染症治療に幅広く活用されています。
呼吸器感染症、尿路感染症、腹腔内感染症など、様々な部位の感染に対して高い有効性を示し、特に多剤耐性菌による感染症や免疫不全患者の日和見感染症など、従来の抗生物質では対処が困難だった症例においても優れた治療成績を収めています。
- 重症感染症全般
- 多剤耐性菌による感染症
- 免疫不全関連感染症
- 難治性院内感染
このような多面的な特性を持つセフォゾプラン塩酸塩は、現代の複雑化する感染症治療において欠かせない存在となり、医療現場に新たな治療オプションをもたらしています。
セフォゾプラン塩酸塩の使用方法と注意点
投与方法と用量
セフォゾプラン塩酸塩は主に静脈内投与で使用し、成人患者には1日あたり1〜2g(力価)を2回に分けて点滴静注または緩やかに静脈内注射します。
症状の程度や起因菌の感受性によっては、1日最大4g(力価)まで増量し、この場合は1日2回に分けて投与するのが一般的です。
小児患者に対しては、体重1kg当たり1日25〜100mg(力価)を2〜4回に分けて静脈内に投与し、年齢や症状に応じて適宜調整します。
対象 | 通常用量 | 最大投与量 |
成人 | 1日1〜2g | 1日4gまで |
小児 | 25〜100mg/kg/日 | 症状に応じて調整 |
投与時の注意事項
本剤を使用する前に、患者のアレルギー歴を詳細に確認することが極めて重要で、特にペニシリン系抗生物質に対するアレルギー反応の既往がある場合は慎重な投与判断が求められます。
点滴静注を行う際は、30分以上の時間をかけてゆっくりと投与することが推奨され、急速静注による副作用リスクを回避します。
腎機能に障害のある患者では、薬物の体内からの排出が遅れるため、腎機能の状態を考慮して投与量や投与間隔を適切に調整する必要があります。
- 詳細なアレルギー歴の聴取
- 緩徐な点滴静注(30分以上)
- 腎機能に基づいた用量設定
併用薬との相互作用
セフォゾプラン塩酸塩と他の薬剤を同時に使用する場合、薬物間相互作用に細心の注意を払わなければなりません。
例えば、プロベネシドとの併用では本剤の血中濃度が上昇し、効果が増強されるため、慎重な投与管理が必要となります。
また、利尿剤、特にフロセミドとの併用時には腎毒性が強まる危険性があるため、患者の腎機能を綿密にモニタリングしながら、投与量を慎重に調整します。
併用薬 | 留意点 |
プロベネシド | 血中濃度上昇に注意 |
フロセミド | 腎機能モニタリング |
投与期間と効果判定
セフォゾプラン塩酸塩の投与期間は感染症の種類や重症度に応じて決定しますが、通常は5〜10日間程度の治療を行い、症状の改善が見られない場合は投与方法や薬剤選択の再検討を行います。
治療効果の評価は、臨床症状の変化、炎症マーカーの推移、血液培養結果など、複数の指標を総合的に分析して判断します。
期待された効果が得られない場合は、速やかに他の抗菌薬への切り替えや併用療法の検討など、治療戦略の見直しを行います。
標準投与期間 | 効果判定基準 |
5〜10日 | 臨床症状の変化 |
– | 炎症マーカーの推移 |
– | 微生物学的検査結果 |
患者教育と服薬指導
セフォゾプラン塩酸塩を使用する患者に対しては、薬剤の作用メカニズムと注意すべき点について、分かりやすく丁寧な説明を行うことが非常に重要です。
特に、抗生物質の適切な使用方法や、耐性菌発生を防ぐための服薬コンプライアンスの重要性を強調し、患者の理解と協力を得ることが治療成功の鍵となります。
また、発熱、発疹、呼吸困難などの副作用症状が現れた場合は、直ちに担当医や医療機関に連絡するよう具体的に指導し、早期発見・早期対応の重要性を患者に認識してもらいます。
- 薬剤の作用と注意点の詳細説明
- 服薬遵守の重要性強調
- 副作用発現時の対応指導
ある医師の臨床経験では、多剤耐性菌による重症肺炎患者にセフォゾプラン塩酸塩を高用量で投与した際、従来の治療では改善が見られなかった症状が劇的に好転し、患者の生命予後を大きく改善させた印象的な事例がありました。
適応対象患者
重症感染症患者
セフォゾプラン塩酸塩は、主に深刻な細菌性感染症に罹患した患者に対して処方される強力な抗生物質であり、特に生命を脅かすような重篤な状態の呼吸器系感染症や敗血症などの患者に対して顕著な効果を示します。
本剤は幅広い病原菌に対して強力な抗菌作用を持つため、従来の治療法では対応が困難な多剤耐性菌による感染症にも有効性を発揮し、難治性感染症に苦しむ患者にとって貴重な治療の選択肢となります。
適応疾患 | 重症度 |
呼吸器感染症 | 重度 |
敗血症 | 危篤 |
多剤耐性菌感染症 | 難治性 |
免疫不全患者
免疫機能が著しく低下している患者は、通常の抗生物質では効果が不十分な感染症を発症するリスクが高く、日和見感染症の予防や治療においてセフォゾプラン塩酸塩の使用が考慮されます。
具体的には、造血幹細胞移植後の患者、HIV感染者、臓器移植後に免疫抑制剤を使用中の患者などが対象となり、これらの患者では感染症が急速に進行する傾向があるため、早期から強力な抗菌薬療法を開始することで生命予後の改善を図ります。
- 造血幹細胞移植後の回復期患者
- HIV感染によるCD4陽性T細胞減少者
- 固形臓器移植後の免疫抑制状態にある患者
- 先天性免疫不全症候群を有する個体
院内感染症患者
長期入院中の患者や集中治療室(ICU)に入室している重症患者は、院内感染のリスクが極めて高く、特に多剤耐性菌による感染症を発症する確率が上昇します。
セフォゾプラン塩酸塩は、このような院内感染症、とりわけ多剤耐性緑膿菌やMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などによる難治性感染症に対して効果を発揮することが期待でき、通常の抗生物質では対応が困難なケースにおいても有効な治療選択肢となります。
患者タイプ | 感染リスク |
長期入院患者 | 高 |
ICU入室患者 | 非常に高 |
小児・新生児の重症感染症
セフォゾプラン塩酸塩は、成人のみならず小児や新生児の深刻な感染症にも適用され、特に免疫機能が未熟な早産児や低出生体重児における重症感染症のリスクが高い場合に、慎重に投与量を調整しながら使用されます。
新生児敗血症や髄膜炎などの生命を脅かす感染症に対して、本剤は重要な治療オプションとなり、適切な用量設定と綿密なモニタリングのもとで投与されます。
対象 | 感染症リスク |
早産児 | 極めて高い |
低出生体重児 | 非常に高い |
高齢者の複雑性感染症
高齢者は複数の基礎疾患を併せ持つことが多く、感染症が重症化しやすい傾向があるため、特に尿路感染症や誤嚥性肺炎などの複雑性感染症を発症した高齢患者に対してセフォゾプラン塩酸塩の使用が検討されます。
ただし、高齢者では腎機能が低下していることが多いため、投与量や投与間隔を個々の患者の状態に合わせて慎重に調整する必要があり、効果と安全性のバランスを取りながら治療を進めます。
- 複数の慢性疾患を有する後期高齢者
- 複雑性尿路感染症を呈する患者
- 嚥下機能低下に伴う誤嚥性肺炎患者
- 腎機能障害を伴う高齢感染症患者
ある医師の臨床経験では、人工呼吸器関連肺炎を発症したICU患者に対してセフォゾプラン塩酸塩を使用した際、多剤耐性緑膿菌による重症感染が劇的に改善し、他の抗菌薬では効果が見られなかった患者の救命につながった印象的な事例がありました。
セフォゾプラン塩酸塩の治療期間
標準的な治療期間
セフォゾプラン塩酸塩による治療期間は、通常5日から14日間程度を目安としますが、感染症の種類や重症度、起因菌の感受性、患者の全身状態などを総合的に判断して、個々の症例に応じた最適な投与期間を設定します。
軽度から中等度の感染症では、多くの場合5〜7日間の投与で十分な効果が得られますが、重症例や難治性感染症においては、10〜14日間の投与が必要となり、症状の改善具合や検査結果を慎重に評価しながら治療を進めます。
感染症の重症度 | 標準治療期間 |
軽度〜中等度 | 5〜7日 |
重症 | 10〜14日 |
感染症別の治療期間
呼吸器感染症に対しては、一般的に7〜10日間の投与を基本とし、肺炎球菌やインフルエンザ菌による市中肺炎の場合、症状改善が見られた後もさらに3〜5日間の継続投与を行うことで、再燃のリスクを最小限に抑えます。
尿路感染症については、単純性膀胱炎であれば3〜5日間、複雑性尿路感染症や腎盂腎炎の場合は7〜14日間の投与期間が一般的であり、症状の改善と尿培養結果を確認しながら治療の終了時期を判断します。
感染症の種類 | 推奨治療期間 |
市中肺炎 | 7〜10日 |
複雑性尿路感染症 | 7〜14日 |
敗血症 | 14日以上 |
治療効果の評価と期間調整
セフォゾプラン塩酸塩による治療開始後48〜72時間経過しても臨床症状の改善傾向が認められない場合、治療方針の見直しを検討する必要があり、原因菌の再評価や他の抗菌薬への変更を考慮します。
体温、白血球数、CRP値などの炎症マーカーの推移を定期的にチェックし、改善が順調であれば標準的な治療期間で終了しますが、悪化や停滞が見られる際は、投与期間の延長や治療戦略の変更を躊躇なく実施します。
- 48〜72時間後の臨床症状詳細評価
- 炎症マーカーの継続的モニタリング
- 血液培養陰性確認後の慎重な経過観察
特殊な状況下での治療期間
免疫不全患者や高齢者など、感染に対する抵抗力が低下している患者では、通常よりも長期の投与が求められることが多く、個々の患者の状態を綿密に観察しながら、慎重に治療期間を設定し、必要に応じて延長します。
人工呼吸器関連肺炎や院内感染による肺炎などの難治性感染症では、14〜21日間の長期投与を要することがあり、微生物学的検査結果や臨床経過を注意深く観察しながら、適切な投与期間を決定し、感染の完全な制御を目指します。
特殊な状況 | 考慮される治療期間 |
免疫不全患者 | 標準期間より延長 |
人工呼吸器関連肺炎 | 14〜21日 |
骨髄炎 | 4〜6週間以上 |
副作用・デメリット
消化器系のトラブル
セフォゾプラン塩酸塩を使うと、消化器に関わる問題に警戒が必要となります。
下痢や軟便が頻繁に起こり、患者の生活の質を著しく低下させます。
まれに重症の偽膜性大腸炎を発症するリスクがあるため、服用中は便の様子や腹部の違和感に細心の注意を払います。
胃腸の不調 | どのくらいの割合で起きるか |
下痢・軟便 | 10人に1人程度 |
吐き気・嘔吐 | 20人に1人程度 |
お腹の痛み | 30人に1人程度 |
食欲がなくなる | 50人に1人程度 |
アレルギー反応と皮膚のトラブル
この薬を投与すると、アレルギー症状や皮膚に異常が現れることがあります。
これらの症状は、軽いものから命に関わる重大なものまで、実に様々な形で現れます。
- じんましん
- 発疹
- かゆみ
- アナフィラキシーショック
私が経験した症例では、40代の女性患者にセフォゾプラン塩酸塩を使用したところ、全身に深刻な薬疹が出現し、入院治療が必要になりました。
この事例では早期に発見して適切に対処したため、後遺症なく回復しましたが、アレルギー反応を素早く見つけ出し、迅速に対応することの重要性を痛感しました。
血液の異常
セフォゾプラン塩酸塩は血液中の細胞に悪影響を及ぼします。
特に警戒すべきは白血球や血小板の減少で、感染しやすくなったり出血しやすくなったりするリスクが高まります。
定期的に血液検査を行い、異常値が見つかった場合は投薬中止を考慮するなど、慎重に経過を見守る必要があります。
血液の異常 | どんな症状が出るか |
白血球が減る | 感染症にかかりやすくなる |
血小板が減る | 出血が止まりにくくなる |
貧血 | 体がだるい、息切れする |
好酸球が増える | アレルギー反応が起きている証拠 |
肝臓・腎臓への負担
セフォゾプラン塩酸塩は肝臓や腎臓に負荷をかけます。
投薬前と投薬中は定期的に肝機能検査や腎機能検査を実施し、早い段階で異常を見つけ出すよう努めます。
特に腎臓の働きが弱っている患者さんでは薬が体内にとどまりやすくなり副作用のリスクが高まるため、量を減らしたり投与の間隔を空けたりするなどの対策が欠かせません。
検査項目 | 数値が上がると何を意味するか |
AST・ALT | 肝臓の細胞が傷ついている可能性 |
γ-GTP | 胆管系に問題がある可能性 |
クレアチニン | 腎臓の機能が低下している可能性 |
BUN | 腎臓の機能低下や脱水の可能性 |
薬が効かない菌の出現
セフォゾプラン塩酸塩を適切に使用しないと、薬が効かない菌(耐性菌)が生まれやすくなります。
幅広い種類の菌に効く本剤を必要以上に使ったり長期間使い続けたりすると、病院内や地域社会に耐性菌が広がるリスクが高まります。
症状をよく見極め、必要最小限の期間だけ使用するよう心がけます。
耐性菌の出現を最小限に抑えるため、次の点に気をつけましょう。
- 本当に必要な症例だけに使う
- 適切な量と期間を守る
- 他の抗生物質との併用は慎重に判断する
- 定期的に培養検査を行い、効き目があるかどうか確認する
セフォゾプラン塩酸塩(ファーストシン)が効かない時の別の抗生物質
カルバペネム系薬への移行
セフォゾプラン塩酸塩による治療が思わしくない時、カルバペネム系薬への切り替えを考えます。
この種類の薬は、さらに広い範囲の細菌に効果を示し、複数の薬に耐性を持つ菌にも強い威力を発揮するため、手強い感染症と闘う上で頼もしい味方となります。
代表的な薬としてメロペネムやイミペネム/シラスタチンがあり、重篤な感染症や複雑な経過をたどる感染症の治療に用います。
カルバペネム系の薬 | どんな病気に使うか |
メロペネム | 肺の炎症、血液の感染、腹の感染 |
イミペネム | 尿路の感染、骨の感染、皮膚感染 |
ドリペネム | 病院で感染した肺炎、腹の複雑な感染 |
エルタペネム | 一般的な肺炎、骨盤内の感染 |
ニューキノロン系の薬を選ぶ
セフォゾプラン塩酸塩が効かない状況で、ニューキノロン系の薬が新たな選択肢となります。この系統の薬は細菌のDNAの複製を邪魔することで殺菌効果を発揮し、幅広い種類の細菌に効果を示します。
飲み薬と点滴の両方があるので、患者さんの状態に合わせて最適な投与方法を選べます。レボフロキサシンやシプロフロキサシンなどが代表的な薬として知られています。
私が経験した症例では、70代の男性患者さんが重い肺炎を患い、セフォゾプラン塩酸塩を使っても良くならなかったのですが、リネゾリドに切り替えたところ、劇的に症状が改善しました。
この事例では、薬の効き目を調べる検査結果を基に、最適な抗生物質を選んだことが功を奏したと考えられます。
グリコペプチド系の抗生物質を活用する
セフォゾプラン塩酸塩が効果を示さない感染症、特にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が疑われる時は、グリコペプチド系の抗生物質の使用を検討します。
この種類の抗生物質は、細菌の細胞壁を作る過程を邪魔することで殺菌効果を発揮し、多くの薬に耐性を持つグラム陽性球菌に対して強力な効果を持ちます。
バンコマイシンやテイコプラニンが代表的な薬であり、重症の感染症の治療に使われます。
グリコペプチド系の薬 | 主な特徴 |
バンコマイシン | MRSA感染症で最初に選ばれる薬 |
テイコプラニン | 効果が長く続く、腎臓への負担が比較的少ない |
オリタバンシン | 効果が長く続く、週に1回の投与でOK |
ダルババンシン | 効果が非常に長く続く、2週間に1回投与 |
抗MRSA薬の新しい選択肢
グリコペプチド系の抗生物質に加えて、最近では新しいタイプの抗MRSA薬が開発され、治療の幅が広がっています。これらの薬はグリコペプチド系とは違うやり方で効果を発揮するので、耐性菌が出てくるリスクを減らせます。
リネゾリドやダプトマイシン、テジゾリドなどが代表的な薬として挙げられます。
新しい抗MRSA薬 | どうやって効くか | 特徴 |
リネゾリド | タンパク質を作らせない | 飲み薬もある、肺炎に効く |
ダプトマイシン | 細胞の膜を壊す | 菌を直接殺す、血液感染に効く |
テジゾリド | タンパク質を作らせない | リネゾリドが効かない菌にも効く |
セフタロリン | 細胞壁を作らせない | セフェム系なのにMRSAに効く |
β-ラクタマーゼ阻害薬を含む抗生物質を選ぶ
セフォゾプラン塩酸塩が効果を示さない場合、β-ラクタマーゼ阻害薬を含む抗生物質への切り替えを考えます。
これらの薬は、従来の抗生物質にβ-ラクタマーゼを壊す薬を組み合わせることで、耐性菌に対する効き目を高めています。
タゾバクタム/ピペラシリンやスルバクタム/アンピシリンなどが代表的な薬として知られています。
- β-ラクタマーゼ阻害薬を含む抗生物質の良いところ
- 耐性菌にも効く力が強まる
- 幅広い種類の細菌に効果を示す
- 複数の種類の細菌が絡む感染症にも効果的
- 原因菌がはっきりしない段階でも使える
- β-ラクタマーゼ阻害薬を含む抗生物質を使う時の注意点
- 耐性菌を生み出す可能性
- アレルギー反応を起こすことがある
- 腎臓の機能が悪い患者さんでは量を調整する必要がある
- 他の薬との相互作用に気をつける
併用禁忌
お酒を含む薬との飲み合わせに要注意
セフォゾプラン塩酸塩とアルコールを含む薬を同時に飲むと、思わぬ副作用が出るおそれがあります。
特にジスルフィラム様作用で顔が赤くなったり、吐き気や頭痛に襲われたりして、患者さんの体調を大きく崩す危険性があります。
そのため、治療中はお酒はもちろん、アルコールが入っている薬も避けるよう、しっかりと患者さんに伝えることが欠かせません。
お酒が入っている薬 | 主な成分 |
風邪薬 | エタノール |
うがい薬 | エタノール |
消毒薬 | イソプロピルアルコール |
胃腸薬 | エタノール |
腎臓に負担をかける薬との組み合わせリスク
セフォゾプラン塩酸塩は主に腎臓から出ていくため、腎臓の働きに影響を与える薬と一緒に使うときは細心の注意を払います。
特にアミノグリコシド系の抗生物質や利尿剤、特にループ利尿薬などと同時に使うと、腎臓の機能が悪くなるリスクが高まります。
どうしてもこれらの薬と併用しなければならない場合は、腎臓の働きを頻繁にチェックし、必要に応じて薬の量を調整したり、飲む間隔を変えたりすることが重要です。
腎臓に負担をかける薬 | 主な薬の名前 |
アミノグリコシド系 | ゲンタマイシン |
ループ利尿薬 | フロセミド |
痛み止め(NSAIDs) | イブプロフェン |
造影剤 | イオパミドール |
血液をサラサラにする薬との相性
セフォゾプラン塩酸塩とワルファリンのような血液をサラサラにする薬を一緒に飲むと、出血しやすくなります。
これは、セフォゾプラン塩酸塩が腸内の細菌のバランスを変え、ビタミンKの産生を妨げることで、血液をサラサラにする効果を強めてしまうからです。
どうしても併用が必要な時は、血液の固まりやすさを示すPTやINRという値をこまめに測り、血液をサラサラにする薬の量を慎重に調整する必要があります。
- 気をつけるべき血液をサラサラにする薬
- ワルファリン
- アピキサバン
- リバーロキサバン
- ダビガトラン
- 併用時に気をつけること
- 血液検査(PT、INRなど)を頻繁に行う
- 出血の兆候がないか注意深く観察する
- 薬の量を適切に調整する
- 患者さんに注意点をよく説明する
プロベネシドとの薬の動きの変化
セフォゾプラン塩酸塩とプロベネシドを一緒に使うと、血液中の薬の濃度が上がり、副作用が出やすくなります。
プロベネシドは、腎臓の尿細管にある有機アニオン輸送体(OAT)という物質の働きを邪魔し、セフォゾプラン塩酸塩が体から出ていくのを遅らせてしまいます。
そのため、この2つの薬は一緒に使わないようにし、別の薬を選んだり、飲む間隔を調整したりするなどの対策を講じます。
薬の相互作用の種類 | どんな影響が出るか |
薬の体内での動き | 血液中の薬の濃度が上がる |
薬の効き方 | 副作用が出やすくなる |
代謝 | 腎臓からの排泄が遅れる |
タンパク質との結合 | 薬の働く量が変わる |
ピルとの関係
セフォゾプラン塩酸塩は、ピルの効き目を弱めてしまいます。これは、抗生物質が腸内の細菌のバランスを崩し、エストロゲンが腸と肝臓を行ったり来たりする循環を邪魔してしまうからです。
治療期間中は、ピル以外の避妊方法も併せて使うよう、患者さんにしっかりと伝えることが大切です。
ピルの種類 | 主な成分 |
混合型 | エストロゲン+プロゲステロン |
プロゲスチンのみ | レボノルゲストレル |
3段階タイプ | 3段階で変わる混合ホルモン |
超低用量 | ごく少量のホルモン |
薬価
セフォゾプラン塩酸塩の価格は、1グラムあたり956円と設定されています。この金額は、病院や薬局が仕入れる際の基準となり、患者さんが実際に支払う金額を決める重要な要素となります。
量 | お値段(円) |
0.5g | 664 |
1g | 956 |
処方期間による総額
1週間分を処方する場合、普通は1日2回の投与で合計14グラム使うので、総額は13,356円になります。1ヶ月分だと60グラム使うことになり、総額はなんと57,360円にもなってしまいます。
何日分 | 使う量 | 合計金額(円) |
1週間 | 14g | 13,384 |
1ヶ月 | 60g | 57,360 |
以上
- 参考にした論文