インスリンデグルデク・インスリンアスパルト配合(ライゾデグ配合)とは、血糖コントロールを効率的に行うために開発されたインスリン製剤です。
基礎インスリンと食事時インスリンの両方の役割を兼ね備えているのが特徴です。
糖尿病治療では医師の指示に沿いながら安全で安定した血糖値の維持を目指すことが重要です。
本記事ではライゾデグ配合の特徴や作用機序、使用時の注意点などを詳しく解説し、治療を検討するうえでの理解を深められるよう情報を提供します。
インスリンデグルデク・インスリンアスパルト配合の有効成分と効果、作用機序
ライゾデグ配合は長時間作用型のインスリンデグルデクと即効型のインスリンアスパルトを組み合わせたインスリン製剤です。
インスリン療法では複数のインスリン製剤を使い分けることがありますが、ライゾデグ配合は基礎分泌と追加分泌の両方の役割を担います。
そのため医師が認めたケースでは単一製剤での血糖管理をめざす手段のひとつになります。
ここではそれぞれの成分がどのような特性を持ち、どのように血糖値を調整するかを解説します。
インスリンデグルデクの特徴
インスリンデグルデクは持続時間の長いインスリン製剤です。
注射後に体内で安定的かつ持続的に作用して基礎インスリンの役割を果たします。
一般的に次のような点が特徴です。
- 血中濃度が24時間以上にわたり安定する
- 血糖値の上下動を穏やかにしやすい
- 1日1回の投与スケジュールが可能(医師の指示による)
低血糖発作のリスクを軽減しながら、ほぼ1日を通して血糖値をある程度一定に保とうとする働きがあります。
ただし患者さんの食事量や生活リズムによっては調整が必要になるため、医師の判断によって用量や投与タイミングを決定することが大切です。
以下のような点を考慮してインスリンデグルデクが含有される製剤を使用するメリットがあります。
- 持続安定型の働きで基礎分泌を補う
- 注射回数の削減につながる可能性
- 安定した血糖管理を目指しやすい
適切な使用にあたっては医師との相談が重要です。
インスリンアスパルトの特徴
一方のインスリンアスパルトは食事前あるいは食後の急激な血糖上昇を抑制する目的で利用される即効型インスリンアナログです。
通常のヒトインスリンよりも吸収が早く、注射後15分ほどで効果が表れやすいと報告されています。
インスリンアスパルトの特徴は以下の通りです。
- 速やかな吸収で食後高血糖を抑制しやすい
- 注射後約2~4時間でピーク作用が見られる
- 作用が速い分、効果の持続時間は比較的短い
食事とインスリンアスパルトのタイミングをあわせることが血糖管理を左右します。
患者さんの食生活やライフスタイルを把握し、必要に応じて医療従事者と相談しながら調整することがポイントです。
ここで血糖上昇を抑制するために押さえておきたい簡単なリストを示します。
- 食事の内容や量を記録する
- 食事前か食後すぐにインスリンを注射する(医師の指示による)
- 運動や生活リズムも加味してタイミングを決める
血糖コントロールへのメリット
ライゾデグ配合はインスリンデグルデク(基礎分泌)とインスリンアスパルト(追加分泌)を合わせた製剤のため、1本で2つの働きを持つ点が特徴となります。
複数のインスリン製剤を組み合わせるよりも、注射管理が簡単になりやすい場合があります。
食事時と食間の血糖管理をまとめて行うことで血糖値の変動を抑制し、生活の質を保ちやすくする狙いがあります。
ただし血糖値の自己測定や食事・運動の管理は欠かせません。
ライゾデグ配合を使うことで糖尿病の治療管理が省力化されるケースもありますが、日々の細かい調整と、主治医との継続的な情報交換は欠かせない要素になります。
作用機序のポイント
ライゾデグ配合は基本的にはインスリンの作用機序に準じます。
インスリンは血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓などに取り込み、血糖値を下げる役割を担うホルモンです。
インスリンデグルデクはその機能を長時間継続的に発揮し、インスリンアスパルトは食後に急上昇する血糖をいち早くコントロールします。
これらの相乗効果で比較的安定した血糖管理をめざせる点がライゾデグ配合の特長です。
インスリン製剤の基礎と追加のバランスを1本で合わせることにより、食後の血糖上昇を含む24時間の血糖変動を抑えるサポートを期待できます。
ただし個人差が大きいため効果をより確実にするには医師の指示のもとで調整を重ねる必要があります。
ここで、インスリンデグルデクとインスリンアスパルトの作用の比較を示す簡単な表を挿入します。
両者の違いを把握することでライゾデグ配合の特徴が理解しやすくなります。
成分名 | 作用立ち上がり | 作用持続時間 | 主な役割 |
---|---|---|---|
インスリンデグルデク | やや緩やか | 24時間以上 | 基礎インスリンの補充 |
インスリンアスパルト | 速い | 4~6時間 | 食事時の血糖上昇の抑制 |
上記のようにそれぞれ作用のタイミングや持続時間が異なるインスリンをひとつの製剤にまとめてある点が大きな特長です。
ライゾデグ配合の使用方法と注意点
ライゾデグ配合は基礎と追加の両方をまかなう特徴を持つため使用方法や使用時の注意点を正しく理解すると血糖コントロールの向上に繋がります。
自己注射のタイミングや使用時の手技、保管方法に関して知っておくことで安全性が高まり、より安定した血糖管理を目指す土台にもなります。
注射のタイミングと頻度
医師から指示を受ける投与タイミングは基本的に1日1回もしくは2回の注射になる場合が多いです。
食事のタイミングや血糖値のトレンドなどを踏まえて適切な回数や量を決めます。
以下の点が目安になります。
- 朝食前に1回注射するケース
- 朝食前と夕食前に2回注射するケース
- 夜寝る前に注射するケース
投与間隔がずれると効果が変動する可能性があるため、なるべく毎日同じ時間帯に打つことが推奨されます。
食事の時間が不規則になりがちな場合は医師と相談して注射タイミングを検討してください。
自己注射の方法と保管上の留意点
ペン型注入器で自己注射をする場合が多いです。
以下のような点を考慮しながら使用すると安心です。
- 針は使い捨てであり、毎回新しい針に交換する
- 注入器は冷蔵庫で保管し使用前は常温に戻しておく
- 使用後は室温で保管してもかまわないが高温や直射日光は避ける
インスリン製剤は温度変化に敏感なので保管状態を適切に保つことが大切です。
誤って冷凍してしまったり高温多湿な環境に長時間放置してしまうと薬液の性質が変化する可能性があります。
以下のリストは自己注射の安全性を高めるために気をつけたいポイントです。
- 注射前に手指の消毒を行う
- 注射部位は定期的に変える(腹部・大腿部など)
- 注射前に気泡がないか確認する
- 指示された注射量を守る
低血糖・高血糖への対応
ライゾデグ配合を使用中に気をつけたいのは低血糖と高血糖のリスクです。
インスリンを注射する以上は血糖値を過度に下げてしまう可能性があります。
強い空腹感・手足のふるえ・冷や汗などの症状が出てきた場合はすぐにブドウ糖やジュースなどを摂って対処してください。
反対に注射を忘れたり適切な量のインスリンが投与されなかったりすると、血糖値が上昇して喉の渇きやだるさ、頻尿といった症状が生じやすくなります。
低血糖と高血糖の目安や症状を把握することで早期に対策がとれます。
下の表に代表的な症状を示します。個人差があるためあくまで参考程度ですが、こうした症状を意識して日常生活を送ることが大切です。
状態 | 代表的な症状 | 対応 |
---|---|---|
低血糖 | 手足のふるえ、冷や汗、動悸、頭痛など | すぐに糖分を摂取(ブドウ糖タブレットなど) |
高血糖 | 喉の渇き、頻尿、倦怠感など | インスリンの打ち忘れ確認、水分摂取、必要に応じ医療機関へ相談 |
低血糖時は意識がはっきりしているうちに糖分を摂取して落ち着いてから血糖値を測定し、場合によっては医療機関を受診してください。
高血糖が続く場合も放置せずに主治医に相談することが重要です。
副作用を予防するための日常管理
日頃から自分の血糖値を把握して食事や運動を含めて総合的に管理することがライゾデグ配合による治療の安全性に繋がります。
医師・栄養士・薬剤師などと連携しながら血糖値をメモしておく、定期的に食事のバランスを見直すなどの取り組みを行うと意図せぬ血糖変動を防ぎやすくなります。
特に普段の食事や運動量を把握しないままインスリン量を調整してしまうと、低血糖や高血糖のリスクを高める恐れがあるため注意が必要です。
適応対象患者
ライゾデグ配合は主に糖尿病(1型・2型)でインスリン治療を必要とする患者さんに対して使用されます。
特に基礎インスリンと食事時インスリンの両方を組み合わせてコントロールする必要がある方にとって有用な選択肢となります。
ここではどのような患者さんがライゾデグ配合を検討できるのかや、注意すべき点を説明します。
1型糖尿病患者への適応
1型糖尿病では自分の膵臓がつくり出すインスリンが極端に少ないか、ほとんど分泌されない状態になっています。
そのため日常的にインスリン注射を行う必要があります。
1型糖尿病の方にとって基礎インスリンと追加インスリンの両方を使い分ける作業は必須です。
ライゾデグ配合であれば基礎分泌部分をインスリンデグルデク、食事時の上昇をインスリンアスパルトがカバーするため、インスリン製剤を使い分ける手間が減る場合があります。
ただし活動量や食事の時間帯が不規則になりやすい方はこまめに血糖値を測定して柔軟に調整する必要があります。
2型糖尿病患者への適応
2型糖尿病では最初は経口血糖降下薬(飲み薬)による治療が検討されることが多いです。
しかし血糖値が十分にコントロールできない場合や何らかの事情によりインスリン療法が必要になった場合、ライゾデグ配合を含むインスリン治療に移行する選択肢があります。
特に次のような状況では医師がインスリン療法を推奨することがあります。
- 複数の経口血糖降下薬で十分な血糖コントロールが得られない
- 腎機能や肝機能の低下などで経口薬の使用が困難
- 重度の感染症や外科的手術などで一時的に血糖管理を強化する必要がある
ライゾデグ配合は基礎分泌と追加分泌を1本でまかなう特性があるため、よりシンプルな手技で治療が進められる可能性があります。
ただし、治療の際には食事指導や運動療法の見直しも同時に行うことが望ましいです。
生活リズムが安定している方
ライゾデグ配合は基礎と追加の両方を含むため生活リズムが大きく乱れると使いこなしが難しくなる可能性があります。
朝起床時間が一定で3食しっかり摂る習慣がある方にはインスリンのタイミングも合わせやすくなるため治療を続けやすいです。
一方、夜勤が多いなど昼夜逆転の生活リズムの方、食事時間がバラバラの方は注射のタイミングを柔軟に調整しなければならず注意が必要です。
以下の表はライゾデグ配合を検討する上で目安となるポイントです。
個々の事情によって合わない場合もあるため医師に相談して総合的に判断してください。
項目 | 向いているケース | 注意すべきケース |
---|---|---|
食事時間の規則性 | 毎日ほぼ一定の時間に食事を摂る方 | 不規則勤務や不規則な食事が常態化している方 |
活動量の変動 | 週単位や月単位で活動量のパターンが安定している方 | 仕事や生活環境で活動量が極端に変わる方 |
自己血糖測定の頻度 | 定期的に測定し管理できる方 | 血糖値の管理が苦手で測定をしないことが多い方 |
他の合併症の状態 | 重大な合併症がなく、インスリン療法を受けやすい方 | 重度の腎障害や肝障害などでインスリン調整が難しい方 |
妊娠中・授乳中の使用
妊娠中や授乳中の使用については母体および胎児・乳児への影響の観点から非常に慎重な検討が行われます。
糖尿病の管理が母子の健康に影響することは事実ですが、どのようなインスリン製剤を使うかは医師の判断に委ねられます。
妊娠中や授乳中はホルモンバランスも変化しやすく血糖値の変動が激しくなる場合もあります。
そのため必ず主治医と相談しながらライゾデグ配合を含む治療方針を決定することが大切です。
ライゾデグ配合の治療期間
インスリン療法は一般的に中長期的な視野で行われることが多いです。
ライゾデグ配合を使用する期間も患者さんの病状や血糖値の経過、合併症の状況などを踏まえて総合的に判断します。
ここでは治療期間に関する考え方や継続的なチェックポイントについて説明します。
短期的な導入から長期使用まで
血糖値が急激に高くなっている状態(急性期)では短期的に血糖値を下げるためにインスリン療法を導入するケースがあります。
その後は血糖値が安定してきたら経口薬に戻す、もしくはインスリン製剤の種類を変えて投与量を調整するといった流れをたどる場合もあります。
一方、1型糖尿病の患者さんなど膵臓のインスリン分泌がほぼ期待できない場合は生涯にわたってインスリン療法を継続します。
ライゾデグ配合の場合も以下のような観点で治療期間を検討することが多いです。
- 1型糖尿病の場合:長期的な使用が中心
- 2型糖尿病の場合:血糖コントロール状況に応じて短期~長期まで柔軟に対応
定期的な血糖値の評価
継続的なインスリン療法では定期的に血糖値を測定して過不足をチェックします。
具体的には下記のような指標や検査を行うことが多いです。
- 毎日の自己血糖測定(SMBG)
- HbA1c(過去1~2か月の血糖値の平均を反映)
- ケトン体や尿糖の測定(必要に応じて)
HbA1cの数値が目標範囲を持続的に維持できている場合は同じ治療方針を継続する場合が多いです。
逆に目標を大きく逸脱してしまう場合は他のインスリン製剤への切り替えや追加の経口薬を考慮するケースがあります。
表で治療期間中に定期確認する主な項目をまとめると下記のようになります。
確認項目 | 確認頻度 | 目的 |
---|---|---|
血糖値(SMBG) | 毎日~週単位 | 日常的な血糖値変動を把握 |
HbA1c | 1~3か月に1回 | 中期的な血糖コントロール状況の評価 |
体重・BMI | 定期受診ごと | 過度な体重増減の早期発見 |
血圧・脂質プロファイル | 定期受診ごと | 合併症リスクの早期発見と管理 |
日常生活の変化 | 随時(必要に応じて) | 食生活や運動習慣、ストレス状況を把握 |
目標達成後の方針転換
血糖コントロールが大きく改善して経口薬や生活習慣の改善だけでも血糖値を維持できるようになった場合は主治医が判断してインスリン製剤の使用を中止、または減量する方針になるケースもあります。
特に2型糖尿病の場合で体重管理や食事療法がうまくいき、膵臓が分泌するインスリンの効果が回復してきたと認められるときに検討される傾向です。
しかし、自己判断でインスリン療法を中断することは危険です。
必ず医療機関を受診して医師と相談したうえで方針を決定してください。
中断後の再開
一度インスリン療法を中断した場合でも状態が悪化して血糖値が再び上昇した場合はインスリン療法に戻す必要があります。
ライゾデグ配合を含むインスリン治療の再開基準は個々の患者さんの病状によって変わります。
そのため、症状がぶり返さないように生活習慣の維持や定期検査が大切です。
インスリンデグルデク・インスリンアスパルト配合の副作用・デメリット
ライゾデグ配合は安全性の高い製剤ですが、インスリン療法には副作用やデメリットも存在します。
使用を開始する前にメリットだけでなくリスクや注意点も把握しておくことで、より安全に治療を続けることができます。
低血糖エピソード
インスリン療法全般に共通する大きなリスクとして低血糖が挙げられます。
インスリン注射が効きすぎたり、食事量が少なすぎたり、運動を激しく行った場合などに血糖値が急激に下がる恐れがあります。
軽度の低血糖ならブドウ糖や甘い飲み物で対処可能ですが、重症化すると意識障害に至る場合があるため注意が必要です。
以下のリストは低血糖を予防するために考慮したい行動です。
- 定期的に血糖値を自己測定してデータを記録する
- 食事の摂取タイミングと量を一定に保つよう心がける
- インスリン注射の量や回数を活動量に応じて調整する
低血糖の頻度が多いと感じたら医師に相談しインスリンの用量・注射タイミングの見直しを検討することが有用です。
体重増加
インスリンはブドウ糖を体内の細胞に取り込みやすくし、結果的に栄養分を効率的に吸収させる作用を持ちます。
そのため、インスリン療法を行うと体重が増えやすくなる傾向です。
これは身体に必要なエネルギーがしっかり取り込まれている証拠でもありますが、過度な体重増加は高血圧や脂質異常症などを招くリスクを高めるので注意が必要です。
体重増加を抑えるためには次の点を考慮しましょう。
行動 | 目的 |
---|---|
食事制限を行わずバランスを整える | 偏った食事による栄養不足や極端な血糖変動を防ぐ |
適度な運動を習慣化する | エネルギー消費を高め、体重管理を支援 |
定期的に体重測定を行う | 変化を早期に察知し、医師と相談しやすくする |
むやみにカロリーを抑えすぎると低血糖のリスクが高まるため、専門家の指導を受けつつ食事内容や運動習慣を調整することが望ましいです。
注射部位の皮下脂肪組織変化
インスリン注射を繰り返し同じ部位に行うと皮下脂肪組織が硬くなったり、しこりができたりするリポハイパートロフィーという現象が起こる可能性があります。
注射の効果が安定しにくくなったり、見た目の問題が出てきたりすることもあります。
これを防ぐためには注射部位をこまめにローテーションすることが大切です。
アレルギー反応
非常に稀ですが、インスリンや添加物に対してアレルギー反応を起こす場合があります。
皮膚の発疹、かゆみ、呼吸困難などの症状が出た場合は速やかに医療機関を受診して対処が必要です。
代替治療薬
ライゾデグ配合は基礎インスリンと追加インスリンを1本でカバーできるメリットがあります。
その反面、患者さんによっては他の治療薬や製剤が適している場合もあります。
ここではライゾデグ配合以外の治療選択肢を紹介し、それぞれの特徴を比較します。
他の配合インスリン
インスリン製剤には基礎と追加を混合したバイフェーシック製剤などが存在します。
これらは従来から多くの臨床で使われてきました。
具体的にはインスリンリスプロとNPHインスリンを混合した製剤やインスリンアスパルトとプロタミン結晶化インスリンアスパルトを混合した製剤などがあります。
混合インスリンの場合は一定割合で混ぜ込まれているため、細かい比率調整は難しいものの、朝夕の2回投与などで比較的シンプルに血糖管理を行えます。
一方、ライゾデグ配合は超長時間作用型と超速効型の組み合わせで、24時間を通じて作用が安定しつつ食後ピークもカバーする点がやや異なる特徴です。
基礎インスリンと追加インスリンを別々に使用する
インスリン製剤をそれぞれ個別に使い分ける方法も一般的です。
たとえばインスリングラルギンやインスリンデグルデクなどの長時間作用型インスリンで基礎分泌を補います。
また、インスリンアスパルトやインスリンリスプロで食事時の追加分泌を補います。
この方法は注射回数が増える一方で、基礎インスリンの量と追加インスリンの量をより細かく調節できる利点があります。
以下のようなリストが基礎・追加を別々に使うメリットです。
- 個人の生活習慣や血糖値に合わせて細かい調整が可能
- 低血糖リスクや高血糖リスクをより緻密に管理できる
- 食事内容や時間に応じて追加インスリンの量を変えられる
多くの注射回数が気にならない方、もしくは不規則な食生活で微調整が必要な方にとって、一つの選択肢として検討されるケースがあります。
経口血糖降下薬との併用
2型糖尿病の場合、経口血糖降下薬やGLP-1受容体作動薬などと組み合わせて使用することもよくあります。
これらの薬剤である程度血糖を抑えつつ、不足分をインスリンで補う形です。
患者さんの腎機能や体重、合併症などに合わせて組み合わせが異なります。
インスリン単独療法ではなく、併用療法を行うことでインスリンの用量を減らして体重増加リスクを抑える方法をとる場合もあります。
ただし併用療法では薬剤同士の相互作用や副作用に注意が必要なため、医師や薬剤師に相談してください。
新しい注射薬との比較
近年登場しているGLP-1受容体作動薬などの注射製剤はインスリン分泌を促進したり食欲抑制をもたらすことで血糖コントロールを支援します。
インスリンとは作用機序が異なるためインスリン治療だけでは十分でない場合に併用されることもあります。
ライゾデグ配合との比較ではどの程度血糖値を下げたいか、体重をどのようにコントロールしたいか、といった個人の目標によって選択が変わってきます。
併用禁忌
ライゾデグ配合は他の薬剤との組み合わせや既往症によっては使用に注意を要する場合があります。
ここでは代表的な併用禁忌や注意が必要となるケースを概説します。
実際の治療方針は医師の判断に委ねられますが、知識として把握しておくことは重要です。
他のインスリン製剤との重複使用
すでに基礎インスリンや即効型インスリンを単独で使用している場合ではライゾデグ配合と重複投与すると低血糖リスクが高まる恐れがあります。
特に超長時間作用型インスリンを併用すると24時間以上インスリン効果が重なる可能性があり、血糖値が過度に下がるリスクが高いです。
医師は患者さんの状況を見ながら重複投与を避けるように投与計画を立てます。
特定の病態や合併症
重度の肝障害や腎障害のある患者さんはインスリン代謝や排泄が変化するため厳重な注意が必要です。
インスリン療法自体を禁止するわけではありませんが、用量調整が難しくなる場合があります。
また、下記のような疾患を抱える方はインスリンの投与方針について慎重に検討される傾向があります。
- 重度の心不全
- 末期腎不全
- 重度の肝機能低下
こういった背景がある場合、主治医は血液検査や身体所見を踏まえて安全に使用できるかどうかを総合的に判断します。
自己判断で中断や変更を行わずに必ず医療機関で相談してください。
血糖降下作用を増強する薬との併用
一部の糖尿病治療薬やサプリメントはインスリンの効果を増強させる可能性があります。
たとえばスルホニル尿素薬などの経口血糖降下薬とインスリン製剤を併用すると、低血糖のリスクが上がる場合があります。
医師は血糖値やHbA1cの状況を見ながら薬剤の処方を調整します。
自己判断で市販薬やサプリを使うと思わぬ低血糖を引き起こすリスクがあるため注意してください。
アルコール摂取との関係
アルコールは血糖値の変動に影響を与えます。
大量の飲酒は肝臓での糖新生を抑制して低血糖を引き起こしやすくします。
一方、甘いカクテルなどは血糖を一時的に上昇させる場合があります。
ライゾデグ配合を使用中にアルコールを嗜む場合は医師や栄養士に相談しながら適切な量とタイミングを考慮すると安心です。
ライゾデグ配合の薬価
医療費を考える上で薬価は大切な要素です。
ライゾデグ配合は保険診療で使用する場合は医療保険の規定に従って決まった薬価が適用されます。
ただ、自己負担額は患者さんの保険の種類や年齢、所得によって異なります。
ここでは薬価の目安とコストを考慮する際のチェックポイントを解説します。
ライゾデグ配合の薬価と保険適用
ライゾデグ配合の薬価は容量や濃度によって異なります。
保険診療で処方される場合は処方せんの内容に応じた点数が医療機関で算定されます。
それに保険者が一定の割合(一般的には7割か8割など)を負担し、残りの自己負担分を患者さんが支払う仕組みです。
高齢者医療制度や障害者医療制度など特別な制度で自己負担が減免されるケースもあります。
月々の治療費の目安
インスリン療法では薬剤費だけでなく、注射針や自己血糖測定器、採血スティックなどの費用もかかります。
ライゾデグ配合を使用する場合はペン型注入器を使うことが多いため針や消耗品のコストが発生します。
月々の治療費はインスリンの投与量や注射回数、血糖測定の頻度によって異なるため一概に言えませんが、以下のような要素を考慮すると大まかな見込みを立てやすくなります。
- 1日のインスリン必要量(単位)
- 使用する注射針の本数
- 自己血糖測定の回数と検査試薬の費用
- 保険の自己負担割合
治療開始前や治療変更時には医療機関の窓口や薬局で見積もりを尋ねると、コスト意識を持ったうえで治療に取り組みやすくなります。
ライゾデグ配合を含む治療において患者さんが考慮したい費用の一覧を示します。
個人差がありますが、参考としてご覧ください。
費用項目 | 内容 |
---|---|
インスリン製剤の費用 | ライゾデグ配合などの薬剤費用 |
針・注射関連の費用 | ペン型注入器の針やアルコール綿など |
自己血糖測定関連の費用 | 血糖測定器本体、センサー、ランセットなど |
医療機関受診・検査費用 | 血液検査や診察料、指導管理料など |
管理栄養士との面談費用 | 必要に応じて食事相談を行う場合の費用 |
費用面での工夫
インスリン治療は継続性が重要です。
費用面が負担で受診や治療を中断する事態を避けるため、社会保障制度の活用やジェネリック医薬品の利用(該当の製剤があれば)も検討材料になります。
また、高額療養費制度などを利用できる場合、一定の自己負担額を超えた分が払い戻されるため経済面の不安を和らげられる可能性があります。
わからないことがあれば医療ソーシャルワーカーや市区町村の窓口に相談してください。
ライゾデグ配合を継続する場合の視点
ライゾデグ配合は基礎と追加の2種類のインスリンを1本化しているため、医師や薬剤師からは「他の2本使い分けの場合と比べたコスト差」に関しても説明があるかもしれません。
治療効果に加え、負担額を含めたトータルバランスで納得したうえで治療を継続することが大切です。
以上、インスリンデグルデク・インスリンアスパルト配合(ライゾデグ配合)の薬価や費用面のポイントを解説しました。
治療効果が期待できる一方で、コスト面も含めて総合的に検討し、疑問点は必ず主治医や薬剤師に尋ねるようにしてください。
特に経済的な理由で治療を諦めることがないように利用できる制度やサポートを幅広く把握することが望ましいです。
以上