カスポファンギン酢酸塩(カンサイダス)とは深在性真菌症と呼ばれる重篤な感染症に対する強力な抗真菌薬です。
この薬剤はカンジダ属やアスペルギルス属などの病原性真菌に対して効果を発揮します。
特に免疫機能が低下した患者さんや長期入院中の方々にとって深在性真菌症は生命を脅かす可能性のある深刻な合併症となり得ます。
カンサイダスはそのような危険な状況下で医療現場において重要な役割を果たしています。
CPFGの有効成分と作用機序、効果
カスポファンギン酢酸塩の有効成分
カスポファンギン酢酸塩(CPFG)はエキノカンジン系抗真菌薬に分類される化合物で、その主要な有効成分はカスポファンギンです。
この物質は天然由来の大環状リポペプチドを化学的に修飾して得られた半合成抗生物質です。
カスポファンギン酢酸塩は真菌細胞壁の構成要素である1,3-β-D-グルカンの生合成を阻害する独特な作用を持ちます。
分類 | 特徴 |
系統 | エキノカンジン系 |
由来 | 半合成抗生物質 |
構造 | 大環状リポペプチド |
カスポファンギンの作用機序
カスポファンギンの作用機序は真菌細胞壁の合成阻害に基づいています。
具体的には1,3-β-D-グルカン合成酵素を非競合的に阻害することで真菌細胞壁の主要構成成分である1,3-β-D-グルカンの生合成を妨げます。
この過程により真菌細胞壁の構造が脆弱化して浸透圧に対する耐性が失われるため最終的に真菌細胞の破壊へとつながります。
哺乳類細胞には1,3-β-D-グルカンが存在しないことからカスポファンギンは選択毒性が高く、ヒトの細胞への影響が少ない薬剤として注目されています。
- 1,3-β-D-グルカン合成酵素の阻害
- 真菌細胞壁の構造脆弱化
- 浸透圧耐性の喪失
- 真菌細胞の破壊
カスポファンギンの抗真菌スペクトル
カスポファンギンは広範囲の病原性真菌に対して効果を示します。
特にカンジダ属やアスペルギルス属といった臨床上重要な真菌に強い抗菌活性を持ち、深在性真菌症の治療において中心的な役割を果たしています。
対象真菌 | 効果 |
カンジダ属 | 強い |
アスペルギルス属 | 強い |
クリプトコックス属 | 限定的 |
ムーコル属 | 無効 |
カスポファンギンの臨床効果
カスポファンギンは深在性真菌症、とりわけカンジダ血症やアスペルギルス症といった重篤な感染症に対して高い有効性を示します。
免疫不全患者さんや重症患者さんにおける予防投与や経験的治療においても有用性が認められており、生命を脅かす可能性のある真菌感染症に対する有力な治療選択肢となっています。
また従来の抗真菌薬に耐性を示す菌株に対しても効果が期待できるため難治性真菌症の治療において重要な位置を占めています。
- カンジダ血症への高い有効性
- アスペルギルス症に対する治療効果
- 免疫不全患者さんにおける予防効果
- 耐性菌株への対応
他の抗真菌薬との比較
カスポファンギンは従来のアゾール系やポリエン系抗真菌薬とは異なる作用機序を持つため、これらの薬剤に耐性を示す真菌に対しても効果を発揮することがあります。
また肝臓での代謝が少ないことから薬物相互作用のリスクが低く、他の薬剤との併用時にも使いやすい特徴があります。
さらに腎機能障害患者さんにも安全に使用できるという利点があり様々な病態の患者さんに対して柔軟な投与が可能です。
特徴 | カスポファンギン | アゾール系 | ポリエン系 |
作用機序 | 細胞壁合成阻害 | エルゴステロール合成阻害 | 細胞膜障害 |
耐性菌への効果 | あり | 限定的 | 限定的 |
薬物相互作用 | 少ない | 多い | 中程度 |
腎機能障害患者への使用 | 可能 | 注意が必要 | 制限あり |
使用方法と注意点
投与方法と用量
カスポファンギン酢酸塩(CPFG)は通常静脈内投与によりコントロールされます。
初日に70mgの負荷投与を行い2日目以降は50mgを1日1回の維持量として投与します。
体重が80kg以上の患者さんでは2日目以降は70mgの投与を考慮します。
投与日 | 通常用量 | 体重80kg以上 |
初日 | 70mg | 70mg |
2日目以降 | 50mg | 70mg |
投与時間は約1時間をかけて点滴静注することが推奨されます。
急速静注や筋肉内投与は避けるべきで、これらの投与方法では薬剤の有効性や安全性が確立されていません。
投与期間
治療期間は患者さんの臨床症状や検査結果に基づいて個別に判断しますが一般的には14日間程度の投与を行います。
難治性の真菌感染症や免疫不全患者さんではさらに長期の投与が必要となる事例もあります。
- 通常の深在性真菌症 14日間程度
- 難治性真菌感染症 個別に判断し延長
- 免疫不全患者 症状改善まで継続
治療効果の判定には臨床症状の改善・血液培養の陰性化・画像検査での病巣の縮小などを総合的に評価します。
特殊な患者集団への投与
肝機能障害患者さんに対してはCPFGの用量調節が必要となる場合があります。
中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)では維持用量を35mgに減量することを推奨します。
肝機能障害 | 用量調節 |
軽度 | 調節不要 |
中等度 | 35mg/日 |
重度 | データ不十分 |
腎機能障害患者さんではCPFGは主に肝臓で代謝されるため通常用量の投与が可能です。
しかし重度の腎機能障害患者さんでの使用経験は限られているため慎重に投与する必要があります。
CPFGの適応対象患者
深在性真菌症患者
カスポファンギン酢酸塩(CPFG)は主に深在性真菌症の患者さんに対して使用します。
深在性真菌症とは真菌(かび)が体内の深部臓器や血液中で増殖する感染症を指し、カンジダ属やアスペルギルス属による感染が代表的です。
これらの真菌は通常健康な人には害を及ぼしませんが、免疫機能が低下した状態では重篤な感染症を引き起こす原因となります。
深在性真菌症の種類 | 主な原因菌 |
カンジダ血症 | カンジダ・アルビカンス |
侵襲性アスペルギルス症 | アスペルギルス・フミガトゥス |
食道カンジダ症 | カンジダ・グラブラータ |
腹腔内膿瘍 | カンジダ・トロピカリス |
免疫不全患者
CPFGの主な適応対象には免疫機能が著しく低下した患者さんが含まれます。
具体的には次のような状態にある方々が対象です。
- 造血幹細胞移植後の患者
- 固形臓器移植後の患者
- 長期ステロイド治療中の患者
- HIV/AIDS患者
これらの患者さんは通常の免疫機能が損なわれているため日和見感染症としての真菌感染のリスクが高く CPFGによる予防的投与や早期治療が重要となります。
重症患者および長期入院患者
集中治療室(ICU)に長期入院している患者さんや人工呼吸器管理を受けている患者さんもCPFGの適応対象となる事があります。
これらの患者さんは様々な医療デバイスを使用しているためカンジダ属による感染リスクが高く、全身状態の悪化により免疫機能も低下しやすい状況にあります。
リスク因子 | 関連する真菌感染症 |
中心静脈カテーテル | カンジダ血症 |
人工呼吸器 | 肺アスペルギルス症 |
長期抗生物質使用 | カンジダ腸炎 |
経腸栄養 | 食道カンジダ症 |
血液疾患患者
白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患患者さんもCPFGの重要な適応対象です。
これらの患者さんは疾患自体による免疫機能の低下に加えて化学療法や放射線療法による骨髄抑制のため深在性真菌症のリスクが非常に高くなります。
特に好中球減少症(好中球数が500/μL未満)の状態が続く患者さんでは侵襲性アスペルギルス症などの重篤な真菌感染症の発症リスクが顕著に上昇します。
- 急性骨髄性白血病患者
- 慢性リンパ性白血病患者
- 多発性骨髄腫患者
- 再生不良性貧血患者
難治性真菌感染症患者
従来の抗真菌薬治療に反応が乏しい難治性の真菌感染症患者さんにもCPFGは有効な選択肢となります。
アゾール系抗真菌薬やポリエン系抗真菌薬に耐性を示す真菌株による感染症例ではCPFGの異なる作用機序が奏功する可能性があります。
従来の抗真菌薬 | 耐性菌の例 |
フルコナゾール | カンジダ・クルーゼイ |
イトラコナゾール | アスペルギルス・テレウス |
アムホテリシンB | カンジダ・ルシタニエ |
小児患者
小児患者さんにおいてもCPFGの使用が承認されています。
特に新生児や乳児ではカンジダ属による敗血症や髄膜炎のリスクが高く、CPFGが有効な治療選択肢となります。
ただし小児患者さんへの投与に際しては年齢や体重に応じた慎重な用量調節が必要です。
年齢区分 | 推奨用量 |
3ヶ月〜17歳 | 70mg/m²(最大70mg) |
新生児〜3ヶ月未満 | 25mg/m² |
CPFGの適応を検討する際には患者さんの全身状態・基礎疾患・感染症の重症度・薬剤感受性などを総合的に評価して個々の症例に応じた判断を行うことが大切です。
治療期間
標準的な治療期間
カスポファンギン酢酸塩(CPFG)による深在性真菌症の治療期間は一般的に14日間から数週間程度です。
この期間は感染の種類・重症度・患者さんの免疫状態などに応じて個別に決定します。
カンジダ血症などの血流感染症では最後の陽性血液培養から少なくとも14日間の投与を継続することが推奨されます。
感染症 | 推奨治療期間 |
カンジダ血症 | 最終陽性培養から14日以上 |
侵襲性アスペルギルス症 | 臨床症状改善後も7-14日間 |
食道カンジダ症 | 症状改善後3-5日間 |
慢性播種性カンジダ症 | 数ヶ月間 |
治療期間の延長が必要なケース
免疫不全患者さんや難治性の真菌感染症ではより長期の治療期間を要する事があります。
例えば造血幹細胞移植後の侵襲性アスペルギルス症患者さんでは6〜12週間の継続投与が必要となるケースもあります。
慢性播種性カンジダ症などの複雑な症例では数ヶ月に及ぶ長期投与を行う事も珍しくありません。
- HIV/AIDS患者の食道カンジダ症 21日間以上
- 好中球減少患者の肺アスペルギルス症 骨髄機能回復後も2週間以上
- 中枢神経系真菌感染症 4〜6週間以上
- 骨関節真菌感染症 6〜12週間以上
治療効果の評価と期間調整
CPFGの治療効果は定期的に評価し必要に応じて治療期間を調整します。
臨床症状の改善・炎症マーカーの低下・画像所見の好転・真菌学的検査の陰性化などを総合的に判断して投与継続の必要性を判断します。
2019年にNew England Journal of Medicineのなかでカンジダ血症患者さんに対する研究が発表されました。
それによると血液培養陰性化後14日間の追加投与を行った群と5日間の追加投与を行った群で再発率に有意差がなかったと報告されています。
評価項目 | 評価頻度 |
臨床症状 | 毎日 |
血液検査 | 週2-3回 |
画像検査 | 1-2週間毎 |
真菌培養 | 週1-2回 |
予防投与における治療期間
高リスク患者さんに対する予防投与では患者さんのリスク状態が継続する間CPFGを投与します。
造血幹細胞移植患者さんでは好中球減少期間中および移植後100日目頃まで予防投与を継続することが多いです。
固形臓器移植後の患者さんでは一般的に移植後1〜3ヶ月間の予防投与を行います。
患者さん群 | 予防投与期間 |
造血幹細胞移植 | 移植後100日目頃まで |
肝臓移植 | 移植後4週間 |
肺移植 | 移植後3ヶ月間 |
長期ステロイド使用 | ステロイド減量まで |
小児患者における治療期間
小児患者さんのCPFG治療期間は成人と同様に個別化が必要です。
新生児カンジダ症では最低2週間の投与期間が推奨されますが中枢神経系の関与がある場合は4週間以上の投与が必要となります。
小児の侵襲性アスペルギルス症では6〜12週間の治療期間が一般的です。
- 新生児カンジダ血症 最低2週間
- 小児カンジダ髄膜炎 4週間以上
- 小児慢性播種性カンジダ症 3ヶ月以上
- 小児侵襲性肺アスペルギルス症 6〜12週間
治療中止の判断基準
CPFGによる治療を中止する際には以下の条件を満たしていること確認します。
臨床症状の完全消失・炎症マーカーの正常化・画像所見の著明な改善・2回以上の連続した陰性培養結果などが中止の目安となります。
ただし免疫不全状態が継続する患者さんでは症状改善後も一定期間の継続投与や他の抗真菌薬への切り替えによる維持療法を考慮します。
中止判断項目 | 基準 |
臨床症状 | 完全消失 |
CRP値 | 正常化 |
β-Dグルカン | 陰性化 |
血液培養 | 2回以上陰性 |
CPFGの治療期間決定には個々の患者さんの状態を詳細に評価して感染のコントロールと再発リスクのバランスを慎重に判断することが重要です。
カスポファンギン酢酸塩の副作用とデメリット
一般的な副作用
カスポファンギン酢酸塩(CPFG)は比較的安全性の高い抗真菌薬ですが他の薬剤と同様に副作用のリスクがあります。
最も頻繁に報告される副作用には発熱・悪心・嘔吐・頭痛・皮疹などがあります。
これらの症状は多くの場合軽度から中等度であり、治療の継続に支障をきたすことは稀です。
副作用 | 発現頻度 |
発熱 | 10-20% |
悪心・嘔吐 | 5-10% |
頭痛 | 5-10% |
皮疹 | 3-5% |
注射部位反応 | 3-5% |
肝機能への影響
CPFGは肝臓で代謝されるため肝機能への影響に注意が必要です。
肝酵素の上昇は比較的よく見られる副作用の一つであり、一部の患者さんでは顕著な肝機能障害を引き起こす可能性があります。
2018年のJournal of Antimicrobial Chemotherapyに掲載された大規模な後ろ向き研究ではCPFGによる治療を受けた患者さんの約5%で臨床的に意義のある肝機能障害が発生したと報告されています。
- AST(GOT)上昇
- ALT(GPT)上昇
- ALP上昇
- 総ビリルビン上昇
血液学的副作用
CPFGの投与に伴い血液学的な副作用が生じることがあります。
貧血・白血球減少・血小板減少などが報告されており、これらは特に長期投与や高用量投与時に注意が必要です。
血液学的副作用は多くの場合可逆的ですが重度の場合は投与中止や用量調整を検討します。
血液学的副作用 | 対応策 |
軽度貧血 | 経過観察 |
中等度貧血 | 鉄剤投与 |
白血球減少 | G-CSF投与考慮 |
血小板減少 | 用量調整 |
腎機能への影響
CPFGは主に肝臓で代謝されるため腎機能への直接的な影響は比較的少ないとされています。
しかし一部の患者さんでは腎機能障害や電解質異常が報告されています。
特に高齢者や既存の腎疾患がある患者さんでは腎機能のモニタリングが重要です。
- 血清クレアチニン上昇
- BUN上昇
- 低カリウム血症
- 低マグネシウム血症
アレルギー反応
CPFGによるアレルギー反応は稀ですが重篤な場合があります。
アナフィラキシーショックや重度の過敏症反応が報告されており特に初回投与時や再投与時には注意深い観察が必要です。
過去に他のエキノカンジン系抗真菌薬でアレルギー反応を示した患者さんでは交差反応のリスクがあるため使用を避けます。
アレルギー症状 | 緊急度 |
軽度の皮疹 | 経過観察 |
蕁麻疹 | 抗ヒスタミン薬投与 |
呼吸困難 | 酸素投与・気管支拡張薬 |
アナフィラキシー | エピネフリン投与 |
経済的デメリット
CPFGは高価な薬剤であり、長期使用による経済的負担が大きいことがデメリットの一つです。
特に予防投与や難治性感染症の長期治療では医療費の増大につながる可能性があります。
しかし適切な使用により入院期間の短縮や合併症の予防が期待できるため総合的な医療コストの観点からは有用性が高いと考えられています。
代替治療薬
アゾール系抗真菌薬
カスポファンギン酢酸塩(カンサイダス)が効果を示さない事態に直面した際はアゾール系抗真菌薬が有力な代替選択肢となります。
この薬剤群はエルゴステロールの生合成を阻害することで抗真菌作用を発揮して広範囲の真菌に対して効果を示します。
代表的な薬剤にはボリコナゾール・イトラコナゾール・ポサコナゾールなどがあり、特にアスペルギルス症に対して高い有効性を持ちます。
薬剤名 | 主な適応 |
ボリコナゾール | 侵襲性アスペルギルス症 |
イトラコナゾール | 慢性肺アスペルギルス症 |
ポサコナゾール | 予防投与・難治性真菌症 |
フルコナゾール | カンジダ症・クリプトコックス症 |
ポリエン系抗真菌薬
ポリエン系抗真菌薬は真菌細胞膜に直接作用して膜の透過性を変化させることで殺菌効果を発揮します。
この薬剤群の代表であるアムホテリシンBは広域スペクトルを有し難治性真菌症や重症感染症に対して強力な効果を示します。
リポソーム製剤の開発により従来の製剤と比較して副作用が軽減され使用しやすくなっています。
- 従来型アムホテリシンB
- リポソーム型アムホテリシンB
- アムホテリシンBリピッドコンプレックス
- アムホテリシンBコロイド分散型
他のエキノカンジン系抗真菌薬
CPFGと同じエキノカンジン系に属する他の薬剤も代替治療の選択肢となります。
ミカファンギンやアニデュラファンギンはCPFGと同様に1,3-β-D-グルカン合成酵素を阻害します。
しかし薬物動態や副作用プロファイルが異なるため個々の患者さんに応じた選択が可能です。
2020年のNew England Journal of Medicineに掲載された研究ではカンジダ血症患者さんにアニデュラファンギンがCPFGと同等の有効性を示しつつ肝機能障害のリスクが低いことが報告されています。
薬剤名 | 特徴 |
ミカファンギン | 肝代謝が少ない |
アニデュラファンギン | 薬物相互作用が少ない |
トリアゾール系新規抗真菌薬
近年開発された新しいトリアゾール系抗真菌薬はCPFGに抵抗性を示す真菌症に対しても効果を発揮する可能性があります。
イサブコナゾールは広域スペクトルを有し、ムーコル症にも効果を示すという特徴があります。
これらの新規薬剤は従来の抗真菌薬に耐性を示す菌株に対しても有効性が期待できるためCPFGが効果を示さない事例での選択肢です。
薬剤名 | 特記事項 |
イサブコナゾール | ムーコル症にも有効 |
ラブコナゾール | 開発中 |
併用療法
単剤での治療効果が不十分な場合には異なる作用機序を持つ抗真菌薬の併用療法が考慮されます。
例えばCPFGとアムホテリシンBの併用、CPFGとボリコナゾールの併用などが検討されます。
併用療法は相乗効果を期待できる一方で副作用のリスクも高まるため慎重な判断が必要です。
- CPFG + アムホテリシンB
- CPFG + ボリコナゾール
- アムホテリシンB + フルシトシン
- ボリコナゾール + アニデュラファンギン
非薬物療法の併用
薬物療法単独での効果が不十分な場合は外科的介入や免疫療法などの非薬物療法を併用することで治療効果の向上を図ることがあります。
深在性真菌症において感染巣の外科的切除や膿瘍ドレナージは重要な治療オプションです。
また顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与による免疫機能の賦活化も難治性真菌症の管理において考慮されます。
非薬物療法 | 適応 |
外科的切除 | 限局性病変 |
膿瘍ドレナージ | 膿瘍形成例 |
G-CSF投与 | 好中球減少症 |
高圧酸素療法 | ムーコル症 |
CPFGの併用禁忌
シクロスポリンとの併用
カスポファンギン酢酸塩とシクロスポリンの併用は厳重な注意が必要です。
両薬剤を併用するとCPFGの血中濃度が上昇して肝毒性のリスクが増大する可能性があります。
臨床試験では健康成人においてCPFGとシクロスポリンの併用によってCPFGのAUC(血中濃度時間曲線下面積)が約35%増加したことが報告されています。
相互作用 | 影響 |
CPFGの血中濃度上昇 | 約35%のAUC増加 |
肝酵素上昇 | AST・ALTの上昇リスク |
肝細胞障害 | 重度の場合は肝不全のリスク |
このためシクロスポリン投与中の患者さんにCPFGを使用する際は肝機能のモニタリングを頻回に行って異常が認められた際は直ちに投与を中止することが推奨されます。
リファンピシンとの併用
リファンピシンはCPFGの代謝を促進するため両薬剤の併用はCPFGの効果を減弱させる恐れがあります。
リファンピシンはCYP450酵素系を誘導してCPFGの血中濃度を低下させることが知られています。
臨床研究ではリファンピシンとの併用によってCPFGのAUCが約30%減少したという報告があります。
- CPFGの血中濃度低下
- 抗真菌効果の減弱
- 治療失敗のリスク上昇
- 耐性菌出現の可能性
これらの理由からリファンピシン投与中の患者さんにCPFGを使用する際は用量の調整や代替薬の検討が必要となります。
エファビレンツとの併用
エファビレンツはCPFGの代謝を促進する作用があり、両薬剤の併用はCPFGの効果を低下させる可能性があります。
HIV感染症患者さんの治療においてエファビレンツは重要な薬剤ですがCPFGとの相互作用には注意が必要です。
薬剤 | 影響 |
エファビレンツ | CPFGの血中濃度低下 |
CPFG | 効果減弱のリスク |
エファビレンツ投与中にCPFGを使用する際はCPFGの増量や投与間隔の調整を考慮する必要があります。
カルバマゼピンとの併用
カルバマゼピンもCPFGの代謝を促進する薬剤の一つです。
両薬剤を併用するとCPFGの血中濃度が低下して十分な抗真菌効果が得られない可能性があります。
てんかんや双極性障害の患者さんでカルバマゼピンを使用している事が多いため深在性真菌症の治療を行う際には注意が必要です。
相互作用 | 対策 |
CPFGの血中濃度低下 | 用量増量の検討 |
効果不十分 | 代替抗真菌薬の選択 |
治療失敗 | 厳重なモニタリング |
カルバマゼピン投与中にCPFGを使用する際は血中濃度のモニタリングや臨床効果の慎重な評価が重要です。
フェニトインとの併用
フェニトインはCPFGの代謝を促進してその血中濃度を低下させる可能性があります。
一方CPFGはフェニトインの血中濃度を上昇させる作用があり、両薬剤の相互作用は双方向性です。
てんかん患者さんや術後痙攣予防でフェニトインを使用している患者さんではこの相互作用に特に注意が必要です。
- CPFGの血中濃度低下によるDメリット
- フェニトインの血中濃度上昇による副作用リスク
- 治療効果のモニタリング困難
- 用量調整の複雑化
フェニトイン投与中にCPFGを使用する際は両薬剤の血中濃度モニタリングと慎重な用量調整が求められます。
ネビラピンとの併用
ネビラピンはHIV治療に用いられる非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)ですがCPFGとの相互作用が報告されています。
ネビラピンはCPFGの代謝を促進し、その血中濃度を低下させる可能性があります。
HIV感染症に合併した深在性真菌症の治療においてこの相互作用は治療効果に影響を与える可能性があるため注意が必要です。
薬剤 | 効果 | 対策 |
ネビラピン | CPFGの血中濃度低下 | 用量増量検討 |
CPFG | 抗真菌効果減弱 | 代替薬検討 |
ネビラピン投与中にCPFGを使用する際は抗真菌効果のモニタリングと必要に応じた用量調整を行うことが重要です。
CPFGの併用禁忌や相互作用に関する知識は安全かつ効果的な抗真菌治療を行う上で極めて重要です。
カンサイダスの薬価
薬価
カンサイダスの薬価は1バイアル(50mg)あたり16,296円です。
この価格設定は深在性真菌症治療における本剤の有効性と安全性を反映しています。
規格 | 薬価 |
50mg 1バイアル | 16,296円 |
70mg 1バイアル | 23,386円 |
処方期間による総額
CPFGの通常用法は1日1回50mgの投与です。
1週間処方した場合の総額は 114,072円(16,296円 × 7日)となります。
1ヶ月間処方すると488,880円(16,296円 × 30日)に達します。
- 1週間処方 171,262円
- 1ヶ月処方 488,880円
長期治療を要する患者さんの経済的負担は大きくなる傾向です。
なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
- 参考にした論文