喘息があると「予防接種で発作が出るのでは」と不安になる方は多いようです。喘息の方でもインフルエンザワクチンの接種は可能であり、むしろ積極的に受けることが勧められています。
近年は鼻にスプレーする「吸入型ワクチン(経鼻ワクチン)」も選択肢に加わりました。注射が苦手な方やお子さんにとって魅力的な方法ですが、喘息患者さんにはいくつかの注意点があります。
この記事では、喘息とインフルエンザワクチンに関する疑問を呼吸器内科の視点からわかりやすく解説します。吸入型ワクチンの安全性や接種の判断基準についても詳しくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
喘息があってもインフルエンザ予防接種は受けられる
喘息の方がインフルエンザワクチンを接種しても、喘息が悪化するリスクはきわめて低いことが複数の臨床研究で証明されています。安心して接種を検討してください。
喘息患者にとってインフルエンザワクチンは安全だと言い切れる理由
喘息があると「ワクチンの副反応で気管支が狭くなり、発作が起きるのでは」と心配される方がいます。
しかし、2,000人以上の喘息患者さんを対象にした大規模な二重盲検試験では、不活化インフルエンザワクチン接種後の喘息増悪率はプラセボ(偽薬)群と差がないと報告されました。
つまり、ワクチンを打ったから発作が増えるということはなく、打たなかった場合と同程度だったわけです。3歳から64歳までの幅広い年齢層で確認されたデータなので、子どもから大人まで当てはまります。
不活化ワクチンで喘息が悪化するリスクはほぼゼロ
不活化ワクチンとは、ウイルスの感染力をなくした成分を注射で体内に入れるタイプのワクチンです。生きたウイルスが含まれていないため、ワクチンそのものがインフルエンザを引き起こすことはありません。
喘息患者さんを対象にした別の研究でも、接種後14日間のピークフロー値(息を吐く力の指標)に有意な低下は見られませんでした。接種部位の軽い痛みや微熱といった一般的な副反応は出ることがありますが、喘息に特有のリスクはほぼないと考えてよいでしょう。
喘息の重症度別に見た不活化ワクチンの安全性
| 喘息の重症度 | 不活化ワクチン接種 | 備考 |
|---|---|---|
| 軽症・間欠型 | 問題なく接種できる | 毎年の定期接種を推奨 |
| 中等症・持続型 | 問題なく接種できる | 吸入ステロイド使用中でも可 |
| 重症・持続型 | 問題なく接種できる | 経口ステロイド使用中でも可 |
国内外のガイドラインが喘息患者への接種を推奨している
世界保健機関(WHO)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)、日本のガイドラインのいずれも、喘息患者さんへのインフルエンザ予防接種を推奨しています。
喘息はインフルエンザにかかると重症化しやすい「ハイリスク群」に分類されるため、むしろ接種の優先度が高い対象といえるでしょう。
それにもかかわらず、喘息患者さんのワクチン接種率は決して高くありません。「発作が怖い」という不安が接種をためらわせる大きな要因ですが、科学的な根拠に基づけば、接種しないリスクのほうがはるかに大きいのです。
接種率が低いままでは防げたはずの重症化を見逃す
海外のデータでは、喘息を持つ子どもの接種率が10%前後にとどまっていた時期もありました。接種率が低い背景には、保護者や医療者の間で「喘息に予防接種は危険」という誤解が根強く残っていたことがあります。
ワクチンで防げたかもしれないインフルエンザの重症化を見逃さないためにも、正確な情報に基づいて接種を判断することが大切です。かかりつけ医と相談しながら、毎年の接種計画を立てましょう。
不活化ワクチンと吸入型ワクチンは何が違うのか
不活化ワクチンは注射で投与する従来型であり、吸入型ワクチン(経鼻弱毒生ワクチン)は鼻の中にスプレーで噴霧する新しいタイプです。両者は製造方法も免疫のつき方もまったく異なります。
注射で打つ不活化ワクチンの仕組みと特徴
不活化ワクチンは、インフルエンザウイルスを化学処理して感染力をなくした成分を使っています。腕への筋肉注射で接種するため、体内の免疫細胞がウイルスの目印(抗原)を覚え、実際にウイルスが入ってきたときに素早く対処できるようになります。
国内で広く使われているのはこのタイプで、生後6か月以上であれば接種が可能です。生きたウイルスを含まないため、免疫力が低下している方や妊婦さんにも使えるという安心感があります。
鼻にスプレーする「吸入型(経鼻)ワクチン」の仕組み
吸入型ワクチンは「経鼻弱毒生ワクチン(LAIV)」とも呼ばれ、毒性を弱めた生きたウイルスを鼻腔に噴霧します。鼻の粘膜から免疫を誘導するため、体内での抗体だけでなく、ウイルスが侵入する「入口」である鼻や喉の局所免疫も高められるのが特徴です。
注射をしないので痛みがなく、特に注射を嫌がるお子さんには大きなメリットがあります。一方、弱毒とはいえ生きたウイルスを使うため、気道が敏感な喘息患者さんでは慎重な判断が求められることもあるでしょう。
喘息患者にとっての選択肢はどちらが安心か
結論としては、どちらのワクチンも喘息患者さんに使用できますが、不活化ワクチンのほうがより幅広い喘息患者さんに対して安全性のエビデンスが確立されています。
吸入型ワクチンは軽症から中等症の喘息であれば安全に接種できることが示されていますが、重症喘息や活動性の喘鳴がある方に対しては注意が必要とされています。
主治医と相談のうえ、自分の喘息の状態に合ったワクチンを選ぶことが賢明です。
不活化ワクチンと吸入型ワクチンの比較
| 項目 | 不活化ワクチン | 吸入型ワクチン |
|---|---|---|
| 投与方法 | 腕への注射 | 鼻腔へのスプレー |
| ウイルスの状態 | 不活化(死んだ状態) | 弱毒化(弱めた生ウイルス) |
| 対象年齢(国際基準) | 生後6か月以上 | 2歳~49歳 |
| 喘息患者への使用 | 重症度を問わず可 | 軽症~中等症は可 |
| 痛み | 注射時の痛みあり | 痛みなし |
吸入型インフルエンザワクチンで喘息発作が起きるリスクはあるのか
吸入型ワクチンが喘息発作を引き起こすリスクは、これまでの臨床研究を総合すると、きわめて低いと言えます。ただし、年齢や喘息の重症度によって判断が異なる点には注意が必要です。
臨床試験で確認された吸入型ワクチンの安全性データ
2歳~49歳の喘息患者さんを対象にした複数の研究を統合したシステマティックレビューでは、20年間・延べ120万人以上のデータから、吸入型ワクチンは良好な忍容性を示し、安全性に関する懸念は認められなかったと結論づけられています。
具体的には、吸入型ワクチン接種後14日以内の入院や救急外来受診の発生率を、接種後29~42日の期間と比較した研究で、喘息増悪のリスクに差はありませんでした。
不活化ワクチンと比較した研究でも、喘息の悪化率に有意差は出ていません。
中等症・重症の喘息でも吸入型ワクチンは使えるのか
イギリスの14施設で行われた前向き研究では、中等症から重症の喘息を持つ2歳~18歳の子ども478名に対し、吸入型ワクチンを接種しました。
高用量の吸入ステロイドを使用中の患者さん(全体の44%)も含まれていましたが、接種後4週間で喘息コントロールに有意な変化はみられませんでした。
もちろん個人差はありますので、重症喘息の方が吸入型ワクチンを希望する場合は、必ず呼吸器内科の医師と事前に相談してください。
吸入型ワクチンの年齢別リスク評価
| 年齢区分 | 吸入型ワクチンの安全性 | 推奨される対応 |
|---|---|---|
| 2~4歳(喘息あり) | 慎重な判断が必要 | 不活化ワクチンを優先 |
| 5~17歳(軽症~中等症) | 安全性が確認されている | どちらも選択可 |
| 18~49歳(軽症~中等症) | 安全性が確認されている | どちらも選択可 |
| 重症喘息(全年齢) | データが限られている | 主治医と相談 |
2~4歳の幼児への投与は慎重に判断する必要がある
アメリカの予防接種諮問委員会(ACIP)は、2~4歳で喘息と診断されている子どもや、過去12か月以内に喘鳴を起こした子どもへの吸入型ワクチン接種を「禁忌(きんき)」としています。これは、初期の臨床試験で6~23か月の乳幼児に喘鳴の増加が観察されたためです。
ただし、5歳以上の子どもではこうしたリスクは確認されていません。年齢と喘息の状態をあわせて、かかりつけ医が個別に判断するのが望ましいでしょう。
喘息の重症度で変わるインフルエンザワクチンの選び方
喘息の程度に応じて適切なワクチンの種類は変わります。自分の喘息がどのレベルに該当するかを把握したうえで、主治医と一緒に接種計画を立てるのが基本的な流れです。
軽症・間欠型の喘息なら注射でも経鼻でも選べる
症状が週1回未満で、日常生活にほとんど支障がない軽症・間欠型の喘息であれば、不活化ワクチンも吸入型ワクチンもどちらでも接種できます。
複数の大規模研究で、軽症喘息の方が吸入型ワクチンを接種しても、喘息の増悪リスクが高まらなかったことが確認されています。
注射が苦手なお子さんや、鼻にスプレーするだけで済ませたいという方には、吸入型ワクチンがよい選択肢となるかもしれません。ただし、吸入型ワクチンの取り扱いがない医療機関もありますので、事前に確認しておきましょう。
中等症・重症の喘息では主治医と相談して接種方法を決める
中等症以上の持続型喘息では、定期的に吸入ステロイドを使用している方が大半でしょう。こうした方でも不活化ワクチンはまったく問題なく接種できます。
吸入型ワクチンについても近年の研究で安全性が示されつつありますが、重症喘息の場合は臨床データがまだ限られているため、主治医の判断を仰ぐことが大切です。
喘息のコントロールが不十分な状態(直近1週間で発作止めの薬を毎日使っている、夜間に咳き込んで目が覚めるなど)では、まずコントロールを安定させてから接種するほうが望ましいケースもあります。
ステロイド吸入中でも予防接種のタイミングを逃さない
「ステロイドを使っているから予防接種はできない」と思い込んでいる患者さんは意外と多くいらっしゃいます。
しかし、吸入ステロイド(フルチカゾン、ブデソニドなど)や短期間の経口ステロイド(プレドニゾロンなど)を使っていても、インフルエンザワクチンの接種は問題ありません。
急性増悪の最中にプレドニゾロンの短期投与を受けている子どもを対象にした研究でも、ワクチンの免疫原性(免疫をつける力)と安全性は、安定期の子どもと変わらなかったと報告されています。
- 吸入ステロイド使用中 → 接種可能
- 短期間の経口ステロイド使用中 → 接種可能
- 長期間の高用量全身性ステロイド使用中 → 不活化ワクチンは可、吸入型は要相談
- 生物学的製剤(オマリズマブ等)使用中 → 接種可能だが接種日の調整が必要な場合あり
卵アレルギーや併用薬がある喘息患者が接種前に確認すべきこと
喘息患者さんのなかには卵アレルギーを合併している方も少なくありません。また、複数の薬を併用している場合は飲み合わせも気になるところです。いずれのケースでも、ほとんどの場合インフルエンザワクチンは安全に接種できます。
卵アレルギーがあってもインフルエンザワクチンは接種できる
従来のインフルエンザワクチンは製造工程で卵を使うため、「卵アレルギーがあると打てない」と誤解されがちです。しかし、近年のワクチンに含まれる卵タンパク質の量はごくわずかであり、卵アレルギーの方でも安全に接種できることが多くの研究で示されています。
アメリカのCDCやAAP(アメリカ小児科学会)は、卵アレルギーがある方にも通常どおりの接種を推奨しています。
ただし、過去にワクチン接種後にアナフィラキシーを起こしたことがある方は、必ず医師に伝えたうえで慎重に対応してもらいましょう。
吸入ステロイドや経口ステロイドを使用中の場合の注意点
前の章でも触れたとおり、吸入ステロイドを使用中の方はワクチン接種に制限はありません。短期の経口ステロイド(3~7日程度のプレドニゾロン短期投与)であっても、ワクチンの効果や安全性に影響しないことがわかっています。
一方、長期間にわたって高用量の全身性ステロイドを使っている方は免疫が抑えられている可能性があるため、生きたウイルスを含む吸入型ワクチンには注意が必要です。このような場合は不活化ワクチンを選ぶのが無難でしょう。
喘息治療薬とインフルエンザワクチンの相互関係
| 使用中の薬剤 | 不活化ワクチン | 吸入型ワクチン |
|---|---|---|
| 吸入ステロイド | 制限なし | 制限なし |
| 長時間作用型β2刺激薬 | 制限なし | 制限なし |
| ロイコトリエン受容体拮抗薬 | 制限なし | 制限なし |
| 短期経口ステロイド | 制限なし | 主治医に相談 |
| 長期高用量全身性ステロイド | 制限なし | 原則として避ける |
| 生物学的製剤 | 制限なし | 主治医に相談 |
抗IgE抗体薬(オマリズマブ)など生物学的製剤との兼ね合い
重症喘息の治療ではオマリズマブ(ゾレア)やメポリズマブ(ヌーカラ)、デュピルマブ(デュピクセント)といった生物学的製剤が使われることがあります。これらの薬を使用中でも不活化インフルエンザワクチンは問題なく接種できます。
ただし、生物学的製剤の投与日とワクチン接種日が近い場合、副反応の原因がどちらによるものか区別しにくくなることがあるため、投与スケジュールを数日ずらすよう医師から提案されるケースもあるでしょう。
日程の調整については、あらかじめ主治医と打ち合わせておくと安心です。
喘息患者がインフルエンザに感染すると重症化しやすい理由
喘息をお持ちの方がインフルエンザに感染すると、健康な方と比べて気道の炎症が急激に悪化し、入院や救急外来の受診につながるリスクが数倍に高まります。だからこそ、予防接種による感染予防が大切なのです。
ウイルス感染が気道の炎症を一気に悪化させる
喘息の方の気道はもともと慢性的な炎症を抱えています。そこにインフルエンザウイルスが侵入すると、炎症反応がさらに増幅し、気道の粘膜が腫れ上がり、痰の分泌が増え、気管支が強く収縮します。
これは単なる風邪とは異なり、激しい咳、呼吸困難、胸の圧迫感といった深刻な症状を引き起こしかねません。とりわけ高齢の喘息患者さんでは肺炎を併発するリスクも高く、命に関わることすらあります。
喘息の増悪で入院リスクが数倍に跳ね上がる
インフルエンザの流行期には、喘息患者さんの入院率が非喘息者の2~4倍に達するという報告があります。小児喘息においてはさらに顕著で、インフルエンザに伴う喘息増悪は救急外来受診の大きな原因となっています。
インフルエンザをきっかけに重い発作を起こし、気管内挿管や人工呼吸器の管理が必要になるケースもゼロではありません。予防接種は、こうした最悪の事態を避けるための有効な手段です。
予防接種で喘息による救急外来受診を5~7割減らせたという報告もある
喘息患者さんにおけるインフルエンザワクチンの有効性をまとめたメタ分析では、ワクチン接種によって喘息関連の救急外来受診や入院を59~78%減少させた可能性が示唆されています。
もちろんワクチンの効果はシーズンごとのウイルス株との一致度に左右されますが、たとえ完全に一致しなくても、重症化を防ぐ効果は期待できます。
毎年のインフルエンザシーズン前に接種を済ませておくことが、喘息のコントロールを維持するうえで欠かせない習慣といえるでしょう。
- インフルエンザ感染は喘息増悪の主要な引き金のひとつ
- 喘息患者の入院リスクは非喘息者の2~4倍
- ワクチン接種で救急外来受診を最大7割以上減らせる可能性がある
- 毎年の接種が長期的な喘息コントロールの安定につながる
接種前後に実践したいセルフケアと副反応への備え
ワクチン接種の効果を高め、副反応のリスクを抑えるためには、接種前後のセルフケアが欠かせません。日頃の喘息管理をしっかり行いつつ、体調が安定しているタイミングで接種を受けましょう。
接種前に体調と喘息コントロール状態をチェックする
予防接種を受ける前に、まず自分の喘息が安定しているかどうかを確認することが大切です。日常的にピークフローメーターを使っている方は、直近1週間の数値を確認してみてください。
接種前セルフチェック項目
| チェック項目 | 目安 |
|---|---|
| 直近1週間の発作回数 | 週2回未満が望ましい |
| 夜間の咳込み・覚醒 | 月2回未満が望ましい |
| 発作止め(短時間作用型β2刺激薬)の使用頻度 | 週2回未満が望ましい |
| ピークフロー値 | 自己最良値の80%以上 |
| 発熱の有無 | 37.5℃未満 |
接種後に注意すべき症状と医療機関を受診する目安
接種後は、注射部位の痛みや赤み、倦怠感、微熱といった軽い副反応が出るときがあります。これらは通常1~2日で自然に治まりますので、過度に心配する必要はありません。
一方、接種後に以下のような症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診してください。
呼吸が苦しくなる、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)が強くなる、じんましんが全身に広がる、意識がぼんやりする、といった症状はアレルギー反応の可能性があるため、すぐに対応が必要です。
接種後30分程度は医療機関の近くで過ごし、体調の変化がないか確認してから帰宅するようにしましょう。
毎年の接種習慣がインフルエンザシーズンを乗り越える鍵になる
インフルエンザウイルスは毎年少しずつ形を変えるため、ワクチンもそれにあわせて毎年更新されます。去年接種したから今年は大丈夫、とはならないのがインフルエンザワクチンの特徴です。
喘息の方にとって、毎年10月~11月ごろにワクチンを接種する習慣をつけることは、シーズンを通じた喘息コントロールの安定にもつながります。
かかりつけの呼吸器内科で定期受診のついでに接種の予約を入れるなど、無理なく続けられる仕組みをつくることをおすすめします。
よくある質問
- Q喘息患者がインフルエンザの不活化ワクチンを接種すると発作は起きやすくなりますか?
- A
不活化インフルエンザワクチンの接種で喘息発作が増えるリスクはきわめて低いです。2,000人以上の喘息患者を対象にした大規模試験でも、ワクチン接種後の喘息増悪率はプラセボ群と差がありませんでした。
軽症から重症まで、幅広い重症度の喘息患者さんに安全に接種できることが報告されています。接種後に軽い腕の痛みや微熱が出る場合はありますが、喘息特有の悪影響はほとんどないと考えてよいでしょう。
- Q経鼻の吸入型インフルエンザワクチンは重症喘息の方でも接種できますか?
- A
重症喘息の方への吸入型ワクチン(経鼻弱毒生ワクチン)の安全性データはまだ限られています。イギリスの研究では中等症~重症の喘息児にも良好な忍容性が確認されましたが、すべてのケースに当てはまるわけではありません。
重症喘息で吸入型ワクチンを希望される場合は、必ず呼吸器内科の主治医に相談し、個別に判断を受けてください。不活化ワクチンであれば重症喘息の方にも安全に使用できます。
- Q吸入ステロイドを毎日使っていてもインフルエンザワクチンの接種に支障はありませんか?
- A
吸入ステロイド(フルチカゾン、ブデソニドなど)を毎日使用中の方でも、インフルエンザワクチンは問題なく接種できます。吸入ステロイドは局所的に作用するため、全身の免疫を大きく抑えることはなく、ワクチンの効果にも影響しません。
短期間の経口ステロイド(プレドニゾロンなど)を使用中の場合でも接種は可能です。むしろステロイドを使って喘息をコントロールしているからこそ、安定した状態でワクチンを受けるのが理想的な流れと言えます。
- Q2~4歳の喘息児に吸入型インフルエンザワクチンを接種しても安全ですか?
- A
2~4歳の喘息児に対する吸入型ワクチン(経鼻弱毒生ワクチン)の接種については、アメリカの予防接種諮問委員会(ACIP)が禁忌としています。初期の臨床試験で6~23か月の乳幼児に喘鳴の増加が確認されたことが、その背景にあります。
2~4歳で喘息と診断されている、または過去1年以内に喘鳴を起こしたお子さんには、不活化ワクチン(注射タイプ)の接種が推奨されます。5歳以上であれば吸入型ワクチンも選択肢に入りますので、年齢に応じて主治医と相談しましょう。
- Q喘息患者がインフルエンザワクチンを接種しなかった場合にどのようなリスクがありますか?
- A
喘息患者さんがインフルエンザに感染すると、気道の炎症が急激に悪化し、重い喘息発作を引き起こすリスクが高まります。健康な方と比べて入院率は2~4倍に達するという報告もあり、場合によっては人工呼吸器が必要になるケースもあります。
メタ分析の結果では、ワクチン接種によって喘息関連の救急外来受診や入院を59~78%減少させた可能性が示されています。毎年のワクチン接種を習慣化すると、インフルエンザシーズンを安心して過ごせるようになるでしょう。


