ご覧いただきありがとうございます。腫瘍マーカー検査は、血液や体液に含まれる特定の物質を調べることで、がんの存在や進行状況などの指標を得る方法です。

早期の段階で細胞の変化を見つけるための検査として活用され、必要に応じて追加の画像検査を行う場合もあります。

検査結果をどう受け止めればよいか、どの段階で受けると安心につながるのかなど、より具体的な情報を知りたい方も多いかと思います。

この記事では、腫瘍マーカー検査の基本から代表的な種類、それを受ける際の流れや注意点などを丁寧に解説します。判断材料としてお役に立てば幸いです。


腫瘍マーカー検査とは

腫瘍マーカー検査は、血液や尿などに含まれる特定の物質から、がんの存在や再発の可能性を推察する仕組みを持ちます。

数値の変化ががんに直結するわけではありませんが、他の検査と組み合わせることで有用な情報を得られます。

必要性を感じる場面は人それぞれですので、自身のリスクを把握しながら医療機関と相談し、安心につなげていただければと思います。

腫瘍マーカーの役割

腫瘍マーカーはがん細胞や、がんと関連の深い物質を数値で表します。がん細胞は変化すると通常とは異なる物質を分泌しやすく、これを活用するとある程度の目安をつかむことができます。

例えば、血液に含まれる腫瘍マーカーの量が上昇していたら、がん細胞の活動が活発になっている可能性を疑うことが可能です。

がんの早期発見との関係

腫瘍マーカー検査で全てのがんを確実に見つけるわけではありませんが、あらかじめ決めた基準より高い数値が示された場合、医師は追加の画像診断や組織検査を検討することが多いです。

通常の健康診断ではカバーしきれない面があるため、自分の身体を把握する方法として活用できます。

検査の重要性

がんの早期発見は治療方針の選択肢を広げるうえで重要です。腫瘍マーカー検査を定期的に組み込むことで、数値の変化に素早く気づける可能性が高まります。

特にがんの家族歴がある場合や、喫煙・飲酒の習慣などリスク要因が高い方は、医療機関と定期的に相談しながら受ける人も増えています。

検査結果が示す意味

腫瘍マーカーが高値だったからといって、必ずしもがんが存在するとは限りません。炎症や良性疾患など、他の原因によって数値が上昇する例もあります。

一方、数値が正常範囲であっても、がんが見つかるケースも否定できません。そのため、腫瘍マーカー検査だけで安心するのではなく、総合的な判断が大切です。


代表的な腫瘍マーカーの種類

腫瘍マーカーには多くの種類が存在しますが、代表的なものを押さえておくと医療機関での受診時にイメージしやすくなります。

がんの部位や特性に応じて使用する腫瘍マーカーが異なるため、検査内容を理解したうえで検討すると良いでしょう。

CEA

CEAは大腸がんや胃がん、肺がんなどの検査に用いることが多い腫瘍マーカーです。喫煙者や炎症性腸疾患などの場合も数値が高くなる可能性があります。

再発や治療効果を見ていく指標としても利用されています。

以下はCEAに関するおおまかな情報をまとめたものです。

CEAの主な特徴内容
主に関連があるがん大腸がん、胃がん、膵がん、肺がんなど
判定の目安約5ng/mLを基準とする例が多い
上昇する可能性がある疾患肝疾患、炎症性腸疾患、喫煙など
注意点たばこを吸う方はやや高めになる傾向

数値だけを頼りにするのではなく、画像診断や医師の診察と合わせて総合的に判断します。定期的なチェックによって経過を追うと、再発リスクを早めにとらえる手がかりになります。

AFP

AFPは肝臓がんの検査においてよく用いられる腫瘍マーカーの1つです。もともと妊娠中に胎児の肝臓で産生されるたんぱく質でもあるため、妊婦の場合は高くなることがあります。

肝臓がん以外にも、肝炎や肝硬変などでも上昇する可能性があります。

AFPについてまとめると以下のようになります。

AFPの主な特徴内容
主に関連があるがん肝臓がん、卵巣がん、精巣がんなど
判定の目安約10ng/mLを基準とすることが多い
上昇する可能性がある疾患慢性肝炎、肝硬変、妊娠など
注意点高値が必ずがんを意味するわけではない

肝炎ウイルスへの感染歴や肝機能障害がある方がAFP検査を活用するケースも多いです。変化を追うことで自分の肝臓の状態を把握することにつながります。

CA19-9

CA19-9は消化器系、特に膵がんや胆道がんのチェックに使われるマーカーです。膵がんは初期症状がわかりにくく、進行してから発見されることも珍しくありません。

CA19-9検査は膵がんのリスクを知るうえで参考となる場合がありますが、膵炎や胆嚢炎などでも上昇するため総合的な視点が重要です。

CA19-9については以下を参考にするとわかりやすいです。

CA19-9の主な特徴内容
主に関連があるがん膵がん、胆道がん、胆嚢がんなど
判定の目安約37U/mL前後を基準とする例が多い
上昇する可能性がある疾患膵炎、胆嚢炎、肝障害など
注意点一部の人は生まれつき産生できない場合もある

合併症の有無や生活習慣など、さまざまな要素をあわせて医療機関で検討すると安心です。とりわけ膵がんに関しては、早期発見が治療方針を大きく左右するため注目されています。

PSA

PSAは前立腺がんの検査で用いられ、男性に限定して測定されるマーカーです。前立腺がんだけでなく、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇する場合があります。

男性特有のがんとして比較的認知度が高いため、定期的にチェックを受ける方もいます。

PSAに関しては以下の点がポイントです。

PSAの主な特徴内容
主に関連があるがん前立腺がん
判定の目安一般的には4ng/mLを基準とすることが多い
上昇する可能性がある疾患前立腺肥大症、前立腺炎など
注意点加齢や前立腺の状態でも変化する

数値が高めだった場合は、画像検査や前立腺生検などを検討する流れになることが多いです。医師と相談しながら年齢やリスクに応じた検査頻度を決めると不安を軽減できます。

CA125

CA125は卵巣がんの検査で使われることが多いマーカーです。

女性特有のがんは、子宮がんや卵巣がんなど複数の種類がありますが、卵巣がんは症状がわかりにくいため、定期的な婦人科検診とあわせてCA125を確認することがあります。

ただし子宮内膜症や生理周期など、良性の要因でも上昇しやすい点には注意が必要です。

CA125のポイントを以下に示します。

CA125の主な特徴内容
主に関連があるがん卵巣がん
判定の目安約35U/mLを基準とする例が多い
上昇する可能性がある疾患子宮内膜症、妊娠、生理周期など
注意点良性疾患でも上昇する可能性が高い

婦人科系疾患に不安がある方は、早めに医療機関で相談し、他の検査と組み合わせて判断を行うと安心感につながります。


腫瘍マーカー検査の受け方

腫瘍マーカー検査は気軽に受けられるケースもあれば、ある程度の準備が必要な場合もあります。検査方法や結果の見方を知っておくと、実際に受けるときの負担が少なくなるでしょう。

がん検診や健康診断のオプションとして検討する人も少なくありません。

検査方法の概要

多くの場合は採血によって測定します。尿や体液を検査に用いる腫瘍マーカーもありますが、一般的には血液検査で行うケースが中心です。

採血の量はごく少量なので、大きな負担を感じる方はあまり多くありません。

検査全体の流れを見やすい形でまとめると、以下のようになります。

検査の流れ内容
1. 問診生活習慣や家族歴などを確認
2. 採血検体を採取(腕の静脈から)
3. 検査実施専門の機関や院内設備で分析
4. 結果報告数値とともに医師から説明を受ける
5. 必要に応じた追加検査画像診断や生検などを検討

このように、通常の血液検査と大きく変わらない手順で進めます。ただし、複数の腫瘍マーカーを同時に測定する際は、検査費用や保険適用の範囲が変わる場合があるため事前に確認しておくとよいでしょう。

必要な事前準備

基本的に大がかりな準備は必要ありません。ただし、医療機関によっては前日の夜から食事や飲み物に関する指示があるかもしれません。

空腹時の測定を好むケースもあるため、受付時に確認すると安心です。特に肝臓系の検査を含む場合はアルコール摂取を控えるよう案内を受けることもあります。

食事や生活習慣について、受診前に気をつけたいポイントを並べると次のようになります。

  • 前夜の過度な飲酒は避ける
  • 測定値に影響しそうな薬があるなら事前に報告する
  • 重度の運動は採血直前には控えるほうが望ましい
  • 女性の場合、生理周期や婦人科疾患の有無などを説明しておく

検査当日にあわてないために、これらを踏まえて準備するとスムーズです。

結果の見方

通常は数日から1週間程度で結果が出ます。数値が基準値範囲内であっても、まれにがんが見つかる場合がある点には留意が必要です。

また、1度高めに出たとしても、一時的な炎症やほかの要因が影響した可能性も否定できません。医師は問診や画像検査の結果などを総合的に判断して、追加の検査が必要かどうかを検討します。

他の検査との併用

腫瘍マーカー検査は単体での診断力が限定的な場合があるため、状況によっては超音波検査やCT検査、MRIなどの画像診断を併用すると精度が高まります。

特定の腫瘍マーカーが高値を示したら、その部位に対する検査を詳しく行うことが多いです。身体への負担や費用面を医療機関で相談しながら決めると良いでしょう。


腫瘍マーカー検査で意識したいポイント

腫瘍マーカー検査は便利な手法ですが、過大評価も過小評価も避けたいところです。どの程度の頻度で受けるか、日常生活で気をつける点は何かなど、理解を深めればより安心して検査に臨めます。

定期的な検査の大切さ

「一度検査したから大丈夫」と思い込むのは危険です。がん細胞は一定期間で変化し、短期間で進行する可能性もあります。

特にリスク要因が高い方(家族歴、喫煙習慣、飲酒習慣など)は、一定のスパンで数値を追うことで身体の変化を早めにとらえられるかもしれません。

定期検査のタイミングを考えるときは、半年ごとや1年ごとなど、自分の生活リズムに合わせて医療機関と話し合う方が多いです。

既往症がある場合や、50代以上になると検査頻度を上げる選択肢も検討するケースがあります。

がんリスクとの向き合い方

腫瘍マーカー検査は「自分のリスクを数値で把握できる」一助となりますが、数値だけに振り回されるのもよくありません。

結果を見て過度に不安になるのではなく、正確にリスクを把握することで生活習慣を改めるきっかけにする人もいます。仮に高めの数値が出ても、実際には良性の要因だったと判明する場合もあります。

生活習慣との関連

喫煙や飲酒、肥満、運動不足などの生活習慣はがんのリスクを高める要因として挙げられます。腫瘍マーカー検査を活用することで、生活習慣を見直すきっかけを得られるかもしれません。

例えば喫煙者の場合はCEAが高く出やすく、これを機に禁煙を検討したり、食事内容を改善したりする方もいます。

生活習慣の見直しを進める際に注目したい要素をいくつか挙げると、以下のようになります。

  • 喫煙:さまざまながんのリスクを高める
  • 飲酒:肝臓がんなど肝機能に関連するリスクを増加させる
  • 食生活:偏った食事や過度の脂質摂取は大腸がんリスクなどに関係
  • 運動:適度に継続すると免疫力維持や体調管理に役立つ

日常的にできる対策の積み重ねが、腫瘍マーカー数値やがんリスク低減につながる可能性があります。

医療機関と相談するメリット

腫瘍マーカー検査の結果が気になったときは、早めに医療機関に相談すると安心です。

個々人のリスクに応じて詳しい検査を行うべきかどうか、あるいは経過観察で良いのかなど、経験豊富な医師が判断することで無用な不安を減らせます。

必要に応じて紹介状を出してくれる場合もあり、専門性の高い検査や治療が受けられる体制が整っているところもあります。


腫瘍マーカー検査の流れと期間

腫瘍マーカー検査を受けようと決めたとき、どのような流れで進行するのかを把握しておくと安心です。

初めての方であれば検査にかかる期間や、結果がわかるまでの手順について具体的なイメージを持つのが大切になります。

初回相談から採血まで

最初に受診を決めたら、受付か医師の問診を通じて検査項目を決定します。リスクや悩みを具体的に伝えると、必要な腫瘍マーカーを提案してくれるでしょう。

検査日は、診療所によって即日採血が可能な場合と、予約が必要な場合に分かれます。採血自体は短時間で終わることがほとんどです。

初回相談の際に確認しておきたいポイントを以下にまとめます。

確認項目理由
受けたいマーカー自分の不安を伝えるため
保険適用の有無病気の疑いがあるか、単なるスクリーニングかで変わる
費用自費の場合、複数マーカーを受けると金額が増える
準備事項前日夜の食事制限や飲酒制限の有無

患者側から質問しやすい雰囲気があるとスムーズに準備ができます。

検査結果がわかるまで

採血してから結果報告までの期間は医療機関や検査項目数などによって異なります。早ければ数日、長くても1~2週間程度で報告されるケースが多いです。

医療機関によってはメールや電話で連絡する場合もあれば、直接来院を求めることもあります。

結果説明の受け方

結果を受け取ったら、医師から数値やそれに基づく所見の説明を受けることになります。数値が基準値を上回っている場合でも、すぐに深刻な状態とは限らないため慌てずに話を聞くことが大切です。

特に要チェックと判断された場合は、より詳しい検査が提案されます。

疑問点を整理しておくと、短い診察時間のなかでもしっかり説明を聞けます。メモを持参するとあとで落ち着いて振り返りやすくなります。

必要に応じた追加検査

腫瘍マーカー検査で高値が確認された場合、画像検査や内視鏡検査などを行うかどうかが検討されます。

本人が希望する場合には、さらに詳細な検査方法を紹介してもらえることがあるので、遠慮なく質問すると良いでしょう。重大な病変が疑われるときは大学病院や専門病院を紹介されるケースもあります。


よくある質問と答え

腫瘍マーカー検査に関しては、不安や疑問が尽きない方も多いかもしれません。

ここではいくつかの代表的な質問例を取り上げて、それに対する一般的な考え方を紹介します。受診を決める際の参考になれば幸いです。

Q
検査を受けるタイミング
A

自覚症状がないときでも、定期的に受ける方はいます。特に40代~50代以降になりがんリスクが高まる年代になると、健康診断の一環として検討する方が増えます。

また、家族にがん罹患者が多い場合など、遺伝的要因が心配されるときに早めのチェックを始めるケースもあります。

タイミングについて考えるときに目安となる観点を挙げると、次のようになります。

  • 年齢:40代以降はがん検診も含めて意識しやすい
  • 家族歴:近親者に同じ部位のがんが複数いる場合は注意
  • 生活習慣:喫煙、飲酒、高脂質の食生活などが気になるとき
  • 体調変化:原因不明の体重減少や体力低下を感じる場合

これらにあてはまる方は、一度医療機関で相談すると安心です

Q
費用や保険適用について
A

腫瘍マーカー検査は病気の疑いが強いときや、治療経過観察の一環で行うときには保険適用になるケースが多いです。

一方、本人の希望でスクリーニング的に受ける場合は自費になる場合があります。費用は検査項目数によって数千円から数万円と幅があるので、事前に確認するといいでしょう。

費用に関するイメージをまとめると、以下のようになります。

状況費用の目安
病気の疑いがある場合(保険適用)1,000~2,000円程度(1項目あたり)
スクリーニング目的(自費)数千円~複数項目で1万円以上になることも
健康診断のオプションセット価格で割安になる例もある

医療機関や検査会社、自治体の補助など、さまざまな要素が絡むため一概に断定はできませんが、複数の腫瘍マーカーを同時に測定すると費用がかさむ傾向にあります。

Q
陽性の場合の対応
A

腫瘍マーカーの数値が基準値を上回っていた場合、追加検査として画像診断(CTやMRIなど)を実施することが多いです。

結果次第では、より専門的な診察ができる医療機関を紹介されるケースも想定されます。大切なのは、あわてずに必要な検査を受けることです。

もしがんが見つかったとしても、早めに治療を始めることで治療の選択肢を広げられます。

Q
陰性の場合でも注意が必要なケース
A

腫瘍マーカー検査で陰性だからといって、100%がんがないとは言い切れません。がんの種類によっては腫瘍マーカーがほとんど上昇しないタイプもあるため、他の検査や症状の経過観察を組み合わせる必要があります。

再検査のタイミングを逃さないようにするため、医療機関からの案内はきちんと確認するほうが安心です。

Q
どのように医療機関を選ぶか
A

腫瘍マーカー検査は多くの病院やクリニックで行えます。自宅や職場から通いやすい場所を選ぶ人もいれば、専門性を重視する人もいます。受診先を決めるときは、自身が気になる部位や疾患の専門科があるかどうかを調べておくと良いでしょう。もし具体的に不安な病気がある場合は、内科や消化器内科、婦人科、泌尿器科など、部位に合わせた科を受診すると話がスムーズに進みます。


以上が、腫瘍マーカー検査(Tumor Marker Test)に関する基本的な流れや知識です。検査を受けるかどうかは個々人の判断やリスク要因によって異なります。

疑問点や不安がある場合は、気軽にお近くの医療機関で相談し、納得のいく形で検査を進めると安心につながるでしょう。

以上

参考にした文献