肺結核とは呼吸器疾患の一種で、結核菌の感染によって引き起こされる重篤な感染症です。
咳や発熱、体重減少などの症状が現れ、放置すると命に関わる危険性もあります。
肺結核は空気感染するため感染力が非常に強く、世界的にも多くの患者さんが存在します。日本でも年間約1万5千人の新規患者が発生しており、決して過去の病気ではないのです。
肺結核に対しては早期発見と適切な治療が重要であり、感染予防のためにも正しい知識を持つことが大切と言えます。
肺結核の病型とその特徴について
原発性結核
原発性結核は結核菌に初めて感染した際に発症する病型で、結核菌が肺に侵入して初感染病巣を形成します。
その初感染病巣が肺門リンパ節にも波及し、肺門リンパ節腫脹をも引き起こすのです。
特徴 | 内容 |
感染経路 | 結核菌の初感染 |
病変部位 | 初感染病巣、肺門リンパ節 |
原発性結核は小児に多く見られる病型ですが、成人での発症もあります。
二次結核
二次結核とは過去に結核菌に感染し、体内に潜伏していた結核菌が再活性化することで発症する病型です。
潜伏していた結核菌が以下のような何らかの契機で増殖を始め、肺に病変を形成します。
- 免疫力の低下
- ストレス
- 高齢化
- 基礎疾患の存在
病変は上肺野に好発し、空洞形成を伴うことが多いのが特徴です。成人によく見られる病型であり、肺結核患者の大半を占めています。
粟粒結核
粟粒結核とは結核菌が血流に乗って全身に散布され、多数の小結節を形成する病型です。
粟粒状の結節が全肺野に広がるのが特徴であり、重篤な経過をたどる傾向にあります。
病型 | 好発部位 |
二次結核 | 上肺野 |
粟粒結核 | 全肺野 |
粟粒結核は、免疫力が著しく低下している患者さんに発症することが多く、エイズ患者さんに対して高いリスクがあります。
また、結核性髄膜炎を合併することがあるため注意が必要です。
病型の鑑別の重要性
肺結核の病型を正しく診断することは適切な治療方針を決定する上で重要です。
原発性結核と二次結核では病変の分布や性状が異なるため、画像所見などを総合的に評価する必要があります。
また粟粒結核は重篤な経過をたどるため、早期の診断と集中治療が求められます。
肺結核の主な症状とその特徴について
肺結核の主な症状は病型によって異なりますが、咳嗽、発熱、体重減少などは共通して見られます。
原発性結核では無症状のことが多いですが、二次結核では慢性の症状が持続し、粟粒結核では急激な全身症状を呈する傾向です。
原発性結核の症状
原発性結核は初感染後90%以上が無症状で経過するため、症状が乏しいのが特徴です。
しかし一部の患者さんでは、発熱、咳嗽、倦怠感などの非特異的な症状が現れることがあります。
症状 | 頻度 |
無症状 | 90%以上 |
発熱、咳嗽、倦怠感 | 10%未満 |
原発性結核では初感染病巣が肺門リンパ節に波及することで、毛細血管圧排による無気肺や気管支圧排による喘鳴を呈することもあるのです。
ただしこれらの症状は非特異的であり、診断に苦慮することが多いでしょう。
二次結核の症状
二次結核は慢性の経過をたどることが多く、数週間から数ヶ月にわたって症状が持続します。
代表的な症状は以下の通りです。
- 慢性の咳嗽(2週間以上)
- 喀痰の増加
- 血痰または喀血
- 発熱
- 寝汗
- 体重減少
- 倦怠感
- 胸痛
二次結核では空洞形成を伴うことが多いため大量喀血を来すこともあります。また、全身症状としては発熱、寝汗、体重減少などの症状もでやすいです。
粟粒結核の症状
粟粒結核は急激な経過をたどり、重篤な全身症状を呈します。高熱、呼吸困難、意識障害などが現れ、適切な治療が行われないと致死的にまで至るのです。
粟粒結核では肺だけでなく、肝臓、脾臓、骨髄など全身の臓器に結核結節が形成されるため多彩な症状を呈します。
さらに結核性髄膜炎を合併することもあり、その場合は頭痛、嘔吐、意識障害などの神経症状が現れるでしょう。
原因と発症のメカニズムについて
肺結核は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の感染によって引き起こされる疾患ですが、感染から発症までのメカニズムは病型によって異なります。
また、宿主の免疫状態やリスク因子によって発症リスクが異なることも重要なポイントです。
原発性結核の原因
原発性結核は結核菌に初めて感染した際に発症する病型です。結核菌は飛沫感染によって伝播し、呼吸器から肺胞まで到達します。
そこから肺胞内で結核菌は増殖を開始し、初感染病巣(一次結核病巣)を形成するのです。
感染経路 | 飛沫感染 |
感染部位 | 肺胞 |
病巣形成 | 初感染病巣(一次結核病巣) |
結核菌は肺胞マクロファージに貪食されますが、完全に排除されずに菌体内で増殖を続けます。
この初感染病巣は通常は宿主の免疫応答によって制御され、無症状で経過することが多いです。
しかし、免疫力が低下している場合は、初感染病巣からの菌の散布により病状が進行することがあります。
二次結核の原因
二次結核は過去に結核菌に感染し、体内に潜伏していた結核菌が再活性化することで発症する病型です。
初感染後、結核菌は肉芽腫内に封じ込められて潜伏感染の状態となります。この潜伏感染は生涯にわたって持続することもあるのです。
潜伏感染からの再活性化は以下のような要因によって引き起こされます。
- 免疫力の低下(高齢化、HIV感染、免疫抑制療法など)
- ストレス
- 喫煙
- 糖尿病などの基礎疾患
このようにして再活性化した結核菌は、肺実質内で増殖をし始めて二次結核病巣を形成します。この病巣は主に上肺野に好発し、空洞形成を伴うことが多いです。
病型 | 発症機序 |
二次結核 | 潜伏感染からの再活性化 |
粟粒結核 | 結核菌の血行性散布 |
粟粒結核の原因
粟粒結核は結核菌が血流に乗って全身に散布されることで発症する病型です。
原発性結核や二次結核の病巣から結核菌が血管内に侵入し、血流に乗って全身の臓器に運ばれます。
粟粒結核は免疫力が著しく低下している患者さんに発症しやすく、特にHIV感染者やステロイドを長期投与している患者さんなどで多く見られる傾向です。
発症リスク因子
結核菌に感染してもすべての人が発症するわけではありません。発症リスクは宿主の免疫状態や結核菌の感染量、菌株の毒力などによって異なるのです。
具体的には以下のような因子が結核の発症リスクを高めることが知られています。
- 免疫抑制状態(HIV感染、免疫抑制療法、高齢化など)
- 喫煙
- 低栄養
- 糖尿病
- 癌
- 腎不全
- アルコール依存症
これらのリスク因子を持つ人は結核菌に感染した場合の発症リスクが高くなるため、定期的な検査と予防対策が重要です。
診察と診断について
肺結核の診察と診断には患者さんの症状や既往歴の聴取、画像検査、細菌学的検査などが重要であり、これらを総合的に評価することで確定診断に至ります。
特に病型による病変分布の違いや、他の呼吸器疾患との鑑別に注意が必要です。
病歴聴取と身体所見
肺結核が疑われると、まずい粉われるのが詳細な病歴聴取です。ここで咳嗽や発熱、体重減少などの症状の有無や経過、結核患者との接触歴、既往歴などを確認します。
また、免疫抑制状態の有無や基礎疾患の存在も重要な情報となるでしょう。
身体所見の聴診で認められることがあるのは呼吸音や肺胞呼吸音の減弱です。二次結核では空洞形成に伴う湿性ラ音を聴取することもあります。
病歴聴取 | 身体所見 |
症状の有無と経過 | 呼吸音の異常 |
結核患者との接触歴 | 湿性ラ音(二次結核) |
免疫抑制状態の有無 | – |
画像検査
肺結核の診断において画像検査は非常に重要です。胸部X線検査では肺野の浸潤影や空洞影を認めることが特徴的ですが、病変の分布や性状は病型によって異なります。
病型 | 胸部X線所見 |
原発性結核 | 肺門リンパ節腫脹、肺炎様浸潤影 |
二次結核 | 上肺野の空洞影、浸潤影 |
粟粒結核 | 全肺野の粟粒状陰影 |
胸部CTでは、より詳細な病変の評価ができ、空洞壁の性状や周囲の浸潤影の広がりなどを評価することが可能です。
特に粟粒結核の場合では全肺野に散布された粟粒状陰影を明瞭に描出することができます。
細菌学的検査
肺結核の確定診断には細菌学的検査が不可欠です。喀痰の抗酸菌塗抹検査や結核菌培養検査、PCR法などを用いて結核菌の検出を行います。
検査 | 特徴 |
喀痰の抗酸菌塗抹検査 | 結核菌の存在を迅速に確認できる |
結核菌培養検査 | 確定診断に必要だが、結果を得るまでに時間がかかる |
PCR法 | 結核菌のDNAを検出する迅速検査 |
鑑別診断
肺結核は画像所見や症状が非特異的であるため、他の呼吸器疾患との鑑別が重要です。特に肺癌や肺真菌症、非結核性抗酸菌症などとの鑑別が問題となることがあります。
鑑別診断には画像所見や細菌学的検査結果、臨床経過などを総合的に評価することが必要です。
また、確定診断が困難な場合は、気管支鏡検査や経皮的肺生検などの侵襲的検査が考慮されます。
肺結核の画像所見とその特徴について
肺結核の画像所見は病型によって異なりますが、いずれも特徴的な所見を呈することが多く、診断をするうえで非常に重要です。
また他の呼吸器疾患との鑑別には、病変の分布や性状、経時的変化などに注目しましょう。
原発性結核の画像所見
原発性結核の胸部X線所見では、初感染病巣と肺門リンパ節腫脹が特徴的です。
初感染病巣は中下肺野に境界不明瞭な浸潤影として認められます。さらに肺門リンパ節腫脹は片側性または両側性に認められ、時に石灰化を伴います。
所見 | 特徴 |
初感染病巣 | 中下肺野の浸潤影 |
肺門リンパ節腫脹 | 片側性または両側性、石灰化を伴うことも |
所見:右肺門部~縦隔の腫大・右paratracheal stripeの肥厚あり、右側胸水の著明な貯留が認められ。一次性結核として合致する所見である。
胸部CTでは初感染病巣の浸潤影や肺門リンパ節腫脹がより明瞭に描出されるのが特徴です。また、気管支拡張や無気肺などの合併所見も評価することができます。
- 胸部CT所見:初感染病巣の浸潤影、肺門リンパ節腫脹、気管支拡張、無気肺など
所見:縦隔リンパ節腫大あり、内部に低吸収域あり、壊死が疑われる。また、右側胸水貯留あり。以上より、一次性結核として合致する所見である。
二次結核の画像所見
二次結核の胸部X線所見では、上肺野優位の浸潤影と空洞形成が特徴的です。
浸潤影は境界不明瞭で不均一な濃度を呈し、しばしば両側性に認められます。空洞は壁が薄く、内部に液面形成を伴うこともあるでしょう。
所見 | 特徴 |
浸潤影 | 上肺野優位、両側性、境界不明瞭 |
空洞 | 薄壁、液面形成を伴うことも |
胸部CTでは浸潤影の広がりや空洞の性状をより詳細に評価することができます。また、気管支拡張や胸膜肥厚などの合併所見も認められるケースもあるのです。
- 胸部CT所見:浸潤影、空洞、気管支拡張、胸膜肥厚など
所見:両肺に分岐状小結節、気管支壁肥厚を散見し、tree in bud apperanceを認め、二次性肺結核として合致する所見である。
粟粒結核の画像所見
粟粒結核の胸部X線所見では、全肺野に均等に分布する粟粒大の小結節影が特徴的です。
結節影は境界明瞭で大きさは1-2mm程度であることが一般的です。また、肺門リンパ節腫脹や胸水貯留を伴うことがあります。
所見 | 特徴 |
小結節影 | 全肺野に均等分布、境界明瞭、1-2mm大 |
肺門リンパ節腫脹 | 両側性に認められることも |
胸水貯留 | 両側性に認められることも |
胸部CTでは粟粒状結節影がより明瞭に描出され、結節の分布や大きさを詳細に評価すること可能です。
また、肺野の濃度上昇や気管支壁肥厚などの合併所見も認められることがあります。
所見:両肺にランダム分布の粒状影・小結節が認められ、粟粒結核を疑う所見である。
鑑別診断のポイント
肺結核の画像所見は他の呼吸器疾患との鑑別が問題となることがあります。特に肺癌や肺真菌症、非結核性抗酸菌症などでは類似した所見を呈するケースも少なくありません。
鑑別のポイントとしては、病変の分布や性状、経時的変化などが挙げられます。
肺結核では上肺野優位の分布や空洞形成、経時的な変化が比較的速いことが特徴的です。
一方肺癌では局所的な浸潤影や結節影を呈することが多く、肺真菌症では周囲にすりガラス影を伴う結節影が特徴的と言えます。
肺結核の治療方法と治癒までの期間について
肺結核の治療は抗結核薬を用いた薬物療法が中心となりますが、病型や重症度によって治療期間や薬剤の選択は異なります。
原発性結核の治療
原発性結核の多くは自然治癒するため、無症状の場合は経過観察のみで十分なことが多いです。
しかし乳幼児や免疫抑制状態の患者さんには予防的な抗結核薬の投与が行われることがあります。
予防的治療ではイソニアジド(INH)を6-9ヶ月間投与することが一般的です。リファンピシン(RFP)を併用することで投与期間を3-4ヶ月に短縮できる場合もあります。
薬剤 | 投与期間 |
イソニアジド(INH) | 6-9ヶ月 |
イソニアジド(INH)+リファンピシン(RFP) | 3-4ヶ月 |
二次結核の治療
二次結核の治療では複数の抗結核薬を併用した多剤併用療法が一般的です。
初期治療ではイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EB)の4剤を2ヶ月間投与し、その後はイソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)の2剤を4ヶ月間投与します。
時期 | 薬剤 | 投与期間 |
---|---|---|
初期 | イソニアジド + リファンピシン + ピラジナミド + エタンブトール | 2ヶ月 |
維持期 | イソニアジド + リファンピシン | 4ヶ月 |
二次結核の治療期間は通常6ヶ月ですが、病変が広範囲な場合や空洞性病変を有する場合は治療期間が延長されるでしょう。
薬剤耐性結核の場合では感受性のある薬剤を選択し、より長期の治療が必要となります。
病型 | 治療期間 |
二次結核(標準治療) | 6ヶ月 |
二次結核(広範囲病変、空洞性病変) | 6-9ヶ月 |
薬剤耐性結核 | 18-24ヶ月 |
粟粒結核の治療
粟粒結核は全身状態が不良なことが多いため、全身管理を行いながらの強力な抗結核薬治療が一般的です。
具体的な治療薬は二次結核と同様の4剤を用いますが、より長期の治療が必要となることが多いでしょう。
通常の治療期間は9-12ヶ月ですが、髄膜炎を合併している場合は12-18ヶ月程度必要となります。
またHIV感染を合併している場合は、抗HIV薬との相互作用に注意しながらさらに長期の治療を行います。
副作用とリスクについて
肺結核の治療は感染症の改善と患者さんの予後改善に重要ですが、一方で治療に伴う副作用やリスクも考慮しなければなりません。
抗結核薬の副作用
肺結核の治療に用いられる抗結核薬にはいくつかの副作用が知られています。最も頻度が高いのは肝機能障害であり、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミドなどで発現しやすいです。
薬剤 | 主な副作用 |
イソニアジド(INH) | 肝機能障害、末梢神経障害 |
リファンピシン(RFP) | 肝機能障害、過敏症 |
ピラジナミド(PZA) | 肝機能障害、高尿酸血症 |
エタンブトール(EB) | 視神経障害 |
その他にも皮疹や発熱、消化器症状などの副作用が見られることがあります。
副作用の発現には個人差がありますが、高齢者や肝障害のある患者さんは特に注意が必要です。
薬剤耐性結核のリスク
抗結核薬を適切に使用しなければ薬剤耐性結核のリスクが高まります。特に服薬アドヒアランスが不良な場合や不適切な薬剤選択、投与期間の不足などは耐性化のリスク因子となるでしょう。
薬剤耐性結核では感受性のある薬剤が限られるため、より長期の治療が必要となり、これにより副作用のリスクも高まるのです。
また、多剤耐性結核(MDR-TB)や超多剤耐性結核(XDR-TB)では治療が困難なことが多く、予後不良となることがあります。
耐性の種類 | 定義 |
多剤耐性結核(MDR-TB) | イソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)の両方に耐性 |
超多剤耐性結核(XDR-TB) | MDR-TBに加え、フルオロキノロン系薬とセカンドライン注射薬にも耐性 |
薬剤耐性結核を予防するためには正しい薬剤選択と適切な服用、十分な治療期間が重要です。
患者の全身状態への影響
肺結核の治療は長期にわたることが多く、患者さんの全身状態に影響を及ぼすことも考慮しなければなりません。
特に高齢者や合併症を有する患者さんでは、抗結核薬の副作用により全身状態が悪化するリスクもでてきます。
また粟粒結核のように全身状態が不良な患者さんのなかには抗結核薬の副作用がより重篤となることがあるため、慎重な管理が必要です。
再発予防と長期的な管理について
肺結核は適切な治療により治癒が期待できる疾患ですが、一方で再発のリスクも少なくありません。
病型に応じた適切な予防法と長期的な管理を行い、再発リスクを最小限に抑えることが求められます。
原発性結核の再発予防
原発性結核は小児期に初感染した後に90%以上が無症状で経過し、自然治癒することが多いです。
しかし一部の患者さんでは初感染後に病状が進行したり、成人後に再発したりすることがあります。
原発性結核の再発予防としては、BCGワクチンの接種が有効です。BCGワクチンは結核菌に対する免疫を獲得させ、結核の発症を予防することができます。
また原発性結核の既往がある患者に対しては潜在性結核感染症の治療も考慮されます。イソニアジド(INH)の予防内服を行うことで、再発リスクを減らすことができるでしょう。
二次結核の再発予防
二次結核は過去の結核感染から再活性化して発症する病型であり、再発リスクが比較的高いことが知られています。
二次結核の再発予防では、以下のような点に注意が必要です。
- 規則的な服薬の徹底
- 治療終了後の定期的な検査
- 基礎疾患の管理
- 生活習慣の改善(禁煙、バランスの取れた食事など)
特に不規則な服薬や治療の中断は再発リスクを高めるため、用法容量を厳守する服薬アドヒアランスを向上させることが重要です。
また治療終了後も定期的に胸部X線検査や喀痰検査などのフォローアップを行うことで、再発の早期発見につながります。
フォローアップ | 頻度 |
胸部X線検査 | 6ヶ月ごと(2年間)、その後は年1回 |
喀痰検査 | 再発が疑われる場合 |
粟粒結核の再発予防
粟粒結核は免疫力が低下した状態で発症することが多く、再発リスクが高い病型です。粟粒結核の再発予防では基礎疾患の管理が最も重要となります。
- HIV感染症の治療
- 免疫抑制薬の適正使用
- 栄養状態の改善
特にHIV感染症を合併している患者さんは抗HIV薬の内服を継続し、免疫状態を改善させることが効果的な再発予防です。
ステロイドや免疫抑制薬を使用している患者さんは、薬の適正な用量調整と定期的なモニタリングを続けましょう。
再発時の対応
肺結核の再発が疑われる場合は、速やかな診断と治療開始が求められます。
再発時の治療では、薬剤感受性試験の結果に基づいて適切な薬剤を選択することが重要です。
多剤耐性結核(MDR-TB)や超多剤耐性結核(XDR-TB)の場合は、より慎重な薬剤選択と長期の治療が必要となります。
また、患者の全身状態や合併症にも配慮しながら、集学的な治療を行う必要があります。
治療にかかる費用について解説します
肺結核の治療には高額な医療費がかかりますが、公的医療保険の適用により自己負担額を抑えることができるので積極的に利用しましょう。
初診料と再診料
肺結核の診療では初診料として2,820円から4,200円程度、再診料として730円から1,500円程度が必要です。
診療行為 | 費用 |
初診料 | 2,880円~5,380円 |
再診料 | 730円~2,640円程度 |
検査費
肺結核の診断には胸部X線検査(2,000円前後)や喀痰検査(1,500円前後)、血液検査(3,000円前後)などが行われ、これらの検査費用が必要となります。
検査項目 | 費用 |
胸部X線検査 | 2,100円~4,000円 |
喀痰検査 | 1,53,000円 ~ 5,000円 |
血液検査 | 1,500~5,000円 |
治療費
肺結核の治療では抗結核薬の投与が中心となりますが、薬剤費は1ヶ月あたり数万円から10万円以上かかることも考慮してください。
また重症例では入院治療が必要となり、入院費用が加算されます。
公的医療保険の適用
肺結核は感染症法に基づく指定感染症であるため、公費負担医療制度の適用対象です。これにより患者さんの自己負担額は原則として医療費の5%までに抑えられるでしょう。
ただし上限額が設定されており、月額2万円程度の自己負担が発生する場合があります。
- 参考にした論文