一度出始めると連続して何度も出てしまい、なかなか止まらないくしゃみにお悩みではありませんか。

くしゃみは、鼻の粘膜が刺激を受けたときに起こる体の自然な防御反応ですが、あまりにも頻繁に、あるいは連続して出続ける場合は、何らかの原因が隠れている可能性があります。

この記事では、止まらないくしゃみの主な原因、考えられる病気、ご自身でできる対処法、そして医療機関を受診する目安について解説します。

くしゃみが止まらない主な原因

くしゃみが連続して止まらなくなる背景には、様々な要因が考えられます。体の防御反応とはいえ、日常生活に支障が出るほどのくしゃみはつらいものです。ここでは、主な原因をいくつか解説します。

アレルギー性鼻炎

特定の物質(アレルゲン)に対する体の過剰な免疫反応が原因で起こります。

アレルゲンが鼻の粘膜に付着すると、ヒスタミンなどの化学物質が放出され、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状を引き起こします。

アレルギー性鼻炎は、一年中症状が出る「通年性」と、特定の季節に症状が出る「季節性」に分けられます。

主なアレルゲンの種類

分類代表的なアレルゲン主な飛散・存在時期
季節性(花粉症)スギ、ヒノキ、イネ科植物、ブタクサなど春、秋など(植物による)
通年性ハウスダスト(ダニ、カビ)、ペットの毛など一年中

非アレルギー性鼻炎(血管運動性鼻炎など)

アレルギー検査をしても原因となるアレルゲンが特定できないにも関わらず、くしゃみや鼻水などの症状が現れる状態です。

気温や湿度の急激な変化、タバコの煙、香水、精神的なストレスなどが刺激となって症状が誘発されることがあります。特に、温かい食べ物や飲み物を摂取したときに鼻水が出る「味覚性鼻炎」もこの一種です。

風邪や感染症

ウイルスや細菌などの病原体が鼻や喉に感染することでも、くしゃみが出ます。これは、体内に侵入した異物を排出しようとする防御反応です。通常、発熱や喉の痛み、咳、倦怠感などの他の症状を伴います。

風邪によるくしゃみは、通常1週間程度で改善に向かいます。

その他の刺激

上記以外にも、くしゃみを誘発する刺激は様々です。例えば、ホコリや排気ガス、化学物質の吸入、強い光(光くしゃみ反射)、鼻への物理的な刺激などが挙げられます。

これらは一時的な反応であることが多いですが、環境によっては頻繁に起こることもあります。

くしゃみと関連する症状

止まらないくしゃみは、単独で起こることは少なく、他の鼻や目の症状を伴うことが一般的です。これらの随伴症状は、原因を特定する上で重要な手がかりとなります。

鼻水・鼻づまり

くしゃみと並んで、鼻炎の代表的な症状です。アレルギー性鼻炎では、水のようにサラサラした鼻水(水様性鼻漏)が多く見られます。

一方、風邪や副鼻腔炎などでは、粘り気のある黄色や緑色の鼻水(膿性鼻漏)が出ることがあります。鼻づまりは、鼻の粘膜が腫れることで空気の通り道が狭くなるために起こります。

目のかゆみ・充血

特にアレルギー性鼻炎(花粉症など)でよく見られる症状です。アレルゲンが目の結膜に付着し、炎症を起こすことで生じます。目のかゆみ、充血、涙目などが特徴です。

風邪でも目の充血が見られることはありますが、強いかゆみを伴う場合はアレルギーの可能性が高いと考えられます。

症状による原因の推定

症状アレルギー性鼻炎の可能性風邪・感染症の可能性
サラサラの鼻水高い初期に見られることも
粘り気のある鼻水低い高い
目のかゆみ高い低い
発熱・喉の痛みまれよく見られる

咳・喉の違和感

鼻水が喉の方へ流れ落ちる「後鼻漏(こうびろう)」が原因で、咳が出たり、喉に違和感を覚えたりすることがあります。特に、仰向けに寝ているときに咳が出やすい場合は、後鼻漏の可能性があります。

また、喘息を合併している場合にも咳が出ます。

考えられる病気

止まらないくしゃみが続く場合、背景に何らかの病気が隠れている可能性があります。ここでは、くしゃみを主症状とする代表的な病気について解説します。

アレルギー性鼻炎の詳細

前述の通り、アレルゲンに対する免疫反応が原因です。原因アレルゲンによって症状の出る時期や状況が異なります。適切な治療のためには、原因アレルゲンを特定することが重要です。

放置すると、鼻づまりによる口呼吸、睡眠不足、集中力の低下などを引き起こすこともあります。

副鼻腔炎(蓄膿症)

鼻の周りにある空洞(副鼻腔)に炎症が起こる病気です。風邪などの感染症やアレルギー性鼻炎が長引くことが原因で発症することがあります。

くしゃみに加えて、粘り気のある鼻水、鼻づまり、頭痛、顔面痛、嗅覚障害などの症状が現れます。慢性化すると治療が長引くこともあるため、早期の対応が大切です。

副鼻腔炎の主な症状

症状特徴
鼻水粘り気のある黄色や緑色の鼻水(膿性鼻漏)
鼻づまり両側または片側の鼻が詰まる
後鼻漏鼻水が喉に流れ落ちる感覚、咳の原因になることも
痛み頬、目の奥、額などの顔面痛、頭痛
嗅覚障害においを感じにくくなる

喘息との関連

アレルギー性鼻炎と気管支喘息は、気道のアレルギー疾患として密接に関連しています。アレルギー性鼻炎を持つ人は、喘息を発症するリスクが高いことが知られています。

鼻炎の症状に加えて、咳、息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)などの症状がある場合は、喘息の可能性も考慮する必要があります。

自宅でできる対処法

医療機関を受診する前に、あるいは治療と並行して、ご自身でできる対処法もあります。症状の緩和や悪化の予防につながる可能性があります。

アレルゲンの除去・回避

アレルギー性鼻炎の場合、原因となるアレルゲンを特定し、可能な限り避けることが最も重要です。

アレルゲン対策の例

  • こまめな掃除(特に寝室)
  • 空気清浄機の使用
  • 布団やカーペットのダニ対策
  • ペットとの接触を控える(アレルギーがある場合)
  • 花粉飛散時期のマスク・メガネ着用、外出後の衣服の払い落とし

生活習慣の見直し

体の免疫バランスを整え、鼻粘膜を健康に保つことも大切です。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけましょう。

また、ストレスは自律神経のバランスを乱し、鼻炎の症状を悪化させることがあります。リラックスできる時間を作るなど、ストレス管理も意識しましょう。

喫煙は鼻粘膜への刺激となるため、禁煙が望ましいです。

生活習慣で意識したいこと

項目ポイント
睡眠質の高い睡眠を十分にとる
食事栄養バランスの取れた食事を心がける
運動適度な運動で体力維持とストレス解消
ストレス管理自分に合ったリラックス法を見つける
禁煙鼻粘膜への刺激を避ける

市販薬の利用について

一時的な症状緩和のために、市販の抗ヒスタミン薬や点鼻薬を利用することも選択肢の一つです。ただし、市販薬は対症療法であり、根本的な原因を解決するものではありません。

また、点鼻薬の中には、長期間使用するとかえって鼻づまりを悪化させる(薬剤性鼻炎)ものもあるため、注意が必要です。

症状が続く場合や、どの薬を使えばよいか分からない場合は、自己判断せずに薬剤師や医療機関に相談することが重要です。

医療機関での検査

くしゃみの原因を正確に特定し、適切な治療方針を立てるためには、医療機関での検査が必要です。どのような検査が行われるのか、事前に知っておくと安心して受診できるでしょう。

問診の重要性

医師はまず、患者さんの症状について詳しく尋ねます。

いつから症状があるか、どのような時にくしゃみが出るか、くしゃみ以外の症状はあるか、アレルギー歴や家族歴などを伝えることが診断の手がかりとなります。

できるだけ具体的に、正確に情報を伝えることが大切です。

問診で聞かれる可能性のある内容

項目質問例
症状の開始時期いつ頃からくしゃみが止まらないと感じますか?
症状の状況どんな時にくしゃみが出やすいですか?(朝、特定の場所など)
随伴症状鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、咳などはありますか?
生活環境ペットは飼っていますか?職場や自宅の環境はどうですか?
既往歴・家族歴これまでにアレルギーと言われたことはありますか?ご家族にアレルギー体質の方はいらっしゃいますか?

アレルギー検査

アレルギー性鼻炎が疑われる場合に行われます。主に血液検査と皮膚テストがあります。血液検査では、特定のアレルゲンに対する抗体(IgE抗体)の量を測定します。

皮膚テストには、アレルゲンエキスを皮膚に少量たらして反応を見るプリックテストや、アレルゲンエキスを皮内に注射する皮内テストがあります。どの検査を行うかは、症状や状況に応じて医師が判断します。

鼻鏡検査・内視鏡検査

鼻鏡(びきょう)という器具や、細いカメラ(内視鏡)を使って、鼻の中の状態を直接観察します。鼻の粘膜の色や腫れ具合、鼻水の性状、鼻茸(ポリープ)の有無などを確認します。

副鼻腔炎が疑われる場合には、副鼻腔からの膿の流出が見られることもあります。これにより、鼻の中の構造的な問題や炎症の程度を評価します。

医療機関での治療法

検査結果に基づいて原因が特定されれば、それに応じた治療が行われます。治療の目標は、症状をコントロールし、日常生活への影響を最小限に抑えることです。

抗ヒスタミン薬

アレルギー性鼻炎の治療の基本となる薬です。アレルギー反応に関与するヒスタミンの働きを抑えることで、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの症状を軽減します。

眠気の副作用が出にくい第二世代抗ヒスタミン薬が主流となっていますが、効果や副作用には個人差があります。

点鼻ステロイド薬

鼻の粘膜の炎症を直接抑える効果が高い薬です。アレルギー性鼻炎や非アレルギー性鼻炎による鼻づまりに対して特に有効です。

全身への影響は少ないとされていますが、医師の指示に従って正しく使用することが大切です。効果が現れるまでに数日かかることもあります。

主な治療薬の種類と特徴

薬剤の種類主な効果剤形
抗ヒスタミン薬くしゃみ、鼻水、かゆみを抑える内服薬
点鼻ステロイド薬鼻粘膜の炎症を抑える(特に鼻づまりに有効)点鼻薬
ロイコトリエン受容体拮抗薬鼻づまりを改善する(喘息合併例にも有効)内服薬

アレルゲン免疫療法

アレルギーの原因となるアレルゲンを少量ずつ投与し、体を慣らしていくことで、アレルギー反応を起こしにくくする治療法です。根本的な体質改善が期待できる唯一の治療法とされています。

スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎に対して行われ、舌の下に薬を投与する「舌下免疫療法」と、皮下に注射する「皮下免疫療法」があります。治療期間は通常3~5年と長期間にわたります。

手術療法について

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、鼻の構造に問題がある場合(鼻中隔弯曲症など)、鼻茸がある場合などには、手術が検討されることもあります。

レーザー手術で鼻粘膜を焼灼する方法や、内視鏡を用いて副鼻腔の換気を改善する手術などがあります。手術の適応については、専門医との相談が必要です。

医療機関への受診をお勧めするケース

くしゃみはありふれた症状ですが、場合によっては医療機関での診察が必要です。以下のような場合は、自己判断せずに受診を検討しましょう。

症状が長引く場合

風邪によるくしゃみであれば通常1週間程度で改善しますが、それ以上続く場合や、特定の季節に毎年繰り返す場合は、アレルギー性鼻炎やその他の病気の可能性があります。

2週間以上症状が続くようであれば、一度相談することをお勧めします。

日常生活に支障がある場合

くしゃみが頻繁に出ることで、仕事や学業に集中できない、夜眠れないなど、日常生活に大きな影響が出ている場合は、治療によって症状を軽減できる可能性があります。

我慢せずに医療機関を受診しましょう。

受診を検討する目安

  • くしゃみが2週間以上続いている
  • 鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの他の症状もつらい
  • 市販薬を使用しても症状が改善しない
  • くしゃみで睡眠が妨げられる
  • 集中力の低下など、日常生活に支障が出ている
  • 発熱や顔面痛、粘り気のある鼻水など、他の気になる症状がある

その他の気になる症状がある場合

くしゃみに加えて、発熱、顔面痛、粘り気のある色のついた鼻水、咳や息苦しさ、嗅覚の低下などの症状がある場合は、副鼻腔炎や喘息など、他の病気が隠れている可能性があります。

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。

症状と関連する可能性のある病気

気になる症状考えられる主な病気
粘り気のある鼻水、顔面痛、頭痛、嗅覚低下副鼻腔炎
咳、息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)気管支喘息
高熱、喉の強い痛み、全身倦怠感インフルエンザなどの感染症

止まらないくしゃみは、原因を特定し、適切な対応をとることで改善が期待できる症状です。

症状が気になる場合は、この記事を参考に、お近くの医療機関(内科、耳鼻咽喉科、アレルギー科など)にご相談ください。

よくある質問

止まらないくしゃみに関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
くしゃみは我慢しない方が良いのですか?
A

くしゃみは体内の異物を排出しようとする生理的な防御反応ですので、無理に我慢する必要はありません。

ただし、公共の場などでは、ティッシュやハンカチ、袖などで口と鼻を覆う「咳エチケット」を心がけることが大切です。頻繁なくしゃみが続く場合は、その原因を探ることが重要です。

Q
子供のくしゃみが止まらない場合はどうすれば良いですか?
A

子供の場合も、大人と同様にアレルギー性鼻炎や風邪などが原因として考えられます。特に、鼻づまりが続くと口呼吸になり、睡眠や集中力に影響が出ることがあります。

また、中耳炎を併発しやすい傾向もあります。症状が長引く場合や、他の症状(鼻づまり、鼻水、耳を気にする様子など)が見られる場合は、小児科や耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

Q
特定の場所や状況だけでくしゃみが出るのはなぜですか?
A

特定の環境下で症状が出る場合、その環境に存在するアレルゲン(ハウスダスト、カビ、ペットの毛など)や刺激物質(ホコリ、化学物質など)が原因である可能性が高いです。

例えば、職場だけで症状が出る、特定の部屋に入るとくしゃみが止まらない、といったケースです。原因を特定し、可能であればその環境を改善したり、原因物質を避けたりすることが対策となります。

以上

参考にした論文