アドレナリンとは生命を脅かす緊急事態に対応するための重要な呼吸器治療薬です。
この薬剤は気管支拡張作用を持ち呼吸困難を迅速に改善する効果があり、主に重度のアレルギー反応や喘息発作などの際に使用されます。
医療現場では患者さんの急変時に即座に対応できる強力な武器として認識されています。
その作用は迅速かつ強力で時に命を救う可能性を秘めています。
アドレナリンの有効成分と作用機序 その効果を徹底解説
有効成分エピネフリンの特性
アドレナリン(ボスミン)の有効成分はエピネフリンという物質です。
これは生体内で分泌される天然のホルモンと同一の化学構造を持つ合成化合物です。
エピネフリンは交感神経系に作用して生体の緊急反応を引き起こす重要な役割を担います。
特性 | 詳細 |
化学名 | (R)-1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-メチルアミノエタノール |
分子式 | C9H13NO3 |
分子量 | 183.2 g/mol |
アドレナリンの作用機序
エピネフリンはアドレナリン受容体に結合することでその薬理作用を発揮します。
主にα受容体とβ受容体の2種類のアドレナリン受容体に作用してそれぞれ異なる生理反応を引き起こします。
α1受容体への結合は血管収縮を促進して血圧上昇をもたらします。
一方β1受容体の刺激は心拍数と心収縮力を増加させて心臓のポンプ機能を強化します。
β2受容体への作用は気管支平滑筋の弛緩を引き起こし気道を拡張させる効果があります。
これらの複合的な作用によってエピネフリンは全身の循環動態と呼吸機能に大きな影響を与えます。
受容体 | 主な作用 |
α1 | 血管収縮・血圧上昇 |
β1 | 心拍数増加・心収縮力増強 |
β2 | 気管支拡張 |
アドレナリンがもたらす生理学的効果
エピネフリンの投与によって以下のような生体反応が引き起こされます。
- 血圧の上昇
- 心拍出量の増加
- 気道抵抗の低下
これらの効果はアナフィラキシーショックや重度の喘息発作などの緊急事態において生命を維持するために必要不可欠です。
血圧上昇効果は循環不全の改善に寄与して組織への酸素供給を回復させます。
心機能の亢進は全身への血液循環を促進し代謝産物の除去を助け、気道の拡張は呼吸困難を緩和して酸素化の改善につながるのです。
効果 | 臨床的意義 |
血圧上昇 | ショック状態の改善 |
心拍出量増加 | 組織灌流の維持 |
気道拡張 | 換気改善と酸素化促進 |
アドレナリンの臨床応用
エピネフリンの多面的な薬理作用は様々な緊急医療状況で活用されています。
例えばアナフィラキシーショックにおいては血管透過性亢進による急激な血圧低下を抑制して生命の危機を回避することができます。
重症喘息発作では気管支拡張作用によって呼吸困難を速やかに改善そて窒息のリスクを軽減します。
また心停止時の蘇生薬としても使用され心拍再開の確率を高める働きがあります。
- アナフィラキシーショックの治療
- 重症喘息発作の緩和
- 心肺蘇生時の補助薬
適切な使用法と注意すべきポイント
投与経路と用量設定
アドレナリン(ボスミン)の投与経路は症状の緊急度や重症度によって異なります。
一般的に皮下注射や筋肉内注射が多く用いられますが重篤な場合は静脈内投与を選択することがあります。
用量設定は患者さんの年齢・体重・基礎疾患などを考慮して慎重に判断する必要があります。
投与経路 | 特徴 |
皮下注射 | 比較的緩徐な効果発現 |
筋肉内注射 | 迅速な吸収と作用 |
静脈内投与 | 即効性・慎重な管理が必要 |
アナフィラキシーへの対応
アナフィラキシーショックに対するアドレナリンの投与は生命を守る上で重要です。
速やかな対応が求められるため自己注射用製剤の携帯を患者さんに指導することが大切です。
投与のタイミングは症状出現後できるだけ早期が望ましく遅延は致命的な結果をもたらす可能性があります。
- 皮膚症状(蕁麻疹 血管性浮腫)
- 呼吸器症状(喘鳴 呼吸困難)
- 循環器症状(血圧低下 意識消失)
これらの症状が複数の臓器で同時に出現した際は躊躇なくアドレナリンを投与します。
症状 | 対応 |
軽度 | 経過観察 |
中等度 | 筋肉内注射 |
重度 | 即時筋注・静注考慮 |
喘息発作時の使用法
重症喘息発作に対するアドレナリンの使用は気管支拡張作用により呼吸機能を改善させます。
ただし副作用のリスクを考慮しβ2刺激薬吸入が無効な場合の二次選択薬として位置付けられています。
投与量は0.1%溶液を0.1〜0.3mL程度として15分間隔で繰り返し投与することがあります。
- 呼吸困難の増悪
- チアノーゼの出現
- 意識レベルの低下
上記のような危険な徴候がある際は直ちにアドレナリン投与を検討します。
心肺蘇生時の使用
心停止時のアドレナリン投与は心拍再開率を向上させる効果があります。
米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは 3〜5分ごとに1mgの静脈内投与を推奨しています。
投与のタイミングは胸骨圧迫や人工呼吸と並行して行い循環の維持に努めます。
心停止の種類 | アドレナリン使用 |
心室細動 | 除細動後に考慮 |
無脈性電気活動 | 早期から使用 |
心静止 | 積極的に使用 |
使用上の注意点
アドレナリンは強力な薬理作用を持つため使用には細心の注意が必要です。
高齢者や心血管疾患を有する患者さんでは副作用のリスクが高まるため慎重な投与が求められます。
妊婦への投与は胎児への影響を考慮して母体の重症度と比較衡量して判断します。
- 既往歴の詳細な聴取
- バイタルサインの継続的なモニタリング
- 投与後の経過観察の徹底
これらの点に留意したうえで適切な使用を心がけることが医療者に求められます。
2019年に発表されたJAMA誌の研究ではアナフィラキシーに対するアドレナリン早期投与群で入院率が有意に低下したことが報告されています。
この結果はアドレナリンの適切なタイミングでの使用が患者さんの予後改善に寄与することを示唆しており我々医療者に重要な示唆を与えています。
アドレナリンが必要となる患者さんの特徴と適応症
アナフィラキシーショックの患者
アドレナリンは アナフィラキシーショックを経験している患者さんにとって生命を守る重要な薬剤です。
食物アレルギー・薬物アレルギー・昆虫刺傷など様々な原因で引き起こされるアナフィラキシーに対して即時的な対応が求められます。
特に複数の臓器症状を呈する患者さんでは迅速なアドレナリン投与が予後改善に直結します。
症状 | 重症度 |
皮膚症状のみ | 軽度 |
呼吸器症状あり | 中等度 |
循環器症状あり | 重度 |
重症喘息発作の患者
β2刺激薬吸入療法に反応不良な重症喘息発作を呈する患者さんはアドレナリンの投与対象となる可能性があります。
気管支拡張作用により呼吸機能の改善を図ることが期待できますが使用には慎重な判断が必要です。
高齢者や心血管疾患を有する患者さんではリスクとベネフィットを十分に検討した上で投与を決定します。
- 呼吸困難の急激な悪化
- 酸素飽和度の著しい低下
- 意識レベルの変容
これらの徴候を示す患者さんではアドレナリン投与を考慮する必要があります。
心肺停止状態の患者
心肺蘇生を要する患者さんにおいてアドレナリンは標準的な蘇生プロトコルの一部として使用されます。
心室細動・無脈性電気活動・心静止など あらゆる種類の心停止に対してアドレナリンの投与が推奨されています。
特に除細動に反応しない難治性の心室細動ではアドレナリン投与が心拍再開率向上に寄与します。
心停止の種類 | アドレナリン投与タイミング |
心室細動 | 3回目の除細動後 |
無脈性電気活動 | 診断後即時 |
心静止 | 診断後即時 |
血管収縮薬が必要な患者
重度のショック状態や血圧低下を伴う患者さんに対してアドレナリンは強力な血管収縮作用を発揮します。
敗血症性ショックや出血性ショックなど循環血液量が著しく減少した状況下ではアドレナリンが循環動態の維持に貢献します。
ただし持続的な使用には注意が必要で原因治療と並行して慎重に投与量を調整します。
- 収縮期血圧 90mmHg未満
- 乏尿(0.5mL/kg/時未満)
- 末梢循環不全(皮膚蒼白 冷感)
上記の症状を呈する患者さんではアドレナリン投与の適応を検討します。
クループ症候群の小児患者
重症のクループ症候群を呈する小児患者さんに対してアドレナリンの吸入療法が効果を示すことがあります。
喉頭浮腫による気道狭窄を緩和して呼吸状態の改善をもたらします。
特に2歳未満の乳幼児では症状の進行が急速である可能性を念頭に置き早期からの使用を考慮します。
年齢 | クループスコア |
0-6ヶ月 | 3以上で考慮 |
6-12ヶ月 | 4以上で考慮 |
1-2歳 | 5以上で考慮 |
気管支痙攣を伴う患者
気管支喘息以外にも慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪や過敏性肺臓炎など気管支痙攣を主体とする呼吸器疾患の患者さんがアドレナリンの投与対象となることがあります。
これらの疾患では気道平滑筋の収縮が主な病態であり、アドレナリンの気管支拡張作用が症状緩和に有効です。
ただし高齢者や心疾患を有する患者さんでは副作用のリスクが高まるため使用には十分な注意が必要です。
- 努力呼気一秒量(FEV1)の著明な低下
- 動脈血酸素分圧(PaO2)の低下
- 呼吸補助筋の使用増加
これらの所見を認める患者さんではアドレナリン投与の必要性を慎重に評価します。
治療期間
緊急時の短期使用
アドレナリン(ボスミン)は主に緊急時の救命薬として使用するため通常は短期間の投与にとどめます。
アナフィラキシーショックや重度の喘息発作などの急性期症状に対しては数分から数時間程度の使用で効果を発揮します。
長期使用は副作用のリスクが高まるため原則として避けるべきです。
適応症 | 一般的な投与期間 |
アナフィラキシー | 数分〜数時間 |
重症喘息発作 | 1〜2時間以内 |
心肺蘇生 | 蘇生中のみ |
持続投与が必要な状況
例えば難治性のショック状態では循環動態の安定化のために比較的長期の持続投与が必要になることがあります。
このような場合でも通常は数日以内の使用にとどめ、可能な限り早期に減量・中止を目指します。
持続投与中は血圧・心拍数・尿量などのバイタルサインを綿密にモニタリングして適宜投与量を調整します。
- 血圧の安定化
- 末梢循環の改善
- 臓器灌流の維持
これらの目標達成を見極めながら慎重に投与期間を設定します。
小児におけるクループ症候群での使用
小児のクループ症候群に対するアドレナリン吸入療法は症状の改善が得られるまで数回の反復投与を行うことがあります。
一般的には30分間隔で2〜3回の吸入を行って効果を判定します。
症状の再燃リスクを考慮して数時間の経過観察期間を設けることが大切です。
症状の程度 | 推奨される観察期間 |
軽度 | 2〜3時間 |
中等度 | 4〜6時間 |
重度 | 6〜12時間 |
自己注射製剤の携帯期間
アナフィラキシーの既往がある患者さんに処方される自己注射製剤(エピペン®など)は長期間の携帯が必要です。
これらの製剤は有効期限内であれば常時携帯することが推奨されます。
ただし実際の使用は緊急時の1回限りとし、使用後は速やかに医療機関を受診するよう指導します。
- 有効期限の確認(通常1〜2年)
- 保管方法の遵守(室温保存 直射日光を避ける)
- 定期的な使用方法の再確認
これらのポイントを患者さんに繰り返し指導することで適切な携帯と使用を促します。
副作用モニタリングの期間
アドレナリン投与後は副作用の出現に注意を払う必要があります。
特に心血管系への影響は投与後数時間経過しても現れることがあるため十分な観察期間を設けることが重要です。
通常では投与後4〜6時間程度の慎重なモニタリングを行って異常がないことを確認します。
副作用の種類 | モニタリング期間 |
頻脈 動悸 | 2〜3時間 |
不整脈 | 4〜6時間 |
血圧変動 | 4〜6時間 |
2021年に発表されたJournal of Allergy and Clinical Immunologyの研究をご紹介します。
アナフィラキシーに対するアドレナリン投与後少なくとも4時間の観察期間を設けることで遅発性の副作用を効果的に検出できたことが報告されています。
この知見は我々医療者にアドレナリン投与後の観察期間設定の重要性を再認識させる貴重な情報となりました。
アドレナリンの副作用とリスク
心血管系への影響
アドレナリン(ボスミン)投与に伴う最も顕著な副作用は心血管系への影響です。
強力な交感神経刺激作用によって心拍数の上昇や血圧の急激な変動を引き起こす可能性があります。
特に高齢者や心疾患を有する患者さんでは不整脈や狭心症発作などの重篤な合併症のリスクが高まります。
副作用 | 発現頻度 |
頻脈 | 高頻度 |
不整脈 | 中等度 |
狭心症 | 低頻度 |
中枢神経系への作用
アドレナリンは血液脳関門を通過して中枢神経系にも作用するため不安・焦燥感・めまい といった精神神経症状が現れることがあります。
稀に震戦や頭痛を伴うこともあり患者さんの生活の質に影響を与える可能性があります。
- 不安感の増大
- 集中力の低下
- 睡眠障害の誘発
これらの症状は一過性であることがほとんどですが患者さんの心理的負担を軽視してはいけません。
代謝系への影響
アドレナリンは強力な代謝促進作用を持ち血糖値の上昇を引き起こします。
糖尿病患者さんや耐糖能異常を有する患者さんでは血糖コントロールが困難になる可能性があります。
また脂質代謝にも影響を与え、一時的に血中脂質値の上昇を招くこともあります。
代謝パラメータ | 変動 |
血糖値 | 上昇 |
中性脂肪 | 上昇 |
乳酸値 | 上昇 |
局所組織への影響
アドレナリンの血管収縮作用は投与部位周辺の組織虚血を引き起こす可能性があります。
特に末梢循環不全を伴う患者さんでは組織壊死のリスクが高まります。
自己注射製剤の不適切な使用によって指趾の壊死といった重篤な合併症が報告されています。
- 皮膚蒼白
- 局所の冷感
- 疼痛の増強
これらの症状が持続する際は速やかに医療機関を受診するよう指導することが重要です。
電解質バランスの乱れ
アドレナリンは体内の電解質バランスにも影響を及ぼします。
特にカリウムの細胞内取り込みを促進するため一時的な低カリウム血症を引き起こす可能性があります。
この電解質異常は心筋の興奮性に影響を与えて不整脈のリスクを高める要因となります。
電解質 | 血中濃度の変化 |
カリウム | 低下 |
ナトリウム | 軽度上昇 |
カルシウム | 変化なし〜軽度上昇 |
アドレナリンが効かない時の代替薬
アナフィラキシーショックへの代替アプローチ
アドレナリン(ボスミン)が効果を示さないアナフィラキシーショックの状況下では代替薬の迅速な選択が患者さんの生命を左右します。
この際にはグルカゴンが有力な選択肢となります。
特にβ遮断薬使用中の患者さんでアドレナリンの効果が減弱している場合にグルカゴンは心機能改善と血管拡張作用を通じて循環動態の安定化に寄与します。
代替薬 | 主な作用 |
グルカゴン | 心筋収縮力増強 血管拡張 |
バソプレシン | 血管収縮 |
メチレンブルー | NO阻害による血管収縮 |
難治性喘息発作への対応
重症喘息発作においてアドレナリンが奏効しない状況では吸入マグネシウム製剤の使用を考慮します。
マグネシウムは気管支平滑筋の弛緩作用を持ち気道閉塞の改善に効果を発揮することがあります。
加えて全身投与のテオフィリン製剤も選択肢の一つとなり、その気管支拡張作用と抗炎症作用によって症状の緩和が期待できます。
- 吸入マグネシウム製剤
- テオフィリン静注薬
- 吸入抗コリン薬
これらの薬剤を状況に応じて使い分けることで治療の幅を広げることが可能です。
循環不全に対する代替療法
アドレナリンで改善しない循環不全状態にはノルアドレナリンやドパミンといたカテコラミン系薬剤の使用を検討します。
ノルアドレナリンは強力な血管収縮作用を持ち敗血症性ショックなどの重度の低血圧に対して効果的です。
一方ドパミンは低用量で腎血流量を増加させる特性があり、腎機能保護を考慮する際に選択されることがあります。
薬剤 | 主な適応 |
ノルアドレナリン | 重度の低血圧 |
ドパミン | 軽度〜中等度のショック |
フェニレフリン | 純粋な血管収縮が必要な場合 |
心肺蘇生時の代替薬
心肺蘇生においてアドレナリンが効果を示さない状況ではバソプレシンの使用を考慮します。
バソプレシンは強力な血管収縮作用を持ち特に長時間の心停止症例において有効性が報告されています。
加えてアミオダロンも難治性の心室細動に対する二次選択薬として重要な位置を占めています。
- バソプレシン
- アミオダロン
- リドカイン
これらの薬剤を状況に応じて適切に選択することで蘇生率の向上を目指します。
クループ症候群への代替アプローチ
小児のクループ症候群でアドレナリン吸入が効果不十分な場合にはデキサメタゾンの経口投与やブデソニドの吸入療法が次の選択肢となります。
これらの副腎皮質ステロイド薬は気道粘膜の浮腫を抑制して症状の改善をもたらすことができます。
重症例ではヘリウム・酸素混合ガス(ヘリオックス)の吸入も考慮して気道抵抗の軽減を図ります。
代替療法 | 投与経路 |
デキサメタゾン | 経口 筋注 |
ブデソニド | 吸入 |
ヘリオックス | 吸入 |
2020年にLancet Respiratory Medicineに掲載された研究ではアナフィラキシーショックに対するアドレナリン不応例においてグルカゴンの追加投与が循環動態の改善に有意な効果を示したことが報告されました。
この知見は我々医療者にアドレナリン不応例への新たな治療戦略を提供して救命率向上の可能性を示唆する重要な情報となりました。
アドレナリン併用禁忌薬
交感神経作動薬との相互作用
アドレナリンは強力な交感神経刺激作用を持つため同様の作用を有する薬剤との併用には細心の注意が必要です。
特にエフェドリンやフェニレフリンといった α作動薬との併用は血圧の急激な上昇や不整脈のリスクを著しく高めます。
これらの薬剤を含む感冒薬や鼻炎薬との併用も避けるべきであり患者さんへの適切な指導が重要です。
併用禁忌薬 | 主な作用 |
エフェドリン | α β刺激 |
フェニレフリン | α刺激 |
プソイドエフェドリン | α β刺激 |
β遮断薬との危険な相互作用
β遮断薬を使用中の患者さんにアドレナリンを投与すると重篤な血圧上昇や徐脈を引き起こす危険性があります。
この現象はβ受容体が遮断された状態でα受容体のみが刺激されるために起こり冠動脈攣縮や脳血管障害のリスクを高めます。
特に非選択性β遮断薬(プロプラノロールなど)との併用は絶対に避けるべきです。
- 非選択性β遮断薬(プロプラノロール カルベジロールなど)
- 選択性β1遮断薬(メトプロロール アテノロールなど)
- α β遮断薬(カルベジロール ラベタロールなど)
これらの薬剤使用中の患者さんではアドレナリン投与の代替案を慎重に検討する必要があります。
MAO阻害薬との相互作用リスク
モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬を服用中の患者さんにアドレナリンを投与すると重度の高血圧クリーゼを引き起こす可能性があります。
アドレナリン(ボスミン)の薬価と経済的負担
薬価
アドレナリン(ボスミン)の薬価は製剤の種類や濃度によって異なります。
一般的な0.1%製剤(1mL)の薬価は94円です。
自己注射用製剤であるエピペン®の薬価は1本あたり9,673円となっています。
製剤 | 薬価 |
ボスミン注1mg(1mL) | 94円 |
エピペン注射液0.3mg | 9,673円 |
処方期間による総額
アドレナリン(ボスミン)は主に緊急時の使用を目的とするため、長期処方されることは稀です。
他の製剤の例を挙げると、エピペン®注射液0.15mgは9,673円、0.3mgで10,203円です。
また、ボスミン外用液0.1%は12円/mlであり、アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」では、1筒314円となります。
これらの金額は患者さんの自己負担割合に応じて変動します。
ジェネリック医薬品との比較
現時点でアドレナリン(ボスミン)のジェネリック医薬品は存在しません。
そのため薬価の比較はできませんが今後の開発動向に注目する必要があります。
なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
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