鼻づまりがひどく、まったく通らない状態が続くと日常生活に大きな支障をきたします。食事や会話だけでなく、就寝時に呼吸が妨げられることもあり、疲れや集中力の低下が起こりやすくなります。

適切に対処することで症状の改善が見込めるケースも少なくありません。ここでは、鼻が通らない状態の原因と考えられる疾患、そして検査や治療のポイントを内科的視点から解説します。

受診を迷っている方が一歩を踏み出すきっかけにしていただければ幸いです。

鼻づまり(通らない)とは

鼻呼吸がほとんどできないほどの鼻づまりは、ちょっとした不快感にとどまらず、生活の質を大きく左右する問題です。

息苦しさや頭痛をともない、集中力の低下や睡眠障害にもつながる可能性があります。ここでは、そもそも鼻づまりとはどのような状態なのかを整理し、理解を深めます。

鼻づまりの基本的なメカニズム

鼻の通り道(気道)が何らかの要因で狭くなったり閉塞したりすると、十分な空気が通りにくい状態になります。粘膜の腫れや鼻水の増加などが主な原因です。

鼻は呼吸だけでなく、ホコリやウイルスなどをフィルタリングする重要な役割を担っています。したがって鼻づまりが長く続くと、体内に取り込みたい酸素が不足するばかりでなく、感染リスクにも影響を及ぼします。

鼻づまりによる生活への影響

鼻呼吸が阻害されると、体内に取り込む酸素量が減り、頭がボーッとしたり、集中力が落ちたりしやすくなります。夜間に口呼吸を余儀なくされる場合は、喉の乾燥やいびきの原因となることもあります。

長期的には睡眠の質が低下し、疲れやストレスを感じやすくなるため、早めの対処が重要です。

鼻づまりが与える主な影響表

影響内容
睡眠不足・疲労感鼻づまりによる呼吸困難で熟睡できず、慢性的な疲れを抱えやすい
集中力の低下十分な酸素供給が得られず、仕事や勉強の効率が落ちる
口呼吸による喉の不調口呼吸が続くと喉の乾燥、炎症、いびきなどを引き起こしやすい
頭痛や顔面の違和感副鼻腔が圧迫されることで頭痛や頬の痛みを感じることがある

鼻が通らなくなるときのサイン

鼻づまりが一時的なものなのか、慢性的に続いているのかを見極めることが大切です。とくに以下のサインに当てはまる場合は、早めに医療機関での検査や診断を検討したほうがいいでしょう。

  • 2週間以上続く鼻づまり
  • 顔面痛や頭痛をともなう
  • 夜間の睡眠障害(いびき、無呼吸)
  • 鼻水が黄緑色や血が混じる

自分で確認できる鼻づまりの程度

鼻づまりを感じるときは、日常生活の中でどの程度の支障があるかを客観的に把握すると判断材料になります。

軽度の鼻づまりであれば市販薬の使用やセルフケアで十分に対処できる場合もありますが、全く鼻が通らないほどの状態なら、医師による診断を受けたほうが安心です。

鼻づまり度合いのチェックリスト

  • 鼻水の粘度が高く、頻繁に鼻をかまないと苦しい
  • 朝起きたときに口呼吸のせいで喉が乾いている
  • 日中の活動中でも息苦しさが続く
  • 同僚や家族からいびきがひどいと言われる

考えられる主な原因

鼻づまりがまったく通らないときには、さまざまな要因が隠れている可能性があります。ここでは主な原因として挙げられる疾患や体質面の問題を見ていきます。

自己判断で放置すると悪化する場合もあるため、原因を正しく把握することが大切です。

アレルギー性鼻炎

花粉やホコリ、ダニなど、アレルゲンに対して過剰に免疫反応が起こり、鼻腔内が炎症を起こします。

季節限定の花粉症だけでなく、通年性アレルギー性鼻炎も存在し、両方が重なる場合もあります。粘膜の腫れにより気道が狭くなり、息苦しさを伴うことも少なくありません。

  • くしゃみ・鼻水・かゆみが同時に起こる
  • 季節や環境の変化で症状が悪化する
  • 市販の抗ヒスタミン薬で一時的に症状が軽減するが、完全に治らない

鼻中隔弯曲症

鼻を左右に仕切る骨や軟骨が大きく湾曲していると、片側または両側の鼻腔が狭くなります。先天的なケースもありますが、外傷による変形で起こることもあります。

湾曲が強い場合は息苦しさを常に感じ、慢性的な鼻づまりの原因となることが多いです。

鼻中隔弯曲症が疑われる特徴リスト

  • 片側だけ特に詰まり感が強い
  • 鼻づまりが長年続き、一般的な点鼻薬では改善しない
  • 過去に鼻や顔面を強打した経験がある

副鼻腔炎(急性・慢性)

いわゆる「蓄膿症」と呼ばれる状態で、副鼻腔内に膿や粘液が溜まり、炎症が起こります。

急性の場合は風邪をこじらせた結果として発症しやすく、慢性になると症状が長期化し、鼻づまりや顔面痛が強く出ることがあります。

  • 頭痛や頬の痛みを伴う
  • 黄色〜緑色の粘度の高い鼻水が出る
  • 口臭や味覚障害につながることがある

鼻ポリープ

鼻腔や副鼻腔の粘膜が慢性的に炎症を起こし、ポリープ(鼻茸)ができることがあります。

ポリープが大きくなると、鼻の通り道をふさいでしまい、まったく通らなくなるほどの重度の鼻づまりを引き起こす場合があります。

鼻づまりを引き起こす代表的な原因と特徴表

原因主な特徴
アレルギー性鼻炎くしゃみ・かゆみ・水のような鼻水が多い
鼻中隔弯曲症骨格の問題で片側だけ詰まり感が強く、慢性的に呼吸が苦しい
副鼻腔炎(蓄膿症)頭痛や顔面痛、粘度の高い鼻水が出る。慢性化すると長引く
鼻ポリープポリープが鼻腔をふさいで重度の鼻づまりを起こす
その他(腫瘍など)稀に腫瘍が原因のこともあり、早めの検査が望ましい

関連する症状と注意すべきサイン

鼻づまりがひどい場合、単に息苦しいだけでなく、他の症状を併発することが多いです。ここでは、鼻づまりに伴いやすい症状と、その中でも特に注意が必要なサインを紹介します。

頭痛や顔面痛

鼻づまりの原因が副鼻腔炎などである場合、副鼻腔内に溜まった膿が圧力をかけることで頭痛や顔面痛が起こります。

痛みが長く続く場合や、市販薬が効かないほど強い場合は慢性化や重症化の可能性もあります。

睡眠時無呼吸やいびき

鼻がまったく通らないときは、睡眠中に無意識に口呼吸を行うため、いびきや無呼吸状態が起こりやすくなります。

睡眠の質が落ちるだけでなく、高血圧や心疾患など全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。

睡眠障害に関するチェックポイント表

ポイント内容
いびきが大きいと言われる鼻づまりが慢性化して口呼吸になり、空気の振動音が大きくなっている
朝起きたときに熟睡感がない無呼吸や低呼吸が原因で熟睡できておらず、疲れが抜けにくい
日中の強い眠気睡眠時無呼吸症候群の疑いがある
血圧が高め睡眠障害が交感神経を刺激し、高血圧に結びついている可能性がある

発熱や倦怠感

感染症や副鼻腔炎などが悪化している場合は、発熱や強い倦怠感を伴うことがあります。風邪程度と軽視して放置すると症状が長引き、慢性化するリスクもあるため注意が必要です。

重症化に注意が必要なサインリスト

  • 38℃以上の発熱が続く
  • 黄緑色、または血が混ざった鼻水が多量に出る
  • 顔面の痛みが日に日に強くなる
  • 会話が困難になるほどの息苦しさ

口臭や味覚障害

副鼻腔に膿が溜まる状態が続くと、口臭が気になったり味覚が鈍ることがあります。

食事がおいしく感じられないだけでなく、人前で話すときにも気を遣う場面が増えるため、精神的なストレスに発展することもあります。

検査と診断の流れ

鼻づまりがまったく通らない状態が続く場合、原因を特定するための検査や診断は欠かせません。ここでは内科や耳鼻咽喉科で行われる主な検査方法や、その流れを確認しておきましょう。

問診と視診

医師はまず問診で症状の経過や日常生活への影響度、アレルギー歴などを確認します。

鼻鏡やファイバースコープを用いて鼻腔内を直接観察し、粘膜の腫れ具合や鼻水の色、ポリープの有無などをチェックします。

問診時に聞かれるポイントリスト

  • 症状が始まった時期ときっかけ
  • くしゃみや鼻水などアレルギー症状の有無
  • 過去の外傷歴、手術歴
  • 市販薬や点鼻薬の使用状況

画像検査(レントゲン・CTなど)

副鼻腔炎や鼻中隔弯曲症などを詳しく確認するために、レントゲン撮影やCTスキャンを行うことがあります。副鼻腔に膿が溜まっているか、骨格に問題があるかなどを立体的に把握できます。

腫瘍やポリープの有無を確認したい場合にも役立ちます。

アレルギー検査

アレルギー性鼻炎が疑われる場合は、血液検査でアレルゲンを特定する方法があります。特に花粉症が疑われるときは、スギやヒノキなど特定の花粉に対するIgE抗体の数値を測定します。

ダニやハウスダストなど、複数のアレルゲンに同時に反応しているケースも少なくありません。

主なアレルギー検査方法表

検査名方法メリット
血液検査採血し、アレルゲン特異的IgEを測定多くのアレルゲンを一度にチェックできる
スクラッチテスト皮膚にアレルゲンを少量つける判定が比較的早く、局所的な反応を観察できる

鼻鏡検査とファイバースコピー

医師が直接鼻の中を診ることは重要です。鼻鏡を使うだけでは確認できない奥の部分は、ファイバースコピー(内視鏡)で観察します。

粘膜の状態やポリープの大きさ、左右の鼻腔の差など、画像検査だけではわからない細かな部分まで把握できます。

治療方法とセルフケアのポイント

原因に応じて、治療方法は薬物療法から手術まで多岐にわたります。ここでは代表的な治療方法と、軽減を目指すための日常的なセルフケアを紹介します。

薬物療法

アレルギー性鼻炎の場合は抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬、副鼻腔炎の場合は抗生物質など、原因に応じて選択します。症状の強さや持続期間に応じて処方される薬の種類や期間は異なります。

自己判断で薬をやめると再発しやすいので、医師の指示に従いながら継続することが大切です。

薬物療法の主な種類表

薬の種類用途留意点
抗ヒスタミン薬アレルギー症状の緩和眠気などの副作用に注意
ステロイド点鼻薬鼻腔内の炎症を抑えて粘膜の腫れを緩和長期間の使用は医師の管理が必要
抗生物質副鼻腔炎など細菌感染に対処規定期間を守って服用する

手術療法

鼻中隔弯曲症や大きな鼻ポリープが原因の場合、根本的に鼻づまりを改善するには手術が選択肢となることもあります。

局所麻酔や全身麻酔で行い、湾曲した骨や軟骨を矯正したり、ポリープを切除したりすることで鼻の通りを回復させます。手術後のダウンタイムは個人差がありますが、症状の改善を実感しやすい治療方法です。

点鼻洗浄や加湿器の活用

鼻づまりがひどいときは、点鼻洗浄や加湿器の活用も有効です。生理食塩水を使った鼻うがいは粘膜や蓄積した鼻水を洗い流し、呼吸を楽にする効果が期待できます。

部屋の湿度を適度に保つと、鼻粘膜の乾燥を防ぎ、鼻づまりの悪化を抑えられます。

日常生活で役立つセルフケアリスト

  • こまめに鼻をかむ(強くかみすぎない)
  • 就寝時は頭を少し高くして寝る
  • 加湿器や濡れタオルを利用して室内を適度に保湿する
  • マスクを着用してホコリや乾燥を防ぐ

生活習慣の見直し

アレルギーが原因の場合は、寝具や部屋の掃除を徹底し、アレルゲンを減らす工夫をすると症状が緩和します。睡眠不足やストレスが続くと免疫力が低下し、アレルギー症状が悪化しやすくなります。

バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、身体の抵抗力を高めることも大切です。

受診のタイミングと内科でできること

鼻づまりが長引く場合、放置せず早めに医療機関を受診することが肝心です。鼻の病気は耳鼻咽喉科のイメージが強いかもしれませんが、まずは内科で相談してみるのも選択肢になります。

ここでは受診のタイミングや内科クリニックで対応可能な範囲について説明します。

長引く鼻づまりは放置しない

1~2日程度の軽い鼻づまりであれば市販薬やセルフケアだけでも様子を見て問題ない場合が多いです。しかし2週間以上も続くような鼻づまりは、慢性化している可能性が高いです。

放置すると症状が悪化し、手術が必要になるケースもあるため、自己判断せずに早めの受診を心がけてください。

受診が遅れるリスク表

リスク内容
症状の慢性化副鼻腔炎などがさらに悪化して治療期間が長引く可能性がある
睡眠障害の悪化いびきや無呼吸が進行し、全身の健康に影響が及ぶ
仕事や日常生活への支障集中力低下、倦怠感が強まり生活の質が低下
合併症のリスク中耳炎など他の部位への炎症が波及することがある

内科での診察内容

内科では全身状態を把握しながら、鼻づまりの原因として考えられるアレルギーや副鼻腔炎などを総合的に評価します。

必要に応じて血液検査やレントゲンを行い、耳鼻咽喉科など他の専門科への紹介を検討する場合もあります。全身的な視点から診察できるのが内科の強みです。

耳鼻咽喉科との連携

内科でアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などが疑われる場合、専門的な検査や処置が必要となることがあります。その際は耳鼻咽喉科を紹介されることが多いです。

専門医による精密検査や内視鏡検査の結果、手術を視野に入れるかどうかを判断します。内科と耳鼻咽喉科が連携して治療方針を立てることで、より効率的かつ適切なケアが可能になります。

こんなときは耳鼻咽喉科を受診したほうがいいリスト

  • 鼻の奥に腫瘍やポリープが疑われる
  • 中耳炎の合併がみられ、耳にも痛みや聴力低下がある
  • 慢性副鼻腔炎が疑われ、CTや内視鏡検査で詳細な診断が必要

受診の目安

鼻づまりとともに頭痛や高熱、顔面痛などの症状があるときや、いびき・無呼吸など睡眠に影響を与えている場合は早期受診を検討してください。

症状がそこまで重くなくても、2週間以上続いているようであれば診察を受けたほうが安心です。

日常生活での予防策と過ごし方

鼻づまりを繰り返さないためには、日常生活での予防策や環境整備が大切です。小さな工夫の積み重ねが鼻の健康を守り、慢性的な症状を防ぐことにつながります。

室内環境の整備

ホコリやダニなどのアレルゲンを減らすため、寝室のシーツや枕カバーは定期的に洗濯し、室内の掃除をこまめに行いましょう。空気清浄機や加湿器を活用すると、ホコリと乾燥を抑えるのに効果的です。

快適な室内環境を目指すための表

方法ポイント
掃除機の使用フィルターの性能が高いものを使うとアレルゲン除去に役立つ
加湿器で湿度を保つ湿度40~60%程度を目安にすると鼻粘膜が乾燥しにくい
こまめな換気空気の入れ替えでホコリやウイルスを外へ逃がす
寝具の定期的な洗濯ダニやホコリを減らし、鼻づまりの悪化を防ぐ

適度な運動と食生活

軽いジョギングやウォーキングなど適度な運動は、血行を促進し鼻粘膜の状態を改善する一助となります。食事面では、バランスよく栄養を摂り、免疫力を保つように心がけることが重要です。

ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜や果物、良質なタンパク質を十分に摂取すると、アレルギー症状の緩和に役立つことがあります。

日常生活で意識したいポイントリスト

  • 有酸素運動を週2〜3回取り入れる
  • アルコールや香辛料は粘膜を刺激することがあるので適度に控える
  • 水分をこまめに摂取し、鼻粘膜を乾燥させない
  • バランスの良い食事を心がけ、体力を維持する

ストレス管理

ストレスが溜まると自律神経のバランスが乱れ、アレルギー体質や炎症反応が悪化する場合があります。十分な睡眠と休息を確保し、リラックスできる時間を意識的に作ることが大切です。

深呼吸やストレッチなど、簡単に取り入れられるリラックス方法を継続すると効果が期待できます。

正しい鼻のかみ方とケア

鼻をかむとき、強くかみすぎると耳や副鼻腔に圧力がかかり逆に炎症を引き起こす可能性があります。片方ずつ鼻をかみ、ティッシュは適宜交換して清潔を保ちましょう。

点鼻薬を使用するときは、頭を少し前かがみにして鼻腔の奥に均等に行き渡るようにすると効果が出やすいです。

よくある質問

鼻づまりがひどいとき、どこに相談すればよいか迷ったり、セルフケアと医療機関の受診タイミングで悩んだりすることがあります。

ここでは、頻繁に寄せられる疑問や不安を整理し、参考になる情報をまとめます。

Q
Q:鼻づまりが完全に通らなくなることはよくありますか?
A

A:風邪やアレルギーの症状が重なったとき、あるいは副鼻腔炎が進行しているときに、鼻の通りが著しく悪くなることは珍しくありません。短期間であれば自然に改善するケースもありますが、2週間以上続くようなら医療機関の受診を検討しましょう。

Q
Q:市販の点鼻薬を長く使い続けても大丈夫ですか?
A

A:市販の点鼻薬に含まれる血管収縮剤は、長期連用によって薬剤性鼻炎を引き起こすリスクがあります。症状が慢性化している場合は、医師の診察を受けて適切な治療薬を使ったほうが安心です。

Q
Q:内科に行くか、耳鼻咽喉科に行くか迷っています。
A

A:まずは内科で全身状態を含めて診てもらうのも方法です。必要に応じて耳鼻咽喉科へ紹介することがあります。特にアレルギーや副鼻腔炎が疑われるときは、内科の視点から生活習慣なども総合的にアドバイスを受けると役立ちます。

Q
Q:鼻づまりによるいびきや無呼吸がある場合も内科で相談できますか?
A

A:睡眠時無呼吸症候群は高血圧や心疾患との関連があるため、内科での検査や診療も大切です。いびきや無呼吸が疑われる場合は、一度相談してみてください。必要があれば専門的な睡眠外来や耳鼻咽喉科と連携して検査を進めます。

以上

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