咳喘息は長期間続く咳が主症状でありながら、一般的な喘息のように喘鳴や呼吸困難が明確に出ないことが特徴です。

近年、咳喘息と診断される方が増えていますが、日常的に使用する薬の中には気道を刺激したり、咳をさらに悪化させたりするリスクがあるものが存在します。

本記事では咳喘息をお持ちの方が避けるべき薬剤を中心に、悪化の仕組みと代替策までをわかりやすく解説します。

呼吸器内科の専門医による受診の重要性や自宅でできるセルフケアなども取り上げますので、少しでも症状を改善し、健康な日常を取り戻すためにぜひご参考ください。

咳喘息とは

咳喘息は長引く咳を主症状とし、一般的な喘息に見られる笛のような音(喘鳴)がはっきりしない呼吸器の疾患です。

気管支が過敏になっている状態のため、些細な刺激でも咳発作が起こりやすく、日常生活の質に大きく影響を及ぼします。

ここでは咳喘息の基礎知識として定義や特徴、主な症状を確認し、成人と小児での違いにも触れます。

定義と特徴

咳喘息は一般的な喘息よりも症状が軽度に思われがちです。

しかし咳が長期間続くことで日中の仕事や学業に支障をきたしたり、夜間の睡眠不足を招いたりします。慢性的に喉がイガイガして声が出しづらくなる方もいます。

適切な治療が遅れると、そのまま本格的な喘息へ移行する場合があります。

咳喘息の主な特徴

特徴詳細
主症状長引く乾いた咳(痰は少なめ)
喘鳴の有無はっきりしない、もしくはほとんど聞こえない
発作のタイミング夜間や明け方に多い
気道の状態過敏になっており刺激に反応しやすい
本格的な喘息への移行適切に対処しないと移行のリスクあり

主な症状と診断

咳喘息の症状は「とにかく咳が止まらない」ことが最も特徴的です。咳が続く期間は数週間から数カ月に及ぶこともあり、一般的な風邪や気管支炎とは異なります。

レントゲンなどの画像検査では異常が見られない場合が多いですが、呼吸機能検査や喀痰中の好酸球検査、気管支拡張薬の効果などを総合的に見て診断することがあります。

咳が長引くときに考えるべきポイント

  • 喫煙習慣の有無や周囲の受動喫煙状況
  • アレルギーの有無(花粉症、ハウスダストなど)
  • 夜間や早朝に咳き込むかどうか
  • 寝起きや外気温の変化で咳が誘発されるか
  • 市販薬で症状が緩和されない場合の受診タイミング

成人と小児での違い

成人の咳喘息はストレスや仕事環境の影響も受けやすく、睡眠不足や疲労の蓄積により悪化しやすいとされています。

一方で小児の場合は、アレルギー体質や呼吸器の未発達さが要因となり、細かな刺激でも気管支が反応しやすくなる傾向があります。

どちらの場合も咳が長引くときは呼吸器内科への受診を検討しましょう。

成人と小児の咳喘息の違い

項目成人の咳喘息小児の咳喘息
原因因子ストレス、過労、喫煙、アレルギーなどアレルギー、ウイルス感染、気管支の未発達
発作の頻度個人差が大きい気温変化や運動などで頻発することが多い
生活への影響仕事や家事がはかどらなくなる、睡眠不足など学校欠席や学業への影響が懸念される
治療方針状況に応じた薬物療法+生活習慣の見直し症状に合わせた薬物療法+環境整備

咳喘息が悪化する要因

咳喘息は気管支が過敏になっているため、身近なさまざまな要因で悪化するリスクがあります。

ここではアレルギー性の要素や環境因子、さらに薬剤との関連性を取り上げて咳喘息が悪化する仕組みを具体的に見ていきます。

アレルギー性要素

アレルギー体質の方はダニやハウスダスト、花粉などの吸入物質に対して気道が過敏に反応しやすいです。鼻や喉の粘膜が刺激を受けると咳発作が起こりやすくなります。

食物アレルギーがある場合でも、気道に影響を及ぼす可能性は否定できません。

アレルギー性要素と咳喘息の関連

アレルギーの種類具体例咳喘息への影響
吸入性アレルゲンダニ、ハウスダスト、花粉など粘膜の炎症を強め、咳を誘発しやすくする
食物アレルギー卵、乳製品、小麦など稀ではあるが気道の過敏性を高める要因になる場合あり
化学物質香料、洗剤、塗料など刺激性の強い物質が気管支を刺激し、発作を誘発する

環境因子

咳喘息を悪化させる環境因子としては寒暖差の激しい場所、ほこりっぽい室内、空気の乾燥、タバコの煙などが挙げられます。

エアコンの使い方や加湿器の適切な使用も意外に見落としがちで、気道を乾燥させると咳がひどくなることがあります。

悪化を招きやすい環境因子

  • 空気の汚れ(PM2.5、排気ガスなど)
  • 過度な乾燥(冬場の暖房、長時間のエアコン使用)
  • 急激な温度変化(寒い室外から暖かい室内への出入りなど)
  • 香りの強い芳香剤やタバコの煙

薬剤との関連性

気道の過敏性を高める薬や気管支を収縮させる作用を持つ薬を使用すると、咳喘息が悪化することがあります。

特に血圧を下げる目的のβ遮断薬や、鎮痛目的のNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などが原因になるケースが知られています。

誤って飲み続けると症状が長引くことがあるため、薬剤の確認が重要です。

咳喘息と薬剤の悪化要因

薬剤カテゴリ具体例悪化の仕組み
β遮断薬(βブロッカー)プロプラノロール、アテノロールなど気管支平滑筋の収縮を促してしまう可能性
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)アスピリン、イブプロフェンなど気道の炎症を増幅させるリスクがある
その他一部の鎮咳薬、去痰剤など成分によって気道を刺激する場合あり

咳喘息患者が避けるべき薬剤

ここでは具体的に、咳が続いており喘息のある人が飲むとリスクが高まる薬について解説します。

代表的な例として鎮咳薬や鎮痛薬、血圧を下げる目的で処方されるβ遮断薬、NSAIDsなどを取り上げ、それぞれの注意点を整理します。

鎮咳薬と鎮痛薬の注意点

咳を抑えるために用いる鎮咳薬の中には気道の分泌を減少させたり、気管支を収縮させたりする成分が含まれているものがあります。

咳を一時的に抑制できたとしても長期的には気道の炎症を悪化させるリスクがあります。

鎮痛薬も同様で、種類によっては気道を刺激する可能性があります。

鎮咳薬と鎮痛薬に含まれる主な成分

薬剤種別代表的な成分注意すべき点
鎮咳薬コデイン、デキストロメトルファンなど気道粘液の動態に影響を与え、分泌を減少させる場合がある
鎮痛薬アセトアミノフェン、イブプロフェンなど鎮痛効果がある一方で、気道に刺激を与え咳を誘発する例も

β遮断薬(βブロッカー)のリスク

血圧のコントロールや心疾患の治療に広く使われるβ遮断薬は交感神経のβ受容体を阻害して血圧を下げる効果があります。

しかし気管支平滑筋にも作用を及ぼすため気管支が収縮しやすくなり咳が悪化します。

特に非選択的なβ遮断薬は要注意で、喘息や咳喘息の既往がある方には勧められない場合が多いです。

β遮断薬使用時の注意点

  • 主治医に喘息や咳喘息の既往を必ず伝える
  • できるだけβ1選択性の高い薬剤を検討する
  • 気管支拡張薬との併用が必要かどうか相談する
  • 咳がひどいときは自己判断での中断は避け、医師に相談する

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の影響

NSAIDsは痛みや熱を抑える効果があるため、市販薬としても広く利用されています。

しかし気道を含む体内の炎症を抑制する一方で、喘息症状を悪化させる例があります。特にアスピリン喘息と呼ばれる、アスピリンを含むNSAIDsで発作を誘発するタイプの喘息は注意が必要です。

NSAIDsによる咳喘息への影響

薬剤一般的な用途咳喘息への影響
アスピリン鎮痛、解熱、抗炎症アスピリン喘息の誘発因子になる
イブプロフェン頭痛、関節痛などの痛み気道過敏性を高め、咳を誘発する場合あり
ロキソプロフェン頭痛、歯痛などの軽減個人差はあるが喘息を悪化させるリスク

その他の注意すべき薬剤

抗うつ薬や一部の抗ヒスタミン薬など咳喘息を持つ方の体質と相性が悪い場合もあります。

成分や作用機序によっては気道分泌を抑制したり、交感神経や副交感神経のバランスを崩すことがあります。

処方された薬の成分をよく確認し、症状に変化があれば速やかに医師に伝えることが大切です。

その他気をつけたい薬剤

  • 一部の抗うつ薬(気道の神経調節に影響を与える場合がある)
  • 抗ヒスタミン薬(口渇や喉の乾燥を引き起こし、咳を悪化させる可能性)
  • 去痰剤(痰を出しやすくするはずが、成分によっては粘膜刺激を助長する例あり)

なぜ薬剤で咳喘息が悪化するのか

咳喘息は気管支が非常に敏感な状態です。そこへ薬剤が作用することで気管支の収縮や気道粘膜の炎症を助長してしまう場合があります。

ここではβ遮断薬による気管支収縮、NSAIDsによる負担、そして漢方薬やサプリメントの注意点を掘り下げます。

β遮断薬が引き起こす気管支収縮

β遮断薬が血圧を下げる理由は交感神経のβ受容体の働きを抑えるからです。

心拍数が落ち着き、血圧が低下する効果をもたらす一方で、気管支平滑筋も収縮方向に動かす傾向があります。

この収縮で咳発作が起きやすくなり、もともと咳喘息を持つ方の症状をさらに悪化させることがあります。

β遮断薬の作用ポイント

対象臓器作用咳喘息への影響
心臓心拍数低下、血圧低下心疾患には有効だが、気道への影響に注意
血管血管拡張血圧を抑える効果を得られる
気管支平滑筋収縮が起こりやすくなる気管支収縮によって咳が悪化するリスクが高まる

NSAIDsが気道に与える負荷

NSAIDsは炎症物質の産生を抑えることで痛みや熱を下げますが、同時に気管支まわりの炎症性メディエーターのバランスを崩す恐れがあります。

特にアスピリン喘息の人はNSAIDsの摂取によって重度の喘息発作を起こすことがあるため、服用時には細心の注意が必要です。

NSAIDsによる悪化リスクが高いケース

  • 過去にアスピリン喘息と診断された経験がある
  • 親族にNSAIDsで発作を起こした人がいる
  • 花粉症やアレルギー性鼻炎を長年患っている
  • 複数の種類の鎮痛薬を併用している

漢方薬やサプリメントの考慮

漢方薬は比較的身体に優しいイメージがありますが、生薬に含まれる成分が気道を刺激したり、体質によっては咳を誘発しやすくすることがあります。

同様にサプリメントも含有成分によってはアレルギー反応を引き起こすケースが報告されています。

自己判断での長期服用は避け、専門家に相談することが重要です。

漢方薬・サプリメントの注意点

種類咳喘息への影響
漢方薬麻黄含有製剤、葛根湯など生薬成分による気道刺激、交感神経への作用が疑われる場合あり
サプリメントビタミン系、ハーブ系、プロバイオティクスなど個人差が大きく、稀にアレルギー性反応を起こすことがある

症状があるときの代替薬と相談の重要性

咳が続いており、喘息のある人が飲んではいけない薬を避けることはもちろん、別の安全性の高い薬や治療法を選ぶことも重要です。

医師や薬剤師にしっかりと相談し、自分の症状や体質に合った選択肢を見つけることが望ましいといえます。

ここでは咳を和らげるための代替薬や病院で相談するメリット、かかりつけ医と呼吸器内科専門医の連携について解説します。

咳が続く人と喘息のある人にとっての選択肢

市販の咳止めや鎮痛薬には先述のようなリスクを含む成分が多く含まれている可能性があります。

呼吸器内科で診察を受けると、気管支拡張薬や吸入ステロイドなど、より直接的かつ安全性に配慮した薬を提案してもらえます。

さらに、アレルギー検査を行うと原因アレルゲンを特定できるため、必要に応じて抗アレルギー薬を処方してもらうことも可能です。

咳喘息の症状緩和に用いられる薬の例

薬の種類具体的な例特徴・効果
吸入ステロイドフルチカゾン、ブデソニドなど気道の炎症を抑え、発作頻度を減らす
長時間作用型β2刺激薬サルメテロール、ホルモテロールなど気管支拡張により咳を抑制する
抗アレルギー薬抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬などアレルゲンによる気道炎症を抑える

病院で相談するメリット

医療機関で相談すると咳喘息の原因や程度を客観的に評価できます。

呼吸機能検査だけでなく胸部レントゲンやCTなどを組み合わせて肺や気管支に他の異常が隠れていないかも確認してもらえます。

もし他の薬剤が必要になった場合でも咳喘息との兼ね合いを考慮した処方を行ってくれるため、安心して治療が進められます。

病院での主な検査・相談内容

  • 呼吸機能検査(スパイロメトリー)
  • アレルギー検査(血液検査、皮膚テストなど)
  • 胸部画像検査(レントゲン、CT)
  • 症状と薬の副作用のチェック

かかりつけ医と呼吸器内科専門医の連携

かかりつけ医は普段から患者さんの全身状態を把握し、生活習慣や既往歴などを含めた総合的なケアを提供してくれます。

一方で呼吸器内科専門医は咳喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎などの呼吸器疾患を深く知り尽くし、より専門的な検査や治療を担当します。

連携をとることで日常的な管理と専門的な診断・治療の両方をスムーズに行えます。

かかりつけ医と専門医の役割分担

診療形態主な役割利点
かかりつけ医全身管理、基礎疾患の把握、日常的な健康相談患者との距離が近く、長期的な管理が可能
呼吸器内科専門医詳細な呼吸器検査、専門的治療プランの作成呼吸器疾患の深い知識と技術が期待できる

薬剤以外で心がける予防とケア

咳喘息は薬物治療だけでなく、日常生活の習慣や環境づくりによって症状を大きく左右します。

ここでは生活習慣の見直し、体調管理の方法、そして吸入剤の扱い方などを取り上げ、総合的なケアのヒントを紹介します。

生活習慣の見直し

咳喘息は長期化しやすいので、まずは身体への負担を減らす取り組みが欠かせません。

たとえば睡眠時間をしっかり確保し、適度な運動を行い、ストレスを溜め込みすぎない工夫をすることも有効です。

また喫煙は気道に直接的な刺激を与えるため、禁煙は強く推奨されます。

生活習慣で見直したいポイント

  • 禁煙(受動喫煙も含めて煙を避ける)
  • 十分な睡眠と休息をとる
  • 軽度の有酸素運動で体力を維持する
  • 暖房・冷房の使用時は定期的な換気と加湿に注意

体調管理と環境整備

季節の変わり目など気温や湿度が大きく変化するときは咳喘息が起こりやすいです。

マスクの活用やうがい、手洗いなど基本的な衛生対策を徹底し、部屋の掃除や換気をしっかり行うと、アレルゲンやウイルスの侵入を減らせます。

加湿器を使用する際はカビの繁殖にも配慮し、清潔な状態を保つよう心がけてください。

快適な室内環境づくりのポイント

項目推奨値・注意点目的
温度20~24℃程度過度な温度差を避け、気道への負担を減らす
湿度40~60%程度空気の乾燥を防ぎ、咳の刺激を緩和する
換気1日に数回、窓を開けて空気を入れ替える室内のアレルゲンや二酸化炭素濃度を下げる
掃除ハウスダストやダニ対策を重点的に行うアレルギー原因物質の除去

正しい吸入剤の扱い方

咳喘息の治療で用いられる吸入ステロイドや気管支拡張薬は適切な吸入方法を守ると効果的に働きます。

吸入後には口をすすぎ、ステロイドが口腔内に残らないようにすることも大切です。

吸入薬によってはデバイスの使い方が異なるため、医師や薬剤師の指導に従いましょう。

吸入剤使用時のチェックポイント

ポイント具体的な注意事項
吸入前の準備デバイスを振る、カウンターの残量を確認するなど
吸入時の姿勢背筋を伸ばし、深呼吸してから吸入する
吸入後の処置口をすすぎ、口腔内のステロイド残留を防ぐ
デバイスの管理使用後は清潔に保ち、湿気の多い場所を避けて保管する

咳喘息と上手につきあうために

咳喘息は適切にケアすれば症状を和らげ、日常生活での負担を軽減できます。

ここでは長期的な管理の大切さや症状コントロールのポイント、そしてもし発作が起こったときの緊急対応について述べます。

長期管理の大切さ

咳喘息は一時的に咳が収まっても、原因となる気道の過敏性が残ることがあります。対症療法だけに頼っていると再発を繰り返すリスクが高まります。

定期的に医療機関で経過をチェックし、必要に応じて薬を調整することで安定した状態を保ちやすくなります。

長期管理のポイント

  • 定期受診を欠かさない
  • 日々の咳の程度や回数をメモし、変化を把握する
  • 気候や体調によって吸入薬の回数を調整する必要がある場合は医師に相談
  • 他の疾患との併発が疑われるときは早めに検査を受ける

症状コントロールのポイント

咳がひどいときは自律神経が乱れているケースもあります。深呼吸やリラックスできる環境づくりを心がけるだけでも発作の頻度を抑えられることがあります。

気管支拡張薬を正しく使用し、寒暖差やホコリが多い環境を避けるよう工夫してください。

症状コントロールの具体策

コントロール策実践例
呼吸法の工夫ゆっくり深呼吸し、胸や肩の力を抜く
生活リズムの安定規則正しい睡眠と食事を心がけ、ストレスを軽減
外出時の対策マスクの着用、花粉シーズンや大気汚染時の防備
運動習慣の調整無理のない軽い運動から始め、肺活量を徐々に向上

緊急時の対応

突然激しい咳発作が起こった場合は、まず気管支拡張薬を使用して楽な姿勢で深呼吸を続けてください。周囲に人がいれば声をかけて助けを求めるのも大切です。

呼吸困難や胸の痛みを伴うようであれば、救急外来の受診も視野に入れましょう。

緊急時に意識したい行動

  • できるだけ姿勢を上体が起きた状態に保つ
  • 気管支拡張薬をすぐに使用する(医師の指示がある場合)
  • 呼吸を乱さないようにゆっくり吸って吐く
  • 症状が治まらない場合は救急車を呼ぶ

当クリニックでの診療と今後の方針

当クリニックでは咳喘息の方にも安心して受診していただける体制を整えています。

初回の受診では症状のヒアリングから必要な検査までを丁寧に行い、呼吸器内科の医師による専門的な診断とアドバイスを提供します。

ここでは初回受診からの流れ、呼吸器内科専門医のサポート、咳喘息以外の呼吸器疾患への対応を紹介します。

初回受診からの流れ

咳が長引いている場合や、すでに咳喘息と診断されている方には問診票の記入や過去の既往歴やアレルギー歴の確認をしっかり行います。

その後、スパイロメトリーなどの呼吸機能検査や胸部X線検査を行い、症状に合わせて血液検査やアレルギー検査を追加します。

薬歴や現在の服用薬を確認し、咳喘息が悪化しやすい薬剤の使用を避けられるように配慮しています。

初回受診の代表的な検査

検査名内容目的
呼吸機能検査スパイロメトリーによる肺活量測定気道の狭窄や肺活量の変化を把握
胸部X線検査胸部レントゲン撮影肺炎や肺気腫など、他の疾患の有無を確認
血液検査炎症反応、アレルギー反応、好酸球数など咳喘息との関連を評価し、全身状態を確認

呼吸器内科の医師によるサポート

呼吸器内科専門医は咳喘息の治療経験が豊富で、さまざまな症例を踏まえたうえで薬剤の選択や生活指導を行います。

例えば、β遮断薬の中でも選択性の高いものに切り替える、NSAIDsを使わずに鎮痛効果が得られる薬を探すなど個々の患者さんに合った治療計画を立てます。

呼吸器内科医が行う主なサポート

  • 詳細な問診と身体所見による正確な診断
  • 気管支拡張薬、吸入ステロイドなどの最適な処方提案
  • 生活上の注意点や緊急時の対応方法のアドバイス
  • 他の専門領域との連携が必要な場合の紹介

咳喘息以外の呼吸器疾患への対応

咳の原因は咳喘息だけではありません。当クリニックでは慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺がん、気管支炎など、さまざまな呼吸器疾患にも対応しています。

診察や検査の結果、別の疾患が疑われる場合には適切な治療方針を提示し、必要に応じて高度医療機関との連携も行います。

主な呼吸器疾患と特徴

疾患名特徴治療・管理方法
COPD(慢性閉塞性肺疾患)喫煙や大気汚染による肺胞の破壊が原因禁煙指導、気管支拡張薬、リハビリテーションなど
肺がん初期に自覚症状が乏しい場合が多い手術、放射線治療、化学療法など
気管支炎細菌・ウイルス感染で起こる急性・慢性の炎症抗菌薬、対症療法、生活指導

以上

参考にした論文

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