ゆっくり進行するタイプの1型糖尿病として知られる緩徐進行1型糖尿病(以下ではSPIDDMと呼びます)は、2型と混同されやすく見過ごされる可能性があり、適切な診断と早期の治療が重要です。

インスリン分泌不全が徐々に進む特徴を持ち、一般的な1型糖尿病と比べて発症からインスリン治療の開始までに時間の猶予があるため、さまざまな療法を組み合わせながら経過を見守る必要があります。

本記事ではSPIDDMの病態や診断のポイント、治療に向けた考え方をわかりやすく解説しながら糖尿病内科の受診を検討中の方にも役立つ情報をお伝えします。

SPIDDMとは何か

ゆっくりとインスリン分泌が低下していくSPIDDMは初期段階で2型に類似した臨床像を示します。

自覚症状が軽微なことも多いため受診が遅れることがあります。知識を深めることで早期の診断と対応につなげることができます。

SPIDDMの特徴

SPIDDMは緩徐進行する自己免疫性の糖尿病です。

劇症1型糖尿病のように急激にインスリン分泌が失われるパターンではなく、長期間にわたって残存インスリン量が低下していきます。

初発の時点で急性症状が現れにくいため、2型と診断されるケースも珍しくありません。

ここでは1型糖尿病一般との比較を示して理解を深めます。

1型糖尿病との比較

区分一般的な1型糖尿病SPIDDM
発症様式急性発症ゆるやかな進行
インスリン分泌の低下比較的急速徐々に低下
典型的症状多尿・口渇などの高血糖症状が明確症状が軽度で見過ごされやすい
自己抗体の有無高頻度で陽性比較的高頻度で陽性
治療開始のタイミング発症時よりインスリン必須となることが多い経過をみつつインスリン導入を検討

SPIDDMは残存インスリンがある間は経口血糖降下薬などでコントロールを図ることもあります。

しかしインスリン枯渇が進行すると最終的にはインスリン療法を要するケースが多く、1型糖尿病の1つの亜型と理解されています。

発症と進行の流れ

SPIDDMは長年かけて膵β細胞の機能が低下し、やがて自己免疫反応によってインスリン分泌が限界に達します。

初期段階では比較的良好な血糖コントロールが保てることもあり、健診などでたまたま高血糖を指摘されて初めて気づく場合があります。

発症からインスリン導入まで

時期主な特徴
潜在期自己抗体が陽性となるが、血糖値は正常範囲内
早期外来受診軽度〜中等度の血糖上昇が確認され、2型に類似
経過観察期間抗GAD抗体などが陽性であり、緩やかにインスリン分泌が低下
インスリン導入期血糖コントロールが難しくなり、インスリン療法が検討される

健康診断などで空腹時血糖値やHbA1cのわずかな上昇を見つけることで、SPIDDMを早期に疑う手がかりになります。

特に中高年で急激に症状が出ない場合には要注意です。

SPIDDMと2型糖尿病との混同

SPIDDMは発症当初2型に似ているため、診断が遅れる原因になっています。

両者の鑑別には自己抗体の測定、特に抗GAD抗体の有無などがポイントになります。

2型の特徴であるインスリン抵抗性の高さよりもインスリン分泌不全が主体となる点がSPIDDMの大きな違いです。

抗GAD抗体による鑑別の重要性

  • 抗GAD抗体は自己免疫性の糖尿病で陽性となるケースが多い
  • 2型では自己抗体がほとんど検出されない
  • 高血糖が軽度でも抗体陽性の場合はSPIDDMを強く疑う

自己免疫が関与する糖尿病であるという理解を踏まえて、他の自己免疫疾患の合併にも配慮することが大切になります。

早期受診のすすめ

初期症状が乏しくても血糖値のわずかな上昇や体調の変化を感じたら早めの受診をおすすめします。

特に家系に自己免疫疾患が多い場合や、血縁者に1型糖尿病がいる場合は注意が必要です。

病態生理のポイント

SPIDDMの背景には自己免疫機序があります。ゆるやかに進行するため、一般的な1型糖尿病より症状が出にくい傾向がありますが、膵β細胞は確実にダメージを受けていきます。

ここではそのメカニズムを掘り下げます。

自己免疫と膵β細胞の破壊

自己免疫反応によって膵β細胞が攻撃されることは1型糖尿病全般に共通した特徴です。

SPIDDMの場合は以下のような経路で膵β細胞が傷害を受けます。

  • 抗GAD抗体やIA-2抗体などの自己抗体が産生される
  • T細胞が膵β細胞を攻撃する
  • 炎症反応の進行に伴い徐々にインスリン産生が低下する

一気に膵β細胞が破壊される劇症1型糖尿病とは異なり、数年かけてインスリン分泌能が落ちていく点がSPIDDMらしさといえます。

自己免疫反応を補足する図

主な自己抗体役割と特徴
抗GAD抗体膵β細胞に存在する酵素GADを標的とする
IA-2抗体インスリン顆粒関連タンパク質を認識し、1型糖尿病の補助的診断として用いられる
ICA(膵島細胞抗体)古くから知られているが、検査実施が限られる場合もある

自己抗体が複数陽性になるほど膵β細胞の破壊が進む可能性が高いと考えられています。

インスリン分泌の推移

SPIDDMでは初期段階ではインスリン分泌がある程度保たれますが、自己免疫反応の進行とともに次第に枯渇していきます。

その結果、血糖コントロールが困難になり、インスリン療法に踏み切る時期が訪れます。

インスリン分泌機能低下を見極めるための指標

  • 空腹時血中Cペプチド(FCP)
  • 食後Cペプチド
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験時のインスリン応答

血清Cペプチドは体内で産生されたインスリン量を推定するうえで有用です。

インスリン注射とは異なり、外因性インスリンにはCペプチドが含まれないため、内因性インスリンの分泌能力を把握できます。

2型糖尿病との混在要素

SPIDDMの初期段階ではインスリン分泌がまだ残っているため、2型糖尿病と同様に経口血糖降下薬だけで血糖が保たれる場合があります。

しかし、自己免疫によって最終的にインスリン不足に陥る点で2型との経過は大きく異なります。

2型糖尿病的な要素

見かけの症状SPIDDM2型糖尿病
肥満の関与肥満が無い場合も多いが、軽度肥満があるケースも存在肥満やメタボリックシンドロームが多い
経口薬での管理初期は経口薬のみで管理できる場合がある経口薬から開始し、必要に応じて注射療法へ移行

こうした混在要素があるため、自己抗体検査を含めた総合的な診断が大切になります。

合併症への注意

SPIDDMは進行速度が穏やかとはいえ、長期間にわたる高血糖は合併症を招きやすくなります。

網膜症や腎症、神経障害などの慢性合併症を予防するには早めの血糖管理が要となります。

SPIDDMを疑う診断の手順

SPIDDMの診断は単に血糖やHbA1cの数値だけでなく、自己抗体検査やインスリン分泌能の評価を組み合わせて総合的に行います。

診察と問診

問診では以下の内容に重点を置きます。

  • 家族歴(1型糖尿病や自己免疫疾患の有無)
  • 発症時の症状や体重変化
  • 過去の血糖値や健診結果
  • 日常の食生活や運動習慣

なかでも「自己免疫疾患をもつ血縁者がいるか」は、SPIDDMを強く疑う重要なポイントです。

さらに、見た目の肥満度や合併症状の有無を観察して2型糖尿病の要素がどの程度あるかもチェックします。

問診で重視するポイント

  • 自己免疫疾患の家族歴
  • 軽微な血糖上昇時からどの程度の期間が経過したか
  • 仕事や生活習慣などストレスの状況

血液検査と尿検査

血液検査では血糖値やHbA1cだけでなく、自己抗体の有無を調べることが重要です。

特に抗GAD抗体やIA-2抗体などの自己抗体が陽性であれば、SPIDDMの可能性が高まります。

尿検査では尿糖・尿中アルブミンなどを測定し、合併症の有無を確認します。

血液検査の項目

項目意義
空腹時血糖基本的な血糖値の指標
HbA1c過去1~2か月の血糖コントロール状況を反映
抗GAD抗体自己免疫性かどうかを判断する重要指標
IA-2抗体抗GAD抗体と併せて測定し、自己免疫性をより確実に判定
Cペプチド内因性インスリン産生能力の評価に用いる

追加検査による確定診断

自己抗体が陽性の場合でもインスリン分泌能の評価を行ってSPIDDMかどうかを判断します。

経口ブドウ糖負荷試験やグルカゴン負荷試験などを組み合わせることで、残存インスリン分泌能を定量的に把握してインスリン療法の導入時期を検討します。

診断を補強する指標

  • 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)でのインスリン分泌カーブ
  • グルカゴン負荷試験時のCペプチド応答
  • HOMA-β(インスリン分泌能の推定指標)

SPIDDMではインスリン抵抗性よりも分泌不全が主たる問題なので、HOMA-IRなどの抵抗性指数よりHOMA-βを重視する傾向があります。

鑑別診断

SPIDDMと2型を区別するためには自己抗体検査が鍵になりますが、まれに肥満がありインスリン抵抗性も合併している患者さんもいるため、一概に判別が難しい場合があります。

総合的に診断し、必要があれば専門医へ紹介することが大切です。

治療方針の考え方

SPIDDMの治療方針はどのタイミングでインスリン治療を導入するかが大きな鍵となります。

初期段階でインスリン導入が必要になるケースもあれば、ある程度は経口薬や生活習慣の改善で管理できる場合もあります。

インスリン治療のタイミング

インスリン治療を開始するかどうかは残存インスリンの評価が重要です。

以下のような指針で導入を検討します。

  • 食後の血糖値やHbA1cが高めかつ、Cペプチドが減少傾向にある
  • 経口血糖降下薬でのコントロールが難しくなってきた
  • 長時間作用型と速攻型のインスリン調整で生活の質を維持できる可能性が高い

残存インスリンをできるだけ温存しながら管理する視点が大切です。

過度に遅らせると合併症のリスクが高まり、早すぎると低血糖や負担増につながる可能性があります。

インスリン導入に関わるチェックポイント

観点内容
残存インスリン分泌能空腹時Cペプチド値や負荷試験の結果を総合的に判断
患者の生活リズム日中の活動量や食事パターン、自己注射の可否など
血糖値の変動パターン深夜・早朝の低血糖リスクを含めて考慮
合併症の進行度腎症などが進んでいる場合は厳格な管理が求められることが多い

経口血糖降下薬の使用

SPIDDMの初期段階では経口薬のみで血糖をコントロールできる場合があります。

インスリン抵抗性を改善するメトホルミンや食後血糖を抑えるDPP-4阻害薬などを選択し、血糖管理を進めます。

ただし、自己免疫による膵β細胞の破壊は進行している点を忘れず、定期的に分泌能の再評価が必要です。

生活習慣の改善

生活習慣の見直しはSPIDDMを含む糖尿病全般の基本ですが、SPIDDMにおいては特にインスリン分泌の維持をサポートする意味でも重要です。

適度な運動とバランスのよい食事で血糖コントロールを安定させることが、将来的なインスリン導入の遅延につながることがあります。

治療計画を組み立てるポイント

  • 血糖値とCペプチド値の定期チェックで残存インスリンを見極める
  • 必要に応じてインスリン治療を開始し低血糖リスクと生活の質のバランスを調整する
  • 生活習慣の改善は継続的な取り組みが大切になる
  • 合併症のチェックを欠かさず行い早期対策を心がける

食事療法と運動療法

インスリン分泌の低下がゆっくりであっても高血糖状態が続けば合併症リスクが高まります。

食事と運動の両立が血糖コントロールをサポートし、膵β細胞の残存機能を少しでも長く保つ後押しになります。

食事療法の基本

糖尿病の食事療法はカロリー制限よりもバランスの良い栄養摂取を重視します。

炭水化物・脂質・たんぱく質を適度に取りながら、血糖値の急激な上昇を抑えることを目標にします。

食事療法に取り組む際のポイント

要素具体例
炭水化物コントロール血糖値の急上昇を抑えるためGI値の低い食品を意識する
たんぱく質筋肉量維持や体力向上を狙い、良質なたんぱく質を摂取する
脂質不飽和脂肪酸を積極的に取り、飽和脂肪酸は控えめにする
野菜食物繊維による糖の吸収抑制効果を利用する

調理法や食材の選択にも工夫することで、毎日の食事の満足度を下げずに血糖コントロールを目指せます。

運動療法のメリット

適度な運動はインスリン感受性の向上と血糖値の安定に寄与します。

SPIDDMではインスリン分泌不全が進んでいく一方で、残存機能を有効に使うための助けになると考えられます。

運動により期待できる効果

  • 血糖値の改善
  • 体重管理のサポート
  • ストレス軽減
  • 心血管リスクの低下

ウォーキングなどの有酸素運動に筋力トレーニングを組み合わせると、日常生活の中で持続的に血糖コントロールが期待できます。

運動時の注意点

インスリン導入期や経口薬を使用中の場合、低血糖のリスクもあります。

特に運動後は血糖が下がりやすいため運動前後の血糖値測定や軽い補食を検討しましょう。

続けやすい運動スタイル

  • 毎日30分程度のウォーキングを生活に取り入れる
  • 通勤や買い物で少し遠回りして歩く距離を増やす
  • 負荷の軽いスクワットやヨガなど自宅でできる運動を工夫する
  • 同じ運動ばかりでなく、音楽に合わせた運動などを試してみる

薬物療法の実際

SPIDDMの薬物療法には、経口血糖降下薬・GLP-1受容体作動薬・インスリン注射など、複数の選択肢があります。

病態やライフスタイルに応じて適切に組み合わせることで血糖コントロールを安定させます。

経口血糖降下薬の種類と使い方

SPIDDMが疑われる患者さんでも初期段階では経口薬のみで血糖値を維持できる場合があります。

ただし、自己免疫性の膵β細胞破壊が進行するとやがてインスリン分泌が十分でなくなり、インスリン療法が必要になる可能性があります。

主な経口薬一覧

薬剤名作用機序特徴
メトホルミン肝臓での糖新生抑制・末梢組織でのインスリン感受性向上体重増加が比較的少ない
スルホニル尿素薬(SU薬)膵β細胞のインスリン分泌を促進低血糖リスクがやや高い
DPP-4阻害薬インクレチンの分解を抑え、インスリン分泌を助ける低血糖リスクが比較的低い
SGLT2阻害薬腎臓での糖再吸収を抑えて排出を促進体重減少が期待できる
ビグアナイド系メトホルミンが代表的消化器症状が出る場合がある

インスリン療法の実際

インスリン療法には基礎分泌を補う長時間作用型と食事時の急激な血糖上昇を抑える速攻型などがあります。

SPIDDMでは残存インスリンを考慮しながら必要に応じて複数のインスリン製剤を組み合わせます。

インスリン製剤の分類

分類主な作用時間用途
超速攻型約2~4時間程度食事開始直前に注射し食後血糖を抑える
速攻型約5~8時間程度食事前に注射して血糖管理を行う
中間型約12~18時間程度1日2回投与で基礎分泌を補う場合が多い
持効型約20~24時間以上1日1回投与で安定した基礎分泌を提供

GLP-1受容体作動薬の可能性

GLP-1受容体作動薬はインスリン分泌を促進するとともに、食事摂取量の抑制や体重減少効果も期待されます。

SPIDDMではまだインスリン分泌能が部分的に残っている段階であれば、インスリン導入を遅らせる一助となることもあります。

GLP-1受容体作動薬を利用する際の留意点

  • 患者個々のインスリン分泌能力を考慮する
  • 胃腸障害などの副作用が出やすい場合がある
  • 長期的な効果を定期的な検査でモニタリングする

治療変更のタイミング

経口薬やGLP-1受容体作動薬で十分な血糖管理が難しくなった場合、または自己抗体の値やインスリン分泌能の低下が明らかな場合にはインスリン療法への移行を検討します。

移行が遅れると合併症リスクが高まり、低血糖への警戒も増すためバランスが大切です。

薬物選択で考慮する点

  • インスリン分泌能の程度を検査で把握する
  • 低血糖リスクと生活の質を比較検討する
  • 体重管理や合併症の有無も考慮する
  • 定期的にフォローアップして治療方針を見直す

日常生活で意識したいこと

SPIDDMの管理は薬物療法だけでなく日常生活の細やかな配慮も重要です。

血糖測定や自己注射のタイミングに合わせてライフスタイルを調整することで長期にわたり安定したコントロールを目指します。

血糖測定のポイント

自己血糖測定(SMBG)は、食事や運動の効果を確認する大切な手段です。

血糖値の変動パターンを把握することでインスリン注射量の微調整や食事内容の改善につなげます。

血糖測定を行うタイミング

タイミング意義・理由
起床時夜間・早朝のインスリン需要を把握する
食前食事前血糖での基礎分泌やインスリン注射量を調整する
食後1~2時間食後高血糖の程度を評価し、食事内容の影響を把握する
就寝前夜間低血糖のリスクを予測し、インスリン投与量を調節する

頻回に測定して傾向をつかむことで細かな修正がしやすくなります。

ストレス管理の重要性

ストレスは血糖値を上昇させるホルモン分泌を促し、コントロールを難しくする場合があります。

仕事や家庭の状況によってストレスが多いと感じる場合は十分な休養や気分転換法を身につけることが役立ちます。

ストレス対策例

自分に合った方法を継続的に実践することが大切です。

シックデイへの備え

風邪やインフルエンザなどで食事が十分に取れないときや、下痢・嘔吐があるときは血糖コントロールが不安定になります。

基礎分泌を補うインスリンが必要な場合でも適切な量を維持しながら脱水やケトアシドーシスを防ぐ工夫が求められます。

体調不良時に気をつけること

  • 水分補給を意識し、電解質バランスを整える
  • 血糖値をこまめに測定し、必要ならインスリン量を修正する
  • 食事を取れない場合でもエネルギー摂取が途切れないよう工夫する
  • 体調悪化が続くようなら早めに医療機関へ相談する

医療機関との連携

SPIDDMは経過が長期にわたるため、定期的な診察や血液検査によるフォローアップが大切です。

疑問や不安があれば糖尿病内科で専門の医師やスタッフに相談し、早めに解決を図りましょう。

よくある質問

ここではSPIDDMに関してよく耳にする疑問点を取り上げ、簡潔に回答します。

初期症状が分かりにくい特徴があるため、具体的な疑問を持つ方も多いです。

経口血糖降下薬だけでずっと管理できますか?

SPIDDMは緩やかに膵β細胞が破壊される病態であるため、初期の段階では経口薬だけで血糖値をコントロールできることがあります。

しかし、時間の経過とともにインスリン分泌能が低下し、インスリン療法が必要になるケースが多いです。

定期的に検査で分泌能を把握し、タイミングを見てインスリン導入を検討します。

2型と診断されていたけどSPIDDMかもしれない場合はどうすれば?

抗GAD抗体などの自己抗体検査を受けると、SPIDDMの可能性を確認しやすくなります。診断に迷う場合は糖尿病内科の専門医に相談し、総合的に判断してもらうことが大切です。

インスリン注射に抵抗を感じます。先送りしてもいい?

インスリン導入をためらう気持ちは理解できますが、先送りすると血糖コントロール不良による合併症リスクが高まります。

残存インスリンを温存しつつ、より良い血糖状態を維持するためにも、医師と相談しながら適切な時期に導入することをおすすめします。

普段の食事で気をつけることは?

血糖値の急上昇を防ぐため、GI値の低い食品を中心に、たんぱく質や食物繊維をバランス良く取ることが大切です。

揚げ物など脂質の多い食材も血糖を上げやすいので注意が必要ですが、まったく摂取しないわけではなく、量と頻度を調整して続けやすい食習慣を作ることが大切です。

以上

参考にした論文

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