その息苦しさは肺気腫(COPD)が原因!?知っておくべき7つの事実

皆さん、「肺気腫」という病気はご存じでしょうか。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)のうちの一つである「肺気腫」という病気は、肺で酸素を取り込む場所である「肺胞」が壊れてしまったために、散歩したり、少し動いたりしただけでも「息が苦しい」・「しんどい」、「せきやたんが治らない」といった症状が出る病気です。

壊れてしまった「肺胞」は元には戻せませんが、治療により症状を良くすることができます。

息苦しさやずっと続いて直らない咳やたんは、禁煙や吸入薬、呼吸リハビリテーションにより軽減する事が出来ます。

ただし、まず肺気腫という病気はどんな病気であるのかを知った上で、本当にその症状は肺気腫が原因なのか、他に原因となる病気はないのかなどをチェックし、肺気腫の治療を行っていくことが大事です。

本記事では肺気腫の知っておくべき事実や情報を、新型コロナウイルスの関連も含めて、わかりやすく解説します。



目次

  1. 肺気腫の主な症状は「息切れ」、治らない「せき」や「たん」
  2. 主に体に酸素を取り込む場所である肺胞が壊れて起きる病気が「肺気腫」
  3. 肺気腫は主に「喫煙」が原因で起きる
  4. 肺気腫と慢性気管支炎、この2つの病気がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)
  5. COPDの方は「ぜんそく」と「肺がん」に注意が必要
  6. COPDの方は「新型コロナウイルス感染が重症化」しやすい
  7. まとめ
  8. 参考文献



1. 肺気腫の主な症状は「息切れ」、治らない「せき」や「たん」

「息切れ」、「せき」、「たん」、「最近疲れやすい」

こうした症状は良くある症状です。

「まぁ、そのうち治るだろう」

とそのままにしてしまうことも多いものです。

しかし、このような症状がずっと続くとしんどいですし、何より実は重大な病気が隠れている事が多い症状です。

肺気腫でよくある症状はこのような、近くへの散歩や階段の上り下りで息切れ、息苦しさを感じることや、風邪を引いているわけでもないのに、ずっとせきやたんが治らないといったものです。

ありふれた症状のため放置してしまいがちであり、肺気腫の発見が遅れてしまうことも良くあります。病気が進行してくると、風邪が治りにくい、治ってもすぐに風邪を引いてしまう、休んでいてもずっと息苦しい、といった状態になり、日常生活を送るのもままならないようになります。

その上、肺がんやぜんそく、心血管系の病気なども合併する事が多く、最終的には全身の病気を引き起こしかねない病気です。

では、このような、生活の質を下げてしまい、普通の生活が送れなくなる「肺気腫」というのはなぜ起きるのでしょうか。

呼吸困難のイラスト(男性)


2. 気管支が狭くなってしまうとともに、主に肺胞が壊れて起きる病気が「肺気腫」

こうした症状が出るのは、肺気腫という病気が「気管支が狭くなる」ことに加え、主に「肺が壊れて起きる」という原因によるものです。

そもそも、人は生きていく上で重要な「呼吸」を無意識的に休むことなくずっと行っています。

呼吸により口や鼻から吸った空気は、気道を通っていきます。

「気道」は口や鼻から「気管」につながり、左右の肺に枝分かれします。その管を「気管支」と呼びます。更に分岐が進み、「細気管支」と呼ばれる非常に細い枝となり、その先端にある「肺胞」という小部屋に最終的に送られます。

空気の通り道である気管支には、呼吸によって微小な細菌やウイルス、異物などが常に入ってきます。それらを体から排除し、気管支を綺麗に保つために、気管支にある「粘液上皮細胞」が活躍します。

粘液を分泌して、異物や細菌などをからめ取り、表面にある繊毛が動くことでのどのほうへ戻されます。それが口から排出されたものが「たん」であり、それを強制的に排出するために「せき」が出ます。

このように、気管支は肺に空気を届けるだけでなく、異物から肺を守る働きも果たしています。

その後、空気が送り届けられる肺胞では、体に必要な酸素を血液中に取り込んで、いらない二酸化炭素を代わりに捨てるという非常に重要な働きを行っています。そして、最終的に息を吐き出すことで、二酸化炭素などのいらないものを体の外に出しているのです。

(独立行政法人 環境再生保全機構ホームページより引用)

この呼吸に重要な「気管支」に炎症が起きて、内腔が狭くなってしまうことで息を吐くのが大変になると共に、特に「肺胞」が壊れてしまい、酸素の取り込み・二酸化炭素の排出が十分に出来なくなってしまう病気が「肺気腫」です

壊れた肺胞は「ブラ」という空気の肺が壊れた穴のような構造となり、使いものにならなくなってしまいます。

そして、こうした肺の緻密な構造が破壊されるため、肺は弾力を失い、気管支が狭くなってしまうことも重なって、吸いこんだ息をスムースに吐き出すことができなくなります。

その結果、「運動した時の息切れ」や、「何もしていなくてもしんどい」、「せきやたんがひどい」といった症状が起きてしまうのです。


3. 肺気腫は主に「喫煙」が原因で起きる

肺気腫にかかっている人は、地域的に差がありますが、全世界的に増加しています。

日本では2016年の厚生労働省のデータによると、肺気腫で亡くなった方は15,686人と報告されています。これは男性の死因の9位とかなり高い順位に位置しています。女性では10位内には入ってきませんが、これは肺気腫の原因が「喫煙」であり、男性の方がたばこを吸う人が多いためと考えられています。

また、いわゆるPM2.5や排気ガスなど含めた微小な粒子状物質による汚染なども影響も原因の一つとなります。

たばこを吸い続けると、繊毛細胞の動きが低下して、異物を体から排出しにくくなり、その異物のため炎症が起きて、最終的には気管支が狭くなってしまうだけでなく、肺胞が壊れてしまう。これが「肺気腫」が起きてしまうメカニズムです。

2001年に報告された論文によると、40歳以上の肺気腫有病率(病気にかかっている人の割合)は8.6%といわれています。その一方、2017年の厚生労働省の患者調査によると、クリニックや病院で肺気腫と診断された患者数は約30万人です。

ここからわかるのは、肺気腫であるのに受診していない人が650万人以上いると推定され、多くの人が肺気腫であることに気づいていない、または正しく診断されていないことになります。

口を抑えてショックを受けている女性のイラスト


4. 肺気腫と慢性気管支炎、この2つの病気がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)

主に酸素の取り込み・二酸化炭素の排出を担う肺胞が壊れて生じる病気が「肺気腫」であると説明しましたが、空気の通り道である気管支に炎症が起き狭くなってしまうことが主体として起きる病気に「慢性気管支炎」というものがあります。

慢性気管支炎は、気管支の内面を覆っている粘液腺が腫れて、粘液の分泌量が増加するとともに、細気管支の炎症によって肺の組織にある平滑筋が収縮し、気管支が狭くなり、気流の閉塞が進行します。

そして、更に炎症が生じ、気管支が腫れ、分泌物が増加し、更に気流が制限されるという悪循環が生じるようになります。最終的に肺内の細い気道は狭くなり、破壊されます。

完全に息を吐き出したと思っても、肺の中に空気が残るようになり、呼吸するのにますます努力が必要になります。こうして、せきやたんが止まらないといった症状が主に起きるようになります。

肺気腫と慢性気管支炎は、いずれも喫煙や有害な微粒子などを長年吸入し続けるために起きるため、2つの病気が併存することが多いのです。

そのため、これら肺気腫と慢性気管支炎を、2つ合わせてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼ばれています。

一昨年亡くなられた落語家の桂歌丸さんは、まさにこのCOPDが原因で命を落とされたのは覚えていらっしゃる方も多いでしょう。

もともと19歳からたばこを吸い始め、1日約50本も吸うヘビースモーカーであった桂歌丸さんは、67歳の時に医師から「これ以上たばこを吸っていると、取り返しのつかないことになりますから、止めてください」と言われたが、それでもやめずにずっと吸っていたとのことです。

その後、どんどん症状が酷くなっていき、「楽屋から高座(舞台)の座布団の上へ歩いていくだけで息切れがして、最初の2~3分はしゃべることもできなかった」というエピソードがあるように症状が酷くなっていきました。

「そんな経験をしたもので、早くこの病気を発見していただいて、完全なる治療ができるような体制をとっていただきたいと、患者の一員として思っています」

これが、2010年に厚生労働省の「COPDの予防・早期発見に関する検討会」の委員となった際の、歌丸さんの思いでした。

(ディスカバリーCOPD研究会より引用)


5. COPDの方は「ぜんそく」と「肺がん」に注意が必要

ぜんそくは「気道に慢性的に炎症が生じ、症状として良くなったり悪くなったりを繰り返す、気道が狭くなることで、ぜいめい・呼吸困難・咳を生じる病気」であり、肺気腫とは異なる原因・機序で起きるものです。

ですが、近年「ぜんそくとCOPDの特徴を併せ持ち、慢性の気流閉塞を呈する」病気として、喘息とCOPDのオーバーラップ症候群(ACO: asthma and COPD overlap)と呼ばれる病気が注目されています。

(「喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き2018」より引用)

それに加えて重要なのは、肺気腫の患者さんは、肺がんなどの他の呼吸器疾患が一緒にかかることが多いのです。肺気腫にかかっている人はかかっていない人に比べて肺がんが2倍以上おきやすいという報告もあります。

また、肺気腫が進行し、血液中の酸素濃度が常に低下するようになると、右心室から肺へと続く血管も収縮し、その結果これらの血管の圧が上昇します。この圧の上昇を、「肺高血圧」と呼び、その結果心機能の低下、心不全を引き起こすようになります。

さらに、肺気腫の患者では不整脈のリスクも高くなり、その他にも骨粗しょう症、うつ病、冠動脈疾患、胃食道逆流症などになるリスクが高いと言われています。

心臓発作・心筋梗塞のイラスト


6. COPDの方は「新型コロナウイルス感染が重症化」しやすい

今年は新型コロナウイルスが猛威を振るい、各国の人的交流が閉ざされ、緊急事態宣言も出された上に、今なお感染が治まる気配はありません。

新型コロナウイルスは、からだの様々な場所に感染しますが、最も特徴的なのは酸素交換の場である肺胞に感染し、炎症が生じさせ、いわゆる肺炎をよく起こします。上述のように、喫煙が呼吸器疾患を増やすことは間違いなく、かぜや肺炎などの感染病に関しても同様です。そしてこれは肺気腫の方においてももちろん当てはまります。

そして、芸能人の志村けんさんが肺気腫を元々わずらっており、その上で新型コロナウイルスに感染し、3月に亡くなられたというニュースは記憶に新しいですが、現在喫煙をしている人は、していない人に対して1.7から2.6倍重症化しやすいという報告が出ており、注意が必要です。

そして、肺気腫の方は長期の喫煙のためもともと肺胞が壊れてしまっているため、新型コロナウイルスに感染すると重症化してしまいやすい傾向にあります。

そのため、肺気腫の方は普通の方に比べ、より一層の注意が必要です。

手洗い、マスク装着、三密を避けるといった基本的な対策をしっかり行うようにして下さい。


7. まとめ

慢性閉塞性肺疾患(COPD)のうちの一つである「肺気腫」という病気は、少し動いただけでも「息が苦しい」・「しんどい」といった症状や「せき」や「たん」が治らないといった症状がでる病気です。

肺気腫は喫煙や微小な有害物質が原因で起きる病気であり、その慢性的な炎症のために、素・二酸化炭素のガス交換の場所である肺胞が壊れてしまうことで病気が起きてしまいます。

また、空気の通り道である気管支が炎症で狭くなってしまうことも同時に起きますが、それが主体に起きる病気が「慢性気管支炎」であり、肺気腫と慢性気管支炎は同じ原因・メカニズムで起きることから「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」と呼ばれています。

COPDの方は肺がんなどの他の呼吸器疾患が一緒にかかることが多く、心不全などの心血管系の病気や骨粗しょう症、うつ病、冠動脈疾患、胃食道逆流症などになるリスクも高いと言われています。また、ぜんそくとCOPDが合併する「ACO」という病気も最近注目されています。

新型コロナウイルスに感染すると、喫煙をしている方は1.7-2.6倍重症化しやすいという報告が出ています。新型コロナウイルスは特に酸素交換の場である肺胞に感染し、いわゆる肺炎をよく起こすため、そもそもその肺胞が壊れて起きる肺気腫の方は普通の方に比べて、より一層の注意が必要です。


・息切れやせき・たんの症状が気になる

・人生の間でたばこを吸っていた期間が長かった

・今現在もたばこを吸っている

・もしかして自分は肺気腫・COPDかも?

といった方は、一度かかりつけや近隣の医療機関に受診して、診察してもらうのをお勧めします。

肺気腫・COPDの正確な診断には呼吸機能検査などの検査が必要な為、最終的にはちゃんとした呼吸器科・呼吸器内科の医療機関で診て貰うべきですが、まず近医に受診して相談してみることが大事です。

開業医のイラスト

8. 参考文献

1. 厚生労働省 人口動態調査

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html

2. 厚生労働省平成29年(2017)患者調査の概況https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/index.html

3. Fukuchi Y, Nishimura M, Ichinose M, et al. COPD in Japan: the Nippon COPD Epidemiology study. Respirology. 2004 Nov;9(4):458-65. 

4. Rabe KF, Watz H. Chronic obstructive pulmonary disease. Lancet. 2017 May 13;389(10082):1931-1940. 

5. Celli BR, Wedzicha JA. Update on Clinical Aspects of Chronic Obstructive Pulmonary Disease. N Engl J Med. 2019 Sep 26;381(13):1257-1266.

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