健康診断や病院での検査で「糸球体濾過量(eGFR)が低い」と指摘され、不安を感じていませんか?
「腎機能が低下している」と言われても、自覚症状が何もないため、どう受け止めたらよいか戸惑う方も多いでしょう。
この記事では、eGFRが低いという状態、すなわち糸球体濾過量の低下が腎機能においてどのような意味を持つのか、そしてそれが「慢性腎臓病(CKD)」とどう関わるのかを解説します。
ご自身の腎臓の状態を正しく理解し、早期に適切な対策を講じることが、将来の健康を守る鍵となります。
この記事を読むことで、eGFRの数値の意味と、これから何をすべきかが見えてくるはずです。
糸球体濾過量(eGFR)とは?腎機能を知る重要な指標
糸球体濾過量(eGFR)は、腎臓が血液をどれくらい効率よくろ過しているかを示す推定値です。
この数値によって、腎臓の働きが正常かどうか、あるいはどの程度低下しているかを知ることができます。
なぜeGFRで腎機能がわかるのか
腎臓には「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる、血液をろ過するフィルターのような役割を持つ部分があります。
この糸球体が1分間にどれくらいの血液をろ過して尿(原尿)を作っているかを示す値が「GFR(糸球体濾過量)」です。GFRは腎機能の最も良い指標とされますが、直接測定するのは複雑で時間がかかります。
そこで、血液検査で測定できる「血清クレアチニン値」と「年齢」「性別」を使って、計算式でGFRを推定した値が「eGFR(推定糸球体濾過量)」です。
クレアチニンは筋肉運動の老廃物で、本来なら腎臓でろ過されて尿中に排出されます。しかし、腎機能が低下すると血液中に溜まっていくため、血清クレアチニン値が高くなります。
この性質を利用して、eGFRは腎機能のバロメーターとして広く用いられています。
eGFRの計算方法と「糸球体 濾過 率」
eGFRは専用の計算式(日本人用の式が定められています)によって算出します。
検査結果の「糸球体 濾過 率」という項目に記載されているのが、このeGFRの値です。単位は「mL/分/1.73m²」で示され、これは標準的な体表面積(1.73m²)あたりのろ過量を意味します。
この計算式は、年齢が上がるほどeGFRが低くなるように調整されています。また、一般的に筋肉量が多い男性はクレアチニン値が高く、女性は低くなる傾向があるため、性別も考慮して計算します。
健康診断や病院では、血液検査のデータから自動的に計算されることがほとんどです。
eGFRの基準値と年齢による変化
健康な人のeGFRは100前後ですが、年齢とともに腎機能は自然と低下していきます。そのため、eGFRの基準値も年齢を考慮して考える必要があります。
一般的に、eGFRが90以上であれば「正常または高値」とされますが、60未満になると「腎機能低下」が疑われます。
特に60未満が続く場合は注意が必要です。また、年齢が高くなるにつれてeGFRの平均値は下がっていきます。
例えば、70歳代であれば、eGFRが60~70程度でも、その年齢としては平均的な範囲である可能性もあります。
しかし、たとえ高齢であっても、eGFRの低下が続く場合や、他の腎臓の障害(たんぱく尿など)を伴う場合は、慎重な経過観察と対策が必要です。
eGFRの年齢別目安(単位:mL/分/1.73m²)
| 年齢 | eGFRの目安(中央値) | 注意が必要なレベル |
|---|---|---|
| 40歳代 | 約80~90 | 60未満 |
| 60歳代 | 約70~80 | 60未満 |
| 80歳代 | 約60~70 | 50未満(個人差大) |
eGFRが低い(低下)とはどのような状態か
eGFRが低い、すなわちeGFRの「低下」が認められる状態は、腎臓の血液をろ過する能力が落ちていることを示唆します。
これは、腎臓が老廃物を体外に排出する働きが弱まっているサインです。
「低下」が意味すること
eGFRの低下が意味するのは、腎臓のフィルター機能、つまり糸球体の働きが損なわれている可能性です。
健康な腎臓は24時間体制で血液をきれいにしていますが、この機能が低下すると、体内に老廃物や余分な水分が溜まりやすくなります。
eGFRの値が低いほど、腎機能の低下が著しいことを示します。特に、eGFRが60を下回る状態が3ヶ月以上続く場合、慢性腎臓病(CKD)と診断される重要な基準の一つとなります。
一度の検査で低かったからといって直ちに病気と決まるわけではありませんが、腎臓からの重要な警告サインとして受け止める必要があります。
eGFR低下の主な原因
eGFRが低下する背景には、腎臓そのものの病気や、他の全身性の病気の影響など、さまざまな原因があります。特に注意すべきは、生活習慣病との関連です。
日本でeGFR低下を引き起こし、最終的に透析治療が必要となる腎不全に至る原因として最も多いのは「糖尿病(糖尿病腎症)」であり、次いで「高血圧(腎硬化症)」です。
これらは長期間にわたって腎臓の細い血管にダメージを与え、糸球体のろ過機能を徐々に低下させます。
その他、慢性糸球体腎炎(腎炎)、多発性のう胞腎などの遺伝性疾患、加齢による自然な機能低下、薬剤の影響なども原因となります。
CKDの主な原因疾患
| 原因疾患 | 特徴 | 腎臓への影響 |
|---|---|---|
| 糖尿病腎症 | 高血糖が続くこと | 糸球体の血管が障害され、ろ過機能が低下する |
| 腎硬化症 | 高血圧が続くこと | 腎臓の動脈硬化が進み、血流が悪化し機能が低下する |
| 慢性糸球体腎炎 | 免疫異常など | 糸球体に炎症が起こり、ろ過機能が障害される |
eGFRが低いと体にどんな症状が出るか
腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、eGFRがかなり低下するまで自覚症状がほとんど現れないのが特徴です。eGFRが60を切った程度では、多くの場合、無症状です。
しかし、腎機能の低下がさらに進行し、eGFRが30や15といったレベルに近づくと、老廃物や余分な水分が体に溜まることで、以下のような症状が現れることがあります。
- むくみ(特に足や顔)
- 貧血(だるさ、疲れやすさ)
- 夜間の頻尿
- 食欲不振
- 息切れ
これらの症状が出た時点では、腎機能は相当悪化している可能性が高いです。だからこそ、症状がない「eGFRが低い」という段階で気づき、対策を始めることが非常に重要です。
eGFRの数値だけで判断してはいけない理由
eGFRは非常に有用な指標ですが、万能ではありません。eGFRはあくまで「推定値」であり、いくつかの要因によって実際の腎機能とずれが生じることがあります。
例えば、筋肉量が極端に少ない(やせ型の高齢女性など)場合は、血清クレアチニン値が低くなるため、実際の腎機能よりもeGFRが高く(良く)推定されることがあります。
逆に、筋肉量が非常に多い(アスリートなど)場合は、eGFRが低く(悪く)推定されることもあります。
また、検査前の食事内容(肉類を多く食べた後など)や体調によっても、クレアチニン値はわずかに変動します。
したがって、eGFRの数値だけを見て一喜一憂するのではなく、尿検査(たんぱく尿の有無)の結果と合わせて総合的に腎機能の状態を判断し、必要であれば再検査で数値の傾向を見ることが大切です。
慢性腎臓病(CKD)とは何か
慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎臓の障害(たんぱく尿など)や、eGFRで示される腎機能の低下が3ヶ月以上続いている状態を指します。
一つの病名ではなく、腎機能が慢性的に低下している状態の総称です。
CKDの定義と診断基準
CKDは、以下のいずれか、または両方が3ヶ月以上持続する場合に診断されます。
- 腎障害の存在:尿検査でのたんぱく尿、画像診断や血液検査、病理所見で腎臓の異常が明らかな場合。
- 腎機能の低下:eGFRが60(mL/分/1.73m²)未満の状態。
つまり、eGFRが60以上であっても、健康診断などで「たんぱく尿」を指摘されていれば、それはCKDのサインとなります。
逆に、たんぱく尿がなくても、eGFRの低下(60未満)が続いていればCKDと診断されます。CKDは、日本の成人のおよそ8人に1人(約1,330万人)が該当すると推定される、非常に身近な病態です。
eGFRとCKDのステージ分類
CKDは、その重症度を「eGFRの値」と「たんぱく尿の程度(尿アルブミン値)」によって分類します。eGFRの値に基づく分類(ステージG1~G5)は、腎機能がどの程度残っているかを示します。
eGFRが60以上のG1やG2であっても、たんぱく尿があればCKDです。eGFRが60未満のG3aからG5にかけては、数値が低くなるほど腎機能が低下していることを意味します。
このステージ分類は、現在の腎臓の状態を把握し、今後の治療方針や生活指導の内容を決める上で重要な基準となります。
CKDの重症度分類(eGFRによるステージ分類)
| ステージ | eGFR (mL/分/1.73m²) | 腎機能の状態 |
|---|---|---|
| G1 | 90以上 | 正常または高値 (ただし腎障害あり) |
| G2 | 60~89 | 軽度低下 (ただし腎障害あり) |
| G3a | 45~59 | 軽度~中等度低下 |
| G3b | 30~44 | 中等度~高度低下 |
| G4 | 15~29 | 高度低下 |
| G5 | 15未満 | 末期腎不全 (ESKD) |
※G1、G2はたんぱく尿などの腎障害がある場合のみCKDと診断します。
CKDが進行するとはどういうことか
CKDが進行するとは、eGFRの数値が徐々に低下し続け、ステージG3→G4→G5へと進んでいくことを意味します。腎臓の組織は一度壊れてしまうと、残念ながら元の状態に回復することはほとんどありません。
機能しなくなった糸球体の分まで、残った健康な糸球体が余計に働く(過剰ろ過)ため、残った糸球体にも負担がかかり、次第に壊れていくという悪循環に陥ることがあります。
CKDの進行を放置すると、最終的にステージG5(末期腎不全)に至り、腎臓の機能がほぼ失われてしまいます。
この状態になると、体内に老廃物や毒素が溜まり生命を維持できなくなるため、腎臓の働きを代替する治療(透析療法や腎移植)が必要となります。
なぜ早期発見が重要なのか
CKDが早期発見を重要視する最大の理由は、進行を完全に止めることは難しくても、早期に介入(治療や生活習慣の改善)を始めることで、腎機能の低下速度を緩やかにし、透析導入を遅らせる可能性が高まるからです。
前述の通り、CKDは初期段階では自覚症状がありません。症状が出現してからでは手遅れに近い場合もあります。
また、CKDは腎機能低下だけでなく、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の重大な危険因子でもあります。腎臓が悪いと、心臓や血管にも悪影響が及ぶのです。
腎臓を守ることは、心臓や脳を守ることにも直結します。だからこそ、症状のない「eGFRの低下」や「たんぱく尿」というサインを見逃さず、早期に対策を始めることが大切です。
eGFR低下と糖尿病の深い関係
eGFRが低下する最も大きな原因の一つが糖尿病です。糖尿病患者さんにとって、eGFRの数値は、腎機能の状態を知るための極めて重要な指標となります。
糖尿病腎症とは
糖尿病腎症は、糖尿病の三大合併症(網膜症、神経障害、腎症)の一つです。長期間高血糖の状態が続くことで、腎臓の糸球体がダメージを受け、ろ過機能が徐々に失われていく病気です。
初期段階では、まず「微量アルブミン尿」というごくわずかなたんぱく尿が出始めます。この段階ではeGFRはまだ低下していないことも多いです。
しかし、適切な治療が行われないと、アルブミン尿は明らかな「たんぱく尿」へと移行し、それに伴ってeGFRも低下し始めます。
進行すると、むくみや高血圧が悪化し、最終的には末期腎不全に至ります。現在、日本で新たに透析治療を開始する患者さんの原因疾患の第1位は、この糖尿病腎症です。
なぜ糖尿病だと腎機能が低下しやすいのか
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、血液中の過剰な糖がタンパク質と結合し、AGEs(終末糖化産物)などの物質が作られます。
これらの物質が糸球体の血管壁に蓄積したり、高血糖そのものが糸球体に過剰な負担(過剰ろ過)をかけたりすることで、糸球体は次第に硬くなり、フィルターとしての機能を失っていきます。
また、糖尿病は高血圧を合併しやすく、高血圧も腎臓に負担をかけるため、高血糖と高血圧の双方が腎機能低下を加速させる要因となります。
糖尿病のコントロールが悪いほど、また罹病期間が長いほど、腎機能は低下しやすくなります。
糖尿病腎症の進行
| 病期 | 状態 | eGFRの状態 |
|---|---|---|
| 第1期(腎症前期) | 症状なし | 正常または高値(過剰ろ過) |
| 第2期(早期腎症期) | 微量アルブミン尿 | まだ正常範囲が多い |
| 第3期(顕性腎症期) | 持続するたんぱく尿 | 低下し始める |
| 第4期(腎不全期) | eGFRが著しく低下 | 高度低下(30未満) |
| 第5期(透析療法期) | 末期腎不全 | 15未満 |
糖尿病患者がeGFRを定期的に測る必要性
糖尿病と診断されたら、たとえ自覚症状がなくても、定期的にeGFR(血液検査)と尿中アルブミン(尿検査)を測定することが非常に重要です。
なぜなら、糖尿病腎症は初期段階(第2期:微量アルブミン尿の時期)で発見し、血糖コントロールや血圧コントロールを厳格に行うことで、その後の進行を大幅に遅らせることが可能だからです。
eGFRの低下が始まってから(第3期以降)でも治療はもちろん必要ですが、腎機能を元に戻すことは難しくなります。
糖尿病内科では、血糖値だけでなく、eGFRや尿検査のデータを定期的にチェックし、腎臓の状態に合わせて血糖降下薬の種類を調整したり、血圧や脂質の管理を強化したりします。
自分の腎臓の状態をeGFRという客観的な数値で把握し続けることが、合併症予防の第一歩です。
eGFR低下のその他の原因
eGFRの低下は糖尿病や高血圧だけで起こるわけではありません。腎臓そのものの病気や、加齢、使用している薬剤など、他の要因も腎機能に影響を与えます。
高血圧と腎機能
高血圧は糖尿病に次いでCKDの大きな原因となります。高い圧力が長期間かかり続けると、腎臓の細い動脈は硬く、もろくなります(動脈硬化)。これを腎硬化症と呼びます。
腎臓への血流が悪くなると、糸球体が十分に働けなくなり、徐々にeGFRは低下していきます。
問題は、高血圧も腎機能低下も、初期には自覚症状がほとんどないことです。また、腎機能が低下すると、塩分や水分の排出がうまくいかなくなり、さらに血圧が上がるという悪循環に陥りやすくなります。
血圧の管理は、腎臓を守る上で血糖管理と同様に非常に重要です。
腎炎(糸球体腎炎)
慢性糸球体腎炎は、腎臓の糸球体に免疫の異常などによって慢性的な炎症が起こる病気の総称です。代表的なものに「IgA腎症」があります。
学校検尿などでたんぱく尿や血尿を指摘されて見つかることが多いですが、成人になってから発覚することもあります。
炎症によって糸球体が徐々に壊れていき、eGFRが低下します。
原因が糖尿病や高血圧とは異なるため、診断には尿検査や血液検査に加え、腎生検(腎臓の組織を一部採取して調べる検査)が必要となる場合があります。
治療には、血圧管理や食事療法に加え、ステロイドや免疫抑制薬などを使用することもあります。
加齢による腎機能低下
腎機能は、加齢とともにある程度自然に低下していきます。これは生理的な老化現象の一環であり、誰にでも起こり得ます。
前述の通り、eGFRの計算式は年齢も考慮しているため、高齢であるほどeGFRは低めに出ます。
ただし、「年齢のせいだから仕方ない」と考えるのは早計です。
高齢者であっても、eGFRの低下速度が速い場合や、たんぱく尿が出ている場合は、単なる加齢以上の要因(高血圧、糖尿病、動脈硬化など)が隠れている可能性が高いです。
また、高齢者は腎機能が低下しているところに脱水や薬剤の影響が加わると、急激に腎機能が悪化(急性腎障害)しやすい傾向があるため、より慎重な健康管理が求められます。
薬剤性腎障害
日常的に使用している薬剤が原因で腎機能が低下することもあります。特に注意が必要なのは、市販もされている非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれるタイプの鎮痛剤(痛み止め)です。
これらの薬剤は腎臓の血流を低下させる作用があり、長期間常用したり、大量に使用したりすると、腎機能に悪影響を及ぼすことがあります。
特に、すでにeGFRが低下している人や高齢者、脱水気味の人が使用すると、急性腎障害のリスクが高まります。
その他、一部の抗生物質、造影剤(CT検査などで使用)、漢方薬なども腎障害の原因となることがあります。
腎機能低下時に特に注意が必要な薬剤の例
| 薬剤の種類 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|
| NSAIDs(鎮痛剤) | 痛み、発熱、炎症 | 長期・大量の使用を避ける。腎血流を低下させる可能性。 |
| 一部の降圧薬 | 高血圧 | 腎保護作用があるが、開始時や脱水時にeGFRが一時的に低下することがある。 |
| 造影剤 | CT検査、カテーテル検査 | eGFRが低い人は造影剤腎症のリスクがあるため、予防措置が必要。 |
eGFRが低いと言われた場合は、現在使用している薬(市販薬やサプリメントを含む)を医師や薬剤師に必ず伝えるようにしてください。
eGFRが低いと言われたら行う検査
健康診断などでeGFRの低下を指摘された場合、それが一時的なものなのか、慢性的なものなのか、また原因は何かを調べるために、医療機関でさらに詳しい検査を行います。
尿検査(たんぱく尿・血尿)
eGFRと並んで腎機能評価の「両輪」となるのが尿検査です。特に重要なのが「たんぱく尿(アルブミン尿)」と「血尿」の有無です。
たんぱく尿は、糸球体のフィルターが壊れて、本来なら尿に漏れ出ないはずのタンパク質が漏れ出ている証拠であり、腎障害の存在を強く示唆します。
たんぱく尿が多いほど、腎機能の低下速度は速いことがわかっています。
血尿は、腎臓や尿管、膀胱などからの出血を示します。糸球体腎炎などでも見られます。eGFRが正常でも、たんぱく尿や血尿が持続する場合は、腎臓専門医による精査が必要です。
尿検査でわかる腎臓の状態
| 検査項目 | 陽性の場合に疑われること | 重要性 |
|---|---|---|
| たんぱく尿(アルブミン尿) | 糸球体の障害、糖尿病腎症、腎炎など | CKDの診断と進行予測に必須。 |
| 尿潜血(血尿) | 糸球体腎炎、尿路結石、膀胱がんなど | 腎臓・尿路系の病気のサイン。 |
| 尿糖 | 糖尿病(血糖値が高い) | 血糖コントロールの状態を反映。 |
血液検査(eGFR以外の項目)
血液検査では、eGFR(クレアチニン)の再検査に加え、他の項目もチェックします。
eGFRの計算にはクレアチニンが用いられますが、筋肉量の影響を受けにくい「シスタチンC」という物質を測定し、それを用いたeGFR(eGFRcys)を計算することもあります。より正確な腎機能の評価に役立ちます。
また、腎機能が低下すると影響が出る他の項目、例えば、貧血の有無(赤血球、ヘモグロビン)、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン)のバランス、尿酸値なども確認します。
これらの異常は、CKDが進行しているサインである場合があります。
画像検査(腹部超音波検査)
腹部超音波(エコー)検査は、体に負担なく腎臓の「形」や「大きさ」を調べることができる重要な検査です。腎臓が慢性的にダメージを受けていると、腎臓が萎縮して小さくなっていることがあります。
また、腎臓に結石がないか、水が溜まっていないか(水腎症)、多発性のう胞腎のような構造的な異常がないかなども確認できます。
eGFRの低下が新たに見つかった場合、まず超音波検査で腎臓の形態的な異常がないかを確認することは、診断の第一歩として非常に有効です。
腎生検が必要な場合
上記の検査を行ってもeGFR低下の原因がはっきりしない場合や、たんぱく尿や血尿が顕著で腎炎が強く疑われる場合、腎機能の低下速度が非常に速い場合などには、「腎生検」を検討します。
これは、背中から細い針を刺して腎臓の組織を微量採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。
腎生検によって、どのような種類の腎炎が起きているか、病気の活動性はどの程度か、といった詳細な情報が得られ、確定診断と治療方針の決定(ステロイド治療の要否など)に役立ちます。
実施には入院が必要となるため、腎臓専門医がその必要性を慎重に判断します。
腎機能を守るための日常生活での注意点
eGFRの低下を指摘されたら、それ以上の進行を抑えるために、直ちに日常生活を見直すことが重要です。特に食事や運動などの生活習慣の改善は、治療の基本となります。
食事療法の基本(減塩・たんぱく質管理)
腎機能を守る食事療法の柱は「減塩」です。塩分(ナトリウム)を摂りすぎると、体内に水分が溜まりやすくなり、血圧が上昇します。高血圧は腎臓に大きな負担をかけるため、CKDの進行を早めてしまいます。
日本人の平均塩分摂取量は多い傾向にありますが、CKD患者さんでは1日6g未満、高血圧を合併している場合はさらに厳格な管理が推奨されます。
また、腎機能がある程度低下している場合(eGFRのステージG3以降など)は、「たんぱく質」の摂取量を制限することがあります。
たんぱく質は体に必要な栄養素ですが、体内で利用された後に老廃物(尿素窒素など)となり、腎臓から排出されます。たんぱく質を摂りすぎると、腎臓が処理すべき老廃物が増え、負担がかかるためです。
ただし、過度な制限は栄養失調につながるため、医師や管理栄養士の指導のもと、適正な量を守ることが大切です。
減塩のための工夫
| 工夫のポイント | 具体例 |
|---|---|
| だしや香りを活用 | かつお節や昆布の旨味、生姜やシソなどの香味野菜、酢やレモンなどの酸味を利用する。 |
| 加工食品を控える | ハム、ソーセージ、練り物、インスタント食品は塩分が多いため、使用頻度を減らす。 |
| 汁物は具だくさんに | 味噌汁やスープは具材を多くし、汁の量を減らす(1日1杯程度)。 |
たんぱく質管理のポイント(医師の指示があった場合)
| ポイント | 具体例 |
|---|---|
| 適量を守る | 肉、魚、卵、大豆製品などの主菜は、1食あたりの量を守り、重ね食べを避ける。 |
| エネルギーは確保 | たんぱく質を減らすとエネルギー不足になりやすいため、炭水化物(ご飯、パン)や脂質(油)で補う。 |
適度な運動と体重管理
肥満、特に内臓脂肪が増えると、インスリンの効きが悪くなり(インスリン抵抗性)、糖尿病や高血圧のリスクを高め、腎臓にも悪影響を及ぼします。
適度な運動は、体重管理、血圧や血糖値の改善に役立ちます。ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を、無理のない範囲で継続することが推奨されます。
ただし、eGFRが著しく低下している場合や、他の合併症がある場合は、運動が制限されることもあります。どのような運動が適切か、主治医に相談しながら行いましょう。
まずは日常生活の中で活動量を増やすこと(例:階段を使う)から始めるのも良い方法です。
禁煙と節酒
喫煙は、腎臓を含む全身の血管に動脈硬化を引き起こし、腎機能低下の独立した危険因子です。eGFRが低いと指摘されたら、ただちに禁煙することが強く推奨されます。
禁煙は、腎機能の低下速度を緩やかにするだけでなく、心筋梗塞や脳卒中のリスクも減らします。
アルコールの過剰摂取は、高血圧や肥満の原因となり、間接的に腎臓に負担をかけます。飲酒習慣がある場合は、節酒を心がける必要があります。適量を守り、休肝日を設けるなどの工夫が求められます。
薬剤の適正使用(特に鎮痛剤)
前述の通り、一部の薬剤は腎機能に影響を与えます。特にNSAIDs(鎮痛剤)の乱用は避けるべきです。
頭痛や関節痛などで日常的に鎮痛剤が必要な場合は、自己判断で市販薬を使い続けず、主治医に相談してください。
腎機能への影響がより少ないとされる薬剤(アセトアミノフェンなど)への変更や、使用量の調整が必要な場合があります。
また、風邪を引いた際なども、かかりつけ医に腎機能が低下していることを伝え、適切な薬剤を処方してもらうことが大切です。
お薬手帳を活用し、どの医療機関でも自分の腎機能の状態と使用中の薬剤が正確に伝わるようにしておきましょう。
Q&A
eGFRの低下や慢性腎臓病に関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
- QeGFRの数値は一度下がったら元に戻らないのですか?
- A
脱水や薬剤の影響、急激な血圧変動などで一時的にeGFRが低下した「急性腎障害」の場合は、原因を取り除くことで腎機能が回復する可能性があります。
しかし、糖尿病や高血圧、慢性腎炎などによって長期間かけて徐々に低下した「慢性腎臓病(CKD)」の場合、壊れてしまった糸球体の機能が元通りに回復することは、残念ながらほとんどありません。
CKD治療の目標は、eGFRを元に戻すことではなく、残っている腎機能をできるだけ長持ちさせ、eGFRの低下速度を緩やかにすることにあります。
- Q腎機能が低下すると透析が必要になるのですか?
- A
eGFRが低い(CKDである)と診断されたからといって、すべての人が将来的に透析が必要になるわけではありません。
eGFRの低下が軽度(ステージG3aなど)で、たんぱく尿もなく、血圧や血糖の管理が良好であれば、その後何十年も腎機能を維持できる方も多くいます。
早期に発見し、適切な治療(食事療法、生活習慣の改善、薬物治療)を継続することで、透析導入を回避したり、先延ばしにしたりすることは十分に可能です。
そのためにも、定期的な通院と検査を継続することが重要です。
- Q症状が全くないのに治療は必要ですか?
- A
はい、必要です。CKDの最も怖い特徴は、eGFRがかなり低下するまで自覚症状がほとんど出ないことです。
症状がないからといって放置すると、気づかないうちに腎機能の低下が進行してしまいます。
むくみや倦怠感などの症状が出た時点では、すでにCKDがかなり進行している(ステージG4やG5)可能性が高いです。
症状がない早期の段階から、eGFRの低下やたんぱく尿の原因(糖尿病、高血圧など)をしっかり治療し、減塩などの生活習慣を改善することが、将来の透析や心血管疾患を防ぐために最も効果的です。
- Q次の検診まで様子を見ても良いでしょうか?
- A
eGFRの低下を指摘された場合、その程度によります。
例えば、eGFRが50台(G3a)で、今回初めて指摘されたのであれば、まずはかかりつけ医に相談し、数ヶ月後に再検査をして数値の変動を確認することが一般的です。
しかし、eGFRが45未満(G3b以下)である場合や、eGFRが50台でもたんぱく尿を伴う場合、または糖尿病や高血圧の持病がある場合は、早めに医療機関(かかりつけ医、または腎臓内科・糖尿病内科)を受診し、詳しい検査と指導を受けることを強くお勧めします。
自己判断で「様子見」をすることは、早期介入の機会を逃すことになりかねません。
- Q糖尿病内科で腎臓の相談もできますか?
- A
はい、もちろんです。特にeGFR低下の原因が糖尿病である場合(糖尿病腎症)、腎機能の管理は糖尿病治療の最も重要な柱の一つです。
糖尿病内科の医師は、血糖コントロールだけでなく、eGFRや尿アルブミンの数値を常にチェックしながら、腎臓の状態に合わせた治療(薬剤の選択、食事指導、血圧管理)を行います。
当院のような糖尿病内科クリニックでは、腎機能の低下(CKD)の早期発見と進行抑制に積極的に取り組んでいます。
eGFRの低下を指摘された糖尿病患者さんはもちろん、糖尿病ではないが腎機能に不安があるという方も、ぜひご相談ください。
