呼吸器疾患の一種であるフレイルチェスト(動揺胸郭)とは、胸部外傷により複数の肋骨が連続して骨折し、胸壁の一部が不安定になった状態を指します。

通常、胸郭は呼吸に合わせて一体となって動くのですが、フレイルチェストでは胸郭の一部が異常に動くため、呼吸運動に支障をきたします。

この状態では、呼吸困難や低酸素血症などの重篤な合併症を引き起こす可能性があり、生命を脅かすこともあります。

フレイルチェスト(動揺胸郭)の主症状

フレイルチェスト(動揺胸郭)の主症状は、呼吸困難、胸痛、低酸素血症であり、これらは生命を脅かす可能性がある重篤な症状です。

フレイルチェストでは、複数の肋骨が連続して骨折することにより、胸壁の一部が不安定になり、呼吸運動に支障をきたします。

この状態では、胸郭の一部が異常に動くため、呼吸時に激しい痛みを伴うことが多く、深呼吸や咳をすることが困難となります。

呼吸困難

フレイルチェストでは、胸壁の動揺により十分な換気ができなくなるため、呼吸困難を呈します。患者は息苦しさを訴え、呼吸数が増加し、浅く速い呼吸パターンを示すことが多いのです。

重症例では、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色に変色する状態)を伴うこともあります。

症状説明
呼吸数増加1分間あたりの呼吸回数が増える
浅速呼吸浅くて速い呼吸パターン
チアノーゼ皮膚や粘膜が青紫色に変色する状態

胸痛

フレイルチェストでは、肋骨骨折による激しい胸痛を伴います。

この痛みは呼吸時に増悪し、深呼吸や咳をすることで更に強くなるため、患者は痛みを避けるために浅い呼吸となり、十分な換気ができなくなってしまうのです。

症状説明
胸痛肋骨骨折による激しい痛み
呼吸時痛呼吸時に痛みが増悪する
深呼吸時痛深呼吸時に痛みが更に強くなる

低酸素血症

フレイルチェストでは、換気量の低下により低酸素血症を引き起こす可能性があります。

低酸素血症とは、動脈血中の酸素分圧が低下した状態であり、重要臓器への酸素供給が不足することで、臓器障害を引き起こす危険性があるのです。

以下の症状が見られる場合、低酸素血症を疑う必要があります。

  • 呼吸困難の増悪
  • チアノーゼ
  • 意識レベルの低下
  • 頻脈(脈拍数の増加)

合併症

フレイルチェストでは、呼吸不全や肺炎などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

呼吸不全低酸素血症や高二酸化炭素血症により、生体の酸素需要が満たされない状態
肺炎換気量の低下や痰の貯留により、肺炎を発症する危険性が高まる
気胸肋骨骨折により肺が損傷を受け、気胸を合併することがある

フレイルチェスト(動揺胸郭)の原因と発生メカニズム

フレイルチェスト(動揺胸郭)は、主に高エネルギー外傷によって引き起こされる病態であり、交通事故や転落事故などが主な原因となります。

フレイルチェストは、胸部に強い衝撃が加わることで発生します。この衝撃により、複数の肋骨が連続して骨折し、胸壁の一部が不安定になるのです。

通常、肋骨は上下の肋骨と肋軟骨で連結されているため、1本の肋骨が骨折しても、胸郭全体の安定性は保たれます。しかし、隣り合う複数の肋骨が同時に骨折すると、胸壁の一部が胸郭から遊離し、動揺性を呈するようになります。

高エネルギー外傷

フレイルチェストの主な原因は、高エネルギー外傷です。 以下のような事故や事象が、フレイルチェストを引き起こす可能性があります。

  • 交通事故(自動車、オートバイ、自転車など)
  • 転落事故(高所からの転落)
  • スポーツ外傷(ラグビー、アメリカンフットボールなど)
  • 圧挫損傷(重量物の下敷きになるなど)
原因説明
交通事故自動車、オートバイ、自転車などの事故
転落事故高所からの転落による衝撃

肋骨骨折のパターン

フレイルチェストでは、特徴的な肋骨骨折のパターンを示します。 一般的に、以下の条件を満たす場合にフレイルチェストと診断されます。

条件説明
連続する肋骨3本以上の隣接する肋骨
骨折部位各肋骨が2か所以上で骨折

このような骨折パターンにより、胸壁の一部が胸郭から遊離し、動揺性を呈するようになるのです。

胸壁の不安定性

フレイルチェストでは、胸壁の一部が不安定になることが重要な病態生理です。正常な呼吸運動では、胸郭が一体となって拡張・収縮することで、効率的に換気が行われます。

しかし、フレイルチェストでは、胸壁の一部が胸郭から遊離するため、呼吸運動に同調せずに奇異性の動きを示すようになります。

この奇異性運動により、換気効率が低下し、呼吸不全を引き起こす危険性があるのです。

肺損傷の合併

フレイルチェストでは、肋骨骨折に伴う肺損傷を合併することがあります。肺挫傷や気胸、血胸などを合併した場合、呼吸機能がさらに悪化し、重篤な呼吸不全に陥る可能性があります。

フレイルチェストは、生命を脅かす可能性のある重篤な病態であり、その原因や発生メカニズムを理解することが重要です。

高エネルギー外傷による胸部への強い衝撃が主な原因であり、特徴的な肋骨骨折のパターンを示すことが知られています。

胸壁の不安定性や肺損傷の合併により、重篤な呼吸不全を引き起こす危険性があるため、注意が必要です。

医療機関での診察と診断

フレイルチェスト(動揺胸郭)の診断には、詳細な身体診察と画像検査が不可欠であり、早期発見と適切な評価が重要です。

フレイルチェストが疑われる患者では、まず詳細な病歴聴取と身体診察が行われます。病歴聴取では、受傷機転や症状の出現時期、程度などを確認し、フレイルチェストの可能性を評価します。

身体診察では、胸郭の動揺性や奇異性運動の有無、呼吸音の左右差、皮下気腫の有無などを確認します。

視診と触診

フレイルチェストの診察では、視診と触診が重要な役割を果たします。

視診では、胸郭の動きを観察し、呼吸運動に伴う胸壁の奇異性運動の有無を確認します。 また、胸壁の変形や皮下気腫の有無も評価します。

触診では、胸壁の動揺性を直接触れることで評価します。片手を患者の胸壁に当て、もう一方の手で反対側の胸壁を圧迫すると、動揺部位が浮き上がるように感じられます。

この所見は、フレイルチェストに特徴的な所見です。

診察手技評価項目
視診胸壁の奇異性運動、変形、皮下気腫
触診胸壁の動揺性

聴診

フレイルチェストでは、肺損傷を合併していることが多いため、聴診も重要な診察手技です。

聴診では、呼吸音の左右差や減弱、ラ音(捻髪音、水泡音)の有無を確認します。また、気胸を合併している場合、患側の呼吸音が減弱または消失することがあります。

聴診所見意味
呼吸音の左右差片側の肺損傷を示唆
ラ音肺挫傷、肺水腫、肺炎など
呼吸音の減弱・消失気胸の可能性

画像検査

フレイルチェストの確定診断には、画像検査が必要不可欠です。胸部X線検査は、フレイルチェストの診断に最も有用な検査であり、特徴的な肋骨骨折のパターンを確認することができます。

また、肺挫傷や気胸、血胸などの合併症の有無も評価できます。

以下の所見がある場合、フレイルチェストを強く疑います。

  • 3本以上の連続する肋骨が、2か所以上で骨折
  • 胸壁の変形や奇異性運動
  • 肺挫傷、気胸、血胸などの合併所見

胸部CT検査は、より詳細な評価が可能であり、軽度の肺挫傷や少量の血気胸なども診断できます。

また、胸壁の立体的な構造を評価できるため、骨折の範囲や胸壁の不安定性をより正確に把握することができます。

動脈血ガス分析

フレイルチェストでは、呼吸不全を合併することがあるため、動脈血ガス分析も重要な検査です。低酸素血症や高二酸化炭素血症の有無を評価し、呼吸状態の把握と重症度の評価に役立ちます。

画像所見

フレイルチェストの画像診断では、胸部X線検査やCT検査が中心となります。特徴的な肋骨骨折のパターンや胸壁の不安定性、合併症の有無を総合的に評価することが重要です。

また、3D-CT画像や超音波検査などの追加検査も、症例に応じて有用となります。

画像所見を適切に理解し、身体診察所見と組み合わせることで、フレイルチェストの正確な診断と重症度の判定が可能となります。

胸部X線検査

胸部X線検査では、以下のような所見がフレイルチェストを示唆します。

  • 連続する3本以上の肋骨骨折
  • 各肋骨が2か所以上で骨折
  • 胸壁の変形や奇異性運動
  • 肺挫傷、気胸、血胸などの合併所見

正面像では、肋骨骨折や胸壁の変形、肺野の異常影などを評価します。側面像では、前胸壁や後胸壁の骨折、胸壁の奇異性運動などを観察することができます。

Case courtesy of Andrew Dixon, Radiopaedia.org. From the case rID: 31625

所見:右側に多発肋骨骨折を認め、著明な胸水貯留と右肺にすりガラス影~浸潤影を散見し、フレイルチェストとして合致する所見である。

胸部CT検査

胸部CT検査は、より詳細な画像評価が可能であり、軽度の肺挫傷や少量の血気胸なども診断できます。

また、胸壁の立体的な構造を評価できるため、骨折の範囲や胸壁の不安定性をより正確に把握することができます。

以下の所見がある場合、フレイルチェストを強く疑います。

  • 連続する肋骨の複数箇所骨折
  • 胸壁の不安定性や奇異性運動
  • 肺挫傷、気胸、血胸などの合併所見
所見説明
連続する肋骨骨折3本以上の隣接する肋骨の骨折
胸壁の不安定性胸壁の一部が胸郭から遊離している状態
Case courtesy of Andrew Dixon, Radiopaedia.org. From the case rID: 31625

所見:右第3~6肋骨、右第7横突起、右第8~9肋骨は肋横関節の後方で骨折。右第4~8肋骨も側方に骨折を認め、中容量の右血胸、右下葉の虚脱、その他の部位にも斑状の肺挫傷が認められ、多発外傷・フレイルチェスト・肺挫傷と考えられる。

3D-CT画像

3D-CT画像は、胸郭の立体的な構造を視覚化することができ、骨折の範囲や胸壁の変形をより詳細に評価できます。特に、複雑な骨折パターンを呈する症例では、3D-CT画像が診断や治療方針の決定に有用です。

Case courtesy of Henry Knipe, Radiopaedia.org. From the case rID: 28604

所見:本3D再構成画像では、左多発肋骨骨折が一目瞭然である。

超音波検査

超音波検査は、骨折や胸壁の動揺性を評価するのに有用な検査です。 プローブを胸壁に当てて呼吸運動を観察することで、胸壁の奇異性運動を容易に確認できます。肺挫傷や胸水貯留の評価にも役立ちます。

Rovida, Serena et al. “Lung ultrasound in blunt chest trauma: A clinical review.” Ultrasound (Leeds, England) vol. 30,1 (2022): 72-79.

所見:矢印のように胸骨骨折が明瞭に描出されている。

フレイルチェスト(動揺胸郭)の治療方針と回復期間

フレイルチェスト(動揺胸郭)の治療では、呼吸管理と疼痛管理が中心となり、重症度に応じて人工呼吸器管理や外科的治療が検討されます。回復には数週間から数ヶ月を要することが多いです。

フレイルチェストの治療目標は、呼吸機能の維持と疼痛の軽減、合併症の予防です。軽症例では、酸素投与や鎮痛薬の使用、呼吸リハビリテーションなどの保存的治療が中心となります。

一方、重症例では、人工呼吸器管理や外科的治療が必要となることがあります。

呼吸管理

フレイルチェストでは、呼吸不全を来すリスクが高いため、適切な呼吸管理が重要です。酸素投与により低酸素血症を改善し、呼吸リハビリテーションで呼吸機能の維持・改善を図ります。

重症例では、人工呼吸器管理が必要となることがあります。

治療目的
酸素投与低酸素血症の改善
呼吸リハビリテーション呼吸機能の維持・改善

人工呼吸器管理では、胸壁の動揺を最小限に抑えるため、低換気量・高PEEP設定が用いられます。鎮静薬の使用により、患者の不穏や人工呼吸器との非同調を防ぎます。

疼痛管理

フレイルチェストでは、胸壁の動揺による激しい疼痛を伴うことが多いため、適切な疼痛管理が不可欠です。 鎮痛薬の使用により疼痛を軽減し、深呼吸や咳嗽を促すことで、無気肺や肺炎などの合併症を予防します。

以下の薬剤が疼痛管理に用いられます。

  • オピオイド系鎮痛薬(モルヒネ、フェンタニルなど)
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • アセトアミノフェン
薬剤特徴
オピオイド系鎮痛薬強い鎮痛作用を持つ
非ステロイド性抗炎症薬炎症を抑える作用がある

外科的治療

重症例や保存的治療で改善が得られない場合、外科的治療が検討されます。 外科的治療では、胸壁の安定化を図るため、肋骨の固定や胸壁再建術が行われます。

以下の方法が外科的治療として用いられます。

  • 肋骨プレート固定術
  • 金属ワイヤーによる肋骨固定術
  • 人工材料を用いた胸壁再建術

外科的治療により、胸壁の動揺を抑制し、呼吸機能の改善と疼痛の軽減を図ります。

回復期間

フレイルチェストの回復には、数週間から数ヶ月を要することが多いです。 重症度や合併症の有無、治療方法などにより、回復期間は異なります。

保存的治療で改善が得られた場合、2~4週間程度で退院可能となることがあります。 一方、人工呼吸器管理や外科的治療を要した重症例では、数ヶ月間の入院加療が必要となる場合があります。

退院後も、呼吸リハビリテーションを継続し、呼吸機能の回復を図ることが大切です。 また、定期的な外来通院により、合併症の有無や治療経過を評価します。

治療の副作用やデメリット(リスク)

人工呼吸器管理は、フレイルチェストの重症例で用いられる治療法ですが、長期使用により様々な合併症を引き起こす可能性があります。

人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、人工呼吸器管理中に発生する肺炎であり、治療の難渋化や予後の悪化につながることがあります。

また、人工呼吸器の使用により、気道粘膜の損傷や気道狭窄、気胸などの合併症を来すこともあります。

合併症説明
人工呼吸器関連肺炎人工呼吸器管理中に発生する肺炎
気道粘膜の損傷気管チューブによる物理的刺激で生じる

鎮痛薬の副作用

フレイルチェストの疼痛管理では、オピオイド系鎮痛薬が頻用されますが、これらの薬剤には呼吸抑制や意識障害、便秘などの副作用があります。

特に呼吸抑制は、フレイルチェストの患者において致命的となる可能性があるため、慎重な使用が求められます。また、オピオイドの長期使用により、身体的・精神的依存を来すリスクもあります。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も疼痛管理に用いられますが、消化管出血や腎機能障害などの副作用に注意が必要です。

薬剤主な副作用
オピオイド系鎮痛薬呼吸抑制、意識障害、便秘、依存
非ステロイド性抗炎症薬消化管出血、腎機能障害

外科的治療のリスク

外科的治療は、フレイルチェストの重症例や保存的治療で改善が得られない場合に検討されますが、手術に伴うリスクがあります。

肋骨プレート固定術や胸壁再建術では、以下のようなリスクや合併症が生じる可能性があります。

  • 術中・術後の出血
  • 術後感染症
  • 人工材料に関連する合併症(移動、破損、感染など)
  • 術後疼痛の遷延化

これらの合併症は、治療の難渋化や入院期間の延長、QOLの低下などにつながることがあります。

その他の合併症

フレイルチェストでは、治療に伴う合併症以外にも、病態そのものに関連する合併症が生じることがあります。

呼吸不全は、フレイルチェストの重篤な合併症の一つであり、低酸素血症や高二酸化炭素血症により、臓器障害を来す危険性があります。長期臥床に伴う合併症として、深部静脈血栓症や褥瘡、廃用症候群などが挙げられます。

これらの合併症は、治療の難渋化や予後の悪化につながることがあるため、早期発見と適切な対応が求められます。

再発の可能性と予防の仕方

フレイルチェスト(動揺胸郭)は、適切な治療により多くの場合回復が期待できますが、一度発症すると再発のリスクが高まることが知られており、再発予防のための取り組みが重要となります。

フレイルチェストの再発リスクは、初回発症時の重症度や合併症の有無、治療方法などによって異なりますが、一般的に外傷後の再発率は10~20%程度と報告されています。

特に、高齢者や基礎疾患を有する患者、複数回の外傷歴がある患者では、再発リスクがより高くなる傾向があります。

再発予防のための生活指導

フレイルチェストの再発予防では、日常生活における注意点を患者に指導することが大切です。以下のような点に留意することで、再発リスクを減らすことができます。

  • 転倒・転落の予防(手すりの設置、滑りにくい靴の着用など)
  • 重量物の取り扱いに注意(持ち上げる際は膝を曲げ、体幹を安定させる)
  • 交通事故の予防(シートベルトの着用、安全運転の徹底)
  • 骨粗鬆症の予防・治療(カルシウムやビタミンDの摂取、定期的な骨密度測定)
予防策説明
転倒・転落の予防手すりの設置、滑りにくい靴の着用など
重量物の取り扱いに注意持ち上げる際は膝を曲げ、体幹を安定させる

呼吸リハビリテーションの継続

フレイルチェストの治療後は、呼吸リハビリテーションを継続することが再発予防に役立ちます。呼吸リハビリテーションでは、以下のような効果が期待できます。

  • 呼吸筋力の維持・向上
  • 肺機能の改善
  • 全身の運動耐容能の向上

定期的な呼吸リハビリテーションを行うことで、再発リスクを減らすだけでなく、日常生活の質(QOL)の向上にもつながります。

リハビリテーションの効果説明
呼吸筋力の維持・向上呼吸筋のトレーニングにより筋力を維持・向上させる
肺機能の改善呼吸法の指導や呼吸筋トレーニングにより肺機能を改善させる

定期的な経過観察

フレイルチェストの治療後は、定期的な経過観察が再発予防に重要です。 外来での定期診察では、以下のような点を評価します。

  • 呼吸状態の評価(呼吸数、呼吸パターン、酸素飽和度など)
  • 胸壁の安定性の評価(視診、触診、画像検査など)
  • 合併症の有無の評価(肺炎、気胸、胸水など)

異常所見がある場合は、早期に適切な対応を行うことで、再発や合併症の悪化を防ぐことができます。

再発時の対応

フレイルチェストが再発した場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。再発時の治療方針は、初回発症時と同様に、呼吸管理や疼痛管理、必要に応じて外科的治療が検討されます。

再発を繰り返す場合は、基礎疾患の評価や生活環境の見直しなども必要となります。医療者と患者・家族が協力して、再発予防のための取り組みを継続することが重要です。

治療費

フレイルチェスト(動揺胸郭)の治療費は、重症度や合併症の有無、治療方法などにより大きく異なりますが、一般的に高額となる傾向があります。

初診料は、医療機関や診療科によって異なりますが、おおよそ2,910円~5,410円程度です。再診料は、初診料よりも低く設定されており、750円~2,660円程度が一般的です。

検査費

フレイルチェストの診断には、胸部X線検査やCT検査などの画像検査が必要不可欠です。

検査費用
胸部X線検査2,100円~4,000円/回
胸部CT検査14,700円~20,700円/回

入院費

現在基本的に日本の入院費は「包括評価(DPC)」にて計算されます。
各診療行為ごとに計算する今までの「出来高」計算方式とは異なり、病名・症状をもとに手術や処置などの診療内容に応じて厚生労働省が定めた『診断群分類点数表』(約1,400分類)に当てはめ、1日あたりの金額を基に入院医療費を計算する方式です。
1日あたりの金額に含まれるものは、投薬、注射、検査、画像診断、入院基本料等です。
手術、リハビリなどは、従来どおりの出来高計算となります。
(投薬、検査、画像診断、処置等でも、一部出来高計算されるものがあります。)

計算式は下記の通りです。
「1日あたりの金額」×「入院日数」×「医療機関別係数※」+「出来高計算分」

14日間入院するとした場合は下記の通りとなります。

DPC名 多部位外傷 手術なし
日数 14
医療機関別係数 0.0948 (例:神戸大学医学部附属病院)
総医療費 ¥322,700 +出来高計算分

更に重症例では、人工呼吸器管理や集中治療を要するため、入院費が高額となります。

入院費用
一般病棟1日あたり10,000円~20,000円
集中治療室(ICU)1日あたり50,000円~100,000円

外科的治療費

外科的治療を要する場合、手術費用が加算されます。

肋骨固定術や胸壁再建術などの手術費用は、手術の内容や使用する材料によって異なりますが、数十万円から数百万円に及ぶことがあります。

ただし、保険適用となると1割~3割の自己負担であり、高額医療制度の対象となるため、実際の自己負担はもっと安くなります。

その他の費用

フレイルチェストの治療には、呼吸リハビリテーションや栄養管理、創傷処置など、様々な関連サービスが必要となります。これらの費用は、医療機関や利用するサービスによって異なりますが、数千円から数万円程度が一般的です。

以上

参考にした論文