亜鉛は髪そのものの材料ではなく、材料であるケラチンを組み立てる側で働くミネラルです。数多くの酵素の中心に金属として組み込まれ、たんぱく質を合成する反応や細胞が分裂する場面を裏側から支えています。

髪をつくる毛母細胞は体のなかでも分裂の速い部類に入るため、供給が細ったときの影響を受けやすい立場にあります。不足した状態で抜け毛が増え、補うと落ち着いた例も報告されました。

ただし足りている人が上乗せしても同じようには働かず、摂りすぎれば銅の吸収を妨げるため、量を増やす発想より日々の食卓へどう組み込むかを考えるほうが実りがあるでしょう。

目次

亜鉛が髪の材料であるケラチンをつくる場面で働きます

亜鉛は髪へ取り込まれて形になる材料ではなく、材料を組み立てる工具の側にあたり、たんぱく質を合成する酵素の中心に金属として収まって反応が進むための足場をつくっています。

髪づくりの場面細胞のなかで起きていること亜鉛の関わり方
毛母細胞が増えるDNAを複製して数を増やす複製に関わる酵素の部品
ケラチンをつくるアミノ酸をつないで繊維にする合成に関わる酵素の部品
毛の形を保つ硫黄どうしが結びついて束ねる材料となるアミノ酸の代謝

ケラチンは硫黄を多く抱えたたんぱく質です

髪の大部分はケラチンというたんぱく質で、システインという硫黄を含むアミノ酸を多く抱えている点に特徴があります。この硫黄どうしが結びついて橋を架け、髪の芯に硬さと弾力を与えています。

パーマや強い熱でこの橋が切れると手ざわりが変わるように、髪の質感はケラチンの組み上がり方に大きく左右されます。材料となるアミノ酸が届き、それをつなぐ働きが滞りなく回って、はじめて丈夫な繊維になります。

亜鉛が支えているのは、このうち「つなぐ」側の働きです。亜鉛そのものが髪の芯になるわけではないので、たんぱく質が足りていない食事に亜鉛だけを足しても釣り合いは取れません。

亜鉛は数多くの酵素の中心に組み込まれています

体内の亜鉛は、単独で漂っているのではなくたんぱく質と結びついた形で存在しており、多くの酵素が中心に亜鉛を抱えているため、そこが空席になると反応そのものが進まなくなります。

関わる反応の幅は広く、たんぱく質や核酸をつくる働きから、遺伝子の読み取りを調節する働きまで及びます。ひとつの決まった仕事を担うというより、細胞の作業台をあちこちで支えている立ち位置です。

だからこそ不足したときの影響も一か所には出ず、味覚や皮膚、傷の治り、そして髪といった具合に散らばって現れます。

亜鉛が減るとDNAの複製が滞ります

動物実験を整理した報告によると、亜鉛を絞った食事へ切り替えると4〜5日という短さで成長が止まり、その変化は食べる量が減ったせいだけでは説明がつきませんでした。

培養した細胞から亜鉛を取り除いた実験では、DNAの材料を用意する酵素の働きが落ち、材料そのものの量も減っていました。細胞が増えるための下ごしらえが、亜鉛の不足でつまずく形です。

成長ホルモンや関連するホルモンの量を保っても遅れは戻らず、ホルモンを受け取った後の段階で反応がつまずいていると考えられています。指令ではなく現場の側が動けなくなる、と言い換えられるでしょう。

皮膚の細胞でも亜鉛は働いています

ヒトの表皮の細胞に塩化亜鉛を低い濃度で加えた実験では、抗酸化に関わる遺伝子や糖たんぱく質をつくる遺伝子など8つの働きが、少なくとも1.9倍に高まりました。

一方で濃度を上げれば細胞に毒性が現れ、24時間の観察では10マイクログラム毎ミリリットルまでが害の出ない範囲でした。効き方が量によって反転する点は、この元素の性格をよく表しています。

髪をつくる毛包も、もとをたどれば皮膚が落ち込んでできた器官です。地肌の細胞で起きている話と、髪をつくる現場で起きている話は地続きだと考えて差し支えありません。

毛母細胞の分裂が速いほど亜鉛が要る理由

亜鉛の不足は、細胞が入れ替わる速さの大きい場所から先に表へ出ます。毛母細胞は体のなかでも分裂の速い部類にあたるため、供給が細ったときの影響を受けやすい立場に置かれています。

髪は毎日つくり替えられています

頭髪はおよそ10万本あり、その大半が成長期にあって日々伸び続けています。1本あたりの伸びは1日に0.3ミリ前後でも、全体で足し合わせれば相当な量のたんぱく質が毎日つくられている計算です。

材料と、それを組み立てる働きが毎日欠かさず要るという点で、髪は皮膚や爪と同じ側に並びます。供給が細れば、生命の維持に直結しない場所から順に後回しにされていきます。

髪が細くなった、伸びが遅くなったという変化は、その後回しが表に出た姿である場合もあります。もっとも、そう決めつけられるほど話は単純ではありません。

分裂の速い組織ほど亜鉛の不足が響きます

先の報告が示すとおり、亜鉛を絞った条件では成長という現象そのものが数日で鈍ります。細胞が増える速さに直接効いてくるため、入れ替わりの速い組織ほど先に影響が見えてきます。

消化管の粘膜、皮膚、そして毛包は、いずれも細胞の回転が速い場所です。亜鉛が不足した人で味覚の変化や皮膚炎、脱毛が同時に現れやすいのは、こうした共通点があるためと整理できます。

逆にいえば、髪にだけ変化が出ていて他がまったく無事なとき、原因を亜鉛だけに求めるのは早すぎます。手がかりは一つではなく、いくつ重なっているかで読むものです。

  • 味が薄く感じる、味が変わったように思う
  • 口内炎ができやすい
  • 肌が乾きやすく、湿疹が治りにくい
  • 爪に白い斑点や横すじが出る
  • 小さな傷の治りが遅い

並べた手がかりのうち複数が抜け毛と重なっているなら、栄養の側を疑う値打ちが出てきます。逆に髪の変化だけが単独で進んでいる場合、別の原因のほうが本命かもしれません。

不足を補って抜け毛が落ち着いた報告があります

亜鉛の不足を伴う休止期脱毛の5人へ亜鉛製剤を飲んでもらった報告では、全員で抜け毛が治まるか軽くなりました。著者らは、金属を含む酵素の働きや毛の成長を制御する信号が戻ったためと考えています。

慢性の休止期脱毛と診断された50人を同年代の健康な50人と比べた研究でも、患者側では血清と毛髪の双方で亜鉛が低いという結果が出ました。血液中の値と毛髪中の値はゆるやかに連動していました。

とはいえ5人という小さな数なので、亜鉛が髪を生やす証拠として読むには足りません。読み取れるのは、不足という背景を持っていた人では、それを埋めると変化が起こりうるという範囲までです。

血液検査で亜鉛が低いと分かっているかどうかで、同じ「亜鉛を足す」という行動でも意味がまるで違ってきます。出発点を確かめないまま量だけ動かしても、手ごたえは得られにくいでしょう。

足りている人が上乗せしても同じには働きません

亜鉛は不足を埋める場面でこそ働く栄養素で、必要量を満たしている人がさらに増やしたところで、同じ変化が起きる保証はありません。ここを混ぜて語ると、期待だけが先に膨らみます。

体には取り込む量を調節する仕組みが備わっており、足りているときには吸収する割合を下げ、余った分を便へ回します。増やした量がそのまま体内で使われるわけではないという意味です。

この性質があるおかげで、通常の食事で摂りすぎに傾く心配はほとんどありません。裏を返せば、濃縮された形で長く足し続けたときにだけ調節が追いつかなくなります。

髪のために亜鉛をどの食品から摂るか

亜鉛は貝類と赤身の肉に濃く、そこへ種実類と大豆製品が続きます。一食で帳尻を合わせようとせず、これらを週の献立へ散らして置くほうが現実的です。

食品100gあたりの亜鉛一度に食べる量の目安
かき(生)14.0mg大ぶりで5〜6個
豚レバー6.9mg1食60〜80g
牛肩ロース5.7mg1食80〜100g
カシューナッツ5.4mg1回20g前後
牛もも肉4.0mg1食80〜100g
納豆1.9mg1パック40〜50g

かきは群を抜いて濃い食品です

かきは生の状態で100gあたり14.0ミリグラムと、他の食品を大きく引き離しています。大ぶりのもので5〜6個ほどにあたり、一度食べれば1日の推奨量を軽く超える計算になります。

難所は、季節が限られていて毎日食べる食品ではない点でしょう。それでも旬の時期に何度か食卓へ載せる程度で、体内の在庫を支えるうえでは十分な意味を持ちます。

缶詰や冷凍のかきなら季節を問わず手に入り、炊き込みご飯や鍋へ落とすだけでも使えるので、生食が苦手な方でも加熱した形なら取り入れやすいはずです。

赤身肉とレバーが日常の柱になります

牛肩ロースで5.7ミリグラム、牛もも肉で4.0ミリグラム、豚レバーでは6.9ミリグラムと、赤身の肉には安定して亜鉛が入っています。100gという単位も、一食分としてそのまま現実的です。

動物性のたんぱく質と一緒に届く形は、後述するとおり吸収の面でも有利に働きます。同じ亜鉛でも、どんな食品に乗ってくるかで体へ入る割合が変わってきます。

鶏むね肉や白身魚も良質なたんぱく源ではあるものの、亜鉛という一点では赤身に及びません。減量中に肉を鶏むね肉とささみへ寄せると、たんぱく質は足りていても亜鉛だけが細ります。

種実類と大豆製品で底を上げます

カシューナッツは5.4ミリグラム、アーモンドは4.4ミリグラムと、種実類も濃い部類に入ります。ただし一度に食べる量が20g前後なので、実際に入る量は1ミリグラム前後にとどまります。

納豆は1.9ミリグラムで、1パック40〜50gなら1ミリグラムに届きません。数字だけを見れば控えめでも、毎日続く食品は年単位で見たときに大きな差を生みます。

種実類も大豆もフィチン酸という成分を抱えているため、食べ合わせしだいで体へ入る割合が変わります。単体で完結させず、たんぱく質の多い皿と組ませると無駄がありません。

主食からも少しずつ入っています

日本人109人の食事を調べた研究では、亜鉛の供給源として最も大きかったのは米と米加工品でした。1食あたりの量は多くなくても、毎食入ってくる食品は合計で効いてきます。

同じ研究では、量としてはわずかな貝類が亜鉛の栄養状態と強く関わっていました。一方で豆類はフィチン酸を含むため、摂取量が多いほど指標が悪い方向へ動いていたと報告されています。

主食で土台をつくり、貝類と赤身肉で山をつくる組み立てが、日本の食卓ではいちばん無理のない形になります。糖質を大きく削る食べ方では、この土台ごと崩してしまう点に注意が要るでしょう。

亜鉛の吸収を助ける組み合わせと妨げる組み合わせ

同じ量の亜鉛でも、何と一緒に食べるかで体へ入る割合は数倍変わります。動物性たんぱく質は押し上げる方向に、穀物や豆に多いフィチン酸は引き下げる方向に働きます。

牛肉とシリアルでは吸収率が4倍近く違いました

健康な8人へ、亜鉛をおよそ4ミリグラム含む食事を牛肉と高繊維のシリアルの2通りで出した実験があります。吸収された割合は牛肉で55.1%、シリアルで14.7%と、4倍近い開きが出ました。

含まれる亜鉛の量が同じでも、実際に体へ入る量はここまで違ってきます。食品成分表の数字を足し合わせただけでは、届いた量にならないという意味でもあります。

赤身肉やかきがしばしば勧められるのは、含有量が多いからだけではなく、吸収の面でも有利という二重の理由が背後にあるためです。

フィチン酸は亜鉛を抱え込みます

穀物の外皮や豆、種実類に多いフィチン酸は、亜鉛と結びついて腸から吸収されにくい形へ変えます。研究をまとめた総説でも、この妨げる働きは実際に示せると整理されました。

同じ総説は、カルシウムが加わると結びつきがいっそう強まり、妨げが大きくなると指摘しています。マグネシウムにも似た働きがあるのに、多くの研究で見落とされてきたとも述べました。

一方でたんぱく質は、抱え込まれた亜鉛を解き放つ側に回るので、玄米や豆を食べるとき肉や魚を同じ食卓へ並べる意味はそこにあります。

一緒に摂るもの吸収への向き食卓での扱い方
肉・魚・卵のたんぱく質押し上げる穀物や豆と同じ皿に組む
フィチン酸(外皮・豆・種実)引き下げる浸水や発酵で減らす
カルシウム・食物繊維やや引き下げる別の食事へ回す

下ごしらえで妨げを減らせます

フィチン酸は水へ溶け出す性質があるので、豆を一晩浸けて茹でこぼすだけでも量が減ります。発酵させた食品で亜鉛が入りやすくなるのも、おおむね同じ理屈で説明がつきます。

精白した穀物は外皮ごとフィチン酸が落ちている一方、亜鉛そのものも一緒に減っています。どちらを取るかという話なので、玄米や全粒粉をやめる必要まではありません。

外皮のある穀物を続けるなら、同じ食卓へ赤身肉や貝類を置く形にすると釣り合いが取れます。食物繊維の利点を手放さずに、亜鉛の側も守れる並べ方です。

カルシウムと食物繊維は同じ皿に集めません

カルシウムも食物繊維も体に必要な成分ですが、亜鉛の吸収という一点に限れば邪魔をする側へ回ります。避けるのではなく、同じ皿に集中させない形が落としどころです。

乳製品を亜鉛の多い食事と同時に大量へ寄せるより、間食や別の食事へ回すほうが無駄がありません。朝と昼で役割を分ける感覚で組み立てると、献立も窮屈になりません。

もっとも、一日の合計で足りていれば一食ごとの厳密な計算までは要りません。細かく数えるほど食事が窮屈になり、結局は続かなくなってしまいます。

日本人女性の亜鉛は推奨量に届いていません

日本の女性の平均摂取量は、推奨量をわずかに下回る水準にとどまっています。大きく欠乏しているわけではないものの、余裕がある位置とも言いにくいのが実際のところです。

区分1日あたりの推奨量耐容上限量
女性18〜29歳7.5mg35mg
女性30〜64歳8.0mg35mg
女性65〜74歳7.5mg35mg

平均は推奨量をわずかに下回ります

食事摂取基準は、30〜64歳の女性で1日8.0ミリグラムを推奨量に置いています。18〜29歳と65〜74歳では7.5ミリグラムで、年代によって少しずつ差が設けられました。

いっぽう令和元年の国民健康・栄養調査で20歳以上の女性が実際に摂っていた量は、平均7.7ミリグラムでした。差そのものは大きくないとはいえ、平均が推奨量へ届かない状態が続いています。

平均が下回るという状況は、半数近い人が推奨量に足りていない状況とほぼ同じ意味を持ちます。ふだんの食事を思い返す価値は、そこそこ大きいといえます。

血液検査で低めの人は少なくありません

東京で健診を受けた日本人2056人の血清亜鉛を調べた研究では、女性で明らかな欠乏にあたる人は0.6%にとどまりました。ただし境界域に入る人は38.4%を占めています。

境界域は病気と呼ぶ段階ではないものの、余力の乏しい状態だと読めます。同じ研究では、この層で栄養状態を示す指標も低い傾向がみられました。

髪の変化だけを手がかりに亜鉛の不足を判断するのは、やはり無理があります。気になるなら血液検査で実際の値を確かめるほうが、話は早く進みます。

食事を減らすと真っ先に細る栄養素です

亜鉛は肉や魚介に多いため、主食とおかずのうちおかずを削る形の減量で真っ先に細ります。糖質を減らす代わりに脂質まで控えると、皿に残るのは野菜と少量のたんぱく質になりがちです。

朝食を抜く、昼を麺類だけで済ませるという形も、亜鉛という点では不利に働きます。米から入るとはいえ、1食あたりの量はけっして多くありません。

  • 朝食を抜く日が週の半分を超えている
  • 昼食が麺類やパンだけで終わる
  • 肉を鶏むね肉とささみに寄せている
  • 魚介をほとんど食べない週がある
  • 間食が食事の1回分を置き換えている

並べた項目に二つ三つと当てはまるなら、亜鉛はかなり細っている可能性があります。逆にいえば、献立の組み替えだけで戻せる余地も大きいという話でもあります。

髪の変化に気づく年代と重なります

30代から50代は、分け目の広がりやボリュームの落ち方に気づきやすい年代です。同時に、食事の量が落ち着いて食べる品目も固定されやすい時期が重なります。

髪の変化には年齢や遺伝、ホルモンの変動など複数の要因が絡むため、亜鉛だけを取り出して犯人に仕立てるわけにはいきません。ただし土台の材料が細っていれば、他の要因の影響も出やすくなります。

食事を整える作業は、他の手当ての効きを邪魔しない土台づくりにあたるので、派手さはなくても外せない一手ではあるでしょう。

亜鉛は摂るほど髪によいわけではありません

亜鉛は多く摂るほど良い栄養素ではありません。過剰は銅の吸収を妨げ、貧血や白血球の減少といったまったく別の問題を招きます。

過剰な亜鉛は銅の吸収を妨げます

亜鉛を多く摂り続けると腸の細胞でメタロチオネインというたんぱく質が増え、これが銅を抱え込んで体内へ渡る量を減らします。その結果、銅のほうが足りなくなっていきます。

報告された症例では、銅の不足から鉄芽球性貧血と好中球の減少が起こり、他の血液の病気と見分けがつきにくい形をとりました。著者らは、早く気づけば不要な検査を避けられると述べています。

髪を思って始めた習慣が、まったく別の不調へつながってしまう形なので、上乗せするほど良いという発想はこの栄養素に当てはまりません。

耐容上限量という線が引かれています

食事摂取基準では、18歳以上の女性で1日35ミリグラムを耐容上限量に置いています。これを超えても直ちに害が出るわけではなく、健康を損なうおそれのない上限として引かれた線です。

ふだんの食事だけでこの線を越えるのは、かきを毎日大量に食べるような偏りがない限り起こりません。問題になるのは、濃縮された形で長く足し続けたときのほうです。

医師の判断のもとで補っている場合を除き、上限へ近づくような足し方は避けるほうが無難でしょう。銅の不足は自覚しにくく、気づくまでに時間がかかります。

不足している人と足りている人では話が別です

血液検査で亜鉛が低いと分かっている人では、不足を埋める意味がはっきりしています。先に触れた5例の報告も、この条件を満たした人たちの話でした。

いっぽう値が正常な人が量だけ増やしても、髪が増えるという結果は期待できません。同じ行動でも出発点が違えば、意味はまるで変わってしまいます。

血液検査での位置亜鉛を増やす意味気をつける点
明らかに低い不足による変化が戻る場合がある医師の判断のもとで補う
境界域食事で底を上げる値打ちがある食品から入れるのを基本に
正常な範囲髪の変化は期待しにくい銅の不足を招かない量に

自分がどの位置に立っているかを知らないまま量だけ動かすのは、割に合わない選び方です。検査の結果が一枚あるだけで、判断の精度はずいぶん上がります。

抜け毛が続くときは原因を切り分けます

抜け毛や髪の細りが数か月にわたって続くなら、亜鉛以外の原因も並べて考える段階です。鉄やたんぱく質の不足、甲状腺の働き、出産や強い負荷の後の一時的な変化など、候補は複数あります。

女性の薄毛には、遺伝やホルモンの変動が関わる型も含まれます。原因ごとに手の打ち方が違うので、自己判断で栄養だけを足していくと遠回りになりかねません。

皮膚科や女性の薄毛を扱う医療機関へ相談すると、血液検査を含めて原因を整理しやすくなります。食事の見直しは、その土台として並行して続けられます。

よくある質問

Q
亜鉛を摂れば髪は増えますか?
A

亜鉛を足せば髪が増えると言い切れる根拠はありません。分かっているのは、不足していた人でそれを埋めると抜け毛が落ち着いた例が報告されている、という範囲までです。

血液検査で値が正常な方が量を増やしても、同じ変化は期待しにくいでしょう。髪づくりの材料をきちんと届けるための土台づくり、と考えておくのが実際に近い見方です。

Q
亜鉛は髪のためにどの食品から摂るのが効率的ですか?
A

含まれる量で選ぶなら、かきが100gあたり14.0ミリグラムと群を抜いています。日常の柱としては、牛肩ロースや牛もも肉、豚レバーといった赤身が扱いやすいでしょう。

動物性たんぱく質と一緒に届く亜鉛は吸収の面でも有利で、牛肉とシリアルを比べた実験では吸収率に4倍近い差が出ています。種実類や納豆は、そこへ日々少しずつ足す役回りです。

Q
亜鉛の吸収を妨げる食べ物はありますか?
A

穀物の外皮や豆、種実類に多いフィチン酸が代表格で、亜鉛と結びついて吸収されにくい形へ変えます。カルシウムが加わると結びつきはさらに強まると総説で指摘されました。

とはいえ、これらの食品を避ける必要はありません。豆を浸水させてから調理する、同じ食卓に肉や魚を並べるといった工夫で、妨げはかなり打ち消せます。

Q
亜鉛を摂りすぎるとどうなりますか?
A

いちばん知られている影響は、銅の吸収を妨げてしまう点です。報告された症例では、銅の不足から鉄芽球性貧血と好中球の減少が起こり、他の血液の病気と見分けがつきにくい形をとりました。

食事摂取基準は18歳以上の女性で1日35ミリグラムを耐容上限量に置いています。ふだんの食事でここへ届くことはまずなく、注意が要るのは濃縮された形で長く足し続けた場合です。

Q
亜鉛が足りているかどうかはどう確かめますか?
A

いちばん確かなのは血液検査で血清亜鉛を測る方法です。日本人2056人を調べた研究では、女性の0.6%が明らかな欠乏、38.4%が境界域という分布でした。

味の感じ方の変化、口内炎、爪の白い斑点、傷の治りの遅さといった手がかりが抜け毛と重なるなら、いちど医療機関で相談すると原因を整理しやすくなります。髪の変化だけで判断するのは難しいところです。

参考にした論文