「最近、トイレに行く回数が異常に増えた」「夜中に何度もトイレで目が覚める」「喉が渇いて水分をたくさん摂ってしまう」このような症状に心当たりはありませんか。

単なる体質や年齢のせいだと考えているその症状、実は病気が隠れているサインかもしれません。

特に、尿の量自体が増える「多尿」が原因の場合、ホルモンの異常が関わる内分泌の病気の可能性があります。

この記事では、トイレが近くなる原因、特に多尿と内分泌疾患の関係、病院を受診する目安や検査内容について詳しく解説します。

ご自身の症状と照らし合わせ、健康状態を見直すきっかけにしてください。

「トイレの回数が増えて夜中にも何度も起きる」「大量の尿が出る」これらの症状は単なる水分の摂りすぎや膀胱炎だけでなく、糖尿病や尿崩症、副甲状腺機能亢進症などの内分泌系疾患が隠れている可能性があります。

放置すると脱水症状や電解質バランスの乱れ、さらには腎機能への影響も心配されます。異常な頻尿や多尿でお悩みの方は、ぜひお早めにご相談ください。詳しくはこちら

この記事を書いた人

神戸きしだクリニック院長 岸田雄治
岸田 雄治
神戸きしだクリニック院長

医学博士
日本医学放射線学会認定 放射線診断専門医
日本核医学会認定 核医学専門医
【略歴】
神戸大学医学部卒。神戸大学大学院医学研究科医科学専攻博士課程修了。神戸大学附属病院 放射線科 助教。甲南医療センター放射線科医長を経て神戸きしだクリニックを開業(2020年6月1日)

もしかして病気?「トイレが近い」と感じる頻度の目安

多くの人が「トイレが近い」と感じる症状を頻尿と呼びますが、その定義は意外と知られていません。

医学的にどのくらいの回数から頻尿や多尿とされるのでしょうか。

日中の排尿回数で考える頻尿

頻尿には明確な定義はありませんが、一般的に、日中の排尿回数が8回以上の場合を一つの目安とします。

ただし、これはあくまで目安であり、個人の水分摂取量や生活習慣によって変動します。以前と比べて明らかに回数が増え生活に支障を感じるようであれば、回数に関わらず頻尿と考えてよいでしょう。

頻尿の一般的な目安

状態日中の排尿回数備考
正常範囲4~7回程度個人差が大きい
頻尿の目安8回以上生活への支障の有無も重要

夜間頻尿とは

夜間頻尿は、夜間に排尿のために1回以上起きなければならず、そのことで困っている状態を指します。加齢とともに増える傾向にありますが、若い世代でも起こり得ます。

睡眠の質を大きく低下させ、日中の眠気や倦怠感の原因にもなるため、注意が必要です。

尿量が増える「多尿」とは

頻尿と似ていますが、「多尿」は1日の尿量そのものが異常に多い状態を指します。体重1kgあたり40mlを超える尿量、成人で1日3リットル以上が目安です。

頻尿は排尿回数の問題ですが、多尿は体内の水分調節機能に何らかの問題が起きている可能性を示唆します。

この二つは密接に関連しており、多尿が原因で頻尿になるケースは少なくありません。

多尿の目安(成人)

項目尿量
正常な1日の尿量1~1.5リットル
多尿の目安3リットル以上

トイレが近くなる主な原因

トイレが近くなる原因は一つではありません。水分の摂りすぎといった単純なものから、泌尿器科系の疾患、そして内分泌系の疾患まで多岐にわたります。

水分摂取量の影響

最も分かりやすい原因は、水分の過剰摂取です。特にコーヒーやお茶、アルコールなど利尿作用のある飲み物を多く摂取すると、尿の量と回数が増えます。

健康のためにと意識して水分を摂りすぎている場合もあるため、一度、何をどれくらい飲んでいるか見直してみることも大切です。

利尿作用のある主な飲み物

  • コーヒー
  • 紅茶・緑茶
  • アルコール飲料
  • エナジードリンク

加齢による身体の変化

年齢を重ねると、夜間の尿量を調節する抗利尿ホルモンの分泌が減少したり、膀胱の弾力性が低下してためられる尿量が減ったりします。これにより、特に夜間頻尿が起こりやすくなります。

男性の場合は前立腺肥大症、女性の場合は骨盤底筋の衰えなども原因となります。

泌尿器科系の病気

膀胱炎や過活動膀胱、前立腺肥大症(男性)など、膀胱や尿道そのものに問題がある場合も頻尿になります。

これらの病気では、残尿感や排尿時痛といった他の症状を伴うことも多いのが特徴です。

頻尿を引き起こす主な原因

分類主な原因・疾患特徴
生活習慣水分・カフェイン・アルコールの過剰摂取摂取量に比例して症状が出る
泌尿器科系疾患過活動膀胱、膀胱炎、前立腺肥大症急な尿意、残尿感、排尿時痛などを伴うことがある
内分泌系疾患糖尿病、尿崩症多尿を伴い、異常な喉の渇きが見られる

「多尿」が引き起こす頻尿とは?水分摂取との関係

頻尿の中でも、尿量そのものが多い「多尿」が原因の場合は、体内の水分バランスをコントロールする仕組みに異常が生じている可能性があります。

体内の水分バランス調節

私たちの体は、脳の下垂体から分泌される「抗利尿ホルモン(バソプレシン)」によって尿量を巧みに調節しています。

このホルモンは腎臓に作用し、体に必要な水分を再吸収させて尿を濃縮します。この働きのおかげで、私たちは大量の水分を失うことなく活動できます。

多尿が起こる背景

多尿は、主に二つの理由で起こります。

一つは、糖尿病のように血液中の糖分(浸透圧物質)が多くなり、水分が尿として排出されやすくなる「浸透圧利尿」。

もう一つは、抗利尿ホルモンの分泌が不足したり、腎臓での効きが悪くなったりして、水分の再吸収がうまくいかなくなる「水利尿」です。

後者の代表が尿崩症です。

水分を摂りすぎてしまう心理

多尿になると、体は脱水状態に傾きます。この体の変化を補うために、脳は「喉が渇いた」というサインを出して水分補給を促します。

その結果、「喉が渇くから飲む、飲むから尿が増える」という悪循環に陥ることがあります。

これは単なる飲みすぎではなく、体が水分を保持できないために起こる生理的な反応なのです。

要注意!頻尿・多尿の裏に隠れている可能性のある内分泌の病気

異常な喉の渇きを伴う多尿・頻尿は、内分泌系の病気が原因かもしれません。

特に注意したいのが「糖尿病」と「尿崩症」です。放置すると深刻な事態につながるため、早期発見・早期治療が重要です。

最も一般的な原因「糖尿病」

糖尿病は、血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用不足により、血液中の糖分(血糖)が多くなる病気です。

血糖値が高くなると、尿中にも糖が漏れ出します。このとき、糖と一緒に水分も排出されるため、尿量が増加(多尿)します。

体は水分不足を補おうとして、強い喉の渇き(多飲)を感じます。

糖尿病の主な初期症状

症状内容
多尿・頻尿尿量・回数が増える
口渇・多飲異常に喉が渇き、多くの水分を摂る
体重減少食事は摂っているのに痩せる
全身の倦怠感疲れやすく、体がだるい

稀だが重要な「尿崩症」

尿崩症は、抗利尿ホルモンの分泌が低下する「中枢性尿崩症」と、ホルモンは正常でも腎臓での反応が悪くなる「腎性尿崩症」に分けられます。

このホルモンの働きが損なわれると腎臓での水分再吸収ができなくなり、大量の薄い尿が排出されます。

1日に5リットル、多い人では10リットル以上の尿が出ることもあり、激しい喉の渇きを伴います。

尿崩症の主な症状

症状特徴
著しい多尿1日3リットル以上、時には10リットルを超えることも
激しい口渇・多飲冷たい水を異常に好む傾向がある
夜間頻尿多尿のため、夜中に何度も起きる

その他の内分泌疾患

頻度は低いですが、血液中のカルシウム濃度が高くなる「高カルシウム血症」や、カリウム濃度が低くなる「低カリウム血症」も多尿の原因となることがあります。

これらは、副甲状腺や副腎などのホルモン異常によって引き起こされる場合があります。

その症状、本当に年のせい?見過ごされがちな「のどの渇き」との関係

「トイレが近いのは年のせい」「水分を摂りすぎただけ」。そう思い込んで、体からの重要なサインを見逃していませんか。

特に「のどの渇き」は、頻尿・多尿の原因を探る上で非常に重要な手がかりです。

年齢のせいだと諦めていませんか

頻尿は加齢とともに増加するため、多くの人が「仕方ない」と諦めてしまいがちです。しかし、背景に糖尿病や尿崩症といった治療が必要な病気が隠れている場合、放置は禁物です。

特に、以前とは比べ物にならないほどの頻度であったり、急に症状が現れたりした場合は、単なる加齢現象ではない可能性を考えましょう。

「多飲」と「多尿」の悪循環

「喉が渇くから飲む、飲むからトイレが近くなる」というサイクルは、病気のサインである可能性があります。

健康な体であれば、抗利尿ホルモンの働きで多少水分を多く摂っても尿量は適切に調節されます。

しかし、この調節機能が壊れていると飲んだ水分がそのまま尿として出て行ってしまい、体は常に水分を欲する状態になります。

この悪循環こそ、診察を受けるべき重要な兆候です。

体からの重要なサインを見逃さないために

多飲・多尿に加え、原因不明の体重減少、全身の倦怠感、食欲の変化など、他の症状がないかどうかも注意深く観察してください。

これらの症状が組み合わさっている場合、内分泌系の病気の可能性がより高まります。

些細なことと思わずに、体の変化を総合的に捉えることが大切です。

記録が教えてくれること

自分の症状を客観的に把握するために、「排尿日誌」をつけることを強く勧めます。

いつ、どれくらいの量を飲んだか(飲水量)、いつ、どれくらいの尿が出たか(排尿量)を2~3日間記録するだけです。

「なんとなく多い気がする」という主観的な感覚だけでなく、具体的な数字を示すことで、より正確な診断につながります。

病院を受診するタイミングと何科に行けばいいか

症状に気づいても、いつ、どの診療科を受診すればよいか迷う方は多いでしょう。

受診の目安と適切な診療科の選び方を解説します。

受診を検討すべき症状

セルフチェックで当てはまる項目が多いほど、専門医への相談が必要です。特に、生活に支障が出ている場合は、早めに受診を検討してください。

受診を考えるべき症状リスト

チェック項目
日中のトイレの回数が8回以上ある
夜、トイレのために2回以上起きる
急に強い尿意を感じ、我慢するのが難しい
異常に喉が渇き、たくさんの水分を摂ってしまう
食事量は変わらないのに体重が減ってきた
常に体がだるく、疲れやすい

まずはかかりつけ医への相談

どの診療科に行けばよいか分からない場合は、まずかかりつけ医に相談するのがよいでしょう。症状を総合的に判断し、適切な専門医を紹介してくれます。

症状に応じた専門科の選択

症状によって、受診すべき専門科は異なります。残尿感や排尿時痛、尿意切迫感が強い場合は「泌尿器科」が適しています。

一方で、「多尿」や「異常な喉の渇き」が主な症状の場合は、ホルモンの専門家である「内分泌内科」の受診を強く勧めます。

診療科の選び方

  • 泌尿器科: 排尿時痛、残尿感、尿意切迫感など、排尿そのもののトラブルが中心の場合
  • 内分泌内科: 異常な喉の渇き、多尿、体重減少、倦怠感など、全身症状を伴う場合

内分泌内科で行う詳しい検査内容

内分泌内科では、問診や診察に加え、血液検査や尿検査などを通じて多尿の原因を詳しく調べます。

問診と身体診察

まず、症状がいつから始まったか、1日にどれくらいの水分を摂り何回トイレに行くか、他にどのような症状があるかなどを詳しく聞きます。

排尿日誌があれば、この時に提出してください。

その後、体重測定や血圧測定、むくみの有無などを確認します。

血液検査

血液検査は、多尿の原因を診断する上で非常に重要です。血糖値やヘモグロビンA1c(過去1~2ヶ月の血糖の平均)を調べて糖尿病の有無を確認します。

また、血中の電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)の濃度を測定し、ホルモン異常を示唆する所見がないか調べます。

尿検査

尿検査では、尿に糖やタンパクが混じっていないか、尿の濃さ(尿浸透圧や尿比重)はどのくらいかを調べます。

糖尿病では尿糖が陽性になり、尿崩症では尿が非常に薄くなります。この検査により、腎臓が尿を正常に濃縮できているか評価します。

内分泌内科で行う主な検査

検査の種類主な検査項目調べる内容
血液検査血糖値、HbA1c、電解質糖尿病の有無、体内のミネラルバランス
尿検査尿糖、尿比重、尿浸透圧尿中の糖の有無、尿の濃縮能力
負荷試験水制限試験、ホルモン負荷試験尿崩症の診断、ホルモン分泌の評価

必要に応じて行う専門的な検査

上記の検査で異常が見つかった場合や、診断を確定するためにさらに詳しい検査を行います。

尿崩症が疑われる場合には、「水制限試験」を行います。これは、一定時間水分を制限し、抗利尿ホルモンが正常に分泌され、尿が濃縮されるかを調べる検査です。

入院が必要になることもあります。

日常生活でできるセルフケアと注意点

病院での診断や治療と並行して、日常生活で症状を和らげるためにできることもあります。

ただし、自己判断で極端な水分制限などを行うのは危険です。必ず医師の指導のもとで行ってください。

水分摂取の見直し

病的な多尿でない場合は、水分摂取の仕方を見直すことで症状が改善することがあります。一度にがぶ飲みせず、こまめに飲むことを心がけましょう。

特に就寝前は、カフェインやアルコールの摂取を控えることが夜間頻尿の対策になります。

食事の工夫

塩分の多い食事は喉の渇きを誘発し、水分摂取量の増加につながります。減塩を心がけることが大切です。

また、カリウムを多く含む野菜や果物は、ナトリウムの排出を助けます。バランスの取れた食事を意識しましょう。

生活習慣の見直しポイント

  • 就寝前の水分、カフェイン、アルコールを控える
  • 塩分を控えめにした食事を心がける
  • 体を冷やさないようにする

体を冷やさない

体の冷えは、膀胱を刺激して尿意を強くすることがあります。

服装を工夫したり、適度な運動を取り入れたりして、体を温めるようにしましょう。特に下半身を冷やさないことが重要です。

自己判断による水分制限の危険性

最も注意してほしいのは、自己判断で厳格な水分制限を行わないことです。

特に糖尿病や尿崩症が原因の場合、水分制限は重度の脱水を引き起こし、意識障害など命に関わる状態を招く危険があります。

水分を制限する際は、必ず医師に相談してください。

トイレの悩みに関するよくある質問

最後に、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
ストレスでトイレが近くなることはありますか?
A

はい、あります。強いストレスや緊張を感じると、自律神経のバランスが乱れ、膀胱が過敏になって頻尿になることがあります。これは「心因性頻尿」と呼ばれます。

ただし、多尿を伴うことは少ないため、尿量が多い場合は他の原因を考える必要があります。

Q
子供のトイレが近く、おねしょが治りません。病気でしょうか?
A

子供の多尿・頻尿やおねしょ(夜尿症)も、体質的なものから病的なものまで原因は様々です。まれに小児の糖尿病や尿崩症が隠れていることもあります。

水分を異常に欲しがる、体重が増えないなどの症状があれば、小児科や内分泌内科にご相談ください。

Q
検査を受ける前に注意することはありますか?
A

正確な診断のため、普段通りの生活でお越しいただくのが基本です。ただし、血液検査では食事の影響を受ける項目(血糖値など)があるため、朝食を抜いて来院するよう指示される場合があります。

また、排尿日誌をつけている場合は忘れずにお持ちください。予約時にクリニックの指示を確認することが大切です。

Q
カフェインが含まれていない飲み物は何ですか?
A

就寝前など、利尿作用を避けたいときにおすすめの飲み物です。

カフェインの少ない・含まれない主な飲み物

  • 麦茶
  • ルイボスティー
  • 水・白湯
  • そば茶

当院(神戸きしだクリニック)への受診について

神戸きしだクリニックの内分泌内科では、頻尿や多尿に関わるホルモンバランスの異常について専門的な診察を行っております。

異常な尿の頻度や量の増加は、血糖値の異常(糖尿病)、抗利尿ホルモンの分泌異常(尿崩症)、副甲状腺ホルモン過剰分泌、あるいは電解質バランスの乱れなど、内分泌系の問題が背景にある可能性があります。

異常な頻尿や多尿にお悩みの方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

内分泌内科

診療時間日祝
9:00 – 12:00
隔週
13:30 – 16:30
09:00~12:0013:30~16:30

隔週

検査体制

  • 血糖値・HbA1c測定
  • 尿検査(糖・比重・浸透圧など)
  • 抗利尿ホルモン(ADH)測定
  • 副甲状腺ホルモン・カルシウム測定
  • 血液検査(電解質・腎機能など)
  • 水制限試験・デスモプレシン試験(必要に応じて)

など、症状に応じた適切な検査を実施いたします。専門的な精査や詳細検査が必要な場合は、神戸大学医学部附属病院など高度医療機関と連携して対応いたします。

予約・受診方法

当院は予約必須ではございませんが、来院予約をオンラインよりしていただけますと、来院時にお待ちいただく時間が少なくできます。

24時間いつでも予約可能

電話予約

お電話での予約も受け付けております。健康診断の再検査についてのご不明点もお気軽にご相談ください。

▽ クリック ▽

電話予約

内分泌内科(神戸きしだクリニック)TOPページに戻る

参考文献