立ち上がった瞬間に目の前が真っ暗になる、ふらつきが激しくて歩けない、朝起きるのが怖い。そんなひどい立ちくらみに悩んでいませんか。

立ちくらみは単なる貧血や低血圧だけが原因ではありません。実は副腎や甲状腺といった内分泌器官の異常が隠れている可能性があります。

特に疲れやすさ、体重の変化、血圧の異常な変動を伴う場合は要注意です。内分泌内科での専門的な検査により、根本的な原因を突き止め、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。

「急に立ち上がるとクラっとする」「めまいやフワフワした感じが続く」これらの症状は、単なる貧血や疲れ、寝不足だけでなく、副腎皮質機能低下症(アジソン病)や甲状腺機能の異常、糖尿病などの内分泌系疾患が隠れている可能性があります。

ホルモンバランスの乱れによる立ちくらみを放置すると、血圧の著しい低下による意識消失(失神)や、電解質バランスの乱れによる体調不良につながる危険性があります。原因不明の立ちくらみやめまいでお悩みの方は、ぜひお早めに専門医にご相談ください。詳しくはこちら

この記事を書いた人

神戸きしだクリニック院長 岸田雄治
岸田 雄治
神戸きしだクリニック院長

医学博士
日本医学放射線学会認定 放射線診断専門医
日本核医学会認定 核医学専門医
【略歴】
神戸大学医学部卒。神戸大学大学院医学研究科医科学専攻博士課程修了。神戸大学附属病院 放射線科 助教。甲南医療センター放射線科医長を経て神戸きしだクリニックを開業(2020年6月1日)

立ちくらみが起こる仕組みと主な原因

立ちくらみは医学的に起立性低血圧と呼ばれ、立ち上がった際に血圧が急激に下がることで脳への血流が一時的に不足する現象です。

健康な人でも軽い立ちくらみを経験することはありますが、頻繁に起こる場合や症状が重い場合は、体の中で何らかの異常が起きているサインかもしれません。

自律神経の調節機能と血圧変動

人が立ち上がる時、重力によって血液が下半身に集まります。通常は自律神経が働いて血管を収縮させ、心拍数を上げることで血圧を維持します。

しかし、この調節機能がうまく働かないと、脳への血流が不足し立ちくらみが発生します。

状態正常な反応異常な反応
立ち上がり直後血管収縮・心拍数上昇血管収縮不十分・心拍数変化なし
血圧の変化一時的に10mmHg程度低下20mmHg以上の急激な低下
症状なし~軽いふらつきめまい・視界の暗転・失神

血液量の不足による立ちくらみ

体内の血液量が少ないと、立ち上がった時に十分な血液を脳に送ることができません。脱水、出血、栄養不足などが原因となります。

特に夏場の発汗や下痢・嘔吐による水分喪失は注意が必要です。

心臓機能の低下が引き起こす症状

心臓のポンプ機能が低下していると、立ち上がった時に血液を効率よく全身に送ることができません。不整脈や心臓弁膜症、心筋症などが原因となることがあります。

動悸や息切れを伴う場合は心臓の検査も必要です。

薬剤の副作用による起立性低血圧

降圧薬、利尿薬、抗うつ薬、前立腺肥大症の薬など、様々な薬剤が立ちくらみを引き起こす可能性があります。

複数の薬を服用している場合は、相互作用によって症状が強く出ることもあります。

内分泌疾患が原因となる立ちくらみの特徴

内分泌疾患による立ちくらみは、ホルモンバランスの乱れが自律神経や血圧調節機能に影響を与えることで発生します。

単純な起立性低血圧とは異なり、疲労感、体重変化、皮膚の変化など全身症状を伴うことが特徴です。

副腎不全による重度の立ちくらみ

副腎は腎臓の上にある小さな臓器で、コルチゾールやアルドステロンといった生命維持に必要なホルモンを分泌しています。

副腎不全では、これらのホルモンが不足し、血圧を維持できなくなります。

副腎不全の特徴的な症状

  • 朝起きられないほどの強い疲労感
  • 塩分を異常に欲しがる
  • 皮膚や歯茎の色素沈着
  • 低血糖症状(冷や汗、手の震え)

甲状腺機能低下症と起立性低血圧

甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節する重要なホルモンです。

甲状腺機能低下症では、心臓の収縮力が低下し血管の反応性も鈍くなるため、立ちくらみが起こりやすくなります。

甲状腺機能低下症の症状頻度立ちくらみとの関連
むくみ高い血液循環の悪化
徐脈(脈が遅い)中程度心拍出量の低下
便秘高い自律神経機能低下

糖尿病性自律神経障害

長期間血糖コントロールが不良な糖尿病患者では、自律神経が障害を受けることがあります。

血圧調節機能が低下し、重度の起立性低血圧を引き起こします。

褐色細胞腫による血圧変動

褐色細胞腫は副腎髄質や交感神経節に発生する腫瘍で、アドレナリンやノルアドレナリンを過剰に分泌します。

発作的な高血圧と、その後の急激な血圧低下により激しい立ちくらみを引き起こすことがあります。

見逃されやすい内分泌疾患のサイン

立ちくらみを主訴に受診する患者の中で、内分泌疾患が原因となっているケースは意外と多く存在します。

しかし、症状が非特異的であるため、見逃されることも少なくありません。

慢性的な疲労感との関連

「最近疲れやすい」「朝起きるのがつらい」といった慢性疲労は、単なる過労やストレスと片付けられがちです。

しかし、副腎不全や甲状腺機能低下症では、エネルギー代謝の異常により極度の疲労感が現れます。

内分泌疾患を疑う疲労感の特徴

  • 十分な休養をとっても改善しない
  • 午後になると急激に悪化する
  • ストレス時に極端に体調を崩す
  • 感染症にかかりやすくなる

体重変化と食欲の異常

原因不明の体重減少や増加は、内分泌疾患の重要なサインです。

甲状腺機能亢進症では食欲があるのに体重が減少し、逆に甲状腺機能低下症では食欲がないのに体重が増加します。

疾患体重変化食欲その他の特徴
甲状腺機能亢進症減少亢進発汗増加、動悸
甲状腺機能低下症増加低下寒がり、便秘
副腎不全減少低下塩分を欲する

皮膚の変化から読み取る内分泌異常

皮膚は内分泌系の異常を反映しやすい臓器です。

色素沈着、乾燥、多汗、脱毛などの変化は、ホルモンバランスの乱れを示唆している可能性があります。

月経異常と立ちくらみの関係

女性の場合、月経周期の乱れや無月経は内分泌疾患のサインかもしれません。

下垂体機能低下症や多嚢胞性卵巣症候群では、ホルモンバランスの乱れにより立ちくらみも起こりやすくなります。

内分泌内科での診断プロセス

内分泌疾患による立ちくらみを正確に診断するためには、専門的な検査と評価が必要です。

一般的な血液検査だけでは見逃される可能性があるため、内分泌内科での詳細な検査が重要となります。

詳細な問診と身体診察

内分泌内科では、症状の経過、家族歴、服薬歴などを詳しく聞き取ります。身体診察では、血圧測定(臥位と立位)、皮膚の状態、甲状腺の触診などを行います。

ホルモン検査の重要性

血液中のホルモン値を測定することで、内分泌疾患の診断が可能になります。基礎値だけでなく、負荷試験を行うことで、より正確な診断ができます。

主要なホルモン検査項目

  • コルチゾール(副腎皮質ホルモン)
  • ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)
  • TSH、FT3、FT4(甲状腺関連)
  • 血糖値、インスリン値

負荷試験による機能評価

単純な採血だけでは診断が困難な場合、各種負荷試験を行います。

ACTH負荷試験、インスリン負荷試験、立位負荷試験などにより、ホルモン分泌能や自律神経機能を評価します。

負荷試験目的評価項目
ACTH負荷試験副腎機能評価コルチゾール反応性
立位負荷試験自律神経機能血圧・脈拍変化
経口ブドウ糖負荷試験糖代謝評価血糖・インスリン値

画像検査による器質的異常の確認

CTやMRIなどの画像検査により、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、甲状腺腫瘍などの器質的異常を確認します。

機能性腫瘍の場合は、特殊な核医学検査も行うことがあります。

立ちくらみを改善する治療法

内分泌疾患が原因の立ちくらみは、原疾患の治療により劇的に改善することが多いです。

ホルモン補充療法や生活指導により、多くの患者が日常生活を取り戻しています。

ホルモン補充療法の実際

副腎不全や甲状腺機能低下症では、不足しているホルモンを補充することが治療の基本となります。

適切な用量調整により、立ちくらみだけでなく全身症状の改善が期待できます。

ホルモン補充療法の注意点

  • 定期的な血液検査による用量調整
  • 体調変化時の用量変更
  • 長期服用による副作用の管理
  • 災害時の薬剤確保

生活習慣の改善指導

薬物療法と並行して、日常生活の工夫により症状を軽減することができます。

水分摂取、塩分摂取、運動療法などを組み合わせることで、立ちくらみの頻度を減らすことが可能です。

血圧管理と薬物調整

内分泌疾患では血圧が不安定になりやすいため、きめ細かな血圧管理が必要です。

降圧薬を服用している場合は、内分泌疾患の治療に伴い用量調整が必要になることがあります。

対策具体的方法効果
水分補給1日1.5-2L程度血液量増加
塩分摂取適度な塩分補給血圧維持
段階的起立ゆっくり立ち上がる急激な血圧低下予防

継続的なフォローアップの必要性

内分泌疾患は慢性疾患であることが多く、定期的な通院と検査が必要です。症状が改善しても、自己判断で治療を中断すると再発する危険があります。

日常生活での立ちくらみ対策

立ちくらみを予防し、症状を軽減するためには、日常生活での工夫が大切です。簡単にできる対策を実践することで、生活の質を向上させることができます。

起床時の工夫と注意点

朝の立ちくらみは特に危険です。

急に起き上がらず、まず布団の中で手足を動かし、ゆっくりと体を起こすようにしましょう。枕元に水を置いておき、起床前に水分補給をすることも効果的です。

入浴時の安全対策

熱いお風呂は血管を拡張させ、立ちくらみを誘発します。

ぬるめのお湯にゆっくりつかり、浴槽から出る時は手すりを使って慎重に立ち上がりましょう。

入浴時の注意事項

  • 湯温は38-40度程度に設定
  • 入浴時間は15分以内
  • 浴室に手すりや滑り止めマットを設置
  • 家族に入浴を知らせておく

運動療法による体力向上

適度な運動は自律神経機能を改善し、立ちくらみの予防に役立ちます。ウォーキング、水泳、ヨガなど、無理のない範囲で継続することが大切です。

食事と水分摂取の重要性

規則正しい食事と十分な水分摂取は、血液量を維持し、立ちくらみを予防します。特に暑い季節や運動後は、意識的に水分と塩分を補給しましょう。

時間帯推奨摂取量注意点
起床時コップ1杯常温の水
食事時各200ml程度食事中の水分も計算
就寝前コップ半分トイレの回数に配慮

なぜ内分泌内科での診察が必要なのか

一般内科でも立ちくらみの診察は可能ですが、内分泌疾患が疑われる場合は専門医による診察が重要です。

見逃されがちな内分泌疾患を正確に診断し、適切な治療を受けることで症状の根本的な改善が期待できます。

専門的な検査体制の充実

内分泌内科では、各種ホルモン検査や負荷試験を迅速に行える体制が整っています。微妙なホルモンバランスの異常も見逃さず、早期診断・治療が可能です。

他科との連携による総合的治療

内分泌疾患は全身に影響を及ぼすため、循環器内科、神経内科、眼科など他科との連携が必要になることがあります。

内分泌内科では、このような連携体制が確立されています。

長期的な健康管理の視点

内分泌疾患は生涯にわたる管理が必要な場合が多く、専門医による継続的なフォローが重要です。合併症の予防や生活の質の向上を目指した包括的な医療を提供します。

緊急時の対応体制

副腎不全などでは、ストレス時に急激に症状が悪化することがあります。

内分泌内科では、このような緊急時の対応についても十分な指導を行います。

よくある質問

立ちくらみと内分泌疾患について、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。

Q
立ちくらみがあれば必ず内分泌疾患なのでしょうか
A

立ちくらみの原因は様々で、必ずしも内分泌疾患とは限りません。しかし、慢性的な疲労感、体重変化、皮膚の変化などを伴う場合は、内分泌疾患の可能性を考慮する必要があります。

Q
検査結果が正常でも症状が続く場合はどうすればよいですか
A

一般的な血液検査では異常が見つからなくても、詳細なホルモン検査や負荷試験で異常が判明することがあります。症状が続く場合は、内分泌内科での精密検査をお勧めします。

Q
治療を始めてどのくらいで症状が改善しますか
A

ホルモン補充療法を開始した場合、早ければ数日から数週間で症状の改善を実感できます。ただし、完全に安定するまでには数ヶ月かかることもあり、個人差があります。

Q
妊娠中や授乳中でも治療は受けられますか
A

多くの内分泌疾患の治療薬は、適切な管理下で妊娠中・授乳中も使用可能です。むしろ未治療のまま放置する方が母子に悪影響を及ぼす可能性があるため、専門医と相談しながら治療を継続することが大切です。

Q
内分泌疾患は遺伝しますか
A

一部の内分泌疾患には遺伝的要因が関与していますが、必ずしも遺伝するわけではありません。家族歴がある場合は、早期発見のために定期的な検査を受けることをお勧めします。

Q
生活習慣病との関係はありますか
A

糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、内分泌系の異常と密接に関連しています。これらの疾患がある方は、立ちくらみの原因として内分泌疾患も考慮する必要があります。

Q
ストレスは立ちくらみに影響しますか
A

慢性的なストレスは副腎機能に影響を与え、立ちくらみを悪化させる可能性があります。適切なストレス管理も治療の一環として重要です。

Q
市販薬で対処してもよいでしょうか
A

立ちくらみの原因が内分泌疾患の場合、市販薬では根本的な改善は期待できません。自己判断での対処は危険な場合もあるため、専門医の診察を受けることが大切です。

当院(神戸きしだクリニック)への受診について

神戸きしだクリニックの内分泌内科では、立ちくらみやめまいに関わるホルモンバランスの異常について専門的な診察を行っております。

繰り返すひどい立ちくらみは、副腎皮質ホルモンの不足(副腎皮質機能低下症)、甲状腺ホルモンの異常、血糖値のコントロール不良(糖尿病による低血糖など)、あるいは電解質バランスの乱れといった内分泌系の問題が背景にある可能性があります。

原因がわからない立ちくらみや、めまいにお悩みの方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

内分泌内科

診療時間日祝
9:00 – 12:00
隔週
13:30 – 16:30
09:00~12:0013:30~16:30

隔週

検査体制

  • 起立試験(臥位・立位での血圧測定)
  • 血糖値・HbA1c測定
  • 血液検査(電解質、腎機能など)
  • 副腎皮質ホルモン・関連ホルモン測定(コルチゾール、ACTHなど)
  • 甲状腺ホルモン測定
  • 各種ホルモン負荷試験(必要に応じて)

など、症状に応じた適切な検査を実施いたします。専門的な精査や詳細検査が必要な場合は、神戸大学医学部附属病院など高度医療機関と連携して対応いたします。

予約・受診方法

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参考文献