血糖値が高めと指摘されたり、ご家族に糖尿病の方がいてご自身の将来が心配になったりすると、「インスリン分泌能」という言葉が気になるかもしれません。

この能力は、一度低下したらもう二度と元には戻らないのでしょうか。インスリン分泌低下の原因を知り、改善の可能性を探ることは、健康な未来を守るためにとても重要です。

この記事では、インスリン分泌能が低下する主な原因と、日常生活の中で食事や運動を通じて「膵臓を休ませる」ための具体的な方法を分かりやすく解説します。

ご自身の生活習慣を見直すきっかけとして、ぜひ最後までお読みください。

そもそも「インスリン分泌能」とは何か?

インスリン分泌能とは、食事などで血糖値が上昇した際に、膵臓(すいぞう)にあるβ細胞からインスリンをどれだけ分泌できるかという能力を指します。

この能力が高いか低いかによって、血糖値のコントロールのしやすさが変わってきます。

インスリンの役割と血糖値の関係

私たちが食事をすると、食べ物に含まれる糖質が分解されてブドウ糖となり、血液中に吸収されます。これが血糖値の上昇です。

血糖値が上がると、膵臓のβ細胞がそれを感知し、インスリンというホルモンを血液中に分泌します。

インスリンは、血液中のブドウ糖を全身の細胞(特に筋肉や脂肪細胞)に取り込ませる「鍵」のような働きをします。

細胞がブドウ糖を取り込むことでエネルギー源として利用したり、蓄えたりするため、結果として血液中のブドウ糖が減り、血糖値が正常範囲に下がるのです。

このように、インスリンは血糖値を一定に保つために必要不可欠なホルモンです。

インスリンの主な働き

働きの対象主な内容
筋肉細胞ブドウ糖を取り込み、エネルギー源として利用するのを助ける。
脂肪細胞ブドウ糖を取り込み、脂肪として蓄えるのを助ける。
肝臓ブドウ糖をグリコーゲンとして蓄えるのを促進し、新たな糖の生成を抑制する。

膵臓(すいぞう)のβ細胞の働き

インスリンを分泌するβ細胞は、膵臓の中にある「ランゲルハンス島」という組織に集まっています。

このβ細胞は、血糖値の変動を敏感に察知し、必要な量のインスリンを精密に調節して分泌する能力を持っています。

健康な状態であれば、食事で血糖値が上がれば速やかにインスリンを分泌し(追加分泌)、空腹時には基礎的な量のインスリンを分泌し続ける(基礎分泌)ことで、血糖値を1日中安定させています。

インスリン分泌能が低下するとは、このβ細胞の働きが弱まったり、数が減ったりすることを意味します。

日本人と欧米人のインスリン分泌能の違い

一般的に、日本人は欧米人と比較して、インスリン分泌能が低い傾向にあると言われています。

欧米人では肥満になってもインスリンを大量に分泌することで血糖値を維持しようとするのに対し、日本人はそれほど太っていなくても、インスリンの分泌能力の限界が早く訪れ、血糖値が上昇しやすい(糖尿病を発症しやすい)体質と考えられています。

このため、日本人は欧米人ほど太っていなくても、2型糖尿病になるリスクがあり、日頃から膵臓に負担をかけない生活を意識することが大切です。

インスリン分泌能が低下する主な原因

インスリン分泌能の低下は、単一の原因ではなく、複数の要因が長期間にわたって影響し合うことで徐々に進行します。

遺伝的な要因も関わりますが、それ以上に日々の生活習慣が大きく影響する場合が多いことが分かっています。

遺伝的要因と体質

親や血縁者に糖尿病の方がいる場合、いない場合と比べて糖尿病を発症しやすいことが知られています。

これは、インスリン分泌能が低い体質や、インスリンが効きにくくなる体質(インスリン抵抗性)が遺伝的に受け継がれやすいためと考えられています。

ただし、遺伝的な要因を持つ人すべてが糖尿病になるわけではなく、あくまで「なりやすさ」の問題です。後述する生活習慣が加わることで、発症のリスクが高まります。

過食や肥満による膵臓への負担

食べ過ぎや高カロリーな食事、特に糖質や脂質の多い食事を続けると、血糖値が上がりやすくなります。その結果、膵臓は血糖値を下げようとインスリンを通常より多く分泌し続けなければなりません。

この状態が続くと、β細胞は疲弊してしまいます。また、内臓脂肪が増加するタイプの肥満は、「インスリン抵抗性」を引き起こします。

これは、インスリンが分泌されても、その効きが悪くなる状態です。効きが悪い分、膵臓はさらに多くのインスリンを分泌しようと頑張るため、ますます疲弊が進むという悪循環に陥ります。

インスリン分泌能低下を招く主な生活習慣

生活習慣膵臓への影響解説
過食・早食い血糖値の急上昇一度に大量のインスリン分泌が必要となり、負担がかかる。
高糖質・高脂質インスリン抵抗性の増大特に内臓脂肪が増えるとインスリンの効きが悪くなる。
運動不足インスリン抵抗性の増大筋肉でのブドウ糖消費が減り、インスリンの必要量が増える。

運動不足が招くインスリン抵抗性

運動不足は、インスリン抵抗性を引き起こす大きな原因の一つです。筋肉は、体内で最も多くブドウ糖を消費する臓器です。

運動をすると、筋肉はインスリンの助けがなくてもブドウ糖を取り込むようになりますし、インスリンの効き自体も良くなります。

逆に運動不足が続くと、筋肉でのブドウ糖の取り込みが悪くなり、インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)が進みます。

その結果、膵臓はより多くのインスリンを分泌しなければならず、負担が増加します。

加齢による自然な機能低下

年齢を重ねるとともに、体の様々な機能が低下するのと同様に、膵臓のβ細胞の機能も徐々に低下していくと考えられています。

加齢とともに筋肉量が減少し、インスリン抵抗性が進みやすいことも、インスリン分泌能の低下を助長する一因となります。

ただし、加齢による影響は個人差が大きく、生活習慣の管理によってその進行を遅らせることは可能です。

なぜ「膵臓を休ませる」ことが改善につながるのか

「膵臓を休ませる」とは、インスリンを過剰に分泌させる状況を意図的に減らし、膵臓(特にインスリンを作るβ細胞)の負担を軽減することです。

疲弊したβ細胞の機能を回復させ、インスリン分泌能のさらなる低下を防ぎ、改善を目指すためにこの考え方が非常に重要となります。

インスリンの過剰分泌が招く「膵疲弊」

インスリン抵抗性がある状態や、糖質の多い食事を頻繁に摂取する生活が続くと、膵臓は常にフル稼働でインスリンを分泌し続けなければなりません。

この状態を「過インスリン血症」と呼びます。β細胞が長期間にわたって働き続けると、次第に疲れてしまい、必要な時に十分なインスリンを分泌できなくなっていきます。

これを「膵疲弊(すいひへい)」と呼びます。この膵疲弊が、インスリン分泌能の低下の大きな原因です。

β細胞の機能回復の可能性

インスリン分泌能が一度低下し始めると、元に戻すのは簡単ではありません。

しかし、糖尿病の初期段階や、まだ糖尿病と診断される前の「境界型(糖尿病予備群)」の段階であれば、膵臓を休ませる努力(食事や運動)によって、疲弊していたβ細胞の機能が回復し、インスリン分泌能が改善する可能性は十分にあります。

β細胞が完全になくなってしまったわけではなく、あくまで「疲れて休んでいる」状態であれば、その負担を取り除くことで、再び働けるようになるのです。

膵臓に負担をかける食事 vs 休ませる食事

項目膵臓に負担をかける食事膵臓を休ませる食事
糖質の摂り方血糖値を急上昇させる(例:丼物、菓子パン)血糖値を緩やかに上げる(例:野菜から食べる)
食事の頻度ダラダラと食べ続ける(間食が多い)食事と食事の間隔をあける
満腹を超える過食腹八分目

早期介入の重要性

インスリン分泌能の低下は、静かに進行します。自覚症状がないからといって高血糖の状態を放置すると、β細胞の疲弊は進み、やがてはβ細胞の数が本当に減少してしまう段階に至ります。

そうなると、いくら生活習慣を改めても、インスリン分泌能の回復は難しくなります。

健康診断などで血糖値の異常を指摘された段階で、できるだけ早く「膵臓を休ませる」生活を始めることが、将来の健康を守る上で何よりも重要です。

膵臓を休ませるための「食事」の工夫

膵臓を休ませるための食事の基本は、血糖値の急激な上昇を抑え、インスリンの分泌を穏やかにすることです。

特定の食品を厳しく制限するよりも、食べ方や全体のバランスを整えることが大切です。

血糖値を上げにくい食べ方「ベジファースト」

食事の際、最初に野菜や海藻、きのこ類などの食物繊維が豊富なものを食べる「ベジファースト(野菜ファースト)」は、膵臓を休ませるために非常に有効な方法です。

食物繊維が、後から入ってくる糖質の吸収を緩やかにし、食後の血糖値の急上昇を抑えてくれます。

血糖値の上昇が緩やかになれば、インスリンの分泌も少量で済むため、膵臓の負担が減ります。

まず野菜料理から食べ始め、次にお肉や魚などのタンパク質、最後にご飯やパンなどの炭水化物、という順番を意識するだけです。

糖質の「量」と「質」を見直す

糖質は血糖値を上げる主な栄養素ですが、全く摂らないのは現実的ではありません。

重要なのは、その「量」と「質」です。まず「量」ですが、ご飯やパン、麺類などの主食の量を、ご自身の活動量に合わせて見直しましょう。

大盛りやおかわりを控えるだけでも違いが出ます。次に「質」です。同じ糖質でも、精製された白米や食パンよりも、玄米や全粒粉パン、雑穀米の方が食物繊維が豊富で、血糖値の上昇が緩やかです。

こうした「質の良い」糖質を選ぶことも膵臓を助けます。

糖質の「質」の例 – GI(グリセミック・インデックス)の目安

分類(目安)食品の例特徴
高GI食品食パン、白米、うどん、菓子類食後血糖値が急上昇しやすい。
中GI食品パスタ、サツマイモ中程度の上昇。
低GI食品玄米、全粒粉パン、そば、葉物野菜食後血糖値の上昇が緩やか。

間食や夜食が膵臓に与える影響

食事と食事の間にダラダラと間食をしたり、寝る前に夜食を食べたりする習慣は、膵臓に休む暇を与えません。

血糖値が下がる時間がないため、インスリンが常に分泌され続けることになり、β細胞は疲弊します。間食は時間を決めて、ナッツやヨーグルトなど血糖値を上げにくいものを選びましょう。

また、夕食は寝る3時間前までには済ませ、それ以降は何も食べないようにすることが、膵臓を夜間にしっかり休ませるために重要です。

ゆっくりよく噛んで食べる

早食いは、血糖値の急上昇を招く悪い習慣です。食べ物が一気に胃腸に送られると、糖質の吸収が速まり、膵臓は慌てて大量のインスリンを分泌しなければなりません。

一方、一口ずつゆっくりと、よく噛んで食べると、満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防ぐことができますし、消化吸収も緩やかになります。

食事時間を最低20分はかけることを目標に、意識してゆっくり食べる習慣をつけましょう。

食事の工夫と期待される効果

食事の工夫期待される効果
ベジファースト食後血糖値の急上昇を抑制
糖質の「質」を選ぶ(低GI)インスリン分泌の節約
ゆっくりよく噛む食べ過ぎ防止、血糖値の緩やかな上昇

膵臓を休ませるための「運動」の役割

運動は、インスリンの働きを直接的に助ける(インスリン抵抗性を改善する)ために非常に重要な役割を果たします。

運動によって筋肉がブドウ糖を取り込むのを助けるため、膵臓が分泌するインスリンの量を節約でき、結果として膵臓を休ませることにつながります。

運動がインスリン抵抗性を改善する

運動不足がインスリン抵抗性を悪化させるのに対し、定期的な運動はインスリン抵抗性を改善します。運動をすると、筋肉細胞でのブドウ糖の利用が活発になります。

短期的には、運動中から運動後数時間は、インスリンの助けがなくても筋肉がブドウ糖を取り込みやすくなります。

長期的には、運動を継続することで筋肉量が増え、インスリンが効きやすい体質に変わっていきます。

インスリンの効きが良くなれば、少量のインスリンでも血糖値が下がるため、膵臓の負担は大幅に軽減されます。

効果的な有酸素運動の種類と時間

インスリン抵抗性の改善に特に効果的なのが、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動です。これらの運動は、体内のブドウ糖や脂肪をエネルギー源として消費します。

「ややきつい」と感じるくらいの強度で、1回20分から30分以上、週に3回から5回程度行うのが目標です。

まとまった時間が取れない場合でも、10分程度の運動を1日に数回に分けて行う「分割運動」でも効果があるとされています。大切なのは、無理なく継続することです。

おすすめの有酸素運動(例)

運動の種類特徴目安
ウォーキング手軽に始められる。1回30分、週3~5回
水中ウォーキング膝や腰への負担が少ない。1回30分、週2~3回
サイクリングやや強度の高い運動が可能。1回30分、週2~3回

筋力トレーニングの重要性

有酸素運動と合わせて行いたいのが、筋力トレーニング(レジスタンス運動)です。

筋肉はブドウ糖を最も多く消費する場所であるため、筋肉量を維持・増加させることは、インスリンの効きを良くするために非常に重要です。

特に太ももやお尻、背中などの大きな筋肉を鍛えるスクワットや、腕立て伏せなどが効果的です。週に2回から3回程度、有酸素運動と組み合わせて行うことで、より効率的に膵臓を休ませることができます。

運動を行うのに適したタイミング

運動はいつ行っても効果がありますが、血糖値のコントロールという点では、「食後」の運動が特に推奨されます。

食事によって血糖値が上がり始める食後30分から1時間くらいの間に運動を始めると、筋肉が血液中のブドウ糖をすぐにエネルギーとして利用するため、食後の血糖値の急上昇を抑えることができます。

その結果、インスリンの必要量も減り、膵臓の負担を軽くできます。夕食後の軽いウォーキングなど、生活に取り入れやすいものから始めてみましょう。

インスリン分泌能の低下を示すサイン

インスリン分泌能が低下し始めても、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。これが糖尿病が「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれるゆえんです。

しかし、進行すると血糖値のコントロールが難しくなり、体に特有のサインが現れることがあります。

食後の異常な眠気

食事、特に炭水化物を多く摂った後に、強い眠気を感じることはありませんか。

これは、食後に血糖値が急上昇し、それを下げようとインスリンが過剰に分泌され、その反動で今度は血糖値が下がりすぎる(機能性低血糖)ことによって起こる場合があります。

また、血糖値が高い状態(高血糖)が続くこと自体が、だるさや眠気を引き起こすこともあります。これは、インスリンの分泌が追いついていないか、効きが悪くなっているサインかもしれません。

空腹時血糖値と食後血糖値の差

健康診断では主に「空腹時血糖値」を測定しますが、インスリン分泌能の低下は、まず「食後血糖値」の上昇から始まります。

空腹時は正常範囲内でも、食後に血糖値が急上昇し、なかなか下がらない状態(食後高血糖)が隠れていることがあります。インスリンの「追加分泌」のタイミングが遅れたり、量が不足したりしている状態です。

この段階では自覚症状はほぼありませんが、膵臓への負担は確実に増えています。

健康診断の数値(HbA1cなど)の見方

健康診断の結果は、インスリン分泌能低下の重要な手がかりとなります。特に「HbA1c(ヘモグロビンA1c)」は、過去1か月から2か月の平均血糖値を反映する指標です。

空腹時血糖値が正常でも、HbA1cが基準値の上限に近いか、わずかに超えている場合は、食後高血糖が頻繁に起きている可能性があり、注意が必要です。

健康診断で注目したい項目

検査項目基準値(例)注意が必要な状態
空腹時血糖値100 mg/dL 未満100~109 mg/dL(正常高値)、110 mg/dL以上(要注意)
HbA1c(NGSP値)5.6 % 未満5.6~5.9 %(境界域)、6.0 %以上(要注意)
※基準値は検査機関によって異なる場合があります。ご自身の結果と基準値を照らし合わせて確認してください。

喉の渇きや多尿(進行した場合)

インスリン分泌能がさらに低下し、高血糖の状態が慢性的に続くと、特有の症状が現れることがあります。血糖値が非常に高くなると、腎臓が尿中に糖を排出しようとします(尿糖)。

その際、糖と一緒に水分も排出されるため、尿の量が増え(多尿)、その結果として体が脱水状態になり、強い喉の渇き(口渇)を感じ、多くの水分を飲む(多飲)ようになります。

これらは、体がSOSを発している危険なサインです。すぐに医療機関を受診してください。

自分のインスリン分泌能を知る方法

自分のインスリン分泌能や、インスリンの効き具合(インスリン抵抗性)の状態を正確に知るには、医療機関での専門的な検査が必要です。

健康診断の基本的な項目だけでは分からない、より詳細な情報を得ることができます。

医療機関で行う血液検査

クリニックでは、血糖値やHbA1cに加えて、インスリン分泌に関連する項目を血液検査で調べます。例えば、「血中インスリン値」や「C-ペプチド(CPR)」などです。

C-ペプチドは、インスリンが膵臓で作られる際に1対1の割合で同時に作られる物質です。

インスリンそのものよりも体内で安定しているため、これを測定することで、ご自身がどれだけのインスリンを分泌する力を持っているか(インスリン分泌能)をより正確に推定することができます。

糖負荷試験(OGTT)とは

「75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)」は、インスリン分泌能や耐糖能(血糖値を処理する能力)を調べるための精密検査です。

空腹の状態でブドウ糖液(75g)を飲み、飲む前、30分後、1時間後、2時間後などに採血して、血糖値とインスリン値の変動を測定します。

この検査を通じて、食後の血糖値の上がり方や、それに対してインスリンがどのタイミングでどれだけ分泌されているかが分かり、「隠れ糖尿病(食後高血糖)」や「境界型」の診断、インスリン分泌のパターン(分泌遅延など)を詳しく評価できます。

HOMA-IR(インスリン抵抗性の指標)

空腹時の血糖値とインスリン値から計算される「HOMA-IR(ホーマ・アール)」という指標があります。これは、主にインスリンがどれだけ効きにくいか(インスリン抵抗性)の程度を示すものです。

この数値が高い場合、インスリン抵抗性が強く、膵臓がインスリンを過剰に分泌して頑張っている状態(過インスリン血症)である可能性が示唆されます。

主な検査と分かること

検査名主な内容分かること(例)
血中C-ペプチド(CPR)血液検査インスリン分泌能(どれだけインスリンを作れるか)
75gOGTTブドウ糖液を飲んで採血食後の血糖・インスリンの反応、隠れ糖尿病
HOMA-IR空腹時の血糖値とインスリン値から計算インスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)

早期発見と定期的なチェック

インスリン分泌能の低下は、ご自身では気づきにくいものです。しかし、早期に発見し、ご自身の状態を正確に把握することが、膵臓を休ませるための第一歩となります。

健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘された方はもちろん、ご家族に糖尿病の方がいる、最近太ってきた、食後の眠気が強いなど、気になるサインがある方は、一度専門の医療機関で詳しい検査を受けることをお勧めします。

Q&A

インスリン分泌能に関して、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。

Q
痩せていてもインスリン分泌能は低下しますか?
A

はい、低下する可能性はあります。特に日本人は、肥満でなくてもインスリン分泌能が低い体質の方が欧米人より多いとされています。

痩せているから大丈夫と安心せず、糖質の多い食事の摂り過ぎや運動不足、遺伝的な要因などがあれば、血糖値が高くなるリスクはあります。

体重だけでなく、食事内容や生活習慣全般を見直すことが大切です。

Q
インスリン分泌能は一度低下したら元に戻らないのですか?
A

β細胞の数が完全に減ってしまった段階では、元に戻すのは困難です。

しかし、糖尿病の初期段階や予備群の段階で見つかった「膵疲弊」(β細胞が疲れて休んでいる状態)であれば、話は別です。

食事や運動によって膵臓の負担を減らし、しっかりと休ませてあげることで、β細胞の機能が回復し、インスリン分泌が改善する可能性は十分にあります。

そのためにも早期発見と早期介入が重要です。

Q
食事を抜くと膵臓は休まりますか?
A

食事を抜けば、その間は血糖値が上がらないため、インスリンの追加分泌は必要なくなり、膵臓は休まるように思えるかもしれません。

しかし、極端な食事制限や欠食は、次の食事での血糖値の急上昇(ドカ食いや早食いにつながるため)を招きやすく、かえって膵臓に大きな負担をかける可能性があります。

また、栄養バランスも崩れます。大切なのは、1日3食を規則正しく、血糖値を上げにくい食べ方で、腹八分目に摂ることです。

Q
糖尿病の薬を飲み始めたら、もう食事や運動は頑張らなくて良いですか?
A

それは大きな誤解です。糖尿病の治療の基本は、あくまで食事療法と運動療法です。お薬は、それらを行っても血糖値のコントロールが不十分な場合に、治療を補助するために使います。

お薬を飲んでいるからといって、食事や運動をおろそかにしてしまっては、インスリン抵抗性や膵疲弊がさらに進行し、お薬の効果も出にくくなってしまいます。

お薬を飲みながらでも、膵臓を休ませる生活を続けることが、合併症を防ぎ、将来的に薬を減らすためにも必要です。

Q
ストレスもインスリン分泌に関係しますか?
A

はい、大いに関係します。私たちが強いストレスを感じると、体はそれに対抗するために「コルチゾール」や「アドレナリン」といったホルモンを分泌します。

これらのホルモンには、血糖値を上昇させ、インスリンの働きを妨げる(インスリン抵抗性を高める)作用があります。

つまり、精神的なストレスが続くと、膵臓はインスリンを余計に分泌しなければならなくなり、負担が増えます。

十分な睡眠や休養、リラックスできる時間を持つことも、膵臓を休ませるために大切です。

参考にした論文