代謝疾患の一種である糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)とは、長期間の高血糖状態により網膜の血管が障害を受ける合併症のことです。

この疾患は、初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行していることがあります。

糖尿病網膜症は、視力低下や失明につながる可能性がある深刻な眼の病気です。

糖尿病患者さんの中で、罹病期間が長くなるほど発症リスクが高まると言われています。

目次

病型

糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)は、その進行度合いによって異なる特徴を示し、患者さんの視力や生活の質に大きな影響を与える可能性があります。

糖尿病網膜症の進行段階

糖尿病網膜症は、その進行度合いによって主に三つの病型に分類され、各段階で網膜の状態や血管の変化が異なることが知られています。

これらの病型は、単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症と呼ばれ、それぞれ特徴的な所見や合併症のリスクが異なることが医学的に明らかになっています。

病型の理解は、患者さんの状態を把握し、今後の経過を予測する上で不可欠な要素となり、適切な治療方針の決定や生活指導にも大きく影響します。

病型主な特徴
単純糖尿病網膜症毛細血管瘤、点状出血
前増殖糖尿病網膜症軟性白斑、網膜内細小血管異常
増殖糖尿病網膜症新生血管、硝子体出血

各病型の特徴を理解することで、糖尿病網膜症の進行状況をより正確に把握し、適切な対応や治療の選択につなげることができます。

次に、それぞれの病型について詳しく見ていき、各段階での特徴的な所見や患者さんへの影響について解説します。

単純糖尿病網膜症の特徴

単純糖尿病網膜症は、糖尿病網膜症の初期段階として位置づけられ、この時期に適切な対応を行うことで、より重症な状態への進行を遅らせる可能性があります。

この段階では、網膜の毛細血管に微小な変化が生じ始め、眼底検査によって特徴的な所見が観察されることがあります。

具体的には、以下のような特徴が観察されることがあります。

  • 毛細血管瘤(細い血管のこぶ状の膨らみ)
  • 点状出血(小さな出血斑)
  • 硬性白斑(脂質の沈着)

これらの変化は、患者さん自身が気づくことは難しく、定期的な眼底検査によって発見されることが多いのが特徴であり、自覚症状がないまま病状が進行する可能性があるため注意が必要です。

単純糖尿病網膜症の段階では、視力への影響は比較的軽度であることが多いですが、早期発見と適切な血糖コントロールが、病状の進行を遅らせる上で重要であり、患者さんの生活の質を長期的に維持するために欠かせません。

このステージでは、血糖値の管理に加えて、定期的な眼科検診を受けることが推奨され、生活習慣の改善や適切な食事療法、運動療法なども併せて行うことが望ましいとされています。

前増殖糖尿病網膜症の特徴

前増殖糖尿病網膜症は、単純糖尿病網膜症から進行した状態を指し、この段階では網膜の血管障害がより顕著になり、患者さんの視力にも影響を及ぼし始める可能性があります。

この段階では、網膜の血管障害がより顕著になり、網膜の機能に影響を及ぼし始め、より厳密な管理と定期的な検査が必要となります。

所見説明
軟性白斑網膜の虚血を示す綿花状の白斑
網膜内細小血管異常異常な血管の拡張や蛇行
静脈異常静脈のビーズ状拡張や蛇行

前増殖糖尿病網膜症では、網膜の虚血状態が進行し、軟性白斑と呼ばれる綿花状の白斑が出現し、これは網膜の血流障害が進行していることを示す重要なサインとなります。

また、網膜内細小血管異常(IRMA)や静脈の異常(ビーズ状拡張や蛇行)も観察されることがあり、これらの変化は網膜の血流障害が進行していることを示すサインであり、増殖糖尿病網膜症への移行リスクが高まっていることを意味します。

この段階では、より厳密な血糖管理と定期的な眼科検診が求められ、患者さんの生活習慣や食事内容、運動量などにも細心の注意を払う必要があります。

患者さんは、視力の変化や目の異常を感じた際には、速やかに眼科を受診することが大切であり、早期の対応が視力の保護につながる可能性があります。

増殖糖尿病網膜症の特徴

増殖糖尿病網膜症は、糖尿病網膜症の中で最も進行した段階を指し、この段階に至ると、網膜の虚血状態がさらに悪化し、新生血管の形成が始まるなど、重篤な合併症のリスクが高まります。

この段階に至ると、網膜の虚血状態がさらに悪化し、新生血管の形成が始まり、これらの新生血管は非常に脆弱で出血しやすい特徴を持っています。

増殖糖尿病網膜症の主な特徴として、以下が挙げられます。

  • 新生血管の形成(網膜、視神経乳頭、虹彩など)
  • 硝子体出血
  • 網膜剥離

新生血管は非常に脆弱で、容易に出血を起こす傾向があり、これが硝子体出血の主な原因となります。

硝子体出血が発生すると、突然の視力低下や飛蚊症といった症状が現れることがあり、患者さんの日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

合併症発生機序
硝子体出血新生血管からの出血
網膜剥離線維血管増殖組織の収縮
血管新生緑内障虹彩新生血管による眼圧上昇

増殖糖尿病網膜症では、これらの合併症により重度の視力障害や失明のリスクが高まり、患者さんの生活の質に深刻な影響を与える可能性があります。

この段階では、眼科的介入が必要となることが多く、患者さんの生活の質を維持するためには早期の対応が望ましいとされ、場合によっては手術的治療も検討される必要があります。

糖尿病網膜症の主症状と進行段階別の特徴

糖尿病網膜症の症状は、初期段階では自覚しにくいという特徴がありますが、病状の進行に伴い、患者さまの視力や生活の質に大きな影響を及ぼす可能性がある様々な症状が現れる傾向にあります。

しかしながら、病状の進行に伴い、以下のような症状が現れる傾向にあります。

  • 視力の低下
  • かすみ目
  • 飛蚊症(目の前を虫が飛んでいるように見える)
  • 視野の一部が欠ける

これらの症状は、網膜の血管障害が進行するにつれて顕著になっていきますが、初期段階では気づきにくいため、定期的な眼科検診が重要となります。

患者さまが日常生活の中でこれらの症状にお気づきになった際には、速やかに眼科専門医への受診をお勧めします。

症状特徴
視力低下徐々に進行、急激な低下も
かすみ目網膜浮腫による
飛蚊症硝子体出血の初期症状
視野欠損網膜剥離の可能性

単純糖尿病網膜症の症状

単純糖尿病網膜症は、糖尿病網膜症の初期段階として位置づけられており、この段階では患者さまが自覚症状を感じることは稀であり、定期的な眼底検査によって発見されることが多いのが特徴です。

しかしながら、医学的には以下のような変化が網膜に生じます。

  • 毛細血管瘤(網膜の小さな血管のこぶ状の膨らみ)
  • 点状出血(網膜上の小さな出血斑)
  • 硬性白斑(脂質の沈着による白い斑点)

これらの変化は、患者さまの視力にはほとんど影響を及ぼさないことが多く、日常生活に支障をきたすことは稀ですが、病状の進行を示す重要なサインであるため、定期的な検査が不可欠となります。

前増殖糖尿病網膜症の症状

前増殖糖尿病網膜症では、単純糖尿病網膜症よりも進行した状態となり、網膜の血管障害がより顕著になり、患者さまの視力や日常生活に影響を及ぼし始める可能性が高くなってきます。

この段階では、以下のような症状が現れる可能性があります。

  • 視力の変動
  • 夜間視力の低下
  • 色覚異常

これらの症状は、網膜の血流障害が進行していることを示すサインであり、患者さまの日常生活に影響を及ぼし始める段階ですが、適切な対応を取ることで、さらなる進行を抑制できる可能性があります。

症状説明
視力の変動網膜浮腫の程度により変化
夜間視力低下網膜の機能低下による
色覚異常網膜の色素上皮細胞の障害

前増殖糖尿病網膜症の段階では、医学的には以下のような所見が観察されます。

  • 軟性白斑(網膜の虚血を示す綿花状の白斑)
  • 網膜内細小血管異常(IRMA)
  • 静脈のビーズ状拡張や蛇行

これらの変化は、網膜の血流障害が進行していることを示す重要なサインであり、増殖糖尿病網膜症への移行リスクが高まっていることを意味しますが、適切な管理によってさらなる進行を抑制できる可能性があります。

増殖糖尿病網膜症の症状

増殖糖尿病網膜症は、糖尿病網膜症の中で最も進行した段階であり、患者さまの視力に重大な影響を及ぼす可能性が高く、日常生活に著しい支障をきたす可能性がある顕著な症状が現れることがあります。

この段階では、患者さまの視力に重大な影響を及ぼす可能性が高く、以下のような顕著な症状が現れることがあります。

  • 突然の視力低下
  • 視野の一部が欠ける
  • 飛蚊症の悪化

これらの症状は、新生血管の形成や出血、網膜剥離などの重篤な合併症によって引き起こされ、患者さまの日常生活に深刻な影響を与える可能性がありますが、早期発見と適切な対応によって視力の維持や回復が可能な場合もあります。

増殖糖尿病網膜症の主な特徴として、以下が挙げられます。

  • 新生血管の形成(網膜、視神経乳頭、虹彩など)
  • 硝子体出血
  • 網膜剥離

これらの症状は、患者さまの視力に重大な影響を及ぼし、日常生活に著しい支障をきたす可能性がありますが、適切な治療を受けることで、視力の維持や回復が期待できる場合もあります。

合併症主な症状
硝子体出血突然の視力低下、飛蚊症
網膜剥離視野欠損、視力低下
血管新生緑内障眼痛、頭痛、視力低下

糖尿病網膜症の原因

糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)は、長期間の高血糖状態が主な原因となって発症する眼の合併症です。

高血糖による血管障害

糖尿病網膜症の主な原因は、長期間の高血糖状態による網膜血管の障害であり、この状態が継続することで網膜の微小血管に様々な変化が生じ、最終的に視力低下や失明のリスクを高める可能性があります。

高血糖状態が続くと、血管壁が脆弱化し、網膜の毛細血管に様々な変化が生じます。

これらの変化には、以下のようなものがあります。

  • 血管壁の透過性亢進
  • 血管内皮細胞の機能障害
  • 血液凝固系の異常

これらの変化が複合的に作用し、網膜の血流障害や組織の低酸素状態を引き起こすことで、糖尿病網膜症の発症につながり、患者さんの視力や生活の質に大きな影響を及ぼす可能性があります。

血管変化影響
透過性亢進網膜浮腫
内皮細胞障害血流障害
凝固系異常微小血栓形成

酸化ストレスと炎症反応

高血糖状態は、体内での酸化ストレスの増加や慢性的な炎症反応を引き起こし、これらの要因が複雑に絡み合って糖尿病網膜症の発症や進行に重要な役割を果たしていることが、近年の研究によって明らかになってきています。

酸化ストレスと炎症反応は、以下のような影響を及ぼします。

  • 網膜細胞の機能障害
  • 血管新生因子の産生促進
  • 網膜神経細胞のアポトーシス

これらの変化が複合的に作用することで、網膜の構造や機能に悪影響を与え、糖尿病網膜症の進行を加速させる可能性があり、患者さんの視力保護のためには、これらの要因にも注目する必要があります。

遺伝的要因とその他のリスク因子

糖尿病網膜症の発症には、遺伝的要因も関与していることが知られており、一卵性双生児を対象とした研究では、糖尿病網膜症の一致率が高いことが報告されているため、特定の遺伝子が発症リスクに影響を与える可能性が示唆されています。

また、以下のような要因も糖尿病網膜症のリスクを高める可能性があります。

  • 糖尿病罹患期間
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 喫煙
  • 肥満
リスク因子影響
罹患期間長期化で発症リスク上昇
高血圧血管障害を加速
脂質異常症血管壁への脂質沈着

これらの要因が複合的に作用することで、糖尿病網膜症の発症リスクや進行速度に影響を与える可能性があり、患者さん一人ひとりの状況に応じた総合的な管理が重要となります。

糖尿病網膜症の進行メカニズム

糖尿病網膜症は、その進行度合いによって単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症の3つの病期に分類され、各病期で特徴的な変化が見られることから、病状の進行を適切に評価し、適切な対応を行うことが可能となります。

各病期での主な変化は以下の通りです。

単純糖尿病網膜症

  • 毛細血管瘤の形成
  • 網膜出血
  • 硬性白斑の出現

前増殖糖尿病網膜症

  • 軟性白斑の出現
  • 網膜内細小血管異常(IRMA)
  • 静脈異常

増殖糖尿病網膜症

  • 新生血管の形成
  • 線維血管増殖膜の形成
  • 牽引性網膜剥離

これらの変化は、高血糖状態が持続することで徐々に進行していき、各段階で適切な対応を取ることが、視力保護の観点から非常に重要となります。

病期主な変化
単純毛細血管瘤、出血
前増殖軟性白斑、IRMA
増殖新生血管、剥離

以上のように、糖尿病網膜症の原因は複雑で多岐にわたり、高血糖状態による血管障害が主な要因ですが、酸化ストレスや炎症反応、遺伝的要因、その他のリスク因子など、様々な要素が複合的に作用して発症や進行に関与しています。

糖尿病網膜症の診察と診断プロセス

初診時の問診と基本的な眼科検査

糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)の診察は、患者様の詳細な病歴聴取から始まり、医師は糖尿病の罹患期間、血糖コントロールの状態、他の合併症の有無などについて丁寧に聞き、患者様の全身状態と眼の状態を総合的に把握します。

医師は、糖尿病の罹患期間、血糖コントロールの状態、他の合併症の有無などについて丁寧に問診します。

初診時には、以下のような基本的な眼科検査を実施します。

  • 視力検査
  • 眼圧測定
  • 細隙灯顕微鏡検査

これらの検査により、患者様の眼の全体的な状態を把握し、糖尿病網膜症の有無や程度を評価する基礎情報を得ることができ、さらに詳細な検査の必要性を判断する上で重要な役割を果たします。

検査項目目的
視力検査視機能の評価
眼圧測定緑内障のスクリーニング
細隙灯顕微鏡検査前眼部の観察

眼底検査と光干渉断層撮影(OCT)

糖尿病網膜症の診断において、眼底検査は最も重要な検査の一つであり、医師は散瞳薬を用いて瞳孔を拡張し、眼底カメラや双眼倒像検眼鏡を使用して網膜の状態を詳細に観察し、微小な変化も見逃さないよう注意深く検査を行います。

医師は散瞳薬を用いて瞳孔を拡張し、眼底カメラや双眼倒像検眼鏡を使用して網膜の状態を詳細に観察します。

この検査により、網膜の微小血管瘤、出血、白斑などの特徴的な所見を確認することが可能となります。

光干渉断層撮影(OCT)は、網膜の断層画像を非侵襲的に取得する検査方法で、網膜の厚さや構造を詳細に評価することができ、特に黄斑部の状態を精密に観察することができます。

OCTを用いることで、以下のような情報を得ることが可能です。

  • 黄斑浮腫の有無と程度
  • 網膜内層の構造変化
  • 硝子体牽引の評価

これらの検査結果を総合的に判断し、糖尿病網膜症の病期分類や治療方針の決定に活用し、患者様に最適な管理方法をご提案します。

蛍光眼底造影検査(FA)

蛍光眼底造影検査(FA)は、網膜血管の状態をより詳細に評価するための検査方法で、この検査では患者様の腕の静脈に蛍光色素を注射し、特殊なカメラで網膜血管の様子を時間経過とともに撮影し、血管の異常や血液循環の状態を詳細に観察します。

この検査では、患者様の腕の静脈に蛍光色素を注射し、特殊なカメラで網膜血管の様子を時間経過とともに撮影します。

FAにより、以下のような情報を得ることができます。

  • 網膜血管の透過性亢進
  • 無灌流領域の評価
  • 新生血管の検出

FAは侵襲的な検査であるため、必要に応じて実施し、患者様の状態や他の検査結果を考慮しながら、適切に判断します。

FA所見臨床的意義
蛍光漏出血管透過性亢進
充盈遅延血流障害
過蛍光新生血管

広角眼底イメージング

近年、広角眼底イメージング技術の発展により、より広範囲の網膜領域を一度に観察することが可能となり、従来の検査方法では見落とされがちだった周辺部網膜の変化も詳細に評価できるようになりました。

この技術を用いることで、周辺部網膜の病変も含めて、網膜全体の状態を評価することができます。

広角眼底イメージングの利点には以下のようなものがあります。

  • 周辺部網膜病変の早期発見
  • 経時的な変化の追跡が容易
  • 患者様への説明がしやすい

これらの利点により、糖尿病網膜症の診断精度の向上や、患者様の理解促進に寄与することができ、より効果的な管理につながる可能性があります。

病期分類と診断

糖尿病網膜症の診断では、上記の検査結果を総合的に判断し、病期分類を行い、患者様の状態を正確に評価することで、適切な管理方針を立てることができます。

一般的に、以下の3つの病期に分類されます。

  1. 単純糖尿病網膜症
  2. 前増殖糖尿病網膜症
  3. 増殖糖尿病網膜症

各病期の特徴は以下の通りです。

病期主な所見
単純微小血管瘤、点状出血
前増殖軟性白斑、IRMA
増殖新生血管、線維増殖膜

これらの病期分類に基づいて、患者様の状態を適切に評価し、今後の管理方針を決定し、患者様と協力しながら最適な治療計画を立てていきます。

画像所見

糖尿病網膜症の画像診断は、病態の進行度を正確に評価し、適切な管理方針を決定するために欠かせません。

眼底写真による糖尿病網膜症の評価

糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)の画像診断において、眼底写真は基本的かつ重要な検査方法であり、網膜の血管や黄斑部、視神経乳頭などの構造を詳細に観察することができ、病変の有無や程度を評価するだけでなく、経時的な変化を追跡することも可能です。

眼底写真では、網膜の血管や黄斑部、視神経乳頭などの構造を詳細に観察することができ、病変の有無や程度を評価します。

単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症の各病期で特徴的な所見が現れるため、画像を注意深く観察することで病態の進行度を把握することができ、適切な管理方針の決定に役立ちます。

以下に、各病期で見られる主な眼底所見をご紹介します。

  • 単純糖尿病網膜症
    • 微小血管瘤
    • 点状出血
    • 硬性白斑
  • 前増殖糖尿病網膜症
    • 軟性白斑
    • 網膜内細小血管異常(IRMA)
    • 静脈異常
  • 増殖糖尿病網膜症
    • 新生血管
    • 網膜前出血
    • 硝子体出血

これらの所見を総合的に評価することで、適切な診断と経過観察が可能となり、患者さんの視力保護に向けた効果的な管理につながります。

病期主要所見特徴
単純微小血管瘤赤色の小さな点状隆起
前増殖軟性白斑綿花様の白色病変
増殖新生血管不規則な血管走行
Alyoubi, Wejdan L et al. “Diabetic Retinopathy Fundus Image Classification and Lesions Localization System Using Deep Learning.” Sensors (Basel, Switzerland) vol. 21,11 3704. 26 May. 2021,

所見:記載の通り多数の糖尿病性網膜症の所見が認められる。

蛍光眼底造影検査(FA)による血管異常の評価

蛍光眼底造影検査(FA)は、網膜血管の異常を詳細に観察するための重要な検査方法であり、眼底写真では捉えきれない微細な血管異常や血液循環の状態を評価することができ、糖尿病網膜症の進行度や治療効果の判定に大きく貢献します。

FAでは、蛍光色素を静脈注射し、時間経過とともに網膜血管の様子を撮影します。

この検査により、眼底写真では捉えきれない微細な血管異常や血液循環の状態を評価することができ、病態の詳細な把握が可能となります。

FAで観察される主な所見には以下のようなものがあります。

  • 微小血管瘤からの蛍光漏出
  • 無灌流領域
  • 新生血管からの蛍光漏出
  • 網膜色素上皮の窓抜け

これらの所見を詳細に分析することで、糖尿病網膜症の進行度や治療効果を評価することができ、個々の患者さんに適した管理方針を立てる上で重要な情報となります。

FA所見臨床的意義
蛍光漏出血管透過性亢進
無灌流領域虚血性変化
新生血管漏出増殖性変化
Nanegrungsunk, Onnisa et al. “Ophthalmic imaging in diabetic retinopathy: A review.” Clinical & experimental ophthalmology vol. 50,9 (2022): 1082-1096.

所見:嚢胞性パターンの糖尿病黄斑浮腫(DMO)が左眼に見られる。嚢胞性スペースからの淡い過蛍光が、嚢胞性スペース間の中隔からの低蛍光に対して観察される。

光干渉断層撮影(OCT)による網膜構造の評価

光干渉断層撮影(OCT)は、網膜の断層構造を非侵襲的に観察できる画像診断法であり、網膜の各層の厚さや形態を詳細に評価することができ、特に黄斑部の変化を捉えるのに有用で、糖尿病黄斑浮腫の診断や治療効果の判定に欠かせない検査となっています。

OCTを用いることで、網膜の各層の厚さや形態を詳細に評価することができ、特に黄斑部の変化を捉えるのに有用です。

糖尿病網膜症におけるOCT所見として、以下のようなものが挙げられます。

  • 黄斑浮腫
  • 網膜内嚢胞
  • 硬性白斑
  • 網膜層構造の乱れ

OCTは黄斑浮腫の定量的評価に特に有用であり、治療効果の判定や経過観察に欠かせない検査となっており、患者さんの視力予後を予測する上でも重要な情報を提供します。

OCT所見特徴
黄斑浮腫網膜の肥厚
網膜内嚢胞低反射腔の形成
硬性白斑高反射病変
Nanegrungsunk, Onnisa et al. “Ophthalmic imaging in diabetic retinopathy: A review.” Clinical & experimental ophthalmology vol. 50,9 (2022): 1082-1096.

所見:中心部に関与する糖尿病黄斑浮腫(CI-DMO)を有する左眼のスペクトラルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)Bスキャン。網膜内嚢胞性スペース、網膜内液、および高反射性の焦点が観察され、中心亜領域の厚さは560μmと測定された。

広角眼底イメージングによる周辺部網膜の評価

広角眼底イメージング技術の進歩により、従来の眼底写真では観察が困難だった周辺部網膜の状態を一度に評価することが可能となり、糖尿病網膜症の病変が好発する周辺部網膜の変化を詳細に観察することができ、より包括的な病態評価につながります。

この技術を用いることで、糖尿病網膜症の病変が好発する周辺部網膜の変化を詳細に観察することができ、早期の病変発見や治療方針の決定に役立ちます。

広角眼底イメージングで評価できる主な所見には以下のようなものがあります。

  • 周辺部の無灌流領域
  • 周辺部の新生血管
  • 網膜剥離

これらの所見を包括的に評価することで、糖尿病網膜症の病態をより正確に把握し、適切な管理につなげることができ、患者さんの長期的な視力保護に貢献します。

所見:増殖糖尿病網膜症を有する左眼の広視野(WF)蛍光眼底造影(FFA)。(A) FFAの早期相では、多数の微小動脈瘤(MAs)、網膜周辺の新生血管(NVE)、視神経乳頭の新生血管(NVD)、毛細血管の無灌流(CNP)、および不規則な黄斑無血管領域(FAZ)が観察される。(B) FFAの後期相では、MAs、NVE、およびNVDからの漏出が顕著である。

画像所見の経時的変化の重要性

糖尿病網膜症の管理において、画像所見の経時的変化を追跡することが大切であり、定期的に各種画像検査を実施し、所見の変化を比較することで、病態の進行や治療効果を適切に評価し、個々の患者さんに最適な管理方針を立てることができます。

定期的に各種画像検査を実施し、所見の変化を比較することで、病態の進行や治療効果を適切に評価することができます。

経時的変化の観察ポイントとしては、以下のようなものがあります。

  • 微小血管瘤の数や分布の変化
  • 網膜出血や白斑の増減
  • 黄斑浮腫の程度の変化
  • 新生血管の出現や退縮

これらの変化を総合的に判断することで、個々の患者さんに適した管理方針を立てることができ、視力維持や生活の質の向上につながる可能性があります。

糖尿病網膜症の治療法と回復への道のり

糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)の治療は、病期や症状の程度に応じて適切な方法が選択されます。

血糖コントロールの重要性

糖尿病網膜症の治療において、血糖コントロールは基本となる重要な要素です。血糖値を適切な範囲内に保つことで、網膜の血管障害の進行を抑制し、視力低下のリスクを軽減することができます。

血糖コントロールには、以下のような方法が用いられます。

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 経口血糖降下薬
  • インスリン療法

これらの方法を組み合わせることで、個々の患者様に最適な血糖管理が可能となります。

治療法主な目的
食事療法炭水化物摂取量の調整
運動療法インスリン感受性の改善
経口薬血糖値の低下
インスリン血糖値の厳密なコントロール

血糖コントロールは長期的な取り組みが必要であり、患者様の生活習慣の改善と医療従事者の支援が大切です。

単純糖尿病網膜症の治療

単純糖尿病網膜症の段階では、主に厳格な血糖コントロールと定期的な眼科検診が治療の中心となります。

この時期には、網膜の変化が比較的軽度であることが多いため、積極的な眼科的治療が必要となるケースは少ないです。

しかしながら、黄斑浮腫を伴う場合には、以下のような治療が考慮されることがあります。

  • 抗VEGF薬の硝子体内注射
  • ステロイド薬の硝子体内注射
  • 黄斑部レーザー光凝固術

これらの治療法は、個々の患者様の状態に応じて選択されます。

治療法期待される効果
抗VEGF薬血管透過性の改善
ステロイド炎症の抑制
レーザー局所的な浮腫の軽減

単純糖尿病網膜症の段階での治療は、主に進行の予防と早期介入を目的としています。

前増殖糖尿病網膜症の治療

前増殖糖尿病網膜症の段階では、網膜の虚血性変化が進行しているため、より積極的な治療介入が必要となることがあります。この時期の主な治療法には以下のようなものがあります。

  • 汎網膜光凝固術
  • 抗VEGF薬の硝子体内注射

汎網膜光凝固術は、網膜の酸素需要を減少させ、新生血管の形成を抑制する目的で行われます。一方、抗VEGF薬は血管新生を抑制し、網膜浮腫を改善する効果が期待されます。

これらの治療法は、患者様の状態や病変の程度に応じて選択されます。

治療法主な目的
汎網膜光凝固術新生血管形成の抑制
抗VEGF薬血管透過性の改善と新生血管抑制

前増殖糖尿病網膜症の治療は、増殖糖尿病網膜症への進行を防ぐことを主な目的としています。

増殖糖尿病網膜症の治療

増殖糖尿病網膜症の段階では、新生血管の形成や硝子体出血、網膜剥離などの重篤な合併症のリスクが高まるため、より積極的な治療介入が必要となります。主な治療法には以下のようなものがあります。

  • 汎網膜光凝固術
  • 抗VEGF薬の硝子体内注射
  • 硝子体手術

これらの治療法は、患者様の状態や合併症の有無によって選択されます。

硝子体手術は、硝子体出血や牽引性網膜剥離などの重度の合併症がある場合に考慮されます。

治療法適応
汎網膜光凝固術新生血管の退縮
抗VEGF薬新生血管の活動性抑制
硝子体手術重度の出血や剥離

増殖糖尿病網膜症の治療は、視力の維持や改善、そして失明のリスク軽減を目的としています。

治療効果と回復期間

糖尿病網膜症の治療効果や回復期間は、病期や個々の患者様の状態によって大きく異なります。一般的に、以下のような傾向が見られます。

  • 単純糖尿病網膜症血糖コントロールの改善により、数か月から1年程度で網膜所見の改善が見られることがあります。
  • 前増殖糖尿病網膜症汎網膜光凝固術や抗VEGF薬治療により、数週間から数か月で病変の安定化が期待できます。
  • 増殖糖尿病網膜症治療後の回復には個人差が大きく、数か月から1年以上かかる場合もあります。

治療の効果は、定期的な眼科検診や画像検査によって評価されます。

糖尿病網膜症の治療は、長期的な取り組みが必要です。血糖コントロールの維持や定期的な眼科検診の継続が、視力保護のために大切です。

各病期に応じた適切な治療法の選択と、患者様ご自身による自己管理の継続が、良好な治療成績につながる可能性があります。

糖尿病網膜症の治療に伴う副作用とリスク

糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)の治療は患者様の視力を保護し、生活の質を維持するために重要です。

同時に様々な副作用やリスクを伴う可能性があり、これらについて十分に理解することが、より安全で効果的な治療につながります。

抗VEGF薬硝子体内注射の副作用

抗VEGF薬の硝子体内注射は、糖尿病網膜症の治療において広く用いられる方法ですが、いくつかの副作用やリスクが報告されており、患者様の状態や治療の頻度によってはこれらのリスクに特に注意を払う必要があります。

主な副作用には以下のようなものがあります。

  • 眼圧上昇
  • 眼内炎
  • 網膜剥離
  • 硝子体出血

これらの副作用の多くは一過性であり、適切な管理により改善することがありますが、稀に重篤な合併症に発展する可能性もあるため、治療後の経過観察が重要となります。

副作用発生頻度
眼圧上昇比較的高頻度
眼内炎非常に低頻度
網膜剥離低頻度
硝子体出血低頻度

抗VEGF薬の全身への影響についても注意が必要です。稀に、脳卒中や心筋梗塞などの血栓塞栓性事象のリスクが増加する可能性が指摘されており、特に心血管系の既往がある患者様では、治療前後の全身状態の評価が重要となります。

ステロイド薬硝子体内注射の副作用

ステロイド薬の硝子体内注射は、抗炎症作用により網膜浮腫の改善に効果がありますが、特有の副作用が知られており、これらの副作用のリスクと治療効果のバランスを慎重に評価する必要があります。

主な副作用には以下のようなものがあります。

  • 眼圧上昇
  • 白内障の進行
  • 眼内炎

特に眼圧上昇と白内障の進行は、ステロイド薬使用に伴う比較的高頻度な副作用であり、長期的な視力への影響が懸念されるため、定期的な眼圧測定や水晶体の状態確認が重要となります。

副作用特徴
眼圧上昇持続的な上昇の可能性
白内障進行長期使用で高リスク
眼内炎稀だが重篤な合併症

ステロイド薬の使用に際しては、これらの副作用のリスクと治療効果のバランスを慎重に評価する必要があり、患者様の全身状態や他の眼疾患の有無なども考慮して、治療方針を決定することが重要です。

レーザー光凝固術の副作用とデメリット

レーザー光凝固術は、糖尿病網膜症の進行を抑制する効果的な治療法ですが、いくつかの副作用やデメリットが存在し、これらが患者様の日常生活に影響を与える可能性があるため、治療前の十分な説明と理解が必要となります。

主な副作用やデメリットには以下のようなものがあります。

  • 視野狭窄
  • 夜間視力の低下
  • 色覚異常
  • 黄斑浮腫の一時的な悪化

これらの副作用は、レーザー照射によって網膜組織の一部が破壊されることに起因し、特に広範囲の照射が必要な場合には、これらの副作用のリスクが高くなる傾向があります。

副作用影響
視野狭窄周辺視野の制限
夜間視力低下暗所での視力低下
色覚異常色の識別能力の変化

レーザー光凝固術後は、これらの副作用による日常生活への影響について、患者様に十分な説明と支援が必要であり、特に自動車運転や精密作業などに従事する患者様では、生活様式の変更が必要となる場合もあります。

硝子体手術のリスクと合併症

硝子体手術は、重度の糖尿病網膜症に対して行われる治療法ですが、侵襲的な処置であるため、様々なリスクと合併症が伴い、手術の複雑さや患者様の全身状態によって、これらのリスクの程度が変動する可能性があります。

主なリスクと合併症には以下のようなものがあります。

  • 術中・術後の出血
  • 網膜剥離
  • 眼内炎
  • 白内障の進行
  • 眼圧変動

これらの合併症は、手術の複雑さや患者様の全身状態によって発生リスクが変動し、特に血糖コントロールが不良な場合や、高血圧などの合併症がある患者様では、リスクが高くなる傾向があります。

合併症発生時期
出血術中・術後早期
網膜剥離術後早期〜晩期
眼内炎主に術後早期
白内障進行術後晩期

硝子体手術後は、長期的な経過観察が大切であり、定期的な受診を通じて、これらの合併症の早期発見と適切な対応が可能となります。

治療に伴う心理的負担

糖尿病網膜症の治療は、長期にわたることが多く、患者様に心理的な負担をかけることがあり、これらの心理的負担が治療の継続や効果に影響を与える可能性があるため、医療従事者は患者様の精神的なサポートにも配慮する必要があります。

心理的負担には以下のようなものがあります。

  • 治療の痛みや不快感への不安
  • 視力低下への恐怖
  • 頻回の通院による生活への影響
  • 治療費の経済的負担

これらの心理的負担は、患者様の生活の質に大きな影響を与える可能性があり、時には治療の継続を困難にする要因となることもあります。

医療従事者は、患者様の心理的側面にも配慮し、適切なサポートを提供することが重要であり、必要に応じて心理カウンセリングや社会福祉サービスの利用を検討することも有効です。

再発の可能性と予防の仕方

糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)は、慢性的な経過をたどる疾患であり、一度改善しても再発のリスクが常に存在します。

再発リスクの要因

糖尿病網膜症の再発リスクは、様々な要因によって影響を受けます。これらの要因を理解し、適切に管理することが、再発予防の第一歩となります。

主な再発リスク要因には以下のようなものがあります。

  • 血糖コントロールの不良
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 長期の糖尿病罹患期間
  • 喫煙

これらの要因は、互いに関連し合いながら、網膜血管への悪影響を及ぼす可能性があります。

リスク要因影響
血糖コントロール不良網膜血管障害の進行
高血圧血管壁への負荷増大
脂質異常症動脈硬化の促進

病期別の再発リスク

糖尿病網膜症の再発リスクは、病期によっても異なります。単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症の各段階で、再発のパターンや頻度が変わってくる可能性があります。

各病期における再発リスクの特徴は以下の通りです。

  • 単純糖尿病網膜症微小血管瘤の増加や出血の再発が見られることがあります。
  • 前増殖糖尿病網膜症軟性白斑の再出現や網膜内細小血管異常(IRMA)の進行が懸念されます。
  • 増殖糖尿病網膜症新生血管の再増殖や硝子体出血の再発リスクが高くなります。

これらの再発パターンを理解し、定期的な経過観察を行うことが大切です。

病期再発の特徴
単純微小血管瘤の増加
前増殖軟性白斑の再出現
増殖新生血管の再増殖

血糖コントロールの重要性

糖尿病網膜症の再発予防において、血糖コントロールは最も重要な要素の一つです。適切な血糖管理により、網膜血管への負担を軽減し、再発リスクを低下させることができます。

効果的な血糖コントロールのためには、以下のような取り組みが有効です。

  • 定期的な血糖測定
  • バランスの取れた食事療法
  • 適度な運動療法
  • 医師の指示に基づく薬物療法

これらの取り組みを継続的に行うことで、長期的な血糖コントロールの改善が期待できます。

HbA1c目標値再発リスク
7.0%未満低リスク
7.0-8.0%中程度リスク
8.0%以上高リスク

生活習慣の改善

糖尿病網膜症の再発予防には、包括的な生活習慣の改善が大切です。血糖コントロールだけでなく、他の危険因子にも注目し、総合的な健康管理を心がけることが望ましいです。

生活習慣改善の主なポイントには以下のようなものがあります。

  • 禁煙
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 十分な睡眠

これらの生活習慣の改善は、糖尿病網膜症の再発予防だけでなく、全身の健康維持にも寄与します。

生活習慣改善目標
運動週150分以上の中等度運動
睡眠1日7-8時間の質の良い睡眠
ストレス定期的なリラックス法の実践

定期的な眼科検診の重要性

糖尿病網膜症の再発を早期に発見し、適切な対応を取るためには、定期的な眼科検診が不可欠です。検診の頻度は、患者様の状態や病期によって異なりますが、一般的には年1-2回の受診が推奨されます。

定期検診では、以下のような検査が行われることがあります。

  • 視力検査
  • 眼底検査
  • 光干渉断層撮影(OCT)

これらの検査により、網膜の状態を詳細に評価し、再発の兆候を早期に発見することができます。

治療費

糖尿病網膜症の治療費用は病状の進行度や選択される治療法によって大きく異なります。

初診料は2,910円、再診料は750円ですが、検査費用や処置費用が加わると高額になることがあります。

レーザー治療では100,200〜159,600円、抗VEGF薬硝子体内注射では1回あたり116,630〜163,580円かかります。長期的な管理が必要なため、経済的負担を考慮した治療計画が重要です。

検査費用

検査項目費用(円)
眼底検査560円(片目)
OCT検査4,580〜6,580円

入院費用

詳しく述べると、日本の入院費計算方法は、DPC(診断群分類包括評価)システムを使用しています。
DPCシステムは、病名や治療内容に基づいて入院費を計算する方法です。以前の「出来高」方式と異なり、多くの診療行為が1日あたりの定額に含まれます。

主な特徴:

  1. 約1,400の診断群に分類
  2. 1日あたりの定額制
  3. 一部の治療は従来通りの出来高計算

表:DPC計算に含まれる項目と出来高計算項目

DPC(1日あたりの定額に含まれる項目)出来高計算項目
投薬手術
注射リハビリ
検査特定の処置
画像診断(投薬、検査、画像診断、処置等でも、一部出来高計算されるものがあります。)
入院基本料

計算式は下記の通りです。
「1日あたりの金額」×「入院日数」×「医療機関別係数※」+「出来高計算分」

例えば、14日間入院とした場合は下記の通りとなります。

DPC名: 糖尿病性増殖性網膜症 手術あり 手術処置等2なし 両眼
日数: 14
医療機関別係数: 0.0948 (例:神戸大学医学部附属病院)
入院費: ¥298,170 +出来高計算分

保険適用となると1割~3割の自己負担であり、更に高額医療制度の対象となるため、実際の自己負担はもっと安くなります。
なお、上記値段は2024年6月時点のものであり、最新の値段を適宜ご確認ください。

以上

参考にした論文