外来担当医の内田です。
今年の梅雨は全国的に大雨が続いていました。熊本県では球磨川が氾濫し死者や行方不明の方が出ていました。今年は年明けから新型コロナウイルス感染症でニュースも持ちきりでしたが、こういうニュースを聞くと改めて日本が災害大国であることを思い出します。
さて、その被害の裏で、東京都では検査陽性者数が連日3桁となっており、今もそれを下回ることはありません。今回はこれについて少し書いてみようと思います。
緊急事態宣言が出たのは04月07日でした。この頃も同じように東京都では連日3桁の検査陽性者数が発表されていました。では、今の状況はこのときと同じでしょうか。
(日本経済新聞webサイト:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57921630Q0A410C2CC1000/ 及び https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63222900Q0A830C2CZ8000/ より引用)
結論から言うと、状況は違いますが、引き続き警戒しなければいけないという点では同じだと考えています。
まず、3月末に欧州などからの帰国者から急速に広がり始めて、まだ気温も湿度も低くウイルスにとっては広がりやすい状況でした。また、このときの「ハード面」の問題として重要なことは“指定感染症”にされたことでしょう。
指定感染症になると、その「感染者」は全員入院が必要だからです。当時、8割の感染者が無症状または軽症状と言われた新型インフルエンザですが、指定感染症であるがために検査をして陽性となれば全員入院が必要だったのです。つまり、発熱または無症状で陽性の患者をどんどん入院し潜伏期間と言われる2週間病院のベッドを埋めると、それ以外の緊急の患者さんやコロナで重症の患者のベッドが十分に確保できなくなることが自明でした。それこそが医療崩壊です。それを防ぐために、PCR検査の対象を狭めることで、本当に病院で隔離・治療が必要な人にベッドを回すというのが日本の方針でした。
今までの結果から言うと、そのやり方が正しかったと見て問題ないでしょう。世界的に見て日本の死亡者数は少ないです。もちろん、もっと少ない国もあります。台湾やニュージ-ランドなど早期から国外からの入国を禁止したことでウイルスが国内へ入ることを阻止しました。日本はその対応は遅かったです。というのも、経済を重視して中国からの観光客を減らしたくなかったからです。
その後、軽症者は看護師のついたホテルなどで隔離、経過観察するという風に変更になり、またPCR検査が増やせることになりました。そして緊急事態宣言で多くの国民が活動を自粛したことで明らかに感染のスピードを落とし、報告される感染者数も減りました。
今の報告される検査陽性者の約7割が20-30代です。「夜の街」関連の感染者数もかなり多いようです。感染者数が少ないことと検査体制がある程度整ったことで以前ならば検査されなかったであろう若者の無症状患者が見つかったという側面もあります。そういった意味では春先の状況とは大きく違います。
しかしながら、こういった若者で無症状であっても数が増えているというのは危機感を持つべきです。これが高齢者や他疾患のある方に移るとまた重症者数も増えていきます。こうなるとまた緊急事態宣言が出される可能性も十分にあります。
私たちにできることは、引き続き手洗い、マスク着用とsocial distancing(他人とは1m以上空ける)、またクラスターを出しているような場所になるべく寄りつかないことでリスクは減らすことができます。