「咳をするたびに、みぞおちが痛い」「咳のしすぎでみぞおちが痛くなってしまった」そんなつらい症状にお悩みではありませんか。
咳とみぞおちの痛みは単なる筋肉痛から、呼吸器や消化器の病気が隠れているサインであることまで、様々な原因が考えられます。
この記事では咳でみぞおちが痛くなる理由、考えられる病気、ご自身でできる対処法、そして医療機関を受診する目安について詳しく解説します。適切な対応でつらい症状を和らげましょう。
咳とみぞおちの痛みの関係
咳という動作は思った以上に体に負担をかけるものです。特にみぞおち周辺は咳によって影響を受けやすい部位の一つです。
なぜ咳をするとみぞおちが痛くなるのか、その基本的な関連性を理解しましょう。
みぞおちとはどの部分か
「みぞおち」とは、一般的に胸骨(胸の中央にある縦長の骨)の下端からおへその少し上あたりまでのくぼんだ部分を指します。医学的には心窩部(しんかぶ)と呼ばれることが多いです。
この周辺には胃や食道下部、十二指腸、膵臓といった消化器系の臓器や、横隔膜、腹直筋などの筋肉が存在しています。
咳がみぞおちに負担をかける理由
咳は肺や気道から異物や痰を排出するための反射的な運動ですが、その際には横隔膜や腹筋、肋間筋といった呼吸に関わる筋肉が強く収縮します。
特に激しい咳や長引く咳はこれらの筋肉に繰り返し大きな負荷をかけることになります。
みぞおち周辺には咳に使われる主要な筋肉である横隔膜や腹直筋が付着しているため、咳の動作が直接的な負担となり、痛みが生じやすいのです。
咳のしすぎでみぞおちが痛くなる体の変化
咳が続くとみぞおち周辺の筋肉は過度な運動を強いられ、筋肉疲労や炎症を起こしやすくなります。これが「咳のしすぎでみぞおちが痛い」と感じる主な原因の一つである筋肉痛です。
また、咳の衝撃で肋骨にヒビが入ったり、まれに肋骨骨折を起こしたりすることもあり、この場合もみぞおちに痛みを感じることがあります。
さらに咳によって腹圧が上昇し、胃や食道などの消化器系に影響が及ぶこともあります。
咳とみぞおちの痛みに関わる主な筋肉
筋肉名 | 主な役割 | 咳との関連 |
---|---|---|
横隔膜 | 主要な呼吸筋、胸腔と腹腔を隔てる | 咳の際に強く収縮・弛緩し、負担がかかる |
腹直筋(腹筋の一部) | 体幹の屈曲、腹圧の維持 | 咳の際に収縮し、腹圧を高める |
肋間筋 | 肋骨の間にあり、呼吸を助ける | 激しい咳で収縮し、痛みの原因となることがある |
痛みの種類と特徴
咳をしたときにみぞおちに感じる痛みはその原因によって種類や特徴が異なります。ズキズキするような鋭い痛み、重苦しい鈍い痛み、圧迫されるような痛みなど様々です。
咳をした時だけ痛むのか、安静にしていても痛むのか、食事との関連はあるか、他に症状(発熱、胸焼け、息苦しさなど)はあるか、といった情報が診断の手がかりとなります。
痛みの性質を正確に把握することが大切です。
咳でみぞおちが痛くなる主な原因(呼吸器系)
咳そのものが呼吸器系の症状であるため、みぞおちの痛みが呼吸器の病気に由来することも少なくありません。「咳をするとみぞおちが痛い」場合、まず呼吸器系の疾患を考慮します。
激しい咳発作(気管支炎、肺炎など)
急性気管支炎や肺炎などの気道感染症では激しい咳発作が続くことがあります。この激しい咳が前述のように横隔膜や腹筋に大きな負担をかけ、みぞおちの筋肉痛を引き起こします。
また、炎症が肺を覆う胸膜にまで及ぶと(胸膜炎)、咳や深呼吸をしたときに胸やみぞおちに鋭い痛みを感じることがあります。
発熱や痰、息苦しさなどの症状を伴うことが多いです。
気管支喘息と咳
気管支喘息は気道が慢性的に炎症を起こし、様々な刺激に対して過敏になって狭くなる病気です。発作時には激しい咳、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴、呼吸困難などが起こります。
この喘息発作に伴う激しい咳も、みぞおちの痛みの原因となります。特に夜間や早朝に症状が悪化しやすいのが特徴です。
適切な治療で発作をコントロールすることが重要です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPDは主に長年の喫煙が原因で肺に炎症が起こり、空気の通り道が狭くなる病気です。
慢性的な咳や痰、労作時の息切れが主な症状ですが、症状が悪化(増悪)した際には咳がひどくなり、みぞおちの痛みを伴うことがあります。
COPDの患者さんは呼吸筋が既に疲弊していることも多く、咳による負担がより大きく感じられることがあります。
呼吸器系の疾患とみぞおちの痛みの関連
疾患名 | 主な咳の特徴 | みぞおちの痛みとの関連 |
---|---|---|
急性気管支炎・肺炎 | 激しい咳、痰を伴う | 咳による筋肉痛、胸膜炎の可能性 |
気管支喘息 | 発作性の激しい咳、喘鳴 | 咳による筋肉痛 |
COPD | 慢性の咳、痰、増悪時の咳の悪化 | 咳による筋肉痛、呼吸筋疲労 |
その他の呼吸器疾患(胸膜炎など)
胸膜炎は肺を覆う胸膜という薄い膜に炎症が起こる病気で、咳や深呼吸、体の動きによって胸やみぞおちに鋭い痛みが生じることがあります。肺炎や肺結核、肺がん、膠原病などが原因となります。
また、まれに自然気胸(肺に穴が開いて空気が漏れる病気)でも突然の胸痛や息苦しさとともに、咳やみぞおちの痛みを感じることがあります。
これらの疾患は速やかな診断と治療が必要です。
咳でみぞおちが痛くなる主な原因(消化器系)
みぞおちは消化器系の臓器が多く集まる場所でもあるため、咳をするとみぞおちが痛い場合には消化器系の病気が関与している可能性も考えられます。
胃食道逆流症(GERD)と咳・みぞおちの痛み
胃食道逆流症(GERD)は胃酸などの胃の内容物が食道に逆流することで、胸焼けや呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)などの症状を引き起こす病気です。
逆流した胃酸が食道を刺激することでみぞおちの痛みが生じることがあります。また、胃酸が喉や気管を刺激すると慢性的な咳(逆流性咳嗽)の原因にもなります。
この場合、咳とみぞおちの痛みが同時に現れることになります。食後や横になった時に症状が悪化しやすいのが特徴です。
食道裂孔ヘルニア
食道裂孔ヘルニアは胃の一部が横隔膜にある食道裂孔という穴から胸腔内にはみ出してしまう状態です。
これにより胃酸が逆流しやすくなり、GERDと同様の症状(胸焼け、みぞおちの痛み、咳など)を引き起こすことがあります。
特に咳をすると腹圧が上昇し、ヘルニア部分が刺激されて痛みを感じやすくなることがあります。
胃炎や胃潰瘍
急性胃炎や慢性胃炎、胃潰瘍など胃そのものに炎症や潰瘍があると、みぞおちに痛みが生じます。これらの痛みは咳によって腹圧が変動することで増強されることがあります。
空腹時や食後に痛みが強くなる、吐き気や食欲不振を伴うなどの特徴があります。
ストレスやピロリ菌感染、薬剤(非ステロイド性抗炎症薬など)が原因となることが多いです。
消化器系の疾患とみぞおちの痛みの関連
疾患名 | 主な痛みの特徴 | 咳との関連 |
---|---|---|
胃食道逆流症 (GERD) | 胸焼け、みぞおちの灼熱感 | 胃酸による咳誘発、咳で腹圧上昇し痛み増強 |
食道裂孔ヘルニア | GERDと同様の症状 | 咳でヘルニア部分が刺激される |
胃炎・胃潰瘍 | 空腹時や食後の持続的な痛み | 咳で腹圧が変動し痛み増強 |
消化器系の痛みの特徴
消化器系の病気によるみぞおちの痛みは食事との関連性が高いことが多いです。例えば食後に痛みが悪化する、空腹時に痛む、特定の食べ物で誘発されるなどです。
また、胸焼け、吐き気、嘔吐、便通異常(下痢や便秘)といった消化器症状を伴うこともあります。
咳の症状だけでなく、これらの消化器系のサインにも注意を払うことが原因特定の手がかりとなります。
咳でみぞおちが痛くなるその他の原因
呼吸器系や消化器系以外にも咳でみぞおちが痛くなる原因はいくつか考えられます。
筋肉や神経の問題、まれに心臓疾患なども考慮に入れる必要があります。
筋肉痛や肋間神経痛
前述の通り、激しい咳や長引く咳は横隔膜や腹筋、肋間筋といった呼吸に関わる筋肉に負担をかけ、筋肉痛を引き起こします。
これは「咳のしすぎでみぞおちが痛い」と感じる最も一般的な原因の一つです。
また、肋骨に沿って走る肋間神経が何らかの原因で刺激されると肋間神経痛として鋭い痛みが胸や背中、みぞおちあたりに現れることがあります。
咳やくしゃみ、深呼吸、体の動きで痛みが誘発されるのが特徴です。
心臓疾患の可能性(狭心症、心筋梗塞など)
頻度は低いですが、心臓の病気(狭心症や心筋梗塞など)でもみぞおちや胸部に痛みを感じることがあります。
これらの痛みは締め付けられるような圧迫感や、焼けるような感じと表現されることが多いです。労作時(運動時や階段を上る時など)に症状が現れやすく、安静にすると和らぐのが狭心症の特徴です。
心筋梗塞の場合は痛みが30分以上持続し、冷や汗や吐き気、呼吸困難を伴うこともあります。
このような症状がある場合は緊急の対応が必要です。
みぞおちの痛みを引き起こす可能性のある心臓疾患
疾患名 | 痛みの特徴 | 主な随伴症状 |
---|---|---|
狭心症 | 労作時の圧迫感、絞扼感(数分~15分程度) | 息切れ、肩や腕への放散痛 |
心筋梗塞 | 突然の激しい胸痛、圧迫感(30分以上持続) | 冷や汗、吐き気、呼吸困難、意識障害 |
ストレスや心因性の要因
強いストレスや精神的な緊張が身体的な症状として現れることがあります。みぞおちの痛みもその一つで、自律神経の乱れや筋肉の過度な緊張などが関与していると考えられます。
また、心因性の咳(精神的な要因が主な原因で起こる咳)がある場合、その咳自体がみぞおちの痛みを引き起こすこともあります。
他の検査で明らかな異常が見つからない場合に、これらの要因が考慮されます。
まれな原因
その他まれな原因として、膵炎、胆石症、大動脈解離といった重篤な病気がみぞおちの痛みを引き起こすこともあります。
これらの病気はそれぞれ特徴的な症状や検査所見がありますが、初期には診断が難しいこともあります。
咳との直接的な関連は低いことが多いですが、みぞおちの痛みが強い場合や他に気になる症状がある場合は鑑別診断の一つとして考慮されることがあります。
みぞおちが痛む咳の検査と診断
咳とともにみぞおちが痛む場合、その原因を特定するために医療機関では様々な検査を行います。適切な診断が効果的な治療への第一歩となります。
問診で伝えるべきこと
医師はまず、症状について詳しく尋ねます。正確な情報を伝えることが診断の手がかりとなります。
- いつから咳とみぞおちの痛みがあるか
- 咳の性質(乾いた咳か、痰が絡むか、痰の色など)
- 痛みの性質(ズキズキ、重苦しい、差し込むような痛みなど)
- 痛みが起こるタイミング(咳をした時だけか、安静時もか、食後かなど)
- 他に症状はあるか(発熱、息切れ、胸焼け、吐き気、体重減少など)
- 喫煙歴、既往歴(喘息、胃腸疾患など)、服用中の薬
これらの情報を整理しておくと、スムーズに伝えることができます。
胸部X線検査やCT検査
呼吸器系の疾患(肺炎、胸膜炎、肺がん、COPDなど)が疑われる場合、胸部X線検査(レントゲン)や胸部CT検査が行われます。これらの画像検査で肺や気管支、胸膜の状態を詳しく調べます。
「咳をするとみぞおちが痛い」という症状の原因が、肺やその周辺にあるのかどうかを判断するのに役立ちます。
呼吸機能検査
気管支喘息やCOPDなど気道の閉塞や狭窄が疑われる場合に行われる検査です。スパイロメーターという機械を使って息を吸ったり吐いたりする際の空気の量や速さを測定し、肺の換気機能を評価します。
咳の原因となっている呼吸器疾患の診断や重症度の判定に重要です。
みぞおちが痛む咳の際に考慮される主な検査
検査の種類 | 主な目的 | 疑われる疾患例 |
---|---|---|
胸部X線・CT検査 | 肺、胸膜、心臓の画像評価 | 肺炎、胸膜炎、肺がん、気胸 |
呼吸機能検査 | 肺の換気機能評価 | 気管支喘息、COPD |
心電図・心エコー検査 | 心臓の機能評価 | 狭心症、心筋梗塞、心膜炎 |
上部消化管内視鏡検査 | 食道・胃・十二指腸の観察 | 胃食道逆流症、胃炎、胃潰瘍 |
必要に応じたその他の検査(内視鏡検査、心電図など)
消化器系の疾患(胃食道逆流症、胃潰瘍など)が疑われる場合は上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で食道や胃の粘膜を直接観察します。
心臓疾患が疑われる場合は心電図検査や心エコー検査(心臓超音波検査)で心臓の働きを調べます。血液検査も炎症の程度や貧血の有無、肝機能や膵機能などを評価するために行われることがあります。
原因に応じて、これらの検査を組み合わせて総合的に診断します。
みぞおちが痛む咳の対処法と治療
咳でみぞおちが痛む場合の治療は原因となっている病気に対する治療が基本です。
それに加えて咳や痛みを和らげるための対症療法や、日常生活でのセルフケアも重要になります。
原因疾患に対する治療
診断に基づいて原因疾患の治療を行います。
例えば細菌感染による気管支炎や肺炎であれば抗菌薬、気管支喘息であれば吸入ステロイド薬や気管支拡張薬、胃食道逆流症であれば胃酸分泌抑制薬や生活習慣の改善指導などが中心となります。
原因疾患を適切に治療することで咳が軽減し、それに伴うみぞおちの痛みも改善することが期待できます。
咳を和らげる治療(鎮咳薬、去痰薬など)
原因疾患の治療と並行して、つらい咳の症状を和らげるために鎮咳薬(咳止め)や去痰薬(痰を出しやすくする薬)が処方されることがあります。
ただし、咳は体の防御反応でもあるため、むやみに抑えれば良いというものではありません。
特に痰が多い場合に強力な咳止め薬を使用すると痰が気道にたまって症状が悪化することもあるため、医師の指示に従って適切に使用することが大切です。
痛みを和らげる対症療法
咳による筋肉痛が主な原因である場合は安静にしたり、痛む部分を温めたりすることで症状が和らぐことがあります。
痛みが強い場合には医師の判断で消炎鎮痛薬(内服薬や湿布など)が処方されることもあります。
ただし、胃腸障害のリスクがあるため、特に消化器系の疾患が疑われる場合は慎重に使用する必要があります。自己判断での痛み止めの長期連用は避けましょう。
自宅でできる咳とみぞおちの痛みのセルフケア
- 安静にし、十分な休息をとる
- 咳を誘発する刺激(タバコの煙、冷たい空気、乾燥など)を避ける
- 室内の加湿を心がける
- 水分をこまめに摂取する
- 消化の良い食事を心がけ、刺激物を避ける(消化器症状がある場合)
自宅でできるセルフケア
薬物療法と合わせて自宅でできるセルフケアも症状緩和に役立ちます。まず十分な休息をとり、体を休めることが大切です。
空気が乾燥していると咳が出やすくなるため、加湿器を使用したり濡れタオルを干したりして室内の湿度を適切に保ちましょう。水分をこまめに摂ることも喉の潤いを保ち、痰を出しやすくするのに役立ちます。
また、タバコの煙やホコリ、冷たい空気など咳を誘発する刺激を避けることも重要です。
消化器系の症状がある場合は消化の良い食事を少量ずつ摂り、刺激物や脂肪の多い食事を控えるようにしましょう。
咳でみぞおちが痛い時の受診目安
「咳のしすぎでみぞおちが痛い」と感じたとき、どのタイミングで医療機関を受診すべきか迷うことがあるかもしれません。
症状の程度や持続期間、他に現れている症状などを総合的に見て判断することが大切です。
すぐに受診すべき危険なサイン
以下のような症状が見られる場合は重篤な病気が隠れている可能性があり、速やかに医療機関を受診する必要があります。
- 突然の激しいみぞおちの痛みや胸痛
- 呼吸困難、息切れが強い
- 冷や汗や吐き気を伴う痛み
- 意識が朦朧とする
- 血痰や喀血がある
- 高熱が続く
これらの症状は心筋梗塞や大動脈解離、重症肺炎、気胸など、緊急性の高い状態を示唆していることがあります。
ためらわずに救急外来を受診するか救急車を呼んでください。
数日様子を見ても良い場合
咳の症状が軽く、みぞおちの痛みも咳をした時だけで、安静にしていれば治まるような場合、また発熱やその他の重篤な症状がない場合は、数日間自宅で安静にして様子を見ても良いかもしれません。
風邪などによる一時的な筋肉痛であれば、咳が治まるにつれて痛みも軽減していくことが期待できます。
ただし症状が改善しない、あるいは悪化するようであれば医療機関を受診しましょう。
何科を受診すればよいか
咳が主な症状で、呼吸器系の病気が疑われる場合は、まず呼吸器内科を受診するのが適切です。
胸焼けや胃痛など消化器系の症状が強い場合は消化器内科の受診を検討しましょう。
突然の激しい胸痛やみぞおちの痛みで心臓疾患が疑われる場合は循環器内科や救急外来が対応します。
どの科を受診すればよいか迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談するか、総合内科を受診して初期評価をしてもらうのも一つの方法です。
受診の目安と診療科
症状の特徴 | 考えられる主な原因 | 推奨される診療科 |
---|---|---|
咳、痰、発熱、息切れ | 呼吸器感染症、喘息、COPD | 呼吸器内科、一般内科 |
胸焼け、呑酸、食後の痛み | 胃食道逆流症、胃炎 | 消化器内科、一般内科 |
突然の激しい胸痛・みぞおち痛、冷や汗 | 心筋梗塞、大動脈解離 | 循環器内科、救急科 |
よくある質問(FAQ)
咳とみぞおちの痛みに関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- Q咳でみぞおちが痛いのは筋肉痛ですか?
- A
咳が続いた後にみぞおちが痛くなった場合、最も考えやすいのは咳による筋肉痛です。
特に普段あまり運動をしていない人が激しい咳を繰り返すと横隔膜や腹筋などが疲労し、痛みが出やすくなります。
この場合の痛みは咳をした時や体を動かした時に強くなり、安静にしていると和らぐことが多いです。
ただし、痛みが非常に強い場合や長引く場合、他の症状(発熱、息苦しさなど)を伴う場合は筋肉痛以外の原因も考える必要があるため、医療機関を受診することをおすすめします。
- Q咳止めを飲んでもみぞおちの痛みは治まりますか?
- A
咳止め薬は咳中枢の興奮を抑えたり、気道の過敏性を鎮めたりすることで咳の回数や強さを減らす効果があります。
咳が原因でみぞおちが痛んでいる場合、咳止め薬によって咳が軽減すれば結果的にみぞおちの痛みも和らぐ可能性があります。
しかし、咳止め薬は痛みを直接抑える薬ではありません。また、咳の原因によっては咳止め薬が適さない場合もあるため、医師の診断のもとで適切に使用することが大切です。
自己判断での使用は慎重にしましょう。
- Q子供が咳でみぞおちを痛がっていますが、どうすれば良いですか?
- A
子供が咳とともにみぞおちの痛みを訴える場合、まずは安静にさせ、水分を十分に摂らせて様子を見ましょう。咳がひどい場合は加湿などで喉の乾燥を防ぐことも有効です。
痛みが強い、咳が止まらない、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、発熱があるなどの場合は小児科を受診してください。
子供は自分の症状をうまく伝えられないこともあるため、保護者の方が注意深く観察し、心配な点があれば早めに医師に相談することが大切です。
- Q咳とみぞおちの痛みを予防する方法はありますか?
- A
まず、咳の原因となる感染症にかからないように普段から手洗いやうがいを徹底し、人混みを避けるなどの感染予防策を心がけることが大切です。
気管支喘息やCOPDなどの持病がある方は医師の指示通りに治療を継続し、良好なコントロールを保つことが重要です。また、禁煙は呼吸器疾患の最大の予防策です。
胃食道逆流症が原因となりやすい方は食生活の改善(暴飲暴食を避ける、食後すぐに横にならないなど)や、適切な体重管理も予防につながります。
咳が出始めたら長引かせないように早めの対処を心がけましょう。
以上
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