トルリシティは、あらかじめ1回分の薬液と針が組み込まれた週1回の注射薬です。キャップを外して透明な底面を皮膚へ当て、ロックを解除して緑色の注入ボタンを押すと、針の刺入から薬液の注入までが自動で進みます。

使うたびに針を取り付けたり、投与量を目盛りで合わせたりする操作は不要です。一方、透明な底面を皮膚へ密着させる前にボタンを押すと、正しく注射できないおそれがあります。

打ち忘れに気づいたときは、次の予定日まで3日(72時間)以上あるかが判断の分かれ目です。注射後は器具を再使用せず、受け取った医療機関や薬局から案内された方法で処理します。

この記事では、注射前の確認から実際の打ち方、曜日の決め方、打ち忘れ時と使用後の対応までを解説しています。

目次

トルリシティの1回使い切りペンは組み立てが不要

トルリシティのペンには1回分の薬液と針が内蔵されており、箱から出したあとの部品組み立ては不要です。操作する部分を先に確かめておくと、皮膚へ当ててから迷いにくくなります。

操作する3か所を手元で確かめる

主な操作部分は、下側の灰色の底面キャップ、中央付近のロックリング、上側の緑色の注入ボタンです。キャップの内側に針が隠れているため、針を手で付ける操作や注射後に針を外す作業も不要です。

部分注射時の操作注意点
灰色の底面キャップまっすぐ引き抜く外したあとに戻さない
透明な底面皮膚へ平らに密着させる中央部に指を触れない
ロックリングと緑色のボタン解除後にボタンを押す密着前には押さない

注入の完了は、作動音と灰色のプランジャーの両方で確かめます。プランジャーとは、注射後に透明な底面の内側へ見えるようになる灰色の部品です。

注射前に薬の名前と使用期限を照合

注射する前に、ラベルに記載された薬の名前と規格を処方内容と照合し、使用期限、器具の破損、キャップの外れも明るい場所で確認する必要があります。

  • ラベル表示 … 薬の名前と処方された規格
  • 使用期限 … 箱とペンに記載された期限内か
  • 器具の状態 … ひび、割れ、変形、キャップの外れの有無
  • 本人確認 … 家族の薬や未使用品との取り違えがないか

名前や規格が違う、期限が過ぎている、器具が破損しているといった異常があれば、そのペンは使わず医療機関か薬局へ連絡してください。見た目だけで使用の可否を判断しにくいときも同じ対応です。

毎回新しいペンを1本だけ使う

1本のペンは1回分で、注射が終わった時点で使用済みになります。薬液が残っているように見えても、再注射や別の人との共用は認められていません。

週1回の治療では、使用済みと未使用のペンが混ざると重複投与の原因になります。そのため、注射を終えたら使用済みの器具を決めた容器へ移し、記録も同じタイミングで残すと区別しやすくなります。

トルリシティの打ち方は4つの操作で完了

基本の流れは、キャップを外す、透明な底面を皮膚へ密着させる、ロックを解除する、注入ボタンを押して待つという4つです。初回は医療従事者から実物を使った説明を受け、処方時に渡された取扱説明書も手元へ置いてください。

キャップを外して底面を皮膚へ密着

手を洗い、衣服をめくって注射部位の皮膚を出してから、ロックがかかっている状態で灰色の底面キャップをまっすぐ引き抜きます。キャップをひねったり、外したキャップを再び付けたりすると器具を傷めるおそれがあるため、そのまま脇へ置きます。

透明な底面を皮膚に対して垂直に当て、すき間ができないよう平らに密着させます。強く押し込む必要はありませんが、注入が終わるまでは位置がずれない力で支え続けます。

ロック解除後に緑色のボタンを押す

底面を皮膚へ当てたまま、ロックリングを回して解除位置へ合わせます。次に緑色の注入ボタンを押すと最初のカチッという音が聞こえ、針が自動で刺さって薬液の注入が始まります。

順番手の動き確認する合図
1灰色のキャップを引き抜く透明な底面が露出
2底面を皮膚へ平らに当てるすき間なく密着
3ロックリングを回す解除位置に一致
4緑色のボタンを押して保持2回の作動音と灰色の表示

ボタンを押したあとは指を離しても作動しますが、ペンの底面は皮膚へ密着させたまま保ちます。驚いて途中で離すと、薬液の全量が入ったか判断できなくなるためです。

2回目の音と灰色の表示で注入完了

最初の音からおよそ5〜10秒後に2回目のカチッという音が聞こえ、灰色のプランジャーが見えたら注入は完了です。音の間隔には多少の幅があるため、秒数だけでペンを離さず、目で見える表示も合わせて確かめます。

完了を確かめてからペンを皮膚からまっすぐ離すと針は器具の内側へ戻り、注射部位に少量の血がにじんだときは清潔なガーゼなどで軽く押さえて、こすらずに様子を見ます。

途中で外れたときは追加注射を避ける

作動中にペンが皮膚から外れた、薬液が皮膚の上に多く残った、灰色のプランジャーが見えないといったときは、全量が入ったか自分で判定しにくい状態です。新しいペンを使って追加注射すると重複投与につながるおそれがあるため、処方元へ連絡して対応を確認してください。

ボタンを押しても作動しないときは、透明な底面が皮膚へ完全に密着し、ロックが解除位置にあるかを確認します。それでも動かなければ無理に分解せず、器具と箱を残したまま医療機関か薬局へ相談します。

注射部位は腹部・大腿部・上腕部から選ぶ

注射できる場所は、腹部、大腿部、上腕部の皮下です。皮下とは皮膚と筋肉の間にある脂肪の層で、毎回まったく同じ点へ打たず、範囲の中で位置をずらします。

自分で見やすく手が届く場所を選択

自分で注射するなら、腹部または左右の大腿部は底面の密着を目で確認しやすい場所です。上腕部は手が届いても底面が傾きやすいため、家族など注射方法の説明を受けた人に打ってもらう場面で選ばれます。

部位位置の目安打つときの確認
腹部へその周囲を避けた範囲座った姿勢でもしわを伸ばす
大腿部左右の太ももの前外側筋肉へ強く押し込まない
上腕部左右の上腕の外側補助者が底面を目視

どの部位でも、皮膚が赤い場所、腫れている場所、硬いしこり、傷やあざがある場所は避けます。注射する範囲について処方時に印を付けて教わると、自宅でも位置を合わせやすくなります。

前回とは違う点へ少しずつ移動

同じ腹部を続けて選ぶ場合でも、前回の刺入点から位置をずらします。右の大腿部、左の大腿部、腹部というように部位を順に変える方法でも構いません。

位置をずらす目的は、皮膚への刺激が一か所へ重なるのを避ける点にあります。注射日と部位を一緒に記録すると、1週間前の場所を思い出す負担が減ります。

ほかの注射薬とは離れた場所に打つ

インスリンなど別の注射薬を同じ日に使う指示がある場合、同じ身体部位を選ぶとしても、注射する点は互いに離します。2種類の薬を混ぜて1本の器具で打つ使い方はせず、それぞれ処方された器具を用います。

どちらを先に打つか、どの程度離すかについて個別の指示を受けているときは、その内容が優先です。処方薬が増えた際は、次の診察まで待たず、注射部位の組み合わせを薬局でも確認できます。

週1回の曜日を生活に合わせて固定する

注射は週1回、原則として毎週同じ曜日に行います。食事の時刻に合わせる必要はないため、落ち着いて操作でき、記録も続けやすい時間帯を選べます。

曜日と時間帯を1組で記録

「毎週日曜日」のように曜日だけを決めるより、「日曜日の朝食後」のように生活上の行動と結び付けると、予定を思い出しやすくなります。食後に注射しなければならないという意味ではなく、忘れにくい合図として利用する方法です。

  • カレンダー … 毎週同じ曜日に予定を登録
  • 服薬記録 … 注射日、時刻、部位を1行で記入
  • 未使用品の本数 … 次回受診までの残数を確認
  • 家族との共有 … 補助が必要な日時だけを共有

スマートフォンの通知を使う場合は、注射予定の通知と実施済みの記録を分けます。通知を消しただけなのか、実際に注射したのかが曖昧にならない工夫です。

曜日変更では前回から72時間以上空ける

予定曜日を変える必要があるときは、前回の注射から次の注射まで3日(72時間)以上の間隔を空けます。たとえば、毎週月曜日から木曜日へ変えるなら、前回の月曜日から72時間以上経過しているかを時刻まで含めて確認します。

曜日を前倒しする場合は間隔が短くなりやすいため、日付だけで数えず経過時間で判断し、生活上の都合による変更が続くと分かった時点で処方元へ相談すると、投与間隔の取り違えを避けやすくなります。

外出予定がある週は事前に実施日時を確認

外出や勤務の都合で通常の時刻に打てなくても、同じ曜日の中で落ち着いて操作できる時間へ動かせます。深夜に慌てて行うより、取扱説明書と記録を確認できる時間帯を選ぶほうが操作の取り違えを減らせます。

予定日そのものを動かすなら、前回から72時間以上という条件を満たす必要があります。日程が複雑で計算に迷うときは、自己判断で間隔を詰めず、実施前に医療機関か薬局へ日時を伝えて確かめてください。

トルリシティの打ち忘れは次回までの時間で判断

打ち忘れに気づいたら、次の予定日時まで3日(72時間)以上残っているかを確かめます。残り時間によって、気づいた時点で打つか、その回を飛ばすかが決まります。

次回まで72時間以上なら気づいた時点で注射

次の予定日時まで72時間以上ある場合は、気づいた時点で忘れた1回分を注射します。その後は、あらかじめ決めていた曜日へ戻して週1回の予定を続けます。

例として、月曜日の朝が予定で火曜日の朝に気づき、次の月曜日の朝まで6日残っているなら、火曜日に注射できる条件です。実施日時を記録し、次回日との間隔も見える形にしておきます。

次回まで72時間未満なら忘れた分を飛ばす

次の予定日時まで72時間を切っている場合は、忘れた回を注射せず、次の予定日に1回分を使います。遅れを取り戻そうとして短い間隔で2回打ったり、1度に2本使ったりしないでください。

気づいた時点忘れた分の扱い次の予定
次回まで72時間以上気づいた時点で1回分を注射通常の予定日に戻す
次回まで72時間未満忘れた1回分を飛ばす次の予定日に1回分を注射
前回日時が不明自己判断で注射しない処方元へ日時を伝えて確認

この判断は「次の曜日まで何日あるか」ではなく、次の予定時刻まで72時間あるかで行います。境目に近い場合は、カレンダー上の日数だけで決めない点が大切です。

前回の日時が曖昧なら投与前に確認

前回いつ打ったか思い出せないと、必要な間隔が空いているかを確かめられません。家族の記憶だけに頼らず、カレンダー、服薬記録、使用済み器具の本数を照合します。

照合しても日時が決まらないときや、すでに重ねて打った可能性があるときは、次の1本を使う前に処方元へ連絡してください。伝える内容は、確実に分かる最終の注射日時、予定曜日、手元に残る未使用品の本数です。

使用後の器具は医療機関の案内に沿って処理

使い終わったペンは、針が内部に戻っていても家庭で自由に捨てる器具ではありません。受け取った医療機関や薬局の案内に従い、回収方法と持参時の容器を確認します。

キャップを戻さずそのまま保管容器へ移す

注射後は灰色の底面キャップを付け直さず、ペンを分解しないまま使用済み器具用の容器へ入れます。見えない針が内蔵されているため、透明な底面へ指を入れたり、器具をつぶしたりする扱いは避けます。

容器は倒れにくく、子どもや同居人の手が届きにくい場所へ置きます。飲料用の空き容器などを自己判断で使わず、どの容器が認められるかを回収先へ確かめておくと安心です。

家庭ごみへ出す前に地域と処方元の指示を確認

使用済み注射器の扱いは、医療機関の回収方法や地域のルールによって異なります。一般ごみ、不燃ごみなどの区分を推測せず、処方元が指定した窓口へ確認してください。

場面扱い確認先
注射直後分解せず指定容器へ移す処方時の案内
容器がいっぱいになる前回収日や持参方法を確認医療機関または薬局
外出先で使用安全に持ち帰る方法を事前確認処方元

回収を依頼する際は、使用済みペンであると伝えて受付で指定された場所へ渡し、底面へ触れる危険を避けるため、紙袋の中へばらばらに入れず案内された容器のまま持参します。

未使用品と使用済み品を離して区別

使用済みペンを未使用品の箱へ戻すと、次回に取り違えるおそれがあります。注射前の置き場所と注射後の容器を分け、家族にもどちらが使用済みか分かる状態にします。

器具を落としたり底面へ触れたりした人がいる場合は、皮膚に傷がないかを確認します。針に触れた可能性があれば、傷口を流水で洗い、状況を医療機関へ伝えて対応を相談してください。

続けやすさは実演・記録・振り返りで支える

操作が少ない1回使い切りペンでも、説明を一度聞くだけで毎回迷わず扱えるとは限りません。初回の実演、毎週の記録、受診時の振り返りを組み合わせると、手技のずれや打ち忘れを見つけやすくなります。

初回は見本を使って手の位置まで確認

説明を受けるときは、ロックリングを回す手、ボタンを押す指、底面を支える向きを実際に確認します。利き手や視力、手指の動かしにくさによって扱いやすい持ち方が変わるため、自分の手で一連の操作を再現する時間が役立ちます。

針が見えない構造でも、作動音や自動で動く感触に驚くのは不自然ではありません。音が鳴るタイミングを見本で経験しておけば、自宅で最初の音を聞いたあとも底面を落ち着いて保持しやすくなります。

注射直後に日時・部位・完了表示を記録

記録する項目は、注射した日時、身体の部位、2回目の音、灰色のプランジャーの確認です。注射直後に残せば、翌日に「打ったかどうか」で迷ったときの判断材料になります。

紙のカレンダーでも電子記録でも構いませんが、家族が代わりに打つ日があるなら同じ記録方法へ統一します。記録欄を増やしすぎると続けにくいため、投与の有無と次回判断に必要な項目を中心にします。

扱いにくさは受診時に具体的に伝える

注射器の使いやすさは治療を続けるうえで評価される要素で、器具への好みを測る質問票の妥当性も研究されています。ただし、その研究は特定製品の優劣を示すものではなく、手の動かしやすさや確認表示の見やすさを個別に確かめる材料です。

日本人の2型糖尿病患者さんを対象にした治療満足度と生活の質の評価もありますが、探索的評価であり、薬の効果の優劣を決める根拠ではありません。毎回同じ操作で困るときは「ボタンが押しにくい」「2回目の音が聞き取りにくい」のように場面を具体化して伝えると、再説明や補助方法の検討につながります。

長時間作用型のGLP-1受容体作動薬は週1回製剤を含む一群として整理され、トルリシティも複数の臨床試験で週1回投与として扱われています。研究上の投与頻度が同じでも、実際の器具操作は処方された製品の取扱説明書に従う必要があります。

よくある質問

Q
トルリシティの注射は食前と食後のどちらに打ちますか?
A

食事の前後に合わせる必要はなく、予定した曜日の扱いやすい時間に注射でき、毎週の生活行動と結び付けるのは、食事を投与条件とするためではなく、忘れにくくする合図として利用するためです。

Q
注射中に2回目の音が聞こえなかったらどうしますか?
A

灰色のプランジャーが見えているかを確認し、見えない場合や途中でペンを離した場合は追加の1本を打たずに処方元へ連絡します。音だけが聞き取りにくく、底面を十分な時間保持して表示も完了しているなら、その状況を次回の説明時に伝えます。

その際の手掛かりは、注射した時刻、ペンを当てていた秒数、皮膚上の薬液の有無を記したメモです。

Q
予定日を2日過ぎてから気づいた場合は打てますか?
A

次の予定日時まで3日(72時間)以上残っていれば、気づいた時点で1回分を打てます。2日遅れという日数だけでは決めず、次回までの残り時間を時刻まで含めて数えます。

次回まで72時間未満なら忘れた分は飛ばし、次の予定日に1回分だけ使います。前回や次回の時刻が曖昧なら、注射前に処方元へ確認してください。

Q
注射する曜日は途中で変更できますか?
A

前回の注射から新しい予定まで3日(72時間)以上空いていることが、曜日を変更できる条件です。前倒しでは間隔が短くなりやすいため、日付ではなく時刻まで確認します。

Q
家族が代わりにトルリシティを打ってもよいですか?
A

家族が補助する場合に必要なのは、事前に医療従事者から器具の扱いと注射部位の説明を受け、上腕部など本人が底面を確認しにくい場所では、説明を受けた補助者が密着と完了表示を目で確かめることです。

実施後は本人と家族が同じ記録を確認し、重ねて注射しない仕組みを決めておきます。器具は共用せず、処方された本人のペンを1回に1本だけ使います。

参考にした文献