呼吸器疾患の一種である気道異物は、気管や気管支などの気道に、食物や玩具などの異物が入り込んでしまった状態を指します。

気道異物は、主に乳幼児に多く見られる疾患ですが、高齢者に起こる場合もあります。

異物が気道に詰まることにより、咳込みや呼吸困難などの症状が現れ、重症化した際には窒息により生命に関わる危険性もあり注意が必要です。

気道異物の主症状と注意点

呼吸器疾患の一種である気道異物の主症状は、突発的な咳込み、喘鳴(ぜいめい)、呼吸困難などがあります。

異物が気道に入り込んだ直後は、激しい咳込みが特徴的な症状として現れ、咳込みが続く場合や、呼吸困難を伴う際は、異物が気道に詰まっている可能性が高いため、速やかな医療機関への受診が不可欠です。

重症化すると、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる状態)や意識障害を引き起こすこともあるため、注意が必要です。

気道異物の症状の特徴

症状特徴
咳込み突発的で激しい咳込みが特徴的
喘鳴異物による気道の狭窄で生じる
呼吸困難異物が気道を塞ぐことで発生

気道異物の症状は、異物の種類や大きさ、詰まった位置などによって異なります。

小さな異物の場合、咳込みのみで自然に排出されることもありますが、大きな異物や不定形の異物は、気道を完全に塞ぐ危険性があります。

異物が気管支に入り込んだ際は、片側の呼吸音が減弱したり、局所的な喘鳴が聞かれたりすることがあります。

異物の種類と症状の関係

食物ピーナッツ、あめ玉など
玩具ビーズ、ボタン電池な
その他歯科材料、義歯など

気道異物の主症状は、異物の種類や大きさによって異なりますが、いずれの場合も重篤な状態に陥る可能性があります。

異物が疑われる際は、症状の有無にかかわらず、速やかな医療機関への受診が大切です。

特に、乳幼児や高齢者は、異物を誤って飲み込むリスクが高いため、日頃から異物を口に入れないよう注意が必要です。

気道異物の症状のまとめ

気道異物の主症状は、以下のようにまとめられます。

  1. 突発的で激しい咳込み
  2. 喘鳴(ぜいめい)
  3. 呼吸困難
  4. チアノーゼ(重症化した場合)
  5. 意識障害(重症化した場合)

これらの症状は、異物の種類や大きさ、詰まった位置などによって異なるため、個々の症例に応じた注意深い観察と対応が求められます。

気道異物が発生する原因と機序について

気道異物の原因は、主に誤嚥や誤飲によるものであり、乳幼児や高齢者に多く見られます。

乳幼児は、異物を口に入れる探索行動が活発であるため、小さな玩具やビーズなどを誤って飲み込んでしまうことがあります。

一方、高齢者は、加齢に伴う嚥下機能の低下や認知機能の低下により、食物を誤嚥するリスクが高くなります。

また、歯科治療中の事故や外傷により、歯科材料や義歯が気道に迷入する場合もあります。

乳幼児における気道異物の原因

原因具体例
玩具ビーズ、ボタン電池など
食物ピーナッツ、あめ玉など

乳幼児は、異物を口に入れる探索行動が活発であるため、小さな玩具やビーズなどを誤って飲み込んでしまうリスクが高くなります。

特に、ボタン電池は、誤飲した場合に重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

また、ピーナッツやあめ玉などの食物も、気道に詰まりやすく、窒息の危険性があります。

高齢者における気道異物の原因

高齢者は、加齢に伴う嚥下機能の低下や認知機能の低下により、食物を誤嚥するリスクが高くなります。

特に、以下のような要因が関与しています。

要因リスクの高さ
咀嚼機能の低下高い
嚥下反射の低下高い
認知機能の低下中程度
薬剤の副作用中程度

その他の気道異物の原因

気道異物は、乳幼児や高齢者に多く見られますが、その他の原因として以下のようなものがあります。

  • 歯科治療中の事故
  • 外傷による歯科材料や義歯の迷入
  • 意図的な異物の吸入(自殺企図など)

これらの原因は、比較的まれではありますが、発生した場合には重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

気道異物の発生メカニズム

気道異物は、以下のようなメカニズムで発生します。

  1. 異物が口腔内に入る
  2. 嚥下反射が誘発される
  3. 異物が気道に迷入する
  4. 咳嗽反射が誘発される
  5. 異物が気道に詰まる

異物が気道に迷入した場合、咳嗽反射が誘発されますが、異物が完全に排出されない際は、気道に詰まったままになります。

その結果、呼吸困難や窒息などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

気道異物を診察・診断する際の重要ポイント

気道異物の診断では、問診や身体診察、画像検査、気管支鏡検査などを総合的に評価し、異物の存在や位置、種類などを特定することが重要です。

特に、乳幼児や高齢者など、リスクの高い患者群では、早期診断と適切な処置が求められます。

問診と身体診察

項目内容
問診異物誤飲の有無、症状の発現時期や経過など
身体診察呼吸音の左右差、喘鳴、陥没呼吸など

まず患者や家族から詳細な問診を行い、異物誤飲の可能性や症状の発現時期、経過などを確認します。
※乳幼児の場合は保護者からの情報が重要となります。

身体診察では、呼吸音の左右差や喘鳴、陥没呼吸などの異常所見がないかを確認します。また、チアノーゼや意識障害などの全身状態の評価も必要です。

画像検査

気道異物の診断には、以下のような画像検査が有用です。

検査特徴
胸部X線検査簡便で迅速に実施可能
胸部CT検査異物の位置や種類の同定に有用
仮想気管支鏡検査侵襲性が低く、異物の3次元的な評価が可能

胸部X線検査は、簡便で迅速に実施可能な検査であり、異物の存在を示唆する所見が得られる場合があります。

ただし、プラスチック製の異物など、X線透過性の高い異物は描出されにくいことがあります。

胸部CT検査は、異物の位置や種類の同定に有用であり、X線検査で描出されない異物も検出可能です。

仮想気管支鏡検査は、CT画像をもとに気管支の3次元的な構造を評価する検査であり、侵襲性が低いというメリットがあります。

気管支鏡検査

気道異物の確定診断には、気管支鏡検査が最も重要です。気管支鏡検査では、以下のような所見が得られます。

  1. 異物の直接視認
  2. 気道粘膜の炎症や浮腫
  3. 分泌物の貯留
  4. 気道狭窄や閉塞

気管支鏡検査は、全身麻酔下で行われることが多く、異物の種類や位置、気道の状態などを詳細に評価することができます。

また、気管支鏡検査では、異物の摘出も同時に行うことが可能となります。

気道異物における画像検査所見とその特徴

気道異物の診断において、画像検査は非常に重要な役割を果たします。

胸部X線検査や胸部CT検査、仮想気管支鏡検査などの画像検査を適切に組み合わせることで、異物の存在や位置、種類などを特定することができます。

特に、胸部CT検査は異物の詳細な評価に有用であり、仮想気管支鏡検査は侵襲性が低いというメリットがあります。

胸部X線検査

所見特徴
異物の直接描出金属や骨片など、X線不透過性の高い異物で可能
片側の肺野の透過性低下異物による無気肺や気道閉塞を示唆

胸部X線検査は、気道異物の診断において最初に実施される画像検査です。

X線不透過性の高い異物、例えば金属や骨片などは直接描出されることがあります。

一方、プラスチック製の異物やピーナッツなどのX線透過性の高い異物は描出されにくいことがあります。

また、異物による無気肺や気道閉塞がある場合、片側の肺野の透過性低下として認められることがあります。

胸部CT検査

胸部CT検査は、気道異物の詳細な評価に有用な検査です。CT検査では、以下のような所見が得られます。

  • 異物の直接描出
  • 異物の位置や大きさ、形状の評価
  • 気道狭窄や閉塞の評価
  • 合併症(無気肺、肺炎など)の評価
所見特徴
異物の直接描出X線検査で描出されない異物も検出可能
気道狭窄や閉塞の評価異物による気道の狭窄や閉塞の程度を評価可能

CT検査では、X線検査で描出されない異物も直接描出されることがあります。

また、異物の位置や大きさ、形状を詳細に評価することができ、気道の狭窄や閉塞の程度も評価可能で、、無気肺や肺炎などの合併症の有無も評価することができます。

仮想気管支鏡検査

仮想気管支鏡検査は、CT画像をもとに気管支の3次元的な構造を評価する検査であり、侵襲性が低いというメリットがあります。

仮想気管支鏡検査では、以下のような所見が得られます。

  1. 異物の位置や形状の評価
  2. 気道狭窄や閉塞の評価
  3. 気道の3次元的な構造の評価

仮想気管支鏡検査では、異物の位置や形状を3次元的に評価することができ、気道の狭窄や閉塞の程度も詳細に評価可能です。また、気道の3次元的な構造を把握することで、異物の摘出方法の検討にも有用です。

気道異物の治療方法と薬、治癒までの期間

気道異物の治療は、異物の種類や位置、患者の全身状態などを総合的に評価した上で、適切な方法を選択することが重要です。

気管支鏡下での異物除去が第一選択となりますが、異物の種類や位置によっては、外科的な治療が必要となる場合もあります。

また、治療後は合併症の予防と早期発見のために、慎重な経過観察が必要です。

気管支鏡下異物除去術

適応特徴
気管支内の異物気管支鏡下で異物を直視下に確認し、鉗子などを用いて除去
気管内の異物気管支鏡下で異物を直視下に確認し、鉗子などを用いて除去

気管支鏡下異物除去術は、気道異物の治療において第一選択となる方法です。

全身麻酔下で気管支鏡を挿入し、異物を直視下に確認した上で、鉗子やバスケット鉗子、バルーンカテーテルなどを用いて異物を除去します。

気管支鏡下異物除去術は、気管支内や気管内の異物に対して有効であり、侵襲性が比較的低いというメリットがあります。

外科的治療

気管支鏡下異物除去術が困難な場合や、合併症を伴う場合には、外科的治療が必要となることがあり、以下のような方法があります。

方法適応
気管切開術気管内の異物で、気管支鏡下異物除去術が困難な場合
開胸術末梢気管支内の異物で、気管支鏡下異物除去術が困難な場合
肺切除術異物による合併症(肺化膿症など)を伴う場合

外科的治療は、気管支鏡下異物除去術が困難な場合や、合併症を伴う場合に適応となります。

気管切開術は、気管内の異物で気管支鏡下異物除去術が困難な場合に行われ、気管を切開して異物を直接除去します。

開胸術は、末梢気管支内の異物で気管支鏡下異物除去術が困難な場合に行われ、胸腔を開いて異物を直接除去します。

肺切除術は、異物による合併症(肺化膿症など)を伴う場合に行われ、異物とともに肺の一部を切除します。

術後管理と治癒までの期間

気道異物の治療後は、合併症の予防と早期発見のために、慎重な経過観察が必要です。術後管理では、以下のような点に注意が必要です。

  1. 呼吸状態のモニタリング
  2. 感染徴候の有無の確認
  3. 創部の管理
  4. 疼痛管理

治癒までの期間は、異物の種類や位置、治療方法などによって異なりますが、一般的には以下のような経過をたどります。

期間経過
術後1~2日呼吸状態が安定し、経口摂取が可能となる
術後3~7日創部の治癒が進み、退院が可能となる
術後1~2週間日常生活に復帰可能となる
術後1~2ヶ月異物による合併症の有無を確認するための画像検査を行う

治療の副作用やデメリット(リスク)

気道異物の治療は、異物除去による症状の改善を目的として行われますが、治療自体にも一定の副作用やリスクが伴います。

特に、全身麻酔下での気管支鏡検査や外科的治療では、麻酔に関連する合併症や、気道損傷、出血、感染などのリスクがあります。

また、異物除去が不完全な場合や、治療が遅れた場合には、重篤な合併症を引き起こす可能性があり注意が必要です。

全身麻酔の副作用とリスク

副作用・リスク内容
悪心・嘔吐麻酔薬の影響により、術後に悪心・嘔吐が生じることがある
呼吸抑制麻酔薬の影響により、呼吸が抑制される可能性がある
アレルギー反応まれに、麻酔薬に対するアレルギー反応が生じることがある

気道異物の治療では、全身麻酔下での気管支鏡検査や外科的治療が行われることが多く、麻酔に関連する副作用やリスクが伴います。

全身麻酔の副作用として、悪心・嘔吐、呼吸抑制、アレルギー反応などがあり、特に呼吸抑制は重篤な合併症につながる可能性があるため、注意が必要です。

また、全身麻酔では、心血管系への影響や、術後の回復遅延などのリスクもあります。

気管支鏡検査の副作用とリスク

気管支鏡検査は、気道異物の診断と治療において重要な役割を果たしますが、一定の副作用やリスクが伴います。

気管支鏡検査の副作用とリスクには、以下のようなものがあります。

副作用・リスク頻度
気道損傷0.1~0.5%
出血0.2~0.5%
感染0.1~0.5%
気胸0.1~0.2%

気管支鏡検査では、気管支鏡の挿入や操作により、気道粘膜の損傷や出血が生じる可能性があります。

また、気管支鏡検査に伴う感染のリスクもあり、特に免疫力の低下した患者では注意が必要です。

気胸は、気管支鏡検査に伴う合併症としてはまれですが、重篤な場合には緊急処置を要します。

外科的治療の副作用とリスク

外科的治療は、気管支鏡下異物除去術が困難な場合や、合併症を伴う場合に行われますが、侵襲性が高く、以下のような一定の副作用やリスクが伴います。

  • 出血
  • 感染
  • 気道狭窄
  • 肺瘻
  • 手術部位の疼痛

外科的治療では、手術操作に伴う出血や感染のリスクがあり、特に開胸術や肺切除術では、侵襲性が高いため、リスクも高くなります。

また、気道狭窄や肺瘻などの合併症が生じる可能性があり、術後の管理においても注意が必要です。

手術部位の疼痛は、術後の回復に影響を及ぼす可能性があるため、適切な疼痛管理が重要です。

再発の可能性と予防の仕方

気道異物は、適切な治療により除去することができますが、再発を予防するためには、原因となる異物の除去や環境調整、患者教育などが重要です。

特に、乳幼児や高齢者では、異物を誤飲するリスクが高いため、異物を口に入れないようにするための注意が必要です。

また、基礎疾患や嚥下機能の低下がある場合には、詳細な評価と対策が求められます。

異物の除去と環境調整

対象対策
乳幼児小さな玩具や食物を手の届かない場所に保管する
高齢者義歯の適合を定期的に確認し、必要に応じて調整する

気道異物の再発を予防するためには、原因となる異物を除去し、適切な環境調整を行うことが重要です。

乳幼児では、小さな玩具やビーズ、ボタン電池などを手の届かない場所に保管し、食事中は保護者が監督することが必要です。

高齢者では、義歯の適合不良が誤飲のリスクを高めるため、定期的な歯科検診と義歯の調整が重要です。また、高齢者の居住環境では、異物となりうる小さな物品を置かないようにすることも大切です。

患者教育と指導

気道異物の再発予防には、患者や家族に対する教育と指導が不可欠です。患者教育では、以下のような点について指導を行います。

指導内容対象
異物誤飲のリスクと予防法全ての患者と家族
異物誤飲が疑われる症状と対処法全ての患者と家族
定期的な歯科検診の重要性高齢者とその家族
基礎疾患や嚥下機能の管理基礎疾患や嚥下機能低下がある患者とその家族

患者教育では、異物誤飲のリスクとその予防法について、具体的な例を挙げながら説明することが重要です。

高齢者やその家族に対しては、定期的な歯科検診の重要性を説明し、義歯の管理について指導を行います。

基礎疾患や嚥下機能の低下がある患者とその家族に対しては、病態の管理と異物誤飲予防の両面から指導を行います。

再発時の対応

気道異物が再発した場合には、速やかな医療機関の受診が必要です。再発時の対応では、以下のような点に注意が必要です。

  • 異物の種類や位置の確認
  • 全身状態の評価
  • 適切な治療方針の選択
  • 再発予防策の見直し

治療費の内訳

気道異物の治療費は、以下のような項目で構成されています。

  • 初診料・再診料
  • 検査費(画像検査、気管支鏡検査など)
  • 処置費(気管支鏡下異物除去術、全身麻酔費など)
  • 入院費(重症例や合併症がある場合)
項目費用
初診料・再診料5,000円~10,000円
検査費50,000円~200,000円
処置費100,000円~500,000円
入院費100,000円~1,000,000円

検査費は、画像検査(胸部X線検査、CT検査など)や気管支鏡検査などが含まれ、異物の種類や位置によって異なります。

処置費は、主に気管支鏡下異物除去術の費用であり、全身麻酔費も含まれます。

入院費は、重症例や合併症がある場合に必要となり、入院期間や病室の種類によって異なります。

以上

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