「喫煙で頭皮の血流が落ちる」という説明は広く出回っていますが、頭皮そのものを測って確かめた研究は、探してみるとほとんど見当たりません。
数字で示されてきたのは前腕や指、額といった皮膚の血流で、たばこを1本吸うだけで3割前後下がり、元に戻るまでに数分かかると報告されています。
一酸化炭素がヘモグロビンと結びついて酸素を運ぶ力を削る点も、手術の前後を扱う研究のなかで数字とともに裏づけられてきました。
どこまでが実際に測られた事実で、どこからが頭皮への当てはめなのか。境目を引きながら、血流と酸素という一点にしぼって見ていきます。
喫煙と頭皮血流の話で実際に測られてきたもの
測られてきたのはほぼすべて皮膚の血流であり、頭皮を対象にした喫煙の研究は乏しいため、皮膚で得られたデータを借りる形で説明が組み立てられてきました。
どんな道具で何を見ているのかを先に押さえておくと、あとに出てくる数字の重みも変わってきます。
| 測り方 | 分かるもの | 届かないところ |
|---|---|---|
| レーザードップラー血流計 | 皮膚の浅い層の血流の増減 | 深い層や毛包のまわり |
| 経皮酸素分圧 | 皮膚の表面に届く酸素の量 | 毛包の内側の酸素 |
| キセノン洗い出し法 | 皮下組織の血流の量 | 設備が要り件数が少ない |
| 血中のカルボキシヘモグロビン | 全身で酸素を運ぶ力の目減り | 頭皮という局所の事情 |
四つのどれもが毛包そのものを測る道具ではなく、その周りの環境や全身の条件を映すものだと押さえておくと、数字の読み違いをかなり防げます。
レーザードップラー血流計が見ているのは皮膚の浅い層です
皮膚に弱い光を当て、動いている赤血球にぶつかって戻ってきた光のずれから血流の勢いを読み取る装置がレーザードップラー血流計で、届く深さは表面から1ミリほどにとどまります。
得られるのは血液の絶対量ではなく、測りはじめを基準にして何割動いたかという相対的な値です。同じ人の同じ場所を吸う前と吸ったあとで比べる使い方に向いており、人と人を比べる用途にはあまり向きません。
毛包が埋まっているのは真皮の深い層から皮下にかけての高さで、この装置が見ている浅い層とは位置がずれています。表面の血流が下がったからといって、毛の根元まで同じ幅で下がったとは言い切れません。
たばこ1本で皮膚の血流はどれくらい下がるのでしょうか?
たばこを1本吸ったあとの皮膚の細かな血流は、習慣的に吸う人で38.1%、吸わない人で28.1%下がったとレーザードップラーで測った研究が報告しており、どちらも偶然では説明しにくい差でした。
戻り方にも違いがあり、吸わない人が2分で元の水準に復したのに対し、習慣的に吸う人は5分かかっています。1日に何本も繰り返せば、低い状態で過ごす時間が少しずつ積み上がる計算になります。
ただし測定の場は前腕などの皮膚であって、頭皮ではありません。下がった割合をそのまま頭に持ち込む読み方は、少し飛びすぎでしょう。
測られた場所は前腕と指、そして額
額、耳のうしろ、前腕、指という4か所をレーザードップラーで並べて測った研究もあり、同じ人の体でも部位によって反応の出方が違っていました。
この研究で目立ったのは、吸っている最中の安静時の血流そのものはさほど動かず、いったん血流を止めてから解放したときの回復のしかたに差が現れた点です。
額は髪の生え際に近く、頭皮にもっとも近い測定点にあたります。それでも頭皮そのものではなく、皮脂腺の密度も毛の生え方も違うため、そのまま重ねるには無理が残ります。
喫煙の直後に血管が縮むのはニコチンの働きによるものです
引き金はニコチンです。吸って数分のうちに末梢の細い血管が締まり、その縮み方は吸い慣れているかどうかで変わってきました。
交感神経が刺激され、末梢の細い血管が締まる
ニコチンは交感神経を刺激して血管を締める向きの働きを強めるため、手足の先や皮膚のように細い血管が集まる場所では、その作用が血流の低下として表に出やすくなります。
皮下の酸素を測った研究の著者らも、観測された低下にはニコチンによる末梢の血管収縮が関わると述べています。吸うまねだけをした場面では、同じ変化が起きていません。
血管が締まること自体は異常な反応ではなく、寒さや緊張でも同じ動きが起こります。気になるのは、1本吸うたびにその状態がわざわざ呼び出される点でしょう。
血管がひらく力そのものも鈍っていました
いったん血流を止めてから解放すると、皮膚の血管はふだんより大きくひらいて不足を取り戻そうとします。反応性充血と呼ばれるこの動きは、血管がどれだけ余力を残しているかを映す物差しになります。
4か所を測った研究では、喫煙したあとに反応性充血のピークの血流が有意に下がり、習慣的に吸う人では元の水準へ戻るまでの時間も延びていました。
安静にしているときの数値だけを眺めていると、この差はまったく見えてきません。血管にひと押しの負荷をかけて初めて、ひらく力の目減りが表に出てきます。
吸い慣れた人ほど長引く血流の低下
回復までの時間に開きがあったという結果は、長く吸ってきた血管ほど締まった状態から抜け出しにくいと読めます。1日に十数本を吸えば、低下と回復が日中ずっと繰り返される勘定になります。
1回あたりの下がり幅よりも、低い状態で過ごした時間の合計のほうが体には効いてくると考えられ、眠っている間に吸わない時間があっても、日中の積み上がりまでは帳消しになりません。
とはいえ、これも前腕の皮膚で数えた時間にすぎません。頭皮でも同じ長さで続くのかどうかは、まだ確かめられていない部分です。
額の血流がむしろ増えた報告もあります
血液中のコチニンで吸う量を裏づけたうえで比べた研究では、量の少ない群にかぎって喫煙2分後に額の皮膚の相対的な血流がむしろ増え、量の多い群と吸わない群では同じ増加が見られませんでした。
同じ研究では歯ぐきの血流にも群間の差が出ておらず、著者らは吸い続けるうちに反応そのものへ慣れが生じている可能性を挙げています。
吸えばどの部位でも一様に血流が落ちる、と単純化できない結果が現に出ています。数字を並べるときは、測った部位と吸う量という前提まで一緒に見ておくと誤読を避けられます。
- 吸った直後に下がる皮膚の血流
- 反応性充血のピークの目減り
- 元の水準へ戻るまでの時間の延び
- 部位や吸う量による反応の食い違い
四つはいずれも皮膚で測られた変化であって、毛が細くなるかどうかを見た項目はひとつも入っていません。毛包を養う側の条件が動いた、というところまでが今の到達点です。
喫煙で増える一酸化炭素は血液が運べる酸素を減らします
血のめぐりとは別の道筋で、血液そのものが運べる酸素の量も減ります。たばこの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンの席を占領し、酸素の乗る場所を奪ってしまうからです。
一酸化炭素はヘモグロビンと強く結びつく
赤血球のヘモグロビンは酸素を運ぶ担い手ですが、一酸化炭素に対しては酸素とは比べものにならないほど強い親和性を持ち、同じ席をめぐる競争では一酸化炭素のほうが圧倒的に有利になります。
結びついたものはカルボキシヘモグロビンと呼ばれ、その分だけ酸素を積める席が減るうえ、残った席から酸素が組織へ降りていく動きも鈍ると説明されてきました。
吸っている最中だけの話でもありません。一酸化炭素は時間をかけて抜けていくため、次の1本を吸うまでに完全には消えていない場合があります。
喫煙者のカルボキシヘモグロビンはどれくらいでしょうか?
屋外で吸う喫煙者85人を測った研究では、吸う前の平均が2.7%、吸ったあとのピークが3.1%で、吸わない15人の対照では1.3%という値が並びました。
差は1%台にとどまり、数字だけを取り出せば小さく映ります。ただしこの目減りは、全身をめぐる血液のすべてに薄く乗ってくるものです。
| 測った群 | 人数 | 一酸化炭素と結びついたヘモグロビン |
|---|---|---|
| 習慣的に吸う人 | 85人 | 平均2.7%(吸った直後のピーク3.1%) |
| 吸わない人 | 15人 | 平均1.3% |
同じ研究では喫煙者のおよそ8割が5%以下に収まっており、個人差の大きさもうかがえます。値はパルスオキシメーターで推定したもので、採血で測った濃度と完全には一致しません。
運ぶ量が減っても自覚しにくい範囲にとどまります
数%の目減りで息苦しさを覚える方はまずいません。体は心拍や血流をこまかく調整して不足を補うため、日常の動作のなかでは表に出にくいままです。
補いが効きにくいのは、もともと血のめぐりが細い末梢や、酸素を多く使う組織のほうです。毛包は毛を作り続けるために細胞分裂の盛んな組織で、後者に当たると説明されてきました。
ただし、毛包が実際にどれだけ酸素を使い、どこからを不足と呼べるのかを示した数字は見当たりません。理屈の筋道はあっても、当てる目盛りが用意されていない状態です。
皮膚の酸素が喫煙で下がることは手術の現場で確かめられています
皮膚に届く酸素が喫煙で下がる点は、手術の前後を扱う研究でくり返し確かめられてきました。傷が治るかどうかという、目に見える結果と直結しているからです。
皮下に細い管を入れて組織の酸素を測る
腕の皮下に細いチューブを埋め込み、そこにたまった液の酸素分圧を読み取ると、傷が治っていく現場に近い深さの酸素量が分かり、皮膚の表面から測る方法より組織の内側の事情を映します。
この測り方は、傷の治りにくさを見積もる指標として外科の分野で使われてきました。数値が低いほど、感染や治癒の遅れが起きやすいと分かっています。
頭皮で同じ測定を行った研究は見当たりませんが、皮膚という同じ器官で何が起きているのかを知る土台にはなります。
吸ったあと30分から50分、酸素は低いままでした
8人のボランティアで測った研究では、喫煙のあと皮下の酸素分圧が急速に下がり、30分から50分にわたって低い状態が続いた一方、吸うまねだけをした場面では変化が起きませんでした。
著者らは、1日に1箱を吸う人なら日中のかなりの時間、組織が酸素の足りない状態にさらされる計算になると述べています。1本ごとの影響が細切れに続いていく形です。
下がった水準は、動物や人の研究で治りの悪さと結びつけられてきた範囲に入っていました。数字に意味づけを与えられる点が、この研究の強みでしょう。
喫煙者では傷の治りにくさが数字で示されています
140のコホート研究、のべ479,150人分をまとめた解析では、喫煙者は吸わない人に比べて手術のあとの合併症が広い範囲で増えていました。
組織が壊死する合併症は3.60倍、治癒の遅れや創が開く合併症は2.07倍、手術部位の感染は1.79倍という値で、創まわりの合併症をひとまとめにすると2.27倍でした。
いずれも頭皮ではなく体じゅうの手術創を集めたデータですが、酸素と血流が細ると組織の修復が滞るという筋道を、人のからだで裏づけています。
| 手術のあとに調べた合併症 | 喫煙者での起こりやすさ |
|---|---|
| 組織の壊死 | 3.60倍 |
| 創まわりの合併症をまとめたもの | 2.27倍 |
| 治癒の遅れ・創が開く | 2.07倍 |
| 手術部位の感染 | 1.79倍 |
倍率の並びを見ると、酸素の届きにくさが直接ひびく壊死でもっとも差が開いています。血流と酸素という道筋が絵空事ではないと分かる数字です。
頭皮血流そのものを測った研究はどれだけあるのでしょうか?
頭皮そのものを測った研究は、数えるほどしかありません。しかも喫煙を調べたものではなく、薄毛のある頭皮とない頭皮を比べた古い研究が中心です。
薄毛のある頭皮で皮下の血流を測った報告
放射性のキセノンが洗い流されていく速さから皮下の血流を割り出す方法で、早期の男性型脱毛症の14人と、年齢をそろえた毛髪の正常な14人の頭皮が比べられました。
脱毛のある群は100グラムあたり毎分13.7ミリリットル、対照群は35.7ミリリットルで、2.6倍という大きな開きが統計的にもはっきり出ています。
著者らは、毛包へ届く栄養の血流が減っている点が早期の男性型脱毛症に関わるかもしれないと述べました。1989年に発表された報告で、対象はすべて男性です。
頭皮の酸素を測った研究は非喫煙者が対象でした
頭皮の表面から酸素分圧を測った研究では、たばこを吸わない男性18人が集められ、男性型脱毛症のある9人と脱毛のない9人が比べられました。
脱毛のある前頭部は32.2mmHg、毛の残る側頭部は51.8mmHgで、同じ頭のなかで差がついていた一方、対照群では部位による差が出ていません。
頭皮の温度には差がなく、温まり方の違いで説明できる現象でもありませんでした。喫煙の影響を避けるため、吸う人を最初から除いて組まれた設計です。
喫煙者の頭皮を直接比べた研究は見当たりません
吸う人と吸わない人の頭皮を並べ、血流や酸素を測って比べた研究は、探した範囲では見つかりません。皮膚で分かった内容と頭皮で分かった内容が、別々の棚に置かれたままになっています。
喫煙と髪の関わりをまとめた系統的レビューは32件の研究を集めましたが、中身は脱毛や白髪との関連が中心で、頭皮の血流を測った研究は並んでいません。
間をつなぐ研究がないため、皮膚の数字と頭皮の数字は推論で橋渡しされている段階です。その継ぎ目がどこにあるのかを知っておくと、情報の受け取り方も変わってきます。
女性の頭皮のデータはさらに乏しい状況です
頭皮を測った2つの研究はどちらも男性型脱毛症の男性が対象で、女性の薄毛は分け目が広がる形をとりやすく、進み方も背景も同じではありません。
女性の頭皮で血流や酸素を測り、吸う人と吸わない人を比べたデータも見当たらないため、当てはめには二重の飛躍が挟まる形になります。
分かっていないと書くのは頼りなく響きますが、分かったふりで数字を作るよりは正直な線でしょう。
- 皮膚で測られた喫煙直後の血流の低下
- 皮下組織で測られた酸素の低下
- 薄毛のある頭皮の血流と酸素の低さ(男性・非喫煙者)
- 喫煙者の頭皮を直接測ったデータ(見当たらない)
上の三つまでは実測が積まれており、四つめだけが空白のまま残っています。その空白を埋める形で語られてきたのが、「喫煙で頭皮血流が落ちる」という一文でした。
髪のエイジングと喫煙による頭皮血流の変化をどう受け止めるか
加齢による髪の変化と、喫煙で説明されうる変化は、分けて数えるほうが正確です。前者は誰のもとにも訪れますが、後者には自分の側で動かせる余地が残ります。
| 分かっている内容 | どこで測られたか | 残っている問い |
|---|---|---|
| 吸った直後に皮膚の血流が下がる | 前腕・指・額 | 頭皮でも同じか |
| 皮下組織の酸素が30〜50分下がる | 腕の皮下 | 毛包の高さで足りるか |
| 血液が運べる酸素が数%減る | 全身の血液 | 頭皮の局所にどう効くか |
| 薄毛の頭皮は血流と酸素が低い | 男性・非喫煙者の頭皮 | 女性や喫煙者でも同じか |
右端の列が埋まらないかぎり、喫煙で髪が抜けると言い切るだけの材料はそろいません。左端だけを取り出して並べると、話が実際より先まで進んで見えてしまいます。
加齢そのものの変化と喫煙の影響を切り分ける
年齢を重ねると毛の直径は細くなり、成長期の長さも少しずつ縮んでいきます。吸う人にも吸わない人にも等しく起こる変化で、避けようがありません。
いっぽう喫煙による血流と酸素の変化は、1本ごとに呼び出されて元へ戻る上乗せの部分にあたり、土台となる加齢とは別の層に置かれています。
二つを混ぜて語ると、加齢のぶんまで喫煙のせいに見えたり、逆に加齢だから仕方がないと片づけたりしがちです。分けて眺めるほうが、打てる手も見えやすくなります。
血流が下がるから髪が抜ける、と直線では結べません
血流と酸素が細るところまでは実測があり、毛包がその両方を必要としている点にも異論はありません。つながっていないのは、どれだけ下がると毛がどう変わるのかという量の関係です。
薄毛の頭皮で血流が低いという観察にしても、血流が減って毛が細ったのか、毛が減った結果として必要な血流が減ったのかを区別できません。同じ時点で測る設計には、この限界がついて回ります。
因果の向きを決めるには、時間を追って測り続けるか、条件をそろえて介入するかが要ります。頭皮ではそのどちらも行われていない段階です。
自分で選べる要素として喫煙が残ります
年齢も体質も選べませんが、吸うかどうかは選べる側に置かれています。髪への効き方が未確定であっても、血管と酸素にとって望ましくない条件だという点は動きません。
髪のためだけに考える必要もありません。皮膚の傷の治り方、歯ぐきの状態、血管の健康まで、同じ道筋の上に並んでいます。
やめたい気持ちがあるなら、禁煙外来という窓口が使えます。ひとりで我慢を続けるより、無理のない形を一緒に探せる場所です。
気になる変化があるなら受診で原因を確かめます
抜け毛が3か月以上続く、分け目の地肌が目立ってきた、円形に抜けるといった変化があるときは、暮らしを見直すより先に受診したほうが近道になります。
女性の薄毛の背景には、鉄の不足や甲状腺の病気など、検査ではっきり分かるものが並びます。喫煙だけに目を向けていると、見つかるはずのものを取り逃がしかねません。
受診のときは1日の本数を伝えておくと、判断の材料が増えます。責めるために聞いているのではなく、原因を絞り込むために確かめています。
よくある質問
- Q喫煙で頭皮血流はどれくらい下がりますか?
- A
頭皮で測った数字はありません。報告されているのは皮膚の血流で、たばこ1本のあと習慣的に吸う人で38.1%、吸わない人で28.1%下がったという値です。
測定に使われたのはレーザードップラー血流計で、対象は前腕などの皮膚でした。元の水準へ戻るまでの時間は、吸わない人が2分、習慣的に吸う人が5分かかっています。
頭皮でも同じ幅で下がるのかどうかは確かめられていません。数字を頭皮へ移すときは、あくまで推定だと押さえておくほうが安全でしょう。
- Q頭皮血流が下がると、髪はすぐに細くなりますか?
- A
すぐに細くなると示した研究はありません。血流や酸素が下がるところまでは測られていますが、どれだけ下がると毛がどう変わるのかという量の関係が空白のままです。
毛が伸びる速さはもともとゆるやかで、暮らしの側が変わっても見た目に届くまでには数か月かかります。数日ぶんの抜け毛の増減だけで判断すると、振り回されて終わりがちです。
薄毛のある頭皮で血流が低いという観察もありますが、血流の低下が先か毛の減少が先かまでは区別できていません。
- Q喫煙者の頭皮血流を直接調べた研究はありますか?
- A
探した範囲では見当たりません。頭皮を測った研究は薄毛のある人とない人を比べたもので、しかも対象は男性、うち1本は吸わない人だけを集めた設計でした。
喫煙と髪の関わりをまとめた系統的レビューでも、集められた32件は脱毛や白髪との関連が中心で、頭皮の血流を測った研究は含まれていません。
皮膚のデータと頭皮のデータが別々に置かれ、その間が推論で橋渡しされている状態です。
- Q喫煙による頭皮血流の変化と、加齢による髪の変化はどう違いますか?
- A
加齢の変化は誰のもとにも訪れ、毛の直径が細くなり成長期も短くなっていきます。避けようのない土台の部分だといえます。
喫煙で説明されうる血流と酸素の変化は、1本ごとに呼び出されて戻る上乗せの部分にあたり、土台とは別の層として数えるほうが正確です。
二つを混ぜると、加齢のぶんまで喫煙のせいに見えてしまいます。分けて眺めれば、動かせる部分がどこに残っているのかも見えてきます。
- Q喫煙している人が髪の相談で受診するとき、頭皮血流は測ってもらえますか?
- A
日常の診療で頭皮の血流を測る場面はほとんどありません。研究で使われてきた装置は限られた施設のもので、治療の判断に使う指標としても確立していないためです。
診察で行われるのは、頭皮と髪の状態を拡大して見る観察と、血液検査による原因の絞り込みです。鉄の不足や甲状腺の病気は、この段階で見つかります。
1日の本数や使っている薬を伝えておくと、判断の材料が増えます。血流の数値が出ないからといって、調べようがないわけではありません。
