喉がからからに乾燥し、まるで焼けるようなヒリヒリとした痛みが続くのは非常につらいものです。このような症状は、単なる風邪の初期症状として片付けられない場合もあります。

この記事では、喉の極度な乾燥感や焼けるような痛みの原因、ご自身でできる対処法、そして医療機関を受診するタイミングについて、詳しく解説します。

喉がからから・ヒリヒリ痛む主な原因

喉の乾燥感や痛みは、さまざまな要因によって引き起こされます。特に「からから」「ヒリヒリ」といった感覚は、喉の粘膜が刺激を受けたり、潤いが不足したりしているサインです。

ここでは、代表的な原因をいくつか紹介します。

空気の乾燥

空気が乾燥していると、喉の粘膜も乾燥しやすくなります。特に冬場やエアコンの効いた室内では湿度が低くなりがちです。

湿度が40%以下になると、喉の粘膜のバリア機能が低下し、ウイルスや細菌の影響を受けやすくなるため、痛みや炎症が生じることがあります。長時間の乾燥した環境は、喉にとって大きな負担となります。

口呼吸

鼻呼吸の場合、鼻毛や鼻の粘膜がフィルターの役割を果たし、吸い込んだ空気に適度な湿度と温度を与えてから喉や肺に送ります。

しかし、鼻詰まりや習慣によって口呼吸になると、乾燥した冷たい空気が直接喉の粘膜に当たり、乾燥や炎症を引き起こしやすくなります。

特に睡眠中の口呼吸は、朝起きた時の喉の強い乾燥感や痛みの原因となることが多いです。

口呼吸になりやすい状況

状況理由対策のヒント
鼻炎・副鼻腔炎鼻が詰まり鼻呼吸がしにくい原因疾患の治療
睡眠中無意識に口が開いてしまう就寝時のマスク、口閉じテープ
集中時無意識に口が開いていることがある意識して鼻呼吸する

アレルギー反応

花粉やハウスダスト、特定の食物などがアレルゲンとなり、喉にアレルギー反応を引き起こすことがあります。

アレルギー反応によって喉の粘膜が炎症を起こすと、乾燥感、イガイガ感、かゆみ、そしてヒリヒリとした痛みを伴うことがあります。

アレルギー性鼻炎を合併している場合は、鼻水が喉に流れる後鼻漏(こうびろう)が刺激となり、症状を悪化させることもあります。

感染症(風邪、インフルエンザなど)

ウイルスや細菌による感染症は、喉の痛みの一般的な原因です。風邪(普通感冒)やインフルエンザ、咽頭炎、扁桃炎などが代表的です。

これらの感染症にかかると、喉の粘膜が炎症を起こし、赤く腫れたり、乾燥したりして、強い痛みや焼けるような感覚が生じることがあります。発熱や咳、鼻水などの他の症状を伴うことが多いです。

逆流性食道炎

胃酸が食道に逆流する逆流性食道炎も、喉の痛みや違和感の原因となることがあります。

強い酸性の胃液が喉の近くまで上がってくると、喉の粘膜を刺激し、焼けるような痛み(胸焼けに伴う喉のヒリヒリ感)、声のかすれ、咳などの症状を引き起こします。

特に食後や就寝中に症状が出やすい傾向があります。

逆流性食道炎による喉の症状の特徴

症状特徴現れやすいタイミング
喉のヒリヒリ感・痛み焼けるような感覚、酸っぱいものが上がってくる感じ食後、横になった時、夜間
声のかすれ声帯への胃酸の刺激朝方に多い
慢性的な咳喉への刺激による反射特に原因が見当たらない咳

乾燥や焼けるような痛みを伴う喉の症状 詳細解説

喉の「からから」「ヒリヒリ」とした痛みは、不快なだけでなく、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。ここでは、これらの症状についてもう少し詳しく見ていきましょう。

単なる乾燥との違い

一時的な空気の乾燥による喉の乾きは、水分補給や加湿で比較的速やかに改善することが多いです。

しかし、「焼けるような痛み」や「極度の乾燥感」が持続する場合は、単なる乾燥以上の問題、例えば粘膜の炎症や損傷が起きている可能性があります。

痛みの強さや持続期間、他の症状の有無などを注意深く観察することが大切です。

痛みの性質と持続期間

「ヒリヒリする」「チクチクする」「ジンジンする」「焼けるようだ」など、痛みの表現は様々です。痛みの性質や強さ、そしてどれくらい続いているかは、原因を探る上で重要な手がかりとなります。

数日で改善する軽微な痛みであれば様子を見ることも可能ですが、痛みが強い場合や1週間以上続く場合は、医療機関への相談を検討しましょう。

他に現れやすい症状

喉の乾燥感や痛みに加えて、他の症状が現れることもあります。これらの随伴症状は、原因疾患を特定する上で役立ちます。

咳や痰

喉の炎症や乾燥は、咳反射を刺激し、咳が出やすくなります。また、炎症によって粘液の分泌が変化し、痰が絡むこともあります。痰の色や粘り気も、原因を探るヒントになることがあります。

声のかすれ

喉の炎症が声帯に及ぶと、声がかすれたり、出しにくくなったりすることがあります(嗄声:させい)。

無理に声を出すと症状が悪化することがあるため、声のかすれがある場合は、なるべく喉を休ませることが重要です。

発熱

ウイルスや細菌による感染症が原因の場合、発熱を伴うことがよくあります。高熱が出る場合や、熱がなかなか下がらない場合は、注意が必要です。

その他の症状の例

症状考えられる背景注意点
鼻水・鼻詰まり風邪、アレルギー性鼻炎口呼吸の原因にも
頭痛・倦怠感感染症、インフルエンザ十分な休養が必要
飲み込む時の痛み(嚥下痛)扁桃炎、咽頭炎食事が摂りにくくなることも

喉のからから・ヒリヒリ痛みを和らげるセルフケア

医療機関を受診する前に、ご自身でできる対処法もいくつかあります。症状の緩和や悪化の防止に役立つセルフケアを紹介します。

部屋の加湿

喉の乾燥を防ぐためには、室内の湿度を適切に保つことが重要です。特に空気が乾燥しやすい季節や、エアコンを使用している場合は、加湿器を利用しましょう。理想的な湿度は50~60%程度とされています。

加湿器がない場合は、濡れタオルを部屋に干したり、お湯を沸かしたりすることでも湿度を上げることができます。

加湿器利用時のポイント

  • 清潔な水を使用する
  • 定期的に清掃する
  • 湿度計で湿度を確認する

こまめな水分補給

体内の水分が不足すると、喉の粘膜も乾燥しやすくなります。こまめに水分を摂り、喉を潤すことを心がけましょう。一度に大量に飲むよりも、少量ずつ頻繁に飲む方が効果的です。

水や白湯、麦茶など、カフェインを含まない刺激の少ない飲み物がおすすめです。

喉に優しい食べ物・飲み物

喉が痛むときは、刺激の強い食べ物や飲み物は避け、喉に優しいものを選びましょう。熱すぎるものや冷たすぎるものも、喉への負担となることがあります。

喉のケアに役立つ食品の例

種類特徴摂り方の工夫
はちみつ保湿作用、抗菌作用が期待されるお湯に溶かす、そのまま舐める(1歳未満の乳児には与えない)
大根消炎作用が期待される成分を含む大根あめ、すりおろして汁を飲む
生姜体を温める作用、殺菌作用が期待される生姜湯、料理に加える
温かいスープ喉を潤し、体を温める野菜や鶏肉など栄養豊富な具材で

ただし、これらはあくまで食品であり、医薬品のような即効性や確実な治療効果を保証するものではありません。症状が強い場合や長引く場合は、医療機関を受診してください。

うがいの習慣化

うがいは、喉についたウイルスや細菌、ホコリなどを洗い流し、喉を清潔に保つのに役立ちます。また、喉の粘膜を潤す効果も期待できます。外出から帰宅した時や、喉の乾燥を感じた時に行うと良いでしょう。

うがい薬を使用する場合は、用法・用量を守って使用してください。水やお茶でのうがいでも一定の効果はあります。

マスクの着用

マスクを着用することで、自分の呼気に含まれる水分で喉の湿度を保つことができます。また、外部からの乾燥した空気やホコリ、アレルゲンなどを吸い込むのを防ぐ効果も期待できます。

特に就寝時に口呼吸になりやすい方は、保湿効果のあるマスクを使用するのも一つの方法です。

こんな症状は要注意 医療機関を受診するタイミング

多くの喉の痛みは数日で改善しますが、中には医療機関での対応が必要な場合もあります。以下のような症状が見られる場合は、早めに内科などの医療機関を受診することを検討してください。

痛みが強い、または長引く場合

唾を飲み込むのもつらいほどの強い痛みがある場合や、セルフケアを行っても痛みが改善せず1週間以上続く場合は、専門医の診察を受けることが望ましいです。

特に痛みが徐々に悪化している場合は注意が必要です。

呼吸が苦しい、飲み込みにくい場合

喉の腫れがひどく、息苦しさを感じたり、水分や食事が全く摂れないほどの嚥下困難がある場合は、緊急性が高い可能性があります。このような場合は、速やかに医療機関を受診してください。

特に注意が必要な呼吸の状態

状態考えられること対応
安静にしていても息苦しい気道狭窄の可能性速やかに医療機関へ
ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音喘息発作、喉頭浮腫など速やかに医療機関へ
声がこもる、出にくい喉頭蓋炎などの可能性速やかに医療機関へ

高熱が続く場合

38度以上の高熱が3日以上続く場合や、一度下がった熱が再び上がってくるような場合は、単なる風邪ではない可能性も考えられます。

細菌感染による扁桃炎や、インフルエンザなどの可能性も考慮し、医療機関で適切な診断と治療を受けることが重要です。

その他の警戒すべきサイン

以下のような症状も、医療機関受診の目安となります。

  • 首のリンパ節が腫れて痛む
  • 皮膚に発疹が出ている
  • ひどい倦怠感が続く
  • 血痰が出る

これらの症状がある場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。

医療機関(内科)での一般的な対応

医療機関を受診すると、医師は症状や経過を詳しく聞き、喉の状態を診察します。必要に応じて検査を行い、原因に応じた治療を行います。

問診と診察

医師はまず、いつからどのような症状があるか、痛みの程度や性質、他に症状がないかなどを詳しく尋ねます(問診)。

その後、視診や触診で喉の状態(赤み、腫れ、膿の有無など)や首のリンパ節の腫れなどを確認します。喫煙歴やアレルギー歴、普段飲んでいる薬などについても質問されることがあります。

必要に応じて行われる検査

問診や診察の結果、原因を特定するために追加の検査を行うことがあります。

迅速検査(インフルエンザ、溶連菌など)

インフルエンザウイルスやA群溶血性レンサ球菌(溶連菌)などが疑われる場合、喉の奥を綿棒でこすって採取した検体を用いて迅速検査を行います。

これにより、短時間で感染の有無を確認できます。

血液検査

炎症の程度(白血球数やCRP値など)を調べたり、特定のウイルスに対する抗体の有無を確認したりするために血液検査を行うことがあります。

アレルギーが疑われる場合は、アレルゲンを特定するための検査(IgE抗体検査など)も考慮されます。

喉頭鏡検査・内視鏡検査

喉の奥や声帯の状態を詳しく観察するために、喉頭鏡や細いカメラ(内視鏡)を用いた検査を行うことがあります。これにより、ポリープや腫瘍などの病変の有無を確認できます。

その他の検査例

検査名目的どのような場合に行うか
胸部X線検査肺炎などの合併を確認咳がひどい、呼吸器症状が強い場合
頸部CT検査喉の深部の炎症や腫瘍の確認症状が重篤、または診断が難しい場合
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)逆流性食道炎の確認胸焼けや呑酸症状が強い場合

主な治療法

治療は原因によって異なります。症状を和らげる対症療法と、原因そのものに対する原因療法があります。

症状を和らげる薬物療法

痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬(内服薬やトローチ、うがい薬など)を使用します。咳や痰が出る場合は、鎮咳薬や去痰薬を処方することがあります。

アレルギーが関与している場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が用いられます。

原因疾患に対する治療

細菌感染が原因であれば抗菌薬(抗生物質)を使用します。ただし、ウイルス感染である風邪やインフルエンザには抗菌薬は効果がありません。

インフルエンザの場合は抗インフルエンザ薬、逆流性食道炎の場合は胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など)が処方されます。

抗菌薬(抗生物質)の適切な使用について
抗菌薬は細菌感染症にのみ有効であり、ウイルス感染症(風邪の大部分など)には効果がありません。

医師の指示なく自己判断で使用したり、途中で中止したりすると、薬剤耐性菌を生み出す原因となることがあります。必ず医師の指示に従って正しく使用することが大切です。

日常生活で心がけたい喉のケアと予防策

喉のトラブルは、日頃のちょっとした心がけで予防したり、悪化を防いだりすることができます。健康な喉を保つために、日常生活でできることを紹介します。

適切な湿度管理

前述の通り、喉の乾燥は様々なトラブルの原因となります。加湿器の使用や、濡れタオルを干すなどして、室内の湿度を50~60%に保つようにしましょう。

特に睡眠中は口が開きやすいため、寝室の加湿は重要です。

バランスの取れた食事と十分な睡眠

体の免疫力が低下すると、感染症にかかりやすくなり、喉の炎症も起こしやすくなります。

栄養バランスの取れた食事を心がけ、十分な睡眠時間を確保することで、免疫力を高め、喉を健康に保つことができます。ビタミンA、C、Eなどは粘膜の健康維持に役立つと言われています。

禁煙と節度ある飲酒

タバコの煙は喉の粘膜を直接刺激し、慢性的な炎症や乾燥を引き起こします。喫煙は喉にとって百害あって一利なしです。禁煙することで、喉の不快な症状が改善する可能性があります。

また、アルコールの過度な摂取も喉の粘膜を乾燥させたり、炎症を悪化させたりすることがあるため、節度ある飲酒を心がけましょう。

感染症対策の基本

風邪やインフルエンザなどの感染症は、喉の痛みの大きな原因です。感染症を予防するためには、基本的な対策が重要です。

感染症予防のためにできること

  • 手洗い・手指消毒の徹底
  • 人混みを避ける
  • 咳エチケット(マスク着用、咳やくしゃみをする際は口と鼻を覆う)

これらの対策は、自分自身を守るだけでなく、周囲の人への感染拡大を防ぐためにも大切です。

予防接種の検討

予防接種の種類対象となりうる疾患期待される効果
インフルエンザワクチンインフルエンザ発症予防、重症化予防
肺炎球菌ワクチン肺炎球菌による肺炎など重症化予防(特に高齢者や基礎疾患のある方)

喉のからから・ヒリヒリ痛みに関するよくある質問

最後に、喉の乾燥感や焼けるような痛みに関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
市販薬は使っても良いですか
A

軽い喉の痛みや乾燥感であれば、市販のうがい薬やトローチ、のど飴などで症状が和らぐことがあります。消炎鎮痛成分や殺菌成分、保湿成分などが含まれているものがあります。

ただし、市販薬を数日間使用しても症状が改善しない場合や、悪化する場合は、医療機関を受診してください。

また、アレルギー体質の方や持病のある方、妊娠中・授乳中の方は、薬剤師や登録販売者に相談してから使用するようにしましょう。

Q
子供でも同じような症状が出ますか
A

はい、子供でも大人と同様に、空気の乾燥や感染症、アレルギーなどによって喉の乾燥感や痛みを訴えることがあります。特に子供は鼻呼吸が未熟であったり、アデノイドが大きいなどの理由で口呼吸になりやすい傾向があります。

また、溶連菌感染症は子供に多い喉の痛みの原因の一つです。

子供が喉の痛みを訴える場合は、症状の程度や他の症状(発熱、発疹、食欲不振など)をよく観察し、必要に応じて小児科を受診してください。

Q
どのくらいの期間で治りますか
A

原因や症状の程度、治療法によって異なります。一般的な風邪による喉の痛みであれば、多くは数日から1週間程度で改善します。

細菌感染による扁桃炎などで抗菌薬を使用した場合も、通常は数日で症状が軽快し始めます。

ただし、逆流性食道炎や慢性的なアレルギーなどが原因の場合は、治療に時間がかかることもあります。症状が長引く場合は、自己判断せずに医師に相談することが大切です。

Q
慢性的な喉の乾燥感はどうすれば良いですか
A

慢性的な喉の乾燥感に悩んでいる場合は、まずその原因を特定することが重要です。

生活習慣(口呼吸、喫煙、水分摂取不足など)を見直すとともに、シェーグレン症候群のような自己免疫疾患や、薬剤の副作用なども考慮に入れる必要があります。

耳鼻咽喉科や呼吸器内科で相談し、適切なアドバイスや治療を受けることをお勧めします。加湿やこまめな水分補給といったセルフケアも継続して行いましょう。

喉のからからとした乾燥感や焼けるような痛みは、つらく不快なものです。この記事で紹介した情報が、皆様の症状改善や不安軽減の一助となれば幸いです。

症状が改善しない場合や、気になることがある場合は、決して我慢せず、早めに医療機関にご相談ください。

以上

参考にした論文