感染症の一種である深部皮膚真菌症とは、皮膚の深い層や内臓に真菌(カビの一種)が感染することで引き起こされる疾患です。

この病気は表面的な皮膚真菌症とは異なり体の奥深くまで影響を及ぼすため、より深刻な症状を引き起こす可能性があります。

深部皮膚真菌症は免疫力が低下している方や長期間の抗生物質使用などの要因によって発症リスクが高まる傾向です。

深部皮膚真菌症の主症状

深部皮膚真菌症(しんぶひふしんきんしょう)の症状は多岐にわたり患部や病型によって異なる特徴を示します。

症状を正確に把握して気づくことはこの知らぬ間に進行する可能性のある感染症への効果的な対策となります。

本稿では深部皮膚真菌症の代表的な症状について詳しく解説して早期発見の一助となる情報をお伝えします。

皮膚症状

深部皮膚真菌症における最も顕著な症状は皮膚の変化です。

感染部位に赤み・腫れ・発疹などが現れることが多く、これらの症状は時間の経過とともに進行する傾向です。

特に特徴的なのは硬結と呼ばれる皮膚の硬化や結節の形成で触診によってこれらを確認できることもあります。

皮膚症状特徴
発赤感染部位が赤くなる
腫脹皮膚が腫れ上がる
硬結皮膚が硬くなり結節を形成
潰瘍皮膚表面に潰瘍ができる

全身症状

深部皮膚真菌症が進行すると全身に影響を及ぼしてさまざまな症状が現れる可能性が高まります。

発熱・倦怠感・食欲不振などが代表的な全身症状です。

これらの症状は感染の程度や患者さんの全身状態によって異なりますが長期にわたって持続することも考えられます。

  • 発熱(微熱から高熱まで様々)
  • 全身倦怠感
  • 食欲不振
  • 体重減少

臓器特異的症状

深部皮膚真菌症が特定の臓器に影響を与えるとその臓器に特有の症状が現れることがあります。

例えば肺に感染した場合は咳や呼吸困難に、肝臓に影響がある場合は黄疸や腹痛などの症状が見られるといった具合です。

これらの症状は感染の進行度や患者さんの基礎疾患によって異なるでしょう。

影響を受ける臓器主な症状
咳・呼吸困難
肝臓黄疸・腹痛
腎臓浮腫・尿量減少
頭痛・意識障害

慢性症状

深部皮膚真菌症の中には慢性的に進行するものもあり、その場合は長期にわたって症状が持続することがあります。

慢性的な疲労感・微熱・体重減少などが特徴的で、これらの症状が数か月から数年にわたって続く場合もあるのです。

慢性症状は患者さんの生活の質に大きな影響を与える可能性があるため早期の気づきと対応が重要です。

  • 持続的な疲労感
  • 寝汗
  • 徐々に進行する体重減少
  • 慢性的な皮膚病変

免疫反応関連症状

深部皮膚真菌症に対する体の免疫反応によってさまざまな症状が引き起こされることがあります。

例えば関節痛・リンパ節腫脹・皮疹などが現れることがあり、これらの症状は感染そのものというよりも体の防御反応として解釈されます。

免疫反応関連症状の存在は診断の手がかりとなる可能性があるため見逃さないようにしなければなりません。

免疫反応関連症状特徴
関節痛複数の関節に痛みが出現
リンパ節腫脹特に感染部位近くのリンパ節が腫れる
皮疹感染部位以外にも出現することがある
発熱間欠的または持続的な発熱

深部皮膚真菌症の症状は多様で複雑であり個々の患者さんによって異なる現れ方をすることがあります。

2019年に発表されたJournal of Fungi誌の研究では深部皮膚真菌症患者の約70%が複数の症状を同時に経験していたことが報告されています。

このことから症状の組み合わせに注目することが診断の鍵となる可能性が示唆されています。

原因とリスク要因

深部皮膚真菌症の発症には様々な要因が関与しています。

個々人の健康状態や生活環境などによってリスクは異なりますが、これらの要因を理解することは予防や早期発見につながる大切な第一歩となります。

深部皮膚真菌症は適切な予防策と早期の対応によってその影響を最小限に抑えることができる疾患です。

本項ではこの疾患の原因となる真菌・感染経路・リスク要因について詳しく解説し理解を深める一助となる情報をお伝えします。

原因となる真菌

深部皮膚真菌症を引き起こす主な原因は特定の真菌による感染です。

これらの真菌は通常環境中に広く存在していますが、特定の条件下で人体に侵入し感染を引き起こすことがあります。

代表的な原因菌は以下のようなもので、それぞれ感染部位や進行速度に違いがあります。

真菌属主な感染部位
カンジダ属口腔・食道・膣
アスペルギルス属肺・副鼻腔
クリプトコックス属肺・中枢神経系
ムーコル属鼻腔・眼窩・脳

感染経路

深部皮膚真菌症の感染経路は原因となる真菌の種類や患者さんの状態によって異なりますが、吸入感染・経皮感染・血行性感染などが一般的です。

吸入感染では空気中に浮遊する真菌胞子を吸い込むことで感染が成立します。

経皮感染は皮膚の傷や粘膜から真菌が侵入することで起こります。

血行性感染は他の部位の真菌感染が血流を介して全身に広がることで発生します。

  • 主な感染経路
    • 吸入感染(肺真菌症など)
    • 経皮感染(皮膚真菌症など)
    • 血行性感染(播種性真菌症など)
    • 医原性感染(カテーテル関連感染など)

環境要因

深部皮膚真菌症の発症には環境要因も大きく関与していて特定の職業や環境に長期間さらされることで感染リスクが高くなります。

例えば農業や園芸に従事する方々は土壌中に存在する真菌胞子に頻繁に接触する機会があるためリスクが高くなる傾向です。

また湿度の高い環境や清潔が保ちにくい環境も真菌の繁殖を促進して感染リスクを高める要因となります。

職業・環境関連する真菌症
農業・園芸スポロトリコーシス
建設業アスペルギルス症
鳥類との接触クリプトコックス症
洞窟探検ヒストプラスマ症

免疫機能低下

深部皮膚真菌症の発症リスクを高める重要な要因の一つが免疫機能の低下です。

健康な状態では人体の免疫系が真菌の侵入や増殖を効果的に防いでいますが、免疫機能が低下するとこの防御機構が弱まり感染リスクが高まります。

免疫機能低下の原因としては次のような状態にあるかたで、このようなかたは通常なら問題にならない程度の真菌にさえも感染してしまうことがあるのです。

免疫低下要因影響
HIV/AIDST細胞機能低下
ステロイド長期使用全身性免疫抑制
臓器移植免疫抑制剤による抑制
血液疾患白血球機能障害
糖尿病好中球機能低下

外傷

皮膚や粘膜の損傷は真菌が体内に侵入する経路となる可能性があります。

特に土壌や植物と接触する機会の多い環境下での外傷は深部皮膚真菌症の発症リスクを高める要因です。

例えばとげや枝による刺傷・擦過傷・火傷などの皮膚損傷部位から真菌が侵入して感染を引き起こすことがあります。

このような外傷後の適切な処置と経過観察が感染予防において重要な役割を果たすのです。

  • 感染リスクの高い外傷
    • 土壌や植物との接触による傷
    • 動物による咬傷や引っかき傷
    • 熱傷や化学熱傷
    • 慢性的な皮膚潰瘍

診察と診断

深部皮膚真菌症の診断は単一の検査結果ではなく、複雑で多面的なプロセスと検査結果を総合的に評価して行われます。

各検査にはそれぞれ長所と短所がありそれらを相補的に組み合わせることで診断の精度を高めることが可能です。

ここでは医療機関での診察の流れや実施される検査について詳しく解説し診断までの道筋を明らかにします。

問診と身体診察

深部皮膚真菌症の診断においてまず行われるのが詳細な問診と身体診察です。

医師は患者さんの症状の経過・職業・生活環境・既往歴などについて丁寧に聞き取りを行います。

これらの情報は感染の可能性やリスク要因の評価に役立ちます。

身体診察では皮膚や粘膜の状態を注意深く観察して特徴的な病変の有無を確認します。

問診項目確認内容
症状の経過発症時期・進行速度
職業歴感染リスクの高い環境への暴露
既往歴免疫機能に影響を与える疾患の有無
生活環境ペットの飼育・海外渡航歴など

血液検査

血液検査は深部皮膚真菌症の診断において重要な役割を果たします。

具体的には炎症マーカー・肝機能・腎機能などを評価して全身状態を把握するのが一般的です。

それに加えて真菌感染に特異的な抗体検査や抗原検査が実施される場合もあります。

これらの検査結果は感染の有無や程度、体の反応を評価する上で貴重な情報となります。

  • 一般的な血液検査項目
    • 白血球数(WBC)
    • C反応性タンパク(CRP)
    • 肝機能検査(AST ALT)
    • 腎機能検査(BUN クレアチニン)
  • 真菌特異的検査
    • β-Dグルカン
    • ガラクトマンナン抗原
    • カンジダ抗原
    • アスペルギルス抗体

培養検査

深部皮膚真菌症の確定診断には培養検査が不可欠です。

ここでは患部から採取した組織や分泌物を特殊な培地で培養して原因となる真菌を同定します。

培養には時間を要しますが感染している真菌の種類を特定できるため診断の決め手となるのです。

また培養結果に基づいて効果的な治療方針を立てることが可能となります。

培養検査の種類特徴
皮膚組織培養病変部位から直接採取
血液培養全身性感染の評価に有用
髄液培養中枢神経系感染の診断に使用
気管支洗浄液培養肺真菌症の診断に有効

病理組織検査

病理組織検査は感染部位から採取した組織を顕微鏡で観察する検査方法です。

この検査によって組織内での真菌の存在や組織の変化を直接確認することができます。

特殊な染色法を用いることで真菌の形態や種類をより詳細に観察することが可能となるのです。

病理組織検査は培養検査と併用することで診断の確実性を高めることができるでしょう。

染色法観察対象
PAS染色真菌細胞壁の多糖類
グロコット染色真菌の輪郭
H&E染色組織の全体的な変化
ムチカルミン染色莢膜を持つ真菌

分子生物学的検査

近年では分子生物学的手法を用いた検査が深部皮膚真菌症の診断に導入されています。

PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いた検査では真菌のDNAを直接検出することが可能です。

この方法は従来の培養検査よりも迅速に結果が得られ、少量のサンプルでも検出が可能という利点があります。

特に培養が困難な真菌や抗真菌薬使用後の検査において有用性が高いです。

分子生物学的検査の利点課題
迅速な結果取得コストが高い
高感度な検出偽陽性の可能性
少量サンプルで実施可能専門的な技術が必要
培養困難な真菌の検出標準化が進行中

深部皮膚真菌症の診断プロセスは時に長期にわたることもありますが根気強く取り組むことで 適切な治療方針の決定につながります。

深部皮膚真菌症の画像所見

深部皮膚真菌症の診断において画像検査は感染部位や程度、原因真菌の種類によって多様な様相を呈します。

これらの画像検査はそれぞれ特徴と限界があり単一の検査で確定診断を下すことは困難です。

そのため複数の画像検査を組み合わせて臨床症状や他の検査結果と総合的に評価することが不可欠です。

本項では各種画像検査で観察される特徴的な所見について詳しく解説し診断の一助となる情報をお伝えします。

X線検査所見

X線検査は深部皮膚真菌症、特に肺真菌症の評価に広く用いられています。

胸部X線写真では感染による肺野の異常陰影が観察されることがあります。

これらの陰影はびまん性・結節状・浸潤影など様々な形態を取りますがいづれも真菌感染に特徴的な所見です。

X線検査は簡便で広く普及している検査法ですが初期段階の感染や軽度の病変を検出するには感度が十分でないという注意点もあります。

X線所見特徴
結節影境界明瞭な円形陰影
浸潤影不整形のぼんやりとした陰影
空洞影内部が透過性の高い円形陰影
肺門部腫大リンパ節腫大による陰影増強

CT検査所見

CT検査は X線検査よりも詳細な画像情報が得られる深部皮膚真菌症の評価に欠かせない検査法です。

肺真菌症ではスリガラス影 結節影 空洞形成など特徴的な所見が高解像度で観察されます。

また副鼻腔真菌症では副鼻腔内の軟部組織陰影や骨破壊像が確認されることがあります。

CT検査は病変の範囲や性状を詳細に評価できるため診断や経過観察に重要な役割を果たします。

  • 肺真菌症のCT所見
    • 結節周囲のすりガラス影
    • 空洞内の新月状空気像
    • 多発性結節影
    • 気管支壁肥厚
  • 副鼻腔真菌症のCT所見
    • 副鼻腔内軟部組織陰影
    • 骨壁の肥厚や破壊
    • 石灰化像
    • 周囲組織への浸潤像

MRI検査所見

MRI検査は軟部組織のコントラスト分解能に優れ、中枢神経系真菌症や深部組織真菌症の評価に有用です。

脳真菌症ではT2強調画像で高信号を示す病変や造影剤投与後の増強効果が観察されることがあります。

また皮下組織や筋肉内の真菌感染ではMRIにより病変の範囲や深達度を詳細に評価することが可能です。

MRI検査は放射線被曝がなく軟部組織の評価に優れているという利点がありますが。

一方で検査時間が長いことや金属製インプラントを有する患者さんには実施が困難であるといった制約が課題です。

部位MRI所見
T2高信号病変・リング状増強効果
脊髄髄内高信号病変・造影増強効果
軟部組織T2高信号病変・周囲浮腫
骨髄信号変化・周囲軟部組織浸潤

超音波検査所見

超音波検査は皮下組織や表在リンパ節の評価に用いられ深部皮膚真菌症の診断や経過観察に役立ちます。

皮下組織の真菌感染では低エコー域や内部不均一な腫瘤像として描出されることがあります。

またリンパ節病変では腫大や内部エコー不均一化・血流増加などの所見が観察されます。

超音波検査は非侵襲的で繰り返し実施可能であるという利点がありますが、検査者の技量により得られる情報の質に差が出る点は注意が必要です。

超音波所見特徴
皮下腫瘤低エコー・内部不均一
リンパ節腫大球形・内部エコー不均一
血流増加ドプラ法での血流信号増強
膿瘍形成無エコー域・後方エコー増強

核医学検査所見

核医学検査は全身の炎症や感染巣を検出するのに有用な検査法です。

FDG-PET/CT検査では真菌感染巣に18F-FDGの集積増加が観察されることがあります。

この検査は全身の病変分布を一度に評価できるという利点がありますが、特異性が低いため他の炎症性疾患や悪性腫瘍との鑑別が必要です。

ガリウムシンチグラフィーも炎症性病変の検出に用いられますがFDG-PET/CTと比較すると空間分解能が劣ります。

治療法と回復への道のり 抗真菌薬の選択と長期戦略

深部皮膚真菌症の治療は長期にわたる忍耐強い取り組みが必要です。

抗真菌薬の適切な選択と使用、全身状態の管理、そして定期的な効果判定を通じて着実に回復への道を歩んでいくことが大切です。

本稿では効果的な治療法・使用される薬剤・完治までの期間について詳しく解説します。

抗真菌薬による治療

深部皮膚真菌症の治療の主軸となるのが抗真菌薬の投与です。

これらの薬剤は真菌の細胞壁や細胞膜の合成を阻害することで真菌の増殖を抑制して最終的に死滅させる効果があります。

抗真菌薬の選択は感染している真菌の種類・感染部位・患者さんの全身状態などを考慮して慎重に行われます。

治療初期には広域スペクトラムの抗真菌薬が選択されることが多く、培養結果や臨床経過に応じてより適切な薬剤に変更されることもあるでしょう。

抗真菌薬の種類主な使用目的
アゾール系広範囲の真菌感染症
ポリエン系重症真菌感染症
キャンディン系カンジダ症・アスペルギルス症
アリルアミン系皮膚真菌症

全身療法と局所療法

深部皮膚真菌症の治療では全身療法と局所療法を組み合わせることが一般的です。

全身療法では経口または静脈内投与による抗真菌薬の全身投与が行われます。

これにより体内の広範囲に薬剤を行き渡らせて深部組織の感染にも対応することが可能となります。

一方局所療法では感染部位に直接抗真菌薬を塗布したり注入したりします。

この方法は表在性の病変や限局した感染巣に対して効果的です。

  • 全身療法の利点
    • 深部組織への薬剤到達性が高い
    • 広範囲の感染に対応可能
    • 血行性散布を防止できる
    • 重症例に対応可能
  • 局所療法の利点
    • 副作用のリスクが低い
    • 高濃度の薬剤を局所に投与可能
    • 長期使用が比較的容易
    • 軽症例や維持療法に適している

治療期間と経過観察

深部皮膚真菌症の治療期間は感染の程度・部位・原因真菌の種類などによって大きく異なり、数週間から数か月、時には1年以上の長期にわたる治療が必要となることがあります。

治療の進行状況は定期的な臨床症状の評価・画像検査・血液検査などを通じて慎重にモニタリングされます。

完治の判断は臨床症状の改善だけでなく画像所見の正常化や真菌学的検査の陰性化なども含めて総合的に行われます。

感染部位一般的な治療期間
皮膚2〜4週間
3〜6か月
6〜12週間
中枢神経系数か月〜1年以上

併用療法と補助的治療

深部皮膚真菌症の治療では抗真菌薬の単独使用だけでなく複数の薬剤を組み合わせた併用療法が選択されることもあります。

これは相乗効果を期待したり耐性菌の出現を防いだりする目的で行われます。

また感染部位の外科的切除や膿瘍のドレナージなどの処置が必要となる例もあります。

さらに患者さんの免疫機能を改善させるための治療や栄養状態の改善を目的とした支持療法も治療の一環として重要です。

併用療法の例目的
アゾール系+キャンディン系相乗効果の期待
アムホテリシンB+フルシトシン広範囲の真菌に対応
抗真菌薬+免疫賦活剤宿主免疫能の向上
抗真菌薬+抗炎症薬炎症反応の制御

治療効果の判定と再発予防

深部皮膚真菌症の治療効果判定は慎重に行わなければなりません。

臨床症状の改善・画像所見の変化・血液検査結果の推移などを総合的に評価して治療の継続や変更の判断がなされます。

治療終了後も一定期間の経過観察が重要で再発のリスクがある患者さんでは予防的な抗真菌薬の投与が検討されることもあります。

2019年に発表されたThe Lancet Infectious Diseases誌の研究では深部皮膚真菌症患者の約15%が治療終了後1年以内に再発を経験したことが報告されています。

これは長期的なフォローアップの重要性を示唆しています。

  • 治療効果判定の指標
    • 臨床症状の改善
    • 炎症マーカーの正常化
    • 画像所見の改善
    • 真菌学的検査の陰性化

完治までの道のりは決して短くはありませんが適切な治療と経過観察により多くの患者さんが健康を取り戻すことができます。

深部皮膚真菌症治療の副作用とリスク

深部皮膚真菌症の治療に伴う副作用やリスクは決して軽視できるものではありません。

しかしこれらのリスクを知り適切に対処することでより安全で効果的な治療を受けることが可能です。

本記事では抗真菌薬使用に関連する副作用や長期治療に伴うデメリットについて詳しく解説し患者さんの理解を深める一助となる情報をお伝えします。

抗真菌薬の一般的な副作用

抗真菌薬は深部皮膚真菌症の治療に不可欠ですが多くの薬剤に共通する副作用があります。

これらの副作用は患者さんの生活の質に影響を与える可能性があり治療の継続を困難にすることもあります。

一般的な副作用は消化器系の症状・肝機能障害・腎機能障害などが中心です。

これらの副作用の多くは投薬の中止や用量調整により改善することがありますが慎重な経過観察が必要です。

副作用主な症状
消化器症状悪心・嘔吐・腹痛・下痢
肝機能障害黄疸・倦怠感・食欲不振
腎機能障害浮腫・尿量減少
皮膚症状発疹・かゆみ

薬物相互作用のリスク

深部皮膚真菌症の治療で用いられる抗真菌薬は他の薬剤との相互作用を引き起こすことがあります。

特にアゾール系抗真菌薬は多くの薬剤の代謝に関与するCYP酵素を阻害するため様々な薬物との相互作用が報告されています。

この相互作用によって併用薬の血中濃度が上昇して予期せぬ副作用が生じたり、逆に抗真菌薬の効果が減弱したりする可能性が生じます。

そのため治療中は服用中の全ての薬剤について医療従事者に報告して慎重な管理を受けることが大切です。

  • 相互作用のリスクが高い薬剤群
    • 抗凝固薬
    • 免疫抑制剤
    • 抗不整脈薬
    • 抗てんかん薬
    • スタチン系薬剤

耐性菌出現のリスク

長期にわたる抗真菌薬の使用は耐性菌の出現リスクを高める恐れがあります。

耐性菌の発生は治療の難渋化や新たな感染症の原因となる懸念があります。

特に広域スペクトラムの抗真菌薬を長期間使用する際にはこのリスクに注意を払うことが大切です。

耐性菌の出現を防ぐためには適切な薬剤選択と用量設定、そして定期的な感受性試験の実施が重要なのです。

耐性メカニズム影響を受ける薬剤
薬剤排出ポンプの過剰発現アゾール系
標的酵素の変異エキノカンジン系
細胞膜組成の変化ポリエン系
代替経路の活性化複数の薬剤クラス

免疫機能への影響

一部の抗真菌薬、特にアムホテリシンBなどは免疫機能に影響を与える可能性があります。

これらの薬剤は宿主の免疫細胞の機能を一時的に抑制することがあり、その結果他の感染症に対する感受性が高まるリスクが生じます。

一方で免疫機能が低下している患者さんでは抗真菌薬の効果が十分に発揮されないことがあります。

このため治療中は感染予防に留意して定期的な免疫機能評価を行うことが望ましいです。

免疫機能への影響関連する抗真菌薬
T細胞機能抑制アムホテリシンB
好中球機能低下フルコナゾール
サイトカイン産生変化イトラコナゾール
NK細胞活性低下ボリコナゾール

長期治療に伴う心理的負担

深部皮膚真菌症の治療は長期にわたることが多く、患者さんに大きな心理的負担をかけることも考えられます。

長期の薬物療法・頻繁な通院・生活制限などは患者さんによってはQOLの低下を感じてしまうでしょう。

また治療効果の実感が得られにくいことや再発への不安なども心理的ストレスの要因となりえます。

これらの心理的負担は治療のアドヒアランス低下につながる恐れがあるため適切な心理的サポートの提供が必要です。

  • 長期治療に伴う心理的影響
    • 不安やうつ状態
    • 社会生活への支障
    • 自尊心の低下
    • 治療への疲弊感

副作用やリスクへの対応は治療の一環として捉えて積極的に取り組むことが良好な治療成績につながる重要な要素となります。

深部皮膚真菌症治療の費用 知っておきたい経済的側面

深部皮膚真菌症の治療費は使用する薬剤や治療期間によって大きく変動します。

本項では薬価や治療期間ごとの概算費用について解説します。

処方薬の薬価

深部皮膚真菌症の治療に用いる抗真菌薬は種類によって薬価が異なります。

内服薬や注射薬の中には1回の投与で数千円から数万円程度かかるものもあります。

薬剤名1回投与の薬価(概算)
ボリコナゾール5,000円〜10,000円
ミカファンギン15,000円〜20,000円

1週間の治療費

1週間の治療費は使用する薬剤の種類や投与回数によって変化します。

内服薬のみの場合では週に1〜3万円程度で注射薬を使用する際はさらに高額になります。

1か月の治療費

1か月の治療費は数十万円に達することもあります。

長期治療が必要な場合、経済的負担が大きくなるため、医療費の管理が重要です。

  • 治療費に影響を与える要因
    • 使用する薬剤の種類と量
    • 入院の有無
    • 併用する検査や処置の頻度

以上

参考にした論文