日本で糖尿病が強く疑われる人は約1,000万人にのぼり、予備軍を含めると約2,000万人に達するとされています。成人のおよそ6人に1人が糖尿病もしくはその予備軍に該当する計算です。

「まさか自分が」と思う方も多いかもしれませんが、糖尿病は自覚症状がないまま進行する病気であり、気づいたときには合併症が始まっていたというケースも珍しくありません。

この記事では、国の調査データをもとに日本の糖尿病有病率と推移を整理し、自分が予備軍に該当するかどうかを判断するための血液検査の数値や生活習慣のチェックポイントをわかりやすく解説します。

目次

日本では約6人に1人の成人男性が糖尿病を強く疑われている

令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は男性で16.8%、女性で8.9%でした。男性ではおよそ6人に1人、女性ではおよそ11人に1人が該当する計算になります。

「糖尿病が強く疑われる人」とはどういう基準で判定されるのか

国民健康・栄養調査では、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が6.5%以上の人、または糖尿病の治療を受けていると回答した人を「糖尿病が強く疑われる者」として集計しています。HbA1cとは、過去1〜2か月の血糖値の平均を反映する血液検査の指標です。

つまり、健康診断でHbA1cが6.5%以上と出た場合、調査上は「糖尿病が強く疑われる」グループに含まれることになります。自覚症状がなくても、血液データが一定の基準を超えていれば該当するという点がポイントでしょう。

男女差と年齢による有病率の違いが大きい

糖尿病の有病率は男性のほうが女性より高く、年齢が上がるほど割合が増える傾向にあります。とくに50代以降で急激に有病率が上昇するため、40代のうちから定期的に血糖値をチェックしておくことが大切です。

一方で、近年は30代・40代の若い世代でも糖尿病と診断されるケースが増えてきました。仕事の忙しさや食生活の乱れが重なると、年齢にかかわらずリスクが高まります。

性別・年代別にみた糖尿病有病率の目安

区分男性女性
20〜39歳約3〜5%約1〜3%
40〜59歳約10〜16%約5〜8%
60歳以上約20〜25%約12〜16%
全体平均約16.8%約8.9%

予備軍を合わせると日本の成人のおよそ5〜6人に1人が該当する

糖尿病が強く疑われる人だけでなく、「糖尿病の可能性を否定できない人」、いわゆる予備軍を合算すると、その数は約2,000万人に達します。日本の成人人口からみると、およそ5〜6人に1人が糖尿病もしくはその予備軍にあたる計算です。

この数字は「自分にはまだ関係ない」と感じている方にとっても、決して他人事ではないことを示しています。予備軍の段階で生活を見直せば、糖尿病への進行を防げる可能性が十分にあります。

糖尿病の有病者数と予備軍はこの20年で増え続けてきた

日本における糖尿病有病者の数は、過去20年にわたって増加の一途をたどってきました。平成9年(1997年)に約690万人だった有病者は、令和元年(2019年)の推計で約1,150万人に達しています。

国民健康・栄養調査が示す有病者数の変遷

厚生労働省が実施する国民健康・栄養調査は、日本人の糖尿病に関する統計データとしてもっとも広く参照される調査です。平成28年(2016年)の結果では、糖尿病が強く疑われる人が約1,000万人、予備軍も約1,000万人と報告されました。

その後、新型コロナウイルス感染症の影響で調査が実施できない年度がありましたが、令和元年の推計値として約1,150万人という数字が公表されています。国際糖尿病連合(IDF)の2024年版アトラスでも、日本の糖尿病有病者は約1,080万人と推計されました。

患者調査でわかる「治療中」の患者数の推移

厚生労働省が3年ごとに行う患者調査では、実際に医療機関で糖尿病の治療を受けている患者数が集計されています。令和5年(2023年)の調査結果によると、糖尿病で治療中の総患者数は約552万3,000人でした。

前回の令和2年(2020年)調査の約579万1,000人からはやや減少しましたが、依然として500万人を大きく超える水準です。2型糖尿病が全体の約66%を占め、約363万9,000人にのぼります。

有病者と治療中の患者数に大きな差がある理由

「糖尿病が強く疑われる人」が約1,000万人以上いるのに対し、実際に治療を受けているのは約552万人にとどまっています。差し引きすると、数百万人規模の方が糖尿病の可能性がありながら医療機関を受診していない、あるいは治療を中断していると考えられます。

「健診で血糖値が高いと言われたけれど、自覚症状がないから放置している」という方は少なくありません。しかし自覚症状が出るころには合併症がかなり進行しているケースも多く、早めの受診が何よりの対策です。

日本の糖尿病有病者数と治療患者数の推移

年度有病者(推計)治療中の患者数
1997年約690万人
2007年約890万人約237万人
2016年約1,000万人約329万人
2019年(推計)約1,150万人
2023年約552万人

世界と比べた日本の糖尿病有病率はどの程度なのか

世界全体でみると、20〜79歳の成人のうち約9人に1人に相当する5億8,900万人が糖尿病を抱えています。日本はこの中で有病者数が上位10位に入る「糖尿病大国」のひとつです。

IDF糖尿病アトラスが示す世界の現状

国際糖尿病連合(IDF)が発行する「糖尿病アトラス」第11版によると、世界の糖尿病有病者は5億8,900万人に達し、成人の約9人に1人が該当するとされています。さらに、糖尿病予備軍に相当する耐糖能異常の人は約6億3,500万人で、成人の約8人に1人が2型糖尿病を発症するリスクが高い状態にあるといいます。

2050年までに、糖尿病とともに生きる成人の数は8億5,300万人にまで増加すると予測されており、世界規模で見ても深刻な健康課題といえるでしょう。

日本は世界でも上位に位置する糖尿病の多い国

日本が含まれる西太平洋地域は、世界でも糖尿病が急増している地域です。同地域では2億1,540万人が糖尿病と推計されています。日本単独でも約1,080万人の有病者がいるとされ、世界の上位10か国に名を連ねています。

日本と世界の糖尿病有病率比較

地域有病者数成人中の割合
世界全体約5億8,900万人約9人に1人
西太平洋地域約2億1,540万人
日本約1,080万人約10人に1人

日本人は欧米人と比べてインスリン分泌量が少ない傾向がある

欧米に比べると、日本を含むアジア人は遺伝的にインスリンの分泌量が少ない傾向が指摘されています。そのため、欧米人ほど体重が増えていなくても血糖値が上がりやすく、BMI(体格指数)が標準範囲内でも糖尿病を発症する方が珍しくありません。

「自分は太っていないから大丈夫」という考えは、とくに日本人の場合は当てはまらない可能性があります。痩せ型でも糖尿病になり得るという事実を知っておくだけで、早期の検査や対策につなげやすくなるでしょう。

自分が糖尿病予備軍かどうかを見分ける血液検査の数値

糖尿病の予備軍かどうかを判断するうえで、もっとも参考になるのがHbA1cと空腹時血糖値の2つの指標です。健康診断の結果にこれらの数値が記載されていれば、まずは基準値と照らし合わせてみましょう。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の見方と基準

HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンにブドウ糖が結合した割合を示す値で、過去1〜2か月の血糖コントロール状態を反映します。健康な方の正常値はおおむね5.5%以下とされています。

5.6〜5.9%はグレーゾーンにあたり、詳しく調べると問題がない場合もあれば、すでに予備軍の入り口に立っている場合もあります。6.0〜6.4%になると予備軍の可能性がかなり高まり、6.5%以上で糖尿病型と判定されます。

空腹時血糖値で読み取れるリスクの段階

空腹時血糖値は、10時間以上の絶食後に測定する血糖値のことです。正常値は99mg/dL以下、100〜109mg/dLは「正常高値」といって将来糖尿病になるリスクがやや高い段階です。

110〜125mg/dLは「境界型」、つまり糖尿病予備軍として扱われます。126mg/dL以上になると「糖尿病型」と判定され、精密検査が強く推奨されるラインです。

75gブドウ糖負荷試験(OGTT)が必要になるケースとは

空腹時血糖値やHbA1cだけでは判断がつきにくい場合、75gブドウ糖負荷試験(OGTT)が行われます。75gのブドウ糖を溶かした液体を飲み、30分後・60分後・120分後に血糖値を測定する検査です。

2時間後の血糖値が140mg/dL未満であれば正常型、140〜199mg/dLなら境界型、200mg/dL以上なら糖尿病型と判定されます。空腹時血糖値が正常でも、食後の血糖値だけが高い「隠れ糖尿病」を見つけるために欠かせない検査です。

  • HbA1c 5.6〜5.9%:将来的な糖尿病発症リスクがある段階
  • HbA1c 6.0〜6.4%:糖尿病予備軍の可能性が高い段階
  • 空腹時血糖値 110〜125mg/dL:境界型(予備軍)
  • OGTT 2時間値 140〜199mg/dL:境界型(予備軍)

糖尿病予備軍の段階で体の中ではすでに変化が始まっている

「予備軍だからまだ大丈夫」と安心するのは危険です。血糖値がやや高い境界型の段階でも、血管へのダメージやインスリンの働きの低下はすでに始まっています。

インスリンの分泌や効きが徐々に落ちていく

糖尿病と診断されるよりもずっと前の段階から、膵臓から分泌されるインスリンの量が減ったり、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が生じたりしています。体は血糖値を正常に保とうとして膵臓に負担をかけ続けるため、放置するほど膵臓の機能は消耗していきます。

予備軍のうちに食事や運動で血糖コントロールを改善すれば、膵臓への負担を軽減し、糖尿病への進行を食い止めやすくなります。「まだ間に合う」段階だからこそ、行動に移す価値が大きいのです。

境界型でも動脈硬化のリスクは確実に上がる

血糖値が高い状態は全身の血管にじわじわとダメージを与えます。とくに75gブドウ糖負荷試験の2時間値が高い境界型の方は、正常型の方と比較して心血管疾患による死亡率が約2.2倍にのぼるという報告があります。

境界型と正常型のリスク比較

項目正常型境界型
心血管疾患の死亡リスク基準(1倍)約2.2倍
糖尿病への進行率低い高い
動脈硬化の進行緩やか加速傾向

合併症は糖尿病と診断されてからでは遅い場合もある

糖尿病の三大合併症として知られる神経障害・網膜症・腎症は、いずれも高血糖が長期間続くことで発症します。世界的な調査では、多くの患者が合併症をひとつ以上発症してからはじめて糖尿病と診断されているという現実があります。

とくに糖尿病性腎症は人工透析の原因疾患として長年トップに位置しており、一度透析が必要になると週に数回の通院が欠かせなくなります。予備軍の段階で早めに介入すれば、こうした深刻な合併症のリスクを大幅に下げられます。

糖尿病リスクを高める生活習慣を今日から見直そう

糖尿病の発症には遺伝的な要因と環境因子の両方がかかわっていますが、環境因子、つまり日々の生活習慣は自分の意志で変えられます。食事・運動・睡眠の3つの柱を整えることが、糖尿病予防の基本です。

食事の偏りと食べ過ぎが血糖値を押し上げる

糖質の多い食事を続けると、食後に血糖値が急上昇しやすくなります。白米やパン、麺類を主食として大量に摂取し、野菜やたんぱく質が不足する食生活は、血糖コントロールを悪化させる典型的なパターンです。

食べる順番を「野菜→たんぱく質→炭水化物」にするだけでも食後血糖値の上昇を緩やかにできるとされています。極端な糖質制限ではなく、バランスよく適量を食べる習慣が長続きの秘訣でしょう。

運動不足はインスリンの効きを悪くする大きな原因

運動不足が続くと筋肉量が落ち、インスリンの効き目が低下します。週に1回でも体を動かす習慣がある人は、まったく運動しない人と比べて糖尿病の発症リスクが低いという研究データもあります。

厚生労働省は1日の歩数の目安として、男性9,000歩・女性8,500歩を推奨しています。いきなり激しい運動をする必要はなく、通勤で一駅分歩く、エレベーターの代わりに階段を使うといった日常の工夫で十分に効果が期待できます。

睡眠不足やストレスも血糖値に影響を及ぼす

睡眠時間が6時間未満の人は、7〜8時間眠る人に比べて糖尿病の発症リスクが高まるとされています。睡眠不足はホルモンバランスを崩し、インスリンの分泌や効き目に悪影響を及ぼすためです。

慢性的なストレスも血糖値を上げる要因のひとつです。ストレスを感じると体内でコルチゾールなどのホルモンが分泌され、血糖値が上昇しやすくなります。趣味の時間を確保する、十分に休養をとるなど、自分に合ったストレス対策を見つけておくことが予防につながります。

  • 白米や麺類の食べ過ぎを控え、野菜やたんぱく質とのバランスを意識する
  • 1日の歩数を意識し、日常生活の中で体を動かす場面を増やす
  • 6〜8時間の睡眠を確保し、夜更かしを避ける
  • 飲酒は適量にとどめ、喫煙習慣があれば禁煙を検討する

糖尿病の早期発見につなげる定期検診の受け方と活かし方

糖尿病は早期に発見して対処すれば、合併症を防ぎながら良好な血糖コントロールを維持できる病気です。年に一度の健康診断を「受けただけ」で終わらせず、結果を正しく読み取って行動に移すことが肝心です。

特定健診(メタボ健診)は40歳から受けられる

40〜74歳の公的医療保険加入者を対象とした特定健診では、血糖値やHbA1c、腹囲などが測定されます。令和4年(2022年)の実施状況によると、特定健診受診者約3,017万人のうちメタボリックシンドローム該当者は16.6%、予備群は12.3%でした。

特定健診で確認できる糖尿病関連の検査項目

検査項目基準値の目安注意が必要なライン
空腹時血糖値99mg/dL以下100mg/dL以上
HbA1c5.5%以下5.6%以上
腹囲男性85cm未満/女性90cm未満基準値以上

健診結果は「異常なし」でも油断できない

空腹時血糖値だけで判定する健診では、食後高血糖型の「隠れ糖尿病」を見逃す可能性があります。空腹時の数値が正常範囲内でも、食後の血糖値が急上昇している方は珍しくありません。

家族に糖尿病の方がいる場合や、肥満・高血圧・脂質異常症などの危険因子を持つ方は、医師に相談のうえ75gブドウ糖負荷試験を受けることも検討してみてください。

健診で引っかかったら「様子見」ではなく医療機関を受診する

「要再検査」「要精密検査」と書かれた結果を受け取っても、自覚症状がないからと放置してしまう方が多いのが現実です。しかし糖尿病は症状が出にくい病気であり、症状が出たときにはすでに合併症が進んでいることも少なくありません。

医療機関では、より詳しい血液検査や必要に応じたブドウ糖負荷試験を受けられます。早い段階で医師の判断を仰ぐことが、将来の健康を守るうえでもっとも確実な方法です。健診は「受けること」ではなく「結果を活かすこと」にこそ意味があります。

よくある質問

Q
糖尿病の有病者と予備軍を合わせると日本では何人に1人にあたる?
A

国民健康・栄養調査のデータをもとに推計すると、糖尿病が強く疑われる人が約1,000万人、予備軍とされる人も約1,000万人で、合計すると約2,000万人にのぼります。日本の成人人口と照らし合わせると、およそ5〜6人に1人が糖尿病かその予備軍に該当する計算です。

とくに男性は女性よりも有病率が高く、60歳以上では4〜5人に1人が糖尿病を強く疑われるとされています。年齢を重ねるほどリスクは高まるため、若いうちからの予防意識が大切です。

Q
糖尿病予備軍と診断されたら必ず糖尿病に進行してしまう?
A

予備軍と判定されたからといって、必ず糖尿病に進行するわけではありません。食事内容の改善や適度な運動習慣の導入など、生活習慣を見直すことで糖尿病の発症リスクを大幅に下げられることが研究で示されています。

米国の大規模研究(DPP)では、食事と運動を中心とした生活改善によって体重を数kg落としたグループで、糖尿病の発症率が約58%低下したという結果が報告されました。予備軍の段階は「まだ戻れる」タイミングだと考えて、前向きに取り組んでみてください。

Q
糖尿病の血液検査で重要なHbA1cはどのくらいの頻度で測定すべき?
A

健康な方であれば、年に1回の健康診断で測定すれば基本的には十分です。ただし、過去にHbA1cが5.6%以上と指摘されたことがある方や、家族に糖尿病の方がいる場合は、半年に1回程度の測定が望ましいでしょう。

すでに糖尿病と診断されて治療中の方は、通常1〜3か月ごとに測定します。HbA1cは過去1〜2か月の血糖値の平均を反映するため、直前の食事内容に左右されにくいという特徴があり、日々の血糖コントロールの成果を客観的に確認できる指標です。

Q
糖尿病は痩せている人でも発症するのか?
A

糖尿病は肥満の方だけの病気ではなく、BMIが標準範囲の方でも発症します。とくに日本人を含むアジア人は、欧米人と比べて遺伝的にインスリンの分泌量が少ない傾向があるため、体重が標準でも血糖値が高くなりやすいという特徴があります。

実際に、糖尿病患者のBMI平均値は「肥満」の基準である25を下回っているというデータもあります。「痩せているから安心」ではなく、定期的な血液検査で血糖値やHbA1cを確認することが大切です。

Q
糖尿病予備軍の段階で受診する場合、何科を選べばよい?
A

糖尿病予備軍の段階での受診先としては、内科または糖尿病内科(糖尿病・代謝内科)が適しています。かかりつけの内科医がいればまずそちらに相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらう流れが一般的です。

糖尿病内科では、血液検査だけでなく75gブドウ糖負荷試験や合併症のチェックなど、より詳しい精密検査を受けられます。「まだ糖尿病じゃないのに受診していいの?」と迷う方もいるかもしれませんが、予備軍の段階で相談に来る患者さんは多く、医師もそうした早めの行動を歓迎しています。

参考にした文献