ベバシズマブ(一般的商品名:アバスチン)とは、がん治療に用いられる分子標的薬の一種です。

この薬剤は腫瘍の血管新生を抑制する働きを持つ抗体製剤として開発されました。

主に進行性の大腸がんや肺がん、乳がんなどの治療に使用されており、従来の抗がん剤と併用することで治療効果を高めることが期待されています。

ベバシズマブの作用機序は血管内皮増殖因子(VEGF)という物質に結合してその働きを阻害することにあります。

これによりがん細胞への栄養供給を制限して腫瘍の増殖を抑える効果が得られると考えられています。

アバスチン点滴静注用400mg/16mLの添付文書 - 医薬情報QLifePro
アバスチン点滴静注用400mg/16mLの添付文書 – 医薬情報QLifePro
目次

有効成分 作用機序および効果

ベバシズマブの主成分

ベバシズマブは抗体製剤として知られる分子標的薬の一種で、その主成分はヒト化モノクローナル抗体です。

この抗体は遺伝子組換え技術を用いて作製されており血管内皮増殖因子(VEGF)に特異的に結合する性質を持っています。

主成分特徴
ヒト化モノクローナル抗体VEGF特異的結合
遺伝子組換え技術製造高い親和性

抗体の構造は人間の免疫グロブリンG1に近い形状を有しており、この特性によって体内での安定性が高まっています。

作用機序の詳細

ベバシズマブの作用機序はVEGF阻害を通じた血管新生抑制にあります。

腫瘍細胞が分泌するVEGFは周囲の血管内皮細胞に作用して新たな血管の形成を促進する役割を果たしています。

ベバシズマブはこのVEGFに結合することでその生理活性を中和し腫瘍組織への栄養供給路となる新生血管の形成を抑制します。

  • VEGFへの結合
  • 血管新生シグナルの遮断
  • 腫瘍血管形成の抑制

この過程により腫瘍組織への酸素や栄養分の供給が制限され、がん細胞の増殖抑制につながると考えられています。

血管正常化作用

興味深いことにベバシズマブには腫瘍血管を正常化する作用も報告されています。

正常化作用効果
血管構造の改善薬剤到達性向上
血流の正常化酸素供給改善

異常な構造を持つ腫瘍血管を一時的に正常化することで他の抗がん剤の腫瘍組織への到達性が向上して治療効果の増強につながる可能性があります。

臨床効果と適応疾患

ベバシズマブの臨床効果は複数のがん種において確認されています。

大腸がんや非小細胞肺がんなどの固形腫瘍に対して従来の化学療法との併用で無増悪生存期間の延長が認められています。

適応疾患併用療法
大腸がんフルオロウラシル系
非小細胞肺がんプラチナ製剤

卵巣がんや子宮頸がんなどの婦人科領域のがんにおいてもベバシズマブの有効性が示されており、治療選択肢の幅を広げています。

ベバシズマブの使用方法と注意点

投与経路と頻度

ベバシズマブは点滴静注によって投与します。

投与間隔は通常2〜3週間ごとで患者さんの状態や併用する化学療法のスケジュールに応じて調整します。

投与方法特徴
点滴静注緩徐に投与
2〜3週間間隔個別化が必要

初回投与時は慎重に経過観察を行い副作用の早期発見に努めることが重要です。

投与量の設定

ベバシズマブの投与量はがん種や併用薬剤によって異なります。

体重あたりで計算し、5〜15 mg/kgの範囲内で設定するのが一般的です。

がん種一般的投与量
大腸がん5 mg/kg
肺がん15 mg/kg

投与量の決定には患者さんの全身状態や腎機能 肝機能などを考慮し個別化したアプローチが求められます。

併用療法の選択

ベバシズマブは単剤で使用することは少なく、多くの場合他の抗がん剤と併用します。

  • フルオロウラシル系薬剤との併用(大腸がん)
  • プラチナ製剤との併用(非小細胞肺がん)

併用薬の選択はがんの種類やステージ、患者さんの状態を総合的に評価して決定します。

モニタリングの重要性

ベバシズマブ投与中は定期的な血液検査や画像検査を実施して効果判定と副作用のモニタリングを行います。

モニタリング項目頻度
血圧測定毎回投与時
尿蛋白検査2〜4週ごと

特に高血圧や蛋白尿の発現には注意を払い早期対応に努めます。

投与前の評価

ベバシズマブ投与開始前には十分な全身評価が必要です。

評価項目目的
心機能検査心毒性リスク評価
凝固系検査出血リスク評価

既往歴や併存疾患の確認も重要で特に血栓症や出血のリスクがある患者さんでは慎重な判断が求められます。

長期投与時の注意点

ベバシズマブの長期投与においては累積毒性に注意を払う必要があります。

骨髄抑制や心機能への影響などを定期的に評価して必要に応じて休薬や減量を検討します。

ある医師の臨床経験ではある高齢の大腸がん患者さんにベバシズマブを1年以上投与していましたが、徐々に疲労感が増強しQOLの低下が見られました。

注意深い観察と患者さんとの対話を通じて投与間隔を延長することで症状が改善し、治療継続が可能となった事例がありました。

このように長期投与では個々の患者さんの状態に合わせた柔軟な対応が大切です。

手術前後の使用制限

ベバシズマブは創傷治癒遅延のリスクがあるため手術前後の使用には制限があります。

手術との関係休薬期間
術前最終投与6週間前まで
術後投与再開4週間後から

予定手術の場合はこれらの期間を考慮して治療スケジュールを立てる必要があります。

適応対象となる患者

大腸がん患者における適応基準

ベバシズマブは進行・再発大腸がん患者さんに対して広く使用されています。

特に転移性大腸がんの初回治療や 二次治療以降の症例においてその有効性が認められています。

病期適応条件
初回治療切除不能進行・再発
二次治療以降前治療歴あり

腫瘍のRAS遺伝子変異の有無にかかわらず使用可能であり、幅広い患者さん層に対して投与を検討できます。

非小細胞肺がん患者への適用

非小細胞肺がんにおいてもベバシズマブは重要な治療選択肢となっています。

主に非扁平上皮癌に対して用いられ、進行・再発例や術後補助療法として使用します。

組織型適応
腺癌
扁平上皮癌×

EGFR遺伝子変異陽性例ではチロシンキナーゼ阻害剤との併用も考慮されます。

婦人科がんにおける使用対象

卵巣がんや子宮頸がんなどの婦人科領域のがんでも ベバシズマブの有効性が示されています。

  • プラチナ製剤抵抗性再発卵巣がん
  • 進行・再発子宮頸がん

これらの疾患では化学療法との併用により無増悪生存期間の延長が期待できます。

腎細胞がん患者への適応

進行腎細胞がんに対してもベバシズマブは治療オプションの一つです。

特に淡明細胞型腎細胞がんにおいて その効果が確認されています。

組織型適応
淡明細胞型
非淡明細胞型

インターフェロンαとの併用療法が標準的ですが患者さんの状態に応じて単剤使用も検討します。

神経膠芽腫患者に対する使用

再発神経膠芽腫患者さんに対してもベバシズマブの使用が承認されています。

この難治性脳腫瘍に対して単剤療法での有効性が示されており、症状緩和や生存期間延長に寄与します。

適応条件期待効果
再発例症状緩和
テモゾロミド不応例生存期間延長

腫瘍による浮腫の軽減効果も期待でき、QOL改善につながる可能性があります。

適応外使用の可能性

上記以外のがん種でもベバシズマブの有効性を示唆する報告があります。

例えば悪性胸膜中皮腫や膵臓がんなどでも臨床試験が進行中です。

がん種開発状況
胸膜中皮腫臨床試験中
膵臓がん臨床試験中

これらの疾患に対する適応拡大の可能性も視野に入れつつ今後のエビデンスの蓄積が待たれます。

患者選択の重要性

ベバシズマブの使用にあたっては慎重な患者さん選択が大切です。

以下のような因子を考慮して個々の患者さんに最適な治療法を選択します。

  • 全身状態(PS)
  • 併存疾患の有無
  • 腫瘍の進行度
  • バイオマーカーの状態

これらの要素を総合的に評価してベバシズマブ使用の適否を判断することが求められます。

治療期間

標準的な投与期間の考え方

ベバシズマブの治療期間は患者さんの状態や腫瘍の反応性によって個別に決定します。

一般的には病勢進行が確認されるまで、または許容できない副作用が出現するまで継続投与を行います。

がん種標準的投与期間
大腸がんPD確認まで
肺がん4〜6サイクル

ただし各がん種や患者さんの状況に応じて柔軟に対応することが重要です。

長期投与の利点と課題

ベバシズマブの長期投与によって腫瘍の増殖抑制効果が持続する可能性があります。

一方で累積毒性や医療経済的な負担も考慮に入れる必要があります。

長期投与の利点課題
効果の持続累積毒性
再発抑制医療費増大

ある医師の臨床経験では進行大腸がんの患者さんに3年以上ベバシズマブを継続投与したところ良好な腫瘍制御とQOLの維持を達成できました。

定期的な副作用モニタリングと用量調整を行うことで長期間の安全な投与が可能でした。

休薬期間の設定

副作用管理や患者さんのQOL向上のために計画的な休薬期間を設けることがあります。

休薬期間中も定期的な画像評価を行い再増悪の兆候がないか注意深く観察します。

休薬理由期間
副作用回復2〜4週間
QOL向上1〜3ヶ月

休薬後の再開時期は 個々の症例に応じて慎重に判断することが大切です。

維持療法としての使用

化学療法との併用後ベバシズマブ単剤での維持療法を行うケースもあります。

この戦略は特に非小細胞肺がんや卵巣がんにおいて検討されています。

  • 初期併用療法後の単剤維持
  • 定期的な効果判定と継続判断

維持療法の期間は患者さんの忍容性と腫瘍の状態を考慮しながら決定します。

治療ラインによる投与期間の違い

ベバシズマブの投与期間は使用する治療ラインによっても異なります。

一次治療では比較的長期の投与が可能な一方、後治療ラインでは短期間となる傾向があります。

治療ライン投与期間の特徴
一次治療長期継続可能
三次治療以降比較的短期

各治療ラインでの期待される効果とリスクのバランスを考慮して投与期間を設定します。

患者希望を考慮した期間設定

治療期間の決定には医学的判断に加えて患者さんの希望や生活スタイルも考慮することが重要です。

長期投与に伴う通院負担や経済的側面についても十分に話し合いながら最適な投与計画を立てます。

考慮すべき要素内容
患者さんの希望生活の質 継続意思
社会的要因仕事 家庭環境

患者さんとの対話を通じて個々のニーズに合わせた柔軟な治療期間の設定を心がけます。

治療効果判定と期間延長

ベバシズマブの投与継続の判断には定期的な治療効果判定が欠かせません。

画像診断や腫瘍マーカーの推移を総合的に評価して投与期間の延長について検討します。

  • CTやMRIによる腫瘍縮小効果の確認
  • 腫瘍マーカーの低下や安定化の持続

これらの客観的指標と患者さんの全身状態を勘案しながら継続投与の是非を判断します。

副作用とデメリット

高血圧

ベバシズマブ投与に伴う高血圧は最も頻度の高い副作用の一つです。

血管内皮増殖因子(VEGF)阻害作用により血管収縮が生じ 血圧上昇を引き起こします。

重症度発現頻度
全グレード約40%
グレード3以上約10%

定期的な血圧測定と必要に応じた降圧薬の使用により 多くの症例では管理可能です。

蛋白尿

ベバシズマブによる糸球体機能障害の結果蛋白尿が出現することがあります。

糸球体内皮細胞の障害や基底膜の変化が原因と考えられています。

重症度対応
軽度経過観察
中等度減量検討
重度休薬・中止

尿蛋白/クレアチニン比の定期的なモニタリングが重要です。

創傷治癒遅延

VEGF阻害作用により創傷治癒過程に影響を与える点に注意しなければなりません。

手術予定がある際には投与のタイミングを慎重に検討する必要があります。

  • 予定手術前の投与中止期間 4〜6週間
  • 術後の投与再開 創傷治癒確認後

特に大きな手術や複雑な手術ではより慎重な対応が求められます。

消化管穿孔

稀ではありますが重篤な副作用として消化管穿孔のリスクがあります。

腹痛や発熱などの症状出現時には速やかな精査が必要です。

リスク因子注意点
消化管腫瘍慎重投与
消化管潰瘍併用薬考慮

ある医師の臨床経験では大腸がん患者さんにベバシズマブを投与中に突然の強い腹痛を訴えた症例がありました。

CT検査で消化管穿孔と診断して緊急手術を行いましたが早期発見・早期対応により良好な転帰を得られました。

出血

ベバシズマブは出血のリスクを増加させる可能性があり、特に中枢神経系や肺での出血には注意が必要です。

出血部位注意すべき症状
脳出血頭痛 意識障害
肺出血喀血 呼吸困難

抗凝固薬や抗血小板薬との併用には十分な注意を払います。

血栓塞栓症

静脈血栓塞栓症や動脈血栓塞栓症のリスクが上昇することがあります。特に高齢者や既往歴のある患者さんでは注意深い観察が大切です。

  • 深部静脈血栓症の症状 下肢の腫脹・疼痛
  • 肺塞栓症の症状 呼吸困難・胸痛

これらの症状が出現した際には速やかに医療機関を受診するよう患者さん教育を行います。

可逆性後白質脳症症候群

稀ではありますが重篤な神経症状を呈する可逆性後白質脳症症候群(PRES)に注意が必要です。

頭痛・痙攣・視覚障害などの症状が特徴的です。

症状対応
軽度頭痛経過観察
痙攣発作即時中止

MRI検査で特徴的な所見が見られ、早期発見・早期対応が予後改善につながります。

心機能障害

長期投与によって心機能低下のリスクが増加する点に留意が必要で特に心疾患の既往がある患者さんでは定期的な心機能評価が重要です。

評価項目頻度
心エコー3-6ヶ月毎
BNP測定適宜

心不全症状の早期発見と必要に応じた投与中止や減量の判断が求められます。

骨髄抑制

ベバシズマブ自体の骨髄抑制作用は軽度ですが併用する化学療法の影響で血球減少が増強されることがあります。

定期的な血液検査によるモニタリングが不可欠です。

  • 白血球減少 感染リスク上昇
  • 血小板減少 出血リスク上昇

これらの副作用に対しては適切な支持療法と投与スケジュールの調整で対応します。

ベバシズマブ(Bevacizumab)の効果がなかった場合の代替治療薬

他の血管新生阻害薬

ベバシズマブが効果を示さなかった症例においても別の血管新生阻害薬が有効な選択肢となりうります。

ラムシルマブやアフリベルセプトなどの薬剤が代替治療として考慮されます。

薬剤名標的分子
ラムシルマブVEGFR-2
アフリベルセプトVEGF-A,B,PlGF

これらの薬剤はベバシズマブとは異なる作用機序や親和性を持つため耐性化した腫瘍に対しても効果を発揮する可能性があります。

チロシンキナーゼ阻害薬

経口の分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害薬も代替治療の選択肢として挙げられます。

具体的にはスニチニブやソラフェニブなどの薬剤です。

薬剤名主な適応がん
スニチニブ腎細胞がん
ソラフェニブ肝細胞がん

これらの薬剤は血管新生阻害に加えて腫瘍細胞の増殖シグナルも抑制するため 幅広い抗腫瘍効果が期待できます。

免疫チェックポイント阻害薬

近年免疫チェックポイント阻害薬が様々ながん種で有効性を示しています。

ニボルマブやペムブロリズマブなどの薬剤が代表的な選択肢です。

  • PD-1阻害薬 ニボルマブ ペムブロリズマブ
  • PD-L1阻害薬 アテゾリズマブ デュルバルマブ

これらの薬剤は患者さん自身の免疫系を活性化させることで抗腫瘍効果を発揮します。

従来型の細胞障害性抗がん剤

ベバシズマブ耐性例においては従来型の細胞障害性抗がん剤への切り替えも選択肢となります。

プラチナ製剤やタキサン系薬剤などが代表的な薬剤群です。

薬剤群代表的薬剤
プラチナ製剤シスプラチン
タキサン系パクリタキセル

これらの薬剤は広範な抗腫瘍スペクトラムを持つため様々ながん種に対して効果を発揮します。

PARP阻害薬

特定の遺伝子変異を有するがんにおいてはPARP阻害薬が有効な選択肢となります。

例えばオラパリブやニラパリブなどの薬剤です。

薬剤名主な適応
オラパリブBRCA変異陽性卵巣がん
ニラパリブ卵巣がん維持療法

これらの薬剤はDNA修復機構を阻害することで特定の遺伝子変異を持つがん細胞に対して高い効果を示します。

mTOR阻害薬

一部の固形がんにおいてはmTOR阻害薬が代替治療として考慮されます。

エベロリムスやテムシロリムスなどが代表的な薬剤です。

  • 腎細胞がん
  • 乳がん(ホルモン受容体陽性HER2陰性)

これらの薬剤は細胞増殖や血管新生に関与するmTORシグナル経路を阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。

がん種特異的な分子標的薬

特定のがん種においてはその特性に応じた分子標的薬が選択肢となります。

例えばHER2陽性乳がんではトラスツズマブやペルツズマブなどの抗HER2薬が考慮されます。

がん種代表的分子標的薬
HER2陽性乳がんトラスツズマブ
EGFR変異陽性肺がんオシメルチニブ

これらの薬剤はがん細胞特有の分子異常を標的とするため高い特異性と効果が期待できます。

ある医師の臨床経験では大腸がんの患者さんにベバシズマブを使用したものの効果不十分だったケースがありました。

その際 ラムシルマブへの切り替えを行ったところ腫瘍の縮小と症状の改善が得られ、治療継続が可能となりました。

薬剤の特性を理解して個々の患者さんの状況に応じて柔軟に治療戦略を立てることが大切です。

併用禁忌

抗凝固薬との併用

ベバシズマブは出血リスクを増加させる作用があるため抗凝固薬との併用には特に注意が必要です。

ワルファリンやヘパリンなどの抗凝固薬を使用中の患者さんでは出血性有害事象のリスクが著しく上昇する危険性があります。

抗凝固薬併用時のリスク
ワルファリン重度出血
ヘパリン消化管出血

これらの薬剤との併用を避けるか極めて慎重な管理下でのみ行うべきです。

血小板凝集抑制薬との相互作用

アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬もベバシズマブとの併用に注意が必要です。

これらの薬剤は血小板の凝集を抑制して出血傾向を助長する可能性が生じます。

  • アスピリン 消化管出血リスク上昇
  • クロピドグレル 出血時間延長

併用が避けられない状況では頻回の血液検査と慎重な経過観察が重要です。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)との相互作用

イブプロフェンやナプロキセンなどのNSAIDsはベバシズマブとの併用で消化管穿孔のリスクを高める可能性があります。

特に消化管病変を有する患者さんでは注意深い観察が必要です。

NSAID注意すべき副作用
イブプロフェン消化管潰瘍
ナプロキセン消化管出血

長期的なNSAIDsの使用は避けて必要な際は短期間の使用にとどめるべきです。

放射線療法との併用

ベバシズマブと放射線療法の併用は正常組織の放射線感受性を増強させる可能性があります。

特に中枢神経系への照射との併用では重篤な合併症のリスクが上昇します。

照射部位併用時のリスク
放射線壊死
胸部食道炎

放射線療法との併用を検討する際は慎重なリスク評価と患者さんへの十分な説明が大切です。

他の血管新生阻害薬との併用

ベバシズマブと他の血管新生阻害薬(スニチニブやソラフェニブなど)との併用は一般的に推奨されません。

これらの薬剤を同時に使用することで血管新生阻害作用が過剰となり重篤な副作用のリスクが高まる恐れがあります。

  • 高血圧の増悪
  • 蛋白尿の増加

各薬剤の特性を理解し患者さんの状態に応じて単剤での使用を検討することが望ましいです。

免疫抑制剤との相互作用

臓器移植後の患者さんや自己免疫疾患で免疫抑制剤を使用中の患者さんではベバシズマブの使用に特別な注意が必要です。

免疫抑制状態下でのベバシズマブ投与は感染症リスクの上昇や創傷治癒遅延のリスクを増大させる可能性があります。

免疫抑制剤注意点
シクロスポリン腎機能悪化
タクロリムス高血圧増悪

これらの薬剤を使用中の患者さんではベバシズマブの投与開始前に十分なリスク評価を行うことが重要です。

妊娠中の使用

ベバシズマブは胎児への影響が懸念されるため妊娠中または妊娠の可能性がある女性への投与は避けるべきです。

妊娠中の使用は催奇形性のリスクや流産のリスクを高める可能性があります。

妊娠時期リスク
第1三半期器官形成異常
第2三半期以降胎児発育遅延

ベバシズマブ投与中は確実な避妊法の使用が必要であり、投与終了後も一定期間の避妊継続が推奨されます。

ベバシズマブ(Bevacizumab)の薬価

ベバシズマブの薬価は規格や製剤によって異なります。

規格薬価
100mg/4mL28,710円
400mg/16mL107,607円

一般的に体重あたりの用量で投与するため患者さん個々の体格により必要量が変動します。

処方期間による総額

標準的な投与量(7.5mg/kg)で例えば体重67kgの患者さんが2週間に1回での処方の場合には136,317円となります。

同条件で1ヶ月処方になると272,634円程度という試算です。

処方期間概算総額
1週間136,317円
1ヶ月272,634円

ただし実際の費用は投与スケジュールや併用薬により変動するため、上記はあくまで目安です。

ジェネリック医薬品との比較

現時点でベバシズマブのジェネリック医薬品はさまざまな会社より発売されています。

製品価格
アバスチン点滴静注用400mg/16mL
(先発品)
107,607円
ベバシズマブBS点滴静注400mg「ファイザー」
(後発品)
30,602円
ベバシズマブBS点滴静注400mg「第一三共」
(後発品)
33,867円

このようにジェネリック医薬品を使用することで、医療費のかなりの軽減が見込めます。

なお、上記の価格は2024年8月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文