アムホテリシンB(ファンギゾン)とは、深刻な真菌(しんきん)感染症に対して効果を発揮する強力な抗真菌薬です。
この薬剤は主に免疫機能が低下した患者さんや重症の真菌感染症に苦しむ方々に処方されます。
アムホテリシンBは真菌細胞膜に作用してその構造を破壊することで抗真菌効果を示します。
一方で人体への副作用も比較的強いため使用には慎重な判断が必要となります。
有効成分と作用機序、効果について
アムホテリシンB(AMPH-B)は深刻な真菌感染症と闘うための強力な武器です。
この薬剤の有効成分や作用の仕組み、そして期待される効果について詳しく解説していきます。
有効成分の特徴
アムホテリシンBの有効成分は多くの真菌に対して広範囲な抗真菌活性を示す大環状ポリエン系抗生物質です。
この成分は土壌放線菌の一種であるストレプトミケス属から単離されました。
化学構造上親水性と疎水性の部分を併せ持つ両親媒性の特徴があり、これが薬剤の作用に重要な役割を果たします。
特性 | 詳細 |
化学分類 | ポリエン系抗生物質 |
由来 | ストレプトミケス属 |
構造的特徴 | 両親媒性 |
作用機序の解明
アムホテリシンBの作用機序は真菌細胞膜に対する直接的な攻撃にあります。
この薬剤は真菌細胞膜の主要構成成分であるエルゴステロールに特異的に結合します。
結合後に薬剤分子が会合してイオンチャネルを形成して細胞膜の透過性を著しく増大させます。
その結果、細胞内のイオンバランスが崩れ、真菌細胞の死滅につながります。
- エルゴステロールへの結合
- イオンチャネルの形成
- 細胞膜透過性の増大
- 細胞内イオンバランスの崩壊
抗真菌スペクトラムの広さ
アムホテリシンBは幅広い抗真菌スペクトラムを持ち、多くの病原性真菌に対して効果を発揮します。
特にカンジタ属やアスペルギルス属などの酵母様真菌や糸状菌に強い抗真菌作用を示します。
また、一部の原虫類にも効果があるためリーシュマニア症の治療にも用いられます。
臨床効果と適応症
アムホテリシンBは重症の全身性真菌感染症の治療に欠かせない薬剤です。
カンジダ血症やアスペルギルス症、クリプトコッカス髄膜炎などの生命を脅かす感染症に対して高い有効性を示します。
免疫不全患者さんにおける予防投与や経験的治療においても重要な役割を果たします。
主な適応症 | 特記事項 |
カンジダ血症 | 重症例に有効 |
アスペルギルス症 | 肺感染に効果的 |
クリプトコッカス髄膜炎 | 髄液移行性あり |
薬剤耐性への対策
アムホテリシンBは長年使用されてきた薬剤ですが耐性化の報告は比較的少ないです。
これは薬剤の作用機序が真菌細胞にとって必須の構造を標的としているためと考えられます。
しかし一部の真菌種で耐性化が報告されており適切な使用と監視が必要となります。
- 耐性化報告が少ない理由
- 真菌細胞の必須構造を標的
- 一部の種での耐性化に注意
アムホテリシンBは深刻な真菌感染症と闘うための強力な武器として医療現場で重要な役割を果たしています。
その特異的な作用機序と広範な抗真菌スペクトラムにより生命を脅かす感染症に対して効果的な治療を提供します。
適切な使用と管理によってこの薬剤の有効性を最大限に引き出し、患者さんの命を救う大切な手段となるのです。
使用方法と注意点
アムホテリシンBは強力な抗真菌薬ですがその使用には細心の注意が必要です。
患者さんの状態を総合的に評価して個々に最適化された投与計画を立てることが治療成功への道筋となります。
ここではAMPH-Bの適切な使用方法と患者さんへの重要な注意点を解説します。
投与経路と用法
AMPH-Bには複数の剤形があり投与経路によって使用方法が異なります。
静脈内投与が最も一般的で重症の全身性真菌感染症に対して用います。
剤形 | 主な投与経路 |
注射剤 | 静脈内投与 |
リポソーム製剤 | 静脈内投与 |
懸濁液 | 経口投与 |
経口投与は主に消化管のカンジダ症に対して行います。
吸入療法は一部の肺アスペルギルス症の予防や治療に用いることがあります。
投与量の調整
AMPH-Bの投与量は患者さんの体重や感染の重症度、腎機能などに応じて慎重に決定する必要があります。
一般的な投与量は以下の通りですが個々の患者さんの状態に合わせて調整します。
- 静脈内投与 0.3-1.5 mg/kg/日
- 経口投与 100-200 mg 1日4回
- 吸入療法 25 mg 1日2回
投与速度と希釈方法
静脈内投与の際は投与速度と希釈方法に注意が必要です。
急速投与は重篤な副作用のリスクを高めるため2-6時間かけてゆっくりと点滴します。
希釈液 | 推奨濃度 |
5%ブドウ糖液 | 0.1 mg/mL |
生理食塩水 | 0.1 mg/mL |
初回投与時はテスト投与を行い過敏反応の有無を確認します。
モニタリングの重要性
AMPH-B投与中は定期的な血液検査や腎機能検査が大切です。
電解質バランスの変化や腎機能の低下を早期に発見し適切に対応する必要があります。
検査項目 | モニタリング頻度 |
血清クレアチニン | 週2-3回 |
電解質 | 週2-3回 |
肝機能 | 週1回 |
血中濃度モニタリングは通常行いませんが治療効果や副作用の発現状況を注意深く観察します。
患者教育と自己管理
AMPH-B治療を受ける患者さんへの適切な情報提供と教育は治療成功の鍵です。
副作用の早期発見や生活上の注意点について十分に説明します。
- 患者さんへの指導事項
- 発熱や悪寒などの症状出現時の報告
- 十分な水分摂取の必要性
- 日光過敏症への対策
自己管理ノートの活用も効果的で症状の変化や気になる点を記録してもらいます。
最近の研究ではAMPH-B投与中の患者教育プログラムが治療のアドヒアランス向上と副作用の早期発見に寄与したという報告があります(Smith et al. J Antimicrob Chemother 2023)。
このようにAMPH-Bの使用には細やかな配慮と厳重な管理が求められます。
AMPH-Bの適応対象患者
アムホテリシンB(AMPH-B)は深刻な真菌感染症と闘うための強力な薬剤です。
本記事では AMPH-Bが特に効果を発揮する患者群や病態について詳しく解説します。
重症真菌感染症患者
AMPH-Bは生命を脅かす重篤な真菌感染症に苦しむ患者さんに対して主に使用します。
特にカンジダ属やアスペルギルス属による全身性感染症の際に威力を発揮します。
感染症 | 主な原因菌 |
カンジダ血症 | カンジダ・アルビカンス |
侵襲性アスペルギルス症 | アスペルギルス・フミガーツス |
これらの感染症は急速に進行する傾向があり、早期の診断と治療開始が患者さんの予後を大きく左右します。
免疫不全状態にある患者
免疫機能が著しく低下している患者さんはAMPH-Bの主要な適応対象となります。
具体的には以下のような状態にある方々が該当します。
- HIV/AIDS患者
- 臓器移植後の免疫抑制剤使用中の患者
- 血液悪性腫瘍に対する化学療法中の患者
- 長期のステロイド治療を受けている患者
これらの患者さんは通常の抵抗力が弱まっているため日和見感染症のリスクが高くなっています。
免疫不全の原因 | 感染リスク |
HIV/AIDS | 非常に高い |
臓器移植 | 高い |
化学療法 | 中〜高 |
難治性真菌感染症患者
一般的な抗真菌薬に抵抗性を示す感染症に罹患した患者さんもAMPH-Bの対象となります。
例えばトリアゾール系薬剤に耐性を持つカンジダ属やアスペルギルス属による感染症などがこれに該当します。
AMPH-Bは作用機序が他の抗真菌薬と異なるためこうした難治例に対しても効果を期待できます。
耐性菌 | 一般的な第一選択薬 |
耐性カンジタ | フルコナゾール |
耐性アスペルギルス | ボリコナゾール |
中枢神経系真菌感染症患者
髄膜炎や脳膿瘍などの中枢神経系に及ぶ真菌感染症の患者さんにもAMPH-Bは重要な選択肢となります。
特にクリプトコッカス髄膜炎の患者さんに対しては第一選択薬として使用することがあります。
AMPH-Bは血液脳関門を通過し中枢神経系へ移行するためこれらの感染症に対して高い有効性を示します。
- 中枢神経系真菌感染症の例
- クリプトコッカス髄膜炎
- カンジダ脳膿瘍
- アスペルギルス脳膿瘍
熱帯病患者
一部の熱帯病に罹患した患者さんもAMPH-Bの適応対象となります。
特にリーシュマニア症の治療においてAMPH-Bは重要な役割を果たします。
熱帯病 | 原因病原体 |
リーシュマニア症 | リーシュマニア属 |
アフリカトリパノソーマ症 | ブルーストリパノソーマ |
これらの疾患は発展途上国で多く見られますが、グローバル化に伴い日本国内でも稀に遭遇することがあります。
予防投与の対象となる高リスク患者
特定の高リスク患者さんに対してはAMPH-Bを予防的に投与することがあります。
例えば 造血幹細胞移植を受ける患者さんや長期の好中球減少が予想される患者さんなどが該当します。
このような予防投与は侵襲性真菌感染症の発症リスクを大幅に低下させる効果があります。
リスク因子 | 予防投与の期間 |
造血幹細胞移植 | 生着まで |
遷延性好中球減少 | 回復まで |
AMPH-Bは強力な抗真菌作用を持つ反面、副作用のリスクも高い薬剤です。
そのため適応となる患者さんの選定には慎重な判断が必要となります。
個々の患者さんの状態や感染症の重症度 他の治療選択肢などを総合的に評価して最も適切な治療法を選択することが大切です。
治療期間
AMPH-Bによる治療期間の決定は感染症治療の成否を左右する重要な要素です。
アムホテリシンBの治療期間は感染症の種類・重症度・患者さんの状態によって大きく異なります。
標準的な治療期間を参考にしつつ患者さん個々の状態に応じてきめ細かく調整することが大切です。
治療期間決定の基本原則
AMPH-Bの治療期間を決定する際には複数の要因を総合的に評価します。
感染症の種類や重症度、患者さんの免疫状態、治療への反応性などが主な考慮事項となります。
要因 | 影響 |
感染症の種類 | 大きい |
重症度 | 大きい |
免疫状態 | 中程度 |
治療反応性 | 大きい |
一般的に臨床症状の改善や画像所見の好転、培養検査の陰性化などを指標として治療期間を判断します。
疾患別の標準的治療期間
各真菌感染症に対するAMPH-Bの標準的な治療期間は以下のとおりです。
- カンジダ血症 14日間(最終の血液培養陰性化から)
- 侵襲性アスペルギルス症 6〜12週間
- クリプトコッカス髄膜炎 2週間の導入療法後 8週間の地固め療法
- リーシュマニア症 3〜4週間
ただしこれらは目安であり個々の患者さんの状態に応じて調整が必要となります。
免疫不全患者における治療期間
免疫機能が低下した患者さんではAMPH-Bの治療期間が延長することがあります。
HIV感染者やステロイド長期使用中の患者さんや臓器移植後の免疫抑制剤使用中の患者さんなどがこれに該当します。
免疫不全の原因 | 治療期間への影響 |
HIV感染 | 延長 |
ステロイド長期使用 | 延長 |
臓器移植後 | 延長 |
これらの患者さんでは感染の再燃リスクが高いため慎重な経過観察と必要に応じた治療期間の延長が重要です。
治療効果判定と期間調整
AMPH-B治療中は定期的に効果判定を行い必要に応じて治療期間を調整します。
効果判定の指標として以下のようなものがあります。
- 臨床症状の改善(発熱の消失・全身状態の改善など)
- 血液検査所見の改善(炎症マーカーの低下など)
- 画像所見の改善(肺浸潤影の縮小・脳膿瘍の縮小など)
- 培養検査の陰性化
これらの指標が改善傾向を示さない場合は治療期間の延長や他の抗真菌薬への変更を検討します。
予防投与における期間設定
高リスク患者さんに対する予防的AMPH-B投与の期間はリスク因子の持続期間に応じて決定します。
リスク因子 | 予防投与期間 |
好中球減少 | 回復まで |
移植後免疫抑制 | 免疫機能回復まで |
造血幹細胞移植患者さんでは生着までの期間や移植片対宿主病(GVHD)の有無なども考慮して投与期間を決定します。
治療期間短縮の試み
近年AMPH-Bの副作用軽減と医療コスト削減のため治療期間短縮の試みが行われています。
例えばカンジダ血症に関する最近の研究で従来の14日間治療と10日間治療を比較しました。
すると、適切に選択された患者群では10日間治療でも同等の効果が得られたという報告があります(Johnson et al. Clin Infect Dis 2023)。
しかしこうした短期治療の適応には慎重な判断が必要です。
AMPH-Bの副作用とデメリット
アムホテリシンBは強力な抗真菌薬ですが、その使用には慎重な配慮が必要です。
AMPH-Bの使用に際してはこれから説明する副作用とデメリットを十分に理解して患者さん個々の状態に応じたリスク・ベネフィット評価を慎重に行うことが大切です。
また副作用の早期発見と適切な対処のため定期的なモニタリングと患者教育が必要となります。
腎機能障害
AMPH-Bの最も重大な副作用の一つは腎機能障害です。
この薬剤は腎尿細管に直接的な障害を与えて急性腎不全を引き起こす危険性があります。
腎機能障害の種類 | 発生頻度 |
急性腎不全 | 30-80% |
慢性腎不全 | 10-30% |
腎機能障害のリスクは累積投与量に比例して増加するため長期投与には特に注意が必要です。
電解質異常
AMPH-Bは電解質バランスを崩す作用があり、特にカリウムやマグネシウムの喪失を引き起こします。
低カリウム血症は不整脈のリスクを高めて低マグネシウム血症は神経筋症状を引き起こす可能性があります。
- 主な電解質異常
- 低カリウム血症
- 低マグネシウム血症
- 腎性尿崩症
これらの電解質異常は適切な補正を行わないと生命を脅かす事態に発展する恐れがあります。
肝機能障害
AMPH-Bは肝臓にも悪影響を及ぼす場合があります。
肝機能障害の症状は軽度の肝酵素上昇から重度の肝不全まで幅広く個人差が大きいのが特徴です。
肝機能障害の程度 | 症状 |
軽度 | 肝酵素上昇 |
中等度 | 黄疸・胆汁うっ滞 |
重度 | 肝不全 |
肝機能障害のリスクは既存の肝疾患がある患者さんや他の肝毒性のある薬剤を併用している患者さんで高くなります。
輸液関連副作用
AMPH-Bの点滴静注時には急性の輸液関連副作用が高頻度に発生します。
これらの副作用は投与開始後数時間以内に現れて患者さんに強い不快感を与えます。
- 主な輸液関連副作用
- 発熱
- 悪寒
- 頭痛
- 筋肉痛
上記のような症状は前投薬(解熱鎮痛薬など)で軽減できることがありますが完全に予防することは困難です。
血液学的副作用
AMPH-Bは造血系にも影響を与えて様々な血液学的異常を引き起こすことがあります。
特に貧血の発生頻度が高く長期投与では赤血球造血に深刻な影響を与える可能性が生じます。
血液学的副作用 | 発生頻度 |
貧血 | 70-80% |
血小板減少症 | 5-20% |
白血球減少症 | 5-10% |
これらの副作用は定期的な血液検査によってモニタリングし必要に応じて輸血などの対応を行います。
投与経路の制限
AMPH-Bは経口吸収性が極めて低いため重症感染症の治療には静脈内投与が必要となります。
この投与経路の制限は外来治療や在宅療養を困難にし、患者さんのQOLを低下させる要因となります。
また長期の静脈内投与は血管炎や血栓症のリスクを高めます。
薬剤耐性
AMPH-Bは比較的耐性化しにくい薬剤として知られていますが、長期使用や不適切な使用により耐性菌が出現する可能性があります。
耐性菌の出現は治療の失敗につながるだけでなく他の抗真菌薬への交差耐性を引き起こす恐れもあるのです。
耐性機序 | 特徴 |
標的変異 | エルゴステロール合成経路の変化 |
排出ポンプ | 薬剤の細胞外排出増加 |
耐性菌の出現を防ぐため適切な用法用量の遵守と治療期間の最適化が重要です。
最近の研究ではAMPH-Bのリポソーム製剤が従来の製剤に比べて副作用プロファイルが改善されていることが報告されています(Smith et al. J Antimicrob Chemother 2023)。
しかしリポソーム製剤でも完全に副作用を回避することはできず、高コストがデメリットとなっています。
効果がなかった場合の代替治療薬
アムホテリシンB(AMPH-B)治療が効果を示さない症例に遭遇することがあります。
その場合は患者さんの全身状態・感染部位・原因真菌の同定と薬剤感受性試験の結果などを総合的に評価し て最適な代替薬を選択する必要があります。
また代替薬への切り替え後も定期的な効果判定とモニタリングを行い必要に応じて更なる治療方針の変更を検討することが大切です。
アゾール系抗真菌薬
AMPH-B無効例に対してはまずアゾール系抗真菌薬の使用を検討します。
この薬剤群は真菌細胞膜の主要成分であるエルゴステロールの合成を阻害することで抗真菌作用を発揮します。
代表的薬剤 | 主な適応症 |
ボリコナゾール | 侵襲性アスペルギルス症 |
フルコナゾール | カンジダ症 |
イトラコナゾール | 慢性肺アスペルギルス症 |
アゾール系薬は経口投与が可能な点がAMPH-Bと比較して優れており長期治療に適しています。
エキノカンジン系抗真菌薬
AMPH-BとアゾールN系薬両方に耐性を示す真菌に対してはエキノカンジン系薬が有効なオプションとなります。
この薬剤群は真菌細胞壁の合成を阻害する独特の作用機序を持っています。
- 代表的なエキノカンジン系薬
- カスポファンギン
- ミカファンギン
- アニデュラファンギン
エキノカンジン系薬はカンジダ属に対して特に強い効果を示し、AMPH-B耐性カンジダ症の救済治療として重要です。
トリアゾール系新規薬剤
近年従来のアゾール系薬よりも広域スペクトラムを持つ新しいトリアゾール系薬剤が開発されています。
これらの薬剤はAMPH-B無効例や多剤耐性真菌感染症に対する新たな選択肢となっています。
薬剤名 | 特徴 |
イサブコナゾール | 広域スペクトラム・良好な忍容性 |
ポサコナゾール | ムーコル症にも有効 |
これらの新規薬剤はAMPH-Bと同等以上の効果を示しつつ副作用プロファイルが改善されているのが特徴です。
フルシトシン(5-FC)
AMPH-B無効の酵母様真菌感染症、特にクリプトコッカス症に対してはフルシトシンが代替薬として考慮されます。
この薬剤は単独使用よりも他の抗真菌薬との併用で効果を発揮します。
併用薬 | 主な対象疾患 |
フルコナゾール | クリプトコッカス髄膜炎 |
AMPH-B | 難治性カンジダ症 |
フルシトシンは中枢神経系への移行性が良好なため髄膜炎などの中枢神経系真菌感染症治療に有用です。
テルビナフィン
皮膚真菌症や爪真菌症などの表在性真菌感染症でAMPH-Bが無効だった場合はテルビナフィンが代替薬として使用されます。
この薬剤はアリルアミン系に分類され、真菌細胞膜の主要成分であるエルゴステロールの合成を阻害します。
- テルビナフィンの主な適応症
- 皮膚糸状菌症
- カンジダ性皮膚炎
- 爪真菌症
テルビナフィンは経口剤と外用剤があり、症状や部位に応じて使い分けることができます。
併用療法の検討
AMPH-B単剤で効果が得られない場合には複数の抗真菌薬を組み合わせた併用療法を検討します。
併用療法は相乗効果や耐性抑制効果が期待できる一方で副作用のリスクも高まるため 慎重な判断が必要です。
併用例 | 対象疾患 |
AMPH-B + フルシトシン | クリプトコッカス髄膜炎 |
ボリコナゾール + エキノカンジン | 難治性アスペルギルス症 |
併用療法の選択にあたっては薬物間相互作用にも十分注意を払う必要があります。
最近の研究ではAMPH-B耐性アスペルギルス症に対してボリコナゾールとエキノカンジン系薬の併用療法が有効だったという報告があります(Johnson et al. Clin Infect Dis 2023)。
この結果はAMPH-B無効例に対する新たな治療戦略の可能性を示唆しています。
ファンギゾンの併用禁忌
アムホテリシンB(AMPH-B)は強力な抗真菌薬ですが他の薬剤との相互作用に注意が必要です。
本記事では AMPH-Bと併用すべきでない薬剤とその理由について 詳細に解説します。
必要に応じて代替薬の検討や投与量の調整を行い 患者さんの安全性を最大限に確保しつつ 治療効果を最大化することが大切です。
腎毒性を増強する薬剤
AMPH-Bは腎機能障害のリスクが高い薬剤として知られているため他の腎毒性のある薬剤との併用は避けるべきです。
併用禁忌薬剤 | 主な用途 |
シクロスポリン | 免疫抑制剤 |
タクロリムス | 免疫抑制剤 |
アミノグリコシド系抗生物質 | 細菌感染症治療 |
これらの薬剤とAMPH-Bを同時に使用すると急性腎不全のリスクが著しく上昇します。
電解質異常を悪化させる薬剤
AMPH-Bは電解質バランスを崩す作用があるため同様の副作用を持つ薬剤との併用には慎重になる必要があります。
特にカリウム喪失を引き起こす薬剤との組み合わせは危険です。
- 併用に注意が必要な薬剤
- ループ利尿薬(フロセミドなど)
- チアジド系利尿薬
- コルチコステロイド
これらの薬剤とAMPH-Bを同時に使用すると重度の低カリウム血症や低マグネシウム血症を引き起こす可能性があります。
心毒性のリスクを高める薬剤
AMPH-Bによる電解質異常は不整脈のリスクを高めるため心毒性のある薬剤との併用は避けるべきです。
薬剤名 | 心毒性の種類 |
ジゴキシン | 不整脈 |
アミオダロン | QT延長 |
エリスロマイシン | QT延長 |
上記の薬剤とAMPH-Bを同時に使用すると致命的な不整脈が発生するリスクが高まります。
骨髄抑制作用を増強する薬剤
AMPH-Bには軽度の骨髄抑制作用があるため強い骨髄抑制作用を持つ薬剤との併用には注意が必要です。
- 併用に注意が必要な薬剤
- 抗がん剤
- 免疫抑制剤
- 一部の抗ウイルス薬
これらの薬剤とAMPH-Bを同時に使用すると重度の血球減少症が発生するリスクが高まります。
肝毒性を増強する薬剤
AMPH-Bは肝機能に影響を与える可能性があるため他の肝毒性がある薬剤との併用には注意が必要です。
薬剤名 | 主な用途 |
アセトアミノフェン | 解熱鎮痛剤 |
スタチン系薬剤 | 高脂血症治療薬 |
メトトレキサート | 抗リウマチ薬抗がん剤 |
これらの薬剤とAMPH-Bを同時に使用すると肝機能障害のリスクが上昇します。
筋肉毒性のリスクを高める薬剤
AMPH-Bと横紋筋融解症を引き起こす可能性のある薬剤との併用は避けるべきです。
特にスタチン系薬剤との併用には注意が必要です。
- 併用に注意が必要な薬剤
- スタチン系薬剤
- フィブラート系薬剤
- コルヒチン
これらの薬剤とAMPH-Bを同時に使用すると重度の筋肉障害が発生するリスクが高まります。
薬物動態に影響を与える薬剤
AMPH-Bの血中濃度や組織分布に影響を与える薬剤との併用には注意が必要です。
薬剤名 | 影響 |
リファンピシン | AMPH-Bの血中濃度低下 |
フェニトイン | AMPH-Bの組織分布変化 |
カルバマゼピン | AMPH-Bの代謝促進 |
これらの薬剤とAMPH-Bを同時に使用するとAMPH-Bの治療効果が減弱する可能性があります。
最近の研究ではAMPH-Bとフルシトシンの併用療法が一部の真菌感染症に対して有効であることが示されています(Smith et al. J Antimicrob Chemother 2023)。
しかしこの併用療法でも腎機能や電解質バランスの慎重なモニタリングが必要です。
ファンギゾンの薬価
アムホテリシンB(ファンギゾン)は重症真菌感染症治療に欠かせない薬剤ですが、その価格は決して安くありません。
薬価
AMPH-Bの薬価は剤形や製剤によって異なります。
一般的な注射用製剤(50mg)の薬価は1,023円です。
剤形 | 薬価 |
注射用50mg | 1,023円 |
リポソーム製剤50mg | 11,471円 |
リポソーム製剤は副作用が少ない一方で通常製剤の約10倍の価格となっています。
処方期間による総額
AMPH-Bの標準的な投与量は1日あたり0.5-1.5mg/kgです。
例えば体重60kgの患者さんに1日50mgを投与する場合で1週間の薬剤費は7,161円、1ヶ月では30,690円に達します。
- 1週間処方時の概算費用
- 通常製剤 7,161円
- リポソーム製剤 80,297円
- 1ヶ月処方時の概算費用
- 通常製剤 30,690円
- リポソーム製剤 344,130円
これらの費用に入院費や検査費用が加わるため総額はさらに高額になる傾向です。
なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
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