体内で糖がどのように処理され、エネルギーや脂肪に変化しているかを調べる方法はいくつかあります。

血糖値やHbA1cなど、糖代謝の変動を知るための指標を総合的にチェックすると、糖尿病やその予備軍の有無を含めて健康状態を判断しやすくなります。

糖の代謝にトラブルが起こると、全身に影響が及び、高血糖・低血糖・合併症などが生じる可能性があります。生活習慣に合った食事や運動を検討するうえでも、糖代謝検査の数値は重要です。

近年、血糖値だけでなく、HbA1cやフルクトサミンなどを使った検査も充実しており、早期発見と改善策の検討につながることが期待されています。

糖代謝の維持は健康寿命を考えるうえで大切なので、これから紹介する情報を参考にしながら、お近くの医療機関などで検査を検討してみてください。

糖代謝検査(糖検査)とは

糖質は脳や筋肉などあらゆる器官にとって重要なエネルギー源です。食事で摂取した炭水化物が消化や吸収を経て血中に取り込まれ、インスリンなどのホルモンによって細胞内で活用されます。

この流れの中で、血糖値の変化を正しく維持できていれば健康的ですが、糖代謝が乱れると血糖値が上昇したり、逆に急激に下がったりする可能性があります。

このパートでは、糖代謝検査の概要と関連の深い指標について解説します。

糖代謝検査の概要

糖代謝検査は、体内で糖がどのように利用・蓄積・排泄されるかを把握するうえで欠かせない手段です。代表的な測定項目には血糖値やHbA1c、フルクトサミン、インスリン、C-ペプチドなどがあります。

これらの数値を総合的に評価することで、糖尿病や糖尿病予備軍、低血糖発作の可能性を探ることができます。

医療機関は採血や尿検査などを用いて糖代謝の評価を行います。血糖値の経時変化を観察したり、食事負荷試験による応答を見る検査手法も存在します。

これらの検査結果から糖の利用能力やホルモン分泌の状態を推察できるため、健康管理や治療方針の決定に役立ちます。

血糖値とは

血糖値は血液中に含まれるブドウ糖の濃度を示します。空腹時や食後に測ることが多く、短期間の糖代謝の状態を把握したい場合によく使われる指標です。

食後は血糖値が上昇し、インスリンによってブドウ糖が細胞に取り込まれると、適切な範囲に戻ります。しかし、インスリンの分泌や作用が不足すると、高血糖状態が続いて合併症リスクが高まります。

血糖値を単発で測るだけでは、瞬間的な状況しかわかりません。生活リズムやストレス、前日の食事によって数値が変動するため、検査結果はほかの指標と併せて評価することが大切です。

HbA1cとは

HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、過去およそ1~2か月の平均血糖値を推測する際に利用する指標です。

赤血球のヘモグロビンにグルコースが結合した割合を計算する仕組みで、直近の食事やストレスの影響を受けにくい特徴があります。

糖尿病の診断や血糖コントロール状態の長期的な確認に用いられ、6.5%を超えると糖尿病の可能性が高まると考えられています(ただし診断にはその他の要素も考慮します)。

HbA1cが高めの状態が持続すると、慢性的に血管へダメージを与えやすくなり、網膜症や腎症、神経障害などの合併症に進行するリスクが上がる可能性があります。

医師はHbA1cを軸にしながら、個々の患者の状態にあわせて治療方針を組み立てます。

糖代謝と生活習慣の関係

糖代謝は食事の内容や量、運動習慣、睡眠時間、ストレスなどの要素と密接につながっています。

高カロリーの食事や糖質過多の食事が続くと、体重増加や肥満につながり、インスリンが作用しにくくなる(インスリン抵抗性)可能性が高くなります。

すると血糖値が高めの状態が続きやすくなり、糖尿病の発症リスクが高まります。

逆に、適度な運動やバランスの良い食事は、糖の利用を促進しやすくします。また、十分な睡眠やストレスケアもホルモンバランスを整えるうえで重要です。

糖代謝検査の結果を確認しながら、自分の生活パターンを見直すことで、健康を維持しやすくなるでしょう。

検査名主な目的特徴
血糖値血中のブドウ糖濃度を測定短期的な変動を確認しやすい
HbA1c1~2か月の平均血糖値を推定日々の食事やストレスに左右されにくい
フルクトサミン過去2~3週間程度の血糖状態を推測HbA1cより短めの期間を把握
インスリン膵臓からの分泌量を確認インスリン抵抗性や分泌不全を評価
C-ペプチドインスリンと同量が分泌されるペプチドを測定膵臓のインスリン産生能力を推察

上記の項目は単体で評価するよりも、複数を組み合わせて総合的に判断すると、糖代謝の状態をより深く理解できます。

• 運動不足や偏食によって血糖値が大きく変動する可能性がある
• HbA1cは直近の行動だけでなく、1~2か月の傾向を反映する
• インスリンやC-ペプチドの測定で膵臓の働きをイメージしやすくなる
• 検査の結果を踏まえ、生活習慣を修正すると血糖値の管理が改善する可能性がある

糖代謝が乱れる原因とサイン

糖代謝がうまく機能しなくなる原因は多岐にわたります。遺伝的な要因だけでなく、食生活や運動量、ストレスに関連するホルモンバランスも大きな影響を及ぼします。

このパートでは、糖代謝が乱れる主な原因と、その状態が続いたときに起こりやすい症状やサインについて紹介します。

食生活と糖代謝

高糖質・高脂質な食事や不規則な食事タイミングが続くと、血糖値が上昇する機会が増え、インスリンの働きに負担をかけます。

膵臓からのインスリン分泌が追いつかなくなると、血糖値が高止まりする事態が生じる可能性があります。

砂糖を多く含む飲料や、精製度の高い炭水化物を頻繁に摂取すると、血糖スパイク(急上昇と急下降)が起こりやすく、体内のホルモンバランスが乱れやすくなります。

食物繊維を増やし、低GI食品を中心に組み立てた食事は、血糖値の緩やかな上昇を期待できます。血糖コントロールのためには、食材の組み合わせや食べる順番、食事のタイミングを意識することが大切です。

運動習慣と糖の消費

糖は筋肉の動力源として使われます。運動習慣があると、筋肉細胞はブドウ糖を消費し、血糖値の安定に寄与します。また、筋肉量が増えると基礎代謝も上がり、糖代謝が改善しやすい特徴があります。

反対に、運動不足のまま高カロリーの食事を続けると、エネルギー消費が十分に行われずに肥満へとつながりやすくなります。

軽いウォーキングやストレッチをこまめに取り入れ、徐々に強度を上げる形で運動量を増やすと、血糖コントロールの向上に期待が持てます。無理な負荷をかけず継続しやすい運動を選ぶことがコツです。

ストレスとホルモンバランス

ストレスが続くと、アドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンが増加し、血糖値を上昇させる働きが強くなります。

睡眠不足や過密スケジュールで心身に疲れがたまると、食欲を抑制するホルモンの分泌が減り、過食を誘発する可能性が出てきます。この悪循環が継続すると、糖代謝の乱れが深刻化しやすくなります。

ゆっくり休養をとったり、深呼吸やマインドフルネスなどを取り入れたりすると、ストレスによる血糖値上昇を抑えるきっかけになりやすいです。

ホルモンバランスを整えるためには、自分に合ったリラクゼーション方法を見つけることが大切です。

肥満とインスリン抵抗性

体脂肪が過剰に蓄積すると、内臓脂肪が増えてインスリン抵抗性を高めることが多いです。インスリン抵抗性が高いと、細胞がインスリンの指示に反応しにくくなるため、血中の糖を十分に利用できません。

その結果、血糖値が高まり、さらにインスリンが大量に分泌されるものの効果は限定的という状態に陥る場合があります。

肥満は糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病とも深く関連しています。内臓脂肪の増加が著しい場合、食事制限や運動療法による体重管理が大切になります。

原因・要因具体的なメカニズム主な対策例
高糖質の食事インスリン分泌の負担が増え血糖値が高めに低GI食品、食物繊維を活用
運動不足ブドウ糖の消費が足りずエネルギー過剰軽いウォーキングの導入
ストレス過多コルチゾール増加により血糖値が上がりやすい十分な睡眠、適度な休養
肥満・内臓脂肪インスリン抵抗性が上昇し血糖値がコントロール困難体重管理、食事療法の活用
遺伝的要因インスリン分泌量の低下やホルモン異常のリスク定期的な検査と早期発見

• 食生活の乱れは血糖スパイクを招きやすい
• 運動不足は糖の利用効率を下げ、肥満リスクを高める
• ストレス過多はホルモンバランスに影響を与え、食欲や血糖値を変動させる
• 肥満が進むとインスリン抵抗性が増え、糖尿病予備軍になる可能性がある

糖代謝が乱れているサインとしては、喉の渇きや頻尿、急な体重の増減、眠気やだるさ、すり傷が治りにくいなどが挙げられます。

こうした症状があるときは早めにお近くの医療機関へ相談してみると安心です。

主な糖代謝検査の種類

糖代謝の状態を知りたいと考える方は多いかもしれませんが、実際には複数の検査が存在します。

代表的な血糖値測定やHbA1cだけでなく、フルクトサミンやインスリン、C-ペプチドなどの測定方法も選択肢となります。このパートでは、それぞれの検査が持つ特徴と役割を詳しく解説します。

血糖値測定の意義

血糖値は即時的な糖の状態を反映しやすい項目です。空腹時血糖値を測定する方法が多く、糖尿病の診断基準としても重要視されます。

ただ、単発の血糖値は前日の食事や運動、ストレスなどで大きく揺れやすく、必ずしも恒常的な血糖制御能力を示すわけではありません。

食後2時間値を測る食後血糖値検査や経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)など、時間経過による変化を見る方法もあります。

これらの検査を組み合わせることで、インスリンの分泌能力やブドウ糖の消費速度をより正確に把握しやすくなります。

HbA1cの特徴

前述のとおり、HbA1cは1~2か月の血糖コントロールの指標として知られています。検査のタイミングを選ばずに受けやすい特徴があり、食後直後の検査でも直近の食事影響が比較的少ないです。

血糖値が常に高めの状態だとHbA1cも上昇するため、糖代謝の乱れが慢性的に続いているかどうかを評価するうえで大きな役割を果たします。

HbA1cは過去数週間から1か月程度の血糖の平均値に近い意味合いを持ちます。

高い値が出たとしても、その数値だけですぐに糖尿病と断定するわけではなく、症状や他の検査データとあわせて総合的に診断します。

フルクトサミンの注目点

フルクトサミンは血中タンパク質(主にアルブミン)にブドウ糖が結合したもので、過去2~3週間程度の血糖コントロールを反映すると考えられています。

HbA1cほど広くは行われていませんが、HbA1cでは把握しきれない短期的な血糖変動を追いたい場合に役立ちます。たとえば、治療の変更後に早期の効果判定を行いたいときに利用されることがあります。

低アルブミン血症のある方や貧血などの要因を持つ方の場合、HbA1cに影響が出る可能性があります。

そのようなケースでは、フルクトサミンを測定して補足的に評価すると、より正確な糖コントロールの指標を得られるかもしれません。

指標反映する期間主な特徴
血糖値採血時点即時的な状態を把握。変動が大きい
HbA1c1~2か月程度中期的な平均血糖値を推定。日常の血糖コントロール状況を知る
フルクトサミン2~3週間程度短期的なコントロール把握。治療効果の早期判定に用いやすい
インスリン採血時点膵臓の分泌状態やインスリン抵抗性の有無を評価可能
C-ペプチド採血時点インスリンの産生量を推測。1型か2型かの鑑別に利用

インスリンとC-ペプチド

インスリンは膵臓のβ細胞で生成されるホルモンで、血糖値を下げる役割を持ちます。血糖値が上昇するとインスリンが分泌され、細胞に糖を取り込ませます。

インスリン量を測定すると、分泌不足があるか、あるいはインスリンが過剰な状態かを検討しやすくなります。

とくに2型糖尿病の初期段階ではインスリン分泌量がむしろ高いことが多く、インスリン抵抗性が主な原因となっていることも珍しくありません。

C-ペプチドはインスリンと同時に分泌されるペプチドで、インスリンの産生能力を間接的に測る際に役立ちます。

外から注射したインスリンには含まれないため、体内で実際に作られているインスリン量を推察できるのがメリットです。

1型糖尿病(自己免疫などで膵臓のβ細胞が破壊)の可能性がある場合は、C-ペプチド値が極端に低下しているケースもあります。

• 血糖値だけでなく、HbA1cやフルクトサミンで中期・短期の動向を確認できる
• インスリンやC-ペプチドを調べると、糖尿病のタイプや分泌能力を検討しやすくなる
• 場合によってはOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)なども合わせて状態を評価
• 膵臓の機能がどこまで残っているかは治療方針の決定に直結する

糖代謝検査にはさまざまな切り口があります。単一の測定結果だけで判断するのではなく、医師と相談しながら複数の指標を総合的に把握すると、自分に合ったケアや治療方法を見いだしやすくなるでしょう。

糖代謝検査の結果からわかること

糖代謝検査は、糖尿病やその予備軍だけでなく、低血糖症や合併症リスクなど多面的な情報を提供します。自分の血糖コントロールに関する知識を深めると、適切な予防と改善策を導きやすくなります。

このパートでは、糖代謝検査から読み解ける主な情報やメリットを紹介します。

予備軍から糖尿病の可能性

空腹時血糖値が高めだが、糖尿病の診断基準を満たしていない人は糖尿病予備軍と呼ばれることがあります。HbA1cが基準値よりやや上昇している場合も同様です。

この段階では、大幅な生活習慣の改善によって正常な血糖コントロールに戻る可能性が高いです。

糖尿病予備軍を放置すると、インスリン抵抗性がさらに上昇して血糖値のコントロールが難しくなるため、定期的な検査と早期介入が重要です。

食事や運動のほか、体重管理や睡眠リズムの調整など、ライフスタイル全般を見直すきっかけを作りやすくなります。

低血糖や高血糖が及ぼす影響

糖代謝が不安定になると、低血糖と高血糖を繰り返すことがあります。低血糖は手足の震え、汗、動悸、意識障害などを引き起こす可能性があります。

高血糖の場合は喉の渇き、頻尿、疲労感などが長期化し、慢性的な高血糖状態が続くと合併症のリスクが高まります。

検査で血糖値の変動幅を把握すると、自分がどのタイミングで血糖コントロールを崩しやすいかを推察できます。

これを踏まえて、食事の分量やタイミング、運動の実施方法などを修正し、極端な血糖変動を防ぐ対策を取りやすくなります。

状態主な症状・影響改善のポイント
低血糖ふらつき、冷や汗、動悸、集中力低下など小まめな食事、糖分の携帯、原因疾患の特定
高血糖のどの渇き、頻尿、疲労感などインスリン抵抗性の低減、適度な運動
血糖スパイク食後急激な血糖上昇とその後の急降下低GI食品、食事順序の見直し、食後運動

合併症のリスクと予防

糖尿病で怖いのは、慢性高血糖が続くことで血管や神経がダメージを受ける合併症です。網膜症による視力障害、腎症による透析リスク、末梢神経障害によるしびれや痛みなどが代表的です。

さらに動脈硬化が進行しやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高まります。

血糖コントロールを良好に保つと、これらのリスクを大きく下げることが期待できます。HbA1cを適正範囲に収めることや、高血圧・脂質異常症の管理を同時に行うと効果的です。

医師の指導のもとで定期的な検査を実施し、症状の進行を防ぐ対策を講じることが重要です。

早期発見のメリット

糖尿病は初期段階では症状がほとんど出ないことが少なくありません。何となく疲れやすい、トイレが近い程度では「見過ごしがち」という課題があります。

定期的に糖代謝検査を受ければ、症状がなくても血糖値やHbA1cの異常を把握できます。早期発見によって、生活習慣の改善や適切な薬物療法につなぎやすくなります。

糖代謝検査の結果を知り、その後の対策を具体化すると、糖尿病や合併症の発症を回避したり、進行を抑えたりする可能性が広がります。

結果を客観的に理解し、日常に落とし込むことで、質の高い健康管理を目指しやすくなるでしょう。

• 予備軍の段階なら生活習慣の修正で大幅な改善が期待できる
• 低血糖と高血糖の両方を考慮するとリスク管理がしやすい
• 合併症の発症を防ぐには長期的な血糖コントロールが重要
• 症状が出ていなくても検査で早期発見できるメリットが大きい

健康管理と糖代謝検査

糖代謝検査を活用すると、日々の食事や運動、睡眠、ストレス対策などを見直す際に具体的な方向性を得られます。検査結果が良好でも、今後のリスクを念頭に置いて定期的にチェックすると安心です。

ここでは、検査前後の注意点や生活改善策の考え方、医療機関との連携について解説します。

検査前の準備と注意点

血糖値検査は、空腹時の採血や食後2時間の採血など、指定時間がある場合があります。正確な結果を得るには、指定された前日の食事時間や内容に従い、医師の指示を守る必要があります。

また、過度な飲酒や激しい運動を直前に行うと、一時的に血糖値に変化が生じる場合があるため、普段どおりの生活をベースに検査に臨んだほうが参考になります。

HbA1cやフルクトサミンは、検査直前の行動に左右されにくいですが、採血前の注意事項があるかどうかは事前に確認したほうが良いです。

薬を使用している場合は、医師や薬剤師に相談して、服用タイミングなどを調整するといいでしょう。

準備・注意点理由・効果
空腹時採血の指定食事の影響を受けない血糖値やインスリン量を把握しやすい
前日の過度な飲酒や運動血糖値が急激に変動し、通常の状態を把握しにくくなる
薬剤の服用タイミング血糖値やインスリン分泌に影響する薬の存在を加味する
検査方法の確認食後血糖値なのか空腹時なのかで結果の解釈が異なる

結果の活用と改善策

検査結果を得たあとに大切なのは、生活改善策を立案し、継続できるよう工夫することです。たとえば血糖値が高かった場合は、食事の内容や摂取カロリー、運動量、体重推移を見直す手段を検討できます。

HbA1cが上昇していれば、短期的な対処ではなく、長期的な視点で食事制限と運動プログラムを組むことが効果的です。

低血糖の傾向がある場合は、食事の間隔を詰めたり、睡眠とストレス管理を見直したりすることでリスクを減らせます。

検査結果を活かして自分の体の特徴を把握し、日常生活の中で血糖コントロールを安定させる工夫を続けていくと、徐々にデータにも変化が表れやすくなります。

• 高い数値が出たら食事・運動・睡眠のバランスを再検討
• HbA1cが上昇していたら長期的な習慣改善が鍵になる
• 低血糖が頻発する場合は食事タイミングや糖質の摂り方を調整
• 継続的な測定で変化の推移を確かめるとモチベーションを維持しやすい

医療機関でのフォロー

糖代謝検査の数値が基準値と大きくかけ離れている場合、医師の判断で薬物療法を検討することがあります。

経口血糖降下薬やインスリン注射などを使用しながら、食事療法と運動療法をあわせて実行するケースも珍しくありません。

自己判断での薬の中断や量の変更は避け、必ず医師の指示に基づいて行うほうが安全です。

定期的に検査を受け、血糖値やHbA1cの変化を把握すると、治療の効果を評価できると同時に、合併症のリスク管理にも役立ちます。

医療機関ではフットケアや眼科検診など、糖尿病の合併症を早期に見つけるための取り組みを行うことが多いので、相談しやすい環境を整えておくと安心です。

定期検査の重要性

糖代謝は常に一定の状態を保つわけではなく、体調や生活習慣の変化によって上下します。前回の検査で問題がなかったとしても、半年後や1年後には数値が上がっている可能性があります。

定期的な検査を習慣にすると、早めに異常を発見でき、対策を打つチャンスを逃しにくくなります。

検査実施のタイミング期待できるメリット
半年に1回程度軽度の上昇や下降を捉えて早期対応がしやすい
1年に1回の健康診断生活習慣が大きく変化していないかを把握しやすい
何らかの症状があるとき急な血糖上昇や体重増加の原因を早期発見できる
治療薬の変更後新しい治療の効果や副作用を判定しやすい

血糖値は日常に溶け込んだ習慣の集積によって変化します。特に自覚症状が乏しい時期は検査を後回しにしがちですが、その段階での受診が将来的な合併症予防に大きな差を生む可能性があります。

糖代謝検査にまつわる疑問とよくある質問

糖代謝検査について興味を持った方の中には、「どのタイミングで検査すればいいのか」「数値が高い場合や低い場合はどうすればいいのか」といった疑問を持つ人が多いかもしれません。

ここでは、よくある質問や迷いやすいポイントをまとめて解説します。

検査を受けるタイミング

糖尿病の家族歴がある人や、肥満気味で生活習慣が偏りがちな方は、早いうちに検査を受けるといいかもしれません。

また、喉の渇きや頻尿、疲労感が続くなど、糖代謝の乱れを疑う症状が出始めたときもタイミングのひとつです。

定期的な健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘された場合は、早めに詳しい検査を受けて原因を追求する必要があります。

受検タイミング概要
生活習慣病予防のため肥満、喫煙習慣、偏った食生活の人は要検討
自覚症状があるとき喉の渇き、体重減少、疲労感などが長く続く場合
定期検診で指摘された場合二次検査や専門医への紹介を検討しやすい
治療中・薬服用中の方治療効果の確認や副作用チェックを目的として

結果が高い場合の考え方

血糖値やHbA1cが基準値を超えて高かった場合、まずは生活習慣を振り返ることが重要です。高カロリー食や甘いものの摂取頻度、運動不足などが続いているかもしれません。

体重増加やBMIの上昇、ウエスト周囲径の増加なども確認ポイントです。

複数回の検査で一貫して高い数値が出ているなら、医師に相談して追加の検査を受けたり、薬物療法を検討したりする選択肢があります。

高い数値が初めて出たからといって、すぐに糖尿病を断定するわけではなく、再検査や他の検査データとの関連を総合的に見ます。

• 食事内容や摂取カロリーを記録し、過剰摂取や偏りがないか点検
• 運動不足を感じるならウォーキングや軽い筋トレを計画
• 血圧や脂質、尿検査の結果と合わせて総合的に判断
• 再検査を受けながら変化の傾向を見て、早期に対策を始める

数値が低いときの可能性

まれに血糖値が低い状態がみられる場合は、低血糖症の疑いがあります。過度なダイエットや不規則な食事でブドウ糖が不足していたり、インスリンの過剰分泌が起きているケースも考えられます。

低血糖が頻繁に起こると、ふらつきや冷や汗、集中力低下など、日常生活に支障をきたしやすいです。

低血糖症状があるなら、小まめに食事や軽食を取り、急激な血糖変動を避ける工夫を検討できます。

原因によってはホルモン異常の検査が必要な場合もあるため、自己判断で済ませず、医師と相談することが望ましいです。

低血糖の主な原因対策や注意点
食事を抜く、ダイエットのしすぎ適切な食事回数とバランス、過度な制限の見直し
インスリンや血糖降下薬の作用過多投与量や服用タイミングの調整、医師への相談
過度な飲酒肝臓での糖新生が抑制され、低血糖リスクが高まる
まれな内分泌疾患ホルモン検査や精密検査の必要性がある

他の検査や専門医との連携

糖代謝の異常は、糖尿病だけでなく甲状腺や副腎など他の内分泌系の問題が隠れている可能性も否定できません。

必要に応じて内分泌内科や糖尿病専門医の診察を受けると、より詳細な検査や治療計画を立てる助けになります。

また、糖尿病が疑われる段階であっても、自己流の食事制限や極端な運動を始めてしまうと、血糖値が急激に変動して体調を崩すリスクがあります。

管理栄養士や医師との連携で、無理のない治療計画や生活改善プログラムを共有し、定期的な検査を通して経過を観察することが理想的です。

• 血糖以外のホルモンや腎・肝機能などもチェックすると、原因解明が進む
• 専門医にかかるかどうかは一般内科と相談して決定
• 医療チームのサポートを受けながら段階的に生活習慣を修正
• 検査の頻度や治療の目標値は個々の体質や状態で異なる

糖代謝検査で得られる情報を踏まえ、正しい知識を身につければ、糖尿病や関連する病気のリスクに対処しやすくなります。

疑問があるときは一人で悩まず、医師や専門スタッフと情報を共有しながら、丁寧にケアしていくことが健康を守る近道です。

以上

参考にした論文

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