アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)(アブラキサン)とは肺がんをはじめとする様々な悪性腫瘍の治療に用いられる抗がん剤です。

この薬剤は従来のパクリタキセル製剤を改良して人体のタンパク質であるアルブミンと結合させることで、より効果的にがん細胞へ到達できるよう設計されています。

アブラキサンの特徴は副作用の軽減と投与時間の短縮にあります。

従来の製剤と比べてアレルギー反応のリスクが低く前投薬なしで投与できる点も患者さんにとって大きなメリットとなっています。

パクリタキセル注射剤(アブラキサン)の特徴と副作用
パクリタキセル注射剤(アブラキサン)の特徴と副作用 (anticancer-drug.net)
目次

アルブミン懸濁型パクリタキセルの有効成分と作用機序、効果について

有効成分の特徴

アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)の主たる有効成分はパクリタキセルです。

この成分は天然由来の抗がん剤でイチイ科の植物から抽出されたものを化学的に合成して製造します。

パクリタキセルは細胞分裂を阻害する働きを持ち、がん細胞の増殖を抑制する効果があります。

有効成分由来
パクリタキセルイチイ科植物
アルブミンヒト血清

独自の製剤技術

nab-PTXはパクリタキセルをヒト血清アルブミンと結合させた製剤です。

この製剤技術により従来のパクリタキセル製剤と比較して水への溶解性が向上して体内での薬物動態が改善されました。

アルブミンとの結合は薬剤の安定性を高めてさらに効率的な薬物送達を可能にするのです。

  • アルブミンとの結合による利点
    • 水溶性の向上
    • 体内動態の改善
    • 薬物安定性の向上

作用機序の詳細

パクリタキセルは微小管を安定化させる作用を持ちます。

微小管は細胞分裂時に染色体を分配する重要な役割を担っているためその安定化は細胞分裂の進行を妨げます。

がん細胞は正常細胞よりも頻繁に分裂するため、この作用によりがん細胞の増殖が選択的に抑制されます。

作用部位影響
微小管安定化
細胞分裂阻害

腫瘍組織への集積性

nab-PTXはアルブミンと結合することで腫瘍組織への選択的な集積性が向上します。

腫瘍血管は正常血管に比べて透過性が高くアルブミンと結合した薬剤が漏出しやすい特性があります。

この現象はEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果と呼ばれ、腫瘍組織への薬剤送達を促進します。

現象効果
EPR効果腫瘍組織への集積性向上
血管透過性亢進薬剤の漏出促進

抗腫瘍効果

nab-PTXは様々ながん種に対して抗腫瘍効果を示します。

特に非小細胞肺がん、乳がん、膵がんなどの固形腫瘍に対する有効性が臨床試験で確認されています。

腫瘍の縮小や進行の遅延などがん患者さんの予後改善に寄与する結果が報告されています。

  • 適応がん種
    • 非小細胞肺がん
    • 乳がん
    • 膵がん

アルブミン懸濁型パクリタキセルの独自の製剤技術と作用機序は従来のパクリタキセル製剤と比較してより効果的ながん治療を可能にします。

腫瘍組織への選択的な集積性と細胞分裂阻害作用の相乗効果により幅広いがん種に対する抗腫瘍効果が期待できます。

使用方法と注意点

投与方法と用量設定

アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)は通常点滴静注で投与します。

投与量や頻度は患者さんの状態やがんの種類によって異なるため担当医が個々の症例に応じて決定します。

一投与スケジュールでは3週間を1サイクルとして1日目に投与を行い、2日目以降は休薬期間とするのが一般的です。

投与方法投与サイクル
点滴静注3週間に1回
30分以上かけて投与1日目投与、2-21日目休薬

前投薬と投与前の準備

nab-PTXは従来のパクリタキセル製剤と異なりアレルギー反応を抑えるための前投薬が不要です。

しかし患者さんの状態によっては制吐剤や鎮痛剤などの補助薬を使用することがあります。

投与前には血液検査や肝機能検査などを実施して患者さんの全身状態を確認します。

  • 投与前の確認事項
    • 血液検査結果
    • 肝機能検査結果
    • 全身状態の評価

投与中のモニタリング

nab-PTX投与中は医療スタッフが患者さんの状態を綿密に観察し、特に初回投与時はアレルギー反応や急性の副作用に注意を払います。

バイタルサインの変化や皮膚症状の出現などに留意して異常があれば速やかに対応します。

観察項目頻度
バイタルサイン15分ごと
皮膚症状随時
自覚症状適宜問診

投与後の注意点

nab-PTX投与後はしばらくの間外来または入院で経過観察を行います。

帰宅後も発熱や倦怠感といった症状に注意して異常を感じた際には速やかに医療機関に連絡するよう指導します。

日常生活では感染予防や十分な休養をとることが大切です。

ある医師の臨床経験ではある患者さんが投与後に軽度の倦怠感を訴えたものの、十分な水分補給と休養により症状が改善したことがあります。

治療効果の評価と投与計画の調整

nab-PTX治療中は定期的に画像検査や腫獺マーカーの測定を行い治療効果を評価します。

効果が不十分な場合や副作用が強い場合は投与量の調整や他の治療法への変更を検討します。

長期的な治療方針は患者さんの全身状態やQOLを考慮しながら柔軟に見直します。

  • 治療効果の評価項目
    • 画像検査(CT、MRIなど)
    • 腫瘍マーカー
    • 自覚症状の変化

患者教育と支援

nab-PTX治療を受ける患者さんには治療の目的や予想される効果起こりうる副作用について十分な説明を行います。

患者さん自身が体調の変化に気づき適切に対応できるように具体的な症状や対処法を指導します。

また心理的なサポートも重要であり、必要に応じて専門のカウンセラーや支援グループを紹介します。

教育内容方法
副作用対処法パンフレット配布
生活上の注意点口頭説明
緊急時の連絡先文書で提供

nab-PTXの使用においては個々の患者さんの状態に応じた細やかな投与管理と継続的なモニタリングが重要です。

医療者と患者さんが密に連携して最善の治療効果を得られるよう努めることが、がん治療の成功につながる可能性を高めます。

適応対象となる患者

非小細胞肺がん患者

アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)は非小細胞肺がんの患者さんに対して効果を発揮します。

特に進行性または転移性の非小細胞肺がんと診断された方が主な対象です。

この薬剤は単独療法としても併用療法としても使用可能であり、患者さんの状態や病期によって投与方法を選択します。

非小細胞肺がんの種類病期
扁平上皮がん進行期
腺がん転移期
大細胞がん再発

乳がん患者への適応

転移性乳がんの患者さんもnab-PTXの適応対象となります。

ホルモン受容体陽性やHER2陽性など様々なサブタイプの乳がんに対して効果が期待できます。

既存の治療に抵抗性を示した患者さんや初回治療として選択される場合もあります。

  • 乳がんのサブタイプ
    • トリプルネガティブ乳がん
    • ホルモン受容体陽性乳がん
    • HER2陽性乳がん

膵がん患者への投与

進行性の膵がん患者さんに対してもnab-PTXは有効性を示しています。

特に転移性膵がんや局所進行性膵がんの患者さんが対象となることが多いです。

膵がんは予後不良のがん種として知られていますが、nab-PTXを含む治療法により生存期間の延長が期待できます。

膵がんの進行度治療ライン
局所進行一次治療
転移性二次治療

胃がん患者への使用

進行性または再発性の胃がん患者さんもnab-PTXの投与対象となります。

胃がんは早期発見が難しく、進行してから見つかるケースが少なくありません。そのような患者さんに対してnab-PTXは治療の選択肢の一つとなり得ます。

卵巣がん患者への適応

再発性の卵巣がん患者さんに対してもnab-PTXの使用が検討されます。

プラチナ製剤抵抗性の患者さんや既存の治療で効果が得られなかった患者さんが対象となることがあります。

卵巣がんは再発率が高いがん種であり、新たな治療選択肢として注目されています。

  • 卵巣がんの特徴
    • 再発率が高い
    • 化学療法への感受性が変化する

患者の全身状態と適応判断

nab-PTXの投与を検討する際には患者さんの全身状態を慎重に評価することが重要です。

一般的にパフォーマンスステータス(PS)が良好で主要臓器機能が保たれている患者さんが適応となります。

高齢者や合併症のある患者さんに対しては個別に判断して投与量の調整などを考慮します。

Performance Status適応
PS 0-1標準投与量
PS 2減量を検討

前治療歴と薬剤選択

nab-PTXの適応を判断する際には患者さんの前治療歴も考慮に入れます。

タキサン系薬剤の使用歴がある患者さんでもnab-PTXは異なる製剤特性を持つため効果が期待できる可能性があります。

また従来のパクリタキセル製剤で過敏症を経験した患者さんにとってはnab-PTXが代替薬として検討される機会があります。

治療期間

標準的な投与スケジュール

アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)の治療期間はがん種や患者さんの状態によって異なります。

3週間を1サイクルとして第1日目に投与を行い、2日目から21日目までを休薬期間とするのが一般的です。

このサイクルを複数回繰り返すことで治療効果を最大化し副作用を軽減することを目指します。

投与日休薬期間
1日目2-21日目
22日目23-42日目

がん種別の治療期間

非小細胞肺がんの場合では4〜6サイクル(12〜18週間)の投与が一般的です。

転移性乳がんでは病状の進行が認められるまで、または副作用により継続が困難になるまで投与を続けることがあります。

膵がんに対しては他の抗がん剤との併用療法で6サイクル(18週間)程度の投与期間が多く見られます。

  • 一般的な投与期間
    • 非小細胞肺がん 4〜6サイクル
    • 転移性乳がん 病状進行まで
    • 膵がん 6サイクル程度

治療効果に基づく期間調整

nab-PTXの治療期間は腫瘍の縮小率や患者さんの全身状態によって柔軟に調整します。

効果が顕著に現れている際は予定のサイクル数を超えて継続することもあります。

一方、効果が乏しい場合や副作用が強く出現する際は早期に治療方針の変更を検討します。

治療効果対応
著効継続検討
安定予定通り
増悪変更検討

維持療法としての使用

一部のがん種では初期治療後の維持療法としてnab-PTXを使用することがあります。

この場合腫瘍の進行が認められるまで、または忍容できない副作用が出現するまで継続します。

維持療法では 投与間隔を延長したり投与量を減量したりすることで長期間の治療継続を目指します。

維持療法の種類投与間隔
標準維持療法3週毎
延長維持療法4週毎

患者さんの希望を考慮した期間設定

治療期間の決定には患者さんの意向や生活の質(QOL)を十分に考慮することが大切です。

長期の入院や頻繁な通院が困難な患者さんに対しては投与スケジュールを調整して継続可能な期間を設定します。

また副作用の程度や患者さんの体力によっては休薬期間を延長することも検討します。

  • 患者さんの状況に応じた調整
    • 投与間隔の延長
    • 投与量の減量
    • 休薬期間の延長

ある医師の臨床経験では80歳の非小細胞肺がん患者さんに対してnab-PTXを4サイクル投与した際に予想以上の効果が得られたため患者さんと相談の上で6サイクルまで延長したことがあります。

アルブミン懸濁型パクリタキセルの副作用とデメリット

骨髄抑制に関連する副作用

アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)の主要な副作用の一つに骨髄抑制があります。

この副作用により白血球減少・好中球減少・貧血・血小板減少などが引き起こされるリスクがあります。

骨髄抑制は感染リスクの上昇や出血傾向の増加につながるため患者さんの慎重なモニタリングが必要です。

骨髄抑制の種類主な症状
白血球減少感染しやすい
貧血疲労感 息切れ
血小板減少出血しやすい

末梢神経障害

nab-PTXによる末梢神経障害は頻度の高い副作用の一つです。

手足のしびれやチクチクする感覚、感覚鈍麻などの症状が現れることがあります。

この副作用は投与量や投与回数に関連して発症リスクが高まるため長期投与時には特に注意が重要です。

  • 末梢神経障害の症状
    • 手足のしびれ
    • チクチクする感覚
    • 感覚鈍麻

消化器系の副作用

nab-PTX治療中には様々な消化器系の副作用が発現する可能性があります。

悪心・嘔吐・食欲不振・下痢などの症状が現れることがあり、患者さんのQOLに大きな影響を与えることが考えられます。

これらの副作用に対しては制吐剤や整腸剤などの支持療法を併用することが多いです。

消化器系副作用対処法
悪心・嘔吐制吐剤
下痢整腸剤
食欲不振栄養指導

皮膚・粘膜障害

nab-PTXによる皮膚・粘膜障害には発疹・掻痒感・口内炎などがあります。

これらの副作用は患者さんの生活の質を著しく低下させる要因となり得ます。

特に口内炎は食事摂取に影響を与えて栄養状態の悪化につながる可能性があるため早期対応が大切です。

ある医師の臨床経験では70代の肺がん患者さんがnab-PTX投与後に重度の口内炎を発症して一時的に経管栄養を要したことがありました。

脱毛

多くの抗がん剤と同様にnab-PTXも脱毛を引き起こす可能性があります。

脱毛は身体的な影響はほとんどありませんが、患者さんの心理面に大きな影響を与えることがあります。

治療開始前に脱毛の可能性について説明し、必要に応じてウィッグの使用などの対策を提案することが重要です。

脱毛の程度対処法
軽度スカーフ使用
中等度部分ウィッグ
重度フルウィッグ

過敏反応

nab-PTXは従来のパクリタキセル製剤と比較して過敏反応のリスクは低いとされていますが完全には排除できません。

投与中や投与直後に発熱・悪寒・呼吸困難・血圧低下などの症状が現れることがあります。

これらの症状が出現した場合は即座に投与を中止して適切な処置を行う必要があります。

  • 過敏反応の症状
    • 発熱
    • 悪寒
    • 呼吸困難
    • 血圧低下

肝機能障害

nab-PTX投与による肝機能障害も報告されていて、AST・ALT・γ-GTPなどの肝機能指標の上昇が見られることがあります。

定期的な血液検査によるモニタリングが重要であり、異常値が検出された際には投与量の調整や休薬を検討します。

肝機能検査項目正常値
AST10-40 U/L
ALT5-45 U/L
γ-GTP10-50 U/L

心血管系への影響

まれではありますが、nab-PTXによる心血管系への影響も報告されています。

不整脈・心筋虚血・血栓塞栓症などのリスクが上昇する可能性があり、特に心疾患の既往がある患者さんや高齢者では 慎重なモニタリングが必要です。

アルブミン懸濁型パクリタキセルは効果的な抗がん剤ですが様々な副作用やデメリットが存在します。

これらの副作用を理解して適切に対処することで、患者さんにとって最適な治療を提供することが可能になります。

代替治療薬

他のタキサン系薬剤への切り替え

アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)が効果を示さなかった際はまず考慮すべきは同じタキサン系の他の薬剤への変更です。

ドセタキセルはnab-PTXと作用機序が類似しているものの異なる薬物動態を持つため、効果が期待できる可能性があります。

これらの薬剤は微小管の機能を阻害することでがん細胞の増殖を抑制するという共通のメカニズムを持ちます。

しかし体内での挙動や副作用プロファイルが異なるため個々の患者さんに合わせた選択が重要となります。

薬剤名特徴
ドセタキセル半減期が長い
パクリタキセル従来型製剤

プラチナ製剤との併用療法

nab-PTXが単剤で効果を示さなかった場合はプラチナ製剤との併用療法を検討することがあります。

シスプラチンやカルボプラチンなどのプラチナ製剤はDNA損傷を引き起こすことでがん細胞の増殖を抑制します。

これらの薬剤とnab-PTXあるいは他のタキサン系薬剤との併用は相乗効果を期待できる可能性があり、特に非小細胞肺がんや卵巣がんなどで有効性が報告されています。

  • プラチナ製剤の種類
    • シスプラチン
    • カルボプラチン
    • オキサリプラチン

分子標的薬への切り替え

nab-PTXを含む細胞毒性抗がん剤が効果を示さない場合には分子標的薬への切り替えを検討することがあります。

がん細胞の特定の分子や経路を標的とするこれらの薬剤は、より選択的な作用を持ち従来の抗がん剤とは異なるメカニズムでがんの増殖を抑制します。

例えばEGFR阻害薬やALK阻害薬・VEGF阻害薬などが患者さんの遺伝子変異や腫瘍の特性に応じて選択されます。

分子標的薬の種類標的分子
ゲフィチニブEGFR
クリゾチニブALK
ベバシズマブVEGF

免疫チェックポイント阻害薬の導入

nab-PTXが効果を示さず他の従来型抗がん剤も奏効しない場合は免疫チェックポイント阻害薬の使用を考慮することがあります。

これらの薬剤は患者さん自身の免疫系を活性化させることでがん細胞を攻撃する新しいアプローチを提供します。

PD-1阻害薬・PD-L1阻害薬・CTLA-4阻害薬などが代表的で様々ながん種で有効性が示されています。

免疫チェックポイント阻害薬標的分子
ニボルマブPD-1
アテゾリズマブPD-L1
イピリムマブCTLA-4

ホルモン療法の検討

特定のがん種、特に乳がんや前立腺がんにおいてnab-PTXが効果を示さない場合はホルモン療法への切り替えや併用を検討することがあります。

ホルモン受容体陽性のがんではアロマターゼ阻害薬や抗アンドロゲン薬などが選択肢となり得ます。

これらの薬剤はがん細胞の増殖に関与するホルモンの作用を阻害することで腫瘍の進行を抑制します。

  • ホルモン療法薬の例
    • タモキシフェン(乳がん)
    • アナストロゾール(乳がん)
    • ビカルタミド(前立腺がん)

ある医師の臨床経験では60代の非小細胞肺がん患者さんでnab-PTXが効果を示さなかったケースがありました。

その際に遺伝子検査でEGFR変異が判明したためゲフィチニブに切り替えたところ著明な腫瘍縮小が得られました。

マルチキナーゼ阻害薬の使用

nab-PTXが奏効しない場合 特に固形腫瘍において マルチキナーゼ阻害薬の使用を検討することがあります。

これらの薬剤は複数の細胞内シグナル伝達経路を同時に阻害することで幅広い抗腫瘍効果を発揮します。

ソラフェニブやレンバチニブなどが代表的で肝細胞がんや甲状腺がんなどで有効性が示されています。

マルチキナーゼ阻害薬主な適応がん
ソラフェニブ肝細胞がん
レンバチニブ甲状腺がん
スニチニブ腎細胞がん

nab-PTXが効果を示さなかった場合の代替治療薬の選択はがんの種類・病期・患者さんの全身状態 遺伝子変異の有無など 多くの要因を考慮して行う必要があります。

個々の患者さんに最適な治療法を選択するためには多職種によるカンファレンスや 患者さんとの十分な対話を通じて総合的に判断することが重要です。

併用禁忌

他のタキサン系薬剤との併用

アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)は同じタキサン系薬剤との併用を避けるべきです。

ドセタキセルやパクリタキセルなど作用機序が類似した薬剤との同時投与は副作用のリスクを著しく高める可能性があります。

これらの薬剤はいずれも微小管の機能を阻害することで抗腫瘍効果を発揮するため、併用によって骨髄抑制や末梢神経障害などの有害事象が増強される恐れがあるのです。

併用禁忌薬剤理由
ドセタキセル副作用増強
パクリタキセル効果重複

強力なCYP3A4阻害剤との相互作用

nab-PTXは主にCYP3A4という酵素によって代謝されるため、この酵素を強力に阻害する薬剤との併用には注意が必要です。

イトラコナゾールやリトナビルなどの強力なCYP3A4阻害剤はnab-PTXの血中濃度を上昇させ 予期せぬ副作用を引き起こす可能性があります。

これらの薬剤との併用が避けられない時にはnab-PTXの投与量調整や慎重なモニタリングが重要となります。

  • 強力なCYP3A4阻害剤の例
    • イトラコナゾール(抗真菌薬)
    • リトナビル(抗HIV薬)
    • クラリスロマイシン(抗生物質)

放射線療法との同時施行

nab-PTXと放射線療法の同時施行については慎重な検討が必要です。

両者の併用は相乗的な抗腫瘍効果を期待できる一方で正常組織への障害リスクも高まる恐れがあります。

特に胸部への放射線照射とnab-PTXの併用は肺臓炎のリスクを増大させる可能性があるため個々の症例に応じた慎重な判断が求められます。

治療法併用リスク
胸部放射線療法肺臓炎
全身放射線療法骨髄抑制増強

妊娠中・授乳中の使用

nab-PTXは妊娠中や授乳中の使用を避けるべきです。

この薬剤は胎盤を通過し胎児に悪影響を与える可能性があるため妊娠中の投与は原則禁忌とされています。

また乳汁中への移行も懸念されるため授乳中の使用も避けるべきであり、治療中は授乳を中止する必要があります。

  • 妊娠・授乳中の注意点
    • 妊娠中の投与は胎児に悪影響
    • 授乳中の投与は乳児への影響懸念

重度の肝機能障害患者さんへの投与

重度の肝機能障害を有する患者さんへのnab-PTXの投与には特別な注意が必要です。

肝機能が著しく低下している場合にはnab-PTXの代謝・排泄が遅延して予期せぬ副作用が出現する可能性が高まります。

このような患者さんでは投与量の大幅な減量や代替治療の検討が必要となることがあります。

肝機能障害の程度投与量調整
軽度通常量
中等度減量考慮
重度原則投与回避

アルブミン製剤との同時投与

nab-PTXはヒト血清アルブミンと結合した製剤であるためアルブミン製剤との同時投与には注意が必要です。

アルブミン製剤の同時投与はnab-PTXの薬物動態に影響を与え、期待する治療効果が得られない可能性もあります。

またアルブミンの過剰投与によるリスクも考慮して両者の併用は避けるべきです。

アルブミン製剤併用影響
25%アルブミン薬物動態変化
5%アルブミン効果減弱の可能性

アルブミン懸濁型パクリタキセルの薬価

薬価

アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)の薬価は100mgあたり48,198円です。

この価格は医療機関によって若干の変動があり得ますが、基本的にはこの金額を基準として計算されます。

一般的な投与量は体表面積に応じて決定され、通常260mg/m²を3週間に1回投与します。

規格薬価
100mg48,198円

処方期間による総額

1週間の処方では 体表面積1.7m²の患者さんの場合、442mg投与となるため、 約213,035.16円となります。

1ヶ月の処方では同じ条件で約852,140.64円となりますが、実際の投与は3週間に1回のため 4週間で1回の投与となります。

これらの金額は薬剤費のみであり、診察料や検査料、入院費などは含まれていないため実際の医療費はさらに高額になります。

処方期間総額(概算)
1週間213,035.16円
1ヶ月852,140.64円
  • 薬価に含まれないもの
    • 診察料
    • 検査料
    • 入院費

ある医師の臨床経験では患者さんの中には薬価の高さに驚く方も多く、治療継続に不安を感じる場合があります。

そのため利用可能な医療費助成制度について十分に説明して経済的な不安を軽減することが重要です。

なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文