咳をした時に口の中に「変な味」や「血の味」を感じて不安になった経験はありませんか。
このような味覚の変化は一時的なものから何らかの病気が隠れているサインであることまで様々です。特に「咳をすると血の味がする」場合は注意が必要です。
この記事では咳とともに感じる変な味の原因、血の味との関連、考えられる病気、検査や治療法、そして日常生活での注意点について詳しく解説します。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
咳をした時に感じる「変な味」とは
咳をした際に口の中に広がる不快な味は多くの人が経験するかもしれません。
この「変な味」の正体は一つではなく、様々な要因が絡み合って生じることがあります。味の種類や感じ方によって原因も異なってきます。
味覚異常の種類と咳との関連
味覚異常には味が薄く感じる「味覚減退」、味が全くしない「味覚消失」、本来の味と違う味に感じる「異味症」、何も口にしていないのに味を感じる「自発性異常味覚」などがあります。
咳をしたときに感じる変な味はこれらのうち異味症や自発性異常味覚に近い状態かもしれません。
気道や口腔内の炎症、分泌物などが味覚センサーに影響を与え、通常とは異なる味として感知されることがあります。
痰や鼻水が味の原因になることも
咳とともに排出される痰や喉に流れてくる鼻水(後鼻漏)は、変な味の直接的な原因となることがあります。
痰や鼻水には炎症によって生じた物質や細菌、ウイルスなどが含まれており、これらが口の中で味として感じられるのです。例えば、細菌感染がある場合の膿性の痰は苦味や嫌な臭いを伴うことがあります。
咳をすると変な味がする場合、これらの分泌物の性状を確認することも一つの手がかりになります。
口腔内の問題が影響する場合
虫歯や歯周病、舌炎、口腔乾燥症(ドライマウス)といった口腔内のトラブルも、咳をしたときの変な味に関与することがあります。
これらの状態では口の中で細菌が繁殖しやすくなったり、味蕾の機能が低下したりするため、不快な味を感じやすくなります。
特に歯周病では、歯茎からの出血が金属のような味(血の味)として感じられることもあります。咳の症状と合わせて口腔内の健康状態にも注意を払うことが大切です。
咳と変な味に関連する口腔内の状態
口腔内の状態 | 主な症状 | 味への影響(例) |
---|---|---|
歯周病 | 歯茎の腫れ・出血、口臭 | 血の味、苦味、金属味 |
虫歯(進行したもの) | 歯の痛み、穴が開く | 食べ物の腐敗臭、苦味 |
口腔乾燥症 | 口の渇き、舌の痛み | 味が分かりにくい、塩味や苦味を感じやすい |
薬剤の副作用としての味覚変化
服用している薬剤の副作用として味覚異常が現れることもあります。抗菌薬、降圧薬、抗うつ薬、抗がん剤など様々な種類の薬で報告されています。
薬の成分が唾液中に分泌されたり、味覚受容体に影響を与えたりすることで、苦味や金属味などを感じることがあります。
咳の治療で薬を服用し始めた後に変な味を感じるようになった場合は薬剤師や医師に相談してみましょう。自己判断で薬の服用を中止するのは避けてください。
咳で「血の味」がする主な原因
咳をしたときに「血の味」を感じる場合、それは体からの重要なサインである可能性があります。
出血部位や原因によって対処法や緊急性が異なります。「咳をすると血の味がする」と感じたら、その原因を特定することが重要です。
気道からの出血(喀血・血痰)
最も注意すべきなのは気管や気管支、肺といった下気道からの出血です。咳とともに血液そのものや血が混じった痰が出ることを、それぞれ喀血(かっけつ)、血痰(けったん)と言います。
出血量が多い場合は鮮やかな赤色、少ない場合や古い出血の場合は暗赤色や茶褐色になることがあります。
気管支炎、肺炎、気管支拡張症、肺結核、肺がんなど、様々な呼吸器疾患が原因となり得ます。咳をすると血の味がする場合、これらの疾患を疑う必要があります。
鼻血が喉に回る場合(後鼻漏)
鼻血が出た際に血液の一部が喉の方へ流れ込み(後鼻漏)、それを咳とともに喀出したり、口の中で血の味として感じたりすることがあります。
特に寝ている間や自分では気づかない程度の少量の鼻出血でも起こり得ます。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻の乾燥、高血圧などが鼻血の原因となります。
この場合は呼吸器からの出血とは区別する必要がありますが、頻繁に起こる場合は耳鼻咽喉科の受診を検討しましょう。
血の味の原因となる出血部位
出血部位 | 主な特徴 | 考えられる原因(例) |
---|---|---|
下気道(気管・気管支・肺) | 咳とともに血液や血痰が出る | 気管支炎、肺炎、気管支拡張症、肺結核、肺がん |
鼻腔 | 鼻血が喉に流れ込む(後鼻漏) | アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻の乾燥 |
口腔内 | 歯磨き時や食事時の出血 | 歯周病、口内炎、舌の傷 |
歯茎や口腔内の出血
歯周病や歯肉炎、口内炎、あるいは舌や頬の粘膜を誤って噛んでしまった傷など口腔内からの出血が血の味の原因となることもあります。
歯磨きの際に血が出やすい、歯茎が腫れているなどの症状がある場合は歯科的な問題が考えられます。
この場合の血の味は咳そのものが原因ではなく、咳をした際の刺激で口腔内から出血しやすくなっている可能性もあります。
消化管からの出血の可能性
まれに、食道や胃などの消化管上部からの出血(吐血)が咳をした際に逆流し、血の味として感じられることがあります。
吐血の場合は喀血と比べて暗赤色で食物残渣が混じっていることが多いですが、少量の場合は区別が難しいこともあります。
胃潰瘍や食道静脈瘤などが原因となります。胸焼けや腹痛などの消化器症状を伴う場合は、消化器内科の受診が必要です。
「血の味」を伴う咳で考えられる呼吸器疾患
「咳をすると血の味がする」という症状は様々な呼吸器疾患のサインである可能性があります。特に注意が必要な疾患について解説します。
気管支炎や肺炎
急性気管支炎や肺炎では気道の強い炎症により毛細血管が傷つき、血痰が出ることがあります。特に細菌性肺炎では黄色や緑色の膿性の痰に血が混じることがあります。
発熱や激しい咳、胸痛、呼吸困難などの症状を伴うことが多いです。これらの感染症は適切な抗菌薬治療などが必要となるため早期の診断が重要です。
気管支拡張症
気管支拡張症は気管支の壁が破壊されて拡張し、元に戻らなくなる病気です。拡張した部分に細菌が感染しやすく慢性的な炎症が起こるため、多量の膿性の痰とともに血痰を繰り返すことが特徴です。
血痰の量は少量から時に大量の喀血に至ることもあります。この病気は咳をすると血の味がするという症状の代表的な原因の一つです。
肺結核
肺結核は結核菌による感染症で、咳、痰、血痰、微熱、体重減少、寝汗などが主な症状です。初期には症状が乏しいこともありますが、進行すると血痰や喀血が見られるようになります。
結核は過去の病気というイメージがあるかもしれませんが、現在でも新たな患者が発生しており、注意が必要な感染症です。
早期発見と確実な治療が大切です。
血痰を伴う主な呼吸器疾患
疾患名 | 血痰以外の主な症状 | 備考 |
---|---|---|
急性気管支炎・肺炎 | 発熱、膿性痰、胸痛、呼吸困難 | 感染による炎症 |
気管支拡張症 | 多量の膿性痰、繰り返す気道感染 | 気管支の構造的変化 |
肺結核 | 長引く咳、微熱、体重減少、寝汗 | 結核菌感染 |
肺がん | 長引く咳、胸痛、息切れ、嗄声(声がれ) | 喫煙者に多い |
肺がんなどの悪性腫瘍
肺がんも血痰の原因となる重要な疾患です。がん組織が気管支壁を破壊したり、がん組織自体から出血したりすることで血痰が生じます。
特に喫煙歴のある中高年の方で原因不明の血痰が続く場合は、肺がんの可能性を念頭に置いた精密検査が必要です。
咳をすると血の味がするという症状が持続する場合は放置せずに医療機関を受診しましょう。
「血の味」以外の変な味と関連する可能性のある状態
咳をしたときに感じる変な味は血の味だけではありません。金属味や苦味、甘い味など様々な味覚の変化があり、それぞれ異なる原因が考えられます。
金属味や苦味を感じる場合
咳とともに金属のような味や苦味を感じる場合、いくつかの原因が考えられます。
一つは副鼻腔炎(蓄膿症)です。副鼻腔にたまった膿が喉に流れ込む(後鼻漏)ことで、嫌な味や臭いとして感じられることがあります。
また、一部の薬剤の副作用や亜鉛欠乏などの栄養障害、口腔内の金属製の詰め物などが原因で金属味を感じることもあります。
強いストレスや疲労が原因で苦味を感じる人もいます。
甘い味や酸っぱい味を感じる場合
咳をしたときに甘い味を感じる場合、まれに糖尿病のコントロールが悪い時にケトン体という物質が影響している可能性や、特定の細菌感染が原因となることがあります。
しかし、はっきりとした原因が特定しにくいこともあります。
酸っぱい味を感じる場合は胃食道逆流症(GERD)の可能性が高いです。胃酸が食道や喉まで逆流することで、酸味や胸焼け、咳などの症状が現れます。
胃食道逆流症(GERD)との関連
胃食道逆流症(GERD)は胃の内容物(主に胃酸)が食道に逆流することで、胸焼けや呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)、咳などの症状を引き起こす病気です。
逆流した胃酸が喉や気管を刺激することで慢性的な咳や、咳をしたときの酸っぱい味、苦味の原因となります。特に食後や横になった時に症状が悪化しやすいのが特徴です。
この場合、「咳をすると変な味がする」という訴えが多く聞かれます。
変な味と関連する可能性のある疾患・状態
感じる味 | 考えられる原因(例) | 主な関連症状(例) |
---|---|---|
金属味 | 副鼻腔炎、薬剤副作用、亜鉛欠乏、口腔内金属 | 鼻づまり、後鼻漏、口内乾燥 |
苦味 | 副鼻腔炎、胃食道逆流症、ストレス、薬剤副作用 | 鼻づまり、胸焼け、食欲不振 |
酸っぱい味 | 胃食道逆流症 | 胸焼け、呑酸、げっぷ |
副鼻腔炎(蓄膿症)による影響
副鼻腔炎は鼻の周囲にある副鼻腔という空洞に炎症が起こり、膿がたまる病気です。
たまった膿が喉の方へ流れ込む「後鼻漏」は慢性的な咳や痰の原因となるだけでなく、口の中で嫌な味(膿のような味、金属味、苦味など)や口臭として感じられることがあります。
咳をすると変な味がする場合、鼻の症状(鼻づまり、色のついた鼻水など)がないかも確認することが大切です。
咳で変な味がする時の検査と診断
咳とともに変な味を感じる場合、その原因を特定するために医療機関では様々な検査を行います。
正確な診断が適切な治療への第一歩となります。
医師が行う問診のポイント
診察の際には医師が症状について詳しく尋ねます。具体的には以下のような点が重要になります。
- いつから咳や変な味があるか
- どのような味か(血の味、金属味、苦味など)
- 咳の頻度や強さ、痰の有無や性状
- 他の症状(発熱、鼻水、胸焼け、息切れなど)の有無
- 喫煙歴、既往歴、服用中の薬剤
- 生活習慣や食生活について
これらの情報を正確に伝えることで医師は原因を絞り込みやすくなります。「咳をすると血の味がする」のか、それ以外の味なのかを明確に伝えることが大切です。
胸部X線検査やCT検査
呼吸器疾患が疑われる場合、胸部X線検査(レントゲン)や胸部CT検査が行われます。これらの画像検査によって肺炎、肺結核、肺がん、気管支拡張症など、肺や気管支の異常を視覚的に確認することができます。
特に血痰がある場合や咳が長引く場合には重要な検査となります。
喀痰検査や血液検査
痰が出る場合は喀痰検査を行うことがあります。痰の中の細菌や細胞を調べることで感染症の種類を特定したり、がん細胞の有無を確認したりします。
血液検査では炎症反応の程度(CRP、白血球数など)や、アレルギーの有無(IgE抗体など)、貧血の有無などを調べることができます。
これらの検査は全身状態の把握や原因疾患の特定に役立ちます。
咳で変な味がする場合の主な検査
検査の種類 | 主な目的 | 対象となる可能性のある疾患(例) |
---|---|---|
胸部X線・CT検査 | 肺・気管支の画像評価 | 肺炎、肺結核、肺がん、気管支拡張症 |
喀痰検査 | 痰中の細菌・細胞の確認 | 細菌性肺炎、肺結核、肺がん |
血液検査 | 炎症反応、アレルギー、貧血など | 感染症、アレルギー疾患 |
気管支鏡検査 | 気道内の直接観察、組織採取 | 肺がん、気管支拡張症、原因不明の血痰 |
必要に応じた内視鏡検査(気管支鏡など)
血痰の原因が特定できない場合や、肺がんなどが疑われる場合には気管支鏡検査を行うことがあります。
これは細いカメラ(内視鏡)を口や鼻から気管支に挿入し、気道内を直接観察したり、組織の一部を採取(生検)したりする検査です。
また、胃食道逆流症が強く疑われる場合には胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が行われることもあります。
咳で変な味がする場合の治療と対処法
咳とともに感じる変な味の治療はその原因となっている病気や状態に対する治療が基本となります。対症療法や生活習慣の改善も併せて行います。
原因疾患に対する治療
診断に基づいて、原因となっている疾患の治療を行います。
例えば細菌感染が原因であれば抗菌薬、胃食道逆流症であれば胃酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬、気管支喘息であれば吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などが処方されます。
肺がんや肺結核などの場合は専門的な治療が必要となります。医師の指示に従い、根気強く治療を続けることが大切です。
対症療法としての咳止めや去痰薬
原因疾患の治療と並行して、つらい咳や痰の症状を和らげるために咳止め薬(鎮咳薬)や痰を出しやすくする薬(去痰薬)が使われることがあります。
ただし、これらはあくまで症状を抑えるためのものであり、根本的な治療ではありません。
特に痰が多い場合に強力な咳止め薬を使用すると痰が気道にたまってしまい、かえって症状を悪化させることもあるため、医師の判断のもとで使用することが重要です。
口腔ケアと生活習慣の改善
口腔内の問題が変な味の原因となっている場合は歯科での治療や適切な口腔ケア(丁寧な歯磨き、舌清掃など)が効果的です。
また、禁煙は咳や痰、そして多くの呼吸器疾患のリスクを減らすために最も重要です。
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスを溜めないようにすることも全身の健康状態を良好に保ち、症状の改善につながります。
日常生活での対処ポイント
- 禁煙を徹底する
- 口腔内を清潔に保つ
- 刺激物を避け、バランスの取れた食事を摂る
- 十分な水分補給を心がける
- 室内の加湿を適切に行う
血の味が続く場合の注意点と受診目安
「咳をすると血の味がする」という症状が続く場合は自己判断せずに必ず医療機関を受診してください。
特に以下のような場合は速やかな受診が必要です。
- 血痰の量が多い、または鮮血である
- 呼吸困難や胸痛を伴う
- 発熱が続く
- 体重減少が見られる
これらの症状は重篤な疾患のサインである可能性があります。
少量であっても血の味が頻繁に感じられる、あるいは数日以上続く場合は呼吸器内科を受診し、原因を調べてもらうことが大切です。
日常生活でできる予防とセルフケア
咳やそれに伴う変な味は日頃の心がけである程度予防したり、症状を軽減したりすることが可能です。健康的な生活習慣を維持し、リスク要因を避けることが基本となります。
禁煙と受動喫煙の回避
喫煙は咳や痰、そして多くの呼吸器疾患(肺がん、COPDなど)の最大の原因です。禁煙はこれらの病気を予防し、症状を改善するために最も効果的な方法です。
また、自分自身が喫煙しなくても、他人のタバコの煙(副流煙)を吸い込む受動喫煙も同様に健康への悪影響があります。
喫煙者の方は禁煙を、非喫煙者の方は受動喫煙を避ける環境づくりを心がけましょう。
感染症予防(手洗い、うがい、マスク)
風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症は咳や痰、そしてそれに伴う味覚異常の一般的な原因です。これらの感染症を予防するためには基本的な感染対策が重要です。
外出からの帰宅時や食事前には石鹸で丁寧に手洗いを行い、うがいを習慣にしましょう。人混みや感染症が流行している時期にはマスクを着用することも有効です。
これらの対策は咳をすると変な味がするという状況を未然に防ぐのに役立ちます。
口腔内を清潔に保つ
口腔内の衛生状態が悪いと細菌が繁殖しやすくなり、口臭や味覚異常の原因となることがあります。また、歯周病は歯茎からの出血を引き起こし、「咳をすると血の味がする」と感じる原因にもなり得ます。
毎食後の丁寧な歯磨きやデンタルフロス、歯間ブラシの使用、定期的な歯科受診を心がけ、口腔内を常に清潔な状態に保つことが大切です。
舌苔(舌の表面の白い汚れ)も味覚に影響するため、舌ブラシなどで優しく清掃するのも良いでしょう。
口腔ケアのポイント
ケア項目 | 具体的な方法 | 期待される効果 |
---|---|---|
歯磨き | 毎食後、フッ素入り歯磨き粉を使用し丁寧に磨く | 虫歯・歯周病予防、口臭予防 |
歯間清掃 | デンタルフロス、歯間ブラシを使用 | 歯ブラシでは届かない部分のプラーク除去 |
舌清掃 | 舌ブラシなどで優しく奥から手前に清掃 | 舌苔除去、味覚改善、口臭予防 |
定期的な歯科受診 | 専門家によるクリーニング、検診 | 早期発見・早期治療、予防指導 |
バランスの取れた食事と十分な睡眠
体の免疫力を高め、健康な状態を維持するためにはバランスの取れた食事が重要です。特定の食品に偏らず、主食、主菜、副菜を揃え、ビタミンやミネラルを十分に摂取しましょう。
また、十分な睡眠は疲労回復や免疫機能の維持に不可欠です。睡眠不足は体の抵抗力を弱め、感染症にかかりやすくなったり、既存の症状を悪化させたりする可能性があります。
規則正しい生活を送り、質の高い睡眠を確保するよう努めましょう。
よくある質問
咳とともに感じる変な味や血の味に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- Q咳で血の味がしたらすぐに病院へ行くべきか
- A
はい、咳をして血の味を感じた場合は自己判断せずに医療機関(呼吸器内科など)を受診することを強くおすすめします。
特に痰に明らかに血が混じっている(血痰)、呼吸困難や胸痛がある、発熱が続くなどの症状がある場合は速やかに受診してください。
少量であっても原因を特定することが重要です。「咳をすると血の味がする」のは軽微なものから重篤な疾患まで様々な原因が考えられるため、専門医の診察を受けることが大切です。
- Q咳で変な味がするのはストレスが原因か
- A
A. 精神的なストレスが直接的に咳や変な味を引き起こすこともあります(心因性咳嗽やストレスによる味覚変化など)。
しかし、ストレスは免疫力を低下させ、感染症にかかりやすくしたり、既存の呼吸器疾患や胃食道逆流症などを悪化させたりする間接的な要因となることも多いです。
そのため変な味がストレスだけが原因と決めつけず、まずは器質的な疾患がないかを確認することが重要です。
その上でストレスが関与していると考えられる場合はストレスマネジメントも治療の一環として考慮します。
ストレスと咳・味覚異常の関連
ストレスの影響 具体的な内容 症状へのつながり 自律神経の乱れ 気道過敏性の亢進、胃酸分泌の変化 咳の誘発、胃食道逆流症の悪化 免疫力の低下 感染症への抵抗力低下 気道感染症の罹患・遷延化 心因性の要因 精神的な緊張による咳、味覚変化 心因性咳嗽、自発性異常味覚
- Q子供が咳で変な味がすると言っているが大丈夫か
- A
子供が咳とともに変な味を訴える場合、まずはどのような味か、他に症状がないか(発熱、鼻水、食欲不振など)を詳しく聞いてあげてください。
子供は大人に比べて自分の症状をうまく表現できないこともあります。
鼻炎や副鼻腔炎による後鼻漏、あるいは風邪などの感染症が原因であることが多いですが、まれに気管支炎や肺炎を起こしていることもあります。
症状が続く場合や元気がない、呼吸が苦しそうなどの場合は小児科を受診しましょう。
- Q咳で血の味がするが、少量なら様子を見ても良いか
- A
たとえ少量であっても、「咳をすると血の味がする」という症状が続く場合は様子を見るのではなく、一度医療機関を受診することをおすすめします。
特に喫煙歴のある方や呼吸器系の持病がある方は注意が必要です。
ごくまれに歯茎からの出血などが原因であることもありますが、肺や気管支からの出血である可能性を否定できません。
早期発見・早期治療が重要となる疾患も含まれるため、専門医に相談して適切な検査を受けることが賢明です。,
以上
参考にした論文
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